二次創作小説(紙ほか)
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- 【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜
- 日時: 2013/07/17 22:12
- 名前: 時橋 翔也 (ID: FMSqraAH)
- プロフ: また…つくってしまった
こんにちは! 銀河一の駄作者 時橋です!
☆旧紙ほかで連載していた雷門の蒼きストライカーのリメイク小説です
設定等に付け足しや変更が少々ありますが、人間関係は変えるつもりはありません
☆文章の構成を変えました、わかりやすく説明と描写をたくさんいれましたが、さらに読みにくかったらすいませんm(__)m
イナゴ第三弾!今回はオリキャラが主人公です!
¢注意!
・恐ろしいを飛び抜けた駄文 ←(超超超重要)
・アニメあんま見たことないので色々おかしい
・アニメと言うよりゲーム沿い そしてオリジナル要素がある
・更新遅し
・荒らし&悪口は禁止 それ以外のコメントなら大歓迎
・キャラ崩壊がヤバイ
・十%コメディ九十%シリアスです
・ネタバレあるので、そういうのが嫌いな人は目次のみ見ることをおすすめします ←(超重要)
・前作と変更かなりありますが指摘しないでね ←(超超重要)
これらが許せる方はどうぞ
☆お客様☆
・ARISA 様
・葉月 様
・素海龍 様
・風龍神奈 様
・リア 様
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは、とある少女のお話。
歴史の中では決して語られなかった、もうひとつの『物語』。
†目次†
プロローグ>>1
*第一章「蒼きストライカーの出現とホーリーロード」
@Ⅰ〜変わり果てたサッカー編〜
第1話>>2 第2話>>5 第3話>>6 第4話>>7 第5話>>12 第6話>>13 第7話>>14 第8話>>15 第9話>>16 第10話>>22 第11話>>25 第12話>>30 第13話>>32 第14話>>34
afterword>>53
@‖〜雷門を照らす太陽編〜
第15話>>37 第16話>>48 第17話>>49 第18話>>50 第19話>>57 第20話>>62 第21話>>65 第22話>>66 第23話>>72 第24話>>76 第25話>>83 第26話>>85 第27話>>86
afterword>>87
@Ⅲ〜復讐の灯火編〜
第28話>>88 第29話>>89 第30話>>93 第31話>>99 第32話>>102 第33話>>105 第34話>>108 第35話>>113 第36話>>114 第37話>>117 第38話>>120 第39話>>128 第40話>>129 第41話>>130 第42話>>131 第43話>>132 第44話>>133 第45話>>136-137
afterword>>138
@IV〜過去に縛られた戦士編〜
第46話>>139 第47話>>140 第48話>>143 第49話>>147 第50話>>148 第51話>>151 第52話>>156 第53話>>159 第54話>>160 第55話>>163 第56話>>166 第57話>>169 第58話>>176 第59話>>177-178
afterword>>179
@Ⅴ〜革命を起こす二つの風編〜
第60話>>185 第61話>>190 第62話>>193 第63話>>194 第64話>>200 第65話>>202 第66話>>203 第67話>>205 第68話>>207 第69話>>215 第70話>>216 第71話>>217
