複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.77 )
日時: 2022/06/15 20:23
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「問題はどうやって、そいつに近づくかだ。国1番の大貴族となれば、護衛だって相当な数だ。一般人が面会できるわけがないし、ましてやギャングなんて相手にもしてくれないだろう」

「また、ファミリーに成り済まして近づくのはどう?ほら、そうやって私達は怪しまれずにスターリック銀行に潜入できたわけだし・・・・・・!」

 ヴェロニカの期待が膨らむ提案をデズモンドは首を横に振り、あっさり否定した。

「残念だけど、その手は多分通用しない。あくまでも推測だけど、シャルロッテに接触できるのはカトリーヌを含むごく一部の大幹部だけだと思うよ?仮に上手く変装しても見破られるのが関の山だろうね」

 続いてルイスも俯きながら、ギャングが抱えた数々の欠点をはっきりと指摘する。

「私達は人数はおろか、物資や資金すら遥かに乏しい。そんな状態で悪魔と剣を交えようとも、"よくて犬死、悪くて犬死"・・・・・・でしょう」

「こっちに勝算は、ほぼないって事か・・・・・・」

 クリスは自分達の不利な状況に皮肉すら言えなかった。
酒を飲み干したアシュレイは爽快な吐息を吐き出し、濡れた口を拭いながら

「けどよ。カトリーヌを消したきゃ、どの道シャルロッテをどうにかしなきゃなんねぇんだろ?後ろ盾を潰さねぇ限り、ルフェーブル・ファミリーを壊滅させるには非常に困難だ。それどころか、不可能に等しい計算になるぜ」

「でも、相手は国そのものなんだよ!?私達はこのまま一生、カトリーヌをやっつけられないの!?」

 ミシェルも兄の仇を討てる望みを絶たれ、失望を膨らませるしかなかった。だが・・・・・・

「・・・・・・いや。僕が知ってる限り、手がないわけじゃない。まあ、望みはかなり薄いし、一か八かの賭けになるけど」

「え?クリス?何か、いい方法を知ってるの?」

 フィオナは聞き捨てならない発言に食いつく。

「目には目を歯には歯を・・・・・・権力者には権力者を・・・・・・だ」

「うう~!意味がよく分かんないよ~!誰か当てになる人に心当たりでもあるの?」

 メルトの問いに返事を返さず、逆にクリスが全員に聞き返した。

「このハイペシアで権力の頂点に立つ者と言えば、誰だと思う?」

「ハイペシアの権力者・・・・・・おいおい!まさか、"あの男"を頼ると言うんじゃないだろうな!?」

 リチャードは正気を疑い、意味を知ったデズモンドとユーリも呆然とする。


「"ジェームズ・リンカーン大統領"・・・・・・」


 クリスは声を低く、その名を静かに呟く。

「仰る通り、リンカーンはハイペシアの最高権力者ですが、彼を味方につけるとしても、無法者である私達を相手にしてくれるのでしょうか?下手をすれば全員が捕まって最悪の場合、絞首台に送られる可能性もあるのでは?」

 サクラは計画に成功に自信がなく、リスクだけを大幅に考慮していた。

「他に望みがないなら、諦めるしかない。でも、復讐を放棄するなんて嫌だ。どんな手を使ってでも、カトリーヌを殺して妹の仇を討つと誓ったんだ。皆が嫌なら別に構わない。大統領には僕1人だけでも会いに行く・・・・・・」

 決意を固め、部屋を出ようとするクリスの服の袖をいきなりアシュレイが掴んだ。
強引に引き寄せた耳元に顔を近づけ

「おい。1人でいいかっこしてんじゃねえよ。ファミリーを恨んでるのは自分だけだと思ってんのか?どうしても大統領に会いに行くってんなら、この俺も連れてけ。はっきり言って、お前だけじゃ不安でしょうがねえんだよ」

 とアシュレイは本気を訴える鋭い視線で同行を促す。
すると、リチャードも立ち上がり、クリスの頭上に手を置いた。

「まあ、たまには危険な賭けも悪くないか。俺も同行しよう。家族同然のお前らだけを危険な目に合わせるわけにはいかんからな。万が一死なれたら、ギャングのリーダーとしての面目が立たん」

