コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ブラッド・フレイム-Blood Flame- 第三章開炎
- 日時: 2015/07/18 08:39
- 名前: 竜野翔太 (ID: SDJp1hu/)
はじめまして、ドラゴンとか呼ばれたことないけど、ドラゴンこと竜野翔太です。苗字の読みは『たつの』ですよ〜。『りゅうの』じゃありませんからね。
今回は閲覧いただきありがとうございまーす。
この作品、『ブラッド・フレイム』でございますが、主人公は吸血鬼ちゃんでございます。いや、本当は別の掲示板で上げてたヤツに修正加えていって、いいものに昇華させてるやつなんですけどね。
主人公は吸血鬼、敵は悪魔ということで、いかにも中二病な作者が好きそうな題材でございます。あー恥ずかしい。
吸血鬼ちゃん、とちゃん付けで言ったということは、吸血鬼は女子ということです! ここ重要ですよ!
まあ後々男の吸血鬼も出ますが、大体が女子ですよ。
各キャラのプロフィールなどは、一つのストーリーが終わるごとに書いていきますので、それまでは色々と文章を読んで把握してくださいな♪
ではでは、次のレスから始めていきますよー!
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- Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.25 )
- 日時: 2015/07/07 11:58
- 名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)
真冬は夏樹の部屋に入り、困ったような表情を浮かべながら部屋の主である夏樹に問いかける。
「……本当にいいの? わたしも一緒に夏樹くんの部屋使っちゃって……」
真冬が今夏樹の部屋にいるのは冴子がそうするように言ったからだ。
冴子はあの提案の後に真冬が一人暮らしかどうかを確かめたのだ。一人暮らしだと言った真冬を、冴子は笑顔で迎え入れてくれた。どうも一人暮らしの時期があったようで、女子の一人暮らしの辛さをよく分かっているらしい。
真冬が桐澤家に留まることを決めかねているとところに妹の梨王も友達の家から帰宅。夏樹が連れてきた(彼女と勘違いしている)真冬を梨王は一目で気に入り、早速『真冬お姉ちゃん』と呼んで慕っている。
どうも断りにくい状況になってしまい、なし崩し的に真冬は桐澤家にいることとなった。
この家での真冬の部屋は夏樹の部屋ということになり、真冬は夏樹に部屋にあげてもらったところだ。夏樹としては梨王の部屋にしてもらうように提案していたが、冴子の一言で押し切られてしまった。
普段は適当で頼りがいがなさそうに見えるのだが、家の中では一番の権力者だ。
「……まあ仕方ないだろ。母さんがああ言ったんだし……」
幸いにも夏樹の部屋は二人でも問題はない。ただベッドが一つしかないので、寝る時にどちらかが布団を敷いて寝ることになるだけだ。
「そうだ赤宮。寝る時はベッド使っていいから」
「えっ? そ、そんな悪いよ! わたしはお布団敷いて寝るから……」
「俺が嫌なんだよ。素直にベッド使っとけ」
夏樹としては女子が床で寝ることを許容できなかった。薫ならまだしも、まだ出会ってちょっとの真冬を床で寝させることが出来なかった。まあ出会って時間が経てば許容できるかと問われれば難しいところではあるが。
「……でも、いいよホントに。じゃあ別のところで寝るっていうのは?」
「……別のところっていったって……どこで寝るんだよ?」
