複雑・ファジー小説

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獣妖過伝録(7過完結)
日時: 2012/09/08 14:53
名前: コーダ (ID: hF19FRKd)

 どうも〜!私、コーダと申します!

 初めましての方は、初めまして!知っている方は、毎度ありがとうございます!

 え〜……一応、ここに私の執筆作品がありますが、最近、新しい閃きがありましたので、それを形に表してみようと思って、突然、掛け持ちすることになりました。
 
 そして、このたびは2部になりましたのでタイトルも変えて獣妖過伝録(じゅうようかでんろく)としました。

 只今、超ゆっくり更新中……。

 コメントもどしどし待っています。

 では、長い話をばかりではつまらないと思いますので、これで終わりたいと思います。


※今更すぎますけど、この小説はけっこう、人が死にます。そういったものが苦手な方は、戻るを推奨します。

※この小説は、かなりもふもふでケモケモしています。そういったものが苦手な方は、戻るを推奨します。

 秋原かざや様より、素敵な宣伝をさせていただきました!下記に、宣伝文章を載せたいと思います!

————————————————————————

「お腹すいたなぁ……」
 輝くような二本の尻尾を揺らし、狐人、詐狐 妖天(さぎつね ようてん)は、今日もまた、腹を空かせて放浪し続ける。

「お狐さん?」
「我は……用事を思い出した……」
 ただひとつ。
 狐が現れた場所では、奇奇怪怪(ききかいかい)な現象がなくなると言い伝えられていた。


 100本の蝋燭。
 大量の青い紙。
 そして、青い光に二本の角。
  ————青の光と狐火


 恵み豊かな海。
 手漕ぎ船。
 蛇のような大きな体と、重い油。
  ————船上の油狐


 それは偶然? それとも……。
「我は……鶏ではない……狐だぁ……」
「貴様……あたしをなめてんのかい!?」
 星空の下、男女の狐が出会う。
  ————霊術狐と体術狐


 そして、逢魔が時を迎える。
「だから言ったでしょ……早く、帰った方が良いと」


 獣人達が暮らす和の世界を舞台に、妖天とアヤカシが織り成す
     不思議な放浪記が幕をあげる。
       【獣妖記伝録】
 現在、複雑・ファジースレッドにて、好評連載中!


 竿が反れる。
 妖天は突然、その場から立ちあがり、足と手に力を入れて一気に竿を引く。
 すると、水の中から出てきたのは四角形の物体。
「むぅ……」
「釣れたかと思えば下駄か! 鶏野郎にお似合いだな!」

————————————————————————



・参照突記伝録
 「1800突破しましたね。嬉しいことです」

・読者様記伝録
 ステッドラーさん(【★】アーマード・フェアリーズ【★】を執筆している方です。)
 玲さん(妖異伝を執筆している方です。)
 王翔さん(妖怪を払えない道士を執筆している方です。)
 水瀬 うららさん(Quiet Down!!を執筆している方です。)
 誰かさん(忘れ者を届けにを執筆している方です。)
 ベクトルさん(スピリッツを執筆している方です。)
 ナナセさん(現代退魔師を執筆している方です。)
 Neonさん(ヒトクイジンシュ!を執筆している方です。)
 猫未さん(私の小説を鑑定してくれた方です。)
 アゲハさん(黒蝶〜月夜に蝶は飛ぶ〜を執筆している方です。)
 水月さん(光の堕天使を執筆している方です。)
 狒牙さん(IFを執筆している方です。)
 木塚さん(SM不良武士集団を執筆している方です。)
 瑠々さん(不思議な放浪記を読む読者様です。)

・感鑑文記伝録
 水瀬 うららさん(ご丁寧な評価と嬉しい感想をありがとうございます!)
 秋原かざやさん(非常に糧になる鑑定ありがとうございます!)
 王翔さん(キャラが個性的と言ってくださり、ありがとうございます!)
 紅蓮の流星さん(私の足りない部分を、教えていただきありがとうございます!)
 猫未さん(私が夢中になってしまうところを、的確に抑制してくれました!ありがとうございます!)
 夜兎さん(私の致命的なミスをズバリ言ってくれました。精進します!そして、ありがとうございます!)
 七星 空★さん(新たなる改善点を教えていただきました。楽しいストーリーと言っていただきありがとうございました!)
 瑚雲さん(改善する場所を新たに教えてくれました。高評価、ありがとうございました!)
 野宮詩織さん(事細かい鑑定をしてくれました!ありがとうございました!)
 狒牙さん(とてもうれしい感想をくださり、私が執筆する糧になりました!ありがとうございます!)
 及川相木さん(面白い、そしてアドバイスを貰いました!ありがとうございます!)
 peachさん(たくさんの意見と、私の課題を見つけてくれました。ありがとうございます!)

・宣伝文記伝録
 秋原かざやさん(ドキドキするような宣伝をしてくれました!本当にありがとうございます!)

