複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



Re: エターナルウィルダネス ( No.41 )
日時: 2020/11/17 20:22
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
参照: https://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=2173.jpg

 波止場は街の片隅の浅い岸辺に存在した。
板と丸太を組み合わせて作った桟橋が複雑に張り巡らされている。
標的を乗せる船はまだ到着しておらず、川は緩やかに水だけが流れ、遠い向こうに陸地を水面に逆さに映していた。

「川には何も浮かんでねえな。船の到着はもうすぐのはずだが?」

 アシュレイは暇を潰そうと煙草を取り出すが、これからの展開に備える事を考え、開封済みのパックにしまう。

「幹部が渡航する場所にしては見張りがいませんね?まあ、街に見張りが多いから、ここに兵を配備する必要がないと判断したのでしょう。今日の僕達は運がいい」

 ステラが周辺の環境を怪しむが、特に傭兵の勘を働かせている様子もなく、平然としている。

「あそこに隠れよう」

 クリスが指を指した先には1軒の小屋が建てられていた。
恐らく、船に乗せる貨物を収納する倉庫だろう。
木で作られた箱や樽などがたくさん置かれているため、すぐに分かった。

 ギャングのメンバー達は念のため、背後からの監視や尾行に注意を払い、小屋に身を潜める。
クリスとアシュレイは銃の状態の確認を済ませ、木箱から顔上半分を覗かせる。
後方ではサクラとメルトが緊張感を膨らませながら、杖と斧を手に標的の到着を待つ。

「・・・・・・で?隠れられたのは計画通りだったけど、次は?どうやってノーラを襲う気なんだい?」

「単純だ。ノーラの女狐が波止場にのこのこ現れやがったら、船に乗り込む前に狙撃する。後はうざってぇ取り巻き共を蹴散らして、包囲網から抜け出し、めでたしめでたしだ」

「あれだけの殺し屋を相手にするなんて、僕達は無事に生還できるのだろうか?ゴールデンバレルでの朝食が最後の晩餐にならなきゃいいけど」

 すると、噂をすれば波止場に数人の集団が入って来た。
会話を弾ませ、楽しそうにガヤガヤとうるさく盛り上がっている。
正体はルフェーブル・ファミリーの一味で大半は男性ばかりだが、1人は異なり、若いルシェフェルの女が先頭を歩いていた。

 女は絶世の美女で白い髪を肩につくまで垂らし、右目を覆い隠している。
その表情は恐ろしいくらいに温和で凶悪に繋がりそうな人相は見当たらない。
まるで、これから聖地の巡礼に向かう聖女のようだった。
しかし、着ている衣装は間違いなく、組織の幹部の証だ。

「来たな」

 事の訪れにクリスが銃を握る力をぎゅっと強める。

「あの女がノーラだ・・・・・・間違いねえ・・・・・・!」

 アシュレイは口調を怒りに震わせる。
血を味わいたい程の殺意に八重歯を剥き出しにし、顎を強く圧迫する。

「奴は無防備で先頭を歩いている。撃つにはいい機会です」

 ステラは僅かな時間しかないチャンスを告げ、狙撃を促す。

「どうしたの・・・・・・!?早く撃ってよ・・・・・・!」

 メルトは聞こえない銃声に焦りを抱き、平常心が喪失する。

「・・・・・・アシュレイ?」

 クリスの声掛けをアシュレイは無視した。
あろう事か、彼はピストルをホルスターにしまったのだ。
コソコソと隠れるのをやめ、波止場へ堂々と敵にその姿をさらけ出す。

「ア、アシュレイさん・・・・・・!?」

「バ、バカじゃないの・・・・・・!?とうとう頭がおかしくなっちゃったの・・・・・・!?」

 背後から耳に届く正気を疑う発言を気にせず、アシュレイは桟橋の真ん中に立ち塞がる。
ノーラ達はアシュレイの姿を視野に入れた途端、足を止めた。
護衛の殺し屋は不審者に警戒し、手際よく武器を構える。

