二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 薄桜鬼 沖田総司
- 日時: 2011/01/30 17:20
- 名前: さくら (ID: w/qk2kZO)
初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。
こういう方はお断り。
荒らし目当て
沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?
温かい目で読んでやってください。
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- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.80 )
- 日時: 2012/02/29 20:52
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
紫苑さん
そう思ってくれたら幸いです
更新がんばります!
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.81 )
- 日時: 2012/02/29 21:38
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
激化する雪合戦を離れたところで眺めていた総司は、近づく足音に気づいて顔を上げた。
静かな足音の主は優しい笑みを浮かべて総司の隣に立つ。
「おはよう。珍しいね。こんなに朝早くから皆で何をしてるんだい?」
「はようございます、井上さん。見ての通り雪合戦ですよ」
うん、と頷いて井上は目元の皺を深くした。眩しいものを見るような表情で庭を見つめる。その優しげな笑みに総司は思わず問うた。
「何か、いいことでもありましたか?」
「ん?あぁ、いや。こうやって皆一緒に雪合戦をするなんていつぶりだろうと思ってね。道場にいた頃はよく皆でやったものじゃないか。またあの頃に戻ったようで、少し嬉しいのかもしれないね」
井上がこうぼやくのも無理はなかった。
最近の新選組の隊務と言えば、地道に巡察を重ねては不逞浪士を取り締まる一方で、裏では羅刹の実験を行うたびに巻き起こる悲劇。
力が足りない理由で導入を考えている変若水の劇薬に、不安を覚えているのだ。
「江戸から出た時にはお上のためと思っていたけれど、どうにも最近迷いが大きくてね。こうして皆、体を動かしている方がいいんだろう。いや、いけないな。私がこんなことを言っていては。土方君や近藤さんが必死に上と掛け合って奔走しているというのに」
細められた井上の目には迷いが滲んでいるようだった。
隣でただ聞いていた総司は口を開いた。
「いいじゃないですか。迷っても。迷った分だけいつか探している答えに辿り着けるはずですよ」
「…沖田君、どこか変わったね」
「そうですか?」
「・・・いや、何でもない。それにしても雪村君も雪合戦に参加しているじゃないか。大丈夫なのかい?」
男の激しくもみ合う群れの中、一人小さい体が踊っている。心配そうに井上が見守っていると総司は笑った。
「大丈夫ですよ。千鶴ちゃんも籠りっきりは体に悪いし」
「…もしかして、この雪合戦は君の仕業かい?」
「人聞きが悪いですよ、井上さん。始めたのは平助であって勧誘をしただけですから」
満足そうに笑う総司をまじまじと見つめて、井上は顔をほころばせた。
それを見て総司は首を傾げる。
「何かおかしいことでもありました?」
「いや、これはもしかして、雪村君のために…?と思ってね」
「さぁ、どうでしょう?」
井上から視線を外して再び雪合戦を繰り広げる仲間に目を向ける。過激に見えてちゃんと千鶴を気遣い、雪玉が直撃しないようにしている。
皆千鶴が大切なのだ。もうこの新選組には欠かせない存在になりつつあった。それゆえに皆はどうにかしたいと思っていたのだろう。
