二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
- 日時: 2013/04/14 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394
今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。
参照をクリックすれば前作に飛びます。
では、英雄達の新しい冒険が始まります……
皆様にお知らせです。
以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
となっています。
皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。
登場人物紹介等
味方side>>28
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624
目次
プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695
第十六幕 錯綜
一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756
第十七幕 決戦
零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕
>>774 >>812 >>818
最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851
2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825
あとがき
>>852
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
- Re: 549章 相変異 ( No.805 )
- 日時: 2013/03/27 04:17
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「っ!? ズルズキン!」
トノッパーが消えた直後、ズルズキンが吹っ飛ばされた。
ズルズキンは防御力が高いので致命傷にはならなかったが、今のトノッパーの動きは全く見えなかった。
「速い……!」
殻を破るで素早さが上がっているとはいえ、黙視できないほどのスピードとなると、龍の舞があるズルズキンでもきついだろう。
「エアスラッシュ!」
ザートの下まで戻って来たトノッパーは、空気の刃を飛ばす。その数や大きさは初撃のものよりもパワーアップされているが、スピードは変化していない。
「龍の舞でかわせ!」
ズルズキンは龍の如く力強く舞い、刃を回避する。
「ぶち壊す!」
そして全てを破壊するかの如き勢いで拳を振りかぶるが、
「攪乱飛行だ!」
瞬時トノッパーは姿を消し、次の瞬間にはズルズキンが吹っ飛ばされていた。
「追撃せよ! エナジーボール!」
続けて自然の力を凝縮した緑色の球体が発射され、トノッパーはズルズキンに追撃をかける。
「ぐぅ、ぶち壊す!」
だが寸でのところでズルズキンが拳を振るい、球体を破壊した。
(随分と速くなったとは思ったけど、それでも攪乱飛行だけか)
攪乱飛行は先制技でも必中技でもないが、素早く動き回っては隙を見つけ、虚を突くように攻撃する技だ。その攻撃の仕方から、素早さを急上昇させる殻を破るとは相性が良いのだろう。
「ズルズキン、諸刃の頭突きだ!」
「トノッパー、エアスラッシュ!」
ズルズキンは姿勢を低くし、頭を突き出して特攻。対するトノッパーは空気の刃を無数に飛ばしてズルズキンを切り刻むが、ズルズキンが止まる気配はない。
「エナジーボールだ!」
自然の球体も発射し、ズルズキンに直撃しては爆発するが、それでもズルズキンは止まらない。
「そのまま突っ切って来るつもりか。ならばトノッパー、攪乱飛行!」
真正面から迎え撃ってもズルズキンは止められないと判断し、トノッパーは目視できないほど高速で動き回り、ズルズキンの側面に体当たり。真正面からでは駄目でも、真横から衝撃を与えることでズルズキンを吹っ飛ばす。
「ズルズキン、反撃だよ! ぶち壊す!」
「無駄だ! 攪乱飛行!」
ズルズキンは素早く起き上がって拳を構えるが、トノッパーもすぐさま追い打ちをかけ、またズルズキンを吹っ飛ばした。
「我がトノッパーの攪乱飛行は、最速のガルラーダすらを超える。攻撃速度と精度だけならば、我の手持ちでは最上位に位置するぞ」
やはりトノッパーの強さは攪乱飛行にあるようだ。攻撃するにも攻撃をかわすにも使いやすい上、殻を破るで強化されているのでその性能は相当高い。
「トノッパー、攪乱飛行だ!」
吹っ飛ばされてズルズキンが起き上がるが、またしてもトノッパーの攪乱飛行がズルズキンに直撃し、その場に倒される。
「くっそ、また攪乱飛行……!」
殻を破るで威力が上がっているのはいい。ズルズキンの耐久力は高いので、そう簡単にやられはしない。しかし目に見えないほどのスピードだけは厄介だ。
(目視が難しいとかならなんとかならなくもないけど、まったく見えないのはな……しかも真正面からぶつかって来るならタイミングを合わせて迎撃できるけど、多方向から来るんじゃ対応しきれない。どうするか……)
イリスはズルズキンが龍の舞を習得するに伴い、ズルズキンの技構成を一気に変更した。従来まではわりと加減の利く器用な技構成だったが、龍の舞を習得したことでズルズキンの短所である鈍さが解消され、小技を交えるスタイルから大技で一気にねじ伏せるスタイルへと変化させた。
だが今回はそれが裏目に出てしまった。トノッパーは比較的小柄なポケモンで、しかも攪乱飛行を使用すれば激しく動き回る。大技ではどうしたって捕まえきれない。
(まあ、そんなことは悔やんでもしょうがないか。とにかく今は、どうやってトノッパーの攪乱飛行を止めるかを考えなきゃな)
と思っているうちに、またトノッパーからの攻撃が繰り出された。
「攪乱飛行!」
今度はフェイントを入れて真正面から突っ込んできたのか、後方に吹っ飛ぶズルズキン。ザートもイリスとズルズキンが攪乱飛行を破れないと知っていて、攪乱飛行を多用している。
「攻撃が避けられると分かっちゃえば、跳び膝蹴りも使えない。ズルズキン、諸刃の頭突きだ!」
ズルズキンは姿勢を低くし、頭を突き出してトノッパーに突っ込む。しかし、
「無駄だと言っているだろう! トノッパー、攪乱飛行!」
瞬時に消えたトノッパーは、ズルズキンの背後から激突し、ズルズキンを吹っ飛ばす。諸刃の頭突きの勢いもあり、ズルズキンは思い切り吹っ飛んで大岩に激突した。
「ズルズキン!」
頑丈なのか、大岩は崩れなかったものの、ズルズキンは余計なダメージを受けてしまう。いくら耐久力の高いズルズキンでも、攪乱飛行を無限に耐えられるわけではない。そろそろ反撃しなくてはならないだろう。
だが、
「攪乱飛行だ!」
トノッパーの攻撃がズルズキンに直撃。ズルズキンはまた後方に吹っ飛ばされてイリスの下まで戻ってくる。
「もう攪乱飛行しか使ってないな……攻撃が単調だよ」
とはいえ、ズルズキンの体力ももう残り少ない。攪乱飛行が確実に当たるとするなら、それを連発しているだけでトノッパーはズルズキンを倒せるのだ。他の技を使ってバリエーションをつけるまでもない。
「ズルズキン、諸刃の——」
「攪乱飛行!」
ズルズキンが諸刃の頭突きを繰り出すモーションに入る直前にトノッパーはズルズキンに突っ込み、吹っ飛ばした。
(やっぱり速すぎて見えない……一体どこからあんなスピードが出るん、だ、か——?)