「悪いな御一行。てめえらは船には乗れないぜ」

 アシュレイは声を尖らせ、目の前の集団を脅した。

「あなたは・・・・・・」

 ノーラは敵意のない優しい声で中途半端に話しかける。

「ノーラ・マクレディだな?てめえの命を奪いに来た」

 殺害宣告を耳にし、ファミリーの護衛達はより一層、敵を排除しようとその目を鋭くする。

「何故、私の名を?あなたとは、どこかでお会いしましたか?生憎、礼儀の基本すらも知らない底辺なお方は、記憶には留めておかない性格でして」

 ノーラの皮肉を少しの間、笑いで聞き流した後、グッと人相を鋭く強張らせ

「てめえは街を守る責任を背負った市長でありながら、ルフェーブル・ファミリーに寝返ってアドニスそのものを滅ぼしやがった。住人を1人残らず消したつもりだったんだろう。だがな、生き残りがいたんだよ。そいつ、俺の幼馴染でな。すぐに真実を話してくれたぜ。黒幕がてめえだって事もな」

「・・・・・・っ!」

 言葉を詰まらせ、ノーラは自供に等しい反応を示した。
殺し屋も引き金を引こうとしたが、相手の先が読めない行動に撃つ手が止まる。

「まあ、待て。いきなり撃ち合うのもなんだ。冥土の土産にいい話をしてやるよ」

 武器に手を触れようとする仕草を出さず、アシュレイは唐突に語り出す。

「てめえら、ファミリーの略奪で俺は生きる糧である酒場を失った。死んだ親父が残したちっぽけな財産だ。俺の親父は女房よりも酒を選ぶ、どうしようもないバカでな。俺も心底呆れてたぜ。でもよぉ、そんな親父が1つだけ正しい事を言ってたんだ。この世は因果応報だってな。他人を苦しめた分、その罪は何倍ものでけえ罰になって返って来るってよ」

「・・・・・・な、何が言いたいのですか?」

「まだ、分かんねえのか?つまりはこういう事だっ!」

 アシュレイの敏速な抜き撃ちで数発の銃声が響く。
ヴォルカニックピストルから放たれた弾丸はノーラ以外の全ての殺し屋に命中した。
致命傷を負った被弾者はまとめて横たわり、息絶える。

Re: エターナルウィルダネス ( No.42 )
日時: 2020/12/02 17:43
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「・・・・・・ひぃっ!」

 一気に窮地に追い込まれたノーラは恐れおののき、無我夢中で波止場から逃走する。
アシュレイは装弾数が半分も残ったピストルで標的の背中を撃とうとした。

「おい!なんだ!?銃声がしなかったか!?」

「あっちだ!波止場の方からだ!」

 しかし、街にいた殺し屋の注意を引き付けてしまい、敵勢の波はノーラの姿を覆いながら、こちらに押し寄せる。

「加勢するぞ!」

 クリス達は応戦が可能な場所に身を移し、迎え撃つ。

「アシュレイさん、身を潜めて下さい!」

 サクラが忠告を促し、彼を木箱の影に隠れさせた。
直後に途切れる事ない弾幕がギャングを襲う。

「バカじゃないのあんた!!普通に撃てばよかったのにっ!!」

 取り返しのつかない状況に至った苦境の最中、メルトは怒りを心頭に発する。

「へへっ、わりぃわりぃ。あのクズ女に一言、文句を言ってやりたったんだよ」

 アシュレイは反省の色もなく、悠長にピストルに弾を込める。

「どうします!?銃撃が激しくて、身動きが取れません!」

 ステラが不利でしかない立場にに苦虫を噛み潰したような顔で、銃弾を回避し

「この状況、ホントにヤバいよ!!反撃できない!」

 為す術もなく、メルトも伏せているだけで精一杯だった。

 その時、ファミリーの集団は狙いを狂わせ、全身をビクビクと痙攣させた。
彼らは胴体から空いた穴から血を吹き出し、次々と無力化されていく。
多勢で陣取っていた殲滅部隊は瞬く間に全滅した。

