コメディ・ライト小説(新)

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こひこひて
日時: 2018/01/29 22:18
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

恋ひ恋ひて

後も逢はむと

慰もる

心しなくは

生きてあらめやも


万葉集 巻十二 2904 作者未詳






あなたに恋い焦がれ、
またきっと会えると、
強く己を慰める気持ちなしでは、
私はどうして生きていられるだろうか。
そんなことはできない。







綺宮 紫青

綺宮家の若き当主。
金髪青紫の目の超美青年。
鬼の呪いで、どんな女性でも虜にする。
そのため、愛を知らない。
自分の思い通りにならない梢にいらだち
彼女を無理やり婚約者から引き離し、自分と婚約させる。
目的のためには手段を択ばない合理的な思考の持ち主。



水無瀬 梢

綺宮家分家筋にあたる水無瀬家、次期当主の少女。
特殊能力を買われて水無瀬家の養子となる。
婚約者である崇人と相思相愛だったが、
紫青によって無理やり引き離され、無理やり紫青と婚約させられる。
しっかりとした自我をもった少女。

Re: こひこひて ( No.12 )
日時: 2018/04/02 01:42
名前: いろはうた (ID: EBP//tx7)

てるてる522様!!


お久しぶりですー!!
こちらこそなかなか伺えなくてすみません汗
時間見つけて、またお邪魔させていただきます!!

登場人物の名前は(和風だと特に)こだわりぬいているのが、いろはうたですドヤッ←
ちなみに、紫青は、
「浅葱の夢見し」のシキしゃまの血縁関係という設定にしております。
名前にも紫が使われていたり、金髪だったり、陰陽師だったり、帝と血縁関係だったり
いろいろ共通点をちりばめております。


崇人さんは尽くしてくれて、めちゃくちゃ優しく愛してくれるタイプで
紫青はツンツンしている態度の中に、実は優しさが隠れていて
つんけんした態度は愛情の裏返しとかいうややこしい天邪鬼なタイプです。
旦那様にするなら断然、崇人さんですねいろはうたは(真顔)


そ、そそそそんな!!
もったいないお言葉!!
身に余る光栄ですわこれは……
なにこの優しい言葉……私は明日昇天してもおかしくないぞこれは……←


コメントありがとうございます!!

Re: こひこひて ( No.13 )
日時: 2018/04/02 22:23
名前: せいなが (ID: wPqA5UAJ)

拝啓 いろはうた様

はじめまして、せいながです。とても綺麗な小説ですね。私は平安時代の文化である百人一首が好きなので、読み始め一ページ目からもう最高でした。書き方が百人一首に負けず劣らず美しく、紫青がいかに妖艶な魔男かがよくわかります。

心理描写も梢の気持ちが目に見えそうなくらい、分かりやすいです。読者にとって、とても嬉しいことです。

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらかな

(いろはうたさんが投稿されればまた新しい話が読めるとはわかっていても、やはりいろはうたさんの面白い素敵な話が終わった後は悲しいものですね。)

いろはうたさんの投稿をいつも楽しみにしています。

せいながより。

Re: こひこひて ( No.14 )
日時: 2018/04/05 15:03
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

せいなが様!!


はじめまして!!
ようこそおいでくださいました。
もういろはうたの妄想と趣味がさく裂している
魔の巣窟のようなところによくぞ……感謝感謝です。


そうなのです。
慣れない和歌や百人一首に手を出して
自爆している作者がここにおります←
そんないろはうたにはもったいないほどの素敵な歌……
再考です最高すぎる……
あの、し、師匠と呼んでも……?←


コメントありがとうございます!!

