コメディ・ライト小説(新)

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こひこひて
日時: 2018/01/29 22:18
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

恋ひ恋ひて

後も逢はむと

慰もる

心しなくは

生きてあらめやも


万葉集 巻十二 2904 作者未詳






あなたに恋い焦がれ、
またきっと会えると、
強く己を慰める気持ちなしでは、
私はどうして生きていられるだろうか。
そんなことはできない。







綺宮 紫青

綺宮家の若き当主。
金髪青紫の目の超美青年。
鬼の呪いで、どんな女性でも虜にする。
そのため、愛を知らない。
自分の思い通りにならない梢にいらだち
彼女を無理やり婚約者から引き離し、自分と婚約させる。
目的のためには手段を択ばない合理的な思考の持ち主。



水無瀬 梢

綺宮家分家筋にあたる水無瀬家、次期当主の少女。
特殊能力を買われて水無瀬家の養子となる。
婚約者である崇人と相思相愛だったが、
紫青によって無理やり引き離され、無理やり紫青と婚約させられる。
しっかりとした自我をもった少女。

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Re: こひこひて ( No.51 )
日時: 2018/11/12 22:07
名前: いろはうた (ID: 7TaqzNYJ)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

幾度目の夜だろうか。
ふわふわと微睡んでいると、ふと柔らかな感触が頬に触れた。
あの白猫だろうか。
目を開けたいが、睡魔に勝てず目を開けられない。
かわりに、その感触に自らすり寄った。
するとそのぬくい感触はぴたりと動きを止めた。
数秒のちにまたぎこちなく、羽毛のようにそっと触れられる。
ごつごつした骨っぽい感触。
もう、これが何なのか、梢にはわかっていた。
だから、浮上しかけた意識を無理やり抑え込み、
ぐっと寝たふりをした。

「……こずえ。」

柔らかく、ぎこちなく名を呼ばれた。
起こすまいとひそめられた声音は熱をはらんでかすれていた。
胸がツキリ、と軋んだ。

(……どうして、そんな声で名を呼ぶのですか。)

濃密な気配が近い。
まつげが震える。
目を開けたら、その人と顔を合わせなければならない。
絶対に目はあけない。
どういう顔をしたら、なんて声をかければいいのか何もわかない。

(……どうして、私をここに閉じ込めるのですか。)

彼は今どんな表情で触れているのだろう。
目を開けたくはないのに、無性にその顔が見たかった。
やがて、ささやかなぬくもりが頬を柔らかく一撫でして、
すっと離れていった。
それが寂しくて、薄く目を開いてしまう。
月明かりに透けた美しい金髪が見えて、どきりと鼓動がはねた。
こんなに近くで彼の姿を見たのは久方ぶりだ。
意識ががあるのを悟られないように目を閉じる。
しかし、何故か濃密な気配は遠ざからない。
静かな空間に衣擦れの音だけが聞こえる。

(……え?)

次の瞬間、体を覆っていた布団が少し持ち上げられ、
何かが梢の布団に入ってきた。
夜風に冷えた大きな何かは、
梢の体を引き寄せるとすっぽりと包み込んでしまった。

(……え、え……!?)

何が起きたのか咄嗟に理解できなくて、目を白黒させる。
けれど、ここで下手に動きでもすれば、
寝たふりをしていることが露見してしまう。
梢は息を殺して、彼、紫青の腕の中で大人しくしていた。
胸いっぱいに紫青の匂いを吸い込み、頭がくらくらした。
ふっと紫青の吐息が額をくすぐり体をこわばらせてしまう。
しかし、花弁のように額へと優しく降ってきたのは
穏やかな口づけだった。
陽だまりのような温もりに包まれて心の琴線が緩む。
わけもなく泣いてしまいそうになる。
冷たく突き放したかと思うと、
梢が寝入ったのを見計らってから優しく触れられる。
ずるい人だ。
縋りつくように抱きしめてくる腕を振りほどくことができない。

(この人のことを、もっと知りたいと思うのは、罪なのでしょうか。)

こわごわと手を伸ばし、紫青の衣の襟をそっと掴む。
梢は薄く開いた目を閉じた。
やがて、紫青から穏やかな寝息が聞こえてきた。
おぼろ月だけが、かすかに二人を照らしていた。

Re: こひこひて ( No.52 )
日時: 2018/11/13 00:17
名前: 散雲 (ID: Ft4.l7ID)







いろはうたさま




コメント、失礼いたします…!
実は以前から読む専門でいろはうたさまの作品を愛読させていただいていたのですが、

久々の新作に飛びつかずにはいられなくなってしまいましたッ…!もう、相変わらずピュアで心の優しい、素敵なヒロインの梢ちゃんに
色香と美しさの狭間に見え隠れした男らしさがギュンギュンと胸を射抜いてしまうような紫青さま…(尊さのあまりに、思わずさまづけ)
何だかもうかつてないほどにお似合いの美味し過ぎる二人の恋の行方が楽しみでなりませんっ…!

