コメディ・ライト小説(新)

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こひこひて
日時: 2018/01/29 22:18
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

恋ひ恋ひて

後も逢はむと

慰もる

心しなくは

生きてあらめやも


万葉集 巻十二 2904 作者未詳






あなたに恋い焦がれ、
またきっと会えると、
強く己を慰める気持ちなしでは、
私はどうして生きていられるだろうか。
そんなことはできない。







綺宮 紫青

綺宮家の若き当主。
金髪青紫の目の超美青年。
鬼の呪いで、どんな女性でも虜にする。
そのため、愛を知らない。
自分の思い通りにならない梢にいらだち
彼女を無理やり婚約者から引き離し、自分と婚約させる。
目的のためには手段を択ばない合理的な思考の持ち主。



水無瀬 梢

綺宮家分家筋にあたる水無瀬家、次期当主の少女。
特殊能力を買われて水無瀬家の養子となる。
婚約者である崇人と相思相愛だったが、
紫青によって無理やり引き離され、無理やり紫青と婚約させられる。
しっかりとした自我をもった少女。

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Re: こひこひて ( No.46 )
日時: 2018/10/15 23:04
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

「なりませぬ!!」

目の前で綺宮家の重鎮達が血相を変えて言い募る。
しかし隣にいる紫青は不思議なほど凪いだ顔でそれを見ている。
しかし、梢自身も紫青が今しがた口にした言葉を聞いて耳を疑った。

「もう決めた。
 どうにもならぬ。
 梢は、本日より、おれの妻だ。」

紫青は同じことを、ゆっくりと口にした。
二度言われても、言われたことを理解することに時間がかかる。
妻?
婚姻の儀はしていない。
どういうことだ。
梢たちは、屋敷の広間にいた。
どうやら紫青自身が召集をかけていたようで
なかば無理やり広間に連れてこられると、
そこにはそうそうたる顔触れがそろっていた。
彼らは梢の着飾った姿を見て一瞬虚を突かれたような表情を浮かべたが
その目にはすぐに忌々しそうな光が宿った。
そして次の瞬間放たれたのが、梢を妻にする、という
紫青の端的な言葉だったのだ。
しかし、妙に丁寧に湯あみをされ、
美しい着物に身を包まされたことにも合点がいった。
紫青は梢をお披露目のために着飾らせて、重鎮たちの前に連れてきたのだ。
しかし、彼らも黙ってはいそうですかとは言えない。
彼らはこぞって自らの娘を紫青の嫁にしようとしていた。
そうすれば自分も権力を握ることができる。

「その者は、もとは平民の出!!
 尊い御身とは到底釣り合いのとれぬ卑しい身分の……!!」
「黙れ。」

低い声が鞭打つように空気を切り裂いた。
その剣幕にその場にいた者達は息をのんだ。

「妻を愚弄するのは、おれを愚弄するのと同じぞ。
 わかっているのであろうな。」

すっと青紫の目がすがめられる。
氷の幕をまとったような冷たい目。
怒りでかすれた声にあてられ、声を上げた者は身を縮めた。

「さっさと妻を娶れとけしかけたのはそなた達だ。
 おれは言うとおりにしたまで。」

梢は困惑しながらも、声を出さずにいた。
この場をあまりかき乱したくはない。
しかし、不安と困惑が胸の中で入り乱れる。
状況がいまだに呑み込めない。
紫青が、純粋に梢を娶るようなことはしないはずだ。
梢には崇人という婚約者がいることを紫青は知っている。
だからこれは何か考えがあってのことなのだろう。
そう己に言い聞かせるがどうにも不安がぬぐい切れない。
焦燥感に似た感情が芽生え、消えない。