「何が起こったんだ・・・・・・!?」

 クリスは横を振り向くと、その"まさか"が的中した
倉庫の影からルイスが自動小銃を発砲し、敵を一掃したのだ。
弾倉を空にして、全弾を打ち尽くした彼は自分が描き作った地獄絵図に震えていた。

「神よ・・・・・・我が罪をお赦しを・・・・・・」

「よくやった!行くぞ!」

 アシュレイはルイスを短く褒め称え、追って来る仲間を背にノーラを追撃する。
陰気だけが漂っていたランガシリスは街全体が戦場と化した。
住人達は悲鳴を上げながら、姿勢を低く逃げ惑う。

「あの女は船で逃げる計画を狂わされて、それ以外の逃走手段は頭に入れてねえはずだ! 包囲網を蹴散らせば、すぐに追いつけんだろう!」

「だと、いいんだけど!」

 当てにならない推測にクリスは不満を叫んで、正面から向かってきた殺し屋に発砲した。
そいつが宙返って地面に落ちる前に9時の方向にいたもう1人を撃ち、仕留める。

「ここにいたら、いい的だ!一気に街に突き進みましょう!」

 ステラは"足を止めるな!"を違う言い分で表し、疾走する。

「・・・・・・きゃっ!」

 ふいにサクラの足元の土が跳ね上がり、走りを妨げられる。
みると、給水塔の上で狙撃手がライフルでこちらを狙っていたのだ。
アシュレイは平然と口の端を引きつり、1発の銃弾を放つ。
狙撃手はライフルを落とし、血が溢れ出す喉を押さえながら、塔の上から落下した。

 街にも大勢の殺し屋達が待ち構えていた。
列車の影、建物の死角、給油場など、あらゆる場所を襲撃に有力的な戦法を取る。
クリス達は銃弾を防げそうな木材の陰に隠れ、応戦するが

「注意しろ!建物の上からも撃ってくるぞ!」

 クリスは撃とうとするも、地理的に分が悪く、迂闊に顔を出せない。
ルイスも撃ち返すが、敵側の抵抗が激しいだけに満足に抗う機会が回らない状態だ。

「ちっ!雑魚が蟻みてぇに群がりやがって!うぜえんだよ!」

 アシュレイは物陰から飛び出し、ピストルを乱射した。
闇雲に放った弾丸に胸部を抉られた殺し屋が1人、体勢を崩して屋根から転げ落ちる。
しかし、アシュレイもその代償に右腕に銃弾を受け、血飛沫を飛ばす。

「アシュレイさん!」

 サクラが絶望した声で叫ぶ。
アシュレイは苦い顔のまま、銃創を押さえながら木材の壁に背を寄りかからせ座り込んだ。

「何考えてるの!?あんな大胆に体を晒したら、撃たれるに決まってるよ!」

「う、うるせえ・・・・・・!自分の心配でもし・・・・・・おいガキ!よそ見すんな!」

 アシュレイの警告にメルトは味方がいる反対の方向へ視線を移す。
ナイフを突きつけ、猛烈な勢いで突っ込んでくる殺し屋が迫った。

「きゃあ!」

 メルトは相手の手首を掴み、刃先を心臓から数センチほどの距離で止めた。 
しかし、殺し屋は懲りずに彼女に圧し掛かって、強引に押し倒す。
大の男が馬乗りになり、全体重をかけて小柄な少女を再び刺そうとした。

