二次創作小説(紙ほか)

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【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜
日時: 2013/07/17 22:12
名前: 時橋 翔也 (ID: FMSqraAH)
プロフ: また…つくってしまった

 こんにちは! 銀河一の駄作者 時橋です!

☆旧紙ほかで連載していた雷門の蒼きストライカーのリメイク小説です
設定等に付け足しや変更が少々ありますが、人間関係は変えるつもりはありません

☆文章の構成を変えました、わかりやすく説明と描写をたくさんいれましたが、さらに読みにくかったらすいませんm(__)m

 イナゴ第三弾!今回はオリキャラが主人公です!

¢注意!

・恐ろしいを飛び抜けた駄文 ←(超超超重要)
・アニメあんま見たことないので色々おかしい
・アニメと言うよりゲーム沿い そしてオリジナル要素がある
・更新遅し
・荒らし&悪口は禁止 それ以外のコメントなら大歓迎
・キャラ崩壊がヤバイ
・十%コメディ九十%シリアスです
・ネタバレあるので、そういうのが嫌いな人は目次のみ見ることをおすすめします ←(超重要)
・前作と変更かなりありますが指摘しないでね ←(超超重要)

これらが許せる方はどうぞ


 ☆お客様☆

・ARISA 様
・葉月 様
・素海龍 様
・風龍神奈 様
・リア 様

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 これは、とある少女のお話。
 歴史の中では決して語られなかった、もうひとつの『物語』。


 †目次†  


 プロローグ>>1

*第一章「蒼きストライカーの出現とホーリーロード」

 @Ⅰ〜変わり果てたサッカー編〜
第1話>>2 第2話>>5 第3話>>6 第4話>>7 第5話>>12 第6話>>13 第7話>>14 第8話>>15 第9話>>16 第10話>>22 第11話>>25 第12話>>30 第13話>>32 第14話>>34
 afterword>>53
 @‖〜雷門を照らす太陽編〜
第15話>>37 第16話>>48 第17話>>49 第18話>>50 第19話>>57 第20話>>62 第21話>>65 第22話>>66 第23話>>72 第24話>>76 第25話>>83 第26話>>85 第27話>>86
 afterword>>87
 @Ⅲ〜復讐の灯火編〜
第28話>>88 第29話>>89 第30話>>93 第31話>>99 第32話>>102 第33話>>105 第34話>>108 第35話>>113 第36話>>114 第37話>>117 第38話>>120 第39話>>128 第40話>>129 第41話>>130 第42話>>131 第43話>>132 第44話>>133 第45話>>136-137
 afterword>>138
 @IV〜過去に縛られた戦士編〜
第46話>>139 第47話>>140 第48話>>143 第49話>>147 第50話>>148 第51話>>151 第52話>>156 第53話>>159 第54話>>160 第55話>>163 第56話>>166 第57話>>169 第58話>>176 第59話>>177-178
 afterword>>179
 @Ⅴ〜革命を起こす二つの風編〜
第60話>>185 第61話>>190 第62話>>193 第63話>>194 第64話>>200 第65話>>202 第66話>>203 第67話>>205 第68話>>207 第69話>>215 第70話>>216 第71話>>217




*【番外短編集】

 作者の気まぐれ。本編と関係があるかもしれないし、ないかもしれない。暇なときにどうぞ。

[♪誕生日企画♪〜バースデー大作戦〜]
 五月二日、この日は登場機会が少ない海音の兄、直矢の誕生日。
 >>171-172

第26話 ( No.85 )
日時: 2013/02/22 20:51
名前: 時橋 翔也 (ID: B6N9vk9k)


後半開始のホイッスルが鳴り響いた

南沢からのキックオフ すぐに横にいた倉間にパスしようとした 時だった
天河原の選手は南沢の足を狙って強烈なスライディングを食らわせた
「うわああっ!!」
素早い反射神経で怪我はしなかったが、ボールは奪われてしまった
すると今までベンチで見ているだけだった水鳥が立ち上がった
「おい!今のは反則だろ!」
「審判に見えないようにしてる…」
カメラを片手に隣の茜は言った

