二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.815 )
日時: 2013/03/28 16:56
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: HGEDmJJJ)

こんにちは、春休みになったけど更新できる時間がいつもと変わらないパーセンターです。

7Pとの戦いも少しずつ終わりを迎えていき、残すはガイア——いえ、ザートだけとなりましたね。
天才が災いして世間から追い出されたアシド、生まれつきの足のせいで捨てられたフレイ、大切な人を守るためにプラズマ団に入ることになったフォレス。
イッシュで最も酷い人生を歩んできたレイ、テロリストだったとは言え記憶喪失のエレクトロ、被験者として、ゲーチスに従わざるを得なかった龍像ドラン。そして伝説の信仰を捨てられなかったザート。
結局、7Pの中にも、本当の『悪人』はいなかったんですね。

それにしても、アシドやフレイ、フォレスの結末はどうなるかある程度の予想はできましたが、レイには本当に驚きました。
まさかこうなるとは、全く想像できませんでした。
ドランはちょっと切ないですね。望んだわけでもないのに勝手に生み出され、最後は消滅……消えて自由になれることが望みだったみたいだし、ドランも救われたということだと思いますが。

しかし何と言っても一番驚いたのは性転換ですね。
まさかキュレムの力が性別にまで影響を及ぼすとは……しかし、最弱から最強にまで変わってしまうのですから、そう考えると体に大きな影響が出ても無理はないですね。

勝手にまとめてしまったようになってしまい申し訳ないです。残すはザートとゲーチス、そしてキュレム復活は食い止められるのか、楽しみに待ってます。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.816 )
日時: 2013/03/28 19:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

パーセンターさん


 白黒は逆に、春休みで学校がないのをいいことに爆更新が続いています。まあ、そろそろ潮時なんですけど……

 7Pは一人を除いてゲーチスが世界中からかき集めた人材ですからね。基本的にプラズマ団のの思想とは根本から違います。
 だからこそ7Pは決戦の時が近づいて悩んだり、離反してからのことを考えたりしているのですね。こうしてみると、7Pたちの方がよっぽど主人公してる気がします。

 フォレスとフレイは途中から結構あからさまになってしまいましたからね。
 レイはザキとの因縁だけを描写して、他の7Pよりも凝った構想にしていたつもりなので、予想外の結果となったのなら十全です……しかし、現状で一番長いのがフレイの出る節なんですよね……
 逆にドランは、どう終わりにするかというか、どういう理由付けでムントと戦わせるかに悩みましたが、結局は自由になるという目的を果たさせることにしました。

 ガイアとザートの設定を考えたのは、実はわりと最近です。最近と言っても、半年近く前ですが……
 今更ながら思いますが、この小説の設定もなかなか滅茶苦茶になってきたような気がしますね。本当、今更ですが。

 いえいえ、正直白黒も無理詰め込んだせいで若干混乱していたので、むしろまとめてもらって好都合です。
 ザートとゲーチスはそれぞれの節、そしてキュレムの復活は、最終幕のお楽しみです。

Re: 559章 発芽 ( No.817 )
日時: 2013/03/28 19:18
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「あ、う……」
 よろめくイリス。

