コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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えっ、今日から私も魔法使い!?【参照4000突破感謝】
日時: 2016/05/20 22:32
名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)

初めまして!雪兎と申します。
小説を書くのは初めてですが、がんばります!以後、お見知りおきを。
この物語は、学園×ファンタジー×恋愛モノです。
最初に言っておくと、少し逆ハーレムっぽくなってしまうかも・・・。
それに、小説ド素人の中2が書く小説ですのでグダグダになったり
言葉が足りなかったりすると思います。それでもいいよ!という
心の広い方は、あらすじや世界観などの説明をご覧ください。

世界観について
基本的に現代社会(私たちの世界)に存在している食べ物、季節ごと
の行事(例 ハロウィン)などがストーリー中に出てきます。ご了承ください。

あらすじ
主人公のフィリア・ヴァレンタイン(15歳)は、魔法が使えないごく普通の女の子。ある日、なぜか家柄が良く、お金持ちの子供たちが集まる私立セント・ブラックウェル学園から「奨学生として、一ヵ月後からこの学園に通うこと」と書かれた手紙が届く。でも、貧乏で魔法も使えない私がどうして?

では、次から魔法やキャラクターについての説明をします。
長くなってしまいすみません!

目次

第一話>>6 第一話・後編>>10 第二話>>17 第三話>>22 第四話>>24 
第四話・後編>>36 第五話>>43 第六話>>45 第七話>>53 第八話>>62
第九話>>68 

【対抗戦編】
第十話>>75 第十話・後編>>78 第十一話>>79 第十二話>>80
第十三話>>81 第十四話>>82 第十五話>>84 第十六話>>85
第十七話>>88 第十八話>>89 第十九話>>90 第二十話>>91
第二十一話>>92 第二十二話・前編>>93 第二十二話・後編>>95 
第二十三話>>96 第二十四話>>97 第二十五話>>98 第二十六話>>107 第二十七話>>109 第二十八話>>110 第二十九話>>111 第三十話>>115
第三十一話・前編>>116 第三十一話・後編>>119 第三十二話>>120
第三十三話・前編>>121 第三十三話・後編>>122 第三十四話>>126
第三十五話>>127

第三十六話・前編>>128 第三十六話・後編>>129

【女神像奪還作戦編】
第三十七話>>130 第三十八話>>131 第三十九話>>133 第四十話>>134
第四十一話>>135 第四十二話>>136 第四十三話>>137 第四十四話・前編>>138
第四十四話・後編>>141 第四十五話>>144 第四十六話>>145,>>146
第四十七話>>147 第四十八話>>148 第四十九話>>149

第五十話・前編>>150 第五十話・後編>>151 第五十一話>>152
第五十二話>>153 第五十三話>>154 第五十四話>>155

【何でもアリな体育祭編】
第五十五話>>156 第五十六話>>157 第五十七話>>160 
第五十八話>>161 第五十九話・前編>>162 第五十九話・後編>>163
第六十話>>165 第六十一話>>166 第六十二話>>167 第六十三話>>169
第六十四話>>169 第六十五話>>171 第六十六話・前編>>178
第六十六話・後編>>179 第六十七話>>180 第六十八話>>181
第六十九話>>185 第七十話>>188 第七十一話>>189 第七十二話>>190
第七十三話>>191 第七十四話>>199 第七十五話>>200 
第七十六話>>201 第七十七話>>204 第七十八話>>207 
第七十九話>>208 第八十話>>209 第八十一話>>210 第八十二話>>211
第八十三話>>212 第八十四話>>213 第八十五話>>215 

第八十六話>>216 
 
【波乱のお見合い編】
第八十七話>>217 第八十八話>>218 第八十九話>>219 第九十話>>223
第九十一話>>228 第九十二話>>232 第九十三話>>234 第九十四話>>241 
第九十五話>>244 第九十六話>>247 第九十七話>>253 第九十八話>>260
第九十九話>>266 第百話>>267 第百一話>>269 第百二話>>272 第百三話>>273

第百四話>>275

              〜☆〜


世界観について>>1 募集について>>5 フィリアについて>>4
ジークについて>>35 召喚魔法と使役魔法について>>67
リリアン、リュネットについて>>168 
エリオット、カイルについて>>170 ギルバート、ハクについて>>177

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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.150 )
日時: 2015/02/11 15:19
名前: 雪兎 (ID: jM89U6Tv)

更新大変遅くなり、申し訳ありませんでした!

