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ブラッド・フレイム-Blood Flame- 第三章開炎
日時: 2015/07/18 08:39
名前: 竜野翔太 (ID: SDJp1hu/)

 はじめまして、ドラゴンとか呼ばれたことないけど、ドラゴンこと竜野翔太です。苗字の読みは『たつの』ですよ〜。『りゅうの』じゃありませんからね。

 今回は閲覧いただきありがとうございまーす。
 この作品、『ブラッド・フレイム』でございますが、主人公は吸血鬼ちゃんでございます。いや、本当は別の掲示板で上げてたヤツに修正加えていって、いいものに昇華させてるやつなんですけどね。

 主人公は吸血鬼、敵は悪魔ということで、いかにも中二病な作者が好きそうな題材でございます。あー恥ずかしい。
 吸血鬼ちゃん、とちゃん付けで言ったということは、吸血鬼は女子ということです! ここ重要ですよ!
 まあ後々男の吸血鬼も出ますが、大体が女子ですよ。

 各キャラのプロフィールなどは、一つのストーリーが終わるごとに書いていきますので、それまでは色々と文章を読んで把握してくださいな♪

 ではでは、次のレスから始めていきますよー!

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Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.85 )
日時: 2015/07/07 01:48
名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)



 9


「……はぁ……はぁ……」
 激戦の舞台となった学校の屋上に一つの影が降り立った。
 いや、そう美しい表現とはかけ離れた、なんとも無様な着陸だった。傷だらけの身体を労わるようによろよろと頼りない飛行で、自然落下かと思うような姿勢で降りてきたのだ。足からではなく、身体から屋上に着陸した。
 降りてきたフルーレティの姿もなんとも無様なものだった。
 茨芽瑠によって左腕は切り落とされ、白波涙によって右腕はまともに動かせないくらい負傷していた。さらには赤宮真冬により、腹には大きな火傷の痕が残っている。体力の消耗も激しいことを考えると、再び戦えるまでに回復するには相当な時間が必要だろう。
 使えない両腕のせいで、立ち上がることもままならないフルーレティは、なんとか立ち上がると満天の星に彩られた夜空を見た。今の彼には、綺麗に輝く星でさえも、今の無様な自分を嘲笑しているかのような印象を受けた。
「……おのれ……!」
 敗因は一体何だったのか。
 彼女たちを侮っていたことか。人間を戦力として考えていなかったことか。それとも、自分が一人だったからか。
 最後の選択肢を思いついたところでフルーレティは首を横に振った。
 それが敗因にはならない。
 今までだって、自分は一人で戦うことがあった。むしろ一人で戦うことが多かったくらいだ。それでも負けたことなんて両手の指で足りるほどだし、勝った方が圧倒的に多い。
 だが彼女たちは、赤宮真冬は最後に言った。私たちの勝利だ、と。
 それは一人で戦うことしかできない、一人でしか戦ったことのない者が言えるセリフじゃない。彼女は自分の勝った理由を、仲間がいたからだ、とそう告げていたのだ。
 フルーレティは奥歯を悔しげに噛み締めた。
 負けたことよりなにより、仲間との信頼などという曖昧かつ軟弱なものに負けた自分に。そしてそんなものの強さを示した忌々しい『ヴァンパイア』どもに。
 フルーレティが怒りで暴れそうになっていると、彼の背後にふわりと誰かが降り立った。
 先ほどのフルーレティとは比べるべくもない綺麗で華麗な着地。降り立った人物を見て、フルーレティは目を細めた。
 長い黒髪を夜風に靡かせ、巨大な鎌を持った黒曜闇夜がそこにいた。
 彼女も傷は負っているものの、フルーレティに比べれば軽傷だ。傷を負っている彼女を見て、フルーレティはつまらなそうに話しかけた。
「……あなたでしたか。その様子を見れば、負けたようですね」
「……お前もな」
 闇夜の返答には相変わらず愛想がなかった。心なしか声から満ち溢れていた自信も消えているような気がする。フルーレティからしてみれば、彼女の声を聞いただけで分かる、自分は強いと思い込んでいる口調が気に入らなかったため、これはこれで不愉快さが薄れる。
「その程度の傷ならまだ私とともに戦えたでしょうに」
「そうだな。私もさっき目が覚めたところだ。こっぴどい負け方をしたものだから、早く目覚めていても、おそらく助けには行かなかったろう」
 そうですか、とフルーレティは溜息をついた。
 闇夜はボロボロのフルーレティを見て、
「……強かっただろう、お姉さまたちは」
 闇夜が真冬だけでなく、真冬とその他の人物のことも含めて聞いた。それに気付いたフルーレティは小さく頷くと皮肉交じりに、
「赤宮真冬だけなら勝ってました。あの面倒な二人さえいなければ……!」
「ということは、芽瑠も戦力に加わったということか。あの状態を見れば戦えそうになかったが」
 闇夜は校舎の中に入る前の芽瑠を思い浮かべて呟いた。よもや彼女の力と記憶が封玉によって封じられていたとは思ってもいないだろう。
 フルーレティは思い出したように闇夜に向き直る。
「そうだ。あなたに良い話がありますよ」
「……良い話?」
 闇夜は眉をひそめた。悪魔の話になど乗るつもりはなかったが、聞くのを拒絶する前にフルーレティが話し始めてしまった。最後まで聞いて、乗る価値がありそうなら乗って——いや。利用してやろうと思った。
「あなたをルシファー様に会わせてあげましょう」
 ルシファー。
 全悪魔の頂点に君臨する魔王の名前。容姿、声、性別などあらゆるものが謎に包まれており、それを知るのは悪魔の中でもごく一部。そんな悪魔の王に闇夜を会わせようというのだ。
「あの方ならきっとあなたを気に入ってくださる! もうあなたは私と手を取り、協力し合った仲……悪魔とともに『ヴァンパイア』を倒そうじゃありませんか! あなたのその孤独への、孤高の強さへの執着を、あの方はきっと好むだろう! だから——」
「それは確かに良い話だ」
 フルーレティの言葉を遮るように闇夜が言った。
 彼女は手の中で鎌の柄を器用に回しながら、笑みを浮かべているかのような口調で言葉を続ける。
「それは確かに良い話だな、ああ。悪魔の仲間か……。響きは最悪だが、真冬お姉さまに一人の強さを示せるのなら、それも是とするべきか」
「でしょう! ならこれから一緒に——!」
「——だが」
 そこでフルーレティは見てしまった。

