二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
- 日時: 2013/04/14 15:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394
今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。
参照をクリックすれば前作に飛びます。
では、英雄達の新しい冒険が始まります……
皆様にお知らせです。
以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
となっています。
皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。
登場人物紹介等
味方side>>28
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624
目次
プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695
第十六幕 錯綜
一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756
第十七幕 決戦
零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕
>>774 >>812 >>818
最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851
2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825
あとがき
>>852
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
- Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 最終幕 始動——の前に ( No.830 )
- 日時: 2013/03/30 01:59
- 名前: プツ男 (ID: DN0pvQeX)
なんだか、もう今日レスしたような気がしたプツ男です。
ヒードランとの格闘は疲れました。空を飛ぶが使えるだなんて聞いてませんでした。
ルージュラ進化はよく調べたらデマでした。もう、何も信じれません。
よかった、刻印は爆発せずに済んだのですね。
白黒さんの返信を見て、アシドがあまりにもシュール、というよりもグロテスクでつられて想像したら二次元のフィルターがかからずに、三次元で想像して5時からおげぇ・・・・ってなりました。
っていうか、これってアシドよりも自分のご主人が五臓六腑をぶちまける場面を目撃したジバコイルの方が不憫な気がします。
確かに、ザートの首が爆発したら、とんでもないですね。それこそ、白い淫獣が出てくるアニメみたいになってしまいますね。おっと、ティロフィナーレさんの悪口はここまでにして・・・・
キュレムの刻印と7Pは結局はゲーチスにとってはエネルギーの供給パイプにすぎなかったって事ですね・・・・あれ?ゲーチスがだんだん白い淫獣に見えてきました・・・・・
エネルギーっていう点でも、共通点がたくさんありますよね・・・・
ゼクロムとレシラムが出てきて、もう何も怖くないと思いましたが、ゲーチスはまだあのアイテムを持っているので、油断は出来ませんね・・・・
アクロマがチラッと名前だけ出てきましたね。あの重力を無視した髪型は何なのでしょうかね。クリスには遠く及びませんが。
- Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 最終幕 始動——の前に ( No.831 )
- 日時: 2013/03/30 16:18
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
大光さん
遂にキュレムは復活です。
ゲーチスは歴代の悪役でもかなりの外道ですよね。サカキは潔い悪でしたし、マツブサとアオギリは改心しましたし、アカギはなんだかんだで尊敬されてましたし。そしてゲーチスは宗教染みた活動で人心掌握……うーん、下種だ。
一応、某淫獣は好意的に見れば宇宙全体のエネルギー不足を解消するために活動してくれたとも言えますが、流石に好意的すぎますよね……やってることが人間からすれば非道ですし。
実はアクロマは毒邪隊の直属配下として少しだけ出そうとしましたが、結局名前だけの登場となりました。
プツ男さん
空を飛ぶヒードラン……? 風船……?
あの手のガセはポケモンの界隈では年中無休のインフルエンザか花粉症の如く蔓延してますからね。確実性を求めるなら公式サイトか雑誌をチェックすることをお勧めします。
そんなことがありましたか、申し訳ありません。冗談のつもりで言ったのですが、気分を悪くされたようで……今後は少し気を付けねば。
ジバコイルのフォルムならその瞬間は見えないと思いますが、全身にアシドの中身がべっちゃりですから、不愉快極まりないでしょうね。
利用されて首が爆発するのと、油断して頭を喰われて反撃されるのと、どっちが不憫なのでしょうかね。正直どうでもいいですが。
とにかくゲーチスは自分のためだけに他者を利用しますね。たぶん原作以上に下種な人物んあっているだろうと思われます。
言われてみればそうですね。やり方はどちらも非道ですが、一応某淫獣は宇宙のために活動していますが……そんなことはフォローにもならないくらい、奴らの行いは下種ですね。
久しぶりにレシラムとゼクロム登場、レシラムに至っては前作振りです。二体が共闘するバトルは楽しく書けそうですが、それがいつまで続くのかは……奴の動き次第ですね。
まあ、あの手の髪型は最近わりとありますからねぇ……分かりやすいのはアホ毛、例を上げるなら、ずっと俺のターンとかすばら先輩とかですか。
後者の人物、分かる人いるかな……?
