二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 575章 母親 ( No.845 )
日時: 2013/04/04 19:45
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「そんな、ブラックキュレムだなんて……どうすればいいんだ」
 現状、イリスたちの手持ちは全滅。残っているのはレシラムのみ。残ったイリスたちのポケモン総出でホワイトキュレムを攻撃し、最後の最後でゼクロムがなんとか分離させたが、逆に言えばそうでもしなければキュレムとゼクロムを引き剥がすこともできないということだ。レシラム一体で太刀打ちできるはずがない。マスターボールがなくなり、普通のボールで捕まえようにも、ゲーチスの杖がそれを許さない。
 今まで幾多もの絶体絶命の危機を乗り切ってきたイリスたちだが、流石にこの状況は絶望的すぎる。打開策が全く見当たらない。どうしようもない。
「万策尽きたようですね。それではレシラムを屠り、最後にはあなたたちをまとめて消し飛ばしてしまいましょう。ブラックキュレム! 全ての民に凍てつく世界を!」
 ゲーチスの叫びを受け、ブラックキュレムは鈍い声で咆哮する。
 突如、ホワイトキュレムの周囲に激しい冷気が集まり、同時に大量の電気が放出された。
「っ——! レシラム!」
 レシラムはジェットエンジンを稼働させ、僅かに残った木々の隙間を縫い、大空を縦横無尽に駆け巡る。そして、

「フリーズボルト!」

 電気を帯びた巨大な氷塊が作り出される。氷塊は空高く浮かび上がり、刹那——振り下ろされた。
「レシラム!」
 幸い、氷塊はレシラムには直撃しなかった。
 だが、氷塊が激突した地面はクレーターの如く吹き飛び、同時に砕けた氷塊の破片が四方八方に飛び散る。破片と言っても、通常のポケモンが放つスターフリーズ並みの大きさがあり、しかも衝撃波で周囲の木々や地面を砕きながら散っていく。
「っ、青い炎!」
 飛び散る破片はレシラムに襲い掛かるが、レシラムは寸前で青く燃える炎を放ち、破片を相殺した。一瞬だけ電気が弾けたものの、レシラムはノーダメージでブラックキュレムの攻撃をかわすことができたが、
「これはひどいな……」
 周囲を見渡すと、場の惨状は酷いものだ。もとからキュレムが凍える世界で氷結させてはいたが、その後ホワイトキュレムが暴れたせいで凍りついた木々の多くは砕け、地面は抉られ、一部には氷山の如く巨大な氷塊がそびえている。
 そこにさっきのフリーズボルト。地面には巨大なクレーターが一つでき、そこを中心として四方八方にかけて地面が直線的に抉られた跡。木々もほとんどが消滅し、凍りついた世界がさらに荒らされ、まるで荒野に氷河期が訪れたかのようだ。
「こいつは、流石にどうしようもねぇな……」
「打つ手なし、か……」
 イリゼとロキも、ほぼ諦めている。イリスだって、他のものだってそうだろう。残りポケモンは総合でレシラム一体。対するゲーチスはゼクロムとキュレムの力を合わせたブラックキュレム。戦闘力では圧倒的にブラックキュレムの方が上、ボールでの捕獲も不可能。となれば、いよいよ万策尽きたことになる。
「もう、終わり……なのか」
 絶望の空気流れ、皆を代表するかのように生気のない声でイリスが呟く。
 しかし、まだ道は閉ざされていなかった。