*【番外短編集】
作者の気まぐれ。本編と関係があるかもしれないし、ないかもしれない。暇なときにどうぞ。
[♪誕生日企画♪〜バースデー大作戦〜]
五月二日、この日は登場機会が少ない海音の兄、直矢の誕生日。
>>171-172
- 第64話 ( No.200 )
- 日時: 2013/06/04 20:47
- 名前: 時橋 翔也 (ID: 4n3MlAWB)
新たに雷門に復帰した二人は、退部したあともサッカーを続けていたのかそれなりの実力は保っているようだった。
以前のような二軍のユニフォームではなく、人数の関係上同じ一軍のユニフォームを渡された二人は特に個別練習の必要もなく、すぐにチーム練習に入ることが出来た。
「一乃先輩ッ!」
チーム練習の紅白戦、同じチームとなった一乃へ海音はパスを出す。二軍のキャプテンだった一乃は鮮やかなドリブルで天馬や信助を抜いていく。
「剣城!」
パスを受け、剣城は三国が待ち構えるゴールへやって来る。そしてボールを足で救い上げ、得意のあのシュートを放った。
「デスソード…ッ!」
だが、いつもに増して威力が無かった。
三国は拳に炎を宿し、剣城のシュートを思いきり地面に叩きつけた。
いつもは手応えがあるはずのシュートは、いとも簡単に三国の手に収まる。
「剣城どうした?シュートの威力が悪いぞ?」
「…すいません…」
剣城は言った。その声すらも弱々しい。
帝国戦以来、今までの態度を改め先輩に敬語を使うようになり刺々しい言葉も減ったが、剣城にしてはらしくない。
よく見ると剣城は顔色も悪く、先程まで白かった肌が火照って赤くなっていた。
「おい剣城…大丈夫か?顔が赤いぞ」
「無理はしない方がいい、休めよ」
神童や霧野はそんな言葉を投げ掛けるが、剣城は首を横に降り、続けます…と言って聞かなかった。
恐らく風邪が悪化したのだろう。海音は罪悪感に苛まれながらも剣城に近づいた。
「ごめん、ボクのせいで…」
「だから俺は平気——」
剣城は最後まで言えなかった。海音が最後まで言わせなかった。
言いきる前に海音は剣城の両肩を掴み、自らの額を剣城の額に当てた。
「なッ…!?」
「やっぱ熱ある…、どう?冷たい?」
「はッ…離せよ…ッ!!」
剣城はさらに顔を赤くし、海音から離れた。確かに海音の額は冷たかったが、そういう問題ではない。
だが海音は至って普通だった。そして表情を変え、悲しそうに剣城を見る。
「え?嫌だった…?」
「ちっ…違う!違うが…その…ッ」
「剣城照れてる〜」
「松風エェェェ!!」
「リア充…」
円堂もこっそりと呟いた。
結局剣城の熱は更に上がってしまい、強制的に天馬と霧野により保健室送りになったのは言うまでもない。
* * *
「剣城大丈夫かな〜…」
「……」
天馬は鈍感この上ない親友を見つめた。無意識のうちに剣城の理性を試すとは、海音はある意味すごい逸材なのかもしれない。
二人が要るのは河川敷のベンチの上だった。練習が終わり、部活帰りに二人で河川敷に寄っていたのだ。
本当ならサッカーの練習をしに来たのだが、この頃まともに休んでいないため疲れが溜まっており、ジュース飲みながら話してから練習しよう!という天馬の意見を採用することとなった。
二人が手に取っているのは、近くの自動販売機に売っていた炭酸飲料。夕方が近いためそこまで気温は高くないが、暑い日にはうってつけの飲み物だった。
「あー…。この飲み物考えた人、きっと夏が嫌いなんだろうなあ…」
「カゲロウデイズと同じこと言わないでよ天馬…。てか今はまだ夏じゃないよ?」
正確に言えば、春と夏の中間と言ったところだろう。春ほど涼しくないし、夏ほど暑くもない、かなり中途半端な時期だ。
「…海音」