問われると真冬はくるっと後ろを向いた。
まさか扉の前、とか言われるのかと思ったが真冬が向かったのは押入れの方だ。押入れのふすまを開けて、真冬はそこを指さした。
「ここで寝るよ」
「……え、押し入れでいいのか……? 狭くないか?」
「うん! ほらわたし……背、小さいから……」
最後だけ明らかにテンションが下がる真冬。確かに同年代の女子としては小柄な方だが、それでも押入れは窮屈だろう。夏樹は意地にでもベッドで寝させようかと思ったが、真冬が中々折れそうにないのでそれを容認した。
「しかし悪いな赤宮。母さんと梨王の勝手でここにいさせちまって」
「う、ううん、気にしないで! むしろわたしは感謝してるよ」
真冬は照れくさそうに微笑みながら言葉を続ける。
「冴子さんは優しいし、梨王ちゃんは可愛いし……わたしを家族の一員のように迎えてくれたことが嬉しくて……」
「まああの二人は可愛い子が大好きだからな。気に入られたんだろ」
「……えっ!?」
夏樹の言葉を聞いた真冬は甲高い声を上げた。
どうしたのかと夏樹が視線を向けると、真冬の顔が真っ赤になっている。表情からして恥ずかしがっているようだが、何故そうなっているのか夏樹には分からない。
なんか変なこと言ったかな、と考えていると夏樹はさっき冴子と梨王が可愛い子が大好きさから、と言ったのを思い出した。
その言い方では夏樹も真冬を可愛いと思っているように聞こえてしまうだろう。
否定するのは悪い気がするし、別に冗談でも嘘でもないのでそもそも否定するつもりもないのだが、自らの発言に気付いた夏樹も僅かに顔を赤くして真冬から目を逸らしてしまう。
真冬は顔を赤くしながらもじもじしている。今のその行動はとても可愛く見え平静を保てなさそうになる。夏樹としては今すぐやめてほしい。
すると、夏樹の部屋の扉が容赦なくばぁーん! という掛け声とともに開け放たれる。
「真冬お姉ちゃぁーん! 一緒にお風呂はいろーっ!」
扉を開けたのは梨王だ。
兄を異性と見ていない梨王は、何の断りもなしに部屋に入って来ることがある。兄も思春期なので、ノックぐらいはしてほしい。
「梨王、お前せめて何か言ってから開けろよ」
「え? いいじゃん兄妹なんだし。さ、いこいこー真冬お姉ちゃん!」
真冬は梨王に押されながら退室していく。真冬は抗議の声を上げていたが年下の梨王の勢いにさえ負けていた。
夏樹は小さく溜息をつくと、部屋の扉を閉めるついでに下でお茶でも飲もうと下の階へと降りていく。
リビングに行くと冴子が頬杖をつきながらバラエティ番組を見ている冴子がいた。テレビの中のタレントのトークにツッコミを入れたり、爆笑したりと番組を楽しんでいるようだ。
夏樹はコップにお茶を注ぎながら、冴子に呟くように言った。
「赤宮の件、ありがとうな」
言うと冴子は意外そうな顔で夏樹を見返す。彼がお礼を言うことを珍しく思っているのだろう。
「気にするなって。アタシが大変だったから、真冬ちゃんに同じ思いをさせたくなかっただけだ。なんでお前がお礼を言うんだよ?」
——真冬が『ヴァンパイア』だから、とは言えない。
真冬が正式に誰かと契約を結べば、その時はこの家から出て行くことも今は言えない。
まあ冴子もずっといろ、とは言っていない。いつかは別れる時が来るのは当然だ。それがずっと先のことか、それとも案外近いうちにあるのか。その時自分はどういう反応をするのか。
——その時、自分は真冬のことをどう思っているのか。
夏樹には分からないことばかりだ。
冴子はフッと笑みを浮かべると、夏樹の肩にぽんと手を置いた。
「まあ今は別にいいけどさ。真冬ちゃんとお前が話してもいいって思ったら、隠してること全部話してくれよ」
