二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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薄桜鬼  沖田総司
日時: 2011/01/30 17:20
名前: さくら (ID: w/qk2kZO)


初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。


こういう方はお断り。
荒らし目当て


沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?


温かい目で読んでやってください。

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Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.60 )
日時: 2011/12/21 21:59
名前: さくら (ID: mZr6nb5H)

声が出ない。呼吸が上手くできない。
だが総司は声を振り絞って悲鳴を上げる。
来てはいけない。来るな。
声にならない声は空気に漂い、虚しくも霧散する。喘ぎながら、視線だけを障子に向けた。

「沖田さん?あの、今よろしいでしょうか?」

燭台に火がともっているのを見て、総司がまだ起きていると思ったのだろう。戸に手をかける気配がする。総司は息を呑んだ。

「来るなっ!!!」

ありったけの力を込めて声を張り上げて叫んだ。今千鶴だけはそばに寄せてはいけない。そう思って無我夢中で叫んでいた。

「来ちゃだめだ…っ!!!お願いだから、どこかに行ってくれないかな…今君に会いたくないんだよね…っ」

君はまた泣いてしまうから。変若水を飲んだとき、千鶴は涙を流した。それは総司のため、総司を私事で巻き込んでしまったことに自責の念を抱いているのだろう。総司はそれをわかっていた。日々の生活から彼女が自分に負い目を感じているのが時折垣間見える瞬間がある。
それがわかっていたから。今会えば羅刹化している総司を見てまた自分を責めて泣くだろう。総司はすぐにその姿が思い浮かべられた。

「…ごめん、僕は君に会いたくない…」

最後に振り絞った声は小さく、弱々しいものだった。本当はこんなことを言いたくない。けれど会ってしまえば泣かせてしまう。ならばいっそ傷つけてでもここに近寄らせてはいけない。

「…すみません…私、ただ少し沖田さんが心配で…」

紡がれる声はとても小さく、とても悲しそうで。総司は胸が押しつぶされそうだった。

「…ごめんなさい」

消え入りそうな声はしかししっかりと総司の耳に届いていた。胸を鈍器で殴られたような衝撃が起こる。苦痛で悲鳴を上げる間接を叱咤して立ち上がろうとするが、均衡を崩しその場に倒れこむ。その間にも千鶴は踵を返し部屋の前から立ち去ろうとしていた。小さな足音が遠のくのを聞きながら、総司は唇を噛んだ。傷つけることでしか彼女を守れない自分の不甲斐なさに嫌気が差す。きつく拳を握り何度も畳を強打した。
羅刹化の苦しみを忘れるほど、何度も。何度も。



そんなある晩から、数日。
冷え込みが日々厳しくなっていたある日。総司は夜の巡察から戻り、刀の手入れをしている時だった。
夜半を越えた時刻に珍しく来客があった。

「よ、総司。一杯付き合わねぇか?」

総司の部屋に現れたのは酒瓶と杯を二つ手にした左之助だった。

「あれ、珍しいね。新八や平助は?」
「あいつらとはさっき飲んできた。二人とも酔い潰れて相手がいなくなったからな。たまにはいいだろ」

そう言って襖を閉めた。今はもう火鉢で暖をとらなければならないほど、冬はすぐそこまで迫っていた。火鉢のそばに二人は腰を下ろし、何も言わずにまずは酒口にする。
そうして沈黙の後、左之助は視線を杯に落としながら、静かな口調で口火を切った。

「今度は何があったんだよ」
「何が?」

唐突の問いかけに総司は小首をかしげた。今度という単語にも疑問を覚えた。やれやれと肩をすくめる左之助は視線を上げて総司を真っ直ぐに見つめる。

「千鶴とだよ、全く。俺だけじゃない、あの察しの悪い新八まで千鶴の様子がおかしいってんだよ。原因はおおかたお前だろう」
「やだなぁ。どうして千鶴ちゃんに元気がない理由が僕にあるのさ?」

とぼけてみたが、内心総司はぎくりとした。
あの夜から総司は何となく千鶴を避けていた。千鶴は何事もなかったように接してくるのだが、総司はそれがいたたまれなく思い避けてしまうようになってしまったのだ。
だが総司が見ている限り千鶴はいつも通りに見えた。

「とぼけんじゃねけよ。どっかに心当たりがあるんじゃねぇのか。まぁ、問い詰めたりしねぇがそうなんだろう」

相変わらず目敏い性格の左之助は日々の生活の異変を見逃さない。

「待ってよ、左之さん。僕から見て千鶴ちゃんはいつも通りに見えたけど?」
「…違うだろうが、明らかに」
「たとえば?」
「ぼんやりすることが多くなったな。時々声をかけても返事がない時だってある。それと、物悲しい目で俯いてること多いな」

語られる千鶴の姿はきっと自分が動けない昼間の話だろう。夜に千鶴を見る限り、そんな素振りは一切見せなかった。

「…それがどうして僕が原因だってなるのさ?」
「お前知ってるか?最近まで夜な夜な千鶴がお前の部屋に通ってたの」
「え?」

思わぬ左之助の発言に声を上げた。左之助は苦笑いを浮かべながら空になった総司の杯に酒を注ぐ。

「俺もつい昨日知ったんだがな。昨日の晩巡察から戻って井戸場に行こうとしたんだよ。そしたら総司の部屋から少し離れた廊下でじっとお前の部屋を見てたんだよ。まぁ、見てるっつうより、見守ってる感じがしたがな」