最近はますます京は不逞浪士が増加し、危険と隣り合わせ。見つからない父親。変若水による事件。それらは次第に新選組を飲み込み、皆一様に不安と不満を抱えいていた。
その空気を感じていた千鶴は隊士よりも不安を抱えていたに違いない。思うように外出ができない上、息がつまっていたはずだ。
総司をはじめ、他の幹部達も気づいていたのだろう。雪合戦に千鶴がいても咎めることはしなかった。
「…まぁ、でも。楽しむのも程々にしないとね。さすがにこれを土方さんには見せられないからね」
破れた障子や濡れた床を見渡して井上は嘆息した。
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.82 )
- 日時: 2012/03/16 22:09
- 名前: さくら (ID: MOENhrWN)
律儀にも井上が雪合戦で引き起こされた惨劇の後始末をしようと、雑巾や桶を取りにいったん部屋に戻った。
総司は縁側に座って身を丸めた。少し寒気を訴える体を温めるためだ。
そうしていると合戦のもみ合いから抜け出してきた小さな影を認めた。千鶴が雪玉を手に駆け寄ってくる。
「沖田さん、見てください!この大きな雪玉!原田さんが作ったんですよ」
「へぇ、君の手にはあまりすぎてるけど、それ投げるの?」
「いえ、投げるのは平助君が担当なので」
嬉々として走り寄ってきた千鶴は両手に持つ大きな雪玉を総司に見せた。その笑顔に総司は眩しさを感じた。こうやって喜んでくれるならいつだって遊んであげるのに。
「千鶴ちゃん、違うよ」
「え?」
「雪玉っていうのはこう作るんだよ。いい?まずこうして手ごろな石を探すでしょ?それを雪玉で包んで・・・」
総司が縁側を降りて地面に転がる小石を手に取って、慣れた手つきで雪玉にしていく。そうしてそれを造作も無く合戦を繰り広げる群れにお見舞いした。
「きゃっ!」
「いでっ!!!」
鈍い音と悲鳴が聞こえた。総司が放った雪玉は快進撃を見せていた新八に見事に命中した。
「お、沖田さん、今のは・・・!」
「大丈夫。大丈夫。あのこにいる人達は皆頭が石頭だから」
「で、でも・・・!!明らかに骨にぶつかった音が・・・っ」
慌てふためく千鶴の後ろに大きな影が迫った。
「ほほぅ・・・投げたのは総司か」
怒りのこもった低い声に千鶴は驚いて一歩後退する。新八は鬼の形相で総司に詰め寄った。良く見れば新八の頭には大きなこぶが出来ていた。
「千鶴ちゃんだとは思わないの?」
「千鶴ちゃんは雪玉に石を入れるなんて、姑息な真似しねぇよ。それにこの距離と千鶴ちゃんの腕からして俺に命中するはずねぇじゃねぇか!」
鼻息荒い新八が総司に掴みかかろうと手を伸ばす。
「いいのかなー?病み上がりの僕に乱暴して」
「こんな時に病人ぶるなよ!このっ」
総司は軽い身のこなしで新八の手をかいくぐる。逃げ回る総司は中々に動きが機敏だった。手を焼く新八は怒りがどんどん積もる。
縁側に総司が戻って逃げると土足のままで新八も上がる。大惨事だった廊下が更に悲惨に彩られていく。
千鶴ははじめ止めようとしたがそれもできず、呆然と立ち尽くしていた。
「こら、あんまり廊下で暴れんじゃねぇよ。総司もくだらねぇことするなよ。新八、そのへんにしとけって」
騒ぎに気づいた原田が助け舟を出すが、二人は取っ組み合いをやめない。
「うるせぇよ!原田!!こいつ俺に石玉投げたんだぞ!」
「確証なんて無いんだから言いがかりつけないで欲しいなー」
「このっ総司!!一発殴らせろ!!」
「やめろって、っと———!?」
取っ組み合う二人に原田が割って入ろうとした拍子に均衡を崩した総司がそのまま大きく体が傾いだ。
「えっ」
そして近くにいた千鶴目掛けて総司の大きな体が倒れた。
「お、おい!大丈夫かっ」
「千鶴!けがねぇか!?」
総司は新選組の中でも図体が大きい。故に身長も体重も全て劣る千鶴が下敷きになって地面へと倒れこんでしまった。