それでは、本編をどうぞ。↓

第五十話・前編

今日は、土曜日。

あれから少し時間がたったけど、みんなは相変わらず元気に過ごしている。

女神像は取り戻せなかったけど、なんにせよ、全員無事に帰ってこれてよかったなあ。

なんて、たまーに思ったりする。


…それより、今日は予定もないし、何をしようか?

そう考えつつ一人中庭を歩いていると、人だかりが目についた。

「ん?何だろ。」

よく見てみると、集まっている全員が女子だった。そして、その輪の中心にいるのは……

「あ、カイル君」

なるほど!それなら、女子が集まるのも納得だな。たぶん、今日は誰が一日カイル君と過ごすのか、揉めてるんだろう。

人気者は大変だなー、と思いつつ、ぼーっと眺めていると。

困ったような顔のカイル君と、目が合った。

「あっ…」

しまった。

カイル君は、取り巻きの女子達に何か言うと、そのままこっちに向かってきた。

や、やばっ…!じっと見つめてたから、気を悪くしたのかな…?

うつむいていると、カイル君の靴が視界に入った。思わず身を硬くする。

だけど、頭上から降ってきたのは優しげな声だった。「こんにちは、フィリア。いい天気ですね」

「えっ!?…は、はいっ。」

顔を上げると、カイル君がぷっと吹き出すところだった。「何で、敬語なんですか」

あはは、と笑ってごまかす。「あっ。そう、そうだよね」

「まあ、僕に言われてもって感じでしょうけどね。……それにしても、やっぱりフィリアは面白いです」

「え?」

そう言うとまた、カイル君は「ふふっ」と笑った。…恥ずかしいけど、その横顔の美しさに思わず見とれてしまった自分がいる。

「…どんなことでも頑張るし。ちゃんと、僕の目を見て話してくれる。他の子とは違う、あなたは…素敵な女性だと思います」

「え……」

カイル君が、そっと私の頬に触れた。


ドキンッ。


心臓が跳ね上がる。うわっ、近…!

至近距離から綺麗な顔に見つめられると、こうなるのか!

「えっ…あ、あの…っと」

なんだか甘い香りがして、それがさらに心臓をバクバク言わせる。

「あっ、あの……!」

え、何で!?体が動かない。

「それで、どうでしょう。これから、一緒にお茶でも…」

「たーのしそうだなー、お二人さぁん。俺も混ぜてよ?」

!!

「…ジーク?」

やっとそれだけ、声が出た。

手を頭の後ろに回し、木に寄りかかっていたジークは、ゆっくりと
こちらに向き直った。

「ジーク。いたんですか。」

「ああ。『こんにちは、フィリア。いい天気ですね』あたりからな」

って、ずっと居たんかい!

……。

えっと、何だこの状況は?

カイル君とジークは。笑顔だけど目が全然笑ってない。

それに、喋っている間もお互いの顔から一回も目を逸らしてない。

き、気まずい。

「これから僕たち、いっしょに出かけるつもりなのですが。なんの御用でしょう?」

「お前、フィルに触ったな。触ったよな?よし死刑」

…おまけに、全然会話がかみ合ってないし!

ここは、私がこの場をっ。

「え、え〜と、庭に二羽にわとr……」

「それは、違う。…フィリアは今日、ボクと…買い物、行く約、束」

「「え?」」

いきなり、後ろから声が。

って、

「リュネ!?」

振り向くと、いつもの眠そうな顔が、そこにはあった。

               次回、第五十話・後編。お楽しみに☆





























Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.151 )
日時: 2015/02/14 21:17
名前: 雪兎 (ID: jM89U6Tv)