しかも紫青、梢ちゃんをホ―ルドオンしたあああ!
もう、雅な言葉づかいに映像が流れ込んでくるような描写の表現力…いろはうたさま、本当にあっぱれです!(♡)

長々しいコメント、失礼致しました…!

続きを楽しみにしております!(♡)





Re: こひこひて ( No.53 )
日時: 2018/11/19 22:24
名前: いろはうた (ID: 7TaqzNYJ)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

散雲様!!


うわー!!
来てくださり本当にありがとうございます!!
もうお優しい励ましの言葉に
もう、もう涙が止まりませぬ!!!!!(´;ω;`)

私ももっとドロドロの恋愛ものにする予定が
何故かぴゅあっぴゅあの純愛ものに
すり替わっていて震えが止まらないいろはうたです←
なんとかドロドロに方向転換しようと試行錯誤中です……
もっとこう、昼ドラのごとく
四角関係ぐらいはいこうと画策していたのに……←

いろはうたはあまり自覚がないのですが
気づけば情景描写とかが超絶和風なのです……
一度洋風のお手軽ラブストーリーを書いたのですが
慣れなさ過ぎて、白目剥きながらキーボード叩いていました(笑)

そうですね……
梢も徐々に、人形っぽさから
人間臭くしていこうと……おも……思って……


コメントありがとうございます!!

Re: こひこひて ( No.54 )
日時: 2018/11/21 18:01
名前: いろはうた (ID: 7TaqzNYJ)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

苦しさが降り積もっていく。
ゆっくりと喉を締め上げられていくかのような日々。
夜は必死に寝まいと布団の中で睡魔と戦い
紫青がやってくるのを待っていた。
だが、起きていることを悟られる度胸もない。
もし、梢が起きているとわかったら、
もう見向きもされないかもしれない。
それが恐ろしくて、決して起きていると悟られぬよう
寝たふりに徹する日々だった。
しかし、時には一晩中起きていても
紫青がやってこない夜もあった。
その日はもう生きている実感がないほど体に力が入らなくなる。
彼は今どこにいるのか。
何をしているのか。
どうしてきてくれないのか。
誰と一緒にいるのか。
会いたい。
声が聴きたい。
触れてほしい。
そんなどうしようもない考えがぐるぐると脳裏をよぎり
気が触れてしまいそうになる。
徐々に、紫青に依存していく己の存在を感じる。
それが梢にはたまらなかった。
身寄りのない自分を養子として迎え入れてくれた
養父と養母に合わせる顔がない。
今の自分が恐ろしいのは、
紫青に見向きもされなくなることなのだ。

(なんて、情けない……。)

にゃあ、と小さな声が聞こえた。
はっと我に返る。
見れば、傍にあの白い猫がすり寄ってきているところだった。
心配そうにこちらの顔を覗き込んだ後、
ぺろりと指をなめられた。

「……大丈夫です。」

優しくその小さな白い頭をなでると
ゴロゴロと満足げに喉を鳴らす音が聞こえた。
猫にまで心配されるほどひどい顔をしていたのだろうか。
自分が情けなくて思わず笑ってしまう。
この猫の宝石のように美しい青紫の目を見ると
思い出すのはただ一人だ。
しばらく、小さな頭を撫でていると
波立った心が凪いでいくのを感じた。

(冷静に考えて、あの人が無意味なことをするはずがない……。)

靄がかかっていたかのような頭の中が
静かに澄み切っていくのを感じた。
そうだ。
あの人はすごく合理的な思考の持ち主で
愛だの恋だの馬鹿馬鹿しいと、言ったこともあった。
それが、どうして梢を閉じ込めるようになったのか。
そう考え続けて、すっと胸に落ちた一つの答えがあった。
鬼の呪いだ。
いつか、紫青に恋した姫君が教えてくれた。
あの、呪いは、本当に愛する者のいない女なら
どんな者でも紫青に恋をさせてしまう。
だけど、梢はそんなことはなかった。
それがどうしてなのかはわからない。
崇人を愛していたからなのか。
はたまた、そのような呪いの類が全く効かない体質なのか。
とにかく、紫青にはそのような
特別な感情を抱いてはいなかった。
だからこそ、紫青は興味を持ったのではないか。
貴重な氷力を持ち、己に全くなびかぬ女が珍しくて、
手元に置いておきたいと考えたのではないだろうか。

(……違う、あの人は、あの人は。)