「なら、私も行くわ。大統領との面接立候補の空きはまだ残ってる?」

「リリア・・・・・・」

 リリアはクリスをキッと睨み返し

「勘違いしないで。私はあくまでもリチャードの護衛のため。彼が死んだら、誰があんた達を率いるのよ?全く、身勝手な復讐欲に付き合わされている皆の身にもなりなさいよね」

「私も行きたい!」

 無邪気にお願いするミシェルにリチャードは鼻で笑い

「ガキは残れ。誰か俺達の不在の間、こいつの遊び相手をしてくれないか?謝礼に10ウォールをくれてやる」

「バカにしないで!子供じゃないもん!」

「ははっ。行ったってつまらないだけだよ。そんな事より明日、湖で釣りをしませんか?君の好きな話、色々聞かせてよ?」

 笑った顔で頭を撫で、ステラは器用に子供を扱う。

「・・・・・・釣りって楽しいの?」

「うん、凄く楽しいですよ。あなたが作った魚でソテーを作りましょう」

「決まりだな。大統領閣下には俺とクリス、アシュレイとリリアの4人で行く。お前らは俺達が戻るまで、大人しく身を潜めていろ。間違っても、目立つ真似だけはするんじゃないぞ?」

「勿論です。あなた方が留守の間、私が皆さんのお世話の役を引き受け・・・・・・」

「うっ・・・・・・うげっ!げほぉ!げほっ!ごふぇ!」

 ルイスの台詞を遮り、途端にクリスが胃の内容物を残らず嘔吐しているかのように激しく咳き込んだ。
正常とは異なる事態にギャング達の気がかりな視線が一ヶ所に集う。

「大丈夫ですか?」

 ヴェロニカが蹲って丸まった背中を摩って、体の具合を気にかける。
密封するかのように口を覆っていたクリスだったが、やがて掌を遠ざけると、平然と健全である事を告げた。

「うん・・・・・・平気。ありがとう」

Re: エターナルウィルダネス ( No.78 )
日時: 2022/06/26 20:59
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 クリス達は仲間を残しニューエデンズを出ると、数日かけてハイペシア軍の本拠地である街"ダーナレクト"へ向かう。
街に入ると、最も重要な拠点なだけあって、配備されている兵士も相当な数だった。

 目的地の最高司令部はリンカーンの住居である屋敷。
戦争が起こっている今はもう、品のある豪邸はバリケードや兵器で改築され、1つの要塞と化している。
トンネルに似た門に差し掛かると、すぐに兵士達の警戒心を煽った。

「貴様らっ!そこで止まれ!少しでも妙な真似をしたら、射殺する!」

 彼の言葉は号令となり、周囲にいた歩兵、櫓にいる狙撃手の銃口が一斉にこちらに向く。
クリス達は馬から降りると、両手を上げながら、数歩だけ前へと近づいた。
兵士達は彼らを取り囲むと強引に跪かせ、武器やその他の所持品を全て没収する。
そこへ将校がやって来て、大声で怒鳴った。

「ここは一般人が立ち入っていい場所ではないぞ!何者だ!?」

 無数の銃口に捉えられた事態にリリアが目に恨みを宿し、隣にいるクリスを睨んだ。
リチャードが4人を代表して、将校との交渉を行う。

「俺達は怪しい者じゃなければ、害を及ぼす者でもない。ここに来たのはリンカーン大統領と面会するためだ。彼は司令部にご在宅か?」

「・・・・・・大統領との面会だとっ!?何を世迷言を!民間人の分際で我々を愚弄する気か!?身の程を弁えろ!ここを死に場所にしたくなければ、今すぐ素性を明かせ!」

 リチャードは動揺を器用に隠し、両脇にいる仲間をチラッと見て一部だけ正しい偽証を述べる。

「俺達はただの賞金稼ぎだ。このガキは数年前までオリウェール内戦に従軍したハイペシア側の騎兵隊だった。むしろ、俺達はあんた達の味方だ。誓って、大統領には危害を加えたりはしない」

 敵意の皆無に脅威じゃないと認識したのか、将校の鋭い目つきが緩み、ほんの僅か興奮が鎮み始める。
さっきまで荒々しかった性格も平静さが入り混じった口調へと変わっていた。

