ダーク・ファンタジー小説
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- ゆめたがい物語
- 日時: 2017/06/03 23:50
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: ZpTcs73J)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10136
お久しぶりの方はいらっしゃるのでしょうか。
社会人になり、二年目になってやっと余裕が出始めました。
物語の事はずっと頭から離れず、書きたい書きたいと思い続けてやっと手を出す事ができました。
ほとんどの方が初めましてだと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
描写を省きつつ、大切な事はしっかり書いて、一つの文章で、後々に繋がる描写がいくつできるか、精進していきたい今日のこの頃。
と言うわけで、構成ぐちゃぐちゃ、文章ボロボロ、誤字脱字がザックザク……と、まあ、相変わらずそんな感じですが、よろしくお願いします。
二部開始
芙蓉と三笠、兄妹水入らずの旅行。一方で動き出す福井中佐と西郷隆。そしてシベルからは修学旅行でボリスが訪れていて……
——春の夜の、儚い夢も、いつの日か、願いとなって、色を持つ。色は互いに、集まって、悪夢を違える、力となる。
アドバイス、コメント等、大募集中です!
お客様(ありがたや、ありがたや^^
風猫さん
春風来朝さん
夕暮れ宿さん
沙由さん
梅雨前線さん
ヒントさん
彼岸さん
夢羊さん
- Re: ゆめたがい物語 ( No.82 )
- 日時: 2014/03/31 23:43
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: In.A84i5)
駆け込み需要でごった返すドラッグストアのレジ打から生還したら、素晴らしいイラストが私を待っていてくれた……!
一気にバイトの諸々が吹っ飛んだ気がします^^
ありがとうございました!
自分が好きだからやってるって言うのも続ける上ではすごく大切なんですよね、でも、やっぱりそれに対して誰かの存在が加わると、無敵なほどに力が出るんですよね、明日への活力、ありがたや^^
この物語は三部構成で、それぞれテーマは現在、過去、未来、の予定なんですね。そういうわけで、第一部の今回は現在のために、いろいろな人が動いていく感じで、二部は過去にさかのぼることで、自分の姿を見つけていく感じ、三部は願いを叶えた後、自分の行くべき道を模索していく、みたいな。
そういうわけで、あと何回か更新したら、二部に移って主にイヴァン、竹丸を主軸に物語が動いていくと思います。
今後とも、よろしくお願いします^^
改めまして、ありがとうございました!
- Re: ゆめたがい物語 ( No.83 )
- 日時: 2014/04/18 17:21
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: In.A84i5)
ゆめの続き
季節が過ぎるのは早い。
暑かったと思ったら、知らないうちに肌寒くなり、雪が降ってくる。そして真っ白な景色に慣れた頃、新芽が育ち、梅の花が上品に微笑む。雪は役目をなくし、別れを告げる間もなく、跡形もなくなってしまうのだ。
東郷芙蓉は、梅の香りと共に、無事退院した。
ずっとベッドの上だったのだから、筋肉への影響は大きかった。しかし、リハビリに耐え、寝たきりだった少女は、松葉杖で立ち上がれるほどにまで回復した。
——おそらく、イヴァンかその師匠辺りが手を加えただろうが。
「ま、ともあれ。これで芙蓉は大丈夫だろ。中学、楽しいと良いな」
海岸病院の待合室。そのソファにふん反り返りながら缶ジュースを手に言ったのはイヴァン=ボルフスキー。いつものきれいな笑顔を浮かべている。
だが、その一方で、少し疲れたように、目の下には薄くクマが出ていた。
「ありがとう、イヴァン。芙蓉を助けてくれた上に、退院の日にわざわざ大和に来てくれて」
