ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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——電脳探偵部—— 
日時: 2010/01/19 18:57
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: 7MCr7M6.)

——電脳探偵部へようこそ……——
……はいっ! なんかねぇー暗い系で始まりましたけど、作者の性格は明るい方ですっどうも、こんにちは、空雲 海です! 宜しくお願いしますっ!

まず最初にご注意。
これを読むに当たって荒らしはやめて下さいね。
それでは、どうぞ電脳探偵部をお楽しみください。


たぶん目次(パート3)

反抗期(あるいはついに人間関係まで足を踏み入れた)
第一部 「電脳」なくてもいいんじゃね?って感じの依頼 >>1-5
第二部 デリート、実行(あるいは子供VS親)>>6-12
第三部 デリート、実行(あるいは前代未聞の連続デリート) >>13>>19>>27>>32-33
第四部 デリート、完了(あるいは負担のかかるデリートでした) >>36
あとがき >>37

秋といえば○○(あるいは文化祭でも部活動)
第一部 

瓜杉グループとの最終決戦(あるいはもうこれで終わりっ!?)
第一部 事件は唐突に

番外編 空雷先輩と雨雲先輩が電脳探偵部に入ったワケ
第一部 現在から過去へ

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Re: ——電脳探偵部——  ( No.2 )
日時: 2009/11/01 12:39
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918

……沈黙が続く。
轟先輩と空雷先輩がある程度の距離を取って、睨みあっている。
ここは電脳探偵部の部室(備蓄倉庫)の裏の小さな空き地みたいな所。

誰も居なくて草ボウボウで誰も近寄らないから不良の溜まり場みたいになってる。
「っていうか、なんで雨雲先輩と曇先輩が来てるんですか。それに、私は見たくないのに連れて行かれて……」

私が文句を言っていると、雨雲先輩が言う。
「この学校一の不良を決めるなんて、おもしろいじゃない。ねぇ曇」
「暇つぶし程度にはなりますね」
……魔女と悪魔だ……。
「でも、私を巻き込む事ないじゃないですか」

「ちゃんと空雷が戦うとこ、見ときなさい」
もう充分見てるんですが……。
その時っ!
空雷先輩が一気に轟先輩に詰め寄るっ!
そして空雷先輩の拳が轟先輩の顎を狙う!

そのパンチを避け、空雷先輩の腹部にパンチが当たり、鈍い音がする。
「がはっ!」
空雷先輩がよろける。
「まだまだ行くぜっ!」
轟先輩が言い、飛び蹴りを喰らわす。

空雷先輩の横顔に当たり、そのまま滑りおちた。
「うっ……」
空雷先輩が寝ころんだ所に、足で腹部を何発も打ち込み、生身の悲鳴のような鈍い音が耳に響く。
「がはっ! げほっ!」

空雷先輩の息が荒くなり、吐息する。
「ハァーハッハッハッハッハ! こんな奴が学校一の不良だってぇ? 笑わせるんじゃねぇーよ!」
そう言いもう一発蹴り、空雷先輩が転がった。

「これが空雷なの……」
雨雲先輩がつぶやくように言う。
目は大きく見開いており、驚きを隠せない。
「あの空雷が手も足もでないなんて、おかしいですね」

曇先輩が腕を組んだまま言う。
空雷先輩……。
「これで終わ——」
轟はその後の言葉を言えなかった……。
ギシギシと音を立てて首を掴んでいる。

そして首をゆっくりと持ち上げ、苦痛の表情になる轟。
「『終わり』なんて言わせねぇーよ」
空雷先輩の目がギラリと光る。
その目はさっきの目とは明らかに違う。

そう言ってそのまま地面に叩きつけた。
グシャッと音がし、まるでりんごの果物が握り潰された音がした。
「…………」
痛みで声が出ない。

「さっきは小手調べ。こっちが——本気」
そう言い、一歩一歩踏み出す空雷先輩。
「空雷……」
雨雲先輩の目が輝く。
「くっそぉー!」

轟先輩が起き上がり、飛び蹴りを喰らわす!
「おっせぇー飛び蹴りだなぁ」
「何!?」
飛び蹴りを軽々避け、背後に回る!