「なに?」
「そろそろさ、話してくれてもよくない?」
天馬に言われ、海音はペットボトルから飲料を飲むのを中断する。そして驚いて天馬を見つめた。
「な、何を…?」
「浜野先輩の事。…知ってるんでしょ?」
「………」
やはり天馬には全てお見通しか…海音は観念したようにそう思った。天馬はにっこりと笑う。
今日は結局、突然の一乃と青山の復帰に流されて神童も浜野に聞けず終いとなったので、なおさらだろう。
だが、易々と言ってしまうようではダメだと海音は思った。約束だから…三人での。
「…ごめん、今は…言えない」
「そっか…じゃあ話せるときに話してね」
天馬は問いただす事もなく、あっさりと諦め飲料を飲んだ。恐らく自分を信用している故に出来る行動なのだろう。
感謝の気持ちを募らせながら、海音も飲料を一気に飲んでしまった。
そういえば…と天馬が話し出し、海音は天馬を横目で見る。
「俺さ、もう少しで化身出せそうなんだ!」
天馬は嬉々として言った。だが海音の方はまだ一向に出せる気配がない。
…どうしてなんだろう。
「よーし!じゃあ特訓するか!絶対化身出すぞ〜!!」
そう元気よく天馬は言いながら、両腕を思いきり振り上げベンチから立ち上がる。元気いいな…そう思ったのもつかの間だった。
「…あれ?」
天馬は右手に持っていた、炭酸飲料がまだかなり残ったペットボトルが消えているのに気づいた。そしてバシャン!という液体の音。
嫌な予感がしながら、海音と天馬は後ろを振り返る。嫌な予感は見事に的中していた。
天馬の炭酸飲料は後ろにいた少年の頭に盛大にぶちまけられ、少年の髪やら学ランやらはびしょびしょになっていた。
少年の足元には、さっきまで炭酸飲料が入っていたペットボトルが転がっている。
「うわああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
海音と天馬の悲鳴というか絶叫が河川敷全域に響き渡る。そして二人はすぐさま少年に駆け寄る。
「だっ…だだ…大丈夫ですかっ!!?」
「なに…しやがんだ…」
少年は黒い液体を髪からポタポタ滴らせながら言った。怒っているのかよくわからない声だ。
海音は少年をよく見てみて目の色を変える。その少年は、朝に会ったあの少年だった。
「な…浪川さん!?」
「え、海音知り合い?」
「うん…海王学園の…」
「海王学園ッ??!」
「…ベトベトする…」
「うわああ!!て…天馬どうするの!?」
「仕方ない…、すいません取り合えず俺の家に…」
この事が知れれば、明日は部員全員から説教を食らうだろう。敵選手にジュースをぶちまけるなど、宣戦布告しているようなものだ。
天馬は自分のドジさに呆れ返りながら、浪川と呼ばれた少年の手を引いて走っていった。
- Re: 【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜 ( No.201 )
- 日時: 2013/06/04 21:41
- 名前: 風龍神奈 (ID: BauHa9/Q)
>翔也
それは、このイナスト関係?
神奈「まずそこが分からないとなぁ」
癒月「…私的には海音くんイベントがi(神奈「いけしゃあしゃあと出てきてリク言わない」
癒月「神奈酷い。人がリクエスト言ってたのに…」
神奈「…何で意見防がれたからって、泣くの!!」
癒月「神奈にいじめられたから」
神奈「嘘泣きでしょ? どうせ」
癒月「…ちっ」
剣城「…お前も嘘泣き得意だったのか」
癒月「そういう剣城も、嘘泣き得意じゃないの?」
剣城「お、俺は違う!!」
神奈「ボカロしか読まない剣城さんー♪」
剣城「神奈、変な歌を歌うな」
うーん…
とりあえず考えてみるよ☆
皆頑張れ!!
