コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 日時: 2011/01/04 22:13
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
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- Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.26 )
- 日時: 2010/12/11 10:04
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第九話「ハゲ」
爆風が周りを包みこむと、やがて、目の前にいた球体は消えた。
足が疲れてめまいがする。こんな激戦をしたのは初めてだ。今まで戦ってきた人間は弱かった。だがそれは当たり前だ。俺はこの世界で最初に作られた、能力を持つ人間なのだから。
最初に作られて、レベルも属性も最上位では、負ける気がしない。・・・・実験体だしな。
疲れてしまった。・・・力なく座り込む。
「はぁ・・・・・」
「お疲れ様にょん。・・・イコール、だっけ?」
そこにいる少女が言った。それに答えたいが、VANエネルギーをかなり消費したため、頷くことしかできない。
「君の過去、”リバースの魔術”で見させてもらったにょん」
少女は俺に話しかけているのだろうか?
先ほどから訳の分からないことをしゃべっている。
魔術・・・? リバース・・・? 過去を見た・・?
魔術ってたしか・・・迷信で、子供たちがよく本で読む物語だよな? 魔法みたいな。
リバースは、戻すって英語の意味だったと思うが。
ダメだ・・・理解できない。こいつは何を言っている?
「私の名前はミール。白と黒の魔術師です。・・・辛かったね。この世界の人たちは、偽りの記憶を植え付けられ、偽りの日々を生きている。能力という偽りの力。・・・初めてここに来た時、偽りの力があふれ出るように伝わってきました。この世界の能力は、『能力』なんかではありません。人間の実体実験で無理やり作られた『人間』なだけです。あなたはもう一人では考えられていられないでしょう。だから私は、・・・」
「あなたと共に、この世界を救います。この偽りで作られた能力は、人体に大きな影響を及ぼします。・・・そうですね。まずは、春山の捜索。そして目論見を吐かせる。ですね。」
何を言っているんだ? 俺がこの世界を救う?
「なんでわざわざ俺がそんなことしなくちゃ」
「だって、あなたが生まれたから、この世界は変わったんじゃないんですか?あなたという『能力を持つ人間』生まれたから、この世界は支配されたのではないのですか?・・・これは、日本でいう、けじめって奴です。・・・・・大丈夫にょん。あと二人、あなたの右手と左手に”無き者”と、”風のイヴ”がそばに来ます。その時は必ず来ます。」
それまで、私たちは、私たちの物語の準備をすればいいだけです。
「そうか。・・・ああ。わかった。俺の今すべきこと、まだしっかりとはわかんねぇけど、やらなくてはいけないってのは分かった。」
そしてイコールは思いっきり座ったポーズから立ちあがった。
「んじゃ、あのハゲ野郎(春山)を捜索するか。」
ここから二人の物語は、二人だけのもの。
だが、時が来れば、彼らは、”無き者”と”風のイヴ”を見つけ、戦いに挑むであろう。
その時まで、主人公はもう一度尾崎浩太に移る。
- Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.27 )
- 日時: 2010/12/11 10:04
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第十話「整理の時間」
今日は日曜、そして明日はついに待ち焦がれていた夏休み。・・・成績は教えません。ええ。すごく悪かったので。俺、高校行けるのかな?あはは☆
とまぁ、そんなことは置いといて、俺は日曜日だし、どこかに遊びに行こうと思っていたのだよ。だがな、土手地の河原の目の前にいる坂条を見つけてしまったんだ。そこでは口喧嘩から始まってしまうのだが。
「おい、坂条! なんで俺は祝福されないんだよ!」
「仕方ないでしょ。あんたの能力レベルを考えたって、レベル8なんかに勝てるわけないんだから。これが正式な結果よ。・・・いいかげん肩に乗せてる右手離してくれる?」
俺は先週の日曜日に、あのイコールなんたらって奴を逮捕したことで、祝福されると思った。あんだけ頑張ったんだからな!なのに、警察の奴らは「ありえん」の一点張りで俺を不審者扱い! その隣でケーキを頬張っている奈津美。この差別は何なんだ!? だからな、だからな、俺は納得がいかなくて、こいつに立ち寄ったとい言うわけだ!