・絵描様記伝録
 王翔さん(とても、可愛い絵を描いてくれました!本当にありがとうございます!)
 >>12 >>31 >>37 >>54 >>116 >>132
 ナナセさん(リアルタイムで、叫んでしまう絵を描いてくれました!本当にありがとうございます!)
 >>20 >>48 >>99

・作成人記伝録
 講元(王翔さん投稿!11記にて、登場!「次は、そなたたちである」)
 葉月(ナナセさん投稿!12記にて、登場!「大成功!」)
 淋蘭(玲さん投稿!13記にて、登場!「ふ〜ん。君、けっこうやるね」)
 乘亞(水瀬 うららさん投稿!14記にて、登場!「大嫌いです」)
 軒先 風鈴(Neonさん投稿!15記にて、登場!「退屈だ」)

・異作出記伝録
 ジュン(玲さんが執筆している小説、妖異伝からゲスト参加しました。本当に、ありがとうございます!)

・妖出現記伝録
 青行燈(あおあんどん)
 小豆洗い(あずきあらい)
 アヤカシ(”イクチ”とも言う)
 磯撫(いそなで)
 一本ダタラ(いっぽんダタラ)
 犬神(いぬがみ)
 茨木童子(いばらぎどうじ)
 後神(うしろがみ)
 産女(うぶめ)
 雲外鏡(うんがいきょう)
 煙々羅(えんえんら)
 大蝦蟇(おおがま)
 大天狗(おおてんぐ)
 骸骨(がいこつ)
 貝児(かいちご)
 烏天狗(からすてんぐ)
 九尾の狐(きゅうびのきつね)
 葛の葉(くずのは)
 管狐(くだぎつね)
 懸衣翁(けんえおう)
 牛頭鬼(ごずき)、馬頭鬼(めずき)
 酒呑童子(しゅてんどうじ)
 女郎蜘蛛(じょろうぐも)
 ダイダラボッチ
 奪衣婆(だつえば)
 土蜘蛛(つちぐも)
 鵺(ぬえ)
 猫又(ねこまた)
 野鎚(のづち)
 波山(ばさん)
 雪女(ゆきおんな)
 雪ん子(ゆきんこ)
 妖刀村正(ようとうむらまさ)
 雷獣(らいじゅう)
 笑般若(わらいはんにゃ)

・獣妖記伝録
 1記:青の光と狐火    >>1
 2記:船上の油狐     >>5 
例1記:逢魔が時      >>10 
 3記:霊術狐と体術狐    >>11
 4記:蝦蟇と狐と笑般若  >>15
例2記:貝児        >>27
 5記:牛馬と犬狼     >>30
 6記:産女と雌狐     >>34
例3記:ダイダラボッチ   >>38
 7記:蜘蛛と獣たち 前  >>43
 8記:蜘蛛と獣たち 後   >>51
例4記:小豆洗い      >>52
 9記:雪の美女と白狐   >>53
10記:墓場の鳥兎     >>55
例5記:葛の葉       >>58
11記:天狗と犬狼     >>64
12記:狐狸と憑依妖    >>74
例6記:日の出       >>75 
13記:雷鳥兎犬      >>78
14記:鏡の兎と雌雄狐   >>84
例7記:煙々羅       >>87
15記:櫻月と村汰     >>93
16記:神麗 琶狐     >>96
例8記:奪衣婆と懸衣翁   >>100
17記:天狗と鳥獣 前   >>104
18記:天狗と鳥獣 中   >>105
19記:天狗と鳥獣 後   >>112
例9記:九尾の狐 狐編   >>106
20記:温泉と鼠狐     >>113
21記:犬神 琥市     >>121
例10記:九尾の狐 犬編  >>120
22記:天鳥船 楠崎    >>128
例11記:九尾の狐 鳥編  >>133
23記:鬼と鳥獣 前    >>136
24記:鬼と鳥獣 後    >>140
例最終記:九尾の狐 獣編  >>141
25記:鳥獣と真実     >>151


・獣妖過伝録
 1過:8人の鳥獣     >>159
例1現:不埒な者たち    >>164
 2過:2人の狐      >>163
例2現:禁断の境界線    >>166
 3過:修行する者     >>165
例3現:帰りと歴史     >>167
 4過:戦闘狼と冷血兎   >>168
例4現:過去の過ち     >>169
 5過:鳥の監視 前    >>170
例5現:起源、始原、発祥  >>171
 6過:鳥の監視 中    >>172
例6現:探し物       >>173
 7過:鳥の監視 後    >>174
例7現:箒に掃かれる思い  >>175


・獣妖画伝録
 >>76
 >>119

報告書を書き終えさせていただきました ( No.41 )
日時: 2011/07/17 16:54
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

こんにちは!コーダ様!
水瀬うららです!
報告書を書き終えさせていただきました!

報告書はURLとして載せさせていただきました。
のんびりとした小説ですね!
これからも頑張ってください!
応援しております!
誠に有り難うございました!

追記
報告書のジャンルを一つ、追加させていただきました。
宜しければ、後ほど、掲示板の方をご覧ください。

実は、私がやらさせていただいている、感想・意見の件ですが、
閉鎖を検討しております。

Re: 獣妖記伝録(例3記完結) ( No.42 )
日時: 2011/07/17 20:19
名前: コーダ (ID: wQq6g6Zh)

水瀬 うららさん>

 報告書は全て読ませていただきました!詳しい内容は、そちらのスレッドでご確認ください!
 のんびりした小説ですか……ちょっとこれからは、慌ただしくなりますよ……(笑)
 これからも、この小説をよろしくおねがいいたします!

