コメディ・ライト小説(新)
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- こひこひて
- 日時: 2018/01/29 22:18
- 名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
恋ひ恋ひて
後も逢はむと
慰もる
心しなくは
生きてあらめやも
万葉集 巻十二 2904 作者未詳
あなたに恋い焦がれ、
またきっと会えると、
強く己を慰める気持ちなしでは、
私はどうして生きていられるだろうか。
そんなことはできない。
綺宮 紫青
綺宮家の若き当主。
金髪青紫の目の超美青年。
鬼の呪いで、どんな女性でも虜にする。
そのため、愛を知らない。
自分の思い通りにならない梢にいらだち
彼女を無理やり婚約者から引き離し、自分と婚約させる。
目的のためには手段を択ばない合理的な思考の持ち主。
水無瀬 梢
綺宮家分家筋にあたる水無瀬家、次期当主の少女。
特殊能力を買われて水無瀬家の養子となる。
婚約者である崇人と相思相愛だったが、
紫青によって無理やり引き離され、無理やり紫青と婚約させられる。
しっかりとした自我をもった少女。
- Re: こひこひて ( No.27 )
- 日時: 2018/06/01 12:28
- 名前: いろはうた (ID: Rj4O5uNk)
- 参照: https://mypage.syosetu.com/485123/
銀色の気まぐれ者 様!!
初めまして!!
遊びに来てくださってありがとうございます!!
感想、ここで大丈夫です!!
いやぁわかってらっしゃる(笑)
いろはうたも、どちらかというと崇人さんを
応援したくなるタイプです(`・ω・´)
果たしてこの、こひこひて、が
テンプレ通りに行くのか行かないのか
乞うご期待!!
コメントありがとうございます!!
御笠様!!
初めまして!!
遊びに来てくださってありがとうございます!!
久しぶりのコメントにテンション爆上げないろはうたです←
世界観については、よく言われますね……
いろはうたは、基本的には和風な作風のが多いです(笑)
もう和風大好き人間すぎて、洋風や現代ものの小説を
書くのが逆に辛いという……
もし、他の小説にも興味を持っていただけましたら、
上のURLからご覧ください―(^▽^)/
コメントありがとうございました!!
- Re: こひこひて ( No.28 )
- 日時: 2018/06/02 12:03
- 名前: いろはうた (ID: Rj4O5uNk)
- 参照: https://mypage.syosetu.com/485123/
昨日、紫青の命令に正面から逆らったこともあり、
今日は朝から憂鬱だ。
いつものように護衛の任のために、
紫青の部屋の前に来たが、無言の空間が気まずい。
だが、任務を放棄するわけにもいかず
梢は大人しく部屋の前に座り込んだ。
筆が紙の上を走るかすかな音だけがその場に響く。
一刻もすると、紫青が立ち上がって
こちらに近づいてきた。
紫青は、仕事が一段落すると、
中庭を見て、少し休憩するのだ。
思わず動揺してしまったが、
それを表に出さぬよう平静を装う。
ところが紫青は、庭ではなく梢を見つめているようだった。
上から視線を感じる。
その視線は梢のけがをしている腕のあたりを彷徨った後、
ある一点で止まった。
「なんだ、それは。」
ふと声をかけられて、梢はかすかに肩を揺らした。
紫青の眼差しは梢の頭に注がれていた。
どうやら、いつもより華美な髪飾りが目に留まったようだった。
思わず飾りに手を当ててしまう。
きちんと束ねた長い髪に銀細工のかんざしが輝いている。
「いえ、別に。」
「お前、普段は派手なものは好まぬだろう。」
無関心なようで意外にも梢の見た目の変化に気づいた紫青に驚く。
言うべきか迷ったが、隠すべきことでもない、と
目をすがめている紫青に向き直った。
「頂いたものです。」
「誰にだ。」
「……崇人様にです。」
頬が熱を持つのがわかった。
たったこれだけのことなのになんだか気恥ずかしくなってしまう。
一方の紫青は何故だか不機嫌そうにこちらを見ている。
次の瞬間、紫青が素早く手を伸ばしてきた。
咄嗟のことに反応できず固まっていると、
荒っぽい手つきで簪を引き抜かれた。
途端にばさりと長い髪が背中に広がり落ちる。
それをちらりと見やった後、
紫青は躊躇なくかんざしを庭に向かって投げた。
それはきらきらと日光を反射しながら
綺麗な放物線を描いて、庭の池に落ちた。
ぽちゃん
小さな水温に、ようやく我に返って、ばっと立ち上がった。
池の水は濁っていて、底まで見えない。
ただ、水面に波紋だけが広がっていた。
「何をするのですか!!」
思わず食って掛かってしまったが、当の本人は悪びれる様子はない。
だが、梢が初めて感情をあらわにして、
声を荒げたことに驚いたような表情をしていた。
しかし、それは一瞬で消え失せてしまった。
「別に、護衛の者にあのような華美なものはいらぬと
……そう思っただけだ。」
「ならば、そうおっしゃってください!!