東郷三笠は、隣の親友に、何度目か分からないが、頭を下げた。待合室のテレビではニュースが放送されている。信憑性の明らかではない昼間のワイドショーでは、“五十年の睨み合いを経て、とうとうシベルと衝突か”とある。
「俺に恩のあるお偉いさんは多くてな、今くらいならまだ大和に来れるさ。状況は良くないけどな、シベル世論も、大和世論も含めて」
イヴァンはため息がちに苦笑いをした。黄緑色の髪をくしゃくしゃにかいて、そのニュースから目をそらす。
「シベル人のお前が芙蓉の、俺たちの恩人だから、シベルとだけは戦いたくないな」
「それは俺もだ。東郷家がいなかったら、俺は立ち直れなかったんだからな。ま、手っ取り早いのは俺たちがそれぞれ出世して、政治にまで口を出せるようになることだろ? 頑張れよ、エリート男子高校生」
力強くいくらか年下の親友の肩を叩くと、イヴァンはソファから立ち上がり、空き缶をゴミ箱へと放り投げた。ゴミ箱の横には、大きな鉢に美しい芙蓉の花。季節ではないが、活き活きと天へと伸びていた。
「福井中佐、非番の日に三笠たちの引っ越しの手伝い、ご苦労様でした」
「いえいえ、織田副本部長もわざわざこんな大変な時期に」
そんなことを言いながら、引っ越しの段ボールの積まれるダイニングで、のんびり熱い茶をすすっているのは、エリート国防軍人福井竹丸中佐と、警察機構憲兵隊ナンバーツーにあたる織田やじり副本部長。見る人が見れば錚々たる顔ぶれだが、そんなことはお構いなしに、終止和やかな空気が流れていた。
「書類上とはいえ、私は三笠の父ですからね。娘はへそを曲げて、芙蓉にだけぬいぐるみやら文房具やらたくさん買って、こっちに来やしませんが」
「三笠も、織田副本部長のような立派な人が後見についていて、内心とても心強く思っていますよ。特にこれからが、大変でしょうし」
意味ありげな目配せに、織田やじりは静かにうなずいた。
「キツネ面と政府のつながりは、私だけではどうしようもない。国防軍にも協力を頼むかもしれませんが、どうぞよろしく」
「ええ。私たちも全力を尽くしましょう」
整った、年齢にそぐわない若々しい顔からは、神妙な空気が流れ出す。引っ越しのついでとはいえ、互いに、今日話せて良かったと、そう思っていた。
突然、玄関のベルが鳴る。立ち上がったのは織田やじりだった。
「部下が、どうしても来たいと言ってな」
すると、福井中佐も同じように立ち上がった。椅子にかけてあったコートを優雅に羽織り、床に置いていた黒い鞄を持ち上げる。
「私はそろそろ帰りますよ」
「ああ、そうか。墓参りの日か」
「ええ」
短いやり取りだった。
その中で、両者の中に、それぞれ悲しみの影が見え、そして福井中佐は背を向けた。止まったままの銀時計。時が刻まれることは、まだない。
玄関の前に立っていた西郷隆は、出てきた福井中佐とちょうどすれ違った。結んだ茶髪が、頬に触れて、離れていった。品の良い香と、うっすらとタバコの残り香が鼻を突く。軽く頭を下げた中佐は、何も言わずに、三笠たちが新たに住むアパートを出て行った。
西郷隆は、その背を見つめ続ける。つぶやいた何事かは、まだ冷たい春風の中に消えていった。
海岸病院にある芙蓉の鉢植え。その向こう側の、エレベーターの扉が開いた。イヴァンと三笠は、二人同時にそちらに目を向ける。看護婦に付き添われ、松葉杖の少女が出てきて、こちらに満面の笑みを浮かべている。
「お兄ちゃん! イヴァンお兄ちゃんも!」
その笑顔を見て、三笠は片手を高く上げた。パッツンと無造作に切った前髪、その下から、裏表もなく、純粋な年相応の笑顔が、妹のためだけに輝く。
心からの、三笠の笑顔。
イヴァンは、こちらも微笑む。やっと見られた。三笠が心から笑える日を。
嬉しさと、ちょっぴりの誇らしさ。笑顔のつぼみは次第に満開へと向かい、芙蓉が二人の元に歩いてくる頃、二人の兄は踊りださんばかりの様子、そんな早春の昼下がりであった。
——教会の祭壇。
ステンドグラスを通した太陽は、様々な色を帯びて、人々の元へと降り注ぐ。大きな時計が中央に掲げられ、また、高い天井はどこまでも続くようで、吸い込まれるようであった。
祭壇の上には一つの棺。そのふたを開けると、中は花で埋め尽くされているだけで、実は誰もいない。
そっと、花をかき分ける。すると、そこには扉があった。鍵は開いている。好奇心に負けて開いたら?