「大統領は司令部におられる。面会の内容は何だ?我々にも詳しく説明してもらおう」

「全て話すとなると長くなるが、俺達はハイペシアの裏に隠された危険な秘密を知っている。その事で大統領に警告を伝えに来たんだ」


 最高司令部の内側に入り込んだクリス達は兵士に案内され、リンカーンの部屋の前にいた。
開けた扉の先には、初老くらいの年齢で立派な髭を生やした男がいて、山積みになった書類のサインに明け暮れている。
男は見慣れていた兵士とは異なるクリス達を物珍しそうに黙視する。

「大統領閣下。あなたに是非、面会したいという者達をお連れしました。詳細は不明ですが、この戦争に関わる重大な陰謀を知っているとの事です」

 オリウェールの半分を統治する最高権力者を前にクリス達は胸に手を当て、敬意を込めた一礼を行った。
アシュレイも性格や容姿に似合わず、その仕草を真似る。

 リンカーンはサインを終えたばかりの1枚の書類を書類の束に重ね、静かに口を開く。

「・・・・・・すまないが、君は外してもらえないか?今日は客人だけとゆっくり話をしたい気分でね」

 用心を怠った判断に将校は不満な顔をせずにいられなかったが、素直に頼みを承諾し、敬礼をして部屋から去って行った。
扉が閉ざされると、リンカーンは低いテーブルを三方向から囲むソファーに掌を向け、"かけてくれたまえ"と物柔らかな声で言った。 

「民間人と対話するのは実に久しぶりだ。近頃は兵士ばかりと過ごす時間が多くてね。さて、わざわざ私に会いに来た理由を教えてくれたまえ」


 クリス達はギャングである事は伏せたままにして、有限な時間が許す限り、自分達が知っている限りの事を惜しみなく話した。
カトリーヌの政治界介入の陰謀。ディオール皇国の影の権力者の正体とルフェーブル・ファミリーの繋がり。
そして、ハイペシアの裏に隠された真相。

「ディオール皇国がルフェーブル・ファミリーを裏で支えていたんです。奴らがあれほど、強大な勢力に発展できたのも、その後ろ盾があったため。ファミリーの長であるカトリーヌは莫大な資金とルシェフェルの支持を利用し、政治に参入しようとしている。ハイペシアそのものを乗っ取る気です」

「戦争が激化する中、ディオールはハイペシアに多くの援助を行っているが・・・・・・あの国が本当に味方してんのはあんたの方じゃなく、ファミリーの方だったってわけだ」

「カトリーヌがハイペシアの主導権を握るつもりなら現指導者は無論、邪魔な存在になる。いずれ、あなたの身にも危険が迫ります」

 クリスは少し脅しをかけ、事の重大さを訴えかける。
脅迫されても相手は怒りを抱くような様子はなく、1つだけ質問した。

「だとしても、これは私とファミリー、ディオールの問題だ。何故、第三者である君達が危険を冒してまで介入する必要があるのかね?いくら賞金稼ぎとはいえ・・・・・・あんな軍隊とも言える組織に無暗に食って掛かるほど、愚かではあるまい」

 クリスはすぐには何も答えず、間を開ける。
荒くなっていく吐息を抑え、言いにくそうに理由を打ち明けた。

「・・・・・・奴らは僕のたった1人の肉親である妹を無残に殺害しました。何としてでもカトリーヌを抹殺し、復讐をやり遂げると誓ったんです。それが叶うなら、僕はこの世の全てを敵に回しても構わない」

 クリスの目的を知ったリンカーンは顔をしかめる。
返答に困ったのか、何とも言えない顔で何回か頷くと

「なるほど、君の信念は伝わった。家族のために大勢を敵を相手にしようとする勇気も尊敬に値する・・・・・・だがしかし、話はそんな単純に片付けられないものなのだ」

「・・・・・・と言いますと?」

「これは国の存亡に関わる問題だ。これまでの君達の証言は全て事実かも知れない。しかし、我が国はディオールの支援があるからこそ、西国グリストルと何とか互角に戦っていられる状況だ。もし、あの国が支援を断ち切ればハイペシアは敗戦する。紙切れが燃え尽きるよりも呆気なく・・・・・・」