 リーテイルが翼を失った。

 何度見ても、この事実は彼には受け入れがたいものだった。
 プラズマ団との最初の決着と言える大戦を終え、虚無感のみの抜け殻のようになってしまったイリスに希望の光を差し込んだのは、紛れもないリーテイルの進化前、リープンだ。
 ある意味では最初のポケモンよりも思い入れの深い、もっと言えばイリスが初めて、はっきりとポケモンに救われた時に出会ったのがリープンだ。
 最初は非力だったが、リーティンに進化してからは器用になった。ホワイトフォレストでリーテイルに進化してからは、飛行能力を得た。大空を翔るリーテイルの一対の葉っぱは、彼の象徴のようなものだった。
 だが、それもハサーガによって喰い千切られてしまった。
 その拍子にリーテイルはハサーガの拘束から逃れたが、だから何だと言いたい。
 翼がなくなれば、エアスラッシュもリーフストームも撃てない。飛行できないからリーフブレードだってロクに当たらないだろう。となると残るはドラゴンビートのみ。たったそれだけで、ハサーガが倒せるはずもない。
 終わった。この時イリスは、はっきりとそう感じてしまった。
「……ふん。ハサーガの力に耐え切れなかったか、脆弱な翼よ。ここまで我を追い詰めた貴様の力は評価と同時に脅威に値するものだが、ここで終わりだ。我らの手で引導を渡し、砂漠の屍にしてやろう」
 絶望するイリスに追い打ちをかけるかの如く、地中からハサーガの頭が四つ飛び出す。
「ハサーガ、ぶち壊す!」
 そして四つの頭がリーテイル目掛けて同時に特攻をかける。凄まじい勢いで突っ込んで来るハサーガを、リーテイルは避けない。否、避ける力が存在しない。
「リーテイル——!」
 全てを破壊する砂漠の大蛇。四つの頭から繰り出される一撃は、飛ぶ力を失ったリーテイルすらをも、完膚なきまでに破壊する——はずだった。

 突如、ハサーガの頭が全て弾き飛ばされる。

「っ!? ハサーガ!」
 フルパワーで突撃したハサーガが、いとも容易く吹き飛ばされ、ザートは目を見開く。いや、そうでなくてもリーテイルにはもう攻撃手段がほとんどない、ハサーガに反撃する術はないはずなのだ。
 ザートはリーテイルが翼を失った瞬間、そしてイリスが絶望を感じた瞬間、勝利を確信した。
 武器のないものが勝つ戦いはありえない、というのがザートの持論である。そして翼を捥がれたリーテイルに残された武器は、龍の咆哮のみ。それだけではハサーガを倒せないと思っているのは、ザートもだ。
 だがザートは失念していた。真実の英雄が持つ最大の武器は、成長だということを。
「これは……!」
「リーテイル……?」
 ハサーガを吹き飛ばしたものの正体。それは、無数の植物だった。砂漠から生える根っこの如き強靭な植物。それが力強く躍動している。
 イリスはこの技を知っている。実際に見たのは初めてだが、父親から聞いた事がある。イリスの初代エース、ダイケンキの必殺技、ハイドロカノン。それと並ぶ、草タイプが誇る大技。
「ハードプラント……!」
 イリスは図鑑を確認する。確かに、リーテイルはリーフストームを捨てた代わりに、ハードプラントを習得していた。
 この危機的状況で、自らの翼を失ってもなお、リーテイルは諦めていなかった。その諦めの悪さ、執念が、リーテイルに答えたとでも言うのか。
「……そうだね。諦めたり、絶望したりすれば、そこでバトルは終わっちゃう。当たり前のことだけど、忘れてたよ。君にはトレーナーとして大切なことを思い出させてもらってばかりだよ、リーテイル。ありがとう」
 リーテイルは視線だけをイリスに向けた。
 次の瞬間、リーテイルは緑色のオーラを身に纏う。するとリーテイルの背中には、喰い千切られたはずの葉っぱが新しく生えた。
 ハードプラントは植物を操る技。その力を利用し、失った自分の体を再生したのだろう。
「馬鹿な、この枯れた砂漠にまだ生命の種があるなど……!」
 新たな技を覚え、翼は修復し、戦う姿勢も強固となったイリスとリーテイルを目の前に、ザートは歯噛みする。
「だが、事態は振り出しに戻ったにすぎん! 貴様では、我がハサーガを捕えることは出来ないのだ! ハサーガ、ドラゴンバイト!」
 ハサーガは地中から四つの頭を出現させ、一斉にリーテイルを襲わせるが、
「捕えることは出来ない、か。果たしてそうなのかな。リーテイル、ハードプラント」
 刹那、リーテイルは咆哮を上げる。ドラゴンビートとは違う、まるで何かを伝えるかのような叫びだ。
 その叫びの直後、地面が揺れ、同時にハサーガの動きも止まった。
「なっ……どうしたハサーガ! 如何に草タイプ最強の技を覚えようと、奴の体力は限界だ! 早く仕留めるのだ!」
「それは無理だ」
 焦るザートと、落ち着いたイリス。もはや二人の強さの関係は、完全に逆転していた。
「もうハサーガ、捕まえた」
 イリスが言うと、地中から巨大な化物が飛び出した。ハサーガだ。
 ハサーガは多くの植物に拘束され、地中から引きずり出されてしまった。
「な、なんだと……!? まさか、我がハサーガが、こうも容易く引きずり出されるなど……!」
 驚愕するザート。確かに、普通にハードプラントを使用しても、このハサーガの巨体を引きずり出すのは容易ではない。だが、
「リーテイルは一度、背中の葉っぱを喰い千切られてるからね。あのダメージは相当なものだ……でも、だからこそ、今のリーテイルは普通じゃない状態だ」
「……っ! 深緑か……っ!」
 特性、深緑。
 リーテイルがイリスのエースであるという象徴のような特性だ。この特性は、体力が残り少ない時、つまり危機的状況にある時、草タイプの技を強化する。
 この特性で数々のピンチを乗り越えてきたのだ。この力で、ハサーガも倒す。
「ぐ、ぬぅ……! まだだ、まだハサーガはやられてはいない!」
 ザートの叫びに応えるように、ハサーガは少しずつ植物の拘束を解いていく。完全に脱出するには時間がかかるが、頭を動かすだけの隙間は出来た。