- Re: 564章 合体 ( No.832 )
- 日時: 2013/03/30 21:24
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
氷の龍、キュレムを前にして、レシラムとゼクロムは臨戦態勢に入る。
レシラムはジェットエンジンを紅色に燃やし、ゼクロムはタービンを蒼色に弾く。それぞれの尾部からは、熱気と電気が放たれている。
「レシラム、龍の波動!」
最初に動いたのはレシラムだ。レシラムは飛び上がると、龍の力を込めた波動を発射し、キュレムに直撃させる。
「その程度ですか? キュレム、凍える世界」
効果抜群の一撃をまともに喰らったというのに、キュレムはまったく動じず、周囲に発生させた鋭い氷塊をレシラムへと放つ。
「神通力!」
氷の礫や氷柱落としなどとは比べ物にならないほどの勢いで氷塊は飛来するが、レシラムはすぐに神々しい念力を放ち、氷塊をすべて相殺した。
「ゼクロム、僕らも行こう。思念の頭突き!」
ゼクロムは強い思念を頭に集中させてキュレムに突っ込み、強烈な頭突きを叩き込む。
「ドラゴンクローだ!」
そしてそのまま龍の力を込めた爪でキュレムを引き裂く。
「キュレム、逆鱗です」
ここで、キュレムは初めて前に出る。
凄まじい殺気を発しながら鋭い爪を構えて跳躍し、レシラム、ゼクロムへと突っ込むが、
「レシラム、青い炎!」
「ゼクロム、雷撃!」
レシラムは青く燃える美麗な炎を放ち、キュレムを包み込んで動きを封じる。そこにゼクロムが激しい雷撃を纏って突撃し、地面へと叩き落とした。
「N!」
「分かった!」
二人は短い言葉で意思疎通をすると、それぞれが従える龍に指示を飛ばす。
「レシラム、クロスフレイム!」
レシラムは空高く飛翔し、紅色に燃える炎を集める。そして生み出された火球を天に掲げ。遥か上空からキュレム目掛けて解き放った。
火球の一撃を受け、キュレムは炎に包まれる。
「ゼクロム、クロスサンダー!」
ゼクロムも同じく飛翔し、蒼色に弾ける雷を身に纏う。そしてそのまま、キュレムに向かって凄まじい勢いで突撃した。
この時ゼクロムは、レシラムが放った炎を受け、身に纏う電撃を増幅させる。ゼクロムの激しい一撃はキュレムに直撃し、ザリザリと周囲の地面や木々を抉ってキュレムを大きく後退させた。
デュアルクロス。レシラムとゼクロムは元々一つの存在であったがゆえに、互いの力を一部吸収し、自分の力に変換することができる。その現象をデュアルクロスと呼び、デュアルクロスが発動した技——クロスフレイムとクロスサンダー——はその威力が跳ね上がる。
二体のコンビネーションを存分に発揮した合体技を受け、キュレムは圧倒的に劣勢。しかしゲーチスの顔には焦燥感の欠片もなく、むしろ不敵な笑みを浮かべている。
「やはり、その程度ですか」
「なに……?」
「所詮、あなた方は二つので一つの存在。二体の力が合わされば、確かに脅威となるのでしょうが、それが一体になればキュレムの敵ではありません」
それは確かにその通りかもしれない。キュレムだってこのジャイアントホールに広がる樹海を一瞬で氷結させたのだし、気迫がなくても弱いはずがない。
だがそれでも、キュレムがレシラムとゼクロムに勝つことは困難だ。どちらか片方を集中的に攻撃するという手段を取るにしても、もう片方がそれをさせないため、実質どう足掻いてもキュレムは二対一という状況から免れることは出来ない。それはゲーチスにだって分かっているはずだ。
だがそれでもゲーチスは笑っている。そして、コートの中から何かを取り出した。
「それは……!」
ゲーチスが手にしているのは、三角錐の形をした物体。先端部から灰、白、黒、といった配色になっており、底面には黄色い錐体が逆方向を向いてはまっている、楔のようなものだった。