「まだ終わりませんよ」

「え……?」
 不意に、声がかかった。女性の声だ。
 イリスはその声を聞き、反射的に振り返る。すると、そこには、
「ミキ、ちゃん……?」
 その女性の姿を見て口を突くように言葉を漏らすが、すぐにイリスは否定した。
(いや違う。似てるけど違う。じゃあこの人は……?)
 イリスは突如現れた女性を見つめる。女性と言っても、身長自体は非常に低い——というより、体格や顔つきや髪型にいたるまで、ほぼ全てが弟子であるミキそのものだ。ただ一つ違うのは、髪色。
 ミキは鮮やかなピンク色だが、この女性は雪のように真っ白だ。もしキュレムの作り出した銀世界にいれば、溶け込んでしまいそうなほど、美白の髪をしている。
 イリスは突然現れた女性に対し困惑するだけだったが、四人の人物は、非常に大きな反応を見せていた。
「お母さん……?」
「……母さん」
「ユキちゃん……」
「ユキ……!」
 ミキ、ザキ、ロキ、そしてイリゼの四人は、目を見開いて女性を見つめている。
 ユキと呼ばれた女性は、ゆっくりとした足取りでイリスに歩み寄る。が、先に顔を向けたのは、ロキとイリゼだった。
「お久し振りです。ロキさん、イリゼ君」
 声をかけられた二人は呆然としていたが、すぐに気を取り直す。
「久し振り……帰ってたんだね、ユキちゃん」
「昔から機を狙ったような奴だと思ってたが、まさかこんな時に来るとはな……」
 気を取り直したものの、らしくもなく二人はまだ戸惑っていた。対するユキは、非常に落ち着いている。
「遅れて申し訳ありません。力を溜めるのに時間がかかってしまいまして……ミキとザキにも謝らなくては。しかし、大きくなりましたね」
 今度はミキとザキに向き直るユキ。二人も唖然としているが、こちらからは歓喜に似た雰囲気が感じられる。
「二人にも言いたいことはあるのですが、今は時間がありません。積もる話は後でということにしていただきましょう」
 ミキとザキから視線を外し、ユキはやっとイリスと向き合った。身長差があるので、イリスがユキを見下ろす形だ。
「初めまして、イリスさん。イリゼ君から名前は聞いていると思いますが、名乗らせてもらいますね。私はユキ、娘と息子がお世話になっています」
「え? えっと、はあ……」
 丁寧にお辞儀までされ、イリスも戸惑ってしまう。ただ、この雪という人物が、ミキやザキが探している、行方不明になった母親だということは分かった。
 問題は、彼女が何故このタイミングで現れたのか、その一点。
「知っているとは思いますが、私は巫女であり預言者です。今の状況は全て把握しています。それを踏まえて、私が今この時、この場所に現れた理由はただ一つ」
 一拍置き、ユキは静かな口調で言い放つ。

「復活してしまったキュレムを、再び封印します」

 その一言で、場の空気が変わった。少しだけ明るい兆しは見えたが、やはり皆はまだ困惑している。
「そ、そんなことが、出来るんですか……?」
 恐る恐るイリスが尋ねると、ユキは頷いて肯定した。
「そもそも、キュレムが復活したのは今回が初めてではありません。過去に何度か、何者かの手によって復活しています。これほどの被害が出たのは初めてですが、キュレムが復活するたびに、私たちの一族は、それを封じてきたのです。この——」
 言ってユキは、何かを取り出した。それは三角錐の形をした物体で、色は透明な灰色。底面には、これも透明な水色の錐体が逆方向を向いてはまっている。その外見は、まるで楔のようだった。
 イリスたちは、それとよく似た物体を見たことがある。それはキュレムとレシラム、ゼクロムを繋げる楔、遺伝子の楔だ。
 ユキは取り出した楔を小さな掌に載せ、イリスに差し出すように見せる。そして、
「——境界の楔によって」
 その楔の名を告げた。
「境界の楔……? それがあれば、キュレムをまた封印できるんですか……?」
「はい、その通りです。ただこれも、境界の水晶のように力を溜めなくてはいけない……というより、これに溜めた力の分だけキュレムの封印が強くなります。なので、その力を溜めるのに時間がかかり、遅れてしまいましたが」
 なにはともあれ、この楔があれば、キュレムをまた封印できる。イリスたちにも、未来の兆しが見えてきた。
「それではイリスさん、これをあなたにお渡しします」
「え? 僕ですか?」
 いきなり重要なものを手渡され、またしてもイリスは困惑してしまう。
「私の予言した未来では、キュレムの復活は止められず、また封印する光景が見えました。その時キュレムを封印したのはあなたです、イリスさん」
 温和な表情で、しかし真摯な眼差しで、訴えるようにユキはイリスに言う。
「未来は変えることが可能です。しかし、未来を変えるためにはそれ相応の大きな力が必要。ロキさんやイリゼ君は、キュレムが復活する未来自体を止めようと、色々頑張っていたようですが、結局は未来を変えるには至らなかったようです。ですがこれは、逆に言えばゲーチスも未来を変えることは困難だということです。私には、あなたがキュレムを再び封印し、世界を救う姿が見えます。あなたが世界を救う鍵なのです。ですからお願いします、イリスさん。」
「…………」
 黙り込んでしまうイリスだが、ユキの言うことは最も……だと思う。そもそもユキがいなければ、この状況は変わらなかった。彼女が自分たちを救ってくれたとも言える。
 ならば、彼女に逆らう理由もない。
「……はい、分かりました」
 それに、自分が世界を救う鍵だというのなら、やれるだけのことはやってみせる。できることならすべてやる。いつか、そう決めたのだ。
 そしてイリスは、宣言する。