奪ったボールをキープする選手の前に立ちはだかったのは海音だった
海音の周りに冷たい冷風が吹き始める それは海音を包むようにして吹いていた
そして海音は右手を上げ左肩の方に上げる
「スノーウインド!」
海音は右手を思いきり斜めに降り下ろす
するとそこから強い雪入りの風がカマイタチのようにして選手に向かっていく
「うわっ!」
強い風は選手を吹き飛ばし、ボールを奪うとそのまま海音は駆け出した

海音は走りながら辺りを見た どうする…? 天馬は隼総にマークされ、神童は喜多にマークされている だからといって他の皆はフィフス派 パスを出すのは危険だ
どうしたら…
そんな海音をよそに、西野空が海音に迫ってくる 不適に笑い、足を狙い思いきりスライディングをかけてきた
「うわっ!」
海音はぎりぎりでかわすが、その時

別の選手が続けて海音の足に思いきりスライディングを食らわせた

「がっ…!!」

激痛が駆け巡り、足を抑えたい衝動に駆られる ボールを奪われ、海音は膝をついた
危なかった… 今のラフプレーは、下手したら一生治らない怪我になるところだった
海音は蹴りつけられた足を見る 深い長い傷が出来たのか、ソックスから鮮血がにじみ出る
だがそんなこと気にせず、海音はボールを追って走り出した

ボールは天馬をマークしていた隼総へと渡る 隼総はゴールへと迫り、再び化身を出現させた
「…どうした?こんなものか雷門は!」
隼総は叫び、先程と同じシュートを放った
「ファルコ・ウイング!!」
ここで点を入れれば、天河原が勝ったも同然だ 隼総はよく分かっていた
だが、本当にこのままで良いのかと内心そう感じた たとえ天河原が勝とうともチームは何も変わらない 勝利に固執するだけだ
だからと言ってわざと負ける気などない それでは『アイツら』を裏切るのだから

「止めてやる!!」
するとそこへ天馬がやって来た シュートを身体で受け止めるが、威力が落ちる気配はない
「この試合…俺達のサッカーで俺達が勝つ!!」
そういい放った天馬の背後には、紫のオーラが見えていた
だがその時、化身シュートに耐えられず天馬は吹き飛ばされた
「うわああっ!!」
「天馬!!」
海音は叫んだ
さらにそこへ神童がやって来る
天馬のように紫のオーラを出してそれを化身へと形成した
「俺の化身で止めて見せる!奏者マエストロ!!」
青い髪の指揮者へと姿を変えた神童のオーラはシュートを受け止める だが圧倒的に神童は隼総と比べた化身を使いこなせてないのが海音にはすぐにわかった
「ぐあっ!!」
神童にも止められず、化身もろとも吹き飛ばされた

威力は落ちたが、それでも強力なシュートがゴールへと向かってくる とたんに三国はサッカーをがむしゃらに練習していた昔の自分がフラッシュバックした
あの頃と今が違うのはわかっているでも…

あの頃みたいに……勝ちたい

ついに決心した三国の拳から赤い炎がほとばしる
「バーニングキャッチ!!」
スピンの勢いと共に三国はシュートを炎の拳で地面に叩きつける これほど思いきりシュートを止めるのは本当に久々だった
隼総の化身シュートは炎の拳で徐々に威力を失い、三国はそれをキャッチした
「俺のシュートを…止めた…」
驚きのあまり隼総は目を見開く そして不適に笑った
「おもしろい…いいよ認めてやるよお前らを!」
「認める…?」
訝しげに隼総を見る天馬をよそに、神童は驚いて三国を見た
「三国先輩…」
「…お前らのお陰で目が覚めたよ」
そう言うと三国は拳を前に突き出した