Re: こひこひて ( No.15 )
日時: 2018/04/13 00:48
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

解呪の儀を行った後、紫青は高熱を出した。
死の呪術は、想像以上に紫青の体力を気力を削っていたらしい。

「本当に、誰も呼ばなくてよいのですか。」
「……だから、誰も……呼ぶなと……言っているだろう。」

荒い呼吸を繰り返す紫青は本当に辛そうだ。
彼の額に流れる汗を布でふき取る。
布越しに熱を感じた。
やはり異常に高い。
たしかに、呪術による病は、医者でも治せないだろう。
だが、弱っているところを見られたくないからと言って
自力で回復するだなんて無謀な気がする。

「……失礼します。」

梢は、濡らした手ぬぐいを氷力を使って軽く凍らせ
紫青の額の上に置いた。
凍らせすぎないようにする加減がなかなか難しい。

「……おまえの力も……便利なものだな。」
「このような時にしか使えない、つまらぬ能力かと。」

苦しそうに息を吐きながら、紫青はこちらを見た。
潤んでいる青紫の瞳はどこか焦点があっていないようにも思えた。

「おまえ、自分の能力を嫌っているのか。」

不思議そうな声だった。
純粋な疑問のみ宿った響きだった。

「……好きになれる要素が、どこにあるというのですか。」

思ったよりも乾いた声が口から洩れて、自分で驚いてしまう。
無言で、梢は紫青の額に置いた布を取ると、また凍らせた。
こんな力は嫌いだ。
この力のおかげで今の家に拾われることができたが、それだけだ。
傷つけることがあっても、守ることはない力。
凍らせた布を再び紫青の額に置く。
紫青が目を閉じる。
長いまつげが濃い影を落とし、妖しげな美しさを醸し出している。
梢は紫青から目をそらすと立ち上がった。
その途端、前のめりに倒れてしまう。
強く紫青に手首をつかまれたのだ。

「……どこへ行く。
 まだ……ここにいろ。」
「水桶の水をかえてまいります。」
「そんなものはいい。」
「いえ、そういうわけには。」
「いいと、言っている。」

掴まれた手から火のような熱が伝わってくる。
梢は大人しくその場に座りなおした。

Re: こひこひて ( No.16 )
日時: 2018/04/15 19:04
名前: いろはうた (ID: hYCoik1d)

それを見ると、まるで安心したかのように紫青は目を閉じた。
やがてかすかな寝息が聞こえてきた。
どうやら眠ったらしい。
汗で額に張り付いている紫青の前髪に気付き、
少し迷った後、そっと指でぎこちなく払った。
本当によくわからない男だ。
気まぐれで梢の護衛の任を解かず、宮廷などにも連れまわす。
冷たく突き放したのかと思えば、
その行動の裏には不器用な気遣いが隠れているのだ。

「……大きな手。」

掴まれたままの手首を見下ろした。
長い指は優美に見えるのに、その手は驚くほど力が強くて、大きい。
梢の手首なんて本気を出せば折られてしまいそうなほどだ。

(この人は、この手で何を掴みたいのでしょうか。)

そう思った自分にはっとする。
ほだされているのか。
馬鹿馬鹿しいと首を横に振る。
ただの契約上の護衛主。
それ以上でもそれ以下でもない。
掴まれていた手首をなんとか取り戻すと、今度こそ水桶を持って梢は立ち上がった。
部屋のから出て襖を閉じた後に、人の気配を感じて前を見た。

「……。」

そこには市女笠をかぶった女性の姿があった。
梢は眉をひそめた。
こんな昼間から女性が忍んで訪れるとは、
紫青は一体どれほどの数の女性と浮名を流したのだろうか。

「紫青様は、今お手を放すことができませぬ故、本日はお引き取りください。」
「何故……。」

かすれた可憐な声が聞こえた。
その女性が発したものだと遅れて悟る。
一瞬聞き間違えたのかと疑うほどに、その声には憎悪が混じっていた。

「……私は、幾年も、紫青様を想っていても、
 部屋に上がらせていただいたこともないというのに。」
「はい……?」

うつろな声だった。
そのうつろな声音に交じるはっきりとした怨念に困惑する。
女性の様子がおかしい。
まさか、また呪術に関連することなのだろうか。
女性がうつむけていた顔を上げた。
見覚えはないが、ひどく美しい姫君だった。
顔立ちから高貴な生まれだろうと推測できるが、
着ている着物が地味なことからお忍びできたのだろうと推測できた。