その先は、暗い暗い地下。湿っぽく、水が滴り落ちる穴を、朽ちかけた梯子伝えに降りていくと、巨大迷路のような地下道が広がっていた。
「シベルと大和の、分断に成功しつつある。五十年に渡る休戦協定を白紙に。それこそが、われわれの第一歩」
男の声が、地下道で響いた。反響し、その人物像は掴めない。
冷えきった土壁を、ろうそくの明かりがぼんやりと照らす。
「教育整備の改革も、急がねば」
こちらはまた別の男。やはりどういう人物か分からない。
「医療改革も」
「ムイ教国家の樹立」
別々の声が同時に聞こえた。これは、おそらく女のものだろう。
水滴が、地下道にぽつりと落ち、はじめの男が口を開いた。
「そして、キツネ面の抹殺」
雪解けと共に、見えなかったものは顔を出す。良いものも、また悪いものも。
時代は動き出した。教会の大きな時計は、時を刻み続ける。
ステンドグラスは依然として、輝き続けていた。
第一部 完
- Re: ゆめたがい物語 ( No.84 )
- 日時: 2014/04/18 23:55
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: In.A84i5)
第一部終了のあとがき的な何か
2012年の1月くらいから、よく続いたなーと我ながら思い、それまでいろいろあったなーとしみじみ思い出す次第です。
いつか書いたように、大学受験期、折れそうな心をつなぎ止めるために構想し始めた物語です。物語に支えられ、無事志望校に入り、気付けば大学生活も折り返し地点をこの前過ぎました。
思い入れのある小説ですが、このゆめたがい物語と同じくらい、好きな物語があります。ノーテンス〜神に愛でられし者〜という中学生の頃から書いている小説です。この物語は、ノーテンスを別方向に改訂していった結果なので、所々に似た人物が出てきます。
ノーテンスは、当時の文章があまり好きになれず、今書けない状況が続いていますが、いつか、一から書き直したいと思っています。
飛龍→三笠 リョウ→イヴァン 勇一→竹丸 アレス→ボリス ティム→アントン
例を挙げるとするならこんな感じですね。
ゆめたがい物語の主題は、夢を叶えたあと、自分を見つけていくことだと思うんですね。夢を追っている時って無我夢中で自分を見つめる時間なんてなくて、願いが叶ったあと、ふと時間ができて、いろいろなことが考えられるようになるんです。夢を叶えたあと、自分はこれからどこに向かいたいのか。
こうやって悩んでいる時期の人間は、とても弱くなると思います。ゆめたがいも、夢を追っている人間は強いんです。目標を失ったり、諦めた人間は、やはり弱くなる。その弱さから、自分を見つけていく。そういった物語を書いていきたいものです。
この物語は三部構成の予定で、それぞれ現在、過去、未来と、書きたいものがあります。一部は現在で、ゆめに向かって走り続ける。しかし、過去を知ること、けじめをつけることで、歩みだせることもあると思います。その意味で、二部の主人公はイヴァンと竹丸の予定です。
この物語を読んでくださっている人が、いったい何人いらっしゃるのか。それは分かりません。分かりませんが、この場で全ての皆様にお礼申し上げます。
そして、もしよろしければ、これからもお付き合いいただければ幸いです。
おまけ
第二部に進む前に、外伝と言うか、短編的な何かを挟みたいと思います。
ネタは全く考えていません。
この文章を読んでくださっている方で、お題や人物、キーワードなど、何でも良いので案わをいただければ、とてもありがたいです。
こちらに書き込んでいただいても、Twitter経由でも、もしよろしければ、よろしくお願いします。
- Re: ゆめたがい物語 ( No.85 )
- 日時: 2014/05/03 00:28
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: Pc9/eeea)
番外編 その一
アントン=イヴァノフ軍曹
俺の名は、アントン=イヴァノフ。
しがない軍曹だ。
軍曹と聞いて笑うか? 都会人。
そりゃ、同期の出世頭はもう大尉で、佐官ももうすぐだって話だ。