「ゴールは俺が守る…行け!」

「はい!」
神童はパスをもらい、頷くとそのまま駆け出した どうしたら化身を使いこなせる…?そんなことも考えていた
海音は三国を見た また一人仲間が増えた…そんな気がしていたのだ
「この試合…絶対勝つ!!」
神童は言った 今までとは違い、固い決意を瞳に携えて

「…神童君…」
そんな神童を向こうから喜多は見ていた 昔は泣き虫だった神童があそこまで変わるなんて… 俺とは大違いだな

その思いは、神童には届かない

第27話 ( No.86 )
日時: 2013/02/24 21:34
名前: 時橋 翔也 (ID: PlCYIOtu)


「なんだよあいつ…!」

隣の西野空は神童を思いきり睨み付けた
喜多は西野空を見た
「…俺達は勝利に固執していて、本当のサッカーを忘れていたんだな…」
「本当の…サッカー?」
西野空は喜多を見つめた 一瞬意味が分からなかったが、何となくわかる気がした
昔は自分も真剣にプレーしていた
だが天河原の荒いプレーにいつしか洗脳され、真剣の欠片も無くなっていた サッカープレイヤーの誇りも忘れて
「……確かにこの気持ち、しばらく忘れていた気がする」
サッカーを楽しむ気持ち それを思い出した西野空は俯いた

神童は天河原のDF陣を抜いていき、ついにはゴール前に迫る 頼むマエストロ、俺に応えてくれ!そう神童は自分の化身に語りかけた
「……!?」
すると海音は『力』を使い神童を見てみた 神童の中にいるマエストロが神童自身と共鳴していた 声のようなものも微かに感じ取れた


『信じて』


マエストロは確かにはっきりとそう言った気がした

聞こえたとたん海音は目付きを戻して神童に叫んでいた
「キャプテン!化身を…マエストロを信じてください!!」
「マエストロを…?」
神童は海音に言われ、はっとした
そうか…俺は化身を使いこなす事ばかりに集中していて、マエストロの真の力をわかりきってなかった
理解した神童は紫のオーラを再び形成してマエストロを造り出す
「すまないマエストロ…俺はお前に応えていなかった」
マエストロに謝罪すると、僅かにマエストロが微笑んだのが海音にはわかった

マエストロの四本腕がボールへと向けられ、ボールはまるで水に包まれたようになり地面に降り立った
そのボールを神童はすごい威力で蹴りつける
「ハーモニクス!!」
ハーモニクスとはハープなど弦楽器で使われる演奏法の事だ その名に廃らない威力のシュートは真っ直ぐゴールへと向かっていく
「鳥人ファルコ!」
するとそこへ素早く化身を出した隼総が立ち塞がる ファルコはその勇ましい腕でボールを受け止める
「くっ…うわああっ!」
だが神童の化身シュートには敵わず、ファルコが打ち砕かれ消えた それと同時にシュートが威力を保ったままゴールに突き刺さる

その時 試合終了のホイッスルと歓声が鳴り響く
2対1で雷門の勝利だった

「やったああ!!」
天馬は飛び上がる そこに神童と海音、ベンチで見ていた信助もやって来た
「やったよ天馬!勝敗指示をはね除けて勝ったんだよ!!」
海音は言った いつもに増して満天の笑顔だった
「すごいよ二人とも!」
信助も言った
そこにゴールから三国もやって来た
「三国先輩…ありがとうございました」
「…やっぱり勝利の女神の前でみっともないプレーは出来ないしな」
三国はギャラリーで声援を送る母親を横目に神童に言った

