二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Ⅰ want to be happy.
日時: 2015/09/15 20:56
名前: 爛 (ID: BB67RT0Y)

はじめまして。
少年・青年マンガをこよなく愛する爛と申します。

今回は、初投稿ということで私の好きな作品から、「終わりのセラフ」に挑戦させて頂こうと思います。


拙い文章ですが、どうぞ最後までお付き合いしていただけると光栄です。

Re: Ⅰ want to be happy. ( No.85 )
日時: 2016/03/31 11:40
名前: 爛   (ID: BB67RT0Y)


 どさくさにまぎれて鎖を落としていく鬼。
 このままじゃ同じことを繰り返す羽目になりそうだ、そう思った私は、鎖が剥がれ落ちる前に遠くに見える刀を手にしようと走る。

 私が刀を手にするのが先か、鎖が壊れるのが先か。




 世界は暗転した。
 どうやら私は、先に斬られてしまったらしい。



 今の私は、丁度、親を殺したあの頃の姿をしている。
 それに、手には血がべっとりとついていて、目の前には死に掛けの両親がいる。


 あの頃と違うのは、私の心が酷く落ち着いているぐらいだろうか。

 「鬼に攻撃を受けると悪夢を見る。
  精神が削がれる。」

 説明された内容が、今まさに起こっているわけだ。

 悪夢、そう思うと幾分か心が軽くなる。


 それでも、

 「早く殺せ。」
 「娘に負けるなんてな。」
 「せめて息子だったら格好がついたものを、立つ瀬が無いな。」

 ギャラリーの嘲笑は変わらない。

 「はい、ここだね。君の弱いところ。」

 突如として声が響く。

 「放っておけば良いものをさ、なまじ力を持っちゃったばかりに、
  今、殺したい、両親をバカにしないで欲しい、とか
  思っちゃってたりするんでしょ?
  甘いなぁ。
  甘いよ。

  僕の主にはそんな甘さはいらない。
  もし甘さが捨てられないんなら、このまま、
  僕に食われて鬼になれ。」

Re: Ⅰ want to be happy. ( No.86 )
日時: 2016/04/14 21:19
名前: 爛   (ID: BB67RT0Y)


 甘さ、鬼の言う甘さとは、私たちの言う優しさのことだと思ってきた。
 優しさ、他者への慈しみ、気遣い。
 そんな戦場では無縁の言葉。


 そして、私が、命を落としかける理由。

 「君はこれまで何度も命を落としかけてきたよね。
  10歳の頃も、高校生の頃も、今になっても。
  なんで学習しないかな〜。

  他の人間なんていいじゃないか。
  君さえ生き残れば。
  一瀬グレンも、柊深夜も、百夜優一郎も、柊シノアも、三宮三葉も、みんなみんないなくなれば良い。

  そしたら君は何も考えずに死ねるし、生きることだって出来る。
  それに、君の自覚していない本当の願いだって叶えることが出来る。」


 鬼は、私に向かって平然と言いのける。
 私の知らない私の願い。

 いったい何なのだろう。

 「知りたいかい?
  知りたいんだろう?

  だったらさ、僕にすべてを委ねるのが一番楽な方法だと思うよ。」

 知りたい。
 知りたいけど、こんな誘いに乗るなんて頭が悪すぎる。

 鬼との会話が続いていたとき、私の腹部から、突如として刀が生えた。正確に言えば、死んでいたはずの両親が起き上がり、私の腹部に刀を指した、ということだが。

 彼らは喋る。

 「お前がガキのくせしてそんなに強いからいけないんだ。」

 「お前が死ねばよかったんだ。」

 「養子くらい取ることができたのに。」

 「「全部、全部、お前が悪い。」」

 口から血をビシャビシャと吐きながら喋り続ける。
 私への恨み言を。
 大きく開いてしまった穴から、血を流しながら喋る。
 私への呪いを。
 暗く、黒く、光を失った目で語る。
 私の存在を否定する言葉を。

 鬼は喋る。
 私の両親のふりをして。



 グレンは言ってくれたじゃないか、
 「早く帰るぞ。」
 って。

 グレンは私を待ってくれてる。
 だから、私は帰らないといけない。
 家族の元に。

 「猩猩緋。
  私は、お前が何を言おうと、何を見せようと、何を思わせようと、
  私はにすべてを委ねない。

  私のやってきたことは私で背負う。
  だから、お前は私のそばでそれを支えてほしいな。

  甘さも、強欲さも、汚さも、全部ひっくるめて私だから、それをお前に委ねるのは筋違いだ。」

 苦虫をつぶしたような顔をする猩猩緋。

 「君はずるいよね。
  そんなの暴論だよ。

  僕は気にのすべてがほしいのに、君は自分のすべてが人に渡すモノじゃないと言う。
  あまつさえ支えて欲しいだなんて。

  長く生きてきたけど、君みたいなことを言う奴は久しぶりだよ。


  もう、僕の負けでいいよ。
  君にもっと力をあげる。」

 猩猩緋は一瞬で表情を変えると、

 「さぁ、刀をとって。


  そういえば君は一度も刀に触らずに僕に勝ったね。
  史上初の快挙だよ。」

 なんて、無駄口を叩きながら憑依してくれた。


 新しい家族が増えた。
  

 