違うと思いたくても、そう考えると様々なことに合点がいく。
紫青の梢に対する扱い。
向けられた不器用な優しさ。
まるで愛されているのではないかと錯覚してしまうほどの
穏やかな口づけ。
縋るように抱きしめてくれた腕。
そのどれもが、ただの護衛役に向けるには
あまりにも特別過ぎた。
その執着が、ただの好奇心からくるものだとしたら……?
今、紫青に対して抱いている気持ちを悟られたら
見向きもされなくなるのではないか。
足元が砂になって崩れ落ちていくような恐怖心が胸を満たす。
この気持ちが、呪いによるものなのか
はたまた本物なのかはわからない。
だけど、気づかれたら、きっとすべてが終わる。
なにか大事なことを見落としている気がするのに
梢の思考は恐怖だけでいっぱいだった。
紫青のことを信じたいのに、
何が真実なのかわからなくなっていく。
ずぶずぶと思考は沼に沈んでいく。
梢は、震える手で氷力を指先に集めた。
その指先から飴細工のように生み出されたのは
一匹の氷の蝶だった。
式術で言うと、いわゆる式神に近いかもしれない。
氷の蝶はふわりと梢の指先から飛び立つと
結界の隙間を潜り抜けて、飛んでいく。
それを視界の端で見送ると、
再び指先に意識を集中させる。
空中に表れたのは氷の鏡だった。
つるりとした表面にはぼんやりと屋敷の景色が映る。
それは蝶の視界と共有された特殊な氷の鏡だった。
氷の鏡の中で、屋敷の中の景色がゆっくりと流れていくのを
うつろな目で梢は眺めていた。

Re: こひこひて ( No.55 )
日時: 2018/11/26 17:51
名前: いろはうた (ID: 7TaqzNYJ)
参照: https://mypage.syosetu.com/485123/

ふわりふわりと水が流れるように鏡に映る景色は流れていく。
しばらくの間見なかった眩しい外界に
梢はわずかに目を細めた。
術者の意思を汲み、ふと、移り変わる視点は一点で止まった。
僅かに霞がかって映っているのは、
やや薄暗い部屋の青年
美しい金糸の髪。
伏せられた青紫の瞳。
ちょっとした仕草にすら目を奪われる。
久方ぶりに見るその人に、ほっと吐息が漏れた。
胸が締め付けらられるような感覚を覚える。
苦しかった。
息が上手くできないほどに苦しみを感じる。
それと同時に、甘く苦い思いが胸を満たした。
これは何なのだろうか。
己がどこか歪みおかしくなっているのは
梢自身もわかっていた。
これが、鬼の呪いだというのか。
それとも、愚かにも、恋情、というものを
抱いてしまっているということだろうか。
他の誰でもなく、紫青に。
だけど、彼は愚かな女を好まない。
己に恋する女など、
鬼の呪いのせいだと思い、
どんな狂おしい思いをはねつけてきた。

(何か……大切なことを見逃している気が……。)

気づきたいのに、思い出したいのに、
頭の中で思考が入り乱れてうまく考えられない。
次の瞬間、はっと梢の目が見開かれた。

「あ……。」

小さく声が漏れる。
氷の鏡に、紫青以外のもう一人の人影が映ったのだ。

(誰、でしょうか……。)

見たことのない、美しい少女だった。
梢とそう年齢は変わらないだろう。
はっきりとした目鼻立ちが
どこか浮世離れした美しさを作り出している。
その娘は、何故かことわりもなくさっと紫青の傍に行くと
何事か話しかけた。
紫青は若干眉根を寄せながらも、
いつものように邪険にするそぶりを見せない。
むしろ、何か言葉を交わしているかのように見えた。
鏡で見える映像には音がない。
何を話しているのかはわからないが、
二人の親しげな様子にさらに息が苦しくなる。
少女は、どいらかというと表情に乏しい梢とは正反対で
ころころと表情の変わる感情豊かな娘だった。
女の自分から見ても、魅力的な娘だった。
来ている衣からも、紫青と同じ上流階級の娘だと見て
間違いはないだろう。
あれは、新たな婚約者だろうか。
紫青は、じっと娘のほうを見て何かを話している。
それに対して花が咲くように少女は笑っている。
それがまぶしいくらいに愛らしくて、梢は目を細めた。
だが、恋情のようなどろりとしたものを娘からは感じられない。
そして、紫青が娘をぞんざいに扱う気配もない。
ぎゅっと手を握り締める。
見たくないのに、鏡から目が離せない。
最近、夜ですら部屋に来てくれないのは、
その娘の傍にいたからなのか。
冷えた指先をさらにきつく握りしめた。
胸が焦げ落ちてしまいそうだった。
梢はただ一人、力なくその場に座り込んで
氷の鏡に映る二人を見つめていた。


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