「これが本当の飛び蹴りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
後頭部に空雷先輩の飛び蹴りが当たり、そのまま軌道をずらし脇腹に回し蹴りが当たった。
「がはっ!」
そのまま地面に叩きつけられた……。

「甘ったれた蹴り入れんじゃねぇーよ、コノヤロー!」
そして、そのまま轟先輩はそそくさと出て行った……。

「ったく! 本当に心配したんだからっ!」
「いてっ! 雨雲もうちょっと優しく——」
「黙らっしゃい!」
前にも聞いたことのあるような会話が雨雲先輩と空雷先輩で繰り広げられる。

雨雲先輩が空雷先輩の怪我を治療し、曇先輩はデスク、私は雨雲先輩のお手伝い。
「もう! ほんっとうに変な芝居なんかして!」
「芝居なんかじゃねぇー! ケンカっつーモンは! 相手の力量を図ってやるもんなんだっ! がむしゃらにやったって、結果は出ねぇーんだよ!」

「空雷が『図る』なんて言葉使うなんて。おー嫌だ嫌だ! 明日は雪が降るんじゃないのかしら?」
「お前なぁー!」

空雷先輩が大声を出した後、
「いててててっ!」
背中に手を当てる空雷先輩。
「そんな大声出すからよ、バーカッ!」
「雨雲!」
「あははは!」

雨雲先輩が笑った後、曇先輩がゆっくりと言う。
「夫婦喧嘩は違う所でやってください」
「夫婦じゃなぁーい!」
……雨雲先輩と空雷先輩の声が重なる時点で夫婦だと思いますが……。

「とんでもない邪魔が入りましたが、ここからデリート計画を説明したいと思います。皆さん——」
曇先輩の言葉が止まり、瞳が真剣になる。

「心して聞いてください」
……一瞬空気が凍った。
今回のデリートは波乱の予感になりそうです……(いつも波乱ですが)。

Re: ——電脳探偵部——  ( No.3 )
日時: 2009/11/01 12:40
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918

私達は曇先輩のデスクに集まる。
曇先輩がカーソルを動かし、そのままあるファイルをダブルクリックした。

「これがその内容です。前にも言いましたがこれは人間関係のバグです。犯罪を犯したバグでないので繊細に扱ってください。まず最初に、今日依頼人と会う約束をしています」

「あらそう」
雨雲先輩が言う。
……数秒の沈黙。そして、
「ええええええええ!?」
曇先輩以外大絶叫。
「ちょっと! そんな話聞いてないわよっ!」

「てか、いくら依頼人でも呼び出してもいいのかよ? 電脳丹手部がこんなメンバーですって言いふらしてるようなモンじゃねぇーか!」
雨雲先輩と空雷先輩が興奮しながら言う。
「大丈夫です。彼女は——」
曇先輩が手で耳を押さえながら言ったその時、扉が揺れた。
そしてそのままぎこちなくガタガタと開き、そのまま埃が舞い上がった。

「ゲホゲホゲホゲホッ……」
むせる声。
そのまま人影はゆっくりと歩く。
「ようこそ。我電脳探偵部へ——」

曇先輩がゆっくりと立ち上がり、そのまま私達の先頭に立つ。
その人はうちの制服を着こなしていて、髪が短くメガネを掛けていてどこにでもいる普通のかわいい女の子って感じ。

背丈は私と一緒くらいだから……一年生?
「どうも。来瀬 朱音(くるせ あかね)と言います。一年生です」
やっぱり一年生なんだ……。
「あなたが依頼人?」

雨雲先輩が言う。
「はい。今回もよろしくお願いします」
今回も? この「も」はなんで?
「皆さん、頭にハテナマークが浮かんでいますよ」
曇先輩が言い、そのまま続ける。
「彼女は我電脳探偵部に一度助けられているんですよ」

