二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 薄桜鬼 沖田総司
- 日時: 2011/01/30 17:20
- 名前: さくら (ID: w/qk2kZO)
初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。
こういう方はお断り。
荒らし目当て
沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?
温かい目で読んでやってください。
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- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.70 )
- 日時: 2012/01/10 20:25
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
「僕は怖がりなんだよ、千鶴ちゃん。君が思っているよりずっと…」
ささやくように、少しためらいながら総司は語り始めた。
「僕はね、死ぬことは怖くないだ。でも僕が死ぬことで誰かが悲しむのは怖い。僕が居なくなることで悲しませたくない。だから僕は閉じ込めたんだ。自分の想いを。だって伝えてしまったらもう戻れないから。戻れないほど溢れて想ってしまうから…君を」
抱き合ったまま総司は真っ直ぐに千鶴を見つめて言葉をつむぐ。その曇りのない瞳に総司は一時期恐れを抱いていた。伝えてしまえば君は真っ直ぐ答えてくれるだろう。だが、後ろめたさを感じている自分の醜い部分まで見透かされそうで、総司はずっと逃げては閉じ込めてきた。
その想いを。
「君が好きなんだよ、千鶴ちゃん。この気持ちに気づいたのは最近だけど、でも思えばずっと前から君が好きだったんだよ」
思いを告げた途端何故かほっとした。ほっとした瞬間涙が頬を伝っていた。理由はわからない。ただ気持ちが溢れるのと同様に涙も流れる。
「あ、れ…?何で…」
「沖田さん…沖田さん…」
必死で涙を隠そうとする総司の手を、千鶴は優しく握った。先ほどまでまどろみの中をさ迷っていた千鶴はいつのまにか、目を覚ましていた。そしてその穢れない眼差しで総司を包み込む。
「私がどうして泣いてしまったのか、わかりますか?」
千鶴が事切れる前の話をしているのだろう。総司は首を横に振った。
「今の沖田さんと同じです…想いに気づいても伝えられないもどかしさ…わたしもそれをずっと感じてました。私は鬼です…人ではありません。だから誰かを、人を好きになってしまってはいけない…人と歩む人生と関わっていけない…そう思っていました」
覚醒したといっても高熱を帯びる体で起きているのはつらい。千鶴は言葉の合間に深呼吸を繰り返す。それえも総司を見つめる瞳は揺るがない。
「でも、今日の晩…原田さんが私の部屋に来て言ってくれたんです…もう我慢することはないんだぞって…堪える必要なんてないんだって…誰も二人を止めない。もし二人が進む道に悲劇が待ち構えていても、二人で乗り越えてけばいいって…それは誰も咎めない。二人なら悲劇も喜劇に変えられるって…」
「左之さんがそんなことを…」
総司の部屋に来る前に千鶴の部屋に寄ったということだ。左之助の気遣いに胸が一杯になる。しかし左之助にそうまでさせてしまうほど傍から見れば自分たちはもどかしい関係だったのだろうか。
「だから沖田さんに想いを伝えられる…そう思ったら嬉しくなってほっとして…でも私が勝手に想って一方的になるんじゃないかって…」
「だから謝ったの?」
「…はい」
少し話し疲れた千鶴は気だるそうに目を閉じた。熱が上がったのかもしれない。総司は彼女を気遣うようにそっと腕を動かし寝心地の良い体勢を取らせる。しばらくの沈黙の後千鶴は小声で尋ねた。
「…沖田さんが以前、傍に居てもいいですかって聞いた時、構わないと言ってくれました…今もこれからも…傍に居てもいいですか?」
うっすらと開いた瞼から総司を見つめる。不安が彼女の瞳を揺るがせた。今こうして彼女からの不安を感じたのは初めてだった。否、今まで千鶴が不安げな姿を見てきた。それは彼女を避けている時に垣間見ていたはずだ。だがそれを見てみぬ振りをしてきた。気づいてしまえば気持ちが奔流となって溢れてしまう。
それだけはどうしても避けたかった。
だが、今は違う。これほどまで、風邪で倒れこむまで自分を見守ってきてくれた愛しい人を守らずにはいられない。
答えは一つだ。
「…嫌だ」
「え…っ?」
驚いて声を上げた千鶴に総司は唇を重ねた。
「ずっとずっと、僕が死ぬまで傍に居てくれないと困るなぁ」
総司の唐突の行動に目を丸くするばかりの千鶴は事態がわかっていない。金魚のように口をぱくぱくさせる千鶴に、総司は噴出した。
「好きだよ、千鶴ちゃん。それからありがとう。こんな僕を想ってくれて。どこまである命かわからないけどそれでも、これからは君のために使うよ」
「はい…はいっ」
やっと通じ合えた。想いが一緒になっただけでそれだけで涙が出た。千鶴は顔を歪めて泣き出してしまった。総司は小さな子供をあやすように背中を撫でてやる。
「今までいっぱい君を不安にさせてばかりいたね…もう君から離れない。離さない。だからもう泣かないで。僕は、君の笑顔が何より好きなんだよ?」
しばらく総司の胸に顔を埋めていた千鶴は恐る恐る顔を上げた。そして涙で腫れた目元をほころばせてどこかぎこちなく、それでいて無邪気な笑みを浮かべた。
「はい…!」
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.71 )
- 日時: 2012/02/02 20:39
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
ここからで一区切りついたので、番外編でも。
少しだけお付き合いください^^
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.72 )
- 日時: 2012/02/02 21:15
- 名前: カノン (ID: L0v6OTPI)
こんばんわ。
それと、久しぶりですね。
いまさらなんですが・・・・
タメでいいですか?私もおkですので・・・・
またきます!今回はこれだけしかコメできなかったので・・・・
がんばってくださいね!