「我々は、認めませぬ……!!」

絞り出すような声で、重鎮たちが言った。
咎めを覚悟している顔だった。
その必死さに梢は気づいた。
確かに、この者達は己の欲に従って動いている。
だが、それだけではなく、綾宮家当主が
分家筋のもと平民という素性の良くわからぬ娘を娶るという
異常事態を止めようともしているのだ。
その必死さを横目で見て鼻で笑うと、
紫青は立ち上がった。
その一瞬の動きの中で、梢の体は紫青の腕に抱き上げられていた。
梢は小さく悲鳴を上げて紫青の体にしがみつく。
いくつのもの視線が突き刺さるのを感じた。

「認めずともよい。
 だが、既に決まったことゆえ、伝えておこうと思ったまでだ。」

そう最後に言い残すと、
紫青は梢を抱えて部屋を後にした。
紫青の手はまるで揺らがない。
まるで、逃がさない、と言外に告げられているような錯覚を覚えた。

Re: こひこひて ( No.47 )
日時: 2018/10/16 00:05
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

「何を考えておられるのですか。
 どうしてあのようなことをおっしゃったのです?」
「言葉通りだ。
 本日よりおまえはおれの妻だ。」

どさりと降ろされたのは、先ほど着替えさせられた部屋だ。
窓がなく、出入り口は目の前の木の扉のみで閉塞感を感じる。
薄暗い部屋の中で、絞り出すように問うと、そっけない返事が返ってきた。
さらりと返した紫青の顔を見上げる。

「あのようなことを言えば、
 皆の間に波が立つことくらいお分かりだったでしょう?」
「おまえは」

梢の言葉を遮るように、冷たく硬い声が響く。
その鋭利な響きに、思わず口をつぐんでしまう。

「おれが、何か考えがあって家の者にお前を妻にするという虚言を吐いたとでも
 思っているのかもしれないが、それは違う。
 おれは、まこと、おまえを妻に迎える。」
「……は?」

かすれた声が唇から洩れた。
それは小さく震えているのが自分でもわかった。

「何を、おっしゃって……。
 私には、崇人様という婚約者が……!!」
「婚約は破棄させた。」

梢は乾くほど目を見開いた。
彼は今、何と言った。
崇人の顔が一瞬脳裏をよぎって消えた。
芽生えかけていた優しい小さな何かを踏みにじられた気がした。
怒りのような悲しみのような強い感情が全身を駆け巡り
梢は顔を歪めて立ち上がった。

「いくら何でもやりすぎです!!
 お取り消しを!!」
「おまえの意思など関係ない。」

かっと目の前が白くなるような強い感情に突き動かされ
思わず紫青に駆け寄ろうとしたら逆に腕を強くつかまれた。
すぐ目の前にまで青紫の瞳が迫る。

「愛だの恋だの馬鹿馬鹿しいと笑っていたおれが情けないな。」

その目には何か底知れぬ昏い光が宿っていた。
梢の知らない紫青がそこにいた。
獰猛で冷たくて鋭利で、ひどく哀しい。
掴まれている腕が痛い。
濃密な気配がさらに近くなった。
もがいてもその強い手はびくともしない。

「おれの唯一を逃すわけにはいかぬ。
 永劫ここで暮らしてもらうぞ、梢。」

囁くように、縋るように、唐突にされたのは優しい口づけだった。

Re: こひこひて ( No.48 )
日時: 2018/10/16 23:32
名前: りあむ ◆raPHJxVphk (ID: .pUthb6u)



いろはうたさん、こんばんは!
りあむと申します。

実は久しぶりにカキコに浮上したのですが、お名前を拝見して思わず読まずにはいられず……!