だが今こいつの話を聞いただろうか?「正式な結果」だってよ!それも「手ぇ離せ」だってよ!こんな無慈悲なことあるもんかね!?
あのイコール野郎のせいで、坂条と友達関係にはなれるのかなーって思ってたら、もう他人関係!
悲しい!悲しいよ!・・・・とまぁ、俺は言われたとおりに、肩に乗せた右手を離したってことだ。
「それにしてもあんたね、どんなに能力が凄くてもだよ? あいつの能力、一旦停止にさせただけじゃない。それをあだ返しにするとは、ガキにも程があるわよ」
「けどおまえな! あんとき俺が殴ってイコールを気絶させなければ、俺ら生きてねぇぞ!?少しは感謝するべきなんじゃないのか? このオ・レ・に!」
アクセントを付けて話したところに、とんとんと、右手の親指で自分の胸を指す。
なんか、坂条の呆れた眼が痛い・・・。
「あんた、ナルシスト・・・?はぁぁっ・・・。わたし、なんであんたと同じマンションなのかしら。」
「(小声で)最悪だわ・・・・」
おい。聞こえたぞ今の!
なんか・・・俺が変態にみえるじゃねぇか!
まぁ、もういいか。うん。坂条の気持ちは痛いほど分かった。おとなしく、俺は逮捕激戦に参加してないってことでいいよな。
頭をかくと、坂条の顔を見る。おお、やはり可愛い。そうだよな、別に祝福なんかいくらだってあるさ。ポジティブポジティブ!・・・鬱になりそうだ。俺、頑張りすぎなのかな・・・。
すると、坂条がひらめいたような分からないが、俺をみて指差した。・・・人様に指さしちゃいけんぞ。
「ねぇ、あんたさ、これから暇?」
っと、腕時計を見ると、現在時刻はPM2:45。
別にまだ遊べる時間。というか明日から夏休みだし、気にしなくていいか。・・・めっちゃ暇だ。
「あ、ああ。暇」
「んじゃ、・・・・”実体実験能力生態厳重保管施設”ってところ、行ってみない?」
長くて・・・なんつったんだ?
わからないから、ちょっと質問する。
「えっと、つまりなんの所なんだ、そこ? 全然聞いたことないんだが。」
そういうと、奈津美は土手によりかかり、草を毟り取って、茶葉を摩るように一枚一枚丁寧に落としていく。
「・・・私も、実際のところ分からないんだけどね、先週、イコールの両腕を触った時、私と同じレベル8だったから、少しだけあいつの記憶とリンクしちゃったのよ。・・・そしたら、あいつが試験管の中に入ってる記憶と、そこの施設の看板が私の頭に入ったのよね。」
「だから、なんなんだよ? 試験管の中って言ったって、もしかしたら病気でその施設に治療させてもらってたかもしれねぇじゃん」
俺の言ったことが違ったのか、それとも俺が不味いこと言ったのかわからんが、奈津美が顔を左右に振り、否定する。
「違うのよ。聞こえちゃったのよ。私たちの本当の真実。・・・能力だって・・・これは『偽り』のモノ。先週の時から、悩んでて、この記憶の事が本当なのか分かんなくて・・・」
奈津美が片手で風を起こす。とても小さい巻き風。
奈津美の言ってることが俺には理解できない。能力が偽りって・・・そんなの知らない。俺達は普通に『この地球が二代目で、その二代目となった人類は能力をなぜか持つようになった』としか教えられていない。
昔の人類の人達は巨大隕石で滅んだとしか聞いたことがない。
奈津美は、一体なにを言ってるんだよ。もしかして変な薬でも入れられたのだろうか?
俺は・・・奈津美が何を言っているのか分からない。
河原にいる二人の影は、日が下がるたびに刻一刻と大きくなっていく・・・だがそれは、夜になることも示していた。
奈津美が見たものは、一体何なんだ?
- Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.28 )
- 日時: 2010/12/11 10:06
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第十一話「この世界の真実」
「わかった・・・とりあえず、行こう。もうそろそろ夜になる。今のうちに」
奈津美が額を抑えて立ち上がると、俺を見て言った。
「ありがとう。記憶通りに行くから迷うかもしれないけど?」
全然構わないので、頷いた。
「ふー・・・じゃ、行きますか。」
奈津美はそう言うと、土手を登っていく、俺もそれに続いた。
イギリス(ロンドン)—————
「ふう・・・少しは気温が変わると思ったが、景色以外は何も変わらんなぁ日本と。」
「いいんですかぁ? 研究施設には誰も配備させないままロンドンに来て・・・。もし侵入者がいたら、我々の隠された真実が表社会にも出向きますよ?」
研究員は目の前にいる”春山”にそう告げる。
告げられた内容は疎かにできないものと考えなければいけないというのに、なんとも思っていない感情が読み取れる。
「かまわん。それにあそこは『ロシア成教』から生み出した、魔獣・デスブラットドラゴンの紋章を組み込んでおいたからな。レベル8並みの力がなければ、魔獣は倒れん。」
「もう黒魔術を研究しているのですか? 迷信ですよ。そんなものはありません。」
春山はそこにいた研究員に嘲笑いをあげる。不気味な顔で、冒涜するような目つき。
「くくくっ! これだから科学はつまらん。 科学には限界があるのだよ。レベル8以上が現れないのもその”限界”があるからだ!・・・・だが、魔術に至って、生贄があれば”限界”など関係ない。きみは、私に付いていく気はなくなったのかな?」
「・・・あ、当たり前です。そんなことができるなら、ちゃんと証明して下さい!」
研究員が言い放った直後に、その研究員の体は地面にドラゴンとローマ語で埋め尽くされた紋章へと引きずり込まれた。
それを見送った春山は、耳の横を掻くとまたもや笑い上げる。
「まぁ・・・君はそう言うと思ってたからね〜、そのドラゴンの生贄なんだけど、君だったんだね〜。ふっふっふ。・・・・さて、ローマ聖教会はどこだったかな?」
地図を取り出し、春山は山の中からローマ聖教会へと歩き出した。彼はまた一つの企みを抱いている、と春山の右隣にいた無言の研究員、竹中は思った。
日本・実体実験能力生態厳重保管施設——————
「よかった・・・あったわ」
息切れがする・・・。あれからかなり歩いた。腕時計を見ると、PM7:00ジャスト。
つまり4時間も歩いたことになる。だがそれでも不安の気持ちが高ぶるのは、本来の真実がここに待ち構えているからなのかもしれない。
見た目的には、普通の小さい病院とも思える施設だ。
だがその実態は見損ねない。
奈津美が入口を発見したのか、こちらに手を振っている。その通りに奈津美の場所まで行くと、扉には暗号ロックが掛かっていた。
「くそ・・・メンドクサイことこの上無いぜ」
俺があぐらをかいて座ろうとするが、奈津美は冷静だった。やはり知っているのか?
「お前、暗号知ってんのか?」
「うん。記憶通りにやれば、これで・・・」
と共に、音が鳴り、ロックが解除された。
扉を開け、中に入っていく。
特に何の変哲もないロビーだ。扉を閉めると、自動的に周りの電気がつき、少々あわてる。
「ば、ばれた?」
「ううん。たぶん自動よ・・・そんなことよりも、やっぱ研究施設定番と言えば、『地下室』よね。」
と奈津美は言うと、そそくさと奥へと進んでいく。ステーションに似た窓口のテーブルに山ほどの紙が盛り上がっている。中身も気になるが、読んでいる暇はない。
奥へと進んでいると、行き止まりのように壁が立ちふさがる。もちろんやはりその隣には、地下行きの階段があった。
その階段を下りて行くと、扉がある。扉には
「VAN実験体厳重保管室・・・? VANって私たちの体に流れてるエネルギーのことよね?」
全く知らないが、それを使いすぎるとばてるとかは聞いたことがある。
「あ、ああ。」
頷くと、奈津美は扉を開けた。
「っ!?」
「な・・・」
・・・・俺と奈津美の目の前には、たくさんの試験管が覆った。
数えきれない・・・・。無数の試験管が並んでいる。その隙間から奥を覗いても、試験管、試験管、試験管、試験管の繰り返し。縦にも横にも続いている。
でも・・・それならまだよかった。まだ・・・。
「・・・ねぇ・・・嘘でしょ!? なんで・・・私の体が・・・・なんで私が試験管の中に入っているの!? あ、ぁぁあ!それに・・・隣は・・・真奈美・・・ッ! 横は・・・・先生ッ・・・!」
運悪く、いや悪いのかどうかは本人次第だが、すぐ目の前の一本の試験管の中には、坂条 奈津美の分身が入っていた。その隣には、妹と、国語の先生、その隣には・・・・俺の体が入っていた。
この無数の試験管の中に・・・街中の人たちの体が入っているのだろうか・・・?