第五十話・後編

「えーっと……」

なんか、ますます変な状況に…。

あれから、なぜか私達の周りにはちょっとした人だかりが出来つつあった。…圧倒的に女子が多いけどね。


「えー、ちょっと何アレー?」

「見て、ジーク様とカイル様がご一緒にいらっしゃるわ!」

「なんか言い争い?もしかしてあの女の子を巡って…」

「きゃー、三角関係だわっ。」

「あれ、でも後ろにもう一人女の子がいるわよ?」


……と、皆さん勝手な妄想をなさっているご様子で。

うー、困ったなあ。

ジークのことだから、「っしゃ、決闘だァ!」とか言い出しそうだし。

その時、耳元に何かささやかれた。

「……こっち。」

「えっ?」

振り向くと、リュネが私の手を取っている。

そして、何も言わずに走り出した。

「え、ちょっ…」

私は、少しコケそうになりながら引っ張られ、否応なしにリュネの後を付いていくしかないのだった。


…リュネって、結構握力強いのね。

              ☆

「取り残されましたね。」

「ああ、すっかりな。」

言い争いの種が急に消えたため、ジークとカイルは気まずい雰囲気になっていた。

「ったく、あのおてんばはよ。…まあイイや、飽きたからハクでもいじくって来っかー。」

と、ジークはカイルを一瞥してから、校舎の方へと去っていった。

一人になったカイルは、ぽつりとつぶやいた。

「まあ、また次の機会にでも。…作戦、考えておかなきゃ、ですね」

              ☆

「リュネ、ありがとー!…なんかちょっとゴタゴタしててさ。困ってたんだよねえ。」

私は、リュネに連れられ、校舎の外へと足を運んでいた。

休日は、門限までに帰れば町に出てもいいことになっている。まあそれでも見回りの先生は結構いるし、行っちゃいけない場所も数多くあるけどね。

「で、私達って買い物行く約束してたっけ…?」

もし忘れていたのなら、結構失礼だと思うのだが。

でもリュネは、涼しそうな顔でこう答えた。

「…今日、誰かに…付き合ってもらう、予定だった。…たまたま見かけた、から…それだけ。」

「そ、そっか」

私じゃなきゃダメってことでは無かったのね。うーん、残念。

まあとにかく、忘れてたわけじゃなくて良かった!

「それで、今日は何を買いに行く予定なの?」

「…髪留め。」

髪留め?何か思ったより乙女らしいような。あっ、そんなことないか。

「確かにリュネ、最近前髪伸びてきたもんねー。じゃっ、どこ行こっか?」

ふふ!女友達とこうして買い物行くなんて、何年ぶりかなあ。

…まあ私はお金ないから、何も買えないけどね。

とにかく、今日は楽しまなくっちゃ!

                 次回、第五十一話。お楽しみに☆








Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.152 )
日時: 2015/02/21 15:28
名前: 雪兎 (ID: jM89U6Tv)

少し時間が空いてしまいました。すみません!

テストという名の泥沼にはまっておりました……疲れた。

こんなことを語っててもしょうがないので、本編をどうぞ!



第五十一話

昼前の商店街は、活気にあふれていた。

昼食の買出しに来た主婦、カフェを探すカップル、やや疲れた表情のおじさん。

こんなに人が集まるとこ、学園以外では久しぶりだなあ。

「ねえリュネ、買うお店は決めてるの?」

「……まだ。でももう、見つけた」

「え?」

リュネは急に立ち止まると、立ち並ぶお店の一つを指差した。

あっ!

そこには、小さな雑貨の屋台があった。

銀の装飾がついたネックレスや、ブレスレットなどがぶら下がっている。

「え、でもリュネ、なんかさ…」

なんか、めちゃめちゃ怪しいんですけど!

カウンターは、人一人がやっと座れるくらい狭くて、中もやけに薄暗い。
そんな不気味な雰囲気のせいか、お客もまったくいないみたい。

「あそこ、行く。…行く」

えっと……。

少しためらったが、リュネが目をキラキラさせながら私の服を引っ張るので、行くことにした。

ぼったくられたりしないかなぁ…?

              ☆ 

「あ、あの〜、すみませーん」     

私達が店の前に立つと、「いらっしゃい」としわがれた声が帰ってきた。

店主は茶色いフードを被ったおばあちゃんで、顔が半分くらいしか見えないのでちょっと怖い。

そこで改めて、私は商品をじっくりと見てみた。

「わあ…」

きれい。

店の雰囲気とはそぐわず、商品は目を見張るくらい美しかった。

売っているのは全て銀細工で、高価な宝石は一切使われていない。

それでいてとても繊細で神秘的で、気品があって。

隣を見るとリュネも、商品たちに目を奪われていた。

私は、疑問に思ったことを聞いてみることにする。

「この銀細工、おばあさんが作ったんですか?」

おばあさんは、ふぇっふぇっと笑って答えた。「…さあ、どうかねえ。」

さあ、って……。

でも、確かにそんなこと、どうでもいいのかもしれない。

心を奪われるほどいい作品を作る人に、悪い人はいないもんね!