- 第65話 ( No.202 )
- 日時: 2013/06/22 22:01
- 名前: 時橋 翔也 (ID: Y4EbjjKp)
取り合えずジュースまみれになった学ランは洗濯乾燥機に放り投げ、きれいになり乾くのを待つ羽目になった。
敵選手にジュースをぶちまける体験をするのはきっと自分くらいだろう…天馬は本気でそう思った。
「はあ…。キャプテンにバレたらとんでもない説教が…」
「だっ、大丈夫だよ!この事は言わないでおくから!」
本日だけで二つも秘密をつくってしまい海音はため息をつくが、まるで神様を見るような目で天馬に見つめられてはなにも言えない。
天馬の住む木枯らし荘には現在、食堂のテーブルに座る海音と天馬、ただいまシャワーを浴びている浪川の三人しかいない。
木枯らし荘の管理人である秋は今日、用事があるため夜まで戻らないらしい。逆に二人にとってはありがたかった。
「…借りるぞ、この服」
すると向こうのシャワールームから浪川がやって来た。天馬から借りたジャージを着て長い髪をタオルでふいている。天馬は申し訳なさそうに浪川を見た。
「本当にすいませんッ!ごめんなさい!」
「いや、もう気にしてないが…」
そんなに謝られては、浪川もどう反応していいのかわからない。今日学園を大遅刻し先生に説教を食らった揚げ句、こうしてジュースをぶちまけられた。自分の運の無さにため息が出てくる。
「…浪川さん、どうしたんですか河川敷で…」
「……偵察…」
「偵察!?」
海音と天馬は同時に声を上げる。偵察と言われれば黙っていられない。
「別に何も見てねぇよ…安心しな」
「よかった〜」
「いや、簡単に信用していいの?」
「宣戦布告したお前が言うな」
レインに指摘され天馬は何も言えなくなる。確かにある意味言えているだろう。
すると突然、腹が鳴る音がした。海音は天馬を見つめると、天馬はあっ…という顔をしている。
「お腹空いたな〜、ごはん作るか」
「天馬作れるの?」
海音は訊ねる。ある意味それは知りたいところだ。
だが、途端に天馬は無言になる。
「………」
「…天馬?」
「俺…料理…出来ないよ…」
「………」
しばらくの沈黙が訪れる。実を言うと海音も料理は全然できないので、いつもはレインに任せていた。
おかしな親近感が芽生えるなか、仕方ねぇ…と浪川が口を開いた。
「じゃあ俺が作ってやる、これでも料理は得意だしな」
「ええ!?でも…悪いですよ…」
「気にすんな、…シャワー借りたし」
ジュースぶちまけたのはこちらなのでシャワーを貸すのは当然だと思うのだが、そんな意見は聞かずに浪川はキッチンへ向かった。そして天馬を振り返る。
「冷蔵庫のやつ、勝手に使っていいか?」
「あ…はい!もちろん!」
天馬が言うと、早速浪川は準備を始めた。そんな光景を目の当たりに、天馬は海音に小声で話しかける。
「シードって…いい人もいるんだね、もしかしたらアールかな?」
「うーん…どうだろ」
夜桜のようなフィフスを憎んでいる雰囲気は感じられない。むしろフィフスを好んでいるようにも見える。
ともあれ、今目の前にいるシードがいいやつだと言うのは紛れもない事実だと二人とも納得していた。
* * *
こうして他の人のために料理をするのはいつ以来だろう。まあそれがまさかもうすぐ戦う事となる敵選手だと知れたら、野郎共の事だ、自分にちょっかいをかけてくるだろうな…。そう思うと包丁を動かしながら自然とため息が漏れる。
もしかしたら、監督に知れたら説教を食らうかもしれない。
「………」
言えない、絶対死んでも言えない。敵と仲良さげにしていたなんて…。そんなこともお構いなしに、二人はこちらを期待した目で見てくる。
———だがそんな二人を見ていると、施設でのあいつらを思い出した。
かつての友であり、仲間だったあいつらを。
「…出来たぞ」
浪川がそう言って海音と天馬の前に置いたのは、よく食べているカレーだった。空腹だった二人はその見た目と匂いに食欲をそそられる。
「やったカレーだ!」
「じゃあ…いただきまーす…」
天馬は嬉しそうにカレーを頬張る。空腹のせいか腕がいいのか、カレーは申し分なく美味しかった。
「このカレー美味しい!」
「…ほんとだ…」
「即席じゃなかったらもっと良かったが…」
そんな言葉を交わしながら、三人はカレーを頬張っていく。シードとこうして普通に話しているという概念など、どこかに行ってしまった。
「もう六時か…、野郎共心配してるかな…」
「す、すいません…( ノД`)…」
「いやいや!別に気にしてない!気にしてないから泣き目になるな!」
泣き出しそうな天馬に向かって浪川は焦りに焦る。泣かれてはどうしようもない。
「でもそろそろ乾く頃じゃない?」
海音は洗濯乾燥機がある方へ目を向ける。即行モードなので案外すぐに完了するはずだ。
お代わりも何度かして、ものの数分でカレーは鍋ごと平らげた。にしても天馬がよく食べたな〜と海音は思った。
「こんな美味しいカレー食べれるならシードになってもいいかも」
「何を言うかバカ者」
「いつでもうちは選手歓迎するぞ?お前らみたいなのは特にな」
冗談半分で浪川も言ってみる。すると天馬は思いきり首を横に振り冗談です!と言い切った。まさかカレー美味しかっただけでシードになるものは居ないだろう。
くくっ…と海音が笑みを溢した、その時だった。
木枯らし荘のインターホンが何者かによって鳴らされた。
「あれ、誰だろ…」
「………」
海音は何か嫌な予感がした。するとドアの向こうから声が聞こえてきた。
「天馬ーいるかー?」
途端に海音と天馬は顔を見合わせ、凍りついた。神童キャプテンだ!!