「ええええええええええ!?」
本日二回目の大絶叫。
「だから面会をさせたんです」
曇先輩が淡々と言う裏腹に、空雷先輩が慌てて言う。
「何の事件だよ?」

「小説を書いていたブログのバグをデリートした事件を覚えていませんか?」
確か、あの時……そう! 私がまだ電脳探偵部に入りたての時っ! {電脳イジメ(あるいは科学の裏にある闇)参照}

「あの時の依頼主——そして現在最年少作家で爆発的大ベストセラーリアルかくれんぼを書いた花巻 朱音(はなまき あかね)本名来瀬 朱音です」
「えええええええええええ!?」

本日三回目の大絶叫。
「あの時の依頼主があの人気のリアルかくれんぼを書いた花巻さんっ!?」
私が言う。
「信じらんない……」
雨雲先輩は目をまん丸くしている。

「そーいえば、あの時ブログで書いてた小説って——」
「リアルかくれんぼです」
「えええええええええ!?」
来瀬さんの言葉で本日絶叫四回目。

「それじゃぁ、俺たちがデリートしなければ、今ブログは——」
「無くなってたかも知れません」
曇先輩が言う。

「信じらんない……電脳探偵部がこんなことに関係してたなんて……」
私が言う。
空雷先輩が来瀬さんに聞く。
「でも、公表してるやつを本にしてもいいのか?」
「それはブログで公開していたということを前提にして売り出したんです」

雨雲先輩も聞く。
「オファーで? それとも投稿?」
「オファーで」
「すごーいっ!」
雨雲先輩と私の声が重なる。

「今回は顔が見えなかったので、文で感謝の言葉しか言えませんでしたが、今回は顔を見て言うことができます。あの時は本当に有難う御座いました」
そう言い深々と頭を下げてお礼をする。

「まっ! デリートしたおかげで人気作家になっちゃったんだもの! やりがいがあってよかった!」
雨雲先輩が言う。
「よかったなっ!」
「よかったですっ!」

私と空雷先輩が言い、来瀬さんが微笑んだ。
「さて——。昔の話をしている場合ではありません。本題です」
曇先輩がキーボードの指を滑らし言った。

その言葉で私達の空気が張り詰める。
「二度あることは、三度あるに限らず、一度あることは二度あるのね」

雨雲先輩が言う。
「今回も、俺たちが全力でバグをデリートするぜっ!」
空雷先輩が親指を来瀬さんに向かって突き出す。
「はい」

来瀬さんが返事をした。その顔色は、どこか悲しそうだった。
「それでは来瀬さん。ある物を見せて下さい」
曇先輩が言い、頷く来瀬さん。
私達は、そのある物を見て大きく目を見開いてしまった……。

Re: ——電脳探偵部——  ( No.4 )
日時: 2009/11/01 12:40
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918

「これっ……何?」
私が震える声で言う。
制服を捲り上げ、背中を見せる。
それはとても痛々しい傷だった。

何度も何度も殴られ、たばこを当てられ火傷をしたような、刃物の後もあり、くっきりと平手の跡がついている。
「これって……家庭内暴力?」
私が言う。

みんなは何も言わない。現実を……受け入れたくないだけ……。
「これは私の親がやったものです。父からはたばこ、母からは刃物、暴行を受けました」
来瀬さんがゆっくりと言う。

その顔は、悲しみと絶望の色に塗られてる。
こんな状態でずっと小説書いてたんだ……。
……私達の間に重い沈黙が渦巻く。
この沈黙を破ったのは曇先輩だった。

みんなどう反応したらいいかわからない……。
「ドメスティックバイオレンス……DVです。彼女はDVを受けていて体に複数の傷跡があります。それに学校でもいじめを受けているんですよね?」
「はい……」

