コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- * 隣の席は一匹狼。 *
- 日時: 2016/06/12 15:46
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: 59tDAuIV)
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このたびはクリックありがとうございます!(o・ω・o)
優奈{ユウナ) と申します。
初見の方は、これからどうぞよろしくお願い致します、
常連客のお客様はこのたびもよろしくお願い致します(*- -)(*_ _)
以前まで、違う小説を執筆しておりました。
未完ですが一区切りついたので、新しく執筆することにました。
ちなみに前回の作品は「会長様専用」という小説です。
もしそちらの更新が見たい方は遠慮なくお申し付けください^^
※以下紹介文は前回のものと同一です(汗
今回が6作目の作品となります!
一作目から変化なく、相変わらず未熟ヤローです・・・。
主はタメ&呼び捨てなど全然大丈夫です!
お友達も募集しているので、気軽に声をかけてくださいね^^
+/キャスト/+
∮ 葉山 秋 ハヤマ・アキ ♀/高校1年生
引っ込み思案で気弱な女の子。三度の飯より友達が欲しい!
新生活の不安から引きこもりに。
実は明るく優しい子である性格を、霧島に引き出してもらう。
ときどき見せる、度胸ある大胆な一面も。
∮ 霧島 旭日 キリシマ・アサヒ ♂/高校1年生
秋の同級生。すぐ隣の席であるせいで、秋の面倒を見ることになる。
慣れあうのが苦手で、冷たい態度で人を突き放してしまうことも。
口が悪くも面倒見が良く、次第に秋の性格に気付いていく。
∮ 眞木 司 マキ・ツカサ ♂/高校1年生
霧島の幼馴染。サボり魔。授業に出るかは気分しだい。
ただテストの点数は良いので説教を受けることはない。
表情が薄く物静かで、周りからは何を考えているかは分からない。
周りを良く見ていて、空気が読める優等生。
キャストは今後増えていきます。
+/ルール/+
①お客様同士のケンカ、中傷はおやめください。
②チェーンメールなどは貼らないでください。
③最低限のマナーは守ってください。
+/お客様リスト/+
・はるた 様 ・きらめき 様
・かのん 様 ・かんな 様
・ぽんた 様 ・まな 様
・いろはうた様 ・ 様
・ 様 ・ 様
皆様本当にありがとうございます....!
小説を読んでくださった方は、なるべくご意見、ご感想等
残して行ってくださるとありがたいです。
更新待ちの方は気軽に声をかけてください^^
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- Re: * 隣の席は一匹狼。 * ( No.41 )
- 日時: 2015/09/09 20:59
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: nrbjfzgl)
*/第27話/*【周りの目】
次の日の朝。
あれからなんだか落ち着かないまま、私は校門をくぐった。
同じように校門をくぐる周りの人達はいつも通りで、
私の考えることなんて知ったことではないというような感じだ。
どうしてこんなにも気になるんだろう・・・
だけど、霧島くんに何か用があるのは確実・・・
「あの!」
「へ?」
どこからか呼び止める声が聞こえて後ろを振り返る。
けれど、そこには誰もいない。
「え、えっと・・・前です、前」
そんな言葉が聞こえ、また前へ視線をやる。
前方に現れたその人影に、私は目を丸くした。
「あっ」
昨日の男の子・・・!
やっぱり、私の勘違いじゃなかったんだ!
「あの・・・少し、お話良いですか」
ーーー*
裏庭のベンチへ並んで座る。
その時ちょうど、予鈴が鳴り響いた。
「ごめんなさい、授業あるのに・・・」
「い、いえ、気にしないでください」
こげ茶の髪の毛、こげ茶の瞳。
霧島くんと眞木くんを足して割ったような色。
少したれ目の優しそうな目のかたち。
どちらかと言えば高めの、だけど聞きやすい声。
目立つことが苦手そうな、控えめな人。
「僕の名前は 南 明良(ミナミ アキラ)」
南 明良くん・・・か。
「あ、私は、」
「葉山 秋ちゃん」
「え・・・」
「少し僕と名前が似てるね」
そう小さく微笑む南くん。
見上げると視線が合って、ひと目で分かる。
この人はきっと、良い人だ。
この、柔らかい声がとても似合う。
「あ、あの・・・南くんは、霧島くんの友達?」
「いや、霧島くんは僕のことなんか知らないよ」
「・・・そっか」
でも南くんは、やっぱり霧島くんのことを知ってるんだ。
きっと何か用があったんだ。
「・・・そうだ。
ごめんね、昨日は逃げちゃって」
「ううん」
「君に見つかっちゃったから・・・つい、ね」
やっぱり、見てたんだ。
なかなか声をかけられない気持ちは、私にも分かる。
「あ、私から霧島くんに何か伝えておくよ」
「え?」
気を利かせたつもりが、きょとんと首をかしげる南くん。
彼の反応に、次は私が首をかしげる。
「霧島くんのことで、私に話しかけたんじゃ・・・?」
「ううん、霧島くんに用はないけど」
「え」
あれれ・・・?