「マジか・・・・・・!痛っ!くそっ!利き腕がやられて、銃を握れねえ・・・・・・!誰かガキを助けられる奴はいねえのかよ!?」

「私が行きます!」

 サクラが我先にと加勢に出向こうとしたが

「だめだ!出たら撃たれます!」

「で、ですがっ!」

「頭を撃ち抜かれない保証なんてありません!死んだら終わりです!」

 ステラは仲間を衝動を押さえ、その場に留めさせる。

「死ねぇ~・・・・・・!」

 殺し屋は眼球の血管を浮き出し、獣の形相で人狩りに躍起になる。
ナイフは胸に達するまでの間を徐々に縮めていく。
圧迫による痛みに手が震え、メルトの力にも限界が近づいていた。

「う、うう・・・・・・このっ・・・・・・!」

 メルトは右手を離し、片手だけでナイフを支えると親指を敵の目に捻じり込んだ。

「ぎゃあああああ!!」

 一瞬のうちに片目が失明し、顔を覆って痛感の雄叫びを上げる殺し屋。
メルトは落としたナイフを奪い、無防備になった腹部に深々と突き刺した。
力を失った、がたいのいい体を退かし起き上がると、斧を拾って人の原型が留めなくなるまでグチャグチャに叩き潰す。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」

 返り血で真っ赤に濡れたメルトは生きた心地に足の力が抜け、その場に座り込んだ。

「ガキのくせに思考が回るじゃねえか。少しは残忍に戦えんだな・・・・・・」

 アシュレイの章賛にメルトは照れる様子などなく

「あんたのせいでこうなったんだからね。野営地に帰ったら、覚えてなさいよ・・・・・・」

Re: エターナルウィルダネス ( No.43 )
日時: 2020/12/17 19:30
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 サクラは弾幕が勢いが弱まる隙を見て、炎の魔弾を撃ち込んだ。
火球は給油場の上で陣を構える殺し屋に命中した。
殺し屋は胴体に風穴を開け、頭から逆さまに石油タンクへと落下する。
引火した黒い液体が列車の真上に降り注ぎ、爆発を引き起こした事で大きな火災を招いた。

 爆風がランガシリスの中心から八方に広がる。
クリスは怯まずリボルバーを発砲し、給油場にいたもう1人の心臓を撃ち抜いた。
ルイスも自動小銃を単発で放ち、屋根にいる標的を正確に仕留めていく。
建築物の斜面から転げ落ちる敵を最後に騒々しい銃声が止んで、一帯は静かになった。

「突破口を開きましたね。早くノーラを!」

 ステラが追撃を再開し、後に続こうとしたクリスが一旦は足を止めて大声で後ろに叫んだ。

「アシュレイ!メルト!動ける!?」

「・・・・・・ったりめえだろ。あの女の面の皮剥がすまで、くたばるわけにはいかねえからな。起きろガキ。てめえ、どこも怪我してねえだろ」

 アシュレイは痛みが癒えない腕の傷を押さえながら、自力で起き上がった。
メルトもフラフラと立ち上がり、顔に付着した血を拭う。


「とんだ邪魔が入ったものですね・・・・・・せっかくの船旅が台無し!」

 ノーラは思わぬ事態に機嫌を損ねていた。
船での逃走を絶たれた上に自身を狙う刺客に追われ、不快を知らない穏やかさは完全に失っている。
彼女は波止場と反対側にいた殺し屋と合流し、計画を変更する。
そこへギャングが追いつく。

 ここを通ると想定し、待ち伏せていた殺し屋が奇襲を仕掛けるが、ステラは突き出されたナイフをかわし、その腕を掴んだ。
そのまま取り押さえ、動きを封じるとシルヴィアの刀身で関節を切断する。
血が弾け、絶叫する殺し屋を自身の前身に重ねた。
直後にそいつの胴体に数発の弾丸がめり込む。

 同胞を身代わりにされ、撃った別の殺し屋に焦りが生じ、弾の装填に遅れが出た。
僅かな猶予も与えまいとステラはカラドボルグを投げつけ、心臓の的に刃先を突き刺す。
殺し屋は硬直し、息が止まった顔を保ちながら、マネキンのように倒れた。