俺は・・・・震える両手を握りしめても、震えは止まらなかった。
- Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.29 )
- 日時: 2010/12/11 10:06
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第十二話「真実の行き止まりはない。だから、進む」1/2
俺は・・・この状況をどう表現すればいいのだろう。表現の仕方は分かっている。でも・・・この衝撃が俺の思考回路を停止させる。
「なんで・・・? これが真実なの・・・? うぁぁっ・・・こんなの嘘よ・・・もし本当だったとしたって、だったら今ここにいる私の存在はなんなのよ?」
俺に問いかけているのか、誰に問いかけているのか、奈津美は混乱に陥っている。どうすることもできない。
でも分かることは・・・この試験管の中に入っている体こそが、『本物』だということだろう。
その証拠なんてない。この頭ん中の記憶だって、この本体の記憶に『能力』という存在を植え付けられたんだ。証拠と呼べる記憶もない。だが、この施設のどこかに『データ』があれば、・・・。
人類がいつ革命して行ったのか、いや、強制革命されて行ったのか分かるはず。
たくさんの試験管を通って行くと、コンピュータがたくさん並び、そこの無数のコードが試験管へとつながっている。これがデータかもしれない。
コンピューターへと立ち寄ると、奈津美も泣いて赤くはれた顔を気にもせず近寄ってきた。・・・今は話しかけない方がいいよな。
コンピューターの電源を入れると、年歴が現れる。現在の年(2020年)から・・・。下までロールしていくと、最下年は20010年まで。その頃に、俺達は『能力』を持つ体へと異動したんだ・・・。
それもきめ細かく、年代ごとに異動された人達の名前がある。検索マスに俺の名前を打てば、出てくるのだろうか?
手が震えるが、ゆっくりと「尾崎 浩太」と打つ。
すると、画面のクロールは2015年のとこに止まった。よく見れば、「尾崎浩太、能力生命態へと異動」と書かれていた。俺が、10歳の頃だ。・・・・なんつう話だよ。
もう俺はなにも考えることはできない。ただただ目の前が揺らんでいく。・・・だれか、助けてくれ・・・。
「ちょっと! 私にも貸して!」
とキーボードを勢いよく奪われ、やっと気が正気に戻る。・・・ダメだ。こんなんじゃ。これが真実なら、ありのままを受け入れるしかねぇ!