「だ、だいじょうぶです。雪があったので何とか・・・」
「そうか。おい、総司さっさとどいてやれ。いつまで千鶴の上に乗っかってやがる」
「待ってください、原田さん」
千鶴が原田を制する。その緊張した声音に原田と新八の顔つきが変わる。
倒れこんだまま微動だにしない総司の額に手を当てた。
「熱い・・・!沖田さん、大丈夫ですか!?」
「何だ熱があるのか!?」
「取っ組み合ってて気づかなかったのかよ」
「いや、ちょっと体が熱いと思ったけど暴れてるからだと思ってよ」
ぴくりとも動かない総司の顔を伺うと顔も火照っている。苦しそうに眉を寄せていた。やはり風邪が完治していない体で真冬の冷気に身をさらすと悪化することなど誰もが目に見えていたはずだ。千鶴は焦燥に胸を焦がした。自分が遊べても、総司は体を動かせない。総司もきっと輪に加わりたかったはずなのに、こんな所に一人で居させてしまった。罪悪感に千鶴はこみ上げてくるものを何とか飲み込む。
「とにかく部屋に運ぶぞ。おい、新八手伝え」
「おう」
二人が総司に手を伸ばそうとするが。
「・・・嫌だ。もう少しこのままでいる・・・」
などとぼそぼそと呟いて千鶴から離れまいと抱きつく。戸惑う千鶴は目をおろおろと泳がせて、総司の肩を叩いたりして離れようと試みた。
「沖田さん、だめですよっ!体がこんなに熱いのにこのままここにいたら悪化します!」
「やだ・・・」
「だめです!!お願いですから部屋に戻りましょう!!!」
千鶴の必死の懇願にようやく総司は顔を上げた。熱で火照った頬は赤く、目が据わっているのを見て千鶴はますます不安に駆られた。医者の娘である千鶴は風邪程度の病気なら、症状を見れば重度かどうか判断できる程の知識は持っていた。
「原田さん、永倉さん!」
「おら、総司。千鶴に風邪移す気か」
二人は総司の腕を掴んで上体を起こさせると、新八が原田の背中に沖田を乗せてやる。
「やだ・・・一人は嫌だ・・・」
原田の背に揺られうわ言のように呟く総司を千鶴は後から追いかける。
新八は良順を呼びに行くために急いで屯所を後にした。
「沖田さん・・・」
「こいつ昔はこんなこと言わなかったのになぁ。江戸に居た頃見舞いに来ても可愛いさの欠片もなかったぜ。『何だ、来たんだ』だぜ?それを思うとこいつも随分変わったもんだな。それもきっと———」
「きっと?」
「お前のお陰だぜ。千鶴。すまねぇが良順先生が来るまでそばに居てやってくれるか?」
千鶴は一度総司の顔を見た。熱に浮かされて今はぐったりとしている。だがその顔は今にも泣きだしそうな表情だった。
千鶴は黙って深く頷いた。
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.83 )
- 日時: 2012/03/20 17:22
- 名前: さくら (ID: MOENhrWN)
優しい声がする。懐かしい声だ。
総司はゆっくりと瞼を上げた。まず目に飛び込んできたのは古い天井だった。首を巡らせれば狭い部屋であることがわかる。障子は所々破れ、畳にはしみができていた。目を追って辺りを確認していると近くに人が座っていくることに気がつく。
「もう、この子ったらどうして風邪ひいてるって言わなかったのかしら」
「ふふっ。よっぽどお前と遊びたかったんだろうさ。そこまでにしておやり」
近くに居る人物と少し離れたところで繕い物をする人が見えた。
あぁ、知っているこの人達は———。
「姉上・・・母上・・・」
「あ、起きた?どう具合は?あなた倒れたのよ。覚えてる?もう、姉上心配したんだからね。風邪ひいてたんなら無理して遊んじゃだめでしょ」
こちらを振り向いたその人、姉の双葉は心配そうに顔を近づけた。総司はぼんやりとする意識の中で考える。
姉と母などもう何年として会っていない。姉は幼少の頃嫁いで家を後にし、それをきっかけに立ち行かない生活のため総司は親元を離れ試衛館に預けられた。現実的に考えて今ここに姉と母が存在するわけが無い。