「僕が、キュレムを封印します」

Re:576章  伝説 ( No.846 )
日時: 2013/04/05 02:47
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 境界の楔を用いて、キュレムを再び封印する。ユキのお陰で、希望の光は消えずに済んだ。まだ、終わっていない。
「ありがとうございます、イリスさん。ではまず、最初にあなたがたがホワイトキュレムをそうしたように、ブラックキュレムをキュレムとゼクロムに分離します。境界の楔が封印できるのは、あくまでもキュレムのみ。ゼクロムの力を吸収しては、封じることはできません」
「え……?」
 一瞬にしてイリスの表情が暗くなる。結局キュレムをゼクロムと分離しなければいけないのであれば、状況は大して好転していない。なぜなら、今さっきまでイリスたちが絶望していたのは、圧倒的な戦力不足が大きいのだから。
 しかしユキは、その辺りも抜かりなかった。
「安心してください。ブラックキュレムと戦うための戦力は、私が用意してあります。そのために、ロキさん、イリゼ君。これを」
 ユキは二つのボールを取り出すと、それぞれロキとイリゼに手渡した。
「……これは?」
「なんだか、随分とおっかない気配を感じるぜ……」
 二人は渡されたボールから伝わってくる大きな気配に、顔を少しだけ歪ませる。だがユキは、ボールから出せば分かります、と多くは語らない。
「私とロキさん、イリゼ君。それと、レシラムを従えたイリスさん。この四人なら、キュレムからゼクロムを引き剥がすだけの戦力としては十分でしょう」
 十数人総出の攻撃とゼクロムの力でようやく分離させたホワイトキュレム。それと同等の力を持つブラックキュレムに対し、たった四人で挑むというのもどうかと思うが、それだけユキが用意したという戦力——ポケモンは、強力なんだろう。
「……やれやれ。ユキちゃんには敵わないなぁ、すぐにペースを持って行かれる。父親としての尊厳が台無しになってしまったよ」
「だな。だが、もう俺たちにできることなんざたかが知れてる。昔からユキの言う通りにして失敗したことはない。ここは従うしかねぇ」
 二人も言いながら、手渡されたボールを構えた。
「そういや、お前とタッグを組むのは久々だな。二十年……くらいか? 正直どうでもいいけどよ」
「そうだねぇ。ま、正確にはユキちゃん含めたトリオ——いや、イリス君まで含めたカルテットかな」
 そして、ボールを開く。
「鬼が出るか蛇が出るか、それとも仏か?」
「最後に残った希望、正にパンドラの箱だね」

 イリゼのボールから出て来たのは、屈強な四肢を持ち渦巻くエネルギーを背にしたポケモンだ。
 地形を歪める力を持ち、伝説の語られる大犬ポケモン、ライラプス。

 ロキのボールから出て来たのは、緑色の体色に赤い模様のある色彩の鮮やかなポケモンだ。
 感覚を狂わす力を持ち、伝説で語られる鷲ポケモン、ガニメデ。

「ははっ……これは凄ぇ。どんな奴が出ると思えば、まさか伝説のポケモンとはな。参ったぜ」
「まったくだよ。こんなポケモンを手なずけるなんて、ユキちゃん、君は一体何をしたんだい?」
 ボールの中から現れた伝説のポケモンを前に、二人は威圧されたかのような言葉を漏らす。だがそれは、同時に安心感からの言葉でもあった。
「手なずけただなんて、人聞きが悪いですね。少しの間、力を借りているだけです。この戦いのために」
 言いながら、ユキもボールを構えた。そして、正面に鎮座するブラックキュレムを見据える。
「キュレム、確かにあなたは強い。地上最強のドラゴンポケモンの名が伊達でないということは分かっています。ドラゴンの弱点は冷気。その冷気を操るあなたが、その称号を得るのは道理とも言えるでしょう。しかし、氷を操るドラゴンはあなただけではありません。氷、雷、そして炎。これら三つの力を統べることができるのは、あなただけではないのです」
 ユキはボールを開く。そして吹雪と共に、氷帝が姿を現す。