「一理あるわね。ハイペシアは産業革命に失敗し、資源が豊富なだけの国。兵力も物資も不足してる。現時点でもこちら側が圧倒されてないのが不思議なくらいの状況よ」

Re: エターナルウィルダネス ( No.79 )
日時: 2022/07/17 21:04
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 リリアはリンカーンの理論に共感し、共に頭を悩ませる。
クリスが言ったばかりの証言を繰り返し、ルフェーブル・ファミリーの脅威をしつこく示そうとする。

「だがな。戦争に勝とうが負けようが、ファミリーを放っておけば、あんたはどの道消されちまうんだぞ?ディオールが実際に味方してんのはこの国じゃねえ。ハイペシア最大の犯罪組織の方なんだからな」

「大統領閣下。一国の英雄であるあんたに死なれちゃ困る。もし、カトリーヌがハイペシアの指導者になってしまえば、今の戦争よりも最悪な悲劇をもたらすぞ。奴の支配欲はこの国に収まるはずもないからな。下手をすれば、世界中が戦火に飲まれるかも知れん」

 リチャードも最悪なシナリオを予測させ、こちらに信頼が向くよう試みるが

「例え、不正や陰謀が裏に潜んでいようと、ディオールの支援を断ち切る事はできない。このオリウェール内戦はこの地に住まうルシェフェルの命運がかかった聖戦なのだよ。兵士達は皆、私を支持し、家族の未来のために前線で血を流して死んでいる。そんな彼らを裏切る事などできないんだ。君達に君達の正義があるように、私には私の正義がある」

 リンカーンの長い台詞をきっかけに少しばかりの沈黙が流れた。

「ディオールの背後に潜む巨悪を放っておけば、いずれオリウェールは暴虐の女王に乗っ取られてしまう・・・・・・逆に叩いてしまえば、軍事供給は途絶え、ハイペシアは大敗する・・・・・・実に複雑で厄介な問題だな。何かいい解決策はないのか・・・・・・!」

 リチャードは腕と脚を組んで、頭脳を最大限に活用するが、いい案には行き着けなかった。 
リリアも完璧な答えなど見い出せるはずもなく、"ここにデズモンドがいてくれれば・・・・・・"と小言を呟く。

「大統領さんよ?ハイペシアの資源量は敵国グリストルより圧倒的に豊富なはずだ。貴重な"金"だってたんまり採れる。それを戦争の資金に回せばいいんじゃねえのか?」

 リンカーンは鼻で溜め息をつくとリリアの方へ目線だけを寄せて

「さっき、こちらのお嬢さんも言っただろう?この国は産業技術が発展しておらず、軍事品の製造もままならないのだよ。現在、我が国の兵士に支給されている武器や兵器、物資はディオール製の物が大半だ」

 またしても、彼らは難題に行き詰まる。
誰もが諦めを望もうとした最中、ふと、クリスがスッと顔を上げ

「今、行われてるオリウェール内戦を全体から把握すると、オリウェールの西国グリストルと南三大陸の1つ、"ローク帝国"の連合国がディオール皇国に支援を受けているハイペシアと戦っているんですよね?」

 リンカーンは少し気になって

「それがどうかしたのかね?そんな当たり前な事を聞いてどうなるんだ?」

「"リベリオ帝国"と"カリスタ帝国"はどうですか?オリウェールとは良好な関係を築いているとは言えませんが、敵対もしていないはずです。国内で軍事品を生産できないのなら、いっその事、ハイペシアの資源・・・・・・例えば、ルフェーブル・ファミリーの金塊などを奪い、両国に提供し、同盟を結ぶというのはどうでしょう?」

クリスの主張は更に続く。

「これが見事に成功すれば、ディオールを陰で操るシャルロッテの支援を受ける必要もなくなりますし、財産を失ったカトリーヌや奴の組織も甚大な被害が被る。更に言えば、この戦争の不利な戦況を一気に覆せます。言わば、一石三鳥ってところでしょうか?」

