ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Every day the Killers †7つの結晶編†
- 日時: 2012/12/02 15:40
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
初めまして鈴音(すずね)と申します!!
小説カキコでは初めての投稿となります!
まだまだ中3の未熟者ですが、温かい目で見てください……
誤字、脱字などありましたら、気軽に指摘いただくとありがたいです。
※第一部の最後の方から、斬りのいい場所がないので長くなってしまっています…
※"結晶"は、"クリスタル"と読んでください。最初の方は"結晶【クリスタル】"と、表記されてますが、途中で省略する場合がありますので注意してください(汗
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- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.90 )
- 日時: 2012/10/12 21:17
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
少年が飛ぶ姿を、彼は見ていた。飛ぶとは、跳躍の意味の跳ぶではなく、宙を舞う意味の飛ぶ、だ。自分があれほど強いと認めた少年が、相対している女性に手も足もでない。そして少年が本気を出せないのは自分のせいだと思う。自分たちの存在が、彼の足かせになっているのだ。
『どうにかして……この暴風壁を……』
ポツリと、少年を見ていた彼は呟く。周りの3人の同行者たちも頷きを見せ、自分が発言したことに賛成の意を見せつけている。賛成をしてくれたのはいいものの、この壁を壊す術がない。
今、彼ら———ウォーカーたちは人間の巡啓一という人物とクリスタクトの風・鈴との戦闘を閲覧している。いや、させられている、と言ったほうが正しいのだろうか。本当はウォーカーたちも今すぐ応戦したいのだが、目の前に風・鈴の張った結界のような壁があって行けないのだ。
「でも……さっき触ってみたけど、壁自体には攻撃力はさほどないみたいだから、物理攻撃みたいなのをやっても大丈夫だと思うよ」
と、巡と同じ人間の美優が言う。確かに、と皆が頷く中、臆病者のルナヴィンが首をかしげる。そしてうん、と一人で唸ってから顔をしかめて言った。
「物理攻撃をやれば多分壁は壊れると思うけど……。僕たちの中にそう言う人はいないんだよね、皆遠隔操作とか特殊攻撃みたいな感じだし……」
周りを見渡す。確かにルナヴィンは戦えないし、ウォーカーは少し戦闘はできるものの長時間耐えられないし、ロンリーも同様だ。美優に至っては回復術を使うので戦えない。
「じゃあ……啓一くんを助けられないの!?」
声を張り上げて言う美優に対し、只々彼らは顔をしかめることぐらいしか出来なかった。大丈夫、とカバーしなければいけないのだが、どうにも言葉が見当たらない。それに大丈夫という確信もない。
美優はその場で静止しながら、対峙する巡と風・鈴を見つめる。先ほど喰らった攻撃が効いたのか、巡の身体の至るところから赤い液体が流れ出している。風・鈴は無傷なので、そんな外傷は見当たらない。一方的に巡が攻撃を受けている。
助けに行けないのが悔しい、と不意に思った。自分に攻撃する力がないから、回復役という非戦闘員だから、彼を助けられない。助けに行けない。
「ちょっと、そこのお姉さん!!」
急に声がする。女性特有の、甲高い声だ。一瞬ロンリーが言ったのかと思い、ルナヴィンとほぼ同時にロンリーを見るが、対するロンリーは別の方を向いている。ウォーカーの横だ。即座に振り向くと、そこには
「私たちの仲間を……、私の大切な友達を虐めるのはやめてくれませんか!」
目尻に水を溜めた、美優だった。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.91 )