自分の杯も酒に満たし左之助は続けた。

「お前の部屋にまだ明かりがついてたな。厠にしちゃ遠回りだし、千鶴の部屋の方向にしちゃ逆方向だ。なのになんでここにいるんだって聞いたらあいつ、何でもないって言って自分の部屋に戻ったんだよ。もう冬だってのに羽織も着ずにな」
「それって…」
「お前が心配だったんだろうさ。変若水を飲んだお前の体が心配で、でもそこは女だな。直接お前に聞けないし、ただじっと見守るだけなんて健気じゃねぇかお前、思われてんだよ」

左之助の最後の言葉に総司は眩暈を覚えた。こめかみを押さえながら総司は杯を畳の上に置く。

「ちょっと、待ってよ。そんなの…」

そんなの耐えられない。自分は傷つけてばかりいるのに、思われる義理などないはずだ。彼女を悲しませては突き放してきた。それなのに思われるという意味がわからない。思われる理由もないはずだ。それほど自分は彼女を悲しませてきた。
それなのに———

「いい加減、腹くくったらどうだ?総司」



Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.61 )
日時: 2012/01/04 12:25
名前: さくら (ID: mZr6nb5H)

「何のこと…?左之さん」

混乱する頭を押さえながら総司は問うた。左之助は大仰に溜息をつくと、杯を床に置いて総司を見据える。

「そうやって自分の気持ちから逃げんのもやめにしろ。それじゃぁ千鶴が報われねぇじゃねぇか」
「何を言って…」
「自分の胸に手を当ててよーく考えてみろ。お前の本心は何だ?お前がそうやって感情を押し殺す必要なんざねぇんだよ。ただまっすぐに、何にも縛られずに想ってやれよ」

困惑しきった総司は左之助の言葉にはっと我に返った。
左之助はこう言っているのだ。自分の気持ちを誤魔化さなくとも良い、と。

「ちょっと…夜風にあたってくる」
「あぁ」

ふらりと立ち上がり廊下に出る。刺すような冷たい風に麻痺していた思考に血が通う。もう傾き始めた月を見上げうっそりと目を細めた。

「そうか。もういいんだ…」

どこかで何かが是と答える。
心の奥で必死に蓋をしてきた感情が一気にあふれ出す。
これまで閉じ込めてきた思いは望んではいけないものだとばかり思っていた。想えば伝えたくなる。けれどそれは許されない。
自分はいずれ死を迎える。近い未来そうなるだろう。それは何となくわかっていた。だから、己の死期が迫っているのに彼女を幸せになどできない。未来も、時間もないというのにどうやって彼女を幸せにできるのだろう。余計に彼女を悲しませるだけではないか。
そう思ってこの感情を閉じ込めてきた。

「なんだ…ただ、きっかけが欲しかったんだ…」

肩の荷が下りたように晴れやかな気分だった。そうして今度は決意する。目を閉じて彼女の姿を思い浮かべる。その時脳裏に浮かぶのは彼女の微笑む姿。

「ただ僕は守りたい…」

総司は前を向いた。足は自然と千鶴の部屋に向かっていた。



冷たい廊下も気に留めず、歩いていると人の気配を感じて総司は足を止めた。目の前の廊下にたたずむ人影に目を丸くする。

「千鶴ちゃん…」

小柄な影は総司ではなく、月に視線を注いでいた。だが名前を呼ばれて本の少し肩が揺れる。

「千鶴ちゃん、ちょっといい?君に話したいことが———」

総司が言い終わらないうちだった。千鶴の体が傾いだ。総司はとっさに均衡を崩し倒れこむ寸前で彼女を抱きかかえる。

「千鶴ちゃん!?…っ!!」

外の冷気とは反対に千鶴の体は熱を持っていた。それはもう触れているだけで熱いと感じるほど。

「お、きた…さん」
「だめだ、どうしてこんな体で…っ」

早く彼女を横にしなくては。総司は千鶴を抱え上げると彼女の部屋へと急ぐ。意識が朦朧としているのだろう、千鶴は薄く開いた瞼から総司を必死に探す。
千鶴の部屋につくと勢いよく障子を開け、敷かれた布団へと彼女をそっと寝かせる。千鶴は尚も総司の影を探しているのか、手をさ迷わせていた。

「沖田…さん…」
「今、良順先生を呼んでくるから」

千鶴のさ迷う手を握り返すと熱かった。火照った頬は赤く、息も荒い。
急いで治療しないと。総司は焦燥に駆られる。

「沖田、さん…ごめんなさい…ごめんなさい」
「え?」
「私、沖田さんのこと…」

そこで千鶴の意識は途切れてしまった。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.62 )
日時: 2012/01/04 12:46
名前: カノン (ID: L0v6OTPI)

こんにちは!
えっと、今回は夜一の口調がめんどくさくなったので、
口調を変えました。
では、頑張ってください!!
続きが気になります。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.63 )
日時: 2012/01/04 12:55
名前: 紫苑 (ID: D6CJex8x)


来ました!!

久しぶりに来たら、めっさ更新されてる(感激)

いっつもいいとこで切りますねww

続きが気になります!

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.64 )
日時: 2012/01/06 21:52
名前: さくら (ID: mZr6nb5H)

カノンさん

読んでくださってありがとうございます^^
更新がんばりますね!

紫苑さん

続きがんばりますねっノシ


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