「ハサーガ、ドラゴンバイト!」

 そしてここに来て、ハサーガは全ての頭を解放する。五つの頭を総出で伸ばし、牙を剥いてリーテイルへと襲い掛かる。
「……驚いた。あれだけ縛ったのに、まだ動けるなんて。それだけお前の信念は固いんだろうけど、残念だ。それがプラズマ団に加担していなければ、素直に感心できたんだけど」
 そして、イリスとリーテイルも、五つの首を持つ砂漠の大蛇を迎え撃つ。

「リーテイル、ハードプラント!」

 刹那、地中から数多の植物が姿を現す。蔦や根、蔓、茨のようなものまで、その種類は多種多様。
 それらの植物は、途轍もない勢いと、凄まじい気迫、そして怒りの形相で襲い掛かる大蛇へと向かう。
 大蛇と植物がぶつかり合うが、結果は目に見えている。数でも強さでもハサーガはハードプラントに勝てない。ハサーガは数多の植物に飲み込まれ、戦闘不能となった。



「なんということだ……我がハサーガが、敗北するなど……!」
 思わず手と膝を着くザート。その先には、大量の植物に埋もれて動かなくなった、ハサーガの姿がある。
 イリスはリーテイルをボールに戻すと、ザートへと歩み寄った。
「お前はもう終わりだ。約束してたわけじゃないけど、教えてもらうよ。ゲーチスはどこ?」
 イリスはザートを見下ろしながら言い放つ。しかしザートは、悔しそうにしながらも、自棄になったような、それでいて勝ち誇ったような眼差しで、イリスを睨む。
「誰が貴様などに言うものか。我の目的は、伝説のポケモンの力を世界に示すことだ! 我が負けたところで、我の目的が潰えるわけではない! この古代空中都市が、ジャイアントホールに到着するまで、我々は貴様たちを足止めすればいいだけのこと! そしてジャイアントホールに着けば、ゲーチス様が、必ずやキュレムを復活させ——」
 そこで、ザートの言葉は止まった。

がくん

 同時に言いようもない感覚がイリスたちを襲う。言うなれば、今まで動いていたものが急に止まったような感覚だ。
「っ!?」
「……着いたか」
 驚くイリスを余所に、ザートは今度こそはっきりと、勝ち誇った笑みを浮かべる。

 そして、古代空中都市プラズマ・シティは——停止した。

Re: 560章 深淵 ( No.818 )
日時: 2013/03/28 19:31
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「眠れる民に悪夢の深淵を! ネメア!」