イリスはふと気になって素早く図鑑を取り出した。そこにはトノッパーの説明文と、体の基本的な構造も載っている。
(……もしかしたら)
図鑑を仕舞い、イリスはトノッパーを見遣る。スピードはあってもスタミナはないのか、トノッパーは立て続けに攻め立てたりはせず、今は様子を窺っていた。
(僕の知識が間違ってなければ、この方法でトノッパーを倒せるはず……やるか)
イリスは視線をトノッパー単体からズルズキンも含めた全体に移し、ズルズキンに指示を飛ばす。
「ズルズキン、龍の舞!」
ズルズキンは龍の如く力強く舞い、攻撃と素早さを高める。これでズルズキンの攻撃と素早さは通常の三倍だ。
「もう一回!」
さらに舞い、続けて能力を高めるズルズキン。その様子を見てザートは、厳しい視線を浴びせる。
「なにか企んでいるようだな。ならばその策略を打ち砕くまで。トノッパー、攪乱飛行!」
トノッパーは瞬時に消える。
だがザートがトノッパーに指示を出す直前に、イリスもズルズキンに指示を出していた。
「横に跳べ!」
トノッパーが消えると同時に、言われるがままにズルズキンは大きく横っ飛びする。これはトノッパーの攻撃の軌道が読めたわけではなく、ただの勘だ。ズルズキンのスピードもかなり上がっているため、トノッパーが動くと同時に回避行動を起こせば、運が良ければかわせると思っただけだ。
だがイリスの運は良かったのか、ズルズキンにトノッパーの攻撃は届いていない。どうやらかわせたようだ。
「龍の舞!」
最後の龍の舞で、攻撃と素早さを四倍まで高めるズルズキン。無双と言っても過言ではないほど、ズルズキンの能力は上がっている。
そしてこれでトノッパーを倒す準備が整った。
「ズルズキン、跳べ!」
ズルズキンは砂地にも関わらず、思い切り地面を蹴り飛ばして真上に垂直に跳び上がる。龍の舞で素早さが上がっているので、かなり高く跳び上がった。
「ふん、トノッパーはホウエン最長の建造物、空の柱すらも跳びこえる跳躍力を持つポケモンだ。その程度の垂直跳びで、逃げられると思うな! トノッパー、攪乱飛行!」
刹那、トノッパーが消えた。またズルズキンに突っ込んで吹っ飛ばすつもりなのだろう。
だが、しかし、
「ズルズキン、ぶち壊す!」
ズルズキンは攪乱飛行の直撃を喰らった。しかし直後に、トノッパーは砂漠の砂へと叩き付けられていた。
「なにっ……!? トノッパー!」
驚愕の表情を浮かべるザート。吹っ飛ぶどころかすぐに切り返したズルズキンに驚いているようだ。
「ズルズキンが今まで吹っ飛ばされていたのは、トノッパーの特攻が高いからじゃない。攻撃を予測できなかったからだ。どこから飛んでくるか分からない攻撃に対しては、身構えられない」
イリスは驚くザートに、淡々と説明する。
「そのトノッパーは群れを成してない個体、孤独相という奴だ。だから羽は発達せず、飛行能力も低い。空中にいるズルズキンに対しては、まっすぐに突っ込むしかなかっただろう」
「っ……!」
それがイリスの狙いだった。ザートのトノッパーは飛行能力が低いゆえに、空中のズルズキンに対しては地上からまっすぐに突っ込むしかなかった。だからこそ攻撃の軌道が読まれ、ズルズキンに攻撃を耐えられてしまったのだ。
手痛い一撃を喰らい、体力が残り僅かなトノッパーは体を震わせている。
「決めるよズルズキン! 跳び膝蹴り!」
空中から膝を突き出して落下し、ズルズキンはトノッパーに膝蹴りを叩き込む。
「トノッパー!」
その一撃で、トノッパーは遂に戦闘不能となった。
- Re: 550章 未来 ( No.806 )
- 日時: 2013/03/27 04:18
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
フレイを支えながら、ミキは森へと歩を進める。その途中で、二つの人影が現れた。
「フレイ殿!」
「フレイさん!」
片方は時代錯誤な忍装束を身に纏った長身の男、ハンゾウ。
もう片方は燕尾服に似た音楽家のような出で立ちの青年、シャンソン。
ハンゾウは険しい眼差しでミキを睨み付け、シャンソンはフレイを見て驚いたような表情をしている。
「娘、貴様フレイ殿に——」
「待って」
ハンゾウが一歩踏み出すのを、フレイが声で制する。
「前も言ったよ。この子に手ぇ出さないでって」
「っ……! ならばフレイ殿、その娘は一体……!」
「あたしのお友達」
「えぇ!?」
サラッとフレイは答える。その答えに対し、ミキは驚いたような受け入れがたそうな声を上げる。
「い、いや、私はただ、肩を貸してるだけで……」
「あたしと友達になるの、嫌?」
下から覗き込むようにしてそんなことを言うフレイ。そう言われると、無下にはできない。結局ミキは曖昧に頷いてしまう。
「そんなことよりも、ハンゾウ、シャンソン。ちょうどいいとこに来たねー。あたしは君たちに伝えなきゃいけないことがあるんだー」
いつもの間延びした口調で、しかしどこか真剣みのあるフレイの声。ハンゾウとシャンソンはそんなフレイをまっすぐに見つめ、次の言葉を待つ。
「まず、あたしはもうプラズマ団から抜ける。もう負けちゃったし、この組織もそろそろ終わりっぽいし……だから、さ」
他にも何かあり気だったが、濁して次に進めるフレイ。
「まずハンゾウ、残った焦炎隊をよろしくね。みんな癖の強いのばっかだけど、きっとハンゾウならあたしよりも上手くまとめられるよ」
「フレイ殿、それは、まさか……!」
目を見開くハンゾウ。驚愕というより、次に言われるであろう言葉を受け入れられないといった表情だ。
「うん、もうあたしの護衛は必要ない。これからは、焦炎隊の頭領として生きてね。これはあたしから下す最後の命令だよー?」
そう言われては反論できないとばかりに、ハンゾウは悔しそうに目を瞑り、
「……御意」
と答えた。最後まで尽くすつもりだったが、結局その決心は叶わなかった。そんな風な念が読み取れる。