「……母さん、なんでそれを知って……!?」
夏樹が驚きに叫ぶように声を上げると、冴子が人差し指を夏樹の唇に当てる。
「なーんも知らないよ? ただ、アンタらが何かを隠してるってこと以外は」
冴子は夏樹の肩を軽く叩くとトイレの方へと向かって行った。
「だから話したい時でいいよ。それはアンタらが判断しな」
夏樹はそんな冴子の背中を見つめながら、やっぱり敵わないな、と小さく笑う。
- Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.26 )
- 日時: 2015/07/07 12:01
- 名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)
第三章 赤と白の交差
1
「……ったく、なんで俺だけがやることに……」
夏樹はそんなことをぶつぶつと呟きながら学校の廊下を歩いている。
彼が不機嫌な理由はただ一つ。実は昼休みになって直後に、四時間目を担当していた地理の教師から全員分のノートを集めて職員室に運んで来てくれと言われたのだ。
別にそれ自体はいいのだが、彼が気に食わなかったのは同じく役目を任された女子がすたこらと逃げて行ったことだ。
一人で持てない量でも重さでもなかったが、一言もなしに逃げて行くのは非常識じゃないだろうか。真冬が手伝おうか、と尋ねてきたが先に昼飯を食べておくように言っておいた。
何の関係もない真冬を巻き込むわけにいかないし、なにより先ほども言った通り一人で持てるくらいだ。
今は職員室にノートを持て行き、その帰りである。
夏樹がぶつぶつと言いながら歩いていると、夏樹とすれ違った人物がハンカチを落とした。
夏樹は足を止めてハンカチを拾い上げる。女子が使いそうな淡いピンク色のハンカチを見て、夏樹は先ほどすれ違った人物へと声を掛ける。どうやらハンカチを落としたことに気が付いていないようだ。
「おーい、このハンカチお前のか?」
夏樹はハンカチを持って、すれ違った女子へと駆け寄る。
女子はきょとんとした表情で振り返る。
肩には届かないショートカットの銀髪に、青い目が特徴的な美少女だ。背は真冬より小さいか同じくらいという小柄な体躯で、彼女も真冬と同じく華奢な身体つきをしている。
銀髪の少女は自分のスカートのポケットをまさぐりながら、あちゃーろ言ったように眉を僅かに下げて困ったような表情を浮かべる。
「ごめん、それあたしのだ。ありがとね」
にこっと笑って夏樹からハンカチを受け取ると、丁寧に折りたたんでそれを再びポケットの中に入れる。
銀髪の少女はびしっと敬礼をしながら、夏樹を見上げて言う。
「このお礼はいつかさせてもらうよっ!」
「いや、いいよ。ハンカチ拾ったくらいで大袈裟な」
にしし、と実年齢より少し幼い笑みを浮かべて、少女はくるりと踵を返した。
「んじゃーまたね! また会おうね」
少女の最後の言葉が夏樹の耳に妙に残った。
学校で会うのだからまたも何もないと思うのだが、という感想を抱いたが、それとはまた違う。
含みがあるような、彼女とはまた近いうちに出会う。
夏樹はそう確信した。
夏樹と別れた銀髪の少女は、ハンカチを入れた別のポケットからスマートフォンを取り出した。慣れた手つきで液晶画面を操作し、そのままスマートフォンを耳に当てる。
相手が通話に応じたのを確認すると、周りに聞こえないような小さな声で話し始める。
「うん、こっちは接触できたよ。アンタの言う通りハンカチを拾ってくれたわ。ホントに優しいのね」
『……女子には優しいよ、アイツは。無意識なんだろうがな』
電話相手の少年は何気なく返す。