霧島くんに用があるわけじゃないの?
「で、でも霧島くんのこと見てたよね・・・」
「・・・ああ、違うよ」
少し強めの風が吹いた。
揺れる髪をおさえ隣を見ると、南くんと視線がぶつかる。
「・・・君を見てた」
こげ茶色の瞳に、私が映る。
「・・・へ?」
この空気には似合わない、気の抜けた声が出る。
ぽかんと口が開き、目をぱちくり。
私・・・?
霧島くんじゃなくて、私のことを見てた・・・?
なんだか思いもよらない展開になってしまった。
「・・・でも、葉山さんは、霧島くんの彼女なんだよね」
「え!?」
か、彼女・・・!?
どこからどう見たらそんな風に見えるんだろ・・・
「私はただの友達・・・!」
「あれ、そうなの?」
「も、もちろん」
「昨日も一緒に帰ってたから、僕はてっきり」
びっくりした・・・
まさかそんなこと聞かれるなんて思わなかったな・・・
「でも、すごいよね」
「え?」
「ファンさえ相手にしない霧島くんが、君とは話すんだから」
「・・・」
そういえば、霧島くんが他の女の子と話すところを見たことないな・・・
よくお昼や帰りに誘われてはいるけど、それも一方的だし。
「2人には、何か秘密があるのかな」
「秘密?」
秘密なんて何も無い。
私たちは『友達』だから、ただそれだけ。
だから話すのも、帰るのもおかしい話ではないのに。
「・・・変、かな」
「え?」
「霧島くんと私・・・って、おかしい?」
「そ、そうじゃないよ。僕はただ・・・少し不思議だなって」
他の人の目なんて気にしたことはなかったのに。
ただ霧島くんや眞木くんと一緒に居たいと思っていたのに。
「でも、良かった」
「え?」
「まだチャンスはあるってことだよね」
「チャンス・・・」
「葉山さん、君に興味があるんだ」
「・・・」
南くんの言葉は確かに聞こえているのに、耳を抜けていくようで。
嬉しい言葉なのに、どうして霧島くんの顔が浮かぶんだろう。
不思議、違和感・・・
あいまいな言葉でにごされているだけで、つまりは釣り合わないということ。
・・・周りの目には、そう映るんだ。
- Re: * 隣の席は一匹狼。 * ( No.42 )
- 日時: 2015/09/10 02:51
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: nrbjfzgl)
*/第28話/*【私にあるもの】
話を終え、やっと教室へ入る。
やけに静かだと思えば、そこには人ひとりの姿もなかった。
「・・・」
みんなの机に置かれた制服を見て気がつく。
そうだ、今日は朝から体育の授業があったんだ。
・・・今から参加してもどうせ欠席扱いかな。
着替える時間が無いし、何より動く気にはなれない。
「・・・ふー・・・」
席につくと、息がこぼれた。
初めての人と、ずいぶん長く話してしまった。
南くんは隣のクラスらしく、以外に身近だった事に驚いた。
でも何でだろう、南くんにはあまり緊張しなかったな・・・
霧島くんや眞木くんと居るうちに、人に慣れたんだろうか。
静まり返った教室。
教室の扉が開く音で、その沈黙が破られた。
「・・・葉山?」
名前を呼ばれ、扉の方へ目を向ける。
体操服姿の霧島くんが立っていた。
「え、霧島くん・・・授業中じゃ・・・」
「ジャージ取りに来た」
「あ、そっか・・・」
霧島くんが現れただけで、暗く寂しかった教室が明るくなった気がした。
どうしてだろう・・・不思議な感じ・・・。
よく分からないけれど、彼には何か特別な雰囲気がある。
「遅刻なんて珍しい」
「・・・うん」
「寝坊か」
「そ、そんなところかな」
笑ってごまかす私。別に隠すことでもないのに。
霧島くんはジャージを羽織ると、そんな私へ目を向けた。
「・・・」
なんだか隠し事を見透かされるようで、目を見ていられなくなる。
「あざ、残ったな」
「へ?」
「昨日の」
霧島くんが私のおでこを指差す。
彼の言いたいことに気が付き、私は自分のおでこに触れた。
「う、うん、でも平気」
・・・まさか、気にしてくれてたのかな。
なんて、いちいち都合の良いようにとらえてしまう。
「傷は残らなかったか」
「・・・うん、大丈夫だったよ」
・・・霧島くん?