Re: 獣妖記伝録 ( No.43 )
日時: 2011/09/08 06:41
名前: コーダ (ID: WI4WGDJb)

 町から少し離れた山。
 時間は、もうすぐで太陽が頂点に昇る時である。
 風は一切吹いておらず、非常に暑い日であった。
 ゆらゆらと、肉眼で確認できるくらいの陽炎が、その気にさせる。
 こういう日は、氷菓子でも食べたくなる。
 だが、山に向かう人には、そんな安らぎはない。
 汗を大量に流しながら、ただただ、険しくそびえたつ山を無言で登る。
 少し疲れたのか、山の中で、べったりと座り休む。
 辺りからは、蝉(せみ)の鳴き声が聞こえてくる。
 夏はこれからが、本番だと告げるような鳴き声。
 座って休んでいた登山者は、深い溜息をして、懐から布を出して、汗をふく。
 そして、10分くらいが経ち、また山の中を登る。
 ——————突然、何かが居る気配を感じる。
 深く萌えている草むらが、ささっと音を鳴らす。
 もちろん、それに気付く登山者。
 特に驚きもせず、むしろ待っていました。と、言わんばかりの表情。
 深く萌える草むらへ近づく。その足は、とても軽快だった。
 その瞬間、恐ろしい生物が現れる——————
 体長は、約5mあり、8本の足が印象的である。
 黒くて、ちょっと不気味な毛で覆われ、その姿はとても気味が悪かった。
 そう、草むらから出てきたのは、とんでもなく大きな蜘蛛(クモ)だった。
 登山者は、にやりと口元をあげる。
 すると、素早い動きで大きな蜘蛛へ近づく。
 恐れという気持ちはなかった。ただ、興味に身を任せて動く。
 そして、登山者は、大きな蜘蛛の黒くて不気味な毛を5本くらい、手で抜いた。
 それを握りながら、鼻で笑う。
 ——————登山者は、恐ろしいスピードで下山する。
 一体何をしたかったのか、大きな蜘蛛は全く理解できず、追うこともしなかった。


                ○


 45分くらいで登った山を、わずか5分で下山した登山者。
 その顔には、大量の汗が流れていた。
 山の入り口に立ててある、木でできた看板——————
 登山者は、その看板を引っこ抜き、くるっと180度回して、裏の状態で刺す。
 そして、どこからともかく、炭の塊を取りだす。
 思いっきり、看板に押し付け、何かを書くように動かす。
 炭の塊は、ボロボロになって使い物にならなくなるが、それと引き換えに、看板の裏へ文字を書けた。
 登山者は、満足そうな表情を浮かべて、ゆっくりこの場を後にする。

 ——————この山。登山するべからず。


       〜蜘蛛と獣たち 前〜


 昼間だというのに、とても静かな村。
 外では、子供が遊んでいる姿を、見ることはなかった。
 さらに、田畑で作業をしている人も見なかった。
 まるで、この村には誰も居ないくらい、殺風景だった。
 だが、建てられている家は、とても綺麗な作りをしていた。
 やはり、この村には人は住んでいるのだろう。
 ただ、引きこもりな住民が、多いだけなのかもしれない。
 ——————夜に行動する、怪しい集団という可能性もあるが。
 そんな村に、1人の男性と、1人の少女が歩いていた。
 灰色で、とてもさっぱりするくらい短い髪の毛。前髪は、目にかかっていなかった。
 頭には、ふさふさした2つの耳と1本の尻尾があり、瞳は青緑色をしていた。
 男性用の和服を着て、腰には、立派な刀をつけていた。
 そして、鞘にはお札か、お守りか分からない物が、紐で繋がれている。
 辺りを警戒するように、瞳を動かし、とても真剣な表情をする。パッと見たイメージは武士みたいな狼男。
 その男性の後ろを、ちょこちょこと子犬のように後をつける少女。
 灰色の髪の毛で、肩にかかるくらいの長さだった。前髪は、非常に目にかかっており、四角いメガネをかけていた。
 頭には、男性と同じふさふさした2つの耳と1本の尻尾があり、瞳は闇のように黒かった。
 巫女服みたいな、神々しい服装で身を包み、とても可愛らしかった。
 神々しいが、どこか禍々しい雰囲気を出す。しかし、獣のような鋭い眼光は全くなかった犬少女。
 左手で鞘の根元部分を握り、親指で刀の鍔(つば)を押さえて、歩く獣男。
 時たま、親指を前に出し、鞘から刀を出して、親指を戻して、刀を鞘に戻す行為をする。
 これにより、刀を鞘に戻したときに響く、あの独特な音が鳴る。
 静かな村だったので、その音はいっそう目立つ。
 だが、家の中から人が出てくることはなかった。
 狼男は、眉間にしわを寄せて、鋭い眼光で辺りをもっと見回す。
 いつ、不意打ちをくらっても、大丈夫な態勢もとっていた。
 犬少女は、狼男の右袖を、きゅっと力なく握る。
 しかし、なにも起こらない。
 犬少女は、狼男の傍へ行き、体を密着させる。
 耳と尻尾が震えていた。あまりの静かさに恐怖を感じた。
 すると、狼男は少し柔らかい表情をして呟く。

