複雑・ファジー小説

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エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.100 )
日時: 2024/02/01 19:09
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 人馬の死体が無造作に散らばる緑豊かな草原。
ファミリーの騎兵隊を見事な程に返り討ちにしたクリス・・・・・・しかし、大切な仲間をまた1人失った現実に生き永らえた喜びなど束の間の安心感でしかなかった。
目に焼き付けられたユーリへの仕打ちが脳裏に刻まれ、心に深い傷を負う。

「デズモンドさんに続いて、ユーリさんまで・・・・・・」

 フィオナが喉に力が入らず、その発言をするだけでも精一杯だった。  
唯一、倒壊を免れた一室でギャング達は"言わないでくれ"と言わんばかりの表情を俯かせる。

「い、嫌だ・・・・・・私達・・・・・・死ぬんだ・・・・・・1人残らず、殺されてしまうの・・・・・・!」

 部屋の隅で頭を抱えていたサクラの情緒に異変が生じる。
それはやがてパニックへと直結し、発狂へと変貌した。

「・・・・・・嫌だ嫌だ嫌だ!!いやああああああああああ!!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!やだああああああああああ!!」

 普段、温和な少女らしからぬ悍ましい乱心に驚きながらもルイスとヴェロニカ、リリアが必死に押さえつける。
しかし、3人係りの力でさえも手が付けられないほど、暴れ狂う力は凄まじいものだった。

「サ、サクラさん!落ち着いて!大丈夫だか・・・・・・痛っ!」

「いけません!ここは私とリリアさんが!ヴェロニカさんは急ぎ、安定剤をご用意・・・・・・おわっ!?」

 ルイスが突き飛ばされ、修道士の体がローズの背後にぶつかった。
どうにか保とうとしていた理性が限界を超え、舌打ちの直後にリピーターを床に叩きつける。

「ちっ!完全にイカれちゃったわね!だから、子供は好きになれないのよ!初めから、ここの一員に置くべきじゃなかった!」

「耳がどうかしてしまいそうだ!誰もいい!とっとと、このガキを黙らせろ!!」

「はぁ!?その言い方酷過ぎない!?サクラのお陰で私達は死なずに済んだんだよっ!!」

 リチャード達の発言に逆上したメルトが彼に飛び掛かる。
しかし、大の男の腕力に敵わず、いとも簡単に掴み倒されてしまう。
罵り合いに怯え、ミシェルは家具の影にそそくさと逃げ込んだ。

「落ち着けっつんだろクソボケがぁ!!」

 アシュレイが怒鳴りつけた刹那、突然の轟音が鼓膜を刺激する。 
その場にいた全員が一瞬にして静まり返り、視線を一ヵ所に集めるとクリスが煙が立った銃口を天井に向けていた。

「・・・・・・ごぼっ!げっ!ぐふぉぉっ!」

 クリスがリボルバーを落とし、これまで以上に酷い咳を吐き散らした。
力を喪失し、倒れかかったところをフィオナに支えられる。

「手荒な真似をしてごめん・・・・・・皆、とにかく落ち着こう。少なくとも僕達はこうして生きてる。生き残れたんだ・・・・・・」

 そこでようやく冷静さを取り戻したギャング達はぐったりとその場にへたり込む。
誰もが目を虚ろに希望のない表情を繕い、これ以上騒ぎ出そうとする者は現れなかった。

 リチャードも手の震えが収まらず、ライターを度々落とし、普段は簡単にできていた喫煙もやっとの事だ。
ローズもアルコールを頼ろうとせず、隣で佇むリリアに寄り添う。
サクラとメルトはルイスにしがみつき、髪を撫で下ろされながら遠慮なしに泣きじゃくった。



「ユーリをあんな風にしやがった奴に心当たりがある。"シャルロッテ"の鬼畜令嬢だ。あんな惨い仕打ちはオリウェール広しつっても、あの変態ぐらいだ。デズモンドと違って頭が冴えてねぇから推測は苦手だけどよ。ルフェーブル・ファミリーは・・・・・・カトリーヌの組織はちっとも衰えてねえ。まだ、奴の莫大な資金や財産で余裕に支えられてんだ」

 アシュレイが深い憎悪がこもった台詞を吐息同然に吐き出す。

「・・・・・・嘘。シャルロッテを葬らない限り、ルフェーブル・ファミリーの壊滅は永久に望めないって事・・・・・・ユーリさんは無駄死なんかじゃない!ねえ!アシュレイ!そうだよね!?そうだと言ってよ!」