「何故、紫青様の、部屋から、貴女は出てきたの。」

その言葉の一つ一つから揺らめくような暗さがにじむようだった。
一歩、また一歩と姫君が近づいてくる。
見開かれた目からは、狂気が見えかくれしている。
じわりと手が冷たくなった。
はっとして、手を掴む。
動揺してはいけない。
氷力が暴走してしまう。
見たところ、姫君はなにか勘違いをしているだけで、
刺客ではないようだ。

「……どうして。
 私のほうがずっと……お慕い申し上げているのに。」

はっとして、姫君の手元を見る。
懐剣が、鈍く光を放っていた。
いつのまに懐剣など手にしていたのか。

「許せない。」

咄嗟に掌を向けたが、一瞬氷力を使うのをためらってしまう。
その一瞬で、姫君がふわりと距離を詰めた。
眼前に刃が迫り、咄嗟にのけぞってかわす。
ひゅっと風切り音がして、自分の髪の毛が数本宙に舞ったのが見えた。
無理な体勢で刃をかわしたせいで、、体勢を崩してしまう。
明確な殺意を持って、また懐剣が迫ってきた。
咄嗟に相手に足払いをかける。
すると、驚くほどあっさりと姫君は倒れた。

「……私は……何を……?」

痛みに顔を歪めながら、姫君はぼんやりと呟いた。
その瞳に徐々に光が戻ってくる。
梢は、急いで身を起こすと、その手から懐剣をもぎ取った。
姫君は先ほどと打って変わってされるがままだ。

「……何事だ。」

襖が開いて紫青が顔を出した。
その姿を見て、慌てて姫君が姿勢を正し、ひれ伏した。
今の騒動の音で起こしてしまったのか。

「もっ、申し訳ありません。
 御身をお慕いするあまり、私……私……。」

梢は、混乱した。
先ほどの狂気にとりつかれていた姿とまるで違う。
演技などではなく、姫君自身、混乱していているようだった。


「……次はない。
 下がれ。」

震えながら、姫君がその場を去っていく。
その細い体が見えなくなるのを見送っていると、
じっとりとした視線が向けられた。

「……何故、部屋の外にいる。」
「水桶の水をかえようと……。」
「それはいい、そう言ったはずだが。」

とんでもなく不機嫌なことがひしひしと伝わってきた。
しかし、その途端ぐらりと長身が傾いた。
その場に膝をついてなんとか身を支えているが、やはり呼吸が荒い。
無理をして出てきたのだろう。
慌てて重すぎる紫青の体を引きずるようにして、布団まで運ぶ。
その身に布団をかけると、憎々し気に紫青はこちらを睨んだ。
まだ何か不満があるらしい。

「何だ……その傷は。」
「何がですか?」

手が伸びてきて、長い指がほほに触れる。
ピリッとした痛みが走り、わずかに顔を歪めた。
先ほどの懐剣で切っていたらしい。
離れていく紫青の指にはかすれた朱が散っていた。

「この部屋には……強力な結界を張ってある。
 ……だから、部屋から出るな」
「……はい。」

苦しげな息の中、途切れ途切れに紫青がそう言い、梢は小さく返事をした。
無理に起きてきたのは、異変に気付かせてしまったからだ。
これは梢の失態だ。
護衛役なのに、護衛主に手間をかけさせてしまうとは。

「なんだ……その顔は。
 結界を破られたら、おまえが命を懸けておれの命を守れよ。」

こんな時ですら紫青は傲岸不遜な笑みを浮かべている。
さすがの梢も彼が無理をしているのは分かった。

「……護衛の身ですから、当然です。」

俯いて小さく呟いた。
紫青の裏側など、知りたくなかった。
ずっと嫌な人間でいてほしかった。


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