来瀬さんがか細い声で言った。
そーいえば、私達一年生の間でイジメが起きてるって。それは一年A組……もしかして!
「来瀬さん、何組?」
「A組です……」

やっぱり……。
イジメが起きてるって有名だったのは、来瀬さんだったんだ……。
「私……今、居場所がなくて……本の世界に閉じこもることしかできなくて……」
そう言って、目から雫がこぼれる……涙だ。

「あら……ごめんなさい。私……私……」
そう言って、一生懸命手で涙をぬぐう。
だけど、次から次へと涙がこぼれる。
その時、雨雲先輩がゆっくりと近づいていき、来瀬さんを抱きしめた。

「えっ……!?」
驚きで涙が止まる。
「泣いてもいいのよ……思いっきり泣いて。我慢なんかしなくていい……その抑えてきた涙、思い、それをすべて洗い流して……大丈夫。電脳探偵部はここにいる」

雨雲先輩がゆっくりと耳元で囁く。
その瞬間に、止まっていた涙が勢いよく流れだす。
「うっうっうっうっ……」
そして——、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次から次へと目から涙が流れる。

それと同時に叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
それはまるで滝のように——。
滝も同じように轟音を響かせながら流れている。
人間が泣く時も、叫びながら泣く。

「叫び」は滝の轟音。「泣く」は滝の水。
人間が泣く時って……自然から来てるのかな。
その時、
「あーうるっせっ! ウジウジ泣いてんじゃねぇーよっ!」

空雷先輩がその辺にあった椅子を蹴りあげる。
「『居場所がない』? 居場所がないならつくりゃーいいじゃねぇーか! 悲劇のヒロイン演じてるんじゃ——」
「空雷っ!」
その時、雨雲先輩の怒鳴り声が空雷先輩の言葉を断ち切る。

「空雷は何もわかってない! 泣いて泣いて叫んで叫んで……こんなにズタズタになって……。それを『悲劇のヒロイン』だってぇ? そんな事誰も望んでないわよっ!」

「あぁー何もわかってねぇーよ! だって本人じゃねぇーんだもんっ! だがな一つ言わせてもらうけどなっ! お前抵抗したか?」
……沈黙が訪れる。

「どーせ抵抗してなくて俺らに頼ったんじゃねぇーか! 前のバグは別として、今のバグは自分でもどうにか出来る事なんじゃねぇーか? まず人に頼らず、自分で頑張れよっ! 根性見せろよっ! 我慢してるだけじゃぁーナメられてばっかだぞっ! そんな事望んでなくても、お前がそうしてるんじゃねぇーか!」

パンッ!
……風船が割れたような音が響いた。
「サイテー……」
雨雲先輩が低い声で言う。
その瞳には鋭い光が宿っている。
空雷先輩の左頬には大きな手形。雨雲先輩が手を下ろす。

「頑張ったけど無理でしたの方がすっごく説得力はあるよ。だけど——無理して頑張らなくてもいい時だってあるんじゃないの……」

そう言い、沈黙がまた訪れた……。

Re: ——電脳探偵部——  ( No.5 )
日時: 2009/11/01 12:40
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918

「ごめんなさい……」
この沈黙を破ったのは来瀬さんだった。
「私……ちょっと頑張ってみます。ありがとうございました」

そう言い、ペコリとおじぎをする。
「朱音ちゃん!」
雨雲先輩が引き留めるが、そのまま去って行ってしまった。
「さて——。依頼人がいなくなった所で」
そう言ったのは曇先輩。

「空雷先輩、あなたはまだ何もわかってない」
曇先輩がかちゃかちゃとキーボードの上に指を滑らす。
「皆さん、これを見て下さい」
その言葉と共に私達は、デスクにまた集まる。