「それから、シャンソン。君もプラズマ団から抜けて、普通に音楽家になればいいと思うよ」
ある意味では至極まっとうなことを言うフレイだが、シャンソンは狼狽えていた。彼は人格がどうであれ、プラズマ団であるのは変えようもない事実。そう簡単に普通の人生が歩み直せるとは思えないが、
「え、でも、フレイさん。僕は……」
「君なら大丈夫だよ。だってどうせ君は、プラズマ団としての活動なんてしてないんだから」
「あ……」
言われてみて、シャンソンは思い出した。確かに彼は、プラズマ団に入ってからプラズマ団として何かに危害を加えたことなどはない。精々英雄らとバトルをしたくらいだが、この世界では普通のバトルをしたくらいでは罪にはならない。
「まさかフレイさん、最初からこのことを思って……?」
「いやいや、最初は君に任せられなかっただけだけど、最近になってそうしようと思ったんだよ。だからシャンソン、君は普通の道を歩むべきだよ。大丈夫、君なら立派な音楽家になれるよ。あたしが保証する」
「フ、フレイさん……」
今にも涙しそうなシャンソン。そして目を瞑ったまま動かないハンゾウ。
フレイはミキを促し、二人に背を向け、歩き出す。
「それじゃばいばい、二人とも。達者でねー」
ふるふると手を振って、フレイは、自らの部下との最後の別れを遂げる。
「……良かったの? あれで」
「いーのいーの。こんなとこで出会ったわけだし、どっかで別れなきゃいけないとは思ってたよ」
気を遣うようなミキに対し、フレイはどこ吹く風でそんなこと言う。
「それに、あの二人には悪いけど、あたしとしてはもっと大事なことがあるしね……ことっつーか、人っつーか」
しばらく歩いていた二人だが、森まではまだもう少しある。普通に歩けばもう着いてもおかしくないのだが、フレイの歩行スピードが遅く、ミキもそれに合わせているので、どうしても遅くなってしまうようだ。
「」
「あ……」
唐突にフレイが声を上げる。ミキも同じタイミングで足を止めた。
二人が並ぶ先には、一つの人影。二人よりもずっと大きい男の姿。
「……森に着く前に、会っちゃったね」
「まー……こんなもん、なのかな」
彼に会えたことがか、それとも別の何かなのかは分からないが、どこか嬉しそうなフレイの表情。二人はそのまま、男の下へと歩んでいく。
男もこちらに気付いたようで、向こうからも走り寄ってきた。
「フレイ、お前……!」
驚愕の眼差しでフレイを見つめる男——フォレスは、何か言いたげだったが、口をつぐんだ。
「ごめんねー、今まで黙ってて。なかなか踏ん切りがつかなくてさー……ミキちゃん、もういいよ」
「う、うん……」
ミキから離れ、フレイはフォレスに寄りかかる。フォレスもそんなフレイを当然の如く抱え上げ、背中に乗せた。
「お前は英雄の弟子か。悪かったな……いや、ありがとうな、こいつをここまで連れて来てくれたんだろ」
「え? えっと、まあ……そう、だけど」
ほんの少し前まで敵だった相手から素直に礼を言われ、戸惑うミキ。そんなにミキに向かって、フォレスはさらに、
「お前にこんなこと頼むのもどうかと思うが、ついでに伝言も頼まれてくれないか。暴君——お前の兄貴と、父親にだ」
「兄さんと、お父さんに?」
ミキは疑問符を浮かべる。フォレスがその二人に対して何かを伝えるというのが、まったく予想だにしなかったからだろう。実際、フレイも不思議そうにしている。
「兄貴の方には、あの人を頼んだと。父親の方には……礼を言っといてくれ」
「うん……別にいいけど……」
あの人という言葉や、フォレスがロキに礼を言うということに対してどこか腑に落ちないようなミキだったが、悪い内容ではなさそうだったので、とりあえず頷く。
それを確認してから、フォレスは踵を返す。
「すまないな……さて、と。もう俺たちはプラズマ団にいられない身だからな、そろそろ行くか。じゃあな」
「そーだねー。ばいばいミキちゃん、楽しかったよー」
振り向き様に別れを告げ、二人はそのままいずこかへと去っていく。
「あ、ちょっと……」
もう敵とは思えないような二人だが、それでもプラズマ団であったことに変わりはない。捕まえねばと、ミキは一歩踏み出して追いかけようとするが、
「……まあ、いいか」
すぐにその足を止めた。
「もう悪い人じゃなさそうだし、なにより、今あの二人の邪魔をしちゃ、いけないよね……私も師匠たちのところに行かなきゃ」
そしてミキも踵を返し、フォレスとフレイとは逆の方向へと駆け出す。
「ねえ」
「なんだ?」
「いっこだけ、聞いてもいい?」
ミキと別れた二人は、空中都市の草原地帯を横断していた。
男の背中に、へばり付くようにして乗っかった少女は、不安げな声で尋ねる。
「あたしの足はもう治って、その気になれば一人でも生きていけるけど……それでも、まだ一緒にいてくれる?」
少女の切実な願い。男は足を止め、目を閉じ、息を吐き、言葉を紡いだ。
「……たりめーだ」
粗雑で短く思いやりもない吐き捨てるような言葉だったが、その一言だけで少女の顔は明るくなる。
「えへへー……やっぱ優しいねー」
「そんなんじゃねえよ……俺だって、今更お前のいない生活なんざ考えられねえからな」
抱きつくように細腕に力を込める少女の言葉に、男はそう返す。すると少女もその返答は予想だにしなかたのか、ぽかんとしたように口を開く。
すぐにおちょくったようないつもの返しが来ると思っていた男は、こちらも予想外だった少女の反応を受け、自分の言葉に赤面する。
「あ、いや……それに、どうせお前みたいな面倒くさがりじゃあどっちみち一人で生きるなんざ無理だ。足のリハビリもあるだろうしな。どうせだったら、最後まで俺が付き合ってやる」
矢継ぎ早に、言い訳するように言葉を発していく男に、少女はフッと微笑んだ。
「うん……ありがとう」
「……ああ」
しばらく二人の間には沈黙が訪れる。広い草原の真ん中で、二人は天を仰ぐ。
「……なあ」
「んー? なーにー?」