 ゲーチス最後のポケモンは、獅子ポケモン、ネメア。
 がっしりとした体つきと四の足。紫と紺の体をもち、頭には赤い一本角。
 深淵を見せると言われる伝説のポケモン、ネメアだ。
「来たか……!」
 Nは緊張を走らせる。相手は伝説のポケモン、一筋縄でいく相手ではない。
「コーシャン、フレアドライブ!」
 コーシャンは駆け出し、全身に膨大な炎を纏ってネメアへと突っ込む。
 しかし、
「ネメア、鉄壁です」
 ネメアは体を鋼鉄とほぼ同じ強度まで硬め、コーシャンの攻撃を防御。しかもその場から動かないどころか、逆にコーシャンを弾き飛ばしてしまった。
「メタルブラストです」
 続けてネメアは鋼の光線を発射し、宙を舞うコーシャンに直撃させる。その一撃を受け、コーシャンは地面へと落ちた。
「コーシャン!」
 キリキザン戦でのダメージもあり、コーシャンは戦闘不能だ。
 Nはコーシャンをボールに戻すと、こちらも最後のポケモンを繰り出す。
「相手はネメア。なら、最後は君だよ、ルカリオ!」
 Nの最後のポケモンは、波導ポケモン、ルカリオ。
 人間に近い体つき。犬のような頭部を持ち、手の甲と胸に棘のような突起がある。
「ほぅ、ルカリオですか。大方、ワタクシのネメアに相性が良いからという理由でしょうが、それだけでやられる伝説のポケモンではありませんよ」
「そんなことは分かってる。それでも、勝つんだ! ルカリオ、波導弾!」
 ルカリオは波導の力を凝縮させ、球状に固めてネメアへと放つ。
 波導弾はまっすぐにネメアへと向かっていき、そのまま直撃した。効果は抜群だが、
「この程度ですか?」
 ネメアは身じろき一つせず、超然と佇んでいた。
「くっ、だったらこれだ! ブレイズキック!」
 ルカリオは地面を蹴り、一瞬でネメアとの距離を詰める。そして炎を足に灯し、鋭い旋風脚をネメアへと叩き込む。
「鉄壁です」
 が、ネメアも体を硬化させてその一撃を防御。コーシャンと同じように、ルカリオを弾き飛ばす。
「次はこちらからですよ。ネメア、メタルブラストです」
 ネメアは鋼のエネルギーが凝縮された光線を発射し、ルカリオに直撃させる。効果はいまひとつだが、やたらと威力が高い。
「もう一度、メタルブラスト」
「くっ、バレットパンチだ!」
 再びメタルブラストを放つネメア。ルカリオは弾丸の如き速度で光線をかわし、ネメアに拳を突き込む。
「ブレイズキック!」
「鉄壁」
 続けて炎の蹴りも繰り出すが、これは鉄壁で弾かれてしまう。
「無駄ですよ。鉄壁がある限り、ネメアに生半可な物理技は効きません。ネメア、メガホーンです」
 ここで初めてネメアが前に出た。ネメアは真っ赤な角を構え、ルカリオを突き上げる。
「ルカリオ、波導弾だ!」
 空中に放り出されたルカリオは、波導を凝縮した球体を生成し、ネメアへと発射する。
「ふむ、ネメアと言えど効果抜群の攻撃を何度も受けるのはよろしくないですね。ネメア、ぶち壊す」
 ネメアは全てを破壊するかの如き勢いで飛来する波導弾にぶつかっていき、それを消滅させてしまう。