「…負けたか…」
喜多は呟く だが何故だろう、今まで勝利に固執していた筈なのに清々しかった それは隣の西野空も同じのようだった
「…まあ負けても、次勝てばいいしねー」
西野空は昔のプレーを思い出しながら言った
すると喜多に近づいてくる人影が見えた それは神童だった
喜多は神童を驚いて見つめる
「神童くん…」
「…喜多」
神童は喜多を見つめた そして握手を求めて手を差し出した
「いいプレーだった… また戦おう」
「………」
喜多は神童の手を握る そして笑顔になった 昔のように
「そうだな… 君達なら変えられるかもしれない この腐敗したサッカーを」

隼総はグラウンドに座り込んでいた 負けたが取り合えず事は順調に進んだ これで次もいける…
そんなことを考えていると、そこへ海音がやって来た
隼総は海音を見た
「雪雨…」
「隼総…だっけ、サッカー楽しかったよ」
海音は隼総に手を差し出す 少しためらったが、隼総は素直に海音の手を握って立ち上がる
「…君は不思議なシードだね、ラフプレーを好まないし…」
「…まーな」
隼総は言った そして続けた
「てかさっきまで敵だったのになんで気軽に話せるんだよ」
「…サッカーをしたら皆仲間だから」
海音は笑顔で言った 昔言われた言葉だった
グラウンドは明るい雰囲気のようだった だがそれは簡単に破られた

「隼総」

少し低めの声がした 見るとグラウンドに数名の黒ずくめの男たちがいた
皆は明るい話をピタリと止めて男たちに視線を向ける きっとフィフスセクターの者だと海音にはわかった
「敗北についての処分が決まった… 来てもらおう」
男は言った 海音は心配そうに隼総を見た
「隼総…!」
「…シードに敗北は許されない 当然さ」
隼総は淡々と言った
男は隼総を睨み付けた
「隼総…お前も『奴ら』の仲間だったのだな」
「………」
奴ら?海音は隼総を見るが、全く否定しない むしろ薄笑いを浮かべていた
すると隼総は海音を見つめる

「雪雨、いずれ…フィフスセクターは崩壊する その中心となるのは…お前たち雷門イレブンだ」

「え…?」
海音の疑問に答えることなく隼総は前を向き、男達の元へ歩き出した
「隼総!」「隼総くん!」
喜多と西野空は叫んだ だがその叫びも虚しく、隼総は男達に連れていかれてしまった まるで囚人のように

海音は小さくなっていく隼総の後ろ姿をただ見つめていることしか出来なかった


これから巻き起こる革命かぜなど知るよしもなく


——————


辺りには樹齢千年は越えていそうな木々が立ち並び、風になびかれて辺りの草や葉がカサカサと揺れていた
快晴なのに薄暗いこの森に、一人の少年が立っていた 年は十三、四くらいで黒い首元くらいの長さの髪にこめかみの辺りから白と赤と黒の髪が延びている 来ているのは学ランのような黒い服だった

「…ちょっと出掛けていたのさ、気になる子がいてね」
少年は肩に止まっている緑色の小鳥に向かって言った そして空を見上げた
「雪雨海音…か、なんか不思議な子だったな…」
すると小鳥が少し鳴いたあと空へと飛び立っていった

「でも、あんな甘いサッカーでサッカープレイヤーぶるの、許せないな……」

後書き ( No.87 )
日時: 2013/02/24 22:26
名前: 時橋 翔也 (ID: 21getbfq)


こんにちは 時橋です

この編では主に神童の葛藤がメインでした さらにそこに三国の苦悩を取り入れたというまるで意味のわからない章でしたすいません 神童の葛藤を事細やかに書いたせいでこの編はだいぶ長くなりました

天河原の話も書きましたが、私はそこまで天河原好きという訳では無いんです ただWiki■diaとかを見ると、昔は正々堂々としたチームと書いてあったので、荒いチームからの復活的なものを書いてみたかった…