「そなたは、拙者が守る。だから、震えることはない……大船に乗った気持ちでいてくれ」

 この言葉が、非常に心を落ち着かせたのか、犬少女は両手で、可愛らしくメガネをくいっと上げる。
 ——————突然、どこかの家の扉が開く。
 狼男は、すぐさまその扉が開いたであろう場所を、凝視する。
 犬少女は、びっくりして狼男の後ろに隠れる。
 そこにいたのは、ごくごく普通の村人だった——————
 自分たちに、危害を加えることはなさそうだと、すぐに判断した狼男は、戦闘態勢をとく。
 同様に、犬少女も安心した表情で、ひょこっと出てくる。
 村人は、2人に気付いたのか、軽快に近づいてくる。
 頭には、2つの耳があり、1本の尻尾があった。
 尻尾の形を見て、すぐにこの村人は猫だと判断する。

「やぁ、こんな陰気な村に、武士みたいな人と可愛い少女が歩いているなんて、どうしたんだ?」

 初対面だとは思えないくらい、馴れ馴れしい猫男。
 すると、狼男も馴れ馴れしく言葉を言う。

「いや、拙者らは旅の途中で来ただけだ。所で、この村には活気が感じられないが……」

 辺りを見回しながら、狼男は猫男に尋ねる。
 この質問に、苦虫を噛んだかのような表情をする。

「活気ねぇ……まぁ、この村は昼間から静かで不気味だよな」

 尻尾をうねうね動かして、猫男は呟く。
 犬少女は、そんな尻尾をじっと見ていた。

「そなた、名は何と言う?」

 狼男は、突然猫男に名前を聞く。
 特に怪しむことなく、口元を上げながら猫男は呟く。

「ん?いやぁ、わっちは名を名乗るほど立派な男じゃない。野良猫でかまわんよ」

 その言葉は、何かを隠しているのがバレバレだった。
 しかし、何か言いたくない思いがあるのだろうと、すぐに判断する狼男。

「そうか。拙者は正狼 村潟(せいろう むらかた)。こちらに居るのは犬神 琥市(いぬがみ くいち)。」

 この言葉の後に、後ろに隠れていた琥市は、ぺこりとお辞儀をする。その際にずれたメガネを、両手でくいっと上げて直す。
 野良猫は、琥市の行動が可愛らしくて、思わず笑ってしまった。

「ずいぶんと、可愛い少女を護衛しているんだな」

 羨ましそうに、言葉を呟く。
 村潟は、少々困り顔をする。

「琥市が可愛いと……う〜む……拙者には、幼い子供にしか見えないが……」

 かなり失礼な言葉を言う。
 琥市は、むっとした表情をして、村潟の右腕をぺしぺしと叩く。

「ははは、君は可愛いなぁ〜」

 野良猫は、琥市を見つめながら、笑いながら言う。
 すると、耳と尻尾を震えさせながら、顔を赤くして、子犬のように村潟の後ろへ隠れる。
 しかし、村潟は少し意地悪をして、その場から少し横にずれる。
 琥市は、わたわたと慌てる。
 この光景に、野良猫は腹を抱えて笑う。
 しばらく、琥市弄りが続く。
 こんな大人は少し、滝に打たれて来い。と、むっとした表情を、琥市がしていたのは言うまでもない。


            ○


 村潟と琥市は、野良猫の家に招かれた。
 その家は、とても殺風景で、畳の上には登山用の大きな入れ物しかなかった。
 それを除けば、建てられたばかりの家といっても良いくらい綺麗である。
 村潟は、その床に座る。琥市は、その横にちょこんと座る。
 野良猫は、大きな入れ物を物色(ぶっしょく)して、ぶつぶつ呟く。

「なんか入ってないかなぁ……」

 しっぽを、ふりふりさせる野良猫。
 琥市は、やっぱりその尻尾をじっと見ていた。

「……葛餅(くずもち)しかないけど良い?」

 この言葉を聞いた瞬間、琥市の耳と尻尾はピクリと動く。
 口に人差し指を入れて、食べたそうな気持ちを露骨に出す。
 村潟は、そんな姿を見て少し、浅い溜息をする。

「そこの少女は、甘い物が好きなのか」

 野良猫は、葛餅を入れ物から出して、琥市に優しく投げ渡す。
 それを、両手で受け取り、葛餅を包んでいる竹の皮を剥がし、美味しそうに頬張る。
 噛んだ瞬間、ほのかな甘みが口の中に広がる。ツルツルとした触感で、のど越しがとても爽やかだった。
 ちなみに、葛餅は黒蜜やきな粉をつけて食べるのが主流だが、琥市はそんなこと気にせず、黙々と頬張る。
 野良猫は、その姿を見て、また入れ物の中を物色する。