「お前、俺んち来るか?」
男は唐突に言った。
「家を出たっきり連絡してねえから見限られてるかもしれねえが……俺ももう住む場所のアテがそんくらいしかねえ。どうせまた一緒に暮らすんなら、もう俺の故郷でもいいだろ。お前が大好きな妹もいるぞ」
「あたしはどこでもいいよー……あなたと一緒なら、どこでもね」
「……そうかよ」
今度は男がフッと微笑み、また沈黙。しばらくして、少女が再び問いかける。
「……ねえ」
「なんだ?」
「あたしのこと、好き?」
「はっ。馬鹿が、お前はまだガキだろ。生意気言う前に、まずは自分のことをなんとかしろよ」
「ちぇー、冷たいでやんのー」
二人は青空の下、草原を渡る。
天空に吹くそよ風に、歓喜と未来の思いを乗せながら——
- Re: 551章 共存 ( No.807 )
- 日時: 2013/03/27 04:19
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「クレセリア、サイコキネシス」
「アルデッパ、自然の力!」
クレセリアは最大まで研ぎ澄ませた念動力を放つ。
アルデッパは大自然から無数の葉っぱによる嵐を放つ。
双方の攻撃は激しくぶつかり合う。この一撃で勝者は決まる。この競り合いを制した方が勝利する。
しかし、結果は淡泊でなものだった。
アルデッパの自然の力は、クレセリアのサイコキネシスに突き破られた。
瞑想を四回使用しているクレセリアに対し、アルデッパは成長一回。いくらアルデッパの素の特攻がクレセリアに勝っているとはいえ、能力の変動で大差がついてしまっている。
リーフストームは消し飛び、念動力がアルデッパに直撃し、アルデッパは吹っ飛ばされる。
「……ここまでか」
湖の岸辺まで吹っ飛んだアルデッパは完全に戦闘不能だ。
「よくやったな……戻れ、アルデッパ」
「君もだよ、マイエンプレス。戻ってくれ」
フォレスは戦闘不能となったアルデッパを、ロキは見事に勝利を収めたクレセリアを、それぞれボールに戻す。
「さて、俺はあんたに負けちまったわけだが——」
「別にいいよ、どこへなりとも行ってきなさい」
「あ?」
ロキに言葉を遮られ、しかもこちらの言おうとしたことを先読みした返答に、フォレスは一瞬戸惑う。
「『俺を国際警察に引き渡す前に時間をくれ』とか、そんなことを言いたかったんじゃないのかな? まだ君らの組織でやり残したことがあるとかでね」
「こっちの言いたいことは全部お見通しかよ……ったく、本当によく分かんねえ奴だな、あんた」
大きく溜息を吐くフォレス。
「そもそもボクは君らを捕まえるのが目的じゃないしね。この戦いを収束させることが、前世代の英雄としての最後の仕事だからさ」
「そうかよ。だったらお言葉に甘えさせもらうとするか」
と言うと、フォレスはクルリと踵を返し、ロキに背を向け、森の奥へと消えていった。
「……さーて。それじゃあボクも行くとしようかな」
そしてロキもまた、フォレスと同じように森の奥へと姿を消す。
空を見上げれば、森林を覆い尽くしていた雨雲は、もう晴れていた。
フォレスが最初に向かったのはプラズマ団の居城。その地下だった。
「たぶんそろそろあの人の戦いも終わってるはず……頼むから、勝ってくれよ、暴君……!」
自分の戦いよりも真剣な眼差しで、フォレスは地下牢獄へと降りる。そしてレイが戦っているはずの部屋の前の扉まで来たが、そこには既に先客がいた。
「お前、なにしてる」
「っ、フォレス様……!?」
その先客とは、レイが抱える直属部下、サーシャだった。持ち場を離れているところを見ると、恐らく負けて来たのだろう。
「私はただ、レイ様の様子が気になって……最近、体調が優れないようでしたので……」
その他にもなにかあり気なサーシャだったが、フォレスは深く追求しない。
「あっそ。なら俺と同じだな。で、あの人はどうなってる?」
「今から確認するところです」
と言って、サーシャは音もなく扉を少しだけ開いた。二人で中を覗き込むと、ちょうどレイと、やはり彼女と戦っていたらしいザキがそこにいた。
バトルはもう終わっているようだったが、勝敗は分からない。ただ分かるのは、レイが必至にザキに詰め寄って、ザキが困り気な表情を見せていること。その距離感は、やたら険悪だった二人にしては近く感じられた。
声まではよく聞き取れないが、その光景を見てフォレスは安堵の溜息を吐く。どうやら彼女は自分よりもずっと良い相手を見つけたようだ。
だが、そんなフォレスとは対照的に、サーシャは険しい表情をしている。
「なに怒ってんだよ、お前」
「怒ってなどいません、理解できないのです。なぜレイ様は、あんな男に……!」
サーシャは扉を蹴破って飛び出そうとする——が、それをフォレスが制止した。
「やめろ」
「な……離してください。フォレス様はこれでいいんですか? あなたは、レイ様のこと——」
「好きなんじゃないんですか? とかほざくんじゃねえぞ」
いつになく鋭い眼差しで、フォレスは射貫くような視線をサーシャに浴びせる。その言いようもない気迫に、サーシャはたじろいでしまった。
「俺はな、世界には絶望しかないと思い込んでたあの人に、この世界にも幸福があることを知ってほしかったんだ。俺がそうであったようにな。そのために色々やって、果てには7Pになんかなっちまったけど、どうやらあの人が求めてたのは違うもんらしいな。結局、俺の出る幕じゃなく、あの人をどうにかしてやれるのはあの暴君しかいなかったわけだ」
だから、とフォレスは続けた。同時に貫くような眼差しで、睨み付けるようにサーシャを見据える。
「あの人が一度掴んだ幸せを壊すような真似をするなら、俺は全力でお前を止めるぞ」
「っ……!」
もう一度、レイとザキを見遣る。
レイは、不器用ではあるが、プラズマ団では一度も見せたことのない、笑顔を浮かべていた。
「……くっ」