- 日時: 2012/10/14 07:25
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
遠のく意識の中、ひとつの聞きなれた声が耳に飛び込む。それは確かに神崎美優という人間で、自分が一番信用している人間だ。と巡は思い、意識が少し覚醒しかけた、がまだ完全には覚醒せず、瞼が重い。
———このまま俺は意識を失い存在も失う。
一番嫌なパターンだった。4人を敵の前に残して自分は消える。それだけは本当に嫌だった。がどうすることもできない。そもそも人間の自分が魔物相手に勝てるわけがなかったのだ。圧倒的に格が違いすぎる。ビビジガンの時はたまたま勝てたのだ。それを自力で勝てたと勝手に思い込み、次も行けるだろうと錯覚していたのだ。
無能だな、と思う。自分は何をしても駄目だ。自意識過剰で思い込みが激しい。被害妄想なんてしょっちゅうだ。だが何故こんな自分がここまで来れたのかが不思議でならない。普段の自分なら、この世界に来れなかった。知ることさえ出来なかったのに、何故来れたのか。
不意に、ハッと意識が覚醒した。誰のお陰か。それは紛れもない美優だ。自分でも、式也でも、慎也でもない。美優なのだ。
そう思い始めたとき、何かの感覚が戻ってきた気がした。目線を下に向けると、失くなっていたはずの右足が戻っている。輪郭部を取り戻し、肉付きがなされる。ちゃんと感覚、運動神経ともに感じる。一体何故急に戻ったのかは分からないが、これで何かに怯えることはない。
前を見ると、風・鈴が目を見開いてこちらを凝視している。やはり彼女にとっても自分の足が元に戻るのは予想外で、動きが止まっている。
悲鳴が聞こえる。
正確には聞こえたが、それは短いもので、巡もやっとのこと聞き取れた小ささで、理由は暴風壁から聞こえてきたために風であまり聞き取れなかったのだ。
しかし壁と言っても風なので、向こう側がくっきりと見える。ウォーカーにルナヴィン、ロンリー、そして……。
———え?
何かおかしい。もう一度壁の向こうを見る。ウォーカーも、ルナヴィンもロンリーもいる。だが、美優は?美優はどこへ行った、彼女が戦闘を放棄するような人物には見えないし、かといって壁を突破した跡も見えない。消えたのか、それとも———。
自分で考えていて寒気が襲った。風・鈴がここから彼女を襲えるはずがない。襲うためには自身が張った暴風壁を一度消さなければ攻撃は当たらない。だが壁はある。しっかりと存在する。
「…………!!」
美優がいない理由を悟った。瞬時に身体に力が入らなくなり立っていられなくなるが、膝に力を入れ踏ん張る。がそれでも膝は笑って震えている。顔が青ざめているのが自分でもわかった。目を見開き、ウォーカーに自分が思っていることを伝えたいが思考が回らない。一気に身体に疲労感が駆け巡る。何かを話そうにも、口が動くだけで喉の奥からは声は出ない。
巡の脳内には、一つのことしかなかった。美優が消えてしまった理由。それは、自分のせいだ、美優が消えたのは自分のせいだ。
———俺が美優を大切な、守りたい存在と認識したから、この剣は……。
自分を消した時のように、美優を消したのだろう。どうやって巡の心を読んだか知らないが、確かに消したのだろう。どうやったら戻るのか、元に戻す術は分からない。
せめてこの戦いだけは終わらせなければと、睨みつけるように風・鈴の方へと顔を向ける。息は乱れ、傷は深く、万全に戦える状態とは言い難いが、それでも巡は風・鈴と相対しようとする。
「……早く……終わらせないと…………」
終わらせたいが一心で、それ以外のことは考えなかった。いや、考えたくなかった。もし他のことを考えてしまえば、なんだか自我が保てないような気がして。
もう、巡の目には爛々とした光は失われている。自身の一番大切なモノを失ったためだろうが、風・鈴には彼の目に光がない理由は分からなかった。