だがな、田舎の小学校出としちゃ、二十一で軍曹なら奇跡みたいな出世だよ。
「イヴァノフ軍曹、大佐がお呼びです」
おっと、大佐からのお呼び出しだ。
なに、今日は辞令交付の日でな。こんな山奥の駐屯地なんかとはおさらばできるかもしれないってことだ。
都会に出るのが夢だった。
見渡す限りの農地と家畜の臭い。軍隊でも何でも、出世さえすれば、都会でかっこ良い生活ができる。そんなのに憧れて、家族の反対を押し切って軍隊に入った。
「アントン=イヴァノフ軍曹、入ります」
この大佐は、いわゆるエリートって奴で、大学だって出た。学のない奴を馬鹿にしているが、俺の悪口は言わない。
別に、俺を認めているわけじゃないぜ?
単に、同期のイヴァンとお近づきになりたいだけさ。軍医のイヴァン=ボルフスキー大尉。あいつさえいれば、軍での死傷率は大幅に下がるもんな。
……馬鹿め。イヴァンは人を見る目があるんだ。同じ高学歴なら、大和の福井竹丸中佐を見習うんだな。
「転属だ、イヴァノフ軍曹」
ほら! 来た! この山奥から出て行ける!
今まで長かった。勤務地は山奥ばかりで、一年の半分以上は前線に飛ばされる。前線で戦って戦って、殺されかけたりヤバかったり……ついたあだ名は“不死身のアントン”。
次の転属先、その名を見ると。
「……バストーク」
「東側の紛争地帯だが、君なら生き残れるだろ。幸運を祈るよ」
俺の名は、アントン=イヴァノフ。
最近、おしゃれを目指してひげをはやしてみた、そんな叩き上げの軍曹。
かっこ良いだろ?
いくつかテーマをいただいているのですが、はじめにきたのは私としては意外な「アントンを主人公に」というお話。何でもノーテンスを読んだことのある方で、ティムと共通するならと言うことでした。
うーん、アントンはまだほんのちょっとしか出てきていなかったのでどうしようかと思いましたが、とりあえずこんな感じでしょうか。
イヴァンの同期で、同じく小学校上がり。詳しくは二部になりますが、数少ない同期の生き残りと言うことになります。
そんなこんなで、ゴールデンウィーク中はできる限り短編を毎日あげたいと思います。
次は竹丸関係かほたる関係かしら。
お付き合いいただければ幸いです。
お題もまだ募集中です。
- Re: ゆめたがい物語 番外編 ( No.86 )
- 日時: 2014/05/05 00:18
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: Pc9/eeea)
「ま、歴史なんてそんなもんだよ」
昼下がりであった。
若干の生暖かさのある風を真横から受けつつ、青年は連れの少女を見ることなく、ソフトクリームをペロリと舐めた。
澄んだ青空の下で、切れ長の碧眼はくすむ。黄緑色の髪が、風の中を流れて、先にクリームが付いた。
「前の世代が棚上げした課題が、こうやってよりややこしくなって、次の世代に降り掛かるんだ。大和が悪い、シベルが悪い、そう言う単純じゃ、ないと思うんだけどな」
少女とイヴァンは、ほとんど面識は無いに等しかった。
いや、ほんの数日前に一回だけ、師匠を捜して山に入るイヴァンが一休みした軒先、その家に住んでいたのがこの少女だった。
アイスはイヴァンのおごりである。軒先の恩もあるが、今日はもう一つ、イヴァンは彼女に救われたのだ。
——何シベル人がでかい態度で座ってやがんだ。
三笠の妹、芙蓉の治療を終えて数日後、しばらく大和に滞在しているイヴァンは、日に日に大和人の対シベル感情が悪くなっていくのを感じていた。
この日も公園のベンチで本を読んでいただけで、身なりの悪い男たちに喧嘩を売られた。この一ヶ月、大和メディアは過剰なほど、シベルへの批判を続け、世論を煽っている。その余波を受けた形だろう。
——シベルメディアも同じようなもので、大和のみを責めるつもりはないが。
こちらが手を出しても状況を悪くするだけ、だからと言って、無視をし続けていたらこちらに手を出しかねない。
本を閉じて静かに考えていたイヴァン。その横から、男たちに臆することなく近づいてきたのが、この少女であった。まだ、弟のボリスと同じくらいかそのくらいだろう。
——この前のお兄さんやないですか!