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.73 )
- 日時: 2012/02/02 21:25
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
「寒い」
「えっ!?」
繕い物に精を出していた千鶴は、隣で火鉢で暖をとっていた総司の呟きに驚いた。否、驚いた理由はそれだけではない。子供のように千鶴の膝に頭をもたげてきたのだ。
「あ、あの、沖田さん!?」
「寒いからこのままでいさせて?」
最近風邪をこじらせた総司は完治するまで布団から出ることを禁止されていた。今は眠ることに飽きて寝巻きのまま千鶴の部屋で体を温めている。
朝餉の片づけを済ませた千鶴は特に仕事がなかったため、繕い物を手につけているところだった。
「え、ええっと…」
上目遣いで見上げる総司に抗議の声を上げようとするが、ただ金魚のように口をぱくぱくさせているだけだ。戸惑う彼女の姿を見て総司は会心の笑みを浮かべる。
「僕まだ寝たくないんだよね。ね、千鶴ちゃん。何かしようよ」
「な、何かってなんですか?」
総司が提案しようとした刹那、廊下から慌しい足音が近づいてきた。
足音は千鶴の部屋の前で止まると勢いよく襖を開けた。
「千鶴!雪合戦しようぜっ!!」
嬉々とした平助が目を輝かせて部屋に入ってきた。呆気にとられる千鶴をよそに、平助は二人の間に割ってはいる。
「ちょっと平助。ただでさえ寒いのに、更に極寒の外に行くの?」
平助に邪魔されて膝枕を断念した総司は不機嫌そうに声を上げた。
「あぁ総司は来んなよ。まだ風邪が治ってねーんだから。ってか何で千鶴の部屋にいんだよ」
「どうでもいいでしょ。それに僕は雪合戦がしたいわけじゃないから…そうじゃなくて、千鶴ちゃんをどうして連れ出そうとするのさ?」
「皆暇してるんだよ。雪も積もってるし皆で体動かしたほうが楽しいじゃねぇか。千鶴だって暇だろ?」
もめ合う二人に気圧されて千鶴は傍から見守っていたが、急に話を振られて慌てて返答する。
「あ、うん。でも私お仕事以外で外に出てもいいのかな?」
「え?」
「だって雪合戦って遊びでしょ?私そんなことしたら土方さんに叱られたりするんじゃ…」
気を落とす千鶴は目を伏せた。
そう。いくら周りの隊士が千鶴を信用しているからと言って、父親である綱道探しの道具でしかない。それ以外の意味を成さない。だがだからと言って時間を無駄に過ごすのも居心地が悪く、こうして家事をできる範囲でこなし、少しでも役に立とうとしている。
そんな自分が遊戯などして良いのか。千鶴は申し訳なさそうに視線をさ迷わせる。
無論、隊士達は千鶴が害をなす人物ではないと既にわかりきっていて、少し遊んだところで誰も咎めはしない。
「大丈夫だって!今日土方さん朝から出かけてるし!それにこうやって部屋に籠りっきりじゃ気が滅入るだろ?な、ちょっとだけ」
懇願するような平助の言葉に千鶴は顔を上げた。無理もない。巡察について行く時間以外、千鶴は外に出ることなど滅多になかった。最近はずっと部屋に籠っていた。
「本当に?いいの?」
「当たり前だろっ!じゃぁ決定!!早く外に行こうぜ!」
千鶴の手を引いて平助は部屋を後にした。
部屋にひとりと残された総司は目を細めた。
「せっかく遊べると思ったのになぁ」
遊び道具を取られた子供のように溜息をつく。
だだ、彼女を引き止めることはできなかった。あんなに嬉しそうに外に飛び出していったのだ。誰が彼女を止められるだろう。
「…よし」
一つうなずくと総司は羽織を手に部屋を後にした。
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.74 )
- 日時: 2012/02/10 23:15