「悔しい?」
『なんでだ』
銀髪の少女は予想通りの返答が返って来て嬉しいのか、にんまりとした笑みを浮かべた。
「そっちも早く済ませちゃいなさいよ。どうせ目に見えるところまでいるんでしょ?」
『ああ。つーか……無防備だな』
「あの子は注意力が散漫なのよ。もう一人のあの子は全然隙がないけどね」
そうかよ、と電話の少年は返す。
「なるべく早くしなさいよ、昴(すばる)」
彼は視界にその人物を捉えているのか、その人物を見据えているような口調で、
『すぐに済ませるさ、涙(るい)』
二人は名前を呼び合い電話を切った。二人の右手の中指には全く同じ型の白い球が埋め込まれた指輪が嵌められていた。
一方で、夏樹と話した自販機の前で、人差し指を顎に当てながら真冬は小首を傾げていた。
その様子が既に可愛いのか、あざとさは全くなく、道行く男子も真冬を見て頬を赤く染めていた。転校から数日しか経っていないが、真冬のことはほぼ全校生徒に広まっている。
中には『一年生の天使』とまで呼ばれているようだ。
そんなことを知る由もなく。真冬は自販機の前で真剣な顔つきで悩んでいた。
「……ミルクティーかアップルティー……ミルクティーが美味しいのは知ってるけど……アップルティーはどうなのかな? アップルっていうくらいだから、甘いのかな?」
飲み慣れている美味しいものか、それとも買ったことがない物で冒険するか、真冬は自販機の飲み物を買うには十分な二〇〇円を右手で握りしめながらかれこれ一〇分くらい悩んでいた。
真冬は意を決してお金の投入口にお金を入れようとしたところで、
「ねえ、キミって一年生の赤宮真冬ちゃん?」
声を掛けられて真冬は振り返る。
振り返ると、そこにいたのは見慣れない人物。恐らくは上級生だろうが、内気なのか違うのかよく分からない不良なのかも曖昧な二人組がいた。
真冬は何の用かな、と小さく首を傾げていると、二人組の一人が、
「転校してきたばっかりだよね? お、俺が校内のいいとこ案内してあげようか?」
「あ、お前抜け駆けするなよ!」
と、二人は口論になってしまった。
真冬はこの手に何回も誘われたことがある。その時は偶然夏樹が駆けつけてくれたのだが、今は来るとは考えにくい。
真冬は小さく溜息をついて、
「あの、わたし今から友達と一緒にお昼ご飯を食べるんです。だから、それはまたの機会に……」
「いいじゃん! ご、五分でいいからさ!」
真冬はどう断ろうか悩んでいると、
「見つけた。お前、飲み物買うのにどんだけ時間かけてんだよ」
急に後ろから声がした。
夏樹が来たのかと思ったが、振り返らなくても分かる。声が違った。じゃあ一体誰なのか、真冬は振り返ると同時に肩を組まれた。
黒髪の左側をかき上げており、右側だけ前髪がある少年だ。その少年は不良なのか、目つきが悪い。相手を威嚇するような酷薄な笑みを浮かべて、上級生二人を睨み付けている。
「悪いねー、今から俺らはこいつと飯食うんだわ。用ならまた今度にしといてくんね?」
「えっと、あの……」
真冬はどうすればいいか分からず迷っていると、黒髪の少年が小さな声で真冬に言う。
「いいから口裏合わせとけって。面倒事にはなりたくねーだろ」
しばらくすると上級生二人は少年の威圧に耐えられなかったのか、そそくさとその場から離れていった。少年は二人が去ると真冬と組んでいた肩を解き、ポケットに手を突っ込んで鼻でつまらなそうに笑った。
「ハンッ、度胸もねーのにナンパなんかすんじゃねーよ」
そんな少年に真冬はお辞儀をしてお礼を言った。
「あの、ありがとうっ! 助かったよ」
真冬は笑顔で言うと、少年は先ほどとは打って変わって素直な笑みを浮かべた。