「『学校では朝登校して来たら水浸しの自分の机。授業が始まり教科書を開けると文字が見えないほどの落書き、それでいつも忘れ物にチェックされ先生に怒られ、笑われる。先生が生徒に背を見せたら紙くずを投げられる。移動教室の時では自分の椅子がない。お弁当ではわざと当たりいつもお弁当は落下。誤りもせずそのまま立ち去る。帰り支度の時はカバンが見当たらない。やっと探し出し帰るが道で待ち伏せされ何かをおごらされる』……これは私のデータです。何かわかりますか?」

曇先輩が長い長い言葉を切る。
……沈黙。
わかりきった事をみんなは口に出したくなかった……。
「学校でのいじめです」
曇先輩が見るも見かねて言いだす。

「『家では帰ってもおかえりとただいまの声はなし。一直線に階段を駆け上がりそのまま自分の部屋へ。大半は自分の部屋で過ごす。すこしの生活音でも怒鳴られ、言うことが聞かなかったら暴行を加える。夕飯はいつもコンビニで買ったお弁当。時間制限がありその時間までに食べれなかったら暴行を加える。リビングでゆったりとテレビを見ることもできず、数分でもリビングに居れば暴行。トイレに行くことも限られた回数。夜は寝る前に今日の暴行の傷跡を自分で消毒し、痛い体を押さえながら寝る』……これが何だかわかりますか?」

曇先輩がまた言う。
しかし、私達は言わないのをわかっているため、
「家でのDVです」
そのまま続けた。

「彼女は本当に居場所がないんですよ……。いつもこの毎日の繰り返し……。すがるものは何もないのですよ。あなたなら耐えることができますか?」
曇先輩が静かに言う。
……沈黙が訪れる。

その時、雨雲先輩がしゃがみこんだ。
「私……怖い……。こんな事、自分で体験してないのに、まるで体験した見たい……。聞くだけで怖いし、悲しいし、虚しいし、誰も……誰も助けてくれないなんて……」

体が震えてる。震えを抑えるように雨雲先輩は体をさすった。
「あれ……?」
気がつくと私の手も……そして、空雷先輩や曇先輩まで……。
「みんな怖いんだ……」

私がつぶやく。
すると、みんなの頬からゆっくりと、涙が伝った。
「空雷……わかった?」
雨雲先輩がゆっくりと言う。
「誰も助けてくれない虚しさ、すがることのできない、居場所がない。こんなの……どうやって抵抗しろって言うの!?」

雨雲先輩が立ち上がり、空雷先輩の目を見据える。
「こんな毎日の繰り返し……抵抗する暇、精神的な隙間なんてないじゃないっ! 抵抗しろなって酷よっ! あなたは……それを……軽々しく言ったのよっ!」

「雨雲先輩と同感です。この現実を見ていたら、あんな言葉は出なかったのかも知れません」
曇先輩が静かに言う。
「空雷先輩……」

私は空雷先輩に一歩踏み出す。
「よく考えてみて下さい」
私がゆっくりと言う。
空雷先輩が私達の目をそらし、言った。
「ああ……。わかったよ。もう抵抗なんてしろなんて言わない」

「空雷(先輩)っ!」
私達の声が揃う。
「本当!?」
雨雲先輩が興奮しながら言う。

「……ああ」
「やったぁー!」
私と雨雲先輩は抱き合って喜ぶ。
「はぁー……やっとここまで行くことができましたよ」

そう言い、曇先輩はため息をつく。
「お前ら、騒ぎ過ぎなんだよっ!」
空雷先輩が耳を押さえながら言う。
「何よっ! 自分だってあの時『抵抗しろっ!』だの騒いでたくせにっ!」

雨雲先輩が耳を押さえても聞こえるボリュームで言う。
「あれは騒いでなんか——」
「静かにして下さい」
曇先輩が静かに言うと、シンとするこの場。

「騒ぐのはバグをデリートしてからにして下さい」
曇先輩がカーソルを動かし、あるファイルを出す。
「ここからデリート計画を発表します。気を引き締めて」
「はいっ!」
私達の声が揃う。