歯噛みし、苦い表情を浮かべたサーシャはその場から駆け出し、闇の中へと消えていった。フォレスは静かにそれを見つめ、やがてそっと扉を閉める。
「……こっちは大丈夫そう、か。頼んだぜ、暴君。俺にはできなかったこと——あの人のこと、お前に託した」
そう呟いてから、フォレスも牢獄から、そして城から出た。
「フォレス様!」
フォレスが城から出てすぐ、聞き慣れた声が耳に届く。声の方向に目を向けると、こちらに向かって走って来る人影が一つあった。
「……お前か、ティン」
それは、フォレスが抱える唯一の直属部下、ティンだった。
「ここにいるってことは、負けたんだな」
「あぅ。そ、それは、急に雨が降ったからであって、それまでは私が優勢で——」
図星を突かれて取り乱すティン。それに対してフォレスは、
「ああ、分かったからもう言うな。俺も負けてここにいるから、気にすんな」
と言ってティンをなだめる。
「だが、負けてもなんでも、ちょうど良いところ来たな。お前には、ちゃんと言わなきゃいけないことがあるんだ」
「え……?」
ティンは呆けたような、しかしそれでいてどこか期待するような眼差しを、フォレスへと向ける。フォレスはそんなティンを見て、胸の痛みを押さえながら、告白した。
「俺は、お前の気持ちは受け取れねえ。だから俺のことは諦めろ」
「……え?」
同じ言葉。呆けたようなティンの声。しかし今のティンは、何を言っているのか理解できない——否、しなくないと言っているかのようであった。
そんなティンを慮ることもなく、フォレスは続ける。
「この際だから正直に言うがな、俺は女に男として好きだと言われたことが今までなかった。だからお前と初めて出会った時に告られたのはかなり衝撃的で戸惑ったが、同時に嬉しかった。ま、ちっと過剰なのが玉に瑕か」
呆然とフォレスを見上げるティン。何か言いたそうにしているが、言葉が出て来ないようだ。フォレスは構わず、さらに言葉を紡いでく。
「別にお前が嫌いだってわけじゃねえ、むしろ好意的なつもりだ。俺はお前の告白で、お前をただ一人の直属部下にしたんだ。だが、それでも俺じゃあ、お前の気持ちは受け取れねえ。それに、俺にはまだやることもある」
「あ、う……で、でも、だったら——」
ピッと。
フォレスは人差し指の先をティンの額に押し付け、迫ろうとして来るティンの動きを制止する。
「そういうことだから、忘れろとは言わねえが、俺のことは諦めろ」
フォレスの言葉を受け、ティンは一歩、また一歩と後退していき、やがて俯いたまま停止した。
「う、うぅ……そんな……」
そして、涙声を漏らす。フォレスはそんなティンを一瞥してから、彼女の横を通り過ぎる。
「……悪い」
フォレスはこれで懸念ごとを概ね消化した——が、まだ一つ残っているものがある。それはフォレスにとってとても大きなもので、いざ対面するとなると、尻込みしてしまう。
(くっそ、覚悟は決めたつもりなんだがな。情けねえぜ)
自分で自分を非難しつつ、フォレスは過去の少女を思い出していた。自分がこの世界の幸福を知る、契機となった少女を。
(あいつがいたからこそ、今の俺があるんだよな……あの人をどうにかしようと思ったのも、あいつありきだ。こうして思い返してみれば、あいつを拾ったのは俺なのに、あいつ中心で俺が回ってやがる)
心の中でそんなことを呟きながら、フォレスは重い一歩を踏み出し、前へと進む。これで最後、これでなあなあの関係も終わりだと、自分に言い聞かせながら。
「……?」
しばらく歩いていると、前方に人影が二つ見える。一つは英雄の弟子である少女。そしてもう一つは、その少女に支えられている——
「っ——!」
驚愕した。支えがあるとはいえ、彼女が自分の足で立って歩いているのだから。
だが、それ以上に、
(向こうから、来ちまった……)
自分が情けなくなってきた。こちらから出向くはずだったのが、向こうから来てしまった。自分よりもずっと幼い少女に、先を越された。
「……まあ、いいか」
きっと自分たちの関係は、そんなものなのだろう。
対等でも平等でもないが、優劣もない。言葉には表せないが、助け合い、が近いだろうか。
なんにせよ、これで彼女との関係も正される。それだけで、満足だった——
- Re: 552章 暴君 ( No.808 )
- 日時: 2013/03/27 04:20
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「レジュリア、アイスバーン!」
「テペトラー、氷柱落とし!」
レジュリアは凍てつく衝撃波を放ち、テペトラーも氷柱を落としてそれを防ごうとする。
だがテペトラーの落とした氷柱は衝撃波に突き破られてしまった。
「くっそ、ガンガン攻めて来るな……テペトラー、シャドーパンチ!」
テペトラーは拳に影を纏わせ、勢いよく駆け出した。
「迎撃です! レジュリア、放電!」
レジュリア広範囲に電撃を放射する。ただでさえ強大な電撃が広い範囲に放たれては、テペトラーではかわしようがないが、
「テペトラー、避けるのは無理だ! 突っ切れ!」
テペトラーはあえて放電に真正面から突っ込み、強引に突破して影の拳を叩き込んだ。
「やってくれますね……! レジュリア、サイコバーン!」
「かわせ!」
レジュリアはすぐさま念力の爆発で反撃に出るが、テペトラーも地面を蹴って跳躍。サイコバーンをかわし、レジュリアの後ろに回り込む。
「シャドーパンチだ!」
そしてすかさず影の拳でレジュリアを殴り飛ばす。効果抜群の攻撃なのでそれなりには効いているはずだが、レジュリアはむくりと起き上がる。
「母親が行方不明とか、父親が蒸発してたとか、あなたにも色々あったのでしょうが、それでも結局あなたは幸せ者です。大切な家族がいて、さぞ幸福なことでしょうね」
「ああ、そうだ。妹がいて、親父がいて、母さんも戻ってくれば俺たちは幸せだよ。それがどうした」
「そういうのが……そういうのがムカつくんですよ! レジュリア、サイコバーン!」