「アスフィア!」

 現れたのは、氷の龍。紫色の体に大きな二枚の翼。首の裏には金色の輪が弧を描いている。
 鷲を司る星が瞬く時にその姿を氷帝へと変化させるという幻の龍。旋風ポケモン、アスフィア。
 ライラプス、ガニメデ、そしてアスフィア。
 別地方の伝説のポケモンが三体、この場に並び、ブラックキュレムと相対する。
 しかし、
「キュレムを再び封印する、ですか。そしてそのための戦力が、その三体……フフフ、フハハハハ!」
 ゲーチスは焦ることなどなく、むしろ余裕すら感じる笑みを浮かべていた。
「伝説のポケモンが三体いようと、ブラックキュレムに敵うはずがない! そもそも、伝説のポケモンはその伝説が残る地でなければ力を十分には発揮できない! そ奴らの力は、伝説ので語られるものほどの脅威はない! だが、ワタクシのキュレムは、このジャイアントホールでこそ力を発揮する、この場所はキュレムのパワースポット。そして、キュレムの力もいよいよ安定してきました。今までは力を制御するために、出力をある程度制限していましたが、もうその枷は必要ありません。あとは、お前たちを凍らせ、何も残らぬほど叩き潰すだけだ!」
 直後、ブラックキュレムは冷気を吸収し、電気を大量に放出した。
「フリーズボルト……!」
 イリスは戦慄する。標的を凍らせるコールドフレアと違い、フリーズボルトは相手を粉砕する技。一撃でも喰らえば、ほぼ終わりだ。ここは確実にかわしておきたい。
 だが、
「知ったことか! ライラプス、大地の怒り!」
「そうだね。ガニメデ、ハリケーンだよ」
 ライラプスとガニメデは二手に分かれ、左からは大量の土砂を噴出し、右からは激しい嵐を吹き荒ぶ。さらに、
「アスフィア、吹雪です!」
 アスフィアもキュレムに負けず劣らずの凍てつく猛吹雪を放つ。
 同時に三方向から、伝説のポケモンが放つ大技を喰らったブラックキュレムは、
「効かぬ! 消し飛ばせ、ブラックキュレム! フリーズボルト!」
 頭上に電気を帯びた巨大な氷塊を作り出す。そしてそれを、地上目掛けて思い切り突き落とした。
 地面に直撃した氷塊は、二つ目のクレーターを作り、氷塊の破片を四方八方に飛び散らす。掠めるだけでも致命傷となる氷塊が飛び散るのは非常に危険だ。だがその時、ライラプスが動き出す。
「んなもん、当たるわけねぇだろ」
 突如、地面が捲れる。氷塊が飛び散る寸前に、隆起した地面が砕けた氷塊を包み込んだのだ。よって氷塊は飛び散らず、そのまま消滅した。
「これは……!」
 その光景を見て、ゲーチスは顔をしかめた。
「ライラプスは地形を歪める力を持ってんだ。そんなに攻撃を当てたいのなら、直接ぶち当ててみな。ライラプス、悪巧み!」
 ライラプスは一瞬でブラックキュレムから離れ、特攻を一気に上昇させる。
「ふん、ならばお望み通り、直接攻撃を当ててみせようではないか! ブラックキュレム、ストーンエッジ!」
 今度は鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらをライラプス目掛けて連射する。一撃一撃がさっきの氷塊の破片並みに巨大なため、効果いまひとつでも相当なダメージになるだろう。
 しかし、ブラックキュレムのストーンエッジは、ライラプスには掠りもしなかった。ライラプスがかわしたのではなく、岩からライラプスを避けたかのように、全て外れたのだ。
「ふふふ、そんな簡単に攻撃が当てられると思ったかい?」
 ガニメデの後方で、ロキは底知れない微笑みを見せていた。
「今度はこちらか……っ!」
 ガニメデは感覚を狂わせるポケモン。今のストーンエッジも、ガニメデによって発射の瞬間に視覚かどこかを狂わされ、攻撃が当たらないようにされたのだろう。
「ガニメデ、悪巧み」
 そしてガニメデも同じく特攻を急上昇させる。
「小癪な……ブラックキュレム! 貴様の手、自らの爪で奴らを引き裂け! ドラゴンクロー!」
 ブラックキュレムは龍の力を込めた爪を振りかざし、一番近くにいたアスフィアへと襲い掛かる。ホワイトキュレムは力を制限していたからなのだろう、ほとんど動かなかったが、ブラックキュレムは制限がなくなったために移動が可能。タービンを回し、途轍もないスピードでアスフィアへと突っ込んでいくが、
「龍の舞」
 アスフィアも龍の舞を踊り、宙を舞ってブラックキュレムの攻撃を回避する。
「ぐぬぬ……! ならばこれはどうだ! ブラックキュレム、クロスサンダー!」
 ブラックキュレムは全身に蒼色に弾ける雷を纏う。そして空高く飛び上がり、アスフィア目掛けて急降下する。
「ロキさん、イリゼ君。援護をお願いします。アスフィア、神速です」
 アスフィアは超高速でゼクロムに突っ込み、正面からぶつかり合う。
「了解だよ。ガニメデ、サイコバーン」
「やってやれ。ライラプス、大洪水!」
 そして横からは、ガニメデが引き起こした念力の爆発と、ライラプスが放った洪水の如き水流がブラックキュレムに襲い掛かる。だがこれでも、ブラックキュレムの攻撃は止まらなかった。
 しかし、