 彼女が笑みを浮かべていなかったことを。
 彼女の口は、眼は、汚らわしいものを見るかのような鋭さを秘めていたことを。

 瞬間。
 ザンッ!! と鈍い空気を裂く音がフルーレティの耳に届いた。
 その時には彼の身体には深い傷痕が刻まれていた。他の誰でもない、目の前にいる黒曜闇夜によって刻まれた深い傷が。
 彼女は鎌の刃に黒い炎を纏わせ、それでフルーレティを切りつけた。悪魔を滅することが出来る、『ヴァンパイア』の炎で。
 ようやくフルーレティの脳が状況の把握のために動き出す。そうすると今まで感じなかった傷の痛みが急激に襲い掛かってくる。焼き切られた傷が、フルーレティの身体に言い表せないほどの痛みを与えてくる。
 闇夜に切られたことを知ったフルーレティが、憎しみに満ちた瞳で闇夜を睨み付ける。
「……き、貴様ァ……! 自分が何をしたか、分かっているのか……!? 私は、ルシファー様の直属の部下……私に手を出せば、ルシファー様の怒りを買うことに……!」
「……そんなことは知らん。私はただ、『ヴァンパイア』として悪魔を滅しただけだ」
 闇夜はフルーレティに背を向ける。
 もはやフルーレティに反撃できるほどの力は残っていない。そう判断して、彼女は無防備な背中を相手に見せたのだ。
「こんなことで、悪魔と手を組んだ私の罪が消えることはないだろう。だが、貴様が再びお姉さまたちに危害を加えさせないことは出来た。感謝するよ、フルーレティ」
 闇夜はフルーレティに視線を向けると、ひどく優しい笑みを浮かべて囁くように言い残した。
「お前と手を組んで、お姉さまと正面からぶつかり合って、お姉さまの言う二人で戦うことの強さを知れた。ありがとう」
 これで最後だ、と言わんばかりに闇夜はもう一度鎌を振るった。
 今度こそフルーレティという悪魔を滅する一振りを。最後に何か言いかけていたフルーレティだったが、今となっては彼が何を言おうとしたのかは分からない。これからも知ることはないだろう。
 闇夜は一人で満点の星が輝く夜空を見上げた。自分の名前とは違い、たくさんの光に溢れている夜空を。
「……もし、まだ私が『ヴァンパイア』として生きれるのなら……」
 闇夜は一人で呟く。誰に話しかけるでもなく、彼女の紡いでいった言葉は強く吹きつける夜の風に消えていく。
 それでもかまわず、彼女は呟く。自分に言い聞かせるように。
「……一人の強さを捨てるのも、成長に繋がるかもしれないな……」
 自嘲気味に、彼女はフッと笑みを浮かべた。
 今までの狂気じみたものとは全く別の、一番優しい笑みを。
「——契血者(バディー)を見つけるかは、また別だ」
 彼女は闇の中へと消えていく。
 次の、別の強さを求めて。憧れの赤宮真冬に少しでも近づけるように。
 黒い『ヴァンパイア』は、漆黒の夜に溶けて見えなくなった。

Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.86 )
日時: 2015/07/07 19:19
名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)



 終章


 フルーレティとの戦いを終えた翌日の学校、夏樹は珍しく仲の悪い昴と一緒に肩を並べて学校への道を歩いていた。
 翌日という表現が正しいのかどうか。実際日付は変わってしまっていたので、フルーレティ戦が終わったあとの学校ということになる。
 何故仲の悪い二人が一緒に登校しているのかというと、あの一戦のあとすぐに気を失ってしまった真冬を昴の病院に連れて行き、疲労が溜まっていたせいかそのまま病院で一晩明かしたからだ。
 おかげで教科書やノートを準備することが出来ず、夏樹は今日の授業はほとんどまともに受けられなくなってしまった。
「さすがに赤宮と白波は欠席か。まあしゃーないわな」
「当然だろ。親父が言ってた。生きてるのが不思議なくらい重傷だったって」
 真冬と涙はフルーレティ戦のダメージでボロボロだったため、身体が充分に癒えるまでは学校を欠席することとなった。二人は『絶対に行く!』などと駄々をこねていたが、包帯だらけで学校に来られても逆に困る。
 それでも二人の怪我の回復は速い方で、昴の父親の見解だと早くてあと二日程度で退院できるらしい。こういう時は彼女たちが『ヴァンパイア』であることに感謝せざるを得なかった。
「そういや、気付いたらいなくなってたな、汐王寺刹那と茨芽瑠の二人。桐澤、お前知ってるか?」
 昴の思い出したかのような質問に、夏樹は首を左右に振った。
 いつの間にか寝てしまい、起きた時にはいなくなっていたのだ。まあ刹那は学校があるし、芽瑠も披露で眠っていたため、誰にも気付かれず家に帰ったとみるのが妥当だろう。
「にしても良かったな。二人とも助けられて」
「ああ。茨芽瑠の方は結構ギリギリだったけどな」
 夏樹と昴の話す光景はそれなりに仲の良い二人に見える。
 どちらかが突っかかって、もう片方がそれに応えるかのように言い返しているだけで、普通に話す分には仲が悪いわけではない。
 すると前方に見覚えのある人影が、まるで待ち伏せていたかのように壁にもたれ掛かり、腕を組みながら立っていた。
 背中まで伸びた綺麗な金髪。右目は前髪で隠れてしまっているが、顔の半分が見えなくても端正で美人な顔立ちであることは窺い知れる。一七〇センチはあるであろう長身に、引き締まったスタイルが相まってモデルと言われても信じてしまうレベルだ。
 改めてみると、すごい人と知り合いなんだなー、と夏樹は思ってしまう。
 おそらくは自分たちを待っていたのだろう、ということを理解した夏樹は、彼女に声を掛けた。
「刹那さん、何してんですか。こんなところで」
「ん? お、おー、桐澤かー。偶然ねー!」
 白々しく視線を逸らしながら言う刹那。待ち伏せていたのが丸分かりだったが、そこはとにかく気にしないでおく。
 そこで桐澤は刹那の服装をじっと見た。
 シンプルな白い無地のシャツの上に革ジャンを着ており、下はジーンズを履いている。その服装が長身で、可愛いというより美人寄りの刹那にはよく似合っていた。
 だが、この時間帯にこの服装でいるのは可笑しいんじゃないだろうか。彼女にも学校があるだろうに。
「で、なんでそんな恰好なんです? 学校は?」
 夏樹の質問に刹那は溜息をついた。
「……あなたね、私の学校で何をしたのか憶えてないの? グランドも校舎もメチャクチャ。通えたものじゃないわよ。しばらく工事で通えないわ。その間は別の学校に通うことになるらしいけど」
 それを聞いた夏樹と昴はなんとなく申し訳ない気分になってしまった。グランドや校舎をめちゃくちゃにしたのは他の誰でもない(主に真冬と涙だが)夏樹と昴だ。刹那だけでなく、他の生徒にも多大な迷惑をかけてしまっている。
「……なんか、悪いな……俺たちのせいで」