隼総君はどうなるのか…そして奴らとは一体? 謎が多いですがお許しを

次は復讐の灯火編!意味分かんないすね…はい
ちなみにこの話の事をリア友に話したら…
リア友「もはやサッカーじゃないよね、イナゴキャラ使ったバトルだよね」
時橋「いやいや!サッカーはしてるよ!設定は暗いけど…」
リア友「暗すぎだろ!てかイナゴをここまで暗くできるなんてある意味才能だよね」
と言われましたとさ

取り合えずメインは剣城の心境、雷門の思い、万能坂の夜桜と磯崎くんです オリキャラも出ますよ! 研磨大好き人間である私に死角などない
復讐の灯火の時点でサッカーとかけ離れる気がしますが、すいません

参照が早くも750突破しました!読んでくれた読者様ありがとうございます!
あとがき 時橋でした

第28話 ( No.88 )
日時: 2013/02/26 20:14
名前: 時橋 翔也 (ID: cFLcjEJH)


早朝の廊下には誰もおらず、海音は一人で静かな廊下を歩いていた 相変わらずのジャージに肩にかけられた通学用指定バッグ だが今は見慣れないものが存在していた
バッグをかけているもう片方の肩には白い不透明なビニール製で紐で口を閉められた袋が下げられていた その膨らみようから、ボールの形の何かの存在を意識させる

「………」
今日は久々に直矢に会いに行くつもりだった このボールを見たらきっと驚くだろう
そんなことを考えながら歩いていた時だった

「…もしもし」

剣城の声が歩いていた廊下の角を曲がった向こうから聞こえた 海音は角を曲がった向こうを見てみると、剣城が壁にもたれ掛かりながら電話をしていた 海音は剣城に見つからないよう角の壁に隠れた
『ファーストランク剣城、雷門は二度もフィフスセクターに逆らった これ以上は見逃せない』
海音には聞こえた 普通の人には聞こえない音量だが
「…わかっています」
剣城はそのまま言った
『特に雪雨は要注意人物だ…剣城、雪雨を次の試合で再起不能にしろ 君の望みの為にもな…』
「…………はい」
そして剣城は電話を切って携帯をポケットにしまいこむ
海音を倒すこと、それは望みでもあったはずだが、何故だか乗り気になれなかった

「………」
『あの少年は…お前を潰す気だな』
海音の中でレインは言った 昨日の試合以来、今まで出てこなかったレインが頻繁に出てくるようになった
何故だかはわからないが、海音も特に気にしなかった
「そうだね… まあ簡単に倒される気はないよ 君もだよね?」
『当たり前だ』
レインははっきりと海音に言った
『あの少年…いけ好かないな』
「レインは短気過ぎるよ…剣城も良いとこあるよ?いつも見てるじゃん」
『良いとこ?どこがだ?』
「え…例えば………」

「…何している雪雨」

背後から声がして海音は言いかけて振り返る 剣城がそこに海音を見ながら立っていた
「あ…剣城…」
「聞いていたのか話を」
剣城は単刀直入に訪ねた 以外と落ち着いていた
「まあ…ね…」
「…次の試合がお前の最後だ 覚悟しておくんだな」
不適に剣城は笑った この怪しい笑顔はもう見慣れていた
すると海音の中にとある疑問が出てきた 剣城と出会ってからずっと思っていたことだったが、今まで口にはしなかった

「…剣城って、どうしてフィフスセクターに居るの?」
「はあ?」
いきなり訪ねられ、剣城は表情を変えた
「サッカー上手いのにサッカー嫌いで…不思議だなって思ってたんだ」
海音は剣城に訪ねた
とたんに剣城の中に怒りが生まれ始めた 今までずっと押し付けてきたものを、海音は放とうとしている気がしたのだ
「お前にわかるわけ…」
そう言いかけて剣城は止まった