「う〜ん……おっ、外郎(ういろう)発見」

 葛餅を食べていた琥市の耳と尻尾が、またピクリと動く。
 口を動かしながら、じっと野良猫を見つめる。

「琥市……いやしいぞ……」

 村潟は、恥ずかしそうな表情をして、琥市を見つめて、小さく言葉を呟く。
 しかし、野良猫は思いっきり、腹を抱えながら笑い始める。

「ははは!良いじゃないかぁ!子供は、正直が1番可愛い!それくらい、十分知っているだろ?村潟!」

 正論を言われ、村潟は耳とピクリと動かして、小さく唸る。
 どうやら、何も言い返せなかったらしい。
 野良猫は、手に持っていた外郎を琥市に、また優しく投げ渡す。
 犬独特の、小さな犬歯を出しながら、可愛い表情をして、外郎を包んでいる竹の皮を剥がす。その姿は、お土産を貰った子供が、包装を破って中身を取り出したいという、あの感じに似ていた。
 真っ白い長方形の、切られていない外郎を、丸ごとかぶりつく。
 餅とは、若干違うもちもち感が噛んだ瞬間に分かり、淡白な甘みが口の中に広がる。
 さらに、餅みたいな触感なのに、のど越しは異様に爽やかで、詰まらせる心配はなかった。
 普通は、手頃なサイズに切って食べる物である。むしろ、丸ごと食べる人はほとんど居ない。
 だが、琥市は見た目の可愛さに似合わず、丸ごと食べている。それもまた、可愛らしいが。
 村潟は、仕方なさそうな表情をして、琥市の近くに置いてあった葛餅を一口食べる。

「むっ……この葛餅は、材料となる葛粉(くずこ)と砂糖に拘っているな……葛粉は、厳選された葛葉(くずのは)を使用して、砂糖はあの和三盆糖(わさんぼんとう)を惜しげもなく使っている……冷やす工程の時は、わざわざ時間をかけて流水で行っているな……そして、この喉越しと、葛餅の透明感は、でんぷんも含んでいる……」

 眉間にしわを寄せて、かなり熱く説明する村潟。
 すると、琥市が持っていた外郎を取り上げて、そのまま、丸かじりする。

「こ、これは……外郎というのは、米粉と砂糖で練り合わせて、蒸すことで出来る、非常に簡単な和菓子だ……だが、この美味さは……まさか、米粉は厳しい審査を通った、高級な米を使って、砂糖はやはり和三盆糖を使用……蒸す時間も、きっちり計って、1番味が出る時に調整をしたな……むぅ……出来る」

 耳と尻尾を震わせながら、村潟は白旗を上げる——————
 不意に、右袖が引っ張られた。
 そこには、とても涙目で、耳と尻尾を落とした琥市が目に入る。
 しまった。と、心の中で叫び、何を思ったのか、外郎をそのまま返す。
 頬を大きく膨らませて、とても不機嫌そうに外郎を受け取る。
 そして、それを頬張るために口を大きく開ける——————
 突然、琥市は動きを止めた。
 なぜか、顔は赤くなり始め、尻尾は挙動不審に動いていた。
 ——————村潟が食べた外郎。
 琥市は、何かを決心したような心が構えで、外郎を頬張る。
 この様子を見ていた野良猫は、腹を抱えて大笑いをした。

「ははは!琥市は、本当に可愛いなぁ!わっちがもう少し若ければ、メロメロになっていたなぁ!」

 まさかの言葉に、琥市は先よりもっと顔を赤くする。
 その赤さは、紅ショウガと同じくらいである。
 村潟は、頭の中に大量の疑問符を浮かべながら、隣に居る少女を見つめる。

「そういえば、その葛餅と外郎は、この村で買ったなぁ……まさか、そこまで美味しいなんて、わっち予想外」

 両手を、頭の後ろで組んで、思わず一言言う野良猫。
 この言葉に、2人の眉はピクリと動く。
 琥市は、村潟の右袖を右手で思いっきり引っ張って、左人差し指を口に咥えながら、見つめる。
 この表情を、村潟は一瞬で読み取り、大きく頷く。

「葛餅と外郎は、是非手土産に持ち帰りたい。それは、どこに売っていた?」

 この言葉を聞いた瞬間、野良猫は苦虫を噛んだかのような表情をする。
 尻尾も挙動不審に動いていて、どこかおかしかった。
 村潟は、目を見開いて、尋ねる。

「むっ……?何か、あるのか?」

 野良猫は、頭をかきながら、浅い溜息をする。
 そして、申し訳なさそうに呟く。

「いやぁ……そのなんだ。葛餅と外郎を売っているお店は、しばらく開かないんだよなぁ……あそこのおばちゃん、病気で倒れたって」

 琥市は、少し残念そうな表情をする。
 しかし、村潟はあることに気がつく。

「一応、この村には人は住んでいるのか。静かで、誰も居ないかと拙者は勝手に思っていたが……」

 この言葉に、野良猫は視線をそらした。
 琥市は、少しむっとした表情で見つめ、畳の上を、何度も叩く。
 これには思わず、尻尾をびくっと立たせて、小さな溜息をする。

「……この村は、たくさんの人がいるさ。今の時間帯ならとても賑わっていると思う。だけど、原因不明の病気が広まって、全滅状態なのさぁ。治す方法も分からない……このままだと……後は、分かるな?」