イリスは以前、この物体を見たことがある。いつかプラズマ団がヒオウギシティを襲った時に、持ち去ったもの。
「これは遺伝子の楔というものです。これがどのような力を持つものなのかは……まあ、見ていれば分かるでしょう」
と言うと、遺伝子の楔がひとりでに動き出し、流れるようにキュレムの頭上へと移動した。そして直後、遺伝子の楔はグサリとキュレムの脳天に突き刺さる。
「な、なにが……?」
突き刺さった遺伝子の楔はそのままキュレムへと取り込まれていき、刹那、キュレムの体の一部を覆う氷塊が砕け散った。
「っ!?」
氷塊がなくなり、キュレムの両翼が露わになる。が、それは先端だけが少し広くなってはいるが非常に細長く、コンセントのプラグのようなデザインをしていて、はっきり言って不格好だ。
だが、イリスとNは直感的に感じる。今のキュレムは危険だと。
キュレムは翼の先端、透明な突起をレシラムとゼクロムへと向けた。
「レシラム、あれはやばい! 避けろ!」
「ゼクロム、君もだ! キュレムから離れて!」
それぞれ指示を受けたレシラムとゼクロムは飛翔し、二手に分かれてキュレムから離れる。その直後だった。
キュレムの両翼の先端から、紫色の光線が発射される。
「なんだ、あれは……!」
「分からないけど、あれを受けると大変なことになると思う。絶対に逃げ切るんだ」
一つの翼から二本、両翼で四本の光線が放たれ、こちらも二手に分かれてレシラムとゼクロムを追いかける。
どちらも全速力で空中を飛び回り、追いかける光線から逃げるが、キュレムは何発も光線を発射するため、だんだんと退路が断たれていく。
「くっ、ゼクロム、雷撃だ!」
ゼクロムは激しい電撃を身に纏い、迫ってくる光線を打ち消す。
「N! ここはキュレム本体を叩いた方がいい! レシラム、青い炎!」
レシラムも青色に燃える火炎を放ち、光線を消滅させながらキュレムを攻撃する。
「ゼクロム、僕らも行こう! クロスサンダー!」
青い炎を受けたからか、光線を連射するキュレムの動きが一瞬だけ止まった。その一瞬でゼクロムは蒼色の雷を纏い、キュレムに激突する。
「イリス、今だ!」
Nが叫ぶと同時にゼクロムはキュレムから離れる。そしてイリスとレシラムも、既に攻撃を開始していた。
「了解! レシラム!」
レシラムは紅色の炎を球状に集め、巨大な火球を生成する。それをすぐにはは撃たず、レシラムは一度キュレムに接近した。
「クロスフレイム!」
ギリギリまでキュレムに近づき、レシラムは至近距離からの火球をキュレムに叩き込む。デュアルクロスが発動し、尋常でない火力となったクロスフレイムを至近距離から叩き込んだのだ。伝説のキュレムと言えど、無事では済まないはず。倒すまでは行かなくとも、あの奇怪な光線を止めるくらいのことは出来るだろうと思っていた。
しかし、現実はそうではなかった。
立ち込める煙の中から、キュレムは翼の先端をレシラムへと向けていた。
「っ、レシラム——!」
無慈悲に放たれた四発の光線。それらは縄のようにレシラムを取り囲み、束縛してしまう。
動きを封じられたレシラムは地上へと落下し、どういうわけか、ライトストーンへと戻ってしまった。
「レッ、レシラム!?」
なにが起こったのか分からず、イリスは戸惑う。いや、イリスだけでなく、Nも愕然とレシラム——否、ライトストーンを見つめている。
「それでよいのですよ。さあキュレム、レシラムを取り込みなさい。吸収合体です!」
ゲーチスが叫ぶと、キュレムは翼の先端から放たれる光線を通じ、ライトストーンとなったレシラムを自身の中に取り込んでいく。ライトストーンは翼から発せられる光を浴び、少しずつ小さくなっていき、やがて消えた。
直後、激しい熱気と冷気が吹き荒れる。相反するはずの、対極に位置するはずの二つの感覚がイリスたちに襲い掛かった。