その声に、男たちは少女一斉にを睨みつける。こういう場合、シベル人に対して好意的な大和人も、彼らからすれば排撃の対象である。
一本に結んだ少女の茶髪が、つややかに風を流れる。整った笑顔は、男たちからの罵倒の中でも変わることはない。
——邪魔、しんといてくれます?
笑顔が、突然鋭いものに変わった。小学生か、中学生、とてもそうは思えないほどの迫力であった。
少女は右手を真横に突き出す。何がしたいのか。男たちも、またイヴァンも、全く理解できなかった。
少女の指先が、かすかに動いた。色白の肌、かすかに煌めく。
次の瞬間には、男たちは近くの街灯の下まで、何か強い力に引っ張られたかのように飛んでいき、何故かそこからどんなにもがいても動けなくなってしまった。
チカラだ、とイヴァンは直感的に思った。
唖然とするイヴァンの手を引いて、少女はその場からなるべく遠くへ行こうと走り出した。男たちは何かに縛られたまま、口すら満足に動かせず、モゴモゴいうだけである。
かくして、イヴァンと少女は別の広場でゆっくりとアイスを食べていたのだった。
「大和人は基本的に戦争では自分たちが勝ったと思ってるし、シベル人は負けたと思ってないし、何かと要求して上から目線の大和が気に入らないし。このひずみの積み重ねが、今の事態なんだよな」
「ごめんなさい、お兄さん悪くないんに、大和人が嫌な気分にさせてまって」
「さっきも言ったように、どっちが悪いってことはないよ。まあ、俺学がないから分析できないけれど、でも、変だよな」
シベル人の青年はそう言うと、残りのソフトクリームをコーンごと口の中に押し込んだ。学がない。そうイヴァンは言ったが、それ故に広い視点に立って彼は情勢を見極められる。その視野の中でこう思うのだ。不自然だ、と。
まあ、小学生くらいの女の子にずっとする話でもないだろう。そう思っていヴァンは手近な話題にすり替えた。
「そういえば、君はあの山奥から、街にはよく出てくるのかい?」
「はい、人を探してるんです。お父さんで、敦賀って名前の学校の先生知りませんか?」
少女は外国人に向かって、期待を込めたまなざしを送った。無駄、と言う言葉は彼女の中にはないのだろう。曲がりなりにもチカラを持つ少女である。その人生は、短いながらもきっと大変なものだったはずで、もしかしたら彼女の願いと言うのは、この父親に関係することなのかもしれないと、イヴァンはまたもや直感的に思った。
「うーん、ごめんね、学校の先生の知り合いは少ないんだ」
「そうですか……あたし敦賀かぐやって言います。お兄さんは?」
「俺はイヴァン。シベル軍戦闘兵科付き軍医大尉のイヴァン=ボルフスキー。よろしくな、かぐや」
そういうと、イヴァンは少女、かぐやの頭を撫でた。どこか親友の妹を彷彿させる、かわいらしい笑顔であった。
今回いただいたお題はくださった方のみ分かると言うことで。
敦賀かぐや。主に、三部あたりに出てくるかなーと思っているキャラクターで、後半部分にあったように、父親を捜しています。敦賀というお父さんについては本編で少しだけ触れた気がしますが
そういうわけで、お題ありがとうございました^^
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