「いました!ノーラです!」

「待ちやがれっ!!」

 サクラとアシュレイが今にも逃走を図ろうとする標的を見て叫ぶ。

「ちっ・・・・・・!」

 ノーラは舌打ちし、歯ぎしりをした顔を正面に向かせると、そそくさと馬に跨った。
殺し屋も逃げ去る彼女に続き、何発かをこちらに発砲すると、追撃を妨げる。

「ノーラが逃げちゃう!早く追いかけなくちゃ!」

「俺たちも馬で追うぞ!ここで逃しちまったら、命を懸けた意味がねえ!」

 ギャング達も敵と手段を合わせるため、馬の元へ走る。しかし・・・・・・

 クリスが唖然とし、足の速度を大幅に緩める。
見下ろす先には互いを頼り、共に人生を歩んできた愛馬が横たわっていた。
頭から流血し、ピクリとも動かないその肉体は紛れもない屍と成り果てていたのだ。

「そんな・・・・・・クリスさんの馬が・・・・・・!」

 サクラが言葉を失い、真っ青な表情がその深刻さを物語っていた。

「くそっ!さっき、奴らが足止めに撃った流れ弾を喰らっちまいやがったんだ。脳天に当たるたぁ、世界一運がねえ馬だぜ」

「どうするの!?ここで余計に時間をかけたら、ノーラに逃げられちゃう!」

 既に遠くを疾走し、小さく映る標的の姿にメルトの焦りは膨らむ。

「しかし!クリスさん1人を置いて行くわけには!」

 ステラはクリスを置き去りにする手段に異議を唱えようとするが

「馬がねえんじゃ、しょうがねえだろ!悪いが、俺の馬は2人乗りは無理だぞ!」

「私の馬をお貸します!」

 判断に迷う難題を瞬時に解決した一言の叫びにクリス達の視線が声の主の方へ向く。
そこにはしっかりと武器を抱え、恐れも迷いもない勇ましい面構えをしたルイスがいた。

「クリスさん!あなたはこの聖戦に必要不可欠な人材です!私への心配は一切せずとも構わない!早く、あの魔女を追って下さい!」

「そんな!街にはまだファミリーの殺し屋がいるんですよ!?神父さんだけを残していくなんて、できません!」

 サクラの訴えがルイスにとっては嬉しかったのか、彼は相好を崩す。
しかし、いくら穏やかな顔を繕っても、決意を捻じ曲げる事はなかった。

「戦い慣れていない私が行っても、足手まといになるだけです。私は嬉しい。何故なら、自身に身を危険に晒す事であなた達の正義に多大な貢献できるからです。他者を想う気持ちで悪を打ち倒そうとする尊い魂を守れるなら、喜んでこの命を差し出しましょう。さあ、早くお行きなさい」

 クリス達は、まるで長年の友を失う前日のような切ない表情を浮かべる。
最初にその曇った感情を断ち切ったのはアシュレイだった。

「迷ってる暇なんかねえ。神父さんよ。あんたがそれでいいってんなら、遠慮なしで甘えさせてもらうぜ」

「良心が痛みますが、その判断が唯一の得策でしょう!ここであの女を逃したら、今までの苦労が水の泡です!」

 ステラも迷いを捨て、追撃を優先させる。
クリスは躊躇いを捨て、すぐさまルイスの馬に跨った。

「ルイスさん。あなたはもう、僕達ギャングの正式な一員・・・・・・かけがえのない仲間です。この馬は少しの間、お借りします。もし、危険な状況に陥ったら街には留まらず、安全な場所へと逃げて下さい」

 ギャング達はルイスの勇ましさに従い、ノーラを追う。
最後列として仲間に続くサクラが去り際に約束を叫ぶ。

「必ず、迎えに来ます!だから、神父さんも生きて!絶対に無事でいて下さい!」

Re: エターナルウィルダネス ( No.44 )
日時: 2021/01/03 18:05
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 ギャングを乗せた馬は列を成し、馬足を渇いた地面に叩きつける。
蹄(ひずめ)が刺さり、渇いた地面が深く抉られて土煙が舞う。
戦地をかいくぐる突撃のような勢いでドカドカと硬い足音を響かせた。