Re: Ⅰ want to be happy. ( No.87 )
日時: 2016/04/17 21:51
名前: 爛   (ID: BB67RT0Y)

 目を覚ます。
 一番に視界に入ってくるのは、壊れた町並みと、居眠りしている人影。
 また、あたりを見渡すと、空には星が瞬き、だいぶ時間がたったことがわかる。
 腕時計を見ると、針はもう1時を指していた。

 依然ボーっとする頭を働かせ、この場からどう去るべきかを考える。
 1、同僚を置いていく
 2、グレンを置いていく
 3、置いていく
 4、コイツを起きるのを待つ
 選択肢は1〜4まである。
 さて、どれを選ぶべきか・・・。

 「なにバカなこと考えてるんだい?
  待っててくれてたんだろ、一緒に帰ればいいじゃないか。」

 人生の先輩らしく話しかけてくれる猩猩緋。
 と、言うよりも、今の私には、コイツから話しかけてくれたほうが驚きである。今までろくに話しかけてなんてこなかったのに。

 決めた。
 選択肢5だ。
 頭の中で、猩猩緋との会話を続けることにしよう。


 深夜、堂々と眠りこけている奴の傍らに、世に言う体操座りで座る。
 そこから、少しずつ話をしていく。
 猩猩緋と、仲良くなれるように、打ち解けられるように。
 が、

 「ねぇ、僕が君の意識の中で見つけた願い教えてあげようか?」

 猩猩緋のそんな提案に、私の心が揺らいだ。

Re: Ⅰ want to be happy. ( No.88 )
日時: 2016/04/28 21:23
名前: 爛   (ID: BB67RT0Y)


 私の願い。
 いったい何なのだろう。

 「もう、僕たちは家族、なんだろ?
  教えてあげるよ、君の願いはね・・・






  幸せになりたい、だよ。」

 戦う相手が誰であっても生きていたい。
 死ぬときは自分で決めた場所で死にたい。

 そんな、バカみたいな願いのほかに、10歳児のような願いまで持っていたのか。
 我ながら恥ずかしいような、気もする。




 「幸せになりたい。」

 小さく呟いてみる。

 「誰が?」

 独り言のつもりだったのに声が返ってきた。
 グレンのほうを見ると、さっきまで寝ていたはずなのに、いつの間にか起きていた。
 ニヤニヤしながら聞いてくる。

 「いったい誰が幸せになりたいんだ?」

 

Re: Ⅰ want to be happy. ( No.89 )
日時: 2016/05/02 20:52
名前: 爛   (ID: BB67RT0Y)


 人間、聞かれていないものと思って呟いた一言が他人に聞かれているとここまで焦ってしまうのだろうか。

 「は?何を言っているのだ?
  私は貴様がナニを言っているのか理解できない。
  ちゃんと趣旨に合った質問をすることをおすすめするよ。」

 きっと今の私の視線は縦横無尽に動き回っていることだろう。

 そして目の前にいる奴の視線は、驚きと、呆れが混じったなんとも言えないものだった。

 「チッ。
  まさか、正常な降りをして鬼が出ていたのか。
  これはしょうがない。
  今ここで殺すか。」

 思いっきり棒読みの口調で立ち上がる。
 そして私のほうに向き直り、スラリと刀を引き抜き刀を上段に構える。

 最後に、私に向けて刀を振りおろす・・・・。





 間一髪。
 目の前に振り下ろされた刀をギリギリのところで止めることが出来た。
 その方法は、真剣白刃取り、とか格好の良いものではなく、不恰好にも、片足を振り上げ靴底で止めただけだ。

 ・・・なんかゴメン。

 二人の間に気まずい沈黙が流れる。
 どうしよう、この後。

 私がそんな風に悩んでいると、

 「とりあえず、成功したようだな。
  帰るぞ。」

 さっさと歩き始めてしまったグレン。
 後ろに手をつき、片足は体操座りのままだった私からすれば、なんとも立ち上がりにくい体勢からのスタートだったが、なんとか立ち上がり、グレンのところまで追いつく。

 そして、勢いを殺さず、そのまま飛び蹴り。
 


 残念ながら綺麗に決まらなかった。
  


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。