同時にキュレムの姿も氷塊に覆われる——かと思えば、今度は紅色の炎に包まれる。凄まじい覇気と共に、キュレムは炎の氷塊の中で、虚無の魂を真実で埋めていく。
炎が消え、氷塊が溶けると、そこにキュレムとレシラムはいなかった。いや、キュレムとレシラムのどちらもが存在していた。
そこにいたのは、キュレムのようなポケモンだが、レシラムの意匠も感じ取れる。全体的に灰色をした体は、両腕や首、尻尾の先端などの各所だけが純白となっており、右腕、左肩、右側頭部、など、左右非対称に氷塊のプロテクターがある。
そのキュレムに似たポケモンは、背中から何本ものコードのようなものを伸ばし、レシラムのものと酷似した尾部のジェットエンジンに接続する。すると次の瞬間、ジェットエンジンは激しく燃え上がり、紅色の炎を解き放つ。
その炎を見て、イリスは確信に至った。このポケモンは恐らくはキュレム。だが、
「レシラムの力を、取り込んでいる……!?」
このポケモンから発せられる炎や熱気は、レシラムのそれとよく似ている。現時点でレシラムに最も近いイリスには、それが分かる。
そんなイリスの言葉に、ゲーチスは首を縦に振った。
「その通りです。これこそが、キュレムの虚無の魂を、真実で埋めた姿。混濁した、真実の使者。その名も——」
荒々しく燃え上がる紅色の炎を背に、ゲーチスは声高らかに宣言する。真実によって魂が埋められた、混濁の使者の名を——
「——ホワイトキュレムです!」
- Re: 565章 交換 ( No.833 )
- 日時: 2013/03/31 15:25
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「キュレムとレシラムが合体するなんて……そんなことが、ありえるのか……!?」
イリスと同様に愕然とするN。ゲーチスはそんなNに嘲笑うような言葉を浴びせる。
「愚か者め。キュレムは元々、レシラムとゼクロムのように一つの存在だ。だが真実と理想に分かれたレシラム、ゼクロムとは違い、キュレムには何も残らなかった。ただの虚無の抜殻です。ゆえに、その虚無を埋めるものは存在する、その虚無を埋められるのは真実と理想を司る龍、レシラムとゼクロムしかいない! ……このホワイトキュレムを見て、まだその程度も理解できないのですか?」
イリスとNの目の前に鎮座するホワイトキュレム。その目には合体前にはなかった瞳が浮かび上がっているが、それはレシラムの持つ穏やかな瞳ではなく、荒々しく獰猛な瞳だった。
なんにせよ、キュレムとレシラムが合体したことで、イリスたちは一気に劣勢となった。というのも、ゲーチスが言ったように今までイリスとNがキュレムを押していたのは、レシラムとゼクロム、二体のコンビネーションがあったからというのが大きい。
しかし今、片割れであるレシラムはキュレムに取り込まれてしまった。単純に見れば一対一でイーブンだが、本当にキュレムがレシラムの力を吸収しているのなら、今のキュレムはレシラムの力と合わさることとなり、力関係ではホワイトキュレムとゼクロムは二対一だ。
「さあ、ホワイトキュレム。あなたの力を見せる時です!」
突如、ホワイトキュレムの周囲に激しい冷気が集まり、同時に大量の熱気が放出された。
「……! N! この技、さっきの光線以上にやばい感じがする! ゼクロムを退避させるんだ」
「分かってる! ゼクロム!」
ゼクロムは急降下し、凍りついた木々を破壊しながら樹海を縦横無尽に駆け巡る。そして、
「コールドフレア!」
次の瞬間、樹海の一部が熱気に包まれ——氷結した。
「っ!?」
間一髪のところでゼクロムはその攻撃を回避したが、もし避けきれていなければ、ゼクロムはいまごろ完全に凍りついていただろう。
「というか、なんだよあれ……!」
一部と言っても、この広大な樹海の一部だ。範囲的にはそうとうな広さである。そして凍りついた場所はまるで氷山のように氷結しており、どういうわけかその氷山の中では炎が渦巻いている。