「デズモンドさんがいたから、ここまでやって来られたんだよ!?クリスだって認められないでしょ!?私達の努力は全部無意味だったなんて・・・・・・!」

 世を去った2人の功績をヴェロニカとミシェルが強く訴える一方、アシュレイは怠そうに首を振って

「連中も流石に無傷というわけにはいかねえだろ。カトリーヌもいずれ、深い痛手を負う。だが、向こうも極悪党らしく簡単にはくたばってくれねぇらしい。ならいっそ、奴らの葬式の予定を早めちまうってのはどうだ?十分に頭冷やしたら策でも練って、シャルロッテをぶっ潰してやろうぜ?」

 ユーリを殺害した張本人の名を口にしたアシュレイが語尾に怒りを込め、ローズも肘を壁に打ち込んで本音を叫ぶ。

「家族同然の仲間を2人も殺されて黙ってられないわ!コソコソ逃げ隠れるような地味な生き方にはうんざり!どの道バッドエンドなら、最後はアウトローらしく豪快に撃ちまくって殺しまくって奪い尽くしてやろうじゃないの!」

 2人の提案に賛同したギャングの多くが復讐心を燃やす中、ステラは衝動的な感情を控え、冷静に異議を唱えた。

「2人の仇を討ちたいのは僕も同じです。しかし、シャルロッテはディオール一の有権者であり、ファミリーや軍隊に等しい護衛を周囲に置いている。その上、こちらはデズモンドとユーリ、有能な主戦力を多く失い過ぎた。このまま報復に出向いても、こっちが八つ裂きされるのは確実です」

「脳に鬼畜な知識を溜め込んでる上、熟練の親衛隊を揃いに揃えてるアバズレ・・・・・・か。そういった害獣に対抗にできる策はないのか?」

「あるぜ。ついさっき、俺達がぶっ壊したばっかだが・・・・・・」

 リチャードは苛立った溜め息をついて、まわりに提案を求めた。
アシュレイは意外にも即答した。

「壊したばかりって・・・・・・直せるの?」

 彼が指す物の意味を唯一理解したクリスが半信半疑で問いかけると

「見くびんじゃねえ。俺がギャング随一のエンジニアだって忘れてやがったのか?俺の手にかかりゃ、あんな玩具・・・・・・1日2日で作り直してやるさ」

Re: エターナルウィルダネス ( No.101 )
日時: 2024/02/21 20:18
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 現れた殺戮者の正体はあまりにも異様な格好だった。
クリスの全身は重金属の装甲で覆われて素肌の露出は一切存在しない。
顔を覆った防弾ヘルメットの強化レンズから冷酷非情な目を覗かせ、手動式から自動式に改造されたガトリングを軽々と持ち上げていた。

「・・・・・・ひぃ!お、おい!ありゃ!?」

 想像すらしていなかった襲撃者の存在に敵兵は我を忘れ、戦う意思さえも見失っていた。
直ちに排除しようと一斉射撃を浴びせるが、銃弾は全て装甲に弾かれてびくともしない。

 外部の衛兵隊を排除し、クリスが固く閉ざされた門を蹴破った。
分厚い鉄格子は薄い板同然に剥がれ落ち、呆気なく侵入口を明け渡す。
死角から待ち伏せていた衛兵が軍刀で斬りかかるも、機械の着ぐるみには意味を成さなかった。
真っ二つに折れた刀身を見つめた末に鋼鉄の拳で顔面を抉られてしまう。

「くそっ!夜襲だ!!警報を鳴らせ!!お嬢様をお守りしろ!!」

「外部の部隊がやられた!くっ!何なんだあの装甲人間は・・・・・・!?とにかく守りを固めろ!誰か、機関銃を運んで来い!」

「奴らはただの襲撃者じゃない!全兵力を持って迎え撃て!」

 予想外の不意打ちを許してしまい、敷地内から焦りに焦った声が所かしこから響き渡る。
気品の象徴とも言える邸宅は戦場へと豹変し、敷地内から熟練の歩兵部隊が大群で押し寄せる。

「ひゃははは!!どうだクソったれども!俺の自家製"強化装甲服"はお気に召したやがったか!?こんなやべぇもん作っちまうなんて、自分の才能がおっかねえよ!」

「まさか、前に壊した戦車を解体してこんな凄い物を作っちゃうなんて!たった2日でだよ!?アシュレイの玩具もたまには役に立つもんだね♪」

「へへっ!お世辞のつもりか?皮肉は好きだが、ちっとも嬉しかね~よ」

 アシュレイとメルトが浮かれていたのも束の間、硬い感触が頭上に当たり、"いっ・・・・・・!?"と変な声が漏れ出す。
背後に視線をやると、予想した通りの男が拳を握りながら厳しい剣幕で見下ろしていた。