奈津美も即座に自分の名前を打ち、サイトを開く。
奈津美は2011年に止まった。かなり早い。俺よりも先に異動されたという事か。
だが・・・俺からの目線からでは細かくて見えないが、奈津美には奥が深いものがあったのかもしれない。その場から目線も動くことはない。
ちょっと寄りかかってみると、そこには「坂条奈津美、高レベルのVANエネルギーを注入し、瀕死状態までの確認を取った。だが無事にレベル8という大きな勲章を勝ち取った。」と述べられているが・・・。
「ふっざけんじゃねぇよ!!何が勲章だよ! 9歳の子供にそんなあぶねぇ実験して、死んだらどうすんだよ!ちくしょぉ!」
「死んだら処理されてる。わたしの・・・前に一回その実験されている子いる。『スラナス』って・・・書いてるけど、耐えきれなかったのね・・・。」
奈津美の履歴の横を見ていくと、レベル8だった人達は皆、その実験を行っている。そのレベル8は、イコールによって殺害されているが・・・。
奈津美は笑い、泣き崩れ・・・俺は・・・もう何も思えない・・・。でも・・・俺達には、何かしなければいけないのかもしれない・・・。これ以上の何かが。これを表に発表しても・・・ただの世界恐慌が起こるだけで、あとは何も残るものは無くなるだろう。
「だったら・・・俺達は、この実験者の春山に合わないといけない。・・・・坂条、俺達はこの真実を持って戦わなくてはいけないんだと思うんだ。戦わなくてはいけないんじゃない。そうしなければ、この世界が終ってしまう。世界を救うために戦わなくてはいけない。絶対このままじゃ、この世界にいる子供たちや、ここにいる俺達の本体もみんな亡くなる。今・・・なにか考えなくちゃいけねぇんだと思う!」
「うるさいっ!・・・分かってる。分かってるから・・・今は少し、考えさせて。こんなモルモットの如く使われた私たちが、なにかしなくてはいけないなんて元から分かってる。ほんとう、・・・・ッーー」
ああ、分かってる。奈津美が何を言いたいか、こんな糞みたいな真似を人間にさせて、言わせてもらうのはこんな言葉だけだろうが!・・・・本当に!!−−ッ
「ざけんじゃねぇッ!!」「ざけんじゃないわよッッ!!」
俺らの春山に思う感情は一緒だった。
二人の声は、この施設を響かせた。
物語の第一幕は、そろそろエンドへと向かう。
- Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.30 )
- 日時: 2010/12/11 10:07
- 名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)
第十二話「真実の行き止まりはない。だから進む」
無言の空間が広がる。一体無数の試験管の前で何を想えばいいのだろう。
何も思わなくていいのかもしれない。
こんな腐ったやり方で、怒りをどこにぶつければいいのか。震える両手を誰にぶっ放せばいいのか。
そんなの、ただの自己欺瞞なのかもしれないけど、それでも、こんなの認めたくない。・・・認めてたまるか。
「認めたくねェけど、けど・・・・こんなのあんまりだ。変な感覚・・・なんでこんなひどいことするんだよ。ひどいのかわかんねぇけど、でもそんな偽りな気持ちで生きたい人間なんてだれもいねぇよ。」
「・・・そうよね。あたし、レベル8とか実績何だと思ってた。でもそれも偽りの記憶だった。だったら今までのあたしの努力はなんだったのよ」
ここはダメだ。ここにいると悲しくて、痛くて、それに対して、こんな危険なことをなんとも思わないで実行した”春山”なんて許せるわけが・・・。
俺がうつむいていると、奈津美は真っ直ぐな視線で、言った。
「・・・春山 二郎か。いいわ。バンク端末からこいつの過去を調べてみる。もう悔いてるのはもったいないわ。・・・ポリス・スタデントとして、こいつを捕まえる。・・・まずはそれが最優先執行よ。」
おおー。なんだーこいつの正義感あふれる言葉はー。
と、俺もちゃんと考えないとな。
「でも最優先執行っつったって政府があいつと関わってるんじゃ、無理だろ。政府を盗られたのがもう負けだよな。・・・もしかして、ここに警備とか配備してねぇのってバレテもなにも出来ないってわかってるからか?」
「そうだったとしても、ねちこくて汚らしい人間には変わらないわ。それに、とにかくそいつの捕獲、が優先でしょ。・・・私はレベル8よ?それくらいの権利は持ってる。」
そう言うと、奈津美は俺の目の前を通って、出口へと進んだ。コンピューターを見ると、電源が既に切れていた。
「ま、待てって」
「さっさと帰るわよ。」
俺らは階段を上り、そのまま廊下を真っ直ぐ出口へと歩いた。
「それにしても・・・この場所じゃ怪しい研究されても気付かないわ。普通の研究所にしか見えないものね。・・・・?」
奈津美が歩いていると、突然とまり、俺とぶつかった。
「・・・なんだ・・?」
「いや、私って、風の波長が体内から流れててね、そしたらあんたのもっと奥の方の後ろに・・・強い力を感じるんだけど・・・」
俺らは、一緒に振り返るとそこには・・・。ああ。見たことある〜アニメとかでよく見るドラゴン見たいなモンスターだ・・・。
「こ、こんばんわ・・・?」「なに挨拶してんのよッ!?」
ボケたら、奈津美に一発片手を突っ込まれる。
影で目の所が、めっちゃ赤色に光ってる・・・。一言言っておこう・・・どうやってここに入ったの?いや、つうかなんなんだこれ?!グラフィックか?