突然の事だった

剣城の頭の中に突然、見覚えのない映像が流れ込み始めた

どこか降雪地方の集落のようだ だが辺りの木で出来た家の殆どが燃え盛り、破壊されている そのため空は立ち上がる煙で暗かった
さらに道端にはあまり見ない質素な服を着た人々がまばらに倒れている 服はボロボロになり傷だらけで、積もっている雪が赤く染まっていた
皆死んでいるようだ 家の近くにいて燃えていて無惨になっているのもあり、まさに地獄絵図みたいだった

「……っ?!」
訳もわからない映像に、剣城は吐き気が込み上げる これ以上見たくないと剣城は口を抑えるが、映像の羅列はとどまることを知らない

「え…剣城?」
様子がおかしい剣城を心配そうに海音は見るが、剣城にはもはや海音など見えていなかった

映像の向こうに生存者と思われる人影が見えた 年は六歳程の幼い少女だった 青白い長い髪を霧野のような二つ縛りにしていて、少女もまた様々な所に怪我を負っていて血まみれだった
少女はしゃがんで目の前の何かに叫ぶようにして呼び掛けているのがわかった それは同じ生存者のようだ 年は十代半ばほどの少年 しかし少女よりも傷は深刻で、助かる見込みが見られない
少女は泣きながら少年に呼び掛けていた

だがその時、少年が目の前にいた兵士のような者達が放った銃によって、無惨に弾けとんでしまった

「剣城!?」
海音はその映像に耐えきれなくなり、口を抑え膝をついた剣城に言った
海音は訳も分からず剣城の背中をさすった 呼吸は安定しておらず、泣いていた
それでもなお剣城には映像が流れ込む

目の前に血の海を残して弾けとんだ少年を前に、少女は泣き叫んでいた
剣城に伝わってくるのは、悲しみ
恐らく少女が感じているであろう酷い困惑と身を引き裂くような悲しみが剣城を支配していた
とうとう惨劇の映像に耐えられなくなった剣城は身体から力が抜けて海音にもたれ掛かる

「剣城どうしたの!?剣城!!」
海音は剣城を揺するが反応は無い
変わりに剣城はこんなことを発した

「…ソラ…」

「え…今なんて…」
「海音?」
言いかけた海音にそんな声が聞こえた
海音は向こうを見ると、そこに居たのは登校してきたばかりの天馬だった
「天馬…」
「え、剣城…?」
天馬は驚いて気を失った剣城を見つめた
海音は剣城を抱き抱えてゆっくりと立ち上がる 以外と華奢な身体つきだった
「天馬!手伝ってくれない?剣城を保健室に連れていかないと…」
「え…わかった…!」

後で話を聞こう
そう思いながら天馬も剣城に駆け寄った

第29話 ( No.89 )
日時: 2013/03/08 21:31
名前: 時橋 翔也 (ID: FMSqraAH)


「…剣城が?」

話を聞いた神童は驚いて声を上げる
昼休み、昼食を済ませた海音、天馬、信助、神童、三国の五人は人気のない廊下に集まり話をしていた
剣城が気を失って保健室に運ばれたというニュースは意外なことに噂にはなっていなかった 存在感が無いわけではないが、剣城がどうなろうと生徒たちは気にも止めないのだ
「はい… 突然様子がおかしくなって…」
海音は俯いたまま話した もしかしたら自分があんなこと聞いたせいだろうか…そんな不安と責任が重くのしかかる
「…剣城が以外だね」
信助は言った 剣城のあのイメージから倒れたり泣いたりすることなど想像もつかない

すると三国が自分の後輩たちを見た
「実は…話は変わるが、今日は全員で練習が出来そうにない」
「え、どういうことですか?」
天馬は三国を驚いて見つめた 三国は続ける
「さっき車田と天城に、今日は一緒に練習出来ないと言われたんだ」
「…俺も霧野達に、別々に練習したいと言われました」
暗く神童は言った 自らの親友に言われた一言が針のように心に突き刺さる