今日は妙に、気にしてくれているんだなあ。
廊下の方から足音が聞こえた。
女子生徒が2人、教室の前を通る。
「・・・!」
隠れるように、私は視線を伏せた。
「葉山・・・?」
いつもと違う私の様子に、さすがの霧島くんも気が付く。
まずい、いろいろ聞かれると困る。
「あ・・・霧島くん、早く授業に戻らなきゃ!」
「ああ、そうだな」
「頑張ってね」
教室を出ていく霧島くんを見送る。
彼がいなくなった後も、扉から視線が外せなかった。
・・・どうして私は隠れた?
そんなことは分かっている。
思いたくはなくても、心の奥底では自覚している。
『僕はただ少し・・・不思議だなって』
南くんも、きっとそう言いたかったんだ。
そう、勘づいていたんだ。
私と霧島くんでは、世界が違うのだと。
そう知った時から、自分の存在が恥ずかしく思えて仕方がない。
「友達なのに・・・」
それさえも、おかしいなんて。
それでも霧島くんが、あんなにも優しいから。
だから私は、変に誤解して、浮かれてしまう。
仲良くなれたんじゃないかって、
仲良くなれるんじゃないかって、期待して・・・
もっともっと、図々しくなってしまう。
友達を望んだのは私なのに・・・
なんだか最近は、それが切なくなる。
・・・勝手な話だ。
「どうしよう・・・」
このままじゃ霧島くんに迷惑がかかるんだろうか。
そして、いつか私のことが邪魔になるんだろうか。
・・・また、ふりだしに戻るんだろうか・・・
一度考え込むと、悪い方へと想像ばかりがふくらんでいく。
昔からの、私の悪いクセ。
霧島くんが友達になってくれたのは、私を見かねてなのだろう。
引きこもりで友達のいない、可哀想な人間。
じゃなきゃ、こんな根暗な私と居てくれるはずがない。
一緒に帰ってくれるはずがない。
私には、とりえがないのだから。
「・・・」
そう、何も無いのだから。
- Re: * 隣の席は一匹狼。 * ( No.43 )
- 日時: 2015/09/10 02:45
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: nrbjfzgl)
*/第29話/*【願い】
お昼休み。
屋上で1人、青い空を見上げていた。
「・・・ほら、ひとりで落ちてる」
音もなく誰かの声が聞こえたと思えば、
いつの間にか隣で眞木くんが腰を下ろしていた。
空へ語りかけるように、上へ顔を向ける眞木くん。
「やっぱり首突っ込んだか」
「え・・・」
「これだから忠告したのに」
「・・・ご、ごめんなさい」
また、見透かされてる。
私が南くんと関わっていること。
「旭日が言ってた。
『葉山がおかしい』って」
「・・・!」
霧島くん・・・
やっぱり私の様子に気が付いていたんだ。
「旭日は変わった」
「え・・・」
「君が変えた」
私が・・・
霧島くんを・・・?
「旭日のとりえは、人間味が無いところだったのに」
眞木くんの瞳が、空の雲を追う。
「幼なじみである俺でも無理だったことを、葉山さんがして見せた」
「・・・」
「君は何者なの」
眞木くんのまるい瞳がこちらをじっと見つめた。
何かを探られるような、奥底まで知られてしまうような感覚。
嘘が苦手な私にとって、眞木くんの視線は恐ろしく感じる。
「わ、私は別に何も・・・」
「だろうね」
「え」
「君は計算なんて出来なさそうだし」
否定するより前になにか悟ったような眞木くんが
ひとつ、息をつく。
「・・・だからだろうね」
眞木くんの言葉の意味が分からなくて、彼の横顔をながめる。
いつも話があいまいで、だけど深いところを突いているようで・・・
どこまでを知っていて、どこまで知らないのかも分からない。
彼の思考回路は、やっぱり私じゃ解けそうにない。
「それと」
眞木くんが私の眉間を、つん、とつついた。
「葉山さんのその表情、昨日のことが関係してるんでしょ」
眉間にシワが寄っていたことを自覚する。
わ、私そんなにも険しい顔してたかな・・・
「あの男と何があったのか、何を言われたのか知らないけどさ」
「う、うん」
「人に流されたりするの、似合わない」
「え・・・」
「迷ったら、俺と旭日を信じればいいよ」
「・・・」
眞木くん・・・
本当に全部、彼にはつつぬけだ・・・
不安なことを、全部取り除いてくれる。
「うん・・・」