 村に居る人々は、全員病死する。
 野良猫が最後に言いたいことはそれだった。
 村潟は、大きく唸る。

「……拙者らも、この村に居たら病気にかかるのではないか?」

 確かにそうだ。この村一体を病気に感染させたのだから、そこへ来た村潟と琥市は、とても危ない。
 もちろん、目の前に居る野良猫も感染している疑いはある。

「いやぁ、もうアウトだ。わっちも、村潟、琥市は感染した」

 この言葉に、琥市は体を震わせていた。
 さらに追い打ちをかけるように、野良猫は恐ろしい言葉を言う。

「感染して……早くて、1週間で死んだ人が居たなぁ……」

 眉間にしわ寄せて、深刻そうな表情をする村潟の隣で、琥市は涙を流していた。
 これは、本当に洒落にならない。
 原因不明の病原体。それが、自分たちの体の中で現在進行形に潜んでいる。
 いつ、死ぬか分からない緊張感。
 きがつくと、村潟と琥市の胸の鼓動は非常に速くなっていた。
 しかし、ここで少しおかしいことがあった。
 ——————野良猫は、非常に落ち着いていたということ。
 自分も、感染しているはずなのに、やけに余裕を出している。
 これには、2つの考えが思いあたる。
 1つ目は、病原体について何かを知っている。
 2つ目は、死を悟って、どうでもよくなった。
 前者の考えであって欲しいと思うが、現実問題、後者の方が可能性は高いだろう。
 ——————外に誰かが居る気配を感じる。
 村潟は、無言でその場に立ち上がり、家の玄関まで歩く。

「拙者、少し散歩をしてくる」

 野良猫の家から出て行く村潟。
 琥市は、置いて行かれたことに、尻尾を落として、少々がっかりする。
 それを見ていた野良猫は、微笑していた。


            ○


 時は少し遡る。
 村潟と琥市が野良猫と話をしている時に、静かな村には新たに、2人の来客があった。
 1人目は、黒くて、首くらいまでの長さがある髪の毛をしていて、それはとても艶やかであった。前髪は、目にけっこうかかっている。
 頭には、ふさふさした2つの耳があり、瞳は黒紫色をしていた。
 男性用の和服を着て、輝くような黄色い2本の尻尾を、神々しく揺らす。
 そして、首にはお札か、お守りか分からない物が、紐で繋がれている。
 極めつけに、眠そうな表情と、頼りなさそうな雰囲気を漂わせていた男。
 2人目は、金髪で、腰まで長い艶やかな髪の長さ。頭には、ふさふさした2つの耳がある。
 瞳は金色で、見つめられたら、思わず魅了されてしまうような眼光。
 上半身には、女性用の和服を着て、下半身には、よく巫女がつけていそうな袴を着ていた。
 そして、輝くような黄色い1本の尻尾を、神々しく揺らしていた。
 もっと言ってしまえば、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が非常に似合っていた女。
 傍から見ると、男女の狐がデートをしているのだろうと、思う光景。
 しかし、そんな雰囲気は2人にはなかった。

「う〜ん……陰気な村だねぇ……」

 男は、こめかみを触りながら辺りを見回す。
 あまりにも静かで、殺風景な村に、失礼な言葉を言った男に、女は眉を動かして、大声を出す。

「貴様が居るから、この村が殺風景になるんだろ!?この、ジリ貧狐!」

 酷い罵声に、男は眉間にしわを寄せて黙る。
 美女なのに、この言葉づかいで色々と台無しにしている。誰もが、そう思う。

「むぅ……君はぁ……本当に、狐らしくないねぇ……琶狐(わこ)……まぁ、同族を嫌う我には丁度良いがなぁ……」

 拱手をしながら、男は小さく呟く。
 琶子と呼ばれた美女は、腕組をしながら、なぜか胸を張る。
 ちなみに、狐らしい女性と言うのは、女々しく、おしとやかで、かなり艶(なま)めかしいことを言う。
 ——————この美女には、艶めかしさをともかく、女々しさもおしとやかさもなかった。

「そういえば、なんで貴様は同族が嫌いなんだ!?ジリ貧妖天(ようてん)」

 妖天と呼ばれた男は、拱手をしながら、黙る。
 すると、耳を動かして小さく唸る。

「う〜ん……なんでだろうなぁ……我は、同族を嫌う……?ん〜……?」

 そのうち、頭を抱えながら、妖天は考える。
 その姿を見た琶狐は、なぜか目を見開いて叫んだ。

「いや!貴様のことだ!どうせ、また理由などない、とか言い出すんだろ!?あたしは、もう分かってんだからな!」

 しかし、この言葉を言われても妖天は、深く考える。
 気づいたら、地面に膝をついて、汗を垂らしながら、大きく唸っていた。

「同族……我は……同族を……?同族……嫌う?狐……うっ……わ、我は……きゅ、九狐(きゅうこ)……」

 妖天は、同じような言葉を連呼して、その場でうつ伏せに倒れてしまった。
 過呼吸にもなっていて、いつもとは全く違う男を見て、とても焦る琶狐。

「ジリ貧妖天!?よ、妖天——!」

 その叫び声を出した瞬間、不意に背後の方から、人影が見えた。
 頭の上にはふさふさした2つの耳と、1本の尻尾。
 和服を着ていて、腰には刀をつけていた男。村潟だった。
 2人の姿をみて、颯爽と走ってきた。