不意に、風・鈴に寒気が走る。巡がこちらを睨んできたからだ。先程も同じように睨んできたが、今は目が違う。まるで狂気を感じさせるような、常人ではありえない瞳をしている。それに加えて動きも何故か不自然だ。一体彼に何があったのだろう。
『啓一…………?』
流石に壁の向こうのウォーカーたちも巡の異変に気がついたのか、声を出す。が、当然壁の大きな音のせいで返事が聞こえない。多分返事は言っていないだろうが。
「風・鈴…………」
急に名前を呼ばれた風・鈴はドキっとした様子で、冷や汗を流す。彼女の中で、巡の存在が不可思議で危険人物とみなされたようだ。風・鈴は数回深呼吸し、次の言葉を待つ。
「殺す」
彼が言ったのは、単語のみだった。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.92 )
- 日時: 2012/10/19 19:48
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「!?」
風・鈴がその言葉を聞いて驚くと同時、超人ならぬ速さで地面を蹴り飛ばし、こちらに向かってくる。そして剣を振り下ろす。これは先程まで同じような過程だが、急にパリン、というガラスが割れたような音が響く。目の前には透き通った薄緑の欠片が何枚も散っている。
「まさか…………!私の暴風膜を割るなんて……!?」
風・鈴の周りには膜のような薄い結界が張ってあったため、巡がいくら攻撃しても弾かれたのだ。それに、普通に考えて同じ攻撃をしているのだから暴風膜は割れないはずなのだが。
理由は、彼の振り下ろした剣と跳躍力にあった。勢いを最大まで強め、思い切り振り下ろす。その力は何処か彼のリミッターが外れてしまったような馬鹿力で、それに耐え切れず暴風膜が破けてしまったのだ。
「死ねよ」
暴風膜が失われたことによりほんの少し隙を見せた風・鈴を巡は見逃さず、剣を右に横薙ぎにし、一閃する。当然剣は風・鈴の脇腹に入り、数メートル動く。小さな風・鈴のうめき声が聞こえる中、巡はそれでも手を止めない。まるで何かに支配されているかのように。
いや、何かではない。彼の感情なのだ。彼が持つある一つの感情が彼を四肢まで支配しきっている。彼の脳はその本能的な感情に抗うことができず、ただ従うしかないのだ。
その感情の正体は“憎しみ”。巡自身、何故自分の心がこの感情で染まっているのかが分かっていないが、ただ狂気に身を委ねる。
「別に俺は……怒ってるわけじゃねえけどよ……、俺はやらなきゃいけないんだ。 何を?って顔してるんじゃねーよ、お前を殺すんだ。あいつの為にもな」
もう彼には憎しみ以外の感情が感じられない。精神が崩壊してしまったかのように、不安定な状態だ。だが、巡のその台詞にも、納得がいかないというように風・鈴は反論をする。
「何よ、そもそも貴方がさっさと自分で消えないからあの子が犠牲になったのよ。その武器は贄武器ね? 貴方の不始末で彼女を失ったんじゃないの!」
「五月蝿いっ!!」
ザク、と剣を突き刺す。案外勢い良く突き刺さったため小さなクレーターができる。剣の部分は3分の2程地面に埋まってしまった。
「俺の……仕事はお前を殺して、結晶を集めて元の世界に帰る、それだけだっ!!あいつも……美優も一緒に帰るって約束したのに……お前のせいで…………!!」
再び彼の瞳には狂気の色が灯り始める。敵ながら、これは危ないと思った。彼女に執着しすぎていると、風・鈴は思う。暴風壁の奥では仲間たちが不安そうに見ている。
不意に、風・鈴の脳内にひとつのテレパシーが届く。
『クリスタクト!早くこの壁を破壊してくれ! 僕たちが啓一を何とかするから!!!』
必死な表情になったウォーカーからの、開放請求だった。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.93 )
- 日時: 2012/10/19 19:49
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「な、貴方たちを開放しろっていうの!?折角啓一君と隔離したのに……!?」