「気にすんなよ。俺もお前に話があったしさ」
「話?」
直感で先ほどの上級生とは違うものだと分かっていた。真冬が首を傾げると、少年は困ったように頭をかきながら、困ったような表情を浮かべる。
「……アイツ、これ見せりゃ理解してくれるって言ってたが……理解sてくれなきゃ相当恥ずかしいぞ……」
真冬は彼の言葉の意味が分からなかったが、少年は気恥しそうな表情を浮かべながら右手の指を見せるようにして真冬に問いかける。
「お前、これ見えるか?」
「これって……あ」
真冬が注目したのは少年の右手の中指に嵌められている指輪だ。
白い球が埋め込まれている何の変哲もなく、大して高そうにも見えない質素な指輪。だが、真冬はこの指輪を——いや、これに似たものを知っている。
「分かるのか。アイツがいねぇが……まあいいか。話ってのは——」
「こらぁー、昴! あたしなしで話を進めようとするなぁー!」
遠くから怒鳴り声が聞こえてくる。
振り返ると銀髪ショートカットの青い瞳女の子が猛ダッシュでこちらに駆け寄ってきた。
「あたしが話すって言ったでしょ!? アンタは声かけて待ってろって言ったじゃん!」
「知るかよ。来るの遅いお前が悪いんだろ」
真冬は駆け寄ってきた銀髪の少女を見て、驚きの声を上げた。
「え、涙ちゃん!?」
涙、と呼ばれた少女はにんまりと笑みを浮かべて、
「あらぁ、真冬じゃなぁい。これであと一人……と呼びに行くまでもなさそうだねぇ」
真冬が涙の言葉の意味を理解するより早く、真冬の耳に聞き慣れた声が届いてくる。
「おーい、赤宮。お前何してんだ? 中々帰って来ないって薫が心配してるぞ?」
「夏樹くん! えっと、実は……」
真冬は振り返って、こちらへと寄ってくる夏樹にどう言い訳しようかあたふたと慌てている。
夏樹は真冬の前にいる銀髪ショートカットの少女を見て首を傾げた。
「……あれ、お前さっきのハンカチの……」
それから夏樹の視線は横にいる黒髪の少年へと移った。
すると一瞬で、夏樹の表情が嫌いな相手に向ける表情になった。その表情を見たことはないが、これはきっとそういう顔だ、と真冬は確信した。
「……よぉ、久し振りじゃねぇか……」
「……ああ。同じ高校とは知ってたがな……」
二人の険悪なムードを見て、真冬は涙に問いかける。
「ね、ねぇ……夏樹くんと彼ってどういう関係?」
「まあ話はそこから始めようか」
二人がそう言っている間、夏樹と昴と呼ばれていた少年は睨み合っていた。
- Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.27 )
- 日時: 2014/09/09 07:57
- 名前: ★ (ID: PzqI3wcg)
初めまして★(くろぼし)です!
題名に引かれてやって来ました(笑)
おぉ…素晴らしい。
題名からして戦闘系かな?と思ってましたが強ちそうでもないようですね!面白いです!
更新頑張ってください!
- Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.28 )
- 日時: 2014/09/09 18:43
- 名前: 竜野翔太 (ID: G1aoRKsm)
〉★さん
コメントありがとうございます。
題名はいいのが思いつかず、主役の特徴をとらえたものにしました。題名を見ただけで、どういうキャラが登場するのか、をわかりやすく。
素晴らしいなんて……まだまだそんな言葉を頂けるほどじゃありませんよ^^;
いや……バトルものですね。ただ結構日常の描写も入れるので、オールバトル、オール日常にならないように気をつけます!
- Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.29 )
- 日時: 2014/09/14 00:43
- 名前: 竜野翔太 (ID: sLRBYAgN)
2
「えーと、話を纏めると、お前は『天界』では真冬の友人だったと」
「それで、キミは夏樹くんの中学時代の友達って解釈でいいかな?」
夏樹と真冬は二人にそう聞き返した。
それを聞いた銀髪の少女、白波涙(しらなみるい)は腕を組みながらうんうんと頷いている。だが、一方で険しい表情を浮かべている黒髪の少年、朧月昴(おぼろづきすばる)は、真冬の言葉を聞いてただでさえ鋭い目つきをさらに鋭くした。
「いいや、待て赤宮。お前の解釈は間違っている」
え、と困惑する真冬の隣で夏樹がうんうんと頷いている。
「そうだぞ赤宮。俺とこいつが友達だなんて冗談じゃない」
それ、夏樹くんも否定するの? というような表情で夏樹を見つめる真冬。
二人は再び睨み合いを開始している。涙はもはや止めることもせず、額に手を当てて深く溜息をつくだけだった。まるで、兄弟の喧嘩を見ている母親のように見えた。
「……じゃあ、二人はどういう関係?」
真冬が問いかけると、夏樹と昴はお互いを指さして何食わぬ顔で声を揃えて言った。
「ただの通行人A」
同時に言うや否や次はただの睨み合いから胸倉を掴んでの睨み合いに変更された。
「誰が通行人Aだ、お前なんかスタッフロールにも出て来ねぇんだよ!!」
「んだとコラァ!? お前なんか出てたシーン全部カットなんだよ!!」
二人の喧嘩をどうしようかと悩む真冬は、傍にいる涙に助けを求めようと彼女を見るが、彼女は退屈そうに大きな欠伸をしていた。目の前で男子二人が喧嘩をしているというのに、なんというマイペース具合だろう。
「涙ちゃん!? いいの、二人の喧嘩止めなくても!?」
「いいよ、どうせすぐ終わるから。ま、二人の関係についてはあたしからちょっと話しておこっかな」
涙はあらかじめ昴から聞いていた二人の関係を話し始める。
夏樹と昴は同じ中学の出身だったらしい。
夏樹も昴も、今では考えられないくらいの不良少年だったらしく、素行や態度が悪いというワケではないが、喧嘩を吹っ掛けられればすぐに買うというものだったらしい。
元はといえば、ある不良グループの男が薫に手を出そうとしたところを夏樹が止め、同じころにその不良グループと対立していた昴と鉢合わせたという。
当初は大して対立はしなかったものの、夏樹が喧嘩をすれば必ずそこに昴が現れていたという。しかもそのタイミングが奇しくも夏樹を助けるタイミングで、夏樹としては不快だったのだろう、昴も自分の目的を邪魔している、という理由で夏樹との対立が表面化したらしい。
しかし、大抵二人が共闘することが多く、二人が中学の頃は『なっちー&ばるっち』という可愛らしい通り名(薫が命名、後に拡散した)が広まり、二人の名前は不良たちの間では伝説として語られている。
伝説となったのは、高校になったら二人が活動を休止したからである。
「……そうだったんだ」
「うん。だから友達って言われるのは嫌なんだって」
「じゃあ友達っていうより……戦友だね」
「それも違うっ!!」
ものすごい勢いで夏樹と昴の二人に否定された。『友』と名がつくのは嫌なのだろうか。
「……そうだ、涙ちゃん、わたしたちに話があるんじゃなかったの?」
「そうそう。これは夏樹くんにも聞いといてほしいことなんだよねー」
涙が二人に話を始めるということで、夏樹と昴も一応落ち着くことにした。話が終わればまた何か始めそうだが、その時は真冬と涙が全力で止めようと目配せをし合った。
全員が聞く態勢を取ると、涙がわざとらしく咳払いをして話を始める前に、夏樹と真冬にある質問を投げかける。
「ねえ真冬。アンタこっちに来てから紫々死暗(しししあん)に襲われたんじゃないの?」
その名を聞いた途端、真冬が息を詰まらせる。
「……なんでそれを……?」
「……赤宮そいつって……」
夏樹が質問の全てを口にするより早く真冬が頷く。
紫々死暗——夏樹は名前こそ知らなかったが、その男とは一度会ったことがある。真冬の転校初日、彼女と残って教室の掃除をしていた時のことだ。帰ろうとしたところで、窓を割って侵入してきた怪しさ満点の黒装束の男に追い掛け回された。