「メタルブラストです」
 そしてすぐさま、まだ空中にいるルカリオ目掛けて鋼の光線を発射する。
「っ、龍の波動!」
 ルカリオも咄嗟に龍の力を込めた波動を放つが、メタルブラストの方が威力が高く、突き破られてしまう。
「ルカリオ!」
 狙い打たれ、撃墜されたルカリオ。だがネメアの攻撃は、まだ止まらなかった。
「ぶち壊す」
 凄まじい勢いで駆けだすネメアは、起き上がろうとするルカリオを突き飛ばし、壁に激突させる。
「メタルブラスト」
 さらに鋼の光線を発射して追撃。効果いまひとつでも、ネメアほどの攻撃力では何発も喰らってられない。
「ルカリオ、反撃だ! 波導弾!」
 なんとか態勢を立て直し、ルカリオは波導弾を発射して反撃する。ネメアは鈍重で、攻撃直後だったためか、高速で飛来する波導弾に対応できず直撃を受けた。
「むぅ、ネメア、メガホーンです」
 だがそれでも、ネメアは角を構えてルカリオに突っ込んで来る。
「バレットパンチ!」
 ルカリオは弾丸の如きスピードで駆け、角の一撃を回避。そのままネメアに拳を叩き込む。
「ブレイズキックは効かないから……後ろに下がって波導弾!」
 拳を叩き込むと、ルカリオはバックステップで後退し、波導弾を発射。直撃させ、ネメアを攻めたてる。
「鬱陶しいですね。ネメア、メタルブラストです」
 ネメアはすぐにルカリオの方を向くと、口から鋼の光線を発射する。
「っ、龍の波動だ!」
 ルカリオもすぐに龍の波動を放つが、龍の波動はメタルブラストのエネルギーを多少削ぐだけで、相殺できない。ルカリオは光線の直撃を喰らってしまう。
「ぶち壊す」
「かわすんだ!」
 よろめくルカリオに向かって、ネメアは凄まじい勢いで駆けだすが、ルカリオは横に跳んで攻撃を回避する。
「龍の波動!」
 そしてすぐさま龍の波動を発射し、ネメアに命中させる。だが効果はいまひとつなので、ダメージは少ない。
 しかし、ルカリオの攻撃はまだ止まらない。
「ルカリオ、波導弾だ!」
 ルカリオは波導弾を放つ。波導弾は一直線にネメアへと飛んでいき、その強固な体に直撃した。ここまではさっきまでと同じだ。
 だが今回は、ネメアの体がグラついた。急所に当たったのか、それとも他の要因なのかは分からないが、なんにせよネメアに攻撃が通っているのは確かだ。
「攻めるなら今だね。もう一度、波導弾!」
 ルカリオは二発目の波導弾を放ってネメアに直撃させる。その一撃で、またしてもネメアの動きは止まった。
「バレットパンチ!」
 ルカリオは続けて弾丸のような拳を繰り出し、ネメアに叩き込む。
「ブレイズキックだ!」
 ルカリオの猛攻は止まらず、さらに炎を灯した上段蹴りをネメアの顎に叩き込み、そのまま空中に飛ぶ。そして、
「ルカリオ、波導弾!」
 最後に至近距離からの波導弾を放つ。この距離で決まれば、流石のネメアでも大きなダメージを受けるはず。そう思っていた。
 実際、その考えは正しい。正しいが、Nは失念していた。至近距離で攻撃すればダメージが大きい。その理屈は、ゲーチスも同じであると。