 ノーラは森林が生い茂る崖沿いの山道を駆け上がろうとしていた。
加速させ、追跡を振り切ろうとするが、ギャングの追っ手は徐々に長い距離を縮めてくる。
振り返る度に自分に向けられた魔の手が狭まる事を知り、焦った表情に深刻さが増してく。
背後につく護衛達も不利に陥っている自覚を隠し切れない様子だ。

「こんだけ差をつけても追いつかれるなんざ、ファミリーの馬も随分と老いぼれてやがんな!豚の群れでも追い回してる気分だぜ!」

 勝機に慢心したアシュレイは皮肉を吐き捨て、先頭の更に先を行く。

「油断しないで下さい!リチャードさんがいつも言っているように、優勢な時ほど注意・・・・・・きゃっ!?」

 忠告の途中、こめかみに風圧が過り、サクラは反射的に姿勢を低くした。
追っ手の妨害を企み、敵側がこちらに銃を発砲したのだ。

「気をつけて下さい!窮地に立たされた獣ほど、大きな危険を孕んでいます!」

 ステラが警告を知らせ、クリス達は一直線の列を崩して散開した。
一ヶ所にまとまらず、敵の反撃に優位な陣形を取る。

 ファミリーの殺し屋が再び、発砲音を響かせる。
鳴った銃声の数だけの銃弾が飛んでくるが、どれも命中しなかった。
2列目を走るクリスは鞍に左手を置き、体勢を安定させるとホルスターからリボルバーを抜く。
同時にハンマーを倒し、短く狙いを定めると揺れ動く馬上で引き金を引いた。

 轟音と共に銃口から噴き出した大口径の鉛が遠くにいた殺し屋の心臓を見事に貫いた。
被弾したそいつは的を外した銃声を遺言代わりに、馬から転げ落ちる。
片足が鐙(あぶみ)に引っ掛かり、死にかけの肉体は平らじゃない地面を乱暴に引きずられた。

 互いに接近と離反を巡る攻防を繰り返し、やがて、両方の部隊は分かれ道へとさしかかった。
逃げるのに必死なノーラは何も考えず、道を右折する。
護衛達も闇雲に進む彼女の後に続く。

「右だ!あの女、右に行きやがったぞ!」

 アシュレイは馬を飛ばし、殺意という執念でノーラをつけ回す。
クリスも罠の気配に警戒しながら、敵の逃げ道を辿ろうとした時

「クリスさん!僕は左の道を行きます!」

「え?どうして!?」

 ステラの唐突な判断に、クリスは単純な問いを投げかけたが、彼は理由を告げず背後を振り返った。

「僕に提案があります!メルトさん!恐縮ですが、付き合ってくれませんか!?」

「何か、面白そう!そういう事なら、喜んで手伝うよ♪」

 ステラとメルトは離脱し、真逆の通路へと姿を消す。
クリスは不安があったが、真剣を露にした橙色の瞳に信用を託した。


 追跡者と逃亡者の競争は続く。
全力を尽くし、疲れを切らし始めた馬の吐息が緊迫の形となり、騎馬達の集中力が強引に深まる。
両勢力は銃弾が当たらぬよう、一定の距離を保ちながら、一歩も譲らない。
隙を与えれば最後。それはどちらにとっても、同じ状況だった。

 闇雲に馬を走らせる事に夢中になっているノーラの後ろで殺し屋達が発泡し、クリス達も撃ち合いを繰り返す。
くねった道を過ぎた時、偶然にも列の位置が直線に重なり合う。
狙われやすいポジションに立たされ、殺し屋は慌てて銃口を向けるも、サクラがいち早く魔弾を発射していた。