「そなたたち!?何事だ!?」

 村潟の問いかけに、琶狐は慌てながら事情を説明する。

「あ、あたしの連れが、突然倒れたんだ!と、とにかくなんとかしてくれ!」

 尻尾を挙動不審に動かす琶狐。
 村潟は、とりあえず、倒れた妖天に右肩を貸す。
 逆の方向から、琶狐は左肩を貸す。

「近くに拙者らの家がある。そこへ連れて行く!」

 村潟がそう言うと、2人は颯爽と妖天を連れて行った。

「きゅ、九狐……我は……我はぁ……」

 ——————妖天が首につり下げられていた、お札かお守りみたいなものが、今だけ変な感じがした。


            ○


「なんだぁ!?突然のお客さんだな村潟!」

 村潟が案内した家に入った瞬間、猫の男がびっくりしていた。
 同時に、外郎を全て食べ終えて、満足そうな表情をした少女。琥市も驚いていた。

「とりあえず、そこら辺に寝かせておけ!」

 琶狐は、そう言って、畳の上に妖天を仰向けの状態で寝かせる。
 先よりは落ち着いた呼吸をしていて、2人は少しほっと一息をする。
 村潟は、琥市の隣に座り、呟く。

「そなたたちの名は?」

 琶狐もその場に正座をして、妖天の頭を自分の太股の上に乗せる。
 そして、“独特な犬歯”を見せながら言う。

「あたしは神麗 琶狐(こうれい わこ)。こいつは、詐狐 妖天(さぎつね ようてん)さ」

 この返しに、村潟は、鞘の根元を左手で握り、親指を鍔の上に乗せる。

「拙者は正狼 村潟。隣に居るのは、犬神 琥市……そちらに居るのは……」
「わっちは、ただの野良猫さ」

 自分たちの自己紹介を、言えるほどの空気。
 これはもう、大丈夫だろうと悟る。
 しかし、なぜか琥市は両手でメガネとくいっと上げて妖天の首元を見つめる。
 そこにはお札か、お守りみたいな物——————
 そして、隣に居る村潟の刀の鞘を見る。
 先程見たお札か、お守りみたいな物がある——————
 これには、思わず眉を動かすが、特にこれといった行動はしなかった。

「へぇ、琶狐ってかなり美人だなぁ」

 野良猫は、笑いながら琶子にその言葉を言う。
 すると、狐目になりながらこう呟く。

「あたしにそう言って、20秒後に撤回する男は少なくないが?」

 指の間接を鳴らして、野良猫を脅す。
 琥市は、思わず村潟の背後に隠れてしまった。
 子犬のように、耳と尻尾を震わせながら、その様子を覗く。

「恐れているのに、様子は見たいのか琥市は……」

 思わず浅い溜息をする村潟。
 すると、琶狐の太股に上に乗っていた妖天が目を開く。
 特に慌てる様子もなく、5秒くらいじっとする。
 目に映るのは、着物の上からでも微妙に膨らみが分かる胸と、琶狐の顎だ。

「我は……琶狐に、膝枕をされているのかぁ……?」

 この言葉を聞いた瞬間、琶狐は口元を上げる。

「貴様にとってはご褒美みたいなものだろ!?」

 妖天は、特にまんざらでもない表情をする。
 その表情は、どこか安心しているような感じだった。

「むぅ……確かになぁ……この柔らかい感触……似ている……」
「何が、似ているんだ?」

 妖天の言葉に、当然琶狐は、頭の中に疑問符を思い浮かべる。
 しかし、妖天は小さく唸る。

「ん〜……それは、我には……分からぬ……似ている……似ている……?」
「待て!それ以上考えるな!」

 琶狐は、先みたいなことが起こらないように、思いっきり平手打ちをする。
 もちろん、妖天は気絶をする。
 その様子を見ていた3人は苦笑する。
 しばらく、雑談で妖天が起き上がるまでの時間をつぶす。
 そして、ようやく妖天はゆっくり目を開いた。