「ネメア、メタルブラスト」

 直後、ネメアはカッと目を見開き、鋼のエネルギーが凝縮された光線を発射する。
 今まさに攻撃するという瞬間に撃たれたため、ルカリオはその一撃を避けることが出来ない。結果、ルカリオは至近距離からメタルブラストの直撃を受け、吹っ飛ばされて壁に叩き付けられた。
「ルカリオ!」
 その一撃で、遂にルカリオは戦闘不能となる。つまり、

 Nの負けだ。

「……まあ、こんなところでしょう。あなたとワタクシでは根本が違う。あなたでは、ワタクシには勝てないのですよ」
「……くっ」
 返す言葉もないN。今の戦い、ルカリオとネメアのバトルは、戦略や駆け引きなどはなかった。つまり、Nは地力でゲーチスに負けたことになる。
「でも、僕は——」
 負けたが、それでも何かを言おうとしたN。しかし、その言葉は最後まで続かなかった。

がくん

「っ!?」
「おや、もう着きましたか。思ったよりも早かったですね」
 急に、妙な揺れがNたちを襲った。まるで今まで動いていたものが底止するかのような揺れだ。
「着いた……? まさか、もうジャイアントホールに着いたのか……!? だって、この空中都市のスピードじゃ、到着は半日って——」
 確かに下っ端や空中都市の広さから、様々な場所と要因で時間は喰ってしまった。だがそれでも、まだ半日も経っていないはず。まだ、ジャイアントホールには着かないはずだ。
 しかし、ゲーチスは、
「半日? 誰がそんなこと言ったのですか? それはどんな計算方法で求められたのですか? 確かにワタクシは気が長い方ですが、それでもキュレムの復活が間近に迫って、半日もかけて移動するほど悠長ではありませんよ」
 言って、ゲーチスはさらに言葉を放つ。
「空中都市の初期速度は確かに遅いですが、少しずつ加速するようになっているのですよ。大方、最初の速度から算出した時間なのでしょうが、もう少し考えを巡らせるべきでしたね」
「——っ!」
 なにはともあれ、英雄たちにとって事態は悪い方向へと進行している。
「さて、ジャイアントホールに着いた以上、ワタクシはあなたなどに付き合っている暇はないのです」
 ゲーチスはネメアをボールに戻すと、違うボールを取り出し、ポケモンを出す。
 三つ首の龍、凶暴ポケモン、サザンドラだ。
 ゲーチスはサザンドラに乗り、城の壁を破壊しながら、外へと出る。

 ——遂に、ゲーチスはジャイアントホールへと足を踏み入れた。
 キュレム復活までの時は、残り僅かである——

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.819 )
日時: 2013/03/29 00:18
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 えー、どうも白黒です。
 本来なら前置きを並べたいところなのですが、白黒は下手に喋らせるとどうでもいいことを延々と並べ立てるだけなので、今は割愛します。
 基本的にキャラ紹介や本編の投稿、読者様への返事以外は返信をしない白黒ですが、今回は重大発表です。
 というか、いつぞやの人気投票の結果発表です。
 締め切りは三月末まででしたが、キリがいいのでこの辺で発表しようというのと、もうこれ以上投票してくれる人がいなさそうという理由です。それ以前に、この企画、忘れてる人とかいませんよね? ちょっと不安になってしまいました。
 そんなことはともかく、結果発表です。今までのスレを遡っていけば誰に何票入れられたかは分かりますが、そんなマナーの悪いことをしている人はいないことを前提に進めていきます。
 めでたく冬の小説大会で金賞を獲得したこの小説『ポケットモンスターBW 混濁の使者』ですが、その記念としてやろうかやるまいか悩んでいた人気投票を決行いたしました。
 結果は、はっきり言ってほとんど一人が断トツ一位で、同率二位とか三位とかが物凄く多いです。まあ、あの投票の仕方ならそうなるだろうと覚悟はしてましたけどね。
 さて、なんやかんやで長くなってしまいましたが、結果発表に移ります。



 まずは総合部門。一人に入れられた最高票数は三票でした。
 三位、即ち一票だけ入れられたキャラクターは以下の通りです。



ミキ……『イリスを除く前作での白黒のオリキャラ第一号はキリハですが、一番最初に思いついたのは彼女だったりします。最初は白黒のお気に入りキャラだったのですが、混濁の使者に移ってからは個性的なキャラクターに囲まれて、キャラが埋もれつつあり、色々な意味で危機に瀕しています。とはいえ、それでも白黒の中では彼女は結構上位に入るお気に入りなんですけどね』

イリゼ……『ミキのキャラを薄くさせている要因の一人ですね。少女の外見をした成人男性というキャラは、わりといそうな気がすると思っていた白黒ですが、意外といませんでした。昔の僕はどういう思考回路をしていたのでしょうかね。それはともかく、彼はイリスにとっての壁の一つとして登場してもらいました。個人的にはわりと格好良いキャラに仕上がったと思います。容姿はともかく』

リオ……『前作からお世話になっているオリキャラですね。リオ自身について白黒が触れられることはあまりないので、イリスの視点から語ってみます。イリスにとって彼女は、頼れる先輩みたいなものですかね。実力はともかく、経験や知識では、おそらくイリスよりも彼女の方が上です。ちなみにリオとイリスはあえて直接戦わせていません。彼女には、いつまでもイリスの先輩となっていただきましょう』