『今は敵とかそう言ってる場合じゃないじゃないか!そのままだと啓一が壊れてしまう!君にとって不利益だし、それは僕たちにとっても一緒だ!』
彼が言っている不利益とは、“風・鈴が巡の暴走により殺されること”、“彼らにとって巡の暴走により意思疎通ができないこと”。
確かに風・鈴にとってそれは得にはならないし、決して彼らと巡を隔離しなくてはいけないというわけでもない。少し考えながらも、風・鈴は了承した。
———本当にこれでよかったのかしら。
とたんに疑問が浮かび上がる。もしかしたらこれはすべて彼らの罠で、自分が嵌っているだけなのではないか、巡が暴走しているというのは演技で、皆が集結して自分を殺そうとしているのだろうか。
———けど……、啓一君の憎しみの感情は本当だわ……。とても演技とは思えない。
そうだ。第一巡だけでも自分が張った暴風膜を破り自分に攻撃を当ててきたのだ。今更彼らが一緒に集って戦う必要もないだろう。
「一つ……聞かせて」
風を緩めたあと、最終確認として彼らに質問することにした。案の定彼ら……テレパシーを送ってきた少年は、質問の内容を待っている。
『……何?』
「本当に、啓一君は狂ってしまったの?演技とかじゃないのね?」
後半にいくにつれ声が段々と頼りなげになってくる。少年は一度目を伏せ、こちらと目を合わせてから小さく頷いた。
……
『啓一、しっかりしろよ、啓一!』
風・鈴に暴風壁から出してもらったウォーカーたち3人は、早速巡を正気に戻すことに取り掛かったのだが、方法はどれも暴行と呼びかけだけで、旗からはあまり見ていられない状況だった。
「え、ちょっと、大丈夫なの?」
クリスタクトでも引いている。少しやりすぎか、とは思ったものの、巡の意識が戻ってこないので仕方ない。案の定、風・鈴は巡達より少し離れた場所にいる。あまり近距離にいると意識が戻った咄嗟に巡を攻撃するのではということで離れてもらったのだが、今考えれば彼女がそんなことをするような人ではないと後悔している。
「大丈夫……とは言えないんじゃないですか……?」
『そもそも君が武器渡すから……はぁ……』
おどおどしいルナヴィンの返答に、ウォーカーがツッコミを入れる。言われたルナヴィンは「だって……」と涙目になりながら巡を見ている。
『まあ確かに、時暗刻斬剣スパッジオ・スパーダが無かったらあそこまで対等に戦えなかったけどさ。 でも贄武器っていうのは早く言おうよ……』
「僕も……思ってなかったんだ。まさか……人が消えるなんて……!」
え、とウォーカーが言う。ルナヴィンが思ってないことが起きたとでも言うのか。ウォーカーは目を見開いて続きを言うように催促した。
「お爺ちゃんの話だと……消える対象になるのは、自分とか他人の“物”とか……決して他人が消えるということはないんだ。たとえ消えるとしても啓一の右足が消えていったように徐々に消えていくはずなんだ……でも……」
『一瞬で消えたっていうのはおかしい、と?』
「うん…………。 それに、物しか消えないのに、彼女が消えたのはおかしいんだよ。代々贄武器っていうのは他人を消したりできる力を持ってないハズなのに……」
彼女、すなわち美優のことであるが、何故彼女が消えたのかが分からなければきっと元に戻す方法も見つからないだろう。
美優が元に戻らなければ巡の意識もまた元には戻らないということを、3人は無意識のうちに分かっていた。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.94 )
- 日時: 2012/10/19 19:50
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
此処は一体どこだろうか。周りは暗闇に包まれており光は一切の侵入を許されていない。足元も当然見えず、自分が存在しているのかも分からない。ただ、此処には何処か不思議な雰囲気が漂っていた。
「全く、貴様の精神力も対したものだな」