レジュリアは念力の爆発から衝撃波を放つ。その威力はさらに上がっている。
「あれはまずいな……テペトラー、とにかくかわせ!」
大きく横に跳んで、テペトラーは転がるように衝撃波を回避。さらに追撃に備えて素早く態勢を立て直す。
(こりゃヒステリー……いや、やっぱ違うか。あんまそういう言葉使うのも良くねえし、暴走とか発狂とかっつー方がしっくりくる。それと、こいつ、なんかあったぽいな……)
それがなんなのかは、レイの言葉の端々からなんとなく察せるが、詳細までは分からない。
そうこうしているうちに、レジュリアの追撃が飛ぶ。
「ハイドロポンプ!」
「ちぃ、もうかよ。かわしてスプラッシュ!」
発射される凄まじい勢いの水流をかわし、テペトラーは飛沫を散らしながらレジュリアへと突っ込んでいくが、
「サイコバーン!」
念力の衝撃波を放ち、テペトラーは容易く吹き飛ばされる。
レジュリアの猛攻が始まってから時間はあまり経ってないはずだが、テペトラーは相当消耗している。攻撃をかわすだけでも精一杯なのに、そこに無理をして攻めているのだから当然だ。ザキのテペトラーと言えど、そう長くはもたないだろう。
「にしても、どれだけ暴れるつもりなんだよ……!」
あまりの猛攻に、ザキは思わず愚痴る。するとレイは、耳聡く、
「あなたのせいですよ。あなたがいるから、わたしは……!」
「お前がなんだよ。なんか色々あったみてえだが、俺のせいにすんじゃねえ。自分に降りかかることは、大抵は自分の責任だろうが!」
パキンッ、と。
刹那、レイの中で何かが砕け散るような音がした。
「……! 知った風なことを! あなたに——」
それと同時に、レイは——叫ぶ。
「——あなたにわたしの何が分かるっていうんですか!」
「お前のことなんざ知るか!」
レイの悲痛の叫びを、ザキは怒声で一蹴した。
「なっ……!?」
そのあまりにも無慈悲で正直で、なにより予想外の返しに、レイも困惑する。しかし、ザキは構わず怒鳴り散らした。
「俺が敵のことなんざ知るねえだろ! なにが、わたしの何がわかるか、だよ! 自分勝手な物言いもいい加減にしやがれ馬鹿野郎が!」
今までなんとか理性で冷静さを保っていたザキ、は完全にキレていた。怒り心頭でレイを叱咤するかのように、それ以上に自分の心情をそのままぶちまけるかのように、とにかく怒鳴る。
「つーか自分のことを知って欲しいならまずは知ってもらえるような努力をしやがれ! 俺のお節介な大親友は友達になりたいとか青臭いことほざいてたけどな、拒絶されようと殴られようと歩み寄る努力を怠ったことはねえんだ! なのにお前は、自分のことを理解して欲しいとだけ思って何もしてねえじゃねえか! そんなんで自分のことを分かってもらえるだなんて思ってじゃねえ! 何もせずにわかってもらえるだなんて思うのはただの傲慢でしかねえんだぞ!」
「なっ、う……!」
ザキの激し過ぎる剣幕に気圧されるレイ。暴走というのなら、ザキこそ暴走しているかのようだ。
「前々から思っていたことだが、ようやく分かったぜ、お前にイライラする理由がな! そうやって縮こまってるだけで自分の言い分は分かってもらえるみてーなこと思ってる態度は昔の俺にそっくりだ! なんだかんだ言いながらも結局は分かってくれる奴が欲しかっただけじゃねーか! なのに何の努力もしないでよ! あーくそ! ムカつく、イライラする——!」
今にも暴れ出しそうなザキは、渾身の叫びで自分の怒りを相棒へと伝達する。
「ぶっ飛ばせ! スプラッシュ!」
テペトラーは激しい水流を纏ってレジュリアへと突っ込む。その勢いはレジュリアが放つハイドロポンプ以上だった。
「くっ、レジュリア、サイコ——」
レジュリアは念力の爆発を引き起こす——寸前で、一つの音が聞こえた。
ギリッ
レイの歯軋りの音が小さく響き、レジュリアは念力を止める。そして、
「——アイスバーン!」
凍てつく爆発を引き起こし、氷の衝撃波を放つ。
期待してしまったのだ。無駄だと思っても、淡い期待は捨てられない。それが自分の弱さだった。
レジュリアのアイスバーンと、テペトラーのスプラッシュがぶつかり合う。これでテペトラーが押し負けたなら、レイは自分の考えが甘かったと再認識することとなるだろう。けれど、もしテペトラーがこの凍てつく衝撃波を突き破ったなら、彼女は少しだけ、希望を持てるかもしれない。
そんなことを思いながら、レイは行く末を見据える。
テペトラーを覆う水流は、氷の衝撃波によって徐々に凍り付いていく。完全に凍りつけばテペトラーは終わり。そして、やがてテペトラーは完全に凍りついた。
終わった。レイは胸中でそう呟き、同時に落胆する。
——やはり、彼もわたしが求める何かを教えてはくれなかった。
氷の衝撃波にやられ、もう戦えないであろうテペトラーを見つめ、最後にとどめを刺そうとしたその時。
テペトラーを覆っていた氷が砕け散った。
「——っ!?」
レイは目を見開く。まさか、こんな状況でもまだ戦えるとは、夢にも思っていなかった。凍りついた時点で、もうやられていたと思った。
しかし彼、彼のポケモンは、凍りつこうがどうしようが、いつだって我が道を行き、突き進んでいる——
「テペトラー、インファイト!」
氷結を破ったテペトラーは、目の前のレジュリアを殴る。殴る殴る殴る殴る殴る、さらに殴る、とにかく殴る、殴り続ける。
その一撃一撃は重い。威力だけではなく、トレーナーの思いが詰まっている。レイにはそう感じられた。
最後の拳がレジュリアに叩き込まれ、吹っ飛ばされる。
「レジュリア……」
ゆっくりと目を閉じ、倒れるレジュリア。同時にレイも、かくんと、膝と手を着く。凍りついた地面は、酷く冷たかった。
「……お前は、昔の俺とそっくりだ。もうどうしようもねえくらいに、ダメになっちまってる」
ザキは四つん這いの姿勢で倒れているレイに歩み寄る。落ち着いてきたのか、まだ少々荒っぽいものの、さっきまでの怒気に満ちたザキではない。