「レシラム、クロスフレム!」

 ブラックキュレムよりも遥か頭上から、巨大な紅色の火球が放たれる。火球は蒼色の雷を吸収し、ブラックキュレムに直撃。地面に叩き落とした。
「っ! 英雄……!」
 ゲーチスはレシラムを従え、戦場に立つイリスを憤怒の形相で睨み付けている。

 世界の命運を左右する、イッシュの大戦争。この戦いが終結するのも、遠くない未来だ——

Re: 577章 帝 ( No.847 )
日時: 2013/04/05 13:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ケヒャハハハ……こいつは凄えな、戻って正解だったぜ。ライラプス、ガニメデ、アスフィアに、レシラムとブラックキュレム。実質、六体の伝説のポケモンが揃ったことになんのか」
 ジャイアントホールへと戻って来たアシドは、ジバコイルに乗り、離れた位置から伝説のポケモンが戦い合っている様子を見ていた。
「こんなもんが見られるのなら、計測器を持ってきときゃ良かったな。もったいないぜ、ケヒャハハハ!」
 笑いながらも、アシドは伝説のポケモンから目を離さない。ずっと、ジッと見つめている。
「さーて、この大激戦を制するのは、どっちなんかね……」



「……凄いな、こりゃ」
「おぉー……」
 こちらも、遠く離れた場所から伝説のポケモン五体による戦いを見ているフォレスとフレイ。二人も、伝説のポケモンが五体もいて戦っているという状況に圧倒されていた。
「まさか、生きている間にこんな光景が見られるとはな。いい思い出……には、なりそうにないな」
「もしブラックキュレムが勝てば、本当に思い出で終わっちゃうけどねー」
「縁起でもないこと言うな」
 フレイを背に乗せ、フォレスは彼女を軽く小突く。
「だが、ブラックキュレムの力も恐ろしいな。レシラムだけならともかく、ライラプス、ガニメデ、アスフィアの三体を相手にして、あそこまでやれるとは」
「たぶん、ゲーチスの力も関係してるんじゃないかなー。キュレムはレシラムやゼクロムと違って、純粋な思想じゃなく、混濁した濁りのある意思を求めてるからねー。その点なら、思想から汚れきったゲーチスはキュレムの力を引き出してるとも言える」
 フレイの推測混じりの説明に、フォレスは相槌を打ち、
「それと、世界を支配するなんて、普通に考えりゃ夢物語、つまりは理想論だ。だからこそ、真実のレシラムより、理想のゼクロムを吸収したブラックキュレムの方が、力をより多く引き出しているってことか」
「そだねー。さっすが、血縁関係なくてもハルモニアの親子ってところかなー」



「……凄いですね、あなたのお母さん」
「俺も驚いてる。母さんが腕の立つトレーナーなのは知ってたが、ここまでとはな……」
 目の前で繰り広げられている激戦を眺め、レイとザキは言葉を交わす。
 ブラックキュレムは、四方から攻めてくる伝説のポケモン四体の攻撃を凌ぎ、隙を見て反撃している。ライラプスの地形を歪める力や、ガニメデの感覚を狂わせる力がある限り、力押しは通用しない。それでも、ブラックキュレムの力は強大だ。
「これだけの戦力があっても、五分ですか……英雄さんやお義母さんには勝ってもらわないと困るのですが、大丈夫でしょうか」
「おいお前。今、お母さんの発音おかしくなかったか?」
 ザキはやや慌てたように指摘するが、レイはスルー。伝説のポケモンの戦闘に見入っていた。
「……あとで、あなたのお母さんとお父さん、妹さんとも話をしなければなりませんね」
「こんな時に何を考えてんだお前は!」



「大犬、鷲、氷帝に雷帝……そして英雄と使者、ですか」
 伝説のポケモンが繰り広げる激戦を眺め、エレクトロはふと呟く。
「今にして思えば、貴女はもっと伝説とポケモンと関わりを持っていたほうが自然、逆に言えば、今まで関わってきた伝説が少ないのは奇妙ですね、リオ」
「……なによ、いきなり。しかもこんな時に」
 目を覚まし、あらかた事情は把握したリオは、自然とエレクトロを受け入れていた。それでも彼女は、シャンデラの炎を受けてまだ生きているエレクトロが不思議だと思っているようだが。
「いえ、ただなんとなく思っただけです。私とてあなたの来歴を全て把握しているわけではありませんが、それでもあなたが関わってきた伝説は少ない、その上に浅い。確か、救世主の愛弟子との関わりがるくらいでしたか」
「……別に、それだけってわけでもないけど。それでも確かに、イリスやあそこで戦ってる人たちに比べたら、伝説のポケモンとは関わってないかもね」
 種類にしろ、関係の深さにしろ、それは同じだ。
「私は最初、あなたにも英雄の素質があるものだと思っていましたが……そういうわけでも、ないのかもしれませんね」
「私は英雄って柄じゃないわ。まあでも、イッシュを救いたいって気持ちは、彼らにも負けるつもりはないけどね」