何故、池に投げ捨てる必要があるのですか!!」
「煩いぞ。」
煩わし気に眉を顰めると、
紫青は部屋の中に戻っていった。
その表情は、何故か晴れないものだった。
恨みがましく紫青の背中を睨んだ後、
視線を池に戻した。
ぐっと唇をかみしめる。
あれは、崇人からもらった大切なものだ。
なくすわけにはいかない。
だが、今は護衛の任務中。
任務を放棄して、かんざしを探しに行くわけにはいかない。
夜になり、護衛の任が終わったら
すぐに探しに行こうと自分に言い聞かせ、その場に座りこんだ。
- Re: こひこひて ( No.29 )
- 日時: 2018/06/09 00:32
- 名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
- 参照: https://mypage.syosetu.com/485123/
ばしゃばしゃと、闇の中、水音が響く。
膝まで水に浸かりながら、梢は必死にかんざしを探していた。
探し始めて半刻ほど時間が経つが、未だに見つからない。
じわじわと水位を増す焦りに溺れてしまいそうだ。
足にまとわりつく藻が気持ち悪い。
「おい。」
背後から不機嫌そうな紫青の声がかかった。
緩慢な動作で振り返る。
「いい加減、諦めたらどうだ。」
ぽたりとしずくが指先から垂れた。
そもそも紫青が変な気まぐれを起こして
かんざしを池に投げなければそうしていただろう。
梢は恨み言を言わないように、きゅっと唇をかみしめた。
紫青はため息をついた。
何故、かんざしを投げた張本人に、こんな態度を取られるのか。
内心、いらだちを募らせていると、
紫青が少しためらいながら、懐から何かを出して見せてきた。
「……え。」
ずっと探していたかんざしが
紫青の手の中で月光を反射し輝いていた。
まばたきを繰り返し、震える手を伸ばす。
間違いない。
崇人からもらったかんざしだ。
ゆっくりと手に取ると、ひやりとした重みが確かに感じられた。
幻などではなかった。
「どうして……。
あの時、このかんざしを池に投げたのでは?