どうして、こんなにも分かってくれるんだろう。
釣り合いとか、住む世界とか、私は余計なことばかり考えていたのに。
自分を勝手に下に見て、自分の存在が恥ずかしいなんて。
友達だと言ってくれた2人を、疑うようなことをして。
周りの目を気にしてばかり。
私は眞木くんたちのことを何も考えていなかった。
自分の身勝手さにやっと気が付く。
「あ、ありがとう・・・。
眞木くんには、隠し事はできないね」
「そりゃ、エスパーですから」
「ふふ、本当だね」
眞木くんは、いつも気付かせてくれる。
私の心にかかった雲を、吹き飛ばしてくれる。
霧島くんとはまた違う、特別な力。
彼にもまた、そんな不思議な雰囲気があって・・・
それを知るたびに私は、2人に惹かれていく。
・・・周りなんてどうでも良いんだ。
どう思われようと、なにも怖くはない。
2人と居られるなら、それで良い。
それが私の願い。
それ以上なんて、きっとない。
- Re: * 隣の席は一匹狼。 * ( No.44 )
- 日時: 2015/09/10 16:03
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: nrbjfzgl)
*/第30話/*【好意】
「葉山さん」
下駄箱で靴を履き替えたところで、南くんが現れた。
「南くん・・・?」
「待ってたよ」
「え・・・」
「僕たち友達なんだから、一緒に帰るくらい当然でしょ?」
友達・・・
初めて、こんなにすんなりと・・・
「と、友達って・・・思ってもいいの?」
「もちろんだよ」
南くんは優しく微笑んだ。
霧島くんと友達になるのは大変だったのにな。
本当は、こんなにも簡単なものなんだ。
「さ、帰ろう」
「うん」
少し驚いたけれど、そう言ってもらえるのは嬉しい。
思いがけず増えた友達に、心が跳ねた。
「今日も2人を見かけたよ」
「え?」
「本当に、霧島くんとは仲が良いね」
「え、そうかな・・・?」
とぼけてみるものの、本当はちょっと嬉しくなる。
仲良しなんて、そんな風に見えているんだ・・・
実際は軽くあしらわれることが多いけれど。
「あー、あと眞木くんだっけ?」
「うん。あの2人は幼なじみだから」
「へえ、そうなんだ」
いつもは霧島くんや眞木くんと歩く帰り道。
その道を南くんと歩くと不思議な気分になる。
「葉山さんは、どうやって2人と仲良くなったの?」
「え・・・」
どうやって・・・?
私は何もしてないけれど・・・
「・・・私が不登校のとき、霧島くんが迎えに来てくれて・・・」
あのときは、すごく雑な扱いされてたな。
「眞木くんは、こんな私の名前を覚えていてくれた」
うん、すごく嬉しかった。
「最初は怖かった霧島くんが、勉強を教えてくれたりしてね」
頑張れって、応援してくれたらやる気が出た。
「霧島くんと友達になりたいって、たくさんお祈りしたら叶ったんだ」
いろんなことを思い出す。
たった3ヶ月しか経っていないのに、懐かしく感じる。
思わず口元が緩んで、笑みがこぼれていた。
「・・・そんな顔、するんだ」
南くんが私を見つめて、つぶやくように言った。
「葉山さん、今が楽しいんだね」
「え・・・」
「分かるよ、その顔見てたらさ」
そんなにもニヤついていただろうか。
ちょっと恥ずかしくなり頬をおさえる。
「・・・うん、楽しいよ」
「良いな、羨ましい」
南くんが少し、切なく微笑んだ気がした。
「み、南くんこそ優しくて良い人だから、友達たくさん居るんだろうね!」
「ありがとう。でもね、」
立ち止まり、茶色の瞳が私をとらえる。
「僕には葉山さんだけで良いよ」
「・・・!」
どうして、私なんだろう。
南くんは何を見て、そう思うのだろう。
「わ、私だけなんて、きっとつまらないと思うよ」
「ううん、葉山さんと話してると楽しい」
「楽しい・・・?」
楽しいなんて初めて言われた。
私は何も面白いことなんて言えないのに。
それでも良いと、南くんは言ってくれる。
「葉山さんは? 楽しい?」
「え・・・」
友達といるんだから、もちろん。
「・・・楽しいよ」
「良かった」
「だって友達だもんね」
「・・・」
一瞬驚き、安心したように一番の笑みを向けた南くん。
霧島くんとも、眞木くんとも違う、新しい友達。
何も不安がることなんて無いじゃないか。
あの胸のざわつきは何だったのだろう。