 あらゆる常識を覆す異例で唐突な発想に面会相手の最高権力者、リチャード達から"は?"と短い台詞が漏れ出す。

「・・・・・・お、おい!何故、お前はいつもとんでもない事ばかり言い出すんだ!?確証もないくせに簡単に言うな!第一、連中が金塊を隠し持っている明白な証拠はないんだぞ!?ハイペシアの劣勢を覆せる保証もだ!そんな思いつきだけで世界が抱える苦悩を解決できるわけがないだろ!?」

 リチャードは隣に座るクリスの肩を掴み、物凄い剣幕を間近に迫らせる。
しかし、警告とも捉えられる忠告を無視して、発言は続行された。

「金塊はルフェーブル・ファミリーが独占している可能性が高い。事実、スターリック銀行には奴らの財産が大量に眠っていたのだから。金塊は国内の犯罪組織が持っているため、政府が叩いて奪っても何も問題にはならないはず。決して、悪くない策だと僕は断言できますよ?」

 これまでに安定した調子でギャング達と接してきた流石のリンカーンも軽い動悸をきたしていた。
息苦しさの裏側には、"期待"や"感心"が隠れているのを彼だけが自覚して。
首元のリボンをいじり、激しくなりつつあった呼吸を整えた後、震えた作り笑いをした。

「は、ははは・・・・・・とんでもない策略を思いつくものだ・・・・・・だが、その方法は理にかなっているな。確かに、二国もの大陸を味方につければ、この戦争に勝利の光が差すに違いない。だが、百歩譲って君の推測が正しかったとしよう。仮に金塊があるとしても、その隠し場所を誰が突き止めるのかだ」

「僕達にお任せ下さい」

 厄介な疑問点を指摘されても、クリスは後先のリスクなど微塵も視野に入れてない言い方で簡単に役目を引き受ける。
即時の承諾にリンカーンは更に衝撃を受け、心臓を刺激された。

「まっ!無理難題だろうが、カトリーヌをぶっ殺せる結末に繋がんのなら、やってみんのもアリだな。俺達は戦場の方がマシな修羅場を潜って生き永らえて来たんだ。今更、軍隊並みのマフィアだろうが、国そのものだろうが、殺り合っても死なない方に賭けるぜ?」

 新たなスリルが楽しみになってきたのか、アシュレイも乗り気になってクリスと意見を一致させる。

(この2人、救いようのない大バカ野郎ね・・・・・・密書の略奪の次は金塊の在処を突き止めろってわけ?このギャングを第二の人生に選んだのが、間違いだったのかも・・・・・・)

 リリアは言いたくてしょうがない罵声を頭の中だけで想像し、リチャードも愛想を尽かして2人を怒鳴り散らす事はなかった。
リンカーンは性格を掴み切れず、あらゆる面で特殊な素質があるクリスに興味が深まるばかりで最もしたい質問をする。

「初めて会った時から君という人柄には驚かされてばかりだ。今一度聞くが、あそこまで凶悪な犯罪組織に本気で金塊の略奪を働くつもりなのかね?」

 クリスは平らに閉ざしていた唇を微妙ににやけさせ、返答した。

「口先だけでは信頼を得るには難しいでしょう。ですが、最初に言ったはずです。僕は妹の仇を討つためなら手段を選ばないと・・・・・・」

Re: エターナルウィルダネス ( No.80 )
日時: 2022/09/19 18:02
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 リンカーンとの面会から数日後・・・・・・