水音がしました。」
「おれの数珠を投げただけだ。
別にかんざしを投げたとは言っていない。」
紫青の表情は暗くてよくわからないが、
憮然とした雰囲気が伝わってきた。
居心地悪そうに身じろぎする気配も感じる。
どうやら、梢がびしょぬれになってまで一心不乱にかんざしを探す
原因となったことに多少の罪悪感は感じているらしい。
おそらく、部屋の中からずっと見ていたのだろう。
すぐにかんざしを持っていると言えばよかったのに、
言い出せなかったのは天邪鬼な性格が邪魔をしたのだろう。
背の高い大きな青年が、落ち着きなく立っている様は
いたずらを咎められた幼子のようだ。
その様子が見た目とちぐはぐに思えて、
梢は思わず小さく笑ってしまった。
何故か、紫青は無言で梢が笑っているのを凝視しているようだった。
「……何故笑う。」
「申し訳ありません。」
「謝れとは言っていない。」
「童のようで、つい。」
「わ、らわ、だと。」
怒りを買う覚悟で正直に言ったが、
紫青は梢の無礼ともとれる言葉を咎めることはなかった。
ただ、しばらく無言になってしまった。
その間に、池の中から地面に上がる。
手足はあとで拭き清めるだけでなく、
川の水でしっかりと洗ったほうが良いかもしれない。
そう思いながら、顔をあげると、
紫青はその場から立ち去らずまだそこにいた。
「なぜ、そのかんざしにそうも執着する。
なくせば死ぬわけでもないし、
ましてやそう高価なものでもあるまい。」
その声にはからかう響きも嘲る響きもなかった。
ただ純粋に疑問に思ったから聞いているようだ。
梢は手の中にあるかんざしを見つめた。
「たしかに、これはあなたさまにとっては、
たいして価値のないもののように思えるでしょう。
ですが私にとっては違います。
唯一無二の、他の物とは代えがたい物です。」
「唯一、無二の。」
「はい。」
紫青は梢の言葉をゆっくりと繰り返した。
咀嚼して、飲み込むかのように。
「……理解しがたいな。
あの男から貰っただけでそうも大切になるのか。」
「唯一無二の大切な方からいただいたものです。
これは、ただの物ではなく、贈った方の思いがこもっています。
だから、大切なのです。
いいえ、私が大切にしたいのです。」
うっすらと月明かりに照らされた紫青の顔には
形容しがたい感情が見え隠れしていた。
だが、それはすぐに消えてしまう。
「……かんざしはやった。
さっさと下がれ。」
「はい。
失礼いたします。」
梢は大人しく一礼すると、その場から歩き去った。
紫青の顔が脳裏をちらつく。
どうやら梢の言葉には納得してもらえてないようだった。
だが、今はかんざしが手元に戻ってきたことを喜ぶとしよう。
そう自分に言い聞かせて、梢は自室へと戻っていった。
- Re: こひこひて ( No.30 )
- 日時: 2018/06/13 17:43
- 名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
- 参照: https://mypage.syosetu.com/485123/
膝から下の袴はぐっしょりと濡れているため廊下には上がらずに
屋敷の裏門を目指す。
少し歩くと、やがていくつかの明かりが見えた。
裏門のかがり火の明かりだ。
さらに近づくと、二人の護衛の姿が見えた。
どちらも男性で、梢の気配をすぐに察知し、目線がこちらを向くのを感じた。
そして、人影が梢だと分かった途端、
その体から緊張は抜けたが、目に嫌悪感が宿っていた。
同じ平民出身のくせに、とでも言いたげな目だった。
たしかに、梢の立場は当主である紫青直属の護衛として悪くはない。
自室まで与えられ、夜は自由を与えられている。
寝ずの番をする彼らと比べたら破格の待遇だった。
「どこへ行く。」
門を通ろうとしたら、予想通り彼らは槍を交差させ、
梢の行く手を阻んだ。
護衛は誰かれ構わずこのような質問をするわけではない。
梢だから、一種の嫌がらせのように訪ねてきているのだ。
「川に行こうと。」
「川ぁ?