ちょうど、リュネも買うものを決めたようだった。「…これ。くだ、さい」

リュネが差し出したのは、スミレの花の形をした髪留めだった。

「かわいい!すごくリュネに似合ってるじゃない。」

「…うん。…おばあちゃん、お勘定、いくら…?」

でもおばあさんは、あっさり言った。「…ただで良いよ、持ってお行き。それに、この子にはねえ…」

そこまで言うと、おばあさんはわずかに顔を上げた。灰色の瞳が覗き、銀のようにきらりと光った。

「悪いものを退ける力があるんだよ。……危険な目にあった時、その子がきっと守ってくれるだろう。」

悪いものを、退ける力……。

リュネは、おばあさんから目を離さずに言った。「…あり、がとう。」

              ☆

「さっきのおばあさん、不思議な人だったねえ。」

「うん。」

リュネはよっぽど気に入ったのか、もう髪留めをつけていた。

それにしてもあのおばあさん、何で「危険な目にあった時」なんて言ったんだろう?

そんなのまるで、これから私達が……。

…私の胸騒ぎは、どんどん大きくなっていた。

                 次回、第五十二話。お楽しみに☆



Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.153 )
日時: 2015/02/25 20:16
名前: 雪兎 (ID: /4zHEnTD)

第五十二話

「…あれー、おっかしいなあ。」

メインの用事を済ませ、それから少し商店街をぶらぶらした後、私達は帰る事にした___のだが。

「もしかして。道、迷った?」

……。

やっばいじゃん!!

数秒の沈黙の後、私は大きく頭を抱えた。

そうだった…。私、こんなトコ来た事ないから道わかんないし。リュネも箱入りお嬢様って感じで、庶民の町なんか詳しくないはずだし!

リュネは、どうしたの?という感じで小首を傾げている。あああ、なんかもう、帰れなかったらどうしよう…!

ただでさえ気弱な私である。追い討ちのように胃がキリキリ痛み出した。

「ううう…。」

思わずうずくまった時だった。

「ねえねえ、そこの彼女達ぃ。何してんの?今ヒマ?」

「え?」

振り返ると、ガラの悪そうな三人組の男達が立っていた。


……果てしなく嫌な予感がする。


「お?よく見れば、お前らあん時の生意気な下級生じゃん。」

こいつら、前にリュネに絡んでた不良の先輩!

一人が、「へへっ」と嫌な笑いを浮かべ、リュネの顎をつかんだ。


…案の定リュネは、露骨に嫌そうな顔をしてその手を振り払ったわけで。


「…あ?んだテメ、優しくしてればいい気になりやがって。」


うわあああああ…

分かってました、分かってましたけども!


最悪だ、なぜこの子はこんなにも不良と縁があるのでしょう?教えてください神様っ。

「へっ、年上の怖さ思い知らせてやるよっ!」

もう一人の男がいきなり出てきて、リュネに殴りかかった。

えっ?やば…っ、

「リュネ!!」

その時。

キィィンッ!

ガラスを床に落としたときのような音が響くと、なぜか男は拳を振り上げた状態で固まった。

「…は?んだよ…。」

何が起こったの?

よく見てみると、リュネの頭にあるはずのものがなかった。粉々に砕けた銀の髪留めは、地面でキラキラ光を反射していた。

そして、それを見たリュネの顔は、どんどん強張っていき……。

…やばい。

リュネが純白のマントに手を入れる。そして、カチャリという音。

…ますますやばい。

もしリュネが、武器を持ってきていたのだとしたら。

そして聞き間違いでなければ、今のは安全装置をはずした音…!

「ま、待ってリュネ、気持ちは分かるけど」

「あ?何言ってんだよ」

止めようとした私の声に反応した男が、手を伸ばしてくる。

い、嫌…!