「何言ってんのよ。そういうつもりで言ったんじゃないわ。それに、私や芽瑠を助けるためだったんだし、むしろお礼を言いたいくらいよ」
 昴はきょろきょろと辺りを見回し、
「そういえば、その茨はどうしたんだ? いないみたいだが」
「芽瑠はまだ寝てるわ。本来ならもう起きてるくらいの時間なんだけど、疲れが溜まってるみたい」
 刹那は不意に顔を俯かせた。
「……私、全然知らなかった……。芽瑠はあんな化け物と戦う力を持ってるのね。それに、あんな恐ろしい相手と、これからも戦わなくちゃいけないなんて……」
 刹那は芽瑠のためだったらなんだってする覚悟はあった。
 だからこそ、困っている彼女の頼みを聞き入れて彼女の契血者(バディー)となったのだ。だが、それも今になって考えれば軽率な考えだったかもしれない。もっと、自分なんかより強い人と契約すれば、芽瑠も——。
「……私みたいな弱い奴と契約して、芽瑠はきっと後悔してるんじゃ……」
「それはきっとないと思うぜ?」
 刹那の言葉を遮ったのは夏樹だった。
「俺、以前に茨と会ってるんだよ、赤宮と一緒に。あの時は家から出掛けて迷って、家まで送ってやっただけだし、今とは違って記憶と力も戻ってなかったけど……」
 それでも夏樹は言い切れる。
「茨はアンタと契約したことを後悔していない。俺と赤宮にアンタとのことを話している茨は、すごい幸せそうだったぜ」
 そう言って笑う夏樹。
「……じゃあ、あの時芽瑠が言ってたお兄ちゃんとお姉ちゃんって……」
 刹那はあの日芽瑠が話していたお兄ちゃんとお姉ちゃんの正体を知った。やっぱり今でも優しいんだな、と心の中で呟き、
「……ありがとう、桐澤」
「だから気にするなって。それにフルーレティは俺たちとしても倒しておきたい相手だったしな」
 自分が言ったのはそれも含めた、諸々のことだったのだが、微妙にズレている夏樹の返答に思わず刹那は笑ってしまう。
「でも、本当にごめんなさい。あなたたちにはすごく迷惑をかけちゃった」
「気にすんな。赤宮も涙も全然平気だ。今日なんて学校行こうとする俺にアイスを買わせようとしやがったんだぞ」
 昴がそう言うと、おそらく涙に便乗して真冬もお願いしたに違いない。まあ自分から買って来て、と頼むような性格じゃないから、涙にそそのかされて、昴の同意の上で頼んだんだろうが。
「……すまん、朧月。あとで金返すよ」
「……いらん。しかし六個も要求してくるとは思わなかった。意外と大食いなんだな」
 あの時は驚いたぜ、と昴が感想を述べていた。
 刹那はそんな二人を眺めながら、くすっと笑った。
「……でも、私としてはなにかお礼をしなくちゃ気が済まないわ。だから」
 とん、と夏樹の胸に拳を当てる刹那。その意味が分からず夏樹が刹那を見つめると、刹那は女性でも惚れてしまいそうな笑みを浮かべながら、
「これから、何か困ったことがあれば私に相談しなさい。私も芽瑠も、あなたたちのためなら惜しむことなく力を貸すわ。お互い契血者(バディー)同士、頑張りましょう」
 その言葉を受けて、夏樹と昴は顔を見合わせると小さく笑って、
「ああ。そん時は頼むよ、刹那さん」
「俺たちとしても仲間が増えるのは嬉しいしな」
 そう言って夏樹と昴は学校へと向かい出した。
 しばらく二人の背中を見送っていた刹那は、もう少し二人と話してたいという気持ちを抑えながら、口元に手を添えて大きな声で二人の名前を呼んだ。
「夏樹ー! 昴ー!」
 いきなり名前で呼ばれた二人は驚いて振り返る。
 刹那は特に言うことを決めてなかったため、何を言おうか悩んでしまい、ここは学生らしくいこう、と咳払いをして、
「勉強。頑張りなさいよー」
 そう言って小さく手を振ると、彼女は背を向けて自分の家へと戻っていった。
 しばらく刹那の後姿を眺めていた夏樹と昴は、顔を見合わせることもなく吹き出すと、踵を返して再び学校に向けて歩を進める。
「そう言われちゃ仕方ねーな」
「ああ。今日も一日頑張りますか!」
 二人の少年は、今日も始まる日常に向かって歩き出す。

Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- ( No.87 )
日時: 2015/07/07 19:55
名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)



 あとがき


 みなさんこんにちは、または初めまして竜野翔太です。

 今回は『ブラッド・フレイム-Blood Flame-』瑠璃色の光をお届けしました。
 前回と比べてちょっと長いと思ったそこのあなた。気のせいじゃありません。前回より長い上にフルーレティ戦がやたらと長引いてしまって、自分でも書きながら『早く終わんないかなー』などと思ってました。
 今回はちょっとだけ女性キャラクターを意識して書きました。というのも、刹那と芽瑠という二人がメインだったので、こうなったら他の女性キャラクターも出番増やそう、と思ったんです。
 ほら、『キューティーズ』のメンバーとか、真咲のお姉ちゃんとか、薫ちゃんとか。前半しか出なかったけど、結構出番が多かったと思います。
 あとは後半で活躍した闇夜ちゃんとかね。
 彼女は作者もお気に入りなので、いつか再登場させられればな、と思っています。その時は、契血者(バディー)が傍にいればいいですね。
 さて、今回のラスボスフルーレティですが、彼は本当にいると言われていた悪魔です。『地獄の副将』という肩書もあったようで、氷を操る能力もあったようです。
 実際に分厚い氷の鎧に覆われたり、というのはないと思いますが、悪魔なんであるかもしれないですね(笑)
 ちなみに作中で言及はされていませんが、夏樹と刹那さんは中学時代の先輩と後輩です。この辺りはいつか作中で補填させていただきますね。

 では今回はこの辺りで。
 また次回にご期待ください!



プロフィール
汐王寺刹那
誕生日/6月20日 身長/170㎝前後 体重/58㎏
・背中までの金髪を持った美少女。モチーフは『なんちゃってヤンキー』。
・『瑠璃色の光』篇の主人公の一人。
・高校二年生で、学校近くのアパートで一人暮らしをしていた。
・ある日芽瑠を拾い、彼女の親代わりとなると同時に、彼女と契約し契血者(バディー)となる。
・元は品行方正な優等生だったが、不良の喧嘩に介入したことをきっかけに、不良をまとめ上げるリーダーになってしまった。
・今ではその不良たちを更生させようと、テスト勉強に付き合ったりしている。
・面倒見がいい性格で、下級生からも慕われている。
・家事全般は得意で、料理の腕も相当高い。
・夏樹とは中学校の先輩後輩関係。
・フルーレティ戦後、夏樹たちに協力することを約束する。