「どうしましたか? 英雄諸君。まさか、今更ホワイトキュレムの力に怖気づいたのですか?」
安い挑発をするゲーチスだったが、あながち間違ってはいない。
現状では、ゼクロム一体でホワイトキュレムを倒すのは困難だ。しかも、ホワイトキュレムがあんなデタラメな技を使うとなれば、他のポケモンを使用したところで太刀打ちできるかどうか。少なくともイリスの考えでは、現時点でホワイトキュレムを倒すのは不可能であった。
「……となると、やっぱりゲーチスを直接倒すしかないか」
キュレムがゲーチスの指示に従っているのは、奴が持っている境界の水晶があるからだ。あの水晶はキュレムを復活させるだけでなく、キュレムを意のままに操る力もある。
逆に言えば、あの水晶さえなんとかすれば、キュレムは止まるはず。現状でホワイトキュレムを倒す手立てがないのなら、ゲーチス本人を叩くしかない。
そう結論をだし、イリスはNにその旨を伝えようとするが、
「N、こうなったらもうゲーチスを——」
「イリス、その役目、僕に任せてほしい」
イリスの言葉を遮って、Nはそんなことを口にした。
「君も知っているだろう、僕とゲーチスの関係は。空中都市では負けたけれど、今度は負けない。今度こそ、あの人とちゃんと話をして——止めてみせる」
「N……」
イリスはNの目を見据える。瞳に宿っているのは覚悟。どこまでも理想を追求しようとする意志だった。
ゲーチスと戦うことは誰かがやらねばならないこと。ならばそれは、最も適任である者に任せるべきである。
そう思いながら、イリスは言葉を紡いだ。
「……分かった。じゃあ、君に任せるよ。絶対にゲーチスを倒せ」
「うん、分かってるよ……ゼクロム!」
Nはゼクロムを呼び寄せる。ゼクロムの力でゲーチスを倒すからではない。ゲーチスと対話をするのに、伝説の力はいらない。
「ゼクロム、今だけでいい。イリスの力になってくれ。僕は、大丈夫だから」
Nの言葉は、即ち一時的とはいえ、イリスに付き従えというもの。理想の龍が、真実の英雄に力を与えろというもの。相反する二つの意志、理想のゼクロムと真実の英雄は相容れないものであるが——ゼクロムは、小さく頷いた。
「……ありがとう。それじゃあイリス、ゼクロム。行ってきます」
と言って、Nは駆け出す。ゲーチスの下へと。
「N!」
——そんなNを、イリスは引き留めた。同時に、すぐさま取り出したモンスターボールをNへと投げつける。
突然のことでNは少々戸惑っていたが、パシッと投げ渡されたボールを受け取る。
「持って行って。レシラムはキュレムに取り込まれちゃったけど、君が僕にゼクロムを託したように、僕も君に、僕が持てる最高の力を託す。だから——」
その先の言葉を、イリスは続けなかった。
しかしNは、イリスが何を言いたいのか、言葉がなくとも伝わった。
「うん……ありがとう」
互いのポケモンを交換し合い、今度こそ、Nはゲーチスの下へと向かう。
「……さて、と」
イリスはNを見送ってから、目の前のホワイトキュレムを見据える。
「レシラム、君は今、どんな気分なんだろうね……元は一つとはいえ、強引にキュレムに取り込まれちゃってさ。そいつから引き剥がしてあげたいのは山々だけど、どうやらその役目は僕にはないらしい。だからせめて、Nがゲーチスを止めるまでの時間稼ぎだけでもさせてもらうよ、レシラム——いや、ホワイトキュレム!」
キュレムと混ざっているとはいえ、イリスにとってはレシラムと戦うようなものだ。イリスではゼクロムの力の全ては引き出せない。状況はさっきよりも酷くなったと言えるだろう。
しかし、
「時間稼ぎなんてみみっちいことを偉そうに言ってんじゃねぇよ、馬鹿野郎が」
その時、背後から声がかかった。聞き慣れた荒っぽい男声。しかし振り向けば、その声とは似ても似つかぬ小さな体躯。