 魔球は銃弾よりも正確で目にも止まらない一筋の光線となり、敵の腕を射抜く。
殺し屋はあまりの痛感に絶叫すら上げられず 失った関節の先を抑えて蹲り、馬の速度を緩ませた。
クリス達は戦う術を失った殺し屋にお構いなく、追い越していく。
最後列を走るサクラが横を通りかかった時、杖の棒で顔面を殴打する。
殺し屋は背中を下に馬から叩き落され、地面に倒れた。

「・・・・・・くっ!奴らを近づけるなっ!」

 これ以上はやられまいと、生き残った殺し屋達が銃を乱射し、猛攻を激化させた。
アシュレイはコースを変えながら馬を減速させ、銃撃を回避する。

「たかが、数人の無法者にどこまでてこずってのよ!?さっさとあいつらを殺せっ!」

 手駒を次々と失い、苛立ったノーラは偉そうな文句を垂れ、自分さえ助かればいい利己的な感情に憑りつかれていた。

「ちっ!成り上がっただけの女狐風情がっ・・・・・・!偉そうに言われなくても、そのつもっ・・・・・・!」

 殺し屋の1人が反抗的な本性を呟いた矢先、死角から迫る気配を感じ、無意識に視線が横に行く。
風を切る音と共に喉に一瞬、激痛が走り、深紅の液体が噴き出した。
直後、視界は身長よりも高い宙を舞った景色を映し、目が回るほど色々な光景が飛び込んだ。
最後は茂みの中に落下し、呼吸ができない息苦しさも、やがて消えて思考が止まる。

 首無しとなった死体の隣で斧を振った姿勢のメルトが殺し屋を睨む。
最後の1人となった護衛が敵が取った妙な行動の意味を今頃になって悟った。

「・・・・・・しまった!伏兵かっ!?」

 銃口の狙いを変え、メルトの排除を図ろうとするも手遅れだった。
カラドボルグが手の甲に刺さり殺し屋は短い喘ぎと同時に銃を手放す。
森林の隠れ蓑から木の葉を散らして、勢いよく飛び出したステラが横から不意を突く。
シルヴィアは容赦なく長く鋭い刃先を突き出し、心臓に亀裂を入れる。
傭兵は抵抗する気力も失った俯いた肉体から双剣を抜き取ると、死体を強引に蹴り落とした。

 互角だった形勢は呆気なく、優勢と劣勢の差に一変した。
護衛という砦を失った絶体絶命の状況にノーラは凍りつく。
泣き顔を繕い、いくら手綱を打っても馬は脚の速度を上げてくれない。

 クリスは銃を収めると、代わりに腰に吊るしてあった投げ縄を手に持つ。
輪状に結ばれた紐の先端を頭上に掲げて振り回し、当てる勢いで前方へ投げつけた。
リングはノーラを見事に捕らえて狭まり、腕と体をきつく縛りつける。

 体の自由を奪われたノーラはバランスを崩し、途切れた悲鳴を漏らしながら馬上から引きずり降ろされた。
クリス達が馬を降り、標的を八方から包囲する。

「こ、このぉ・・・・・・ぐっ!?」

 ノーラは最後の足掻きに護身用に忍ばしていた銃を抜く。
しかし、その腕は粗暴に踏みにじられ、引き金を引くどころか構えさえもままならなかった。
空を見上げると、アシュレイが殺気を放った獣の表情でこちらを見下ろしていた。
直後に加減のない拳が目に飛び込み、視界が黒く染まる。

Re: エターナルウィルダネス ( No.45 )
日時: 2021/01/12 21:51
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)



ザッ・・・・・・ザッ・・・・・・ザッ・・・・・・

 微かな意識を眠い感覚と共に取り戻した頃、奇妙な音が脳内に木霊する。
聞き覚えがある音・・・・・・土を抉る音・・・・・・何かを掘っているような・・・・・・
傍に人がいるらしく、数人の会話が聞こえるが、うまく聞き取れない。