「……これが、お前の言う龍の力か。いや、それ以上かもな」
 ムントは少し離れた位置からブラックキュレムと戦う伝説のポケモンたちを見ていた。その手には一本の石製の牙が握られている。
「キュレムの復活は止められなかった……だが、また封印できるかもしれない。俺が出来ることはもうないが、せめて、この戦いを最後まで見届けさせてもらう」



「これが、伝説の力か……!」
 ザートは危険を顧みず、凍りついた木々の間に身を潜ませ、近くから伝説のポケモンたちを見つめている。
「素晴らしいな。これだけの力がぶつかり合う様など、そう見られるものではない」
 ザートからすれば、ブラックキュレムが勝つ負ける以前に、伝説のポケモンが争っているという状況が重要だった。
 伝説のポケモン特有の多大な力が、ここまで伝わってくる。やはりこれらの伝説は、崇拝するに値するものだ。
「だが……これを伝える者は、いるだろうか」
 二年前も、真実のレシラムと理想のゼクロムが雌雄を決する戦いを繰り広げた。しかし現代の社会は、その事実を表沙汰にはせず、結局伝説は伝説のままとなってしまった。
 本来、ザートは二年前にレシラムとゼクロムが戦ったことで、その役目を終えるはずだった。伝説の力が世界に広まり、それでザートの目的は達成されるはずだった。
 だが事実が隠蔽され、伝説は隠されてしまったがゆえに、彼女は7Pとして動くことにしたのだ。
「……この戦いは、消えてはならん。悲劇と歓喜、そして伝説を伝えるべく、この戦いの記録は残さねばならん」
 ザートは呟く。力強く、懇願するかのように。
「英雄、貴様が勝つのは自由だ。だが、伝説の力を闇に葬るような真似だけは、してくれるなよ……!」



「アスフィア、氷雷波」
「ガニメデ、ハリケーン」
「ライラプス、大地の怒り!」
「レシラム、クロスフレイム!」
 四体のポケモンの大技が一斉にブラックキュレムに炸裂する。しかしそれでもまだ、ブラックキュレムは倒れず、分離もしない。
「ブラックキュレム、クロスサンダー!」
 ブラックキュレムは全身に弾ける蒼色の電気を纏い、自らを雷球と化し、空高く飛翔した。
「デュアルクロスと言ったか。貴様の炎、利用させてもらうぞ。英雄!」
 レシラムの炎を吸収し、纏う電撃が増大したブラックキュレムは、そのまま凄まじい勢いで急降下する。
「やばい……!」
 デュアルクロスが発動したブラックキュレムのクロスサンダーの威力は、ゼクロム比ではないだろう。伝説のポケモンと言えど、この一撃は致命的。
 だが、しかし、

「アスフィア、雷帝へ!」

 直後、アスフィアが激しい電撃を纏う。ブラックキュレムのような攻撃の電撃ではない。アスフィアは電撃の中で、その身を変化させる。
 電撃が消えると、そこにはさっきまでのアスフィアとは違う姿の龍。
 現れたのは、雷の龍。黄色と緑の体にしなやかな四肢。首の裏には銀色の輪が弧を描いている。
 大犬を司る星が瞬く時にその姿を雷帝へと変化させるという幻の龍。旋風ポケモン、アスフィア。
「フォルムチェンジ……! アスフィアも、複数の姿を持っているのか」
 雷帝へと姿を変えたアスフィアは、真正面からブラックキュレムのクロスサンダーを受ける。効果いまひとつということを抜きにしても、非常に安定した防御だ。デュアルクロスが発動したブラックキュレムのクロスサンダーを、完全に凌いでいる。
「アスフィア、雷です」
 クロスサンダーを耐え切ると、アスフィアは激しい稲妻をブラックキュレムに落とす。ゼクロムの力を吸収し、電気技が使えるとは言っても、ブラックキュレムのタイプは氷とドラゴンだ。半減タイプはドラゴン一つ。
「ライラプス、ダイヤブラスト!」
「ガニメデ、熱風」
 さらにライラプスの煌めく爆風と、ガニメデの高温の熱風が追撃をかける。
「ブラックキュレム! 奴らを振り払え! ストーンエッジ!」
「レシラム、龍の波動!」
 ブラックキュレムが鋭く尖った岩を放つのに合わせ、レシラムも龍の波動を撃ち込む。一瞬でもブラックキュレムの気が逸れれば、後はガニメデが感覚を狂わせて軌道を逸らしてくれる。
「まだだ! ライラプス、大地の怒り!」
「ボクらも行くよ。ガニメデ、ハリケーン」
 土砂と暴風を両サイドからぶつけ、ブラックキュレムは動きを止めてしまう。
 そして、