「ガキ共!見物してる暇があったら、とっととあいつに加勢して来い!切り札だけに役目を押し付けるな!」

 リチャードが2人に説教を垂れ、2丁の拳銃をホルスターから素早く抜いた。
既に銃口を向けた敵より早く発砲し、何発もの弾丸が敵の体にめり込んだ。
抉られた傷の窪みから鮮血をワインのように体外に注ぎ、5人の衛兵があっという間に息絶える。
左手が握る自動式ピストルはデズモンドの形見だった。

「リチャードさん!下がって!」

 弾を撃ち尽くしたリチャードを後退させ、サクラは杖から魔弾を放つ。
射抜かれた的は擲弾兵が手に持つ手榴弾だった。
爆音と共に人が破裂し、肉片の雨が降り、彼が人が立っていた場所に赤い水溜りだけがぽつりと残った。

 衛兵達は手際よく、バルコニーに機関銃を設置した後、弾帯を機銃本体に取り付けた。
スライドをガサツに引いて間もなく、数百に及ぶ弾丸が小銃とは比にならない連射力で放出され、無数の弾幕がギャング達を襲う。
時間をかけて作ったであろう工芸品もおびただしい鉛の嵐に巻き込まれ、最初の犠牲者となった。
ブラッディローズの花弁を破き、茎を折り、大理石の女神像さえも容赦なく粉々にしたのだ。

 集中射撃や爆風に怯む事なく、クリスは無慈悲な銃弾を浴びせ続けた。
ガトリングの威力は凄まじく、平らな芝生を抉ってはあやゆる強固な物さえも貫通、粉砕してしまう。
熟練の正規兵が弾に射抜かれ、次々と損壊が見るに堪えない死体へ変えられていく。
6連銃身の兵器は弾を切らす兆しはなく、噴出する空薬莢が強化装甲服の足元を埋め尽くした。

 敵は戦況と不利と見なし、早急に塔に狙撃兵を配置した。
狙撃手は通常よりも一際大型のライフルを持ち、銃口の先には大きく四角いマズルブレーキが取り付けられている。
遠距離から脅威の排除を目論む魔の手を偶然にも目撃したローズは"くっ!"と歯を強く食いしばった。

「まずいわ・・・・・・クリス!クリスッ!!どこかに身を隠して!塔に対装甲ライフルを持った奴があんたを狙ってわよ!」

 長距離スコープは既にクリスと重なり、大口径の徹甲弾が薬室に装填されていた。
狙撃手は標的を一撃で仕留めようと、迷わず引き金を引く。
轟音と反動が感覚を刺激し、音速の閃光は流星とは逆に夜空に昇った。

「・・・・・・?」

 当てずっぽうな方向に弾が飛び、狙撃手の鋭い眼光が緩む。
同時に酷い寒気に見舞われ、気がつくと自身の胸部に穴が開き、血が漏れ出していた。
意思に従ない体がライフルを下敷きになると、直に心臓の鼓動が止まる。


 邸宅周辺に広がる暗く静寂な森林。
生い茂る黒い茂みの奥から長い銃身が伸びていた。
銃口に薄い白煙の湯気が立ち、火薬の臭いが嗅覚を支配する。

「・・・・・・え。私が撃った弾が・・・・・・?凄い!や、やった!フィオナお姉ちゃん!私が塔の上にいる悪者をやっつけたよ!」

 スコープから右目を少し遠ざけ、ミシェルが無邪気な笑みを浮かべた。
フィオナは最初の一瞬、その発言を疑ったが、やがて微笑むと非力な腕に力を入れてボルトをコッキングを行う。

(ユーリさん。死んでも尚、私達を守ってくれてるんだ!・・・・・・ありがとう。あなたの無念は必ず私達が!)

 亡き戦友の顔が浮かび、フィオナは涙液を零さずにはいられなかった。
決心と共に再びスコープを覗き込むミシェル抱きしめ、狙いをしっかりと安定させる。

Re: エターナルウィルダネス ( No.102 )
日時: 2024/03/30 18:34
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「は?おい!?狙撃兵が倒れたぞ!?誰だ!?誰が仕留めたんだっ!?」

(きっと、ミシェルちゃん達がやったんだ!やるじゃん!)