茨芽瑠
誕生日/4月23日 身長/138㎝ 体重/28㎏
・肩辺りで切り揃えられた桃色の髪に、頭頂部から伸びた触角のような二本の垂れ下がったアホ毛が特徴の美少女。モチーフは『ロリっ子戦闘員』。
・『瑠璃色の光』篇のもう一人の主人公。
・真冬や涙と同じ『ヴァンパイア』で、二人より一、二歳年下。
・当初は封玉によって力と記憶が封じられており、必要最低限な力と記憶しかなかったため、幼さが顕著になっていた。
・ある日刹那に拾われ、彼女と契約を交わす。
・力と記憶が戻ってからは、年相応の言葉づかいや性格を取り戻す。
・夏樹をお兄ちゃん、真冬をお姉ちゃん、と呼んでおり、懐いている。
・力と記憶が戻ってからは付近の中学校に通わせよう、と刹那は考えているらしいが、芽瑠が苛められないか、変な男子に引っかからないか、などと不安要素が次々と出ているため、未だ検討中。
・フルーレティ戦後、夏樹たちと協力することを約束する。

Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame-(第二章 完結) ( No.88 )
日時: 2015/07/24 03:32
名前: 竜野翔太 (ID: 6k7YX5tj)

 ブラッド・フレイム-Blood Flame-

 『朱色(あけいろ)の誘惑篇』


 序章


 朱色の髪を持った少女がいた。
 可愛いというよりは、美しいと形容されるような端正な顔に、引き締まった身体と豊かな胸が彼女の美しさを際立たせていた。
 さらに彼女の自慢である朱色の髪が、陽の光によって炎のように煌めく長く綺麗な髪も相まって、男女問わず見る者全てを魅了していた。
 そんな彼女は恋愛に興味があった。
 だが、両手の指では足りないほど男性から交際を申し込まれても、彼女は全てを断り続けていた。
 付き合う相手だからこそ真剣に選びたいし、少し大袈裟かもしれないが、身も心も捧げてもいいような相手がいい、と思っていたりもする。
 交際を申し込んできた相手といえば、誠実そうだが少し頼りなさそうな男性であったり、顔はいいが軽薄さがにじみ出ている男性であったり、どちらも文句無しだが気が合わなそうだったりと、彼女の好みに合う相手は現れなかった。
 そんな彼女はある日、運命的な出会いを果たす。
 それは彼女が本屋に立ち寄った時のことだった。
 勉強に必要な参考書を探していき、気になったものを見つけた。それを取ろうと手を伸ばすが届かない。背伸びをしても少し足りない。ジャンプして取るのもカッコ悪い。
 高いところにある本に悪戦苦闘していると、不意に後ろから伸びた手が気になっていた本をひょい、とさらっていく。
 その本欲しかったんですが、と言おうと振り返った彼女に、後ろから本をさらっていった人物がその本を少女に差し出してきた。
 これでよかったのか、と聞く相手に、彼女は本を取ってくれたんだと気が付いた。
 礼を言おうと顔を上げた彼女は、言葉を失ってしまった。
 普通の、どこにでもいそうな少年だった。
 年は少女と同じくらい、高校生だろう。くせ毛気味の黒髪に三分の二ほどしか開き切っていない瞳。身長も体型も男子高校生の平均で、特にこれといった個性が見つからない少年だった。
 だが彼女はその少年に視線を奪われていた。
 自分の意識が周りから隔絶され、その少年に集中するのが分かる。頬が紅潮し、熱を帯びていくのを感じる。胸の鼓動が早くなり、息をするのも忘れてしまっていた。
 どこに惹かれたのか分からない。だが、少女は初対面の少年をずっと見つめていた。
 少女は差し出された本を手に取り、大事そうに抱えながら小さな声でお礼の言葉を告げる。もう少し大きな、はっきりとした声を出したつもりだったが、自分でも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だった。
 しかし少年は優しく笑って『気にすんなよ』と言って軽く手を振り去っていった。そんな彼の背中を見つめながら、見えなくなっても去っていった方をじっと見つめながら、少女は彼が取ってくれた本を抱き締める。

 朱鷺綾芽(ときあやめ)は、この日初恋をした。

Re: ブラッド・フレイム-Blood Flame- 第三章開炎 ( No.89 )
日時: 2015/07/26 23:19
名前: 竜野翔太 (ID: 4/G.K5v4)