Re: ——電脳探偵部——  ( No.6 )
日時: 2009/11/01 12:41
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918

「今回のデリート計画は——」




「ごめんなさぁーいっ! お邪魔しまぁーすっ!」
私達は一斉に大声をあげる。
電脳探偵部のみんな、そして来瀬さん。
私達は、ななんとっ!? 来瀬さんのお家にお邪魔していますっ!
「おっお母さん……。私のお友達。入れてもいいでしょ?」
来瀬さんが脅えた様子で言う。
お母さんは
「そんなのお断りよ。さっさと帰ってちょうだいっ!」

そう言い思いっきりドアを閉めるお母さん。
その時っ!
「まぁまぁそう言わずに」
曇先輩がドアに足を引っ掛ける。

「入れてくれたっていいでしょ?」
来るぞっ来るぞっ来るぞっ!
そう言って、曇先輩がニコッと笑う。
キターーーー! 曇先輩の悪魔の微笑みっ!

その瞬間、お母さんの動きが止まり、静かにドアを開けた。
「入ってもいいって」
無邪気に笑う曇先輩。
私は来瀬さんの肩をギュッと持ち、グイッと体ごとこっちに向けさせる。

「いい? 来瀬さんはあんな先輩について行っちゃ駄目よ」
私が力を目に込めて言う。
この言葉の意味が分からない来瀬さんはキョトンとしている。
そして、そのまま私は家に入った。

訳が分からないという顔をした来瀬さんを引っ張って——。

「さて——。計画は発表しました。そこで、おさらいをしたいと思います」
曇先輩の言葉で始まった。
私達は今来瀬さんの部屋で円になって座っている。

曇先輩を時計の12としたら時計回りに、私、雨雲先輩、空雷先輩、来瀬さんとなっている。
「計画はまぁ簡単に言えば、劣り作戦。まず、劣り役が暴力を受けてその場面を私達が抑えるというもの——。劣り役は——来瀬さん」

曇先輩の鋭い目が来瀬さんを捉える。
これは誰しもが反対した。だって、もうデリートするのにもう暴力を受けなくていいじゃない——っていうのが、私の考え。

だけど、この考えは暴力を受けなければ始まらない。
だから一番暴力を受ける確率、そして受けやすく相手がやりやすい人——それは、来瀬さんしかいない。

「もう来瀬がやらなくたっていいじゃないか!」
空雷先輩がガラクタ山から吼える。
「この計画しかしっかり場面を抑えられないんです」
曇先輩が「空雷先輩は、全然わかってない」というような表情で言う。

「だからって、デリートするときぐらい暴力を受けなくたっていいんじゃないんですか?」
私が言うと、雨雲先輩が相づちを打つ。
「いいんです」
このか細い声は来瀬さん。

「このデリート計画は、私は全然反抗してないのに、あなた達にだめもとで頼んだんです。これくらい、わたしがやります。もう……慣れてますから」

そして、力のない笑みを見せる。
来瀬さん……こんな事、本当は慣れたら駄目なのに……。

この来瀬さんの言葉は、私達に大きく圧し掛かってきた……。
——絶対にこのデリートは成功させなければならないっ! 来瀬さんの為に——!
私達は決意した。

その目で来瀬さんを見る私。
その時っ!
「朱音……ちょっとこっちに来なさい」
お母さんから言葉がドア越しに掛かる。
「はい……」
か細い声で答える来瀬さん。

その時、私達を見る。
その目は恐怖で脅えている目……呼んでも、大声で叫んでも、誰も助けに来てくれない孤独感……。
そんな目を私達は見てきた……だから助けたいっ!

——行って! 前に進んでっ! きっと私達が助けに来るっ!
私達はそんな思いを込めて、来瀬さんに見つめ返す。
来瀬さんは、そんな私達の目に答えるように、綺麗な笑顔で出て行った。

「さて——」
曇先輩が立ち上がる。
「ここからが本領発揮です」


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