アシド……『アシドは前作にいた同じ立場のお爺さんと似た性格で、7P全体の年齢を下げるとともに、彼の年齢も下げました。そういえば彼の笑いは一部で好評らしいですね。これは素直に驚きました』

サーシャ……『サーシャは会話、バトル共に扱いやすいキャラでした。特にレイとの絡み……というより、レイに関係する人物との絡みが、書いていて楽しかったです。最終的に、彼女とレイの関係はあやふやになってしまいましたが……彼女はどうなるんでしょうねぇ。もう出番はないと思うので、色々想像してみると面白いかもしれません』

ティン……『ティンもサーシャと同じように、フォレスとの関係を書くのが楽しいキャラでした。ただ、最後は彼女にとって、切ない感じになってしまいましたが。ちなみに彼女のバトルスタイルは好きです。天候を生かした速攻型のスタイル。白黒好みです』



 ……こうして並べるだけだと、なんか地味ですね。
 本来なら講評とかを軽く入れるのかもしれませんが、ここでは白黒の感想を入れています。
 ここまでで1500文字以上使っているので、結果発表はまだまだ長引きそうですね。それでは、次、二票獲得した二位の方々です。



ザキ……『初期はシスコン、次にキリハとの親友設定、次作で不良、最後には実は悲しい過去が、と凄まじいキャラの変遷を辿っているキャラクターです。最初はあまり活躍させるつもりはなかったのですが、今作になって白黒が気に入りました。それだけです。彼がシスコンだったという設定は、過去にミキに暴力を振るっていたことにも由来します。まあ、今でも十分荒っぽいんですがね』

フレイ……『たぶんこの作品で白黒が一番気に入っているキャラです。なので言いたいことはたくさんありますが、すべて言うことは不可能なので割愛します。あえて言うのなら、ある程度のシリアスでもマイペースな口調を崩さず、場を和ませることこそが彼女の魅力ではないのでしょうか』

フォレス……『ザキほどではありませんが、彼もキャラクターが変わっていきましたね。最初はヘタレっぽかったのに、いつの間にかイケメンに……本当、なんでこうなったんでしょう。と思っていたら、それは次回作の構想をぐだぐだと練っていたからだと気付きました。まあ、レイに対する思いを真剣に書いたら、ヘタレのままにはしておけないっていうのもあるとは思いますけどね』



 以上、二位までのキャラクターでした。
 さて、最後は遂にやってきました、三票を獲得し、総合部門で一位に輝いたキャラクター。薄々感づいている人もいるかもしれませんが、発表です。



イリス……『やはりというかなんというか、まさかの展開も少しは期待してましたが、予想通りの主人公でした。こんな風に言うと嬉しくないように聞こえるかもしれませんが、実際は凄く嬉しいです。なぜならポケモンの主人公は自分の分身、そしてイリスはポケモンの主人公で、この物語を書いているのは他ならぬ白黒ですからね。いえ、だからといって白黒自身が人気だとか、自惚れたことは言いませんけども。以前にも言ったような気がしますが、イリスの口調は白黒の普段の口調を真似ているので、そういう意味でも自分のことのように喜んでいます。……ただまあ、もしイリスが主人公でなくなったら、他の濃いキャラクターたちに埋もれてしまいそうなんですけどね。主人公という唯一絶対のステータスことが、彼のキャラクターの生命線かもしれません。ですが、これも前に一回だけ言ったと思うのですが、このはっきりとしたキャラクター性のなさこそが、ポケモンの主人公らしいのかな、と思っています。ちなみに、どこかで女版主人公を出そうとか思ったりしましたが、どこで出すかを悩んだ挙句、出さない方がいいという結論に至りました。最後に、これからもイリスをよろしくお願いします』



 以上、総合部門、人気投票でした。



まとめ

『三位(一票)』
ミキ
イリゼ
リオ
アシド
サーシャ
ティン

『二位(二票)』
ザキ
フレイ
フォレス

『一位(三票)』
イリス


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