 ニューエデンズに戻ったクリスは街の理髪店に寄る。
鏡の手前の椅子に腰掛け、ケープをかけた理髪師に髪を微妙に短く整えて欲しいと頼んだ。

「お客さん?これからパーティーにでも出向くのかい?」

理髪師が聞くと、クリスは”ふふっ”と小さく笑い、"まあそんなところです"とだけ答えた。

 散髪を済ませ店を出ると、普段着とは異なる洒落た富民の服装を着こなしたギャング達が馬に股がり、出かける準備を既に整えていた。

「どう?似合ってる?」

 クリスが少々自慢げに新しい髪型について感想を求めると

「凄く似合ってます!初めはクリスさんだと気づきませんでした!」

 サクラが興奮気味に言って

「人って髪を少しカットするだけで、イメージがガラリと変わるもんなんですね」

 ステラが言って

「街中の女の子もメロメロだよ~!今度、一緒にデートしない?えへへ、冗談冗談!」

 メルトが自身のジョークに笑った。
しかし、ローズに限っては前向きな評価はしなかった。

「もっと、マシな髪型にしてもらえなかったの?ますます、男の子っぽくなっただけじゃない」

「ローズ?傷はもう、平気?」

 クリスが先にミシェルを乗せていたフリューゲルに股がり、怪我の具合を聞く

「1番最悪なのは、傷じゃないわ。死にかけてる間はウイスキーを楽しく飲めなかった事よ」

「全然、問題なさそうね。さっ、早いとこ出発しましょう。これから"地獄の宴"が私達を待っているわ」

 ギャング達は、"はあ!"、"やあ!"と鞭を打って馬を走らせると、街中から街外れへと出て、ニューエデンズに別れを告げる。
人を乗せた馬の群れは広大な緑が大半を占めた平原を駆け抜けていく。

「昨日のユーリが作った鹿肉のソテーが最後の晩餐にならなきゃいいが・・・・・・」

 先頭を走るリチャードが妙に落ち着かない様子で独り言を呟く。
その事を聞いていたルイスが彼の隣に並び、同じく緊張感を絶やせない言い方で言った。

「これからディオールの邪悪なる魔女であるシャルロッテの仮面舞踏会へと向かうのですから、恐怖に駆られるのも無理はございません。ですが、ご安心下さい。女神ジャネールが私達を安全な道へとお導き下さいます。例え、彼女の加護がなくとも、私があなた達の盾となり、清廉な魂を守って差し上げましょう」

「あんたの事はいつだって頼りにしている。だが、神が俺達の祈りを聞いてくれるかどうかは疑問だが・・・・・・」

 すると、デズモンドも片脇から2人の会話に加わって苦笑を無理に繕いながら

「いやはや、クリスの衝動的な性格には困ったもんだよ。妹さんの仇の討つためとは言え、組織には1人1人の命があるんだって事を少しは考慮してほしいものだね」

「全くだ。カトリーヌの抹殺に関しては否定しないが、後先もろくに考えずにリスクしかない危険に飛び込んでいくのは許容範囲外だ。この先が死に場所になろうものなら、あの世であいつを永遠に殴りつけてやる」


 時刻が午後に入って、またしばらく経った頃、ギャング達はシャルロッテの別荘へと辿り着いた。
別荘は森林に近い自然地帯にポツリと置かれ、それ以外の建造物や集落らしき物は見当たらない。
人里離れた環境なだけに静寂と薄い闇夜に包まれ、灯りは唯一、屋敷だけに灯されていた。
舞踏会は既に始まっており、その場に適した格好の客人が賑やかに集まっている。

 クリス達は馬から地面に足を降ろすとゾロゾロと列を成して、別荘の門へと向かう。
歩く途中で仮面で素顔を覆い、数日かけて企てた計画を説明する。

「いいか?シャルロッテの舞踏会に招かれた客のふりをして奴の財産か、それに関係した証拠を探し出す。全員、武器を隠し持ってるだろうが、強硬手段は最後の切り札だ。最悪な事態に陥らない限りは、ただの紳士淑女を演じていろ」

 リチャードが仲間内だけに聞こえるトーンで真剣に告げる。

「ニューエデンズの時はお姉ちゃんが隠していた秘密を略奪できたけどさ~?今度も当たりくじなんて引けるのかな?」

 乗り気じゃないメルトは本調子を出せない反面、アシュレイは早くも敵陣に乗り込みたい一心で勘を当てにする。

「少なくとも、何かしら有益に繋がる秘密くらいは隠し持ってんだろ。案外、今回の賭けは前よりも勝算が高いかもな」

 門に差し掛かると、黒いタキシードを着た仮面の使用人がいて、ギャング達に対して行儀のいい一礼を行う。

「この度はシャルロッテお嬢様の誕生日を祝う記念すべき仮面舞踏会に足を運んで下さり、誠にありがとうございます。チケットを拝見なさっても、よろしいでしょうか?」

 リチャードは黙って頷きもせず、言われた通りにする。
使用人は全員分のチケットを確認し、2回ほど頷いて

「はい、確かに。もし、武器などを所持しているのであれば、こちらが大事にお預かり致します。安全に舞踏会をお楽しみ頂くためにご協力下さいませ」

 開いた門を潜ると、広い庭園がギャング達を出迎えた。
自然のアート作品として、細工が施された薔薇はどれも赤黒く不気味なほど鮮血に酷似した色合いを帯びている。
そこに何人かの招待客がいて、"実に見事だ"などと高く評価しながら、興味津々に見て回っていた