 第一章 妖しき接触


 1


 今日は久し振りの学校だ。
 そういう理由で、赤宮真冬と白波涙の学校へ向かう足取りはどこか楽しげだ。
 フルーレティとの戦いで重傷を負った彼女たちは、涙の契血者(バディー)である朧月昴の病院に入院していたのだが、『ヴァンパイア』という特殊な存在であるためか、傷の回復が早く、入院したのも三日程度で済んだのだ。
 しかし少し様子を見るためにもう二日休暇を取り、実に五日ぶりの学校となる。
「しっかし驚いたな。ホントに何事もなく退院するとは」
 そんな真冬と涙を見ながら、特に特徴のない黒髪の少年は呆れながら呟いた。
 入院した時、少しは心配していたのだが、当の二人はというと、病院食をもりもりと食べ(真冬に至ってはおかわりも要求していた)、入院から十時間経った頃には普通に歩けるようになったらしいし、見舞いやって来た刹那と芽瑠の四人でガールズトークが盛り上がったらしい。
 今思えば心配しているのが馬鹿らしくなってくるほど、実に充実して楽しそうな入院生活を送っていたそうだ。
「でも看護婦の人は喜んでたぜ。病院食をあんな美味しそうに食べる人は初めて見たって」
 そんな夏樹に昴は思い出したように言う。
 本来、患者の健康を気遣って作られる病院食は塩分が控えめだったり、美味しいという印象は受けないが、真冬と涙があまりにも美味しそうに食べてくれるため、看護婦さんは二人の食器の回収時にはウキウキしていたらしい。
「まあ赤宮はよく食うからな。病院食でも満足しただろうさ。にしても、白波も美味しそうに食べてたってのは少し意外だな」
 夏樹の勝手なイメージだが、涙は一番そういうのにはうるさそうな印書がある。
 きっと彼女が姑になったら『味付けがなってない』だの『洗濯物の畳み方が汚い』だの嫁の気に入らないところをネチネチと細かくしてきそうなイメージがあった。今の彼女が我儘だからそういうイメージが定着してしまっている。
「意地悪なところもあるが、基本素直な奴だからな。そういうところもあるが、お世辞は言わない奴だ。だから本当に美味かったんだろうぜ」
 常に一緒にいる昴だからこそ、気付けた涙の一面だ。
 それを聞いた夏樹は意外そうな口調で、
「へー。案外ちゃんと見てるんだな。白波のこと」
 そう言われて昴は急にハッとして、
「……そうだな。俺、よく見てたんだな、涙の奴のこと」
 どうやら自分でも無意識に彼女を気にかけていることに気が付き、少し戸惑っているようだ。
 夏樹はふと考える。
 自分は真冬のことをどう思っているのだろうか、と。
 それと同時に、彼女に自分はどう思われているのか。
 もちろん嫌われてはいないのだろう。だが、彼女が契約する時に言った言葉——あれが本心なのか冗談なのか分からないし、最近彼女が密着してくることが、なんとなく多い気がする。
 自分に対しての警戒心が薄れている、としたら悪い気はしないのだが、それならなんとなくがっかりしたような、少し寂しいような、そんな上手く言い表せない気持ちが芽生える。
 夏樹としても、真冬のことはもちろん嫌いではない。ただ、薫や梨王といった今まで身近にいた女子とは明らかに違う彼女に、ドキッとしたりすることもあるし、不意に見せる笑顔には正直やられてしまう。
 不意に見せる笑顔や、ちょっとした仕草も可愛いと思うことがあるし、性格なども好感が持てる。
 だが、この好感は『好き』という言葉に変換してもいいものなのだろうか。
 『嫌いではない』は『好き』とイコールにはならない。かといって、『好きじゃない』わけじゃない。
 自分でも分からない感情。今まで抱いたことのない感情。
 不明瞭な自分の感情にもやもやしていると、
「おーい! 昴ー、夏樹くーん! 何してんのよー!」
 前で待っている涙が二人に向かって叫んでいた。
 どうやら昴と二人で話しながら歩いている内、楽しげに歩く真冬と涙と差が出来てしまっていたようだ。涙は腰に手を当てて頬を膨らませているが、真冬だけは穏やかな表情で待っている。