「父さん……!」
そこにいたのは、イリスの父親にして、前世代の真実の英雄、イリゼだった。
いや、イリゼだけではない。その後ろにはロキもいる。
「ふふ、遅れてごめんね、イリス君。こっちもこっちで色々ごたついててね……ミキちゃんやザキ君はもっと大変だったみたいだけど。なんにせよ、他のみんなは到着までもう少しかかりそうだ」
普段と変わらぬペースで、ロキは言う。他の者たちが来るまで時間がかかるということは、逆に言えば増援は期待できるということ。圧倒的に戦力不足なイリスにとっては吉報だ。数が多ければ、それだけ時間も稼ぎやすい。
だがイリゼは、そんなイリスの考えを否定する。
「おいイリス、お前は時間稼ぎなんてこすいこと言ってたがな、いつ終わるかも分かんねぇバトルの時間稼ぎなんかがあいつに通用すると思ってんのか?」
イリゼはホワイトキュレムを指差して言う。確かにイリゼの言うことも一理あるが、現状ではそれしか手段がないのだから、その可能性に賭けるしかないのだ。
「だから、それはホワイトキュレムを止めることが、ゲーチスを倒すことだけっつー前提があるからだろ。そういう時は、その前提からぶち壊しちまえばいいんだよ」
「いや、それは流石に無茶苦茶……」
荒唐無稽にもほどがある、とイリスは思ったが、相手はイリゼだ。どんなに滅茶苦茶でも、荒唐無稽でも、それを真実に変えてきたような男だ。
何も策がないわけでは、当然ない。
「イリス、こいつを使え」
と言ってイリゼはイリスに何かを投げ渡す。それは、イリスがNに渡したもの——即ちモンスターボールだった。
だが通常のモンスターボールのような紅白カラーではない。上半分が濃い紫色で、二ヶ所に透明な低い半球がある。
イリスは安い普通のモンスターボールしか持っていないが、それでもボールの種類くらいは知っている。が、このボールだけは、イリスも見たことがなかった。
「それはマスターボールっつー特殊なボールだ。原理とかは俺も知らねぇんだが、そのボールにはとんでもない力がある」
「とんでもない力?」
イリゼがあまりに大仰に言うので、思わずイリスは復唱してしまう。しかしイリゼの言葉は、大仰でも大袈裟でもなかった。
「そのマスターボールは、どんなポケモンでも必ず捕まえる。理論上では、伝説のポケモンだって捕獲できるボールなんだ」
「それは……確かに凄いね」
と言って、イリスはふと気付いた。イリゼがこのボールを手渡してきた意味を。
「——てことは、まさか」
「ああ、そのまさかだ」
イリスがなにかを言うよりも早く、イリゼは次の言葉を発する。それがお前の使命だとでも言うかのように、そして懇願するかのように。
「お前がキュレムを捕獲するんだ、イリス」
- Re: 566章 再戦 ( No.834 )
- 日時: 2013/03/31 16:36
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「……またしてもあなたが来るのですか、N」
ゲーチスとNは向かい合い、真正面から相対する。それまで邪悪に微笑んでいたゲーチスも、元の表情へと戻した。
「ゲーチス、今度こそ僕があなたを倒します。そして、キュレムもあなたの野望も止めてみせる」
「あなたにそれが出来るのでしょうかねぇ。二年前は真実の英雄に敗れ、少し前はワタクシに敗れ。あなたにはトレーナーの才能がないのでは?」
ゲーチスの挑発染みた発言に、Nは力強く叫んだ。
「才能なんて、力なんていらない! 僕には、ポケモンとその絆があれば十分だ! 英雄なんて役目も、本当なら投げ出したい……でも、イッシュを救うまで、あなたの野望が潰えるまで、僕は英雄として戦う!」
Nの真摯な叫びを聞き、ゲーチスは眉根を寄せる。
「……ふん。まあいいでしょう。ワタクシもそろそろあなたが目障りになってきましたからねぇ。ここで、きっちりと引導を渡して差し上げましょう」