「アスフィア、氷雷波」

 その隙にアスフィアは冷気と電気を吸収し、凍結した稲妻を波動に乗せ、ブラックキュレムへと放つ。
 ブラックキュレムはその一撃の直撃を喰らい、大きく態勢を崩したが、
「まだだ! ブラックキュレム、フリーズボルト!」
 態勢を崩したまま、ブラックキュレムは冷気を吸収し、大量の電気を放出する。
 そして次の瞬間、ブラックキュレムの正面には途轍もなく巨大な電気を帯びた氷塊が、四つも作り出された。
「ブラックキュレム! 奴らを消し去れ!」
 そして、四つの氷塊は、それぞれの伝説へと向かっていく。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 最終幕 始動—— ( No.848 )
日時: 2013/04/05 17:36
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

ゲーチス・男
容姿:黄緑色の髪が側頭部で後ろ側に流れるように跳ねており、頭頂部でも同じように左に跳ねている。また残った髪はウェーブがかっており、後ろに流れている。2mほどもある長身で、右目には赤い特徴的なモノクル。
 服装は目玉模様のあるローブにも似た黄色と藍色のマント。襟は特徴的で、首回りを一周している。またそれなりに恰幅も良い。
 決戦間近では、精神的疲労で頬が痩せこけ、身長こそ高いが体格も細くなった。服装は目玉模様のある漆黒のコートで、プラズマ団の紋章が描かれたモンスターボールの力を封じる杖を持っている。
性格:普段は丁寧な言葉遣いだが、慇懃無礼とも言える態度で、常に相手を見下している。本性は人間とは思えないほど黒く残虐。世界を支配するために犠牲は厭わず、如何なる手段をも用い、世界中から集めたゲーチスの野望を叶えるために相当貢献している7Pすらもキュレム復活のためのエネルギーとしか思っておらず、ほぼ捨て駒。果ては血縁がないとはいえ息子のNすらも利用するためだけに育て、不完全な人間に仕立て上げるなど、非道かつ外道。しかし右半身に異常がある節があり、またイリスたちのプラズマ団を妨害する活動で精神的にも肉体的にも衰えている。
備考:プラズマ団の大総統

手持ちポケモン

バッフロン・♂
技:アフロブレイク、ワイルドボルト、ストーンエッジ、地震
特性:捨て身

キリキザン・♂
技:メタルバースト、辻斬り、シザークロス、瓦割り
特性:負けん気

ネメア
技:メタルブラスト、メガホーン、ぶち壊す、鉄壁
特性:プレッシャー

デスカーン・♂
技:祟り目、毒々、金縛り、守る
特性:ミイラ

ドクロッグ・♂
技:ダストシュート、クロスチョップ、不意打ち、雷パンチ
特性:危険予知

シビルドン・♂
技:ギガスパーク、ドラゴンダイブ、アクロバット、瓦割り
特性:浮遊

ガマゲロゲ・♂
技:濁流、大地の力、気合球、ヘドロウェーブ
特性:すいすい

ドラピオン・♂
技:クロスポイズン、炎の牙、地震、爪とぎ
特性:スナイパー

サザンドラ・♂
技:流星群、悪の波動、火炎放射、大地の力
特性:浮遊

Re: 578章 旋風 ( No.849 )
日時: 2013/04/13 16:35
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 電気を帯びた四つの氷塊は、容赦なく四体の伝説のポケモンへと向かっていく。伝説のポケモンと言えど、この氷塊の直撃を受ければひとたまりもないだろう。
 しかし、