 舞台裏にいる仲間の活躍を唯一、確信したサクラ達はその頼もしさに背中を押された。
脅威の排除を次々と認識したギャング達は士気を高め、反撃の勢い更に強めていく。

 ヴェロニカが放った銃弾が額を撃ち抜き、浮かんだ死体が仰向けに噴水にダイブした。
続けて正面から複数を鉛の餌食にしたが、1人を仕留め損ね、接近を許してしまう。
花壇を飛び越えた青年が彼女に豪腕をぶつけ、リボルバーを強引に持ち主から引き離す。
ヴェロニカは銃を拾わず迫ったナイフをとっさに押し返し、尖った先端を眼球の先で止めた。

 不意に衛兵の真横を目掛けて大人の体格がぶつかった。
ルイスは手荒い手段で両者に割り込んで、ヴェロニカの危難を取り除く。
衛兵に覆い被さり、馬乗りの状態で小銃のストックを何度も顔面に叩きつけた。
敵を残忍に殺めた神父は転がるように死体から遠ざかり、花壇の影に身を移す。

 脅威は繰り返しやって来る・・・・・・ステラの考えは間もなくして的中した。
邸宅の正面の窓のいくつが開き、内側からライフルや小銃の銃身が伸びる。
更に塔とは異なる別の高所に2人目の狙撃手が配置されたのだ。
無論、対装甲ライフルで武装しており、クリスの無力化を目論む。

(・・・・・・っ!!)

 徹甲弾が発射され、尖った大口径の弾丸はクリスの腹部に命中し、装甲服が仰け反った。
直撃した部位に激痛が混ざり合わさった衝撃が伝わり、クリスの表情が大きく歪む。
徹甲弾は続けて発射され、腕の関節、足の付け根、頬へと被弾する。
やむを得ず、クリスは脅威が及ばない建物の影へと身を隠した。
ガトリングの騒音が消えた事で戦況が一変し、敵側に優勢を譲る結果に。

 狙撃兵はどこからともなく飛んできた弾丸に蹲った。
しかし、彼は倒れる事はなく、平然と銃口をギャングの狙撃手に向ける。
軍服の裏に防弾プレートを仕込んでいたのだ。

「フィオナお姉ちゃん伏せてっ!!」

 ミシェルの唐突な警告にフィオナは、ほぼ反射的に指示に従おうとした。
小さな光が飛んで来るのが見え、1秒足らずで2人の元に着弾する。
徹甲弾は生い茂っていた茂みを吹き飛ばし、その一部を平地に変えた。
隣にあった木の幹が折れ、傾いた倒木がが2人の上に横たわる。


「くっ・・・・・・!」

 リチャードは自身の愛銃の弾を切らし、仕方なくグリップで目前に迫った敵の頭上を殴打する。
意識を半分失った兵を肉壁にして同士討ちを躊躇った味方にデスモンドのピストルを2発砲した。
用済みとなった人質の顎に銃口を当て、顎を吹き飛ばす。
リリアも相手を蹴り上げ、宙から降った自動小銃を取り、自分の物にした。
間近にいた元の持ち主にフルオートを浴びせ、隠れ際に敵2名の胸部にも弾を撃ち込む。

「まずいわね。2人目の狙撃手はアーマーを身に着けてるわ!しかもあいつ、ミシェル達を撃った!」

「・・・・・・ちっ!しゃあねえ!こうなりゃ、プランBに移行すっぞ!こいつで狙撃手を櫓ごと吹っ飛ばす!」

 アシュレイは素早く判断し、腰のベルトに括り付けていた得体の知れない代物を手に取った。
それは子供の手の内に収まる木製のパイプで何故か下部にトリガーが。
先端にはビールジョッキ程の丸みを帯びた鉄球が取り付けられている。

「アシュレイ!?そ、それ!何!?」

「お手製の擲弾筒だ!あれ(強化装甲服)を作った際、余った部品から拵えたしろもんだ!」

「あんたが玩具職人じゃなくてホッとしてるわ。こんなイカレ野郎が世界を救う時代なのかもね・・・・・・」

 猛威を振るっていた機関銃が全弾を撃ち尽くし、凄まじかった勢いに沈黙に入る。 
銃手達は弾帯を取り付けようと、再装填に移った。

「撃つぞ!耳を塞げっ!!」

 アシュレイは周囲に注意を促し、トリガーに握力を加えた。
柄から切り離された榴弾は噴射口から煙を吹き出し、銃弾より襲い弾速で塔のてっぺんへ到達する。
火色の花火が炸裂し、建物の原型が粉々に吹き飛んだ。
足場から投げ出された狙撃手は地上へと叩きつけられ、息絶える寸前の体は降り注いだ瓦礫に埋まった。