ちょうどお話が急展開を迎えられたところで……! キス、だと……?! ご馳走さまでした((
今回ははっきりとした三角関係、むしろ略奪愛となりますかね、初めての展開にどきどきしております。梢ちゃんの中に芽生えたものが何だか、こちらに察せられるだけ切なくなります……。紫青さんは自ら寄り添ってくれる心を信じられないのでしょうか……だから縛り付けることしか出来ないように感じられて、その不器用さがもどかしくてたまりません……。本来最も心が近づいたときにされるであろう口づけが、梢ちゃんの心が最も離れたであろうときにされるという皮肉。
相も変わらずぐっと引き込まれる素敵な作品で、続きが楽しみでございますソワ( •ω•` 三 ´•ω•)ソワ

はじめましてのような状態で長々と失礼いたしました。
執筆応援しております!

Re: こひこひて ( No.49 )
日時: 2018/10/18 00:21
名前: いろはうた (ID: 7TaqzNYJ)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

りあむ様!!


はじめまして!!
読んでいただいただけでなく、
コメントまで残していただき、
さらには激励の言葉……!!
て、天使や……天使がここにおるぞ……( ゜□゜)


そうなんです。
イケメンに奪われたいという作者の単純かつアホな発想から
始まったのがこの物語です←

もともとは、紫青さんを
くっずくずのクズ男にするつもりだったのですが
おもったよりもまともな性格になってしまい
軌道修正するのが大変でした……
おそらく物語も急展開どころか
急カーブきりすぎて、崖下転落しそうな勢いですが、
温かく見守ってくださったら、とても嬉しいです!!


コメントありがとうございました!!

Re: こひこひて ( No.50 )
日時: 2019/11/26 18:20
名前: いろはうた (ID: XsTmunS8)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

突然のことに目を見開いていた梢は我に返って激しくもがいた。
しかし、見た目以上にがっしりとした腕は梢を放してくれなかった。
唇が離れ、涙のにじんだ瞳で紫青を睨みつけた。
息が震える。
様々な感情が入り乱れすぎて言葉にならなかった。

「……また、来る。」

かすれた低い囁きが耳に吹き込まれる。
次の瞬間、唐突に解放され、その場にへたり込んだ。
振れていた温もりが離れ、急に寒さを感じる。
紫青はこちらを振り返ることなく、足早に部屋を出ていった。
部屋にと残されたのは梢一人だ。
梢は紫青の背中を半ば呆然として見送ると
のろのろと周囲を見渡した。
部屋の周囲には強力な結界が幾重にも張り巡らされていた。
























その日から、軟禁状態の生活が始まった。
梢は部屋の外に行くことを許されなかった。
世話をしてくれる女官が数名ついているだけで
それ以外の者と顔を合わせることもなかった。
突然の結婚宣言に、一体いつ手を出されるのか、とびくびくしていたが、
予測に反して、紫青は口づけ以上のことは決してしなかった。
それどころか、また来ると言っていたのに
日の高い時間帯にやってくることも一度もなかった。
まるで牢獄のような息苦しさを感じる空間の中での唯一の楽しみは
あの青紫の目を持つ白猫との戯れだった。
どうやって入ってきているのか、いつのまにか部屋にやってきて
身を摺り寄せてくるのだ。
梢は自分の食事を時々白猫に分け与えながら、
つかの間の逢瀬を楽しんだ。
白猫の青紫の目を見ていると、思い出すのはただ一人だ。
ぽたり、と畳に雫が落ちて、染みができた。
胸がちくちくと痛むのはどうしてなのか梢は薄々感づいていた。
だけど、認めてはいけない感情だとわかっていた。
だから必死に見ないふりをする。

(口づけは、嫌ではなかった。)

その事実が梢を打ちのめす。
崇人という誠実な婚約者を持つ身でありながら、なんてひどい女なのだろう。
自分が黒く醜いものに成り下がった気がした。
一方的な梢の婚約破棄に加えて電撃的な結婚報告を受けたであろう崇人は
今、どうしているのだろうか。
梢を取り戻そうと躍起になってくれている?
それとも大貴族たる綺宮家若当主の妻になってしまったらもう手が届かぬと
諦められてしまったのか。
この閉鎖的な鳥かごのような部屋の中では何もわからなかった。


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