「アスフィア!」

 刹那、アスフィアが業火に包まれる。レシラムほど静かな炎ではない。アスフィアは荒々しい業火の中で、その身を変貌させる。
 業火が消えると、そこにはさっきまでのアスフィアとは違う姿の龍。
 現れたのは、炎の龍。黒い流線型の身体と翼竜のような翼、獰猛な牙や眼。首の裏には緑色の輪が弧を描いている。
 炎をその身に纏い、琴座の力を得た幻の龍。旋風ポケモン、アスフィア。
 氷帝、雷帝、と続く第三の姿。
「アスフィア、大文字です」
 アスフィアは口から大の字の巨大な炎を放つ。大きさも相当だが、なにより凄まじいのはその速度。大文字は他の遠距離攻撃に比べて攻撃が遅めだが、このアスフィアが放つ大文字はかなり速い。あっと言う間に四つの氷塊すべてに大文字を直撃させ、瞬く間に相殺してしまった。
「四体を一度に狙ったのが仇になりましたね、ゲーチス。ブラックキュレムと言えど、そんなことをすれば威力が分散してしまうのは自明の理。この場所ではアスフィアよりもキュレムの方が力は強いですが、あなたがそのような精神状態ならば、キュレムの力をすべて引き出すことなどできません」
 たしなめるようなユキの言葉を受け、ゲーチスは強く歯を軋ませる。そして、憎々しい眼でユキを睨み付けた。
「好き勝手に言いって……! ならば貴様から消し去ってやろう! ブラックキュレム、フリーズ——」
 狙いをアスフィアに定め、ゲーチスとブラックキュレムは大技で決めにかかろうとする。
 だがゲーチスの指示が届くより早く、ブラックキュレムが氷塊を生成するよりも前に、大きな突風がブラックキュレムを襲っていた。
「ガニメデ、ハリケーン」
 いつの間にかブラックキュレムに接近していたガニメデは、猛烈な突風でブラックキュレムの動きを止める。効果はいまひとつだが、ガニメデの放つハリケーンだ。一瞬くらいならブラックキュレムの動きも止まる。
 そして、
「ライラプス、大地の怒り!」
「レシラム、青い炎!」
 その隙にライラプスは地面から土砂を噴出し、レシラムは青く燃える炎を放ち、それぞれブラックキュレムへと攻撃する。
「振り払え、ブラックキュレム! クロスサンダー!」
 ライラプスとレシラムの大技を一度に受けても、ブラックキュレムは止まらない。全身に弾ける電撃を纏い、土砂と青い炎を振り払って急上昇する。そして狙いを一番近くにいたガニメデに定め、すぐさま急降下した。
「っ、まずいね……ガニメデ、連続でサイコバーンだよ」
 ガニメデは咄嗟に念力の爆発を連続で引き起こし、衝撃波を放つ。ブラックキュレムは衝撃波で勢いが減衰したが、それでも止まることはない。衝撃波を突っ切ってぐんぐんガニメデへと接近していくが、
「アスフィア、神速」
 刹那、超高速でアスフィアがブラックキュレムに突っ込んだ。龍の舞で攻撃力が上がっているため、タイプ不一致の神速でも十分な威力が見込める。加えて側面からの攻撃だったので、クロスサンダーの軌道がずれた。さらに、
「ダイヤブラスト!」
 次の瞬間、ライラプスがブラックキュレムに接近していた。ライラプスは白色に煌めく爆風を放ち、ブラックキュレムに直撃させる。神速でずれた軌道は大きく曲がり、ブラックキュレムは勢いを殺し切れず、地面へと激突していった。
「助かったよ二人とも。流石にあんな攻撃、喰らえないからねぇ」
「分かったから、とっととこいつをぶっ倒すぞ。やっぱ場所が悪ぃぜ」
「そうですね。ジャイアントホールはキュレムのパワースポット。対する私たちの伝説のポケモンは、本来いるべき場所から離れてしまっています。十分な力は発揮できないでしょう」
 四対一で、状況はブラックキュレムが劣勢に見えるが、実際はかなり拮抗している。
 ゲーチスも言っていたが、伝説のポケモンはその地方、地域と強く結びついているもの。ゆえに、その力を十分に引き出すには、その伝説が伝わる場所でなければならない。
 そのため、アスフィア、ライラプス、ガニメデの三体にレシラムが加わってやっと、総合的な実力が同じになっている。
「とはいえ、そろそろブラックキュレムも、ゼクロムと分離しかかってるみたいだけど……」
 イリスが呟く。
 先ほど少しの間だけゼクロムと共に戦った影響なのか、ブラックキュレムがキュレムとゼクロムに分離しつつあることが、イリスには感じられる。ホワイトキュレムの時よりも弱いが、感覚として伝わってくる。
「うん、そうだね。確かに、ゼクロムはキュレムから剥がれかかってるっぽいね」
「そうなのか? 俺にはさっぱり分からねぇが」
 同意するロキと、首を傾げるイリゼ。どうやら前世代でも、真実の英雄なら感じるところはあるようだ。
「なんにせよもう一息です。このまま攻撃を続け、キュレムとゼクロムが分離する。そしてその時が勝負です、イリスさん」
 ユキはイリスに視線を移す。その視線を受けてイリスは、手にした境界の楔を強く握った。
(もうすぐか……)


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