こんな時間にかぁ?」
怪訝そうな表情を浮かべられ、無理もないと思う。
こんな時間に川に行きたいなどと考える者はそういないだろう。
日はとっくに落ちていて、夜は女の身にとって出歩くのは良くない時間帯だ。
「袴が濡れたので洗おうかと思いまして。」
この屋敷には裏門が二つある。
ここは西寄りの裏門だ。
その近くは山のふもとであり、小さな川もあるのだ。
この近くの民や、この屋敷の下働きの者達も、
そこで野菜を洗ったり洗濯をしたりするのだ。
かがり火に照らされた濡れた袴とを見て、彼らは押し黙った。
「……通れ。」
もっと難癖付けられて、屋敷から出させてもらえないかもしれないと
身構えていたため、拍子抜けしてしまう。
紫青付きの護衛ということで彼らより少し上の立場にいる梢に対して
いい感情は抱いていないが、逆らおうとは思わないらしい。
あっさりと槍を引かれ、門を通してもらえた。
- Re: こひこひて ( No.31 )
- 日時: 2018/06/20 19:14
- 名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
- 参照: https://mypage.syosetu.com/485123/
月光のみを頼りに屋敷に沿って歩く。
幸い今日は満月だから夜道も歩ける。
屋敷は静まり返っていて、
梢の足音と風が木々を揺らす音のみがその場に響いていた。
この時間だと、ほとんどの者は床に入っているからだ。
火を灯すための油は非常に高価で、
紫青のような身分の高い裕福な者しか使えない。
そのため、それ以外の者は夜になると何もできず、
日が落ちるとともに床にはいるのだ。
それは梢も同じことで、
いつもならこの時間帯には床に入っている彼女は小さく欠伸をした。
やがて屋敷が振り返っても小さく見える程度になった時、
ようやく目当てのせせらぎが見えた。
梢は小川に近づきながら目を細めた。
苔むした岩に囲まれ、月光に照らされた清流は美しかった。
そっと小川のほとりにしゃがみこみ、水に指先を遊ばせた。
しかし次の瞬間、梢は目を見開いた。
すばやく振り向くと、手刀が眼前に迫っているところだった。
「……っ!!」
突然のことに少しも動けなかった。
ひどく動揺して氷力の制御が制御できず、
清流の水が一瞬で凍り付き、巨大な氷柱がいくつも生まれた。
それだけでなく、空気中の水蒸気が凍り付き、
森が霜に覆われ白く変化した。
異変に気付いた手刀の主はすばやく後方に跳ねて梢と距離を取った。
ひやりとした空気が頬を撫でる。
「……誰、ですか。」
震える声でつぶやく。
その問いに答える声はなかった。
じわりと闇からにじみ出て来るかのように
いくつもの黒衣の人影が現れた。
十人はいるだろうか。
どの人影も真っ黒な覆面をしていて、顔も表情もわからない。
周囲を囲まれ、じわじわと距離を詰めてきている。
おそらく、梢の氷力を警戒しているのだ。
肌を刺すようなひりつく空気。
(……これは、あの時の。)
梢はこの殺気のような空気に覚えがあった。
市中で右腕を切り付けられた瞬間のあの一瞬、
それとひどく似ていた。
そう思った瞬間、梢からして右側にいた人影がゆらりとうごめき
仮定は確信に変わった。
まちがいなく、梢の右腕を傷つけた者達と仲間だ。
顔を歪めながら右腕を持ち上げようとしたが、
途端に鋭い痛みが走り呻いた。
咄嗟に左手をかざし、刺客の足を凍らせようと意識を集中させた。
しかし、氷力の影響が及ぶ前に、刺客は素早くその場から離れた。
梢は油断なく全方位に視線を走らせた。
この者達も紫青の命を狙う者の手先なのだろうか。
だとすれば、紫青の身が心配だ。
はやくこの者達を何とかして紫青のもとに行かなければ。
刺客がすべてここにいるとは限らない。
紫青のもとにもすでに何人もの刺客が送り込まれているのかもしれない。
しかし、どこか違和感があった。
刺客たちの第一撃は刀ではなく、手刀であった。
梢を気絶させようとしたのだ。
何故一息に仕留めず、気絶させることを優先したのか。
(私の氷力を恐れてのことなのでしょうか……?)
気絶させたうえで、命を絶つつもりなのかもしれない。
右腕に痛みを感じていることを悟らせないように
つとめて無表情を装った。
また、ゆらりと影が動いた。
「くっ……!!」
先ほどとは違って、全ての刺客が一斉にこちらに向かってきた。
梢の出方と様子を伺っていただけに過ぎなかったのだ。
速い。
とっさに両手を上げる。
途端にズキンと右腕が痛み、氷力を使うのが遅れた。
逃げようにもあまりにも距離を詰められていた。
眼前にのばされたいくつもの手が迫るのを
目を見開いてなすすべもなく見ていた。
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