「だが、安心しろ。俺はこうして、真人間……とはいかねえが、あの頃に比べればかなりマシになってる。俺の場合は親友が手を差し伸べてくれたが、お前なら必至に手を差し伸べれば、誰かはその手を掴んでくれるはずだ。まだお前にも、望みはある」
「わたしにも……望み……?」
レイは顔を上げた。そこにはもう怒りの感情はなく、涙を浮かべ、何かに必死に縋ろうとする少女のような姿があった。
ゲーチスは自分の力を求めていた。フレイは友達になりたいと言っていた。フォレスは自分を守ろうとした。サーシャは自分を慕ってくれた。
でも、
道を示してくれる人は、今までどこにもいなかった。
「……わたしでも、誰かの何かに、なれるんでしょうか……?」
「あ? さあな。まあ、必死になれば人間、大抵のことはなんとかできる。拒まれても諦めずにいれば、いつかは実るもんだ」
「じゃあ……」
レイはゆっくりと立ち上がる。そして懇願するように、しかしそれ以上に、自分が進むべき道を見つけた喜びに勇み、彼女は約十年ぶりの笑顔を見せる。
「じゃあ、ザキ、さん……あなたが——」
しかし大事なところで、怯んでしまう。しかし思い返した。彼はどんな逆境に当たっても、敢然と立ち向かっていったことを。
不器用な笑顔のまま、レイは、胸に溜めた思いを吐露する。
「——あなたが、わたしの唯一無二の人に、なってください……!」
「……は?」
一瞬の硬直。
そして、次の瞬間。
「はあぁ!?」
7Pレイ。
彼女は後にセッカの皇妃として、セッカの暴君、ザキと双肩を並べることになる、唯一無二の女性となるのだった——
- Re: 553章 魂魄 ( No.809 )
- 日時: 2013/03/27 14:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
(この感じ……今なら、本当の全力が出せる)
いつもの調子を取り戻し、リオの表情から陰りがなくなる。同時にシャンデラのオレンジ色の炎も、さらに燃え上がった。
「行くよシャンデラ。まずは大文字!」
シャンデラは巨大な大の字の炎を放つ。大きさも火力も、今までの炎をはるかに上回っている。
「ドルマイン、雷です!」
ドルマインも激しい稲妻を放ち、大文字にぶつける。
火炎と雷電が激しくぶつかり合い、お互いに一歩も引かずせめぎ合う。しばらくして、双方が同時に消滅した。
まだ、二体のパワーは互角のようだ。
「シャンデラ、連続でシャドーボム!」
シャンデラは影の爆弾を無数に生成すると、一斉にそれらをドルマインへと放つ。
「磁力線!」
ドルマインも磁力の波を放って爆弾を全て破壊してしまう。が、波は残らず、シャンデラに攻撃は当たらない。完全に相殺しきっている。
「ならばこれはどうでしょう? ドルマイン、アクアボルト!」
「サイコキネシス!」
電気を帯びた水流を噴射するドルマイン。シャンデラは強力な念動力で、襲い来る水流を真正面から打ち消した。
「スタープリズム!」
「マインブラスト!」
シャンデラは虚空から冷気を内包したガラス球を無数に降らし、ドルマインは周囲に激しい爆発を引き起こす。冷気は爆発で掻き消え、爆発も冷気で相殺される。
(どの攻撃もパワーは互角。それなら、作戦が重要になりそうね……向こうは錯乱してるし、隙を突くくらいなら出来るはず)
現状を冷静に分析するリオ。
「ふふっ、ははははは! まさか私がここまでしても、まだ壊れないものがあるとは……恐れ入りますよ。ドルマイン、この際仕方ありません。あれで決めてしまいましょう」
突如高笑いし出したエレクトロは、何かあり気にドルマインに指示を出す。すると、
「ドルマイン、不発のマインブラストです」
ドルマインはその場で高速回転するが、それだけで何も起きない。爆発も電撃も発生しない。
ただ、回転するごとにドルマインの体色が少しずつ赤みを帯びている。まるで内側から飛び出しそうな熱気を必死に抑えているかのように。
「っ! まさか……」
「そのまさかですよ……!」
やがて、ドルマインの回転が止まる。ドルマインは全身が熱されたように真っ赤に染まっていく。
そして、
「ドルマイン、雷!」
直後、ドルマインが弾け飛んだ。
回転による発電と、マインブラストで発生したエネルギーの貯蓄。ドルマインの体に圧縮されたエネルギーを解放し、その負荷を耐え切れず、ドルマインは弾けた。
なんにせよ、ドルマインから放たれたのは途轍もない破壊力を持った稲妻だ。今まで見たどの電撃よりも凄まじい。それは理想を司る龍、ゼクロムの雷撃に匹敵するほどだ。
「っ……シャンデラ!」
迫り来る稲妻に気圧されながらも、リオとシャンデラは、持てる限りの力を全て解放する。
「シャンデラ、大文字!」
オレンジ色に煌めく大文字の炎が放たれる。大きさ、火力もさることながら、こちらも凄まじい勢いで放たれた。
火炎と稲妻の双方が激突する。が、二つの攻撃は競り合わない。勝敗はすぐに着いた。
シャンデラの炎が、雷を飲み込む。
しかも炎は止まらず、雷に続いてドルマインも飲み込み、戦闘不能にする。
だがこれでも、シャンデラの炎は止まらない。最大の火力で放たれた炎は、次なるものへと襲い掛かる。それは、
「……!」
エレクトロだった。
全てを燃やし尽くす炎は、エレクトロへと迫る。
「あ……シャンデラ!」
リオは流石にまずいと思い、叫ぶが、遅かった。
エレクトロも、シャンデラの魂を燃やす炎に飲み込まれる。
「う……」
その光景を目の当たりにし、リオはよろめく。
「手加減、出来なかった……」
当然と言えば当然だ。あれほどの電撃を放つドルマインに、手加減などしてられない。しかしそれでも、シャンデラの本当の炎は、リオの予想を超えるほどの火力であった。
リオの目の前には、轟々と燃える火の海が広がっているだけだった。
勝ったというのに、悔しそうな表情でリオはシャンデラをボールに戻す。その時だ。
(あ、あれ……?)