こんなにも優しい笑顔、疑うことなんて何も無いのに。
「葉山さん」
呼ばれて、南くんを見上げる。
「好きだよ」
目の前には、まっすぐな瞳が私を見ていて、
今の言葉が頭の中で何度も再生される。
「へ・・・」
「ずっと見てた」
人に無視されたり、嫌われることには慣れていた。
でも、好かれることなんて無かった。
だからこんなとき、どう返せばいいのか・・・
どんな表情を向ければいいのか、よく分からない。
ひとり困惑していると、笑い声が聞こえた。
「ごめん、驚かせちゃったね」
「・・・」
「でも、僕は本気だよ」
吸い込まれそうになる、優しい瞳。
それは少しも揺れることなく、まっすぐに私を見つめていた。
- Re: * 隣の席は一匹狼。 * ( No.45 )
- 日時: 2015/09/11 01:55
- 名前: *~*優奈*~* ◆wte2Ew3rbc (ID: nrbjfzgl)
*/第31話/*【私の存在】
「眠れなかった・・・」
学校へ向かう足が重い。
あれから数日、なぜか眠れない日々が続いている。
「・・・」
好きだと、初めて言われた。
こんな私にはもったいない言葉。
自分へ好意を持ってくれているはずなのに、どうしてだろう。
好かれている気がしない。
想われている気が、しない。
嬉しいはずなの言葉なのに、あまりしっくりこない。
ただ私が鈍感なだけだろうか・・・
南くんを疑っているわけじゃないんだけど・・・
なんだろう・・・
「うわー・・・」
・・・ひどい顔。
廊下の窓ガラスに自分の顔が映る。
クマだけでなく、全体から負のオーラが漂って見えた。
ーーー*
「霧島くん、おはよう」
教室へ入り一番に声をかける。
だけどいつものそっけない返事は返ってこなかった。
「・・・」
「・・・」
あ、あれ?
聞こえてなかったのかな?
「霧・・・」
「ああ、そうだ、図書室へ用があるんだった」
私の呼びかけを無理矢理にかき消すと、
霧島くんは席を立ちさっさと教室を出ていった。
彼の背中を見送り、ぽつんと立ちつくす。
「え・・・」
気のせいだろうか、今のって・・・。
まさか、さけられてる・・・?
ど、どうして?
「あーあ、ご機嫌ななめ」
耳元で声がして振り返る。
いつの間にか隣に立っていた眞木くんが、霧島くんの席へ視線を落とした。
「・・・お、おはよう眞木くん」
「葉山さんのせいだから」
「え?」
「旭日はすねると処理が面倒なのに」
「すねる?」
あれって、すねてたんだ・・・
でも、何に?
「わ、私何かしたかな・・・」
「違う。何もしてないからでしょ」
さっぱり意味がわからなくて、眞木くんを見つめる。
きょとんとした私を見やると、呆れたようにため息をついた。
「・・・いつもいつもしつこく誘っておいたくせに、
急に静かになったかと思えば隣のクラスの新しい友達?」
「え・・・」
「朝も昼も帰りも仲良しこよし。
そんなの見せつけられちゃ、俺だって気分が悪いね」
「・・・」
「友達増やすな、なんて言わないけど」
眞木くんが霧島くんの机に手を触れる。
「放っておかれるって、結構寂しいものだよ」
「え、寂しい・・・?」
・・・それが、理由?
霧島くんはそう思ってたの・・・?
だからさっき私をさけたの・・・?
「う、うそ・・・」
込み上げてくる感情に、胸をおさえる。
霧島くんを不機嫌にさせたのは私なのに・・・
どうして?
嬉しさが込み上げて、溢れそう。
「本当、人間らしくなったもんだ」
やれやれ、と眞木くんは自分の席には戻らず教室をあとにする。
きっと屋上へサボリに行くのだろう。
「・・・」
空っぽになった、霧島くんの席。
見ているだけで、跳ねた心臓がおさまらない。
・・・本当に、そう思っていいのだろうか。
眞木くんの推測は、真実だと信じたい。
私の勘違いかもしれない、そう思うけれど。
「ど、どうしよう」
・・・期待してしまう。
自分が必要とされているかもしれないと。
霧島くんの中で、少しは私が存在しているのだと。
薄っぺらくはない、心からの友達であると。
「おらー、席につけよー」
学校のチャイムも、先生のダルそうな声も、いつも通りなのに。
どうして今日の空は、こんなにも綺麗に映るんだろう。
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