「ちょっ…どうするの?」
海音は言った。敵選手と仲良く食事をしていた等と知れたら、どういうことだ?と問いただされてしまう。
結果、浪川にジュースをぶちまけた事がバレて、大説教……。
「松風ー、忘れ物届けに来たぞ」
その声を聞いて、さらに二人は凍りつき冷や汗が垂れる。紛れもなく剣城の声だ。
どうやら雷門の中で、最も知られてはならない二人が来てしまったようだ。
せめて信助や、霧野だったらよかったのに。
「仕方ない…、海音は浪川さんと隠れてて、俺が出てくるから」
「わかった…、てか天馬、何忘れたの…?」
「そんなのわからないよ…」
天馬はしょげた声でそう言い、食堂を出て玄関へ歩いていった。
取り合えずこちらへ来て、浪川を見られなければいいのだ。海音は浪川を見つめる。
「浪川さん、声出さないでくださいね…」
「……わかった」
威圧感に圧され、浪川は首を縦に振った。もし見られたら、海王学園にまで知られかねない。
本当に今日は災難だ。
ドアの鍵を開け、天馬はドアを開く。そこに立っていたのはジャージ姿の神童と剣城。
「天馬、これ忘れてたぞ」
すると神童は手に持っていたサッカーボールを天馬に渡した。少し汚れていて使い込まれたそれは、河川敷に忘れていた天馬の私物だった。
「あ、忘れてた…ありがとうございます!」
恐らく二人も河川敷で練習していたのだろう、天馬はそう察しながらボールを受け取った。
すると剣城は木枯らし荘の中を覗くように天馬の横を見てみた。
「松風…誰かいるのか?」
ギクリ!と天馬の中で何かが音を立てた。本能的に天馬は首を横に激しく振る。
「いや!俺一人だよ!今日は秋姉もいないし…」
「じゃあ何で靴が三人分有るんだよ」
さらりと剣城はそう言い、玄関に置かれている靴を指差した。天馬の分とあと二人分、靴が置かれている。
まずい、これはまずい。今だかつてない危機に天馬の冷や汗はだらだらと出てくる。
「こ…これは使ってない靴だよ!うん!」
「にしてはきれいだが…」
「とにかくありがとうね!また明日!」
天馬は無理矢理話にピリオドを打ち、二人の言葉を聞かずにドアを閉めた。完璧に怪しまれただろう。
「おつかれ〜…」
食堂に戻ってくると、海音は天馬に言った。剣城の勘の鋭さに、三人の心臓の高鳴りは最高潮だった。
「し、死ぬかと思った〜」
「剣城あの野郎…今度覚えてろ」
「天馬よく頑張ったね…」
三人は顔を見合わせる。焦りはしたものの、自然に笑顔が溢れていた。
すると向こうからピーという音が聞こえてきた。洗濯乾燥機の音だ、乾燥機が終わったのだ。
「じゃあ俺着替えてくる…」
浪川はそう言い、洗濯乾燥機があるシャワールームの近くへと歩いていった。
姿が見えなくなると、海音と天馬は顔を見合わせた。
「…とりあえず、今日のことは誰にも言わないでおこうか。余計な誤解招いたら嫌だし」
「そ、そうだね…。でも…浪川さんいい人だよ?」
「まあ…そうだけど…」
海音がそう言うと、数分経たずに学ランに着替えた浪川がやって来たのが見えた。学ランが黒かったお陰か、特にシミも見当たらない。
「じゃあ世話になったな雷門の」
「あ…いえ!こちらこそすいませんでした!」
天馬が言うと、すぐさま浪川は木枯らし荘から出ていった。しばらくの間二人は沈黙する。