「ディオールの影の王女シャルロッテの宴と言っても・・・・・・案外、普通のパーティー会場ですね?」

 在り来たりな光景を見渡し、サクラが正直な感想を述べる。

「ええ。普通過ぎて、逆に嫌な予感がしてきました」

 ステラも胸騒ぎを覚えながら辺りに目を配る。
一国の最高権力者が滞在している別荘の割には、あまりにも警備が薄く、兵士の数も10人もいるのか?と疑わしいくらい少人数だ。

 ・・・・・・だが、宴の本場である屋敷に行き着いた時、正面の入り口から堂々と姿を現した鬼将の如く猛々しい女将校。
スターリック銀行で警備兵を指揮していたエリーゼ・フランゲル中佐がいたのだ。
更に運が悪い事に他の招待客など見向きもせず、真っ先にクリス達に関心を示してしまう。

「・・・・・・ん?貴様ら、そこで止まれ!」

(エリーゼ・フランゲル・・・・・・!)

 これ以上ない厄介な事態にクリスの顔が蒼白になる。

(やれやれ・・・・・・どうしてこうも、僕達は1番会いたくない奴と行く先々で鉢合わせてしまうのか・・・・・・)

 デズモンドは最早、自身の運のなさを呪う意欲すら失っていた。

Re: エターナルウィルダネス ( No.81 )
日時: 2022/10/02 17:51
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「貴様ら。どうも見慣れないな?この別荘には初めて来たのか?」

 いきなりの図星にクリス達の全身に冷や汗が滲む。
動揺した顔が仮面で見えないのが、せめてもの救いだった。

「はい。シャルロッテお嬢様には今日、初めてお目にかかります。僕達はディオールのとある貴族の方の元で働く使用人なのですが、当主様が突然の病に伏せてしまいまして。故に代行者として、シャルロッテお嬢様にお祝いのお言葉を届けに伺った次第でございます」

 クリスは言葉を慎重に選び、偽証を述べる。
エリーゼは厳格で強張った面持ちを緩めず、何も言い返さなかった。
架空の証言が通用し、信用を得られたのだと、誰もが期待を芽生えさせた。が・・・・・・

「仮面を脱げ」

 エリーゼは率直に素顔を明かすよう、命令した。
左手の位置が軍刀のグリップへと移動する。

「・・・・・・え?」

 クリスが震えを帯びた声を出すのとは裏腹にエリーゼは太く刺々しい怒声で喚く。

「仮面を外せと言ったのだ!貴様ら、全員だ!命令を拒めば即不審者と見なし、粛清する!」

 片側が一方的に攻撃的なやり取りを周囲の招待客達が近寄り難い仕草をして眺めていた。

「あらぁ?だめよ?フランゲル中佐?この方々は私の大切なお客様なのよ?丁重に扱って下さらないかしら?」

 ふいに聞こえた若い女の声。
派手なドレスを着た1人の少女がエリーゼの後ろに立っていた。
現れ出た少女にクリス達の蒼白していた顔はより青ざめ、表情が凍りつく。
それは彼女の持つ鎖の先に繋がれていた・・・・・・

「う・・・・・・うう・・・・・・ぐ・・・・・・ああ・・・・・・」

 首輪を付けられ、傷だらけの裸体を晒される女。
片目はくり抜かれ、目蓋を金属の糸でいい加減に縫い合わせられ、四肢も全て切断されている。
四つん這いにさせられ、強引に引きずられるその姿は狂った思考が生み出した"飼い犬"そのものだ。

「剣を向けるのは、主人の言う事が聞けない悪い犬だけになさい?」

(う、嘘だろ・・・・・・こいつ、人の腕と脚を切り落としてペットにしてやがんのか!?マジで有り得ねぇぞこいつ・・・・・・!シャルロッテってのは、ここまでサイコ野郎だったのかよ・・・・・・!)