「…それでもやるしかないんです」
海音は四人に言った
「もう後戻りは出来ない… ボクらでフィフスセクターと戦いましょう」
「…そうだね海音」
天馬は微笑むと、右手の拳を前に出した 続いて海音、信助、神童、三国の順に拳を前に出す 円形にそれぞれの拳を触れ合わせると、なんだか勇気が出てくる気がした

「…頑張りましょう、ホーリーロード!」

「オオッ!!」


「………」
そんな五人を少し離れた曲がり角の向こうから見ていた霧野は俯いた そして持っていた青いファイルを抱き締める
天河原戦…いや、神童が退部を取り消して戻ってきた時から、見えない厚い壁が自分と神童を隔ててしまった気がした

昔から仲がよかった筈なのに、こんなにも簡単に引き裂かれるものなのか?そんな疑問を振り払い、霧野は神童達の方に背を向け、保健室へと歩き出した


——————


目覚めて始めに感じたのは、薬品の香りだった

剣城は目を横に向ける どうやらここは保健室のようで、保健室のベッドの一つに寝ていたらしい ベッドの横には着ている改造された制服の上着がハンガーで壁に掛けられ、毛布にしまいこまれていなかった右腕の裏には点滴の針が管と共にテープで貼られていた 点滴の透明で鉄の棒に吊るされた袋の中には透明な薬が入っていて、速くも遅くもない一定の早さで一滴ずつ落ちていく

いつの間にか気を失っていたのか そんな考えと共にふと思い出すのは、突然頭に流れ込んできた阿鼻叫喚の映像の羅列
酷い有り様の集落 泣き叫んでいた少女
思い出すだけで悪寒と吐き気がする
剣城はゆっくりと起き上がる 寝ていたはずだが身体はかなり重く感じた
辺りを見回すと保健室の先生は見当たらない 一刻も早くこの点滴を外したいが、知識を持たない自分が勝手に抜けばどうなるかわからない

「………」
一体あの映像は何だったのだろう 剣城の記憶ではあんな出来事は知らないし、もしあったとしたら決して忘れることも無いだろう だがあの出来事は紛れもない事実である気がした
少なくとも、普通の人なら気が狂う有り様だった 剣城もあのまま映像の羅列が続いていれば、精神に異常をきたしていたかもしれないと考えると怖くなった
情けないな… そう思った時だった

ドアが開かれ、そこから霧野が入ってきたのが見えた
「……!」
剣城は霧野を見つめる 少し歩き、剣城の存在に気づいた霧野も剣城を見た
「…剣城…」
霧野は言った 黒の騎士団戦の時とは違い、敵意はまるで無かった
「本当に保健室に居たのか」
そう言うと霧野は持っていた健康観察ファイルを保健室の机の上に置いた
剣城は何も言わずに霧野を見つめている
「…お前、以外と髪長いな」
すると霧野は言った
そして剣城はいつの間にかポニーテールにしていた髪がほどかれ、肩より長い髪が垂れている事に気がついた
あまり見られたい姿では無かった 剣城は急いで髪を縛ろうとするが、肝心のゴムがどこにも見当たらない

その様子を見ていた霧野は何を思ったか二つ縛りにしていた髪のゴムを二つとも外した 普通の男子より圧倒的に長い髪がほどかれ、ますます女子のように見える
そして霧野は剣城に近づいた
「…ほら、やるよ」
剣城は目の前に差し出された抹茶色のヘアゴムと霧野を交互に見た
「………」
剣城は何も言わずにゴムを取ると、すごい早さで髪を縛り上げた
霧野も残ったゴムで長い髪をひとつ縛りにした あまり見られない霧野の髪型だ
何故霧野がゴムをくれたのかはわからないが、取り合えず考えないことにした

「…ありがとう、ございます」
普段の剣城からは想像もつかない言葉を小さく、俯いたまま言った
霧野にはその言葉が聞き取れたようで、少し笑うとそのまま保健室から出ていった

後に残るは、静寂のみだった


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