急にリオの体から力が抜ける。足は崩れ、視界も暗くなっていった。
激しいバトルが続き、心身ともにリオは疲弊していた。その上、最後はシャンデラやドルマインの攻撃で部屋は炎に包まれ、その熱気がさらにリオの体力を奪っている。
バトルの最中は気を張っているので何も感じなかったが、バトルが終わり、緊張の糸が解けた瞬間、リオが溜め込んでいた疲労感が一気に押し寄せる。
(これで、終わり……?)
なんの抵抗もできず、リオの意識は闇へと沈んでいく——
燃え盛る火の海から、一つの人影がゆらりと浮かぶ。
その人影は火の海から出ると、周りが炎上する中で倒れている金髪の少女へと歩み寄った。
「……リオ」
少女を見下ろし、ぼそりと呟く。
「それと、命を燃やす炎、ですか……ここで、終わりにするわけにはいきませんね……」
人影は少女を抱え上げる。そして、炎上し崩壊する大広間から、去っていった。
「…………」
大広間の手前の通路で、アキラは佇んでいた。その視線の先にあるのは、壁に空いた大穴。
その大穴を見つめていると、不意に後ろの扉が開く。
「……えーっと、キリハさん?」
開かれた扉から出て来たのは、キリハだった。
「なんで疑問形なのかは置いておくけど、君か。リオはどうしたんだい? 確か、一緒にいたと思うけど」
「リオなら、こっちの扉の先に。エレクトロとかいう7Pと、戦っているはずです」
「そうか……君は?」
「俺はさっきまでマオさんと戦ってたんですが……逃げられました」
しかしアキラは悔しそうな表情はしていない。晴れやかというわけでもないが、それでも比較的明るい感じだ。
「……リオは姉をプラズマ団から引き戻したかったみたいだけど、失敗しちゃったのか」
「ああ、いや。失敗というか……あの人はもう、プラズマ団からは抜けるそうです。でも、あれだけ対立しておいて、すぐに戻れるわけがないとか言って、どこかに行きました」
もう少し、時間が必要なんでしょうと、アキラは言う。
「そう……だったら次はリオだね。この扉の先だっけ」
キリハは視線を前の扉へと向ける。
「はい。でも、さっきまでガンガン爆発音が鳴ってたのに急に収まって……バトルが終わったとは思うんですが、リオも戻ってこなくて」
「となると、何かあったのかもね。リオが負けるとは思えないけど」
二人は扉をジッと見つめると、やがてその先の様子を確認すべく、一歩踏み出す。
しかし、
ギィ……
静かに重厚な扉が開かれる。そこから現れたのは、リオ——
——を抱えた、エレクトロだった。
「っ!? リオ……!」
「……!」
まさかの光景に二人は驚きの声を上げ、構えた。
しかしエレクトロは動じず、アキラへと歩み寄る。
「……どうぞ」
「は? な、おいっ……」
そして抱えたリオを、アキラへと移動させる。二人は意図の読めないエレクトロの行動に困惑するが、
「おいリオ、リオっ!」
「……大丈夫だよ。息はあるから死んではいない。たぶん、相当な疲労で体に負担がかかっているんだと思う」
真っ先に確認するのはリオの安否。二人とも、リオに大事がないと分かると、胸を撫で下ろす。
「……それよりも、なんであなたがリオを?」
キリハは疑念を抱き、鋭い眼差しでエレクトロに問う。対するエレクトロは、静かに告げた。
「……救われたのですよ、彼女に。正確には彼女の持つシャンデラの炎に、ですね」
「……?」
意味が分からないといった風に、アキラは首を傾げている。実際、エレクトロの言葉はそれだけだと意味不明であった。
「シャンデラの炎は魂を燃やす炎。その炎を受け、私のテロリストとしての悪しき魂は燃え尽きました……どうやら記憶を失った私には、過去の自分という魂、エレクトロとしての魂。二つの魂が存在していたようですね」
それを受けてさらに言うエレクトロだが、それでもなかなか二人は意味を解さない。しかし、エレクトロは多くを語らなかった。
エレクトロは踵を返す。
「……どこに行くんだ?」
「さあ……? どこでしょうね? 今の私には何も残っていません。過去の魂こそ燃え尽きましたが、記憶は戻りました。もうこの組織にいる理由もありません……そうですね、自首でもして罪を償いましょうか」
酷く無気力なエレクトロ。そもそもPDOとしては彼も国際警察に引き渡すつもりだったので、抵抗しないならそれでいいのだが、
「……なら、あなたもPDOに来ますか?」
「っ?」
「えっ?」
エレクトロもアキラも、驚きのあまり呆けたような表情をする。
「ほ、本気ですか?」
「うん、本気だよ。PDOはプラズマ団を倒した後、イッシュを復興させる組織にするつもりなんだ。そのための人材と思えば、いいんじゃないかな」
それに、とキリハは付け足す。
「これはヒウン統括の意志……だと思うんだ。リオは悪いプラズマ団を捕まえるって言ってた。でも、今のあなたは悪には見えない。だったら、僕らの仲間として引き入れても、問題はないはずだ」
リオの名前が出たからなのか、アキラは諦めたように溜息を吐き、
「……そういうことなら、いいんじゃないすか。そもそも俺はPDOじゃないし、リオがいいならそれで」
快諾した。
あれよあれよと進む話に、エレクトロは少しだけ微笑んだ。
「……貴方たちも、大概変人揃いですね。私はそれでも構いませんが……それでもけじめとして、短期間でも服役だけはするつもりですよ」
「いいよ。それであなたの気が済むのならね」
こうして7Pエレクトロの、PDO入りが決まった。
これが、過去の魂が消え今の目的もなくなった彼の、再出発の時である——
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