総司はこれが夢だとわかると同時に切なさに胸を締め付けられた。
もう会えないと思っていた。夢だけでも会えたことに総司は嬉しくなる。
「いい?具合が悪いなーって思ったら必ず誰かに言うのよ?わかった?」
「・・・ごめんなさい」
丸い目を吊り上げて怒っている双葉を、総司は怖いと思ったことは無い。なぜならいつも叱られても素直に謝れば許してくれることを知っているからだ。
「お姉ちゃんね。あんたが倒れたとき一番慌ててたんだよ」
「お母さん!総司の前でそんなこと言わなくても———」
懐かしい記憶の人との他愛ないひと時に、総司は目の奥が熱くなった。
視界の輪郭が崩れてしまって、周りがよく見えなくなる。
「あらあら、お姉ちゃんが怒るから総司泣いちゃったじゃない」
母が近づいてくる気配を感じた。双葉の隣に膝をつくと細い腕を広げた。総司は誘われるまま母の胸に飛び込んだ。懐かしい感覚にまた胸が締め付けられる。
「風邪ひいてるときは寂しいもんねぇ。よしよし、泣かない泣かない」
「・・・母上、ずっとそばに居てね?」
「いるわよ。お前が眠るまでずっとね」
母が揺りかごのようにゆっくりと体を揺らす。その心地よさに瞼が重くなってきた。
「泣き虫よね、総司は」
「姉上の意地悪」
「あらあら、昨日寝しょんべしたのはどこの誰かしら?」
「姉上なんか嫌い」
「これこれ、そこまでにおし。さぁ、総司もうちょっとで良くなるからね。もう寝ようか」
母が総司の背中を優しく叩く。その音頭に眠気がぐんぐんと押し寄せてきた。隣に居る双葉は総司の頭を撫でる。
「また元気になったら遊んであげるから、早く治すのよ?」
「うん・・・」
「さぁ、おやすみ。総司———」
母の子守唄が優しく響く。双葉の手のひらの温もりを感じながら総司は目を閉じた。
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.84 )
- 日時: 2012/03/27 23:02
- 名前: さくら (ID: MOENhrWN)
ゆっくりと瞼を上げると見知った天井が広がっている。のろのろと体を起こすとすぐ近くで桶の水に手拭を浸している千鶴の姿があった。
総司が声をかけるより早く千鶴は総司の覚醒に気づく。
「沖田さん!具合はどうですか?倒れたんですよ。覚えていますか?やっぱり風邪が治りきってなかったんですよ。どうして無理に———」
「・・・姉上だ」
「え?」
総司は思わず呟いた。先ほど見ていた幸せすぎる夢。その夢をもう一度見ているような気分になった。総司は微笑を浮かべて近づいてくる千鶴を見つめる。
「ううん・・・ただ君が少し姉上に似ているなぁって思っただけ」
「似ている?私が沖田さんのお姉さんにですか?」
「うん。おせっかいなところとか心配性なところとか?」
「・・・褒めてるんですか?それ」
目を吊り上げて頬を膨らませる千鶴の姿はさっきの夢に出てきた姉そっくりだ。総司は可笑しくなって笑みを深くする。
「褒めてるよ。ありがとう、ずっと看病してくれてたみたいだね」
「いえ・・・ただ、その・・・沖田さんが心配で・・・」
急に歯切れが悪くなる彼女の言葉の先が気になった総司は、押し黙った。
「その、沖田さん倒れた時に『一人は嫌だ』って仰ってたので・・・傍を離れられず・・・」
総司は思わず声を出しそうになった。大の大人が夢見ていたことを寝言で唱えていたなどと言えない。自分の情けなさにうなだれる反面、千鶴だけに聞かれていたことにほっと安堵している。他の隊士に聞かれでもしたら一生の恥になる。
「すみません」
「何で君が謝るの?」
「いえ、沖田さんはずっと風邪で寝込んでいて寂しかったはずなのに・・・私たちだけで楽しんでばかりいて・・・沖田さんの気持ちも考えずに」
「ちょっと待って。僕は寂しいだなんて一言も言ってないけど?」