「この光景はぁ……前にも見たようなぁ……」

 眉間にしわを寄せて、妖天は考える。
 だが、琶狐はそんなこと気にするな、といった表情をする。

「むぅ……」

 妖天は、小さくそう言うと、頭を上げる——————
 しかし、琶狐に額(ひたい)を押し付けられ、また太股の上に頭が乗っかる。

「貴様は、まだ寝ていた方が良いだろ!?ジリ貧狐!」

 この言葉を言っている時の琶狐は、微妙に表情が柔らかかったという。
 とりあえず、しばらくこのままだろうと察した妖天は、その態勢のまま呟く。

「この村はぁ……なんで、こんなに静かなんだぁ〜?」

 のんびりした口調で尋ねる。
 すると、野良猫が口を開く。

「先、村潟と琥市にも説明したけど、この村は原因不明の病気が流行ってねぇ……村人全員が感染さぁ。きっと、妖天も琶狐も感染しているだろうねぇ」

 この言葉に、琶狐は耳と尻尾をびくっと動かす。
 だが、妖天は特に驚きもせずに一言呟いた。

「原因不明の……病気ねぇ……」

 こめかみを触りながら、何かを考える。
 村潟は、そんな妖天をじっと見つめる。

「なにか、思い当たる節(ふし)はあるのか?」
「ん〜……?どうだろうねぇ……情報が少ないからなぁ……ただ、きな臭いことだけは分かる……」

 この発言に、野良猫は口元を上げて、にやにやする。
 それに気付いた琥市は、メガネ越しの、可愛い瞳でじっと見つめる。

「情報かぁ……それなら、良い物があるんだがねぇ」

 懐から、謎で不気味な毛みたいな物を出す野良猫。
 妖天は、すかさずその毛を手に取り、じっと見つめる。
 鼻を動かして、臭いも嗅いだりする。
 琥市も、毛を手に取り、四方八方から見つめる。
 村潟と琶狐は、そういう知識は持ち合わせていないので、ずっと頭の中では“ただの毛”と、考えていた。
 5分くらい経って、琥市が毛を野良猫に返す。

「何か分かったか?」

 村潟がそう尋ねると、琥市は顔を大きく左右に振る。
 どうやら、毛だけでは分からなかったらしい。
 野良猫は、少々眉間にしわを寄せる。

「うえぇ……嘘だろ……せっかく、大きな化け物から、引っこ抜いてきたってのに……」

 苦労して取ってきた情報が、全く使えないことに落胆する。
 すると、琶狐が目をぱちぱちさせて叫ぶ。

「大きな、化けもんだって!?」

 どうやら、大きな化け物に興味があるようだ。
 まさかの言葉に、野良猫は変な声を出して答える。

「えっ?まぁ、大きな化け物がこの山に居るけど?」

 琶狐は、さっとその場で立ち上がる。
 その際、妖天の頭は、思いっきり畳にごつんとぶつける。
 だが、特に痛がる言葉を言わずに、じっと毛を見つめていた。

「あたしの血が騒ぐねぇ!最近、暴れていないから、ちょっくら退治してくっか!?」

 どこかに居そうな、親父のノリで言葉を言う琶狐。
 すると、村潟は何かを思いついたのか、ふと呟く。

「そなたは、その大きな化け物とこの村の病気に関係があると?」

 よくぞ聞いてくれた。と、言わんばかりの表情をする野良猫。
 そして、やや早口で言葉を言う。

「実は、わっちはこの村に1週間半くらい住んでいるんだぁ。最初の頃は、村人はたくさん居て活気があったよ。外郎も葛餅も大量に売っていたんだ。そうだなぁ……5日前から突然、村人は居なくなった……そしたら、全員病気で全滅さ。わっちは、この村の近くの山を毎日登るのが日課なんだ。村人が、病気で倒れた日も、とりあえず山を登ったんだがぁ……その時に、今まで見つかることはなかった、大きな化け物を見つけた。根拠はないけど、全滅した時と大きな化け物が現れた日が一緒だったから、なんとなくさ……」

 村潟は、眉間にしわを寄せながら、考える。
 すると、琶狐は仁王立ちをしながら叫ぶ。

「たまたまだったんだろ!?それに、大きな化け物と病気はなんの関係がある!?全く、分からん!」

 琥市もこの言葉に、顔を上下に動かす。
 せっかく、苦労して化け物から毛を引っこ抜いてきたのに、それは情報として使えないことに落胆し、最終的に、こんな言葉も言われて、さらに落胆する野良猫。
 一瞬、空気は静かになるが、妖天が突然、一言呟く。

「いやぁ……違うねぇ……君の努力は、全て報われている……村人が病気で全滅した時に、大きな化け物……いや、妖(あやかし)が出てきたのは、非常に関係がある。そして、この毛を見て我は、妖の正体も把握できたのさぁ……」

 この言葉を言っていた時の妖天は、非常に凛々しかった。
 ——————仰向けで寝ていたので、台無しだが。
 琥市は、非常に驚いた表情をして、妖天を見つめる。

「ジリ貧狐!とっとと、教えろ!」

 琶狐はとりあえず、妖の正体を言うように催促する。

「むぅ……仕方ないなぁ……ここの村人を一斉に病気にしたのは……土蜘蛛(つちぐも)さぁ……」

 妖天は、体を起して、拱手をしながら言う。
 琶狐、村潟、琥市、野良猫は非常に驚いた表情をする。

 ——————この村を全滅させた妖が近くに居るなんて、思いもしなかったから。

Re: 獣妖記伝録(7記前半完結) ( No.44 )
日時: 2011/07/19 17:27
名前: 王翔 (ID: eDT5/SqV)

はい、王翔です。
また絵をのせてくださり、ありがとうございます!
結構進みましたね、続きが気になります。
更新頑張ってください!

Re: 獣妖記伝録(7記前半完結) ( No.45 )
日時: 2011/07/19 22:43
名前: コーダ (ID: Gqv37Ep.)

王翔さん>

 はい、絵の方はバリバリ載せますよ!可愛い絵を、たくさんの読者様に見ていただきたいので……
 進みましたよ!そして、まさかの1話完結しなかったという事件も発生しました(笑)
 1話は、10,000文字くらいで納まっていますので……
 それほど、今回のお話は重要だと私は、勝手に思っています。
 ですから、是非楽しみに待っていてください!


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