そしてそれを見たリュネはさらに眼光を鋭くし、今まさに拳銃を抜き放ち___。

「おい、そこで何してる!」


よく通る声が、細い路地に響いた。


「!!」

立っていたのは、白髪に金色の瞳の少年。

ま、まさか、あれは…!


…って、誰?


                 次回、第五十三話。お楽しみに☆ 



Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.154 )
日時: 2015/03/01 18:58
名前: 雪兎 (ID: /4zHEnTD)

第五十三話

そこに立っていた少年は、まるで薄暗い路地に差す一筋の光のようだった。

長めの白髪を後ろで一つに束ね、白いジャケットの襟元には3学年であることを示す学年章がきらめいている。

そしてその金色の瞳が放つ鋭い眼光は、三人の不良たちを順番に捕らえた。

少年の手が、装備していた二振りの太刀と、一振りの小太刀に伸びる。


「…俺、短気な方なんだが」


その一言。

たった、その一言だけで、空気が凍ったようだった。

ゾクリ。

敵意を向けられているのが自分達ではないと分かっているのに。

私は、体の震えを止めることが出来なかった___。

この人は…強い!

「…おい、あいつまさか」

不良の一人が、ぽつりと呟く。

その言葉の意味を理解したらしい不良たちは、悲鳴も上げずに走り去っていった。

……。


「ふう。」


静寂を切り裂いたのは、少年のため息だった。

そして少年は、私達の前に立つと、軽く片手を上げた。

「や。怪我とか無い?」

えっ。

「あ、あ…ありがとうございます!無いと思いますたぶん」

さっきまでとのオーラの違いに困惑し、思わずテンパってしまう。
この人、三年生だよね?手も足も長いし、なんかかっこいいなあ。

「えっと、その。お名前、教えていただいても良いですか…?」

私がおずおず聞くと、先輩は笑って答えた。

「ああ。俺はフリト・ノイモーント。よろしく」

「は、はい!よろしくお願いします」

…。

気まずい。

どうしよう、なんか話すことは…!

あっ。

私は会ったときから気になっていたことを、何気なく言った。

「なんか、リュネ…あ、この子は私の友達のリュネットって言うんですけど。フリトさんて、リュネによく似てますよねー…なんて。」

はは、と笑う。なんとか会話はつなげたか…。

私の言葉に、フリトさんはゆっくりと、リュネットの方を見た。

___と、その瞬間。

フリトさんの目がわずかに見開かれた。「君は___。」

……え、何?

私なんかまずいことでも言った、のかな…?

リュネットは、割れた髪留めのことを気にしていて、フリトさんのことは興味なさげだった。

その様子を見て、フリトさんは呟いた。

「…やっぱり、な。」

え?

「__じゃあ、俺もう行くから。気をつけろよ」
背を向けて歩き出すフリトさんの背中に向かって、私は頭を下げた。

「あ…、はい!本当にありがとうございました!」

その直後、リュネットが顔を上げた。

フリトさんが、一瞬だけ肩越しにこちらを振り返る。

二人の視線が重なる。___だが、お互い何も言うことは無かった。

              ☆

その次の日。

今日も休みなので、私は一人商店街に向かった。

いろいろあった昨日の事を思い出しながら、お目当ての店を探す。

「あ、あった!」

昨日、リュネットが髪留めを買ったあの店。

私は、ちっぽけな屋台の前に立った。

              ☆

「リュー、ネ!はいっ!」

「…?……!!」

振り返ったリュネは、私の手のひらに載っているものを見て、目を丸くした。

「これ、昨日壊れちゃったでしょ。同じのは無かったんだけど、似合うかなー、って思って。」

私は昨日、壊れてしまった魔よけの髪留めの代わりを、買いに行ったのだ。
同じものは諦め、私が買ったのは月と星があしらわれた髪留め。光魔法を使うリュネにはピッタリかな?…っていう、安易な発想だったけど。

以外にも、父さんが持たせてくれた少ないお金でも、買える様な値段だった。今考えると、おばあさんが値引きしてくれたのかもしれないな。

リュネットは、キラキラした目で髪留めを受け取り、嬉しそうに頭に着けた。

「…あり、がとう」

か、かわいっ…っ!!

私は思わず、リュネをぎゅーっと抱きしめた。

                 次回、第五十四話。お楽しみに☆






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