 仮面の内側から覗かせるアシュレイの目が恐怖で淀む。
ヴェロニカも食道から込み上げた胃の内容物が口から漏れないよう堪えるので精一杯だった。

(悪魔も真っ青の鬼畜っぷり・・・・・・よっぽど、頭がおかしい教育を幼子の頃から叩き込まれたのね)

 流石のローズもジョークの言い様がなく、少女の一線を越えた悪趣味を遠慮なしに蔑む。

「これは。シャルロッテお嬢様・・・・・・」

 エリーゼが恐れ入りながら口にした名を耳にし、少女の正体が例の狂人である事を知った。

(フランゲル中佐がシャルロッテの護衛を務めていたんですね。道理で・・・・・・屋敷の警備が手薄なのはそのためでしたか・・・・・・)

 ユーリが納得し、聞こえない範囲の舌打ちを無意識にしていた。
クリスはミシェルとフィオナに寄り添われ、腰と腕を強く締めつけられながら、飼い犬の女を見た。

「う・・・・・・うう・・・・・・痛・・・・・・い・・・・・・助け・・・・・・」

 見るに堪えない悲惨な姿で苦痛を訴える人間から逸らした視線をシャルロッテの方へ移す。
悪意が微塵もない微笑みで、こちらに手を振る悪魔が見えた。

 次の瞬間、彼女は力づくで鎖を引き寄せた。
締まった首輪が喉を圧迫し、首の骨が折れる痛々しい音が鳴る。
飼い犬は声が出れば断末魔を上げるであろう口から血の泡を溢れさせ、息絶えた。

「フランゲル中佐?この"肉の塊"を細かく刻んで花壇の土に埋めるよう、あなたの部下に頼んで?安い肥料くらいにはなるはずだから」

 散々に弄んだ命を平然と踏みにじったシャルロッテは変わらぬ笑顔でクリス達を友好的に歓迎する。

「それはそうと、中佐の非礼をお詫びするわ。私の神聖な仮面舞踏会へようこそ。今宵は存分に楽しんでね?」

 そう言い残し、手にかけた飼い犬の死体を放置して館へと引き返して行った。

 招待客達は凶行に恐れ戦くどころか、感激の喝采を浴びせる。
誰もがシャルロッテを称賛し、中には死体を蔑み、せせら笑う者も少なからずいた。

(舞踏会の参加者は僕達を除いて、全員が異常人格者だ・・・・・・ここには長く留まらない方が身のためだ)

 露わになった舞台の真ん中でステラは周囲の真似をしながら内心で囁く。
耐えられなくなったミシェルは意識を喪失し、フラッと倒れかけた体をサクラに抱き抱えられる。

「神よ・・・・・・奈落の底にいる我らに希望の光が差さん事を・・・・・・」

 ルイスは祈りを囁き、動悸が止まらない胸に掌を強く押しつける。
リチャードがしっかりと気を保たせるようと、彼の肩を退かして屋敷へ足を進めた。

「祈っても無駄だ。ここに神はいない。生き残りたければ、地獄に上手く溶け込むしかない」


 舞踏会の会場内

 シャルロッテの舞踏会はあらゆる娯楽会場がエリアによって区分されていた。
スタッフの説明によれば、世にも珍しいメニューが用意されたレストラン。最新作の映画が上映されている劇場、混浴の大浴場など・・・・・・

 ホール(大広間)へと向かうと、そこは本格的なカジノとも言ってもいいギャンブルの楽園で狂った紳士淑女がポーカーやブラックジャック、ルーレットに夢中になっていた
部屋の片隅には普通じゃ手に入らない高級酒ばかりが並べられたバーがある。

 計画を実行に移す前にクリス達はとりあえず、誰もいない空席を埋める。
ポーカーテーブルを4人が独り占めし、寝ているように気絶したミシェルをリリアの膝に乗せた。

「大富豪の娯楽施設にいられんのも一生でこれっきりだろうな。シャルロッテは頭に蛆が湧いたメス豚だが案外、趣味だけはまともみてぇだ」

 アシュレイは"まともなセンス"だけに感服して、偶然通りかかったスタッフにテーブルに座る人数分のシャンパンを配らせる。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。