「くっそ!マジか・・・・・・!?ここまでの威力は想定してなかったぜ!」

「少なくとも、人に撃つべき物でない事だけは証明されたわね」

 第二の脅威が排除され、クリスは遮蔽物から出て反撃を再開する。
ガトリングが騒音を轟かせ、窓越しの兵団は銃弾を数撃てば1分足らずで一掃された。
バルコニーに設置された機関銃もことごとく破壊され、銃手1人は伏せていたものの、廃品と化した重火器に脚を挟まれて悲痛に泣き叫んだ。

 外部の迎撃戦を攻略したクリスは無言で転がる死体を数秒間見つめた後、少し下がって助走をつけた。
官邸のバリケードを突破するため、体当たりを図ろうとした時、横から現れた人物に歯止めがかけられる。

「ここは任せて?あんたは後ろで控えてなさい」

 ローズが何故か楽しそうに正面を向き直ると、ダイナマイトの導火線に火を点けて正面玄関に投げつける。
ちっぽけな爆薬が扉に当たって跳ね返った瞬間、眩い閃光が視界を眩ませ、大爆発が起こった。
爆風に巻き込まれ、複数の兵士が内側から火達磨になって踊り狂う様を外で披露して崩れ落ちたバルコニーの下敷きとなる。

「あれま?ちょっと、特殊合成油を付け加え過ぎたちゃった?全く、ちょっとくらいは私達に活躍の場を譲りなさいよね?ハイペシアの英雄さん♪」

『"僕は英雄なんかじゃ・・・・・・大切な仲間を2人も守れなかった・・・・・・"』

「デズモンドとユーリの死はあんたのせいじゃないわ。むしろ、大勢の人々をカトリーヌの魔の手から救ったんだから。自分に許せない罪があるなら、いつか償えばいい。
でも、それより先にやっておくべき宿題があるでしょ?」

『"・・・・・・だね。罪悪感と向き合うのは、全てが片付くまで後回しだ"』

Re: エターナルウィルダネス ( No.103 )
日時: 2024/04/08 20:16
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 1番乗りとしてヴェロニカが真っ先に本館の内部に駆け込んだ。 
照準を素早く合わせせ、リボルバーを2発の銃弾を発砲する。
苦しそうに喉を押さえ、撃たれた衛兵が下階の甲冑の持つ槍に落下し、串刺しになった。

「ヒャハハハ!腕を上げたもんだな!ヴェロニカ!」

 戦う術が上達した幼馴染の腕に少し強めの肘をぶつける。
ヴェロニカも嬉しそうに照れ笑いし、両者は敵が撃ってきた銃弾から素早く身を隠す。

「優秀なお手本さんといつも一緒にいるからね」

 リチャードは5本束になったダイナマイトの導火線に火を点け、2階の通路へ投げ入れた。
直後に想像を超える大爆発が直後に巻き起こり、屋敷全体が揺れ動く。
甲冑などのあらゆる骨董品が爆風で薙ぎ倒され、落下したシャンデリアのガラス片が広範囲に散らばった。

「おいおい!マジかよおっさん!んなやべぇもんを屋内で使いやがって!俺らごと生き埋めにするつもりか!?」

「ん?何故、気にする?莫大な資金で建てられた邸宅だろう?この程度で全壊するなら、欠陥住宅もいいとこだ」


 歯向かう者を殺戮しつくしたクリス達は最上階まで突き進む。
カトリーヌの後ろ盾であるシャルロッテを遂に寝室と言う軟弱な砦へと追い込んだ。
仮初めの皇女を玉座から引きずり降ろす瞬間を目前に自然と緊張の汗が滲む。

「これから一国の女帝を殺すんだよな?オリウェールの歴史に名を刻んでやろうぜ?」

「頼むから、最後の最後でしくじるなよ?・・・・・・ローズ。さっきみたいに派手な挨拶をしてやれ」

『"いや。ここは僕が。大敗を前にした敵勢に悪足掻きは付き物だ。用心するに越した事はない"』

 クリスが寝室の前に立つと、大量の銃弾が扉を貫通してこちらに飛んできた。
穴だらけの扉を蹴破り、悲鳴を上げた護衛が命乞いを懇願する。
お構いなしにガトリングを乱射し、彼らを一瞬で肉片に変えた。

 厳重警護を任されていた部隊は全滅。
一斉に流れ込んだアシュレイ達の目に飛び込んだのは、老いた執事を盾にする城主の無様な姿だった。
怯え切った被害者意識に同情どころか、余計に怒りが溜まる。