と言って、ゲーチスはボールを一つ取り出した。
「使用ポケモンは六体、交代はなしです。わざわざワタクシに戦いを挑んできたのですから、メンバーの入れ替えくらいは済んでいるのでしょう?」
「当然。僕の、最高のトモダチたちだ」
Nもボールを構え、それぞれが初手のポケモンを繰り出す。
「デスカーン! 生ける民に死者の手向けを!」
「僕に力を貸してくれ、バイバニラ!」
ゲーチスが繰り出すのは、棺桶ポケモン、デスカーン。
分類通り純金の棺桶のような姿をしており、中から影のような触手状の四本の腕を伸ばし、顔には赤い眼と鋭い牙が覗いている。
Nが繰り出したのは、ブリザードポケモン、バイバニラ。
ダブル盛りのソフトクリームのような姿をしており、一つの氷の台に二つの顔があり、片方は筒状の角があって笑みを浮かべている。
「行くよバイバニラ。冷凍ビーム!」
先に攻撃を繰り出したのはバイバニラ。バイバニラは筒状の角から凍てつく光線を発射するが、
「ふん、効きませんよ。デスカーン、守るです」
デスカーンは結界を張って冷凍ビームを完全に防御してしまう。
「しかし、初手で出してくるのがバイバニラですか。ならば、こちらの技を覚えさせて正解でしたな。デスカーン、毒々」
デスカーンは四つの腕にそれぞれ毒液を溜めこみ、それらをバイバニラ目掛けて噴射する。
しかし、
「バイバニラ、マジックコート!」
突如バイバニラが身に纏った光る膜に、デスカーンの毒液は跳ね返された。
「ぬぅ、マジックコートだと……!」
跳ね返された毒液を受け、デスカーンは猛毒状態となり、ゲーチスも険しい表情で歯噛みする。
マジックコートとは、状態異状を発生させる技を反射する技。なのでこの技があれば、デスカーンが主に使用する鬼火、毒々、汎用性の高い電磁波、草タイプの常套手段、宿木の種などが全て跳ね返されてしまう。
「あなたが先発にデスカーンを出すことは読めていました。だからこそ、僕の一番手はバイバニラなんだ。あなたのデスカーンでは、バイバニラには勝てない!」
「なにを生意気なことを。デスカーン、もう一度毒々です!」
「マジックコートだ!」
デスカーンは再び毒液を噴射するが、バイバニラは光る膜でそれを反射する。二回毒液を浴びても何も起こらないが、このままバイバニラを毒状態にできなければ、デスカーンが一方的に毒のダメージでやられるだけ。
しかし相手は腐ってもプラズマ団の大総統。一筋縄でいく相手ではなかった。
「デスカーン、金縛り!」
デスカーンは四つの腕を広げ、両目でバイバニラを睨み、途轍もない威圧感をかける。
金縛りは直前に繰り出した相手の技を封じる技。ブルンゲルなどが持つ特性、呪われボディを能動的にした技だ。これでバイバニラは、もうミラーコートが使えない。
「さあデスカーン、バイバニラを蝕むのです! 毒々!」
三度デスカーンは毒液を噴射し、今度こそバイバニラを猛毒状態にした。これで時間の経過と共に、バイバニラの体力はどんどん減っていく。
「くっ、バイバニラ、ラスターカノンだ!」
「守る!」
バイバニラは光を集めた光弾を発射するが、光弾はデスカーンの張った結界に阻まれてしまう。
「猛毒状態さえ引き起こせばこちらのものです。デスカーン、祟り目!」
デスカーンは四つの腕でバイバニラを取り囲み、邪悪な瞳でバイバニラを見つめる。邪眼から発生られる黒いオーラを浴び、バイバニラは苦しそうな呻き声を上げた。
「どうですか、弱り目に受ける祟り目は? 特防の高いバイバニラでも、猛毒状態で受ける祟り目は相当なダメージになる。さぞ苦痛なのでしょうねぇ」
祟り目は状態異状にかかっている時に受けると、その威力が倍増する。デスカーンは決して特攻が高いわけではないが、威力が増幅された祟り目の一撃ならば、特防の高いバイバニラにも大ダメージが見込める。