「俺、はじめて見たかも・・・こういうの」
指を指すと、ドラゴンがピクッと顔を動かす。か、かわいい☆
「おお、こいつ反応が・・・☆」
「☆じゃないでしょ!? たぶんこの研究所で作られた生物兵器みたいな物よ!・・・ッ!?」
「キュァァァァアアアアアアアアァァ!!」
俺らの鼓膜が揺れる。・・・なんちゅう声で鳴くんだこいつぅ!男子にとっては昔から憧れるモンスターは一度は拝見してみたいと夢だったが、こんなんじゃ、、、死ぬ。
「ちょっと来て。・・・あんたは下がって。」
奈津美に言われたとおり、出口へと壁へ寄りかかる。俺の目の前に奈津美が立ったが・・・一体なにをするつもりなんだ?
「あんたさ、脳震盪って知ってる?気絶させることなんだけど・・・風をアイツの鼓膜で反響させると、脳の脊髄が一時的に停止して、脳震盪みたいになるのよ。そこであんたの出番。あいつをそのまま消せばいいのッッ!」
と、奈津美は風を直行させ、ドラゴンの頭部に巻き起こす。ドラゴンは頭を左右に振り、その振動が床を揺らし、足場が震える。
「・・・・ッ」
そしていつの間にかドラゴンは意識が途絶えたのか、気絶したように倒れた。
振動も治まり、俺はまっすぐドラゴンに立ち寄り、ものすごい大きさでどこを触ればいいのか分からなくなったが、首を抑え、消し去ろうとした時だ。
・・・ポタコンが、今いない・・・。
消し去ることができない。・・・くそ、ポタコン叩き起こして一緒に連れてくるべきだった・・・!!
あーあ・・・日曜日だからって甘く見ていたな。はは。
「ちょっと何してんのよ!早く消しなさいっつの!」
「あー・・・奈津美さん。今、能力使えないや・・・。」
「は?」
なにも言えねぇ・・・。どうしよ!?ガチマジどうしよ!?(汗)
奈津美の怒りの形相が想像できる。今 振り返ったらどうなることか・・・。
ん・・・?ちょっと待てよ。遠距離からでも接続はできるはず!
「109247#**PQ!」
(う〜? あれ、あ、浩太か。勝手に接続しないでよ〜寝てたのに。)
お前、今 何時だと思ってやがる!?
まぁ、そこはおいといて、「一発で終わるから力貸せ」
(おーけいー。)
再び、ドラゴンの首を両手で掴み、そのまま『無』へと感情を入れる。施設内での爆風が沸き起こる。
俺が掴んだドラゴンは徐々に白い灰へと変わり、下半身から砕けて行った。
「はぁ・・・はぁ・・・」
振り返ると、奈津美は背を向けていた。
ゆっくりと奈津美は振り返ると、笑顔で俺を見た。
「さ、帰ろう。私たちの街へ。・・・尾崎!」
なんか心がくすぐったくなったが、・・・ま、いいか、
「お、おう。・・・帰る、か。」
俺は立ち上がり、奈津美と一緒に出口を出た。そのまま道路を歩き、改めて研究施設を見ると、何の変哲もない施設も、邪悪な施設としか見えなくなった。
「そうだよな。俺らの物語はここからだもんな」
俺は小声で自分だけに聞こえるように言ったんだが、奈津美にも聞こえたのか、振り返った。
「ん? 何?」
いや、声が聞こえただけか。
「・・・なんでもない」
奈津美は「そう」というと、再び俺と歩き出した。
俺達はこの真実がすべてではないと思う。
だから・・・さらなる真実を求めるために、先に進もうと思う。
第一章 エンド
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