「ごきげんよう。シャルロッテお嬢様。就寝前に大変恐縮なのですが、あなた様の死刑執行人として1ウォールの価値もないお命を頂戴しに参りました」

 リチャードが被っていた帽子を頭上から外し、紳士的かつ皮肉が込められた挨拶をする。

「あっ、ああ・・・・・・ああああああ!!」

 完全に理性を保てなくなったシャルロッテは執事を盾にしたまま、銃を突きつけた・・・・・・がその行為も空しく、何かが当たり手元から離される。
短剣の刃先が引き金の輪を潜り、護身用のアンティークは壁と一緒に杭を刺された。
仮に手が届いても、抜けずに撃てないだろう。

「無作法なお嬢様で困りますね。いい加減、敗北を自覚しろ」

 カラドボルグを投げたばかりのステラが声を尖らせる。
不当な扱いに耐えかねた執事は無防備になったシャルロッテを粗暴に突き飛ばした。
痛そうに床に横たわる主に向かって、好き放題に罵声を浴びせる。

「もう、やってられん!これ以上、このろくでもない女狐の世話係はまっぴらだ!お、お前なんか醜くくたばってしまえ!・・・・・・あ、えっと・・・・・・その!あ、あなた方の事は誓って、口外したりは致しません!故郷にか、家族がいるのです!どうか、お命だけは・・・・・・!」

 弾除け役を放棄した執事は両手を上げて潔く投降した。
彼は無害を主張しながら、必死に命乞いを行う。

『"以前、あなたには協力してもらった恩がありましたね?演技だったとは言え、ミシェルの身も親身になって案じてくれた。今、言ったばかりの誓いを忘れてみろ?皮を剥いで狼の餌にしてやるからな?"』

 クリスの脅迫に執事は震え上がっては実に情けない走りで寝室から逃げ去って行った。

「さてと。わがままな令嬢様にはきつい仕置きが必要だな。サクラ、メルト。このトチ狂ったクソガキを外に引きずり出せ」

「喜んで」 「は~い♪」


 ギャング達は館の外へシャルロッテを引きずり出す。
顔を地べたに叩きつけ、八方から殺気立った視線を浴びせた。
そこへ葉と枝塗れの格好でミシェルとフィオナが駆け寄って来る。

「はあはあ・・・・・・!クリス!」

『"この通り、シャルロッテを捕まえたよ。ね?君との約束はちゃんと守ったでしょ?"』

 クリスが幼馴染みに約束を果たした事を告げる。
抱きついて放そうとしない2人の髪を優しく撫で下ろした。

「こ、こんな理不尽な仕打ちが許されるとお、思いまして!?わたっ・・・・・・!この私を誰だとっ・・・・・・!」

 この期に及んでも尚、シャルロッテは権力者の立場を利用し強気に出る。

「自分の事棚に上げちゃって、悪党が決まって言う台詞だね~?あんたはただの快楽殺人者だよ。そして、これから惨めに死んじゃうの。ご愁傷様でした~」

「まあ。しいて言うなら、"ドレスを着たドブネズミ"と言ったところでしょうか?汚らわしいったら、ありゃしないです」

 メルトとサクラが順番に嫌味を好き放題に吐き捨てた。

「この人って確か、元のディオール王家の一族を皆殺して国を乗っ取ったんだっけ?」

「そして、ハイペシア支援の口実の裏で異国のマフィアに武器や資金を提供していた・・・・・・国家への反逆と戦争犯罪を同時に犯せるなんて、子供と言えどバカにできないね」

 ヴェロニカ達も敬遠の眼差しを向けていた所にアシュレイがドカドカと前に出る。
上辺だけに美貌を塗った顔面を加減無しにぶん殴った。
更に髪を乱暴に鷲掴みし、怨恨の塊でしかない形相で

「よくも俺らのダチを2人も殺ってくれたじゃねえか?・・・・・・あ?おいこらぁ!!なぶられる覚悟はできてんだろうなあ!!」

 アシュレイの一喝に絶句し、シャルロッテの表情は恐怖に青ざめた。
全身から力と感覚が抜け、タラタラと脱尿を両脚に垂れ流す。
リチャードが彼女の隣にしゃがみ込むと和やかな顔で耳に語りかける。

「ハイペシア全土じゃ、既にあんたの悪事の数々が知れ渡っている。今更、王権を盾にしようが、賞味期限切れの切り札ってわけだ。どんなに美貌に恵まれたお姫様を気取ろうがな?お前を愛する奴なんざいない。むしろ、死んでくれた方が平穏のきっかけになるんだよ」