その黒装束の男なのだと、真冬は言外に伝えてきた。彼女の瞳を見ただけで理解した。
涙は小さく溜息をついて話を続けた。
「襲われたのね?」
「……うん、でもどうして分かったの?」
「そりゃ分かるわよ。あたしたちも同じだったから」
それを聞いて夏樹と真冬は絶句した。
ということは、あの男は他の『ヴァンパイア』とその契血者(バディー)を襲っているのかもしれない。
「あたしたちはその時に契約を済ませたわ。まあ近くに昴以外誰もいなかったし、こいつとなら契約してもいいって思ってたしね」
昴の右手の中指にはめられた指輪。
それは『ヴァンパイア』と契約した際に現れるものらしい。この指輪は『ヴァンパイア』の存在を知っている者のみに認識できる。つまり今涙と昴がお揃いの指輪をしている状態なのだが、これを知っているのは『ヴァンパイア』とその契血者(バディー)、もしくは何らかの理由で『ヴァンパイア』の存在を知ることになった人間と『天界』出身者のみだ。
「ってことは、涙ちゃん……あれをしたの!?」
「あれ? ああ……契約時のあれのこと? 別に大したことじゃないでしょ?」
何のことか分からない夏樹は、自分のことでもないのに困っている真冬と、さも他人事のように語る涙を不思議そうに眺める。
昴に聞こうかなーと思ったが、彼もどこか居心地が悪そうにしていたので、とりあえず今は疑問を心の奥底にしまっておくことにした。
「とりあえず、あたしたちは契約してその場を凌いだってわけ。アイツが襲ってきた理由、なんとなく分かるんじゃない?」
「……もしかして、『天界』でのあの一件がそうかな?」
あの一件というのは、『天界』に存在する『ヴァンパイア』育成機関に在籍していた真冬と涙に喧嘩を売った紫々死暗を、二人がかりでボコボコに叩きのめした『赤と白の紫破壊事件』である。
「お前、なんつーことやらかしてるんだよ」
「だ、だって涙ちゃんが手伝えって言うんだもん」
断れなかったんだよ、という真冬。しかしそれでもボコボコはやりすぎだろう、と元不良であった夏樹でさえ死暗に同情する程の残酷さである。
「アイツは自分をボコボコにしたあたしたちを恨んでいる。今回の襲撃はその腹いせでしょうね。だから他の『ヴァンパイア』たちを襲ってる可能性は低いわ」
そこで、と涙がびしっと夏樹と真冬の二人を指さした。
「二人には紫々死暗の撃退に協力してもらおうと思うの! どう?」
襲われた者同士協力しよう、ということらいい。涙一人で勝てる自信はないらしく、そのためには真冬の協力が必要不可欠というワケだ。
しかし、真冬としても『天界』の時と同様に全力で戦えるわけではない。
魔力で満ち溢れている『天界』では、他人の血を吸う必要がなく、真冬はいつでも長髪の覚醒した『真冬』になれるのだ。つまり、こっちの世界で死暗と全力で戦うには、夏樹の協力が必要となる。
真冬はどうしよう、という視線を夏樹に向ける。
助けを求められた夏樹は、迷うようにしばらく考え込んでから、結論を口にした。
「……お前が決めろよ。お前が行くって言うなら俺はついていく。俺の協力が必要だろ?」
「でも、それじゃ夏樹くんが危険な目に……」
真冬が涙目で訴えると、夏樹は小さく息を吐いた。
「こんなこと言うのも情けないけどさ、俺はお前みたいに悪魔やあの大爪男と戦う力はない。でも、お前に力を与えることが出来る。俺はお前に力を貸す、だから、その代わりにお前は俺に力をくれ」
「……それって……」
「お前が俺を守ってくれ。それでいいだろ?」
夏樹の言葉を聞いて、真冬は心が突き動かされた。
今までに感じたことのない感情が真冬の心を満たし、溢れていく。この感情がなんなのか真冬には分からない。いや、あるいは気付いているのかもしれないが、その感情じゃないと否定しているのかもしれない。
ただ、真冬は心の底から目の前にいる人物を、この世界でできた初めての友人を守りたいと思った。
真冬は夏樹の言葉に対して、力強い瞳と声で返事をする。
「うん!」
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