- 名前: さくら (ID: mZr6nb5H)
「雪合戦?」
道場の中は外の気温とは打って変わって熱気が立ち込めていた。
今まで隊士達が汗を流して稽古に励んでいたところだ。道場に人の姿がないのは皆汗を流しに井戸へ向かったためだ。
広い道場に残されていた一は、ひとり稽古に励んでいた。
そこにやって来たのが妙案を思いついた、会心の笑みを浮かべた総司である。
「そう。もう一君稽古終わったんでしょ?どうせ暇なら一緒にやらない?雪合戦」
「何故だ?俺が参加する理由も興味もない」
「そう言わずに体動かす目的でやれば、稽古してることと変わりないんじゃない?ねぇ、一く———」
「断る」
総司の言葉も半ば、きっぱりと断ると一は木刀を握り直し稽古に戻る。総司は一瞬顔を曇らせたがそれも瞬きのうち。一の背後にゆったりとした足取りで近づくと声を低くした。
「ふぅん…そっか。残念だなぁ…土方さんもがっかりするだろうなぁ」
一の肩がぴくりと動く。やはり尊敬する人の名前は聞き逃せないのだろう。総司はその反応を見て確信を得た。
「土方さんも実は雪合戦に賛成でね?『雪合戦は剣と同じ。身体能力と精神を鍛えるにはもってこいだ』って言っててさ。だったら皆でやろうって話になったんだけど…一君がやらないって言うんなら、無理強いはしないよ」
わざとらしい笑みを残して総司が立ち去ろうと踵を返した。
「ま、待てっ」
「ん?なぁに?一君」
このとき総司は勝利を確信した。今の言葉で一が食い付かないはずがない。一を雪合戦に参加させる作戦が今この時———目を泳がせながら口ごもる一が何より、成就したことを告げていた。
白い世界。朝日に照らされ銀に染まる景色は見とれるほど美しい。
中庭に向かうと複数の人影が奇声、あるいは悲鳴を上げながら、雪玉を投げ合っていた。
広い中庭には千鶴と彼女を誘った平助、左之助、新八とおおかた予想できる顔ぶれで雪合戦の攻防を繰り広げている。
見れば左之助と新八、平助と千鶴と二手に分かれて雪玉を投げ合っている。勝算はどう見ても左之助と新八にあるようだ。
「いだっ!!今本気で投げただろっ!!新八っつぁん!」
「遅い、遅いぞ!平助!!お前の動きなど赤子同然だ!!だははははははっ!!!」
激しく飛び交う雪玉の間に入れるわけもなく、千鶴はせっせと平助のために雪玉をこさえる。左之助も今はやる気が出ないのか、新八に投手を任せて、雪玉を作る作業に専念していた。
総司はその光景を見つめて肩をすくめた。
「どうしてあんな寒い中、暴れることができるんだろう」
「おい、総司。良いのか?」
「ん?」
「何故千鶴も雪合戦に参加しているのだ?」
総司の後をついて来た一は怪訝に眉をひそめた。
彼女の外出は土方の許可なしに成し得るものではない。とうに外出している土方が許可を出したとも考えられない一は、目を細めた。
「あぁ、それは———」
口を開きかけた総司の頬を白い何かがかすめた。それは鈍い音を立てて横の障子に衝突、ぶち抜いた。それが雪合戦の雪玉だとわかるまで総司と一は数秒かかった。
「ちょっと、これまずくない?」
「あぁ。障子を破ったとなれば———っ!!」
間髪入れずに次の送球が一の頭に直撃した。高速の玉が投げた本人の豪腕を物語る。一の頭の上で解け始めた雪が髪にしみ込み、頬に伝う。
「だっはっはっはっは!!何やってんだ!斉藤!!かっこわりぃ!!」
「一君、直撃かよ!あははははははっ」
新八と平助の冷やかしにその漆黒の瞳に怒りの色が滲んだのを総司は見逃さなかった。
「殺(や)ってくる……」
「いってらっしゃーい」
一は何故か刀に手を添えながら縁側から中庭に下りる。総司はそれを笑顔で見送った。
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