 声に急かされた昴は、小さく手を挙げて、
「ああ、今行く」
 昴がそう返事をすると、少し歩く速度を上げた。
 今考えても答えは出ないだろう、と。そう考えながらも、いつかはこの気持ちの答えも出さなければいけない、と思いつつ、昴と一緒に真冬と涙に駆け寄っていく。
 そんな男子に溜息をつきながら、涙は呆れたように呟く。
「……まったく」
「まあまあ。久し振りの学校で楽しみなのも分かるけど……」
 そんな涙を真冬が苦笑いしながらなだめる。
 しかし涙は腕を組んで、ふんと鼻を鳴らす。
「別に学校が楽しみなわけじゃないわよ」
「え? でも、随分と楽しそうに歩いてたけど……」
 指摘された涙はフッとカッコつけたように笑った。
「そりゃそうよ。久し振りに学食が食べれるのよ? あの超絶美味しいカレーが食べられるのよ? そりゃ楽しくもなるわよ」
「……そっちだったんだ……」
 でも一度食べてみたいなあ、と思ってしまう真冬。
 真冬は『キューティーズ』の面々や薫と会えるのが楽しみだったが、この数日間の休みでしばらくもみくちゃにされるだろうなあ、と苦労しそうな病み上がりを予想していた。
 そう考えると、真冬は今まで少し疑問だったことを質問してみる。
「そういえば、涙ちゃんとはクラスが違うからよく分かんないんだけど……わたしたち以外にはどんな友達がいるの?」
「えっ!?」
 聞かれた涙はぎくりとしたように肩を大きく震わせた。
 それから誤魔化すように目を泳がせながら、真冬から視線を逸らしていく。
「あ、あー……別に? 普通よ? 普通に、友達と、談笑を……」
 徐々に声が小さくなっていく涙。
 だが真冬は予想以上に食いついてきた。
「へー! どんなこと話してるの?」
 大きな瞳をキラキラと輝かせながら、身を乗り出して聞いてくる真冬。
 普段涙と『ヴァンパイア』関係のことしか話さないため、彼女が別の友達とどういう内容で話しているか気になったのだ。彼女の日常を知らない真冬には興味深いのだろう。
 問い詰められた涙は、あくまでも真冬から瞳を逸らし続ける。
「……え、んーと……と、とりとめもない内容よ? ほら、今思い出せないくらい他愛ない、世間話を、ね……?」
「そっかあ。涙ちゃん友達多そうだもんね。いいなあ」
 笑顔でそう言ってくる真冬に、涙は急に思い出したように上擦った声で『あっ!』と声を上げた。
「あ、あたし、先行くね!?」
「え、なんで?」
「昨日、友達からメールで……日直だからって……」
「そっか。じゃあまたねー!」
 慌てて走っていく涙に真冬は元気よく手を振る。
 丁度その頃、夏樹と昴が真冬の元に辿り着いた。
「……涙の奴、どうしたんだ?」
「あ、うん。日直だからって。昨日友達からメールが来てたみたいで」
「……友達?」
 真冬の言葉に昴が眉をひそめた。
 そんなことに気付かない真冬は、涙が答えてくれなかったことを同じクラスの昴に尋ねた。
「ねえ! 涙ちゃんって教室で友達とどんなお話してるの!?」
「それ俺も気になるな。アイツが普通の会話してるとこなんて、俺ら見ないからな」
 夏樹も真冬の言葉に乗って昴に問いかける。
 そういうことか、と昴が何かを理解したように溜息をつくと、
「ああ、また今度な。俺もよく憶えてないから、今日の内容でも、しっかり記憶しておくよ」
 そう言うと、昴は涙の後を追うように駆け足で去って行った。
 ふと目を合わせてしまう夏樹と真冬。
 さっきまで真冬に対して色々なことを考えていたためか、目が合っただけで顔が赤くなってしまい、不意に目を逸らしてしまう。
「……夏樹くん? どうかした?」
「いや……なんでもない。ほら、俺たちも行こうぜ」
 目を逸らしながらだったが、そう言った夏樹に真冬はこくりと頷いて二人で並んで学校へと向かって行く。


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