だがしかし、その大ダメージは、デスカーンにとって有益なものばかりでもなかった。
「バイバニラ、ミラーコート!」
次の瞬間、バイバニラは光に包まれる。光からは何本もの筋が飛び出し、光線の如くデスカーンに襲い掛かり、貫いた。
「しまった……デスカーン!」
思いがけない一撃を受け、デスカーンは相当なダメージを負っただろう。
ミラーコートは相手から受けた特殊技のダメージを倍にして反射する技。着目すべきは、受けたダメージ量の倍のダメージを与える、言わば一種の固定ダメージのようなものだ。なので体力の少ないデスカーンにとって、この一撃は致命傷。猛毒のダメージも合わせると、かなり追い詰められたこととなる。
「ぐぅ、小癪な……!」
殺気立った眼光でゲーチスはNを睨み付ける。そしてNもまた、真摯な眼差しでゲーチスを見据える。
ハルモニアの名を持つ二人の戦いは、まだ始まったばかりだ——
「僕が、キュレムを捕まえる……?」
イリゼの言葉を、ほぼ意味そのままに復唱するイリス。
「そうだ。キュレムを捕獲すれば、あのなんとかって水晶も意味はないはずだ。あれが外的要因でポケモンを従わせているのに対し、モンスターボールに入るのはポケモンの本能だ。確実にこちらが優先される。安心しろ」
「いや、そうじゃなくて……」
捕まえられるか捕まえられないかの問題ではない。キュレムを捕まえて逆に従えてしまうという発想は、成程、確かに思いもよらない抜け穴だ。だが、それを行うのは、
「なんで、僕なのさ……ポケモンを捕まえるなら、父さんとかの方がいいんじゃないの? 僕、バトルには自信あるけど、実際に捕まえたポケモンは七匹しかいないんだよ?」
ダイケンキはアララギ博士から貰い、リーテイルはオークションにかけられていたのを救っただけで、ズルズキンとメタゲラスは卵から孵り、ディザソルはサザナミの地下に埋まっていたボールを掘り起こしたにすぎない。
つまり、イリスはポケモン捕獲の経験がかなり乏しい。なのでやたらめったらポケモンを持っているイリゼの方が、ポケモンを捕獲するには適任に思うのだが、
「適任とかそういうのはどうでもいいんだよ。今の世代の英雄はお前、俺は前世代の英雄だ。今の世代に起こった危機は、今の世代の英雄が片を付ける。それが道理だ」
「それは、そうだけど……」
まだ腑に落ちない様子のイリス。だが、イリゼはそれを無視し、
「なーに、気にすんな。俺たちも手伝いはするさ。普通にボールを投げてもあいつは捕まんねぇだろうから、狙うとすればキュレムとレシラムが剥がれる一瞬だな。だから俺たちはあの二体が剥がれるまで奴をボコって、剥がれた一瞬の隙を突き、お前がマスターボールを投げる。それだけだ」
とまとめてしまう。
「……分かったよ、やるよ」
どうせ誰かがやらなければならないのなら、やはり今の世代の英雄である自分がやるべきなのかもしれない。そう思い、イリスはマスターボールを握り締める。
「さて、そんじゃああいつをボコって分離させるわけだが……とりあえず作戦としては、あいつの体力を出来る限り減らし、いい感じに弱ってきたところでゼクロムが一発かまして分離させる。その時にお前がボールを投げる、って感じだ」
「君にしては随分とまとまった作戦だねぇ。異論はないけどさ」
ボールを取り出しながらロキは口を挟む。イリゼはそれを軽く流し、こちらもボールを構えた。
「そんじゃ、行くぞ。残存戦力をありったけ出して、奴を袋叩きにする」
「了解したよ」
「うん……分かった」
イリスも複数のボールを取り出し、ホワイトキュレムに視線を向ける。
(レシラム……今、助けに行くよ)
そして、イリス、イリゼ、ロキの三人は、それぞれありったけのポケモンを繰り出す。
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