 現状の理由に答えを見出そうと頭を鮮明に働かせる。
すると、先ほどの出来事の記憶が呼び覚まされ、はっ!と平生の心境に戻った時、こめかみに強く殴られた痛感がした。

「う、うう・・・・・・」

 光に照らされた眩しさに目をヒリヒリさせながら、ゆっくりと目蓋を開いた。
視界には、こちらを見下ろす誰かがぼやけて見えるが、形はだんだんとはっきり、修正されていく。

「よう。ようやくお目覚めか?淑女面した虐殺野郎」

 ニヤニヤと舌を出し、悪魔の笑みをしたアシュレイがしゃがんだ姿勢で起床の挨拶をする。
その手にはナイフが握られ、刀身をぎらつかせていた。
彼の両脇には明らかに敵意のあるステラ、メルト、サクラの姿も。

「ひっ!ひぃ・・・・・・!」

 ノーラは逃げようと立ち上がろうとしたが、体が意思に従わず、再び横たわってしまう。
手足を束に固定され、縛られている事に気づく。

「町中の兵士を差し向けて、とんずらこくたぁ、なめた真似してくれたじゃねえか・・・・・・まあ、俺にとっちゃあ、ちょっとは楽しい鬼ごっこだったけどな」

「アドニスの人々はあなたの人柄を必要としていた。それなのに、街の人達を平然と裏切り、多くの罪のない命を冷酷に死に追いやった。あなたには、人の心というものがないんですか!?」

 サクラが怒りを抱いて責め立て、メルトも遠慮のない罵声を浴びせる。

「あんたはルシェフェルの恥さらしだよ。ううん、違う。存在するべき命ですらない」

「言うだけ言葉の無駄使いです。いくら、この女に正論を並べても、良識が腐った心には届かない。犯罪者を治療できる唯一の薬は裁きだけです」

 ステラは赤い瞳で悪党に対し、最もな意見を述べる。
憤怒が宿る眼差しには人間性を疑い切った敬遠も映していた。

「お願い・・・・・・殺さないで・・・・・・」

「ああ?今、なんて言いやがった?」

「殺さないで・・・・・・く、下さい・・・・・・何でも言う事を聞きますから・・・・・・」

 ノーラの女々しい命乞いにアシュレイの顔はどうしようもない呆れで歪む。
次の刹那、感情は逆鱗へと変わった。

「ふざけんなよ?てめえ、裏切りといった汚いやり方で何人の連中を殺した?武器の扱いも分からねえガキや年寄りを何人殺した?散々、他人の人生踏みにじっておいてな・・・・・・自分が危なくなったら、助けてくれなんて都合のいい事ぬかしてんじゃねえよ!!」

 語尾の一喝により激しく怯えたノーラは無意識に頭を抱え、丸めた体を縮こませる。

「波止場で親父が言った因果応報の話をした事を覚えてるよな?俺からも、1ついい事を教えてやる。"殺す奴はな、殺される"事になってんだ。死ぬ前に世の中のルールを学んどけ」

「アシュレイ、終わったよ」

 クリスがノーラの背後を回って、ギャングの一団に加わる。
その手には土がびっしりとこびりついたシャベルを手にしていた。

「どれくらい、掘ったんだ?」

「う~ん。結構な深さはあると思う」

 簡単な質問と簡単な返答。

「そんだけありゃ、十分だな」

 アシュレイは単純な評価を送り、ノーラが着たコートの首の部分を掴み、彼女を引きずろうとするが

「待って下さい」

 ステラが少しばかり、不服そうな態度で呼び止める。

「んだよ?」

「忘れられては困ります。まだ、約束の報酬を貰ってません。標的をここまで追い込んだんだ。やるべき仕事は果たしたも同然です」

 その目には、いつもなら喜ぶ彼らしい面影はなかった。
アシュレイは執念深い要求に舌打ちし、面倒くさそうにノーラを粗末に横たわらせると、全身を漁る。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。