「ウォール次第で僕を用心棒として雇えますが、生憎、"まともな人限定"なんです。頭に蛆が湧いた猟奇殺人鬼は御断り致します」

 ステラは丁寧な口調で面白そうにからかった。
ルイスも目の前にいる大罪人を赦す気など更々なく、厳しい言葉を投げかける。

「散々、多くの命を弄んだ報いです。地獄で存分に懺悔なさい!」

「アシュレイ。こいつさえいなくなれば、ルフェーブル・ファミリーの損害も早まるし、今度こそカトリーヌを苦しめられるよ。早いとこや終わらせよう?」

 ヴェロニカがリチャードの腕の袖を引っ張って事を急かす。
アシュレイも彼の胸ポケットから無断で抜き取った煙草を口にくわえ、爽快に煙を吐き出し

「だな。このアバズレをどう殺すか、俺達でゆっくり考えようぜ?」

「私はめんどくさいからパス。さてさて、せっかく大豪邸にお邪魔したのよ?金銀財宝をお土産にして帰らなきゃ勿体ないじゃない?上物のウィスキーはまだ残ってるかしら?」

 今日の役目を終えたショットガンを両手で担ぎ、ローズは戦利品置き場と化した屋敷へと入り込む。
勝利の幕引きを迎えたギャング達が互いを褒め合う中、クリスは装甲服を脱いで地べたに座り込んだ。
夜空に浮かぶ銀色の月を見上げ、静かに囁くのだった。

「仇は取ったよ。デズモンド・・・・・・ユーリ・・・・・・」

Re: エターナルウィルダネス ( No.104 )
日時: 2024/07/27 20:34
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

数日後・・・・・・

ルフェーブル・ファミリーの本拠地 ミネルヴァ・デン

 自然豊かな山岳に聳えるカトリーヌの居城。
城内にてカトリーヌとアルバートが会話を交わしていた。
2人に穏やかな様子はなく、真剣さがやけに目立つ。

「ウェスティア陛下が行方不明に?」

「はい。屋敷は砲撃にさらされたように破壊され、親衛隊は全滅。生存者は確認できませんでした。ただいま、第16騎兵連隊と第21歩兵大隊が捜索に当たっていますが、本人は未だに行方不明のままです」

「やはり、例のギャングの仕業なのでしょうか?」

「恐らくは・・・・・・しかし、どうやって熟練の兵で固めた館を攻め落とせたのか?」

 アルバートは首を傾げる一方、カトリーヌは何食わぬ顔で窓の外を眺める。

「陛下の護衛にはいくつもの戦果を挙げた精鋭をつかせていたのですが・・・・・・とにかく、フランゲル中佐を呼んで下さい。重要会議を開きますので、ダルニシアン大尉。あなたも同行するように」

「承知致しました」

「カトリーヌ様!」

 アルバートが承諾した矢先、気性の荒い女の大声が耳に届き、カトリーヌ達の足が階段の途中で止まる。
彼女が探していた人物が焦った様子で駆け上がって来たのだ。

「フランゲル中佐?どうなさいました?私もちょうど、あなたを探していた所でした」

 エリーゼはしっかりとした敬礼だけは怠らず、直ちに報告を届ける。

「ウェスティア陛下から、あなた宛てに積み荷が届きました。ただいま、配下達が城内に運んでおります」

「消息を絶っているはずのウェスティア陛下から?どういったものでしょうか?」

「それが・・・・・・」


 城の広間にはカトリーヌの到着より先に大勢の上級幹部や兵士、城の使用人達が集まっていた。
その中にはロアーノ・アシュベリー大将やレティシア・ダルク大佐の姿も。
彼らは街で事件を聞きつけた野次馬のようにザワザワと何かを取り囲んでいる。
カトリーヌが駆けつけると、配下達の注目が一斉に主君の方へ移り変わり、命令がなくとも道を開けた。

「カトリーヌ様・・・・・・」

 不安そうなレティシアと一瞬だけ顔を合わせ、改めて不審物の正体を確認する。
置かれていたのは、シャルロッテが寄贈品を送る際に使用していたウェスティア家の家紋が彫られた木箱だ。
箱はまだ未開封で特に怪しい部分は見受けられない。

「カトリーヌ様。念のため、お下がり下さい。陛下本人が消息を絶っている以上、何が入っているか定かではありません。おい!そこのお前!お前だ!箱を開けて中身が何か確認しろ!」

「・・・・・・は?あ!は、はっ!」

 エリーゼに不意に指名された衛兵が焦った承諾をして、箱の元へ向かう。 
大勢の沈黙と視線が集める中、彼がおそるおそる蓋を開けると、中から大量のハエが解き放たれ、凄まじい勢いで飛び去って行った。
新鮮な空気が異臭に穢され、アルバートやロアーノを含む大半が無意識に鼻を覆う。