突如、遠くの方から声がする。その声は言葉では現せないほど幻想的で、非現実的な音だった。声は言葉を続ける。
「お前のせいで人が一人消失した」
ハッと意識が覚醒する。そして理解する。この暗い空間は自分の意識の中だということを、巡は頭の中に叩き込む。
「人、というのは……」
得体もしれない声に話しかける。この空間は推測だが自身の意識の中であり、深層心理のなかなのだと。だが、ただの暗い空間ということも有り得る。
「貴様の初めて“大切”だと思った人のことだ。思い当たることだろう。 貴様はそいつに依存し過ぎた」
言葉は極めて短調で、余計なことは一切話さないといった態度を取る。当然、巡はこの声の正体を知るわけでも、何か思い当たるものがあるわけでもない。だが自身の意識の中に出現するくらいなので、きっと面識ぐらいはあるのだろう。
「依存し過ぎたから……何だ。 まさか、お前が制裁でも下したとでも!?」
声が荒ぐ。他人のことで感情が乱れるのは少々あったが、これまでに感情の起伏が激しくなるのは初めてだった。それ故に、自分でも感情の操作が出来なく戸惑っている。
「当然のことだろう。 貴様の精神力が強すぎるため私は異常な力を持ってしまい、貴様の思う人に影響を及ばしてしまった」
「俺の……精神力が……?」
「ああ、自分で自覚はないようだがな。 無自覚故起こってしまった事故とでも言おうか」
「ま、待てよ…………!!」
声が遠ざかる気配がして、咄嗟に静止の声を出す。止まらずにどこかへ消えてしまうと思っていたが、立ち止まってこちらの言葉を待っている。
「じ、事故であいつは……、美優は消えたっていうのか!? ふざけんなよ!お前が自分の力の制御をしなかったからだろ!?」
「私に異常な力を持たせた人物は誰だ。 お前だろう?」
「っ……。 お前は一体何なんだよ!精神力がどうとか、お前は俺の何を知って……!」
巡は、ついにこの声の正体を知った。巡がよく知っている、というか先ほどまで一緒にいた人物……いや、剣だ。
「贄武器の時暗刻斬剣スパッジオ・スパーダがなんで俺の意識の中に入ってくるんだよ……!武器ってのは自我を持ってんのか……?」
「そうだ。 大抵武器には自我がある。が、使用者はそれに気づかず武器を使用しているが、な。それに比べて貴様は私の声が聞こえる。やはり貴様は特別な人のようだな」
そう言って、暗闇の中に突如白い光が現れる。それは握りこぶし程度のもので、巡の目の前まで接近してくる。巡は戦闘態勢は取らなかったが警戒はしていた。
「これは私の“核”だ。これを貴様の身体に取り込めば貴様と私は一体となり、貴様は私を使いこなせ使用時の代償も消える。その代わりに私は貴様と意思疎通をするがな」
どうする、と問うてくる贄武器に、巡は唸る。確かにこの武器と一体になれば代償も消え楽になる。それにそうするにはこの武器と意思疎通するだけでいいのだ。リスクが少なくていいと思う。だが、巡はこの武器と一体になりに来たのではない。クリスタクトを倒し、美優を元に———。
「美優……!」
再び意識が覚醒する。そうだ、今自分はこんなところで武器と話している暇ではない。早く美優を元に戻す方法を見つけ出し一刻も早く元に戻してあげないといけないのだ。そう思った瞬間、目の前の武器の“核”が弾ける。
突然の出来事に、一瞬動きかけた身体が止まる。何故急に核が破裂したかは分からない。がそれを気にせず再び動き始める。するとどこからか例の幻想的な声が響く。
「欲に惑わされず目的を思い出したか。全く、大層な精神力だ。仕方ない、そんな貴様に免じて今回だけは消えた人を元に戻してやろう。 しかし今回だけだ。次はない。もし次誰かが消えるようなことがあれば———」
だんだんと、意識が薄れていく。贄武器の言っていることも、だんだんと聞き取りづらくなってくる。が“元に戻す”という声ははっきりと耳に残った。よかった、彼女は元に戻る。そう安心し、巡はゆっくりと、瞼を閉じた。
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