「…なんかすごかったね…」
「うん…」
もしかしたら今日の事を、一生忘れないかもしれない。
そう思った二人だった。
- 第66話 ( No.203 )
- 日時: 2013/06/22 22:03
- 名前: 時橋 翔也 (ID: Sr8Gveya)
気が付くと、海音の目の前には見覚えのある光景が広がっていた。
シュウが住んでいる、あの神秘的な森だ。
「…あれ…いつの間に寝たのかな?」
そもそもこれが夢なのか定かではないが、ここが現実なのか夢なのかわからない以上、夢と仮定しておくしかない。
シュウの姿が見えず、海音は辺りを見回す。すると向こうにある大きな樹の近くに人影が見えた。この場所で自分以外の人影と言えば一つしかない。
「シュウ!」
海音は嬉しそうにシュウに近づく。
その事に気づき、シュウは海音の方を向いた。
「海音…」
あまり近づいた事が無かったため気付かなかったが、大きな樹の側には珍しい形のお地蔵様が置かれていた。ボールのような球体を頭に乗せ、何かを祈っているようにも見える。
シュウはそのお地蔵を見つめていた。どこか悲しそうに。
「シュウ…これは?」
「このお地蔵様は、この島の守り神と言われているんだ」
シュウは答えた。守り神…。
「へぇ〜…でも何で頭にボール乗せてるの?」
「この島には、古くからサッカーみたいに玉を蹴りあう競技があったんだ」
「じゃあこれはサッカーボール?…サッカーの神様だね」
海音は言った。サッカーの神様がこの島の守り神…、何か不思議な感じだった。
するとシュウはさらに悲しげな表情をした。昔を思いだし、それを悔やむような瞳だった。
「そうだね…でもこの島ではサッカーで大事な事を決めてた。村のリーダーとかね…。だから僕も昔からボールを蹴ってた」
「だからシュウはサッカーが上手いんだ…」
サッカーで大事な事を決める…すなわちサッカーの強さが人の価値を決めるのだ。
だからこそシュウは強くなる必要があったのかもしれない。
———フィフスセクターと同じだ…。
海音は少し寂しげにそう思った。
あ、そうだ…とシュウは立ち上がった。
そして海音を見つめる。
「そう言えば君に約束したね…。人が化身を持つようになるわけを教えるって」
「あ…忘れてた」
シュウに言われ海音も思い出す。強くなりたいという思いが化身を作り出す、それは二番目だと言っていた。
じゃあ、最も大事なのは何なんだ?
「シュウ何なの?人が化身を持つ理由って…」
「………」
シュウは一呼吸置き、海音を見つめる。そして答えた。
「———人が化身を持つための一番の条件。それは……過去に大切な物を失っていることさ」
「え…?」
海音は頭が真っ白になる。意味が理解できない、したくない。過去に大切な物を失っていること、それが…化身使いになるための条件?
「シュウ…それって…」
「そのままの意味。だから化身使いはどんな形であれ、過去に何かを失っているんだ」
ということは逆に、化身使いになるためには自分の大切な物を失わないといけないのか?
そんなの…残酷すぎる。
「大切な物を失えば、人の心には穴が開く。その穴を埋めるために化身が生まれるんだよ…、これが化身の真実。まあ化身程度では