「あっ・・・・・・ひぃや!ひゃあああああ!!」

 箱の中を覗いた衛兵が金切り声のような悲鳴を上げ、尻餅をつく。
完全に腰を抜かし、四肢の感覚を失った。

「腑抜けっ!精鋭が年寄りみたいな悲鳴を上げるな!どうした!?早く中身を報告しろ!」

 衛兵は心身を凍りつかせ、言葉を発せられなかった。
実に情けないと言わんばかりに呆れ返ったエリーゼ自ら、代わりに箱の中身を覗く。
刹那に苦い顔と同時に吐き気を及ぼし、口を覆う。

「うっ!そ、そんな・・・・・・何と・・・・・・」

 寄贈品の正体は行方知れずのシャルロッテだった。
容姿にかつての面影がなく、四肢のない全裸の格好で髪は頭皮ごと剥ぎ取られていた。
体は糞尿漬けにされ、濃い膿が滲んだ傷口に蛆が集う。
唯一、右目付近の素肌が原型を留めており、体中に腐乱した動物の皮が縫い付けられている。

「ウェスティア陛下・・・・・・な・・・・・・まだ、生きてるいるのか・・・・・・!?」

 その一言で吐き気を抑えきれなくなった数人が嘔吐してしまう。
使用人も悲鳴を上げ、その場から数名が逃げ出した。

「ごっ!げっ・・・・・・こ・・・・・・こ・・・・・・りょ・・・・・・し・・・・・・」

 シャルロッテは鮮血の泡を吹き出すと共に死を懇願する。
鬼畜の所業を行ったギャングに対して罵声が飛び交う中、エリーゼがはっ!と急に後ろにいるカトリーヌの元へ部下を押し倒して突っ切る。
主君を抱いて強引に横たわらせ、これ以上はない大声を響かせた。

「全員!伏せろぉぉっ!!」

 刹那に棺桶が大爆発し、巻き添えを喰った幹部や兵士の大勢が吹き飛んだ。 
破裂音と破片の瓦礫の雨が止んだ頃、広間には黒煙が充満し、火薬の焦げた臭いが立ち込める。
瞬く間に死傷者が散らばる地獄絵図が生まれ、直截的な被害を逃れた者達にも鼓膜に当分は治まりそうもない耳鳴りが残った。

(ステラの奴!あのバカ!やり過ぎだろ!?少しは手段ってものを選べって・・・・・・!)

 ヒューイが泣きじゃくるメイドに覆い被さりながら、幼馴染の凶行に激怒する。

「カトリーヌ様。無作法な行為をお許し下さい。お怪我は!?」

「私は大丈夫です。他の方々は?」

「おい!カトリーヌ様は無事だ!誰でもいい!被害状況を報告しろ!!」

 そこへ肩の負傷で済んだルミエールがフラフラと駆けつけ、惨事の現状を報告する。

「爆発物の付近にいた上級幹部が3名。下級幹部が4名。兵士が数十名ほどが犠牲に・・・・・・後方に控えていたお陰か使用人達に怪我はありませんでした」

「使用人の無事なんてどうでもいいわ。爆発物を城に献上されるなんて、随分となめられたものね・・・・・・」

 実に不愉快そうにロアーノが上品な衣装に付着したすすの塊を粗暴に床に投げ捨てた。

「これは明らかな挑発行為かと!これ以上の狼藉を許せば、組織は弱体化の印象は根付く一方です!」

「ウェスティア陛下が亡くなり、いずれディオールの援助は断ち切られてしまいます!皇国の支援を断ち切られたとなれば、我々の勢力は多大な損害を・・・・・・!」

「クリス・ヴァレンタイン・・・・・・」

 カトリーヌは悔しそうに怒り狂う事はなく、ボソッとその名を呟く。
配下達から耳心地が悪い事実を告げられようとも、カトリーヌは変わらずに平然としていた

「デイヴィット・・・・・・ウェスティア陛下・・・・・・私達は優秀な人材を失い過ぎました。しかし、陛下の死に関しては“切り札“とも成り得ます。何故なら、我々は陛下の殺害に関与していないのですから・・・・・・」

「ん?それはどういう・・・・・・?」

 アルバートが矛盾に違和感を感じて尋ねるが、カトリーヌは答えを明かさなかった。
代わりに上級将校のレティシアを対話の相手に選ぶ。

「ダルク大佐。私が手紙を書き終え次第、至急、ディオール政府へある知らせを届けてほしいのです」

 レティシアは聞き返すような返事をして、ひとまずは敬礼した
不気味に微笑む主君の顔は明らかに陰謀を企んだ暴君の素顔だった。


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