「でも、雪合戦を見つめていた沖田さんの目はとても寂しそうでした」
よくそこまで見ていると総司は感嘆した。他人の気持ちにいち早く気付くことに長けている彼女にはいつも驚かされる。そして少し嬉しくなる。自分のことをちゃんと見てくれている。そう思うとこそばゆい気持ちになった。
「今度は皆さんで雪合戦しましょうね。あ、そうだ近藤さんも都合が合えば誘いましょう。良順先生ももう熱は下がってるし今日一杯休めば大丈夫だって仰ってましたし」
手を合わせて千鶴は提案する。自分のことより他人を優先する彼女の深い優しさに総司は何度救われてきたことか。今回もそうだ。蚊帳の外でひとりでいると千鶴は必ず蚊帳を破ってこっちに駆け寄ってくる。そして何食わぬ顔であっさりと人の心を救ってしまうのだ。
「ありがとう・・・」
「え?え?」
総司の礼の意味がわからない千鶴は目を泳がせた。
彼女が持つその強さに総司は惹かれているのかもしれない。だから子のこの周りに居る人を時々妬ましく思うときもある。大好きなおもちゃを他人に取られた気持ちになる。今回の騒動もそれに似た感情だ。だが千鶴は物ではないし、総司のものでもない。だから彼女を喜ばせたいと思って自分から蒔いた種に、自分が苦しむ結果になった。彼女が喜ぶなら、そう思ったが自分ひとり置いていかれたような気持ちになってしまったのだ。年甲斐もなく。
「何でもないよ、何でもない」
だが今こうして目の前に居て、こうして看病してくれているそれだけでもう十分だった。総司は優しい笑みを浮かべてそう思った。
「ところで・・・他の皆は?」
「あ、あの・・・それが・・・」
「この、馬鹿野郎共がっ!!!」
千鶴の言葉を遮るように外から土方の怒号がした。その後もよく聞き取れないが怒鳴り散らす言葉が聞こえてくる。
「実はですね・・・」
千鶴の説明によるとさっき所用を済ませて帰ってきた土方が雪合戦の戦地を見て、平助を呼び出し事情を吐かせた。そして幹部達が集められ今外でお叱りを受けているというのだ。
「へぇ。君は大丈夫だったの?」
「あの、私にも責任があると土方さんに申し出たんですけど・・・」
平助や原田が自己申告しようとする千鶴を庇ったといのだ。誘った当人平助はもちろん他の連中も千鶴には内緒だったが、どうやら雪合戦の目的は千鶴に少しでも気晴らしになればとのことだった。それに薄々気づいていた総司は頷いた。
「そう。ま、別にいいんじゃない?皆土方さんには怒られなれてるし」
「で、でも・・・」
「平助!!ことの発端はお前らしいな?」
「や、土方さん顔怖いから!そんな睨まなくても」
「これが怒らずにいられるか!!何だ、幹部が集まって雪合戦だぁ!?おまけに障子や廊下まで汚しやがって!!一体いくつだてめぇら!!!」
飛び交う怒号が徐々に大きくなる。総司は布団から這い出て、千鶴の制止をふりきって、そっと障子から外を窺う。
その瞬間総司は腹を抱えて笑い出した。
外は極寒だ。真冬の気温ではそうそう一日積もった雪は解けない。その雪の上に幹部達が一列になって精出させられていた。土方はその前に仁王立ちになって憤慨を露にしている。その光景の可笑しさに堪えず笑ってしまった。
「沖田さん、そんなに笑わなくても・・・」
「だってどう見たって可笑しいもん!見てよ、あの一君と山崎君までうなだれて正座してるよ?」
二人で外を覗き見る。珍しい光景に千鶴も目を見開いている。ことの原因は総司にもあるがそこは彼らに罪を被って貰おう。
こういうのも、ありかもしれない。総司はぼんやりと思った。こうして二人だけで過ごす時間がもっと増えればいい。そうして少しずつ色んな彼女の顔を見られれば。
「千鶴ちゃん、この光景は僕と千鶴ちゃんと二人だけの内緒だよ?」
子供のように悪戯っぽく笑った総司に、千鶴は困ったように笑みを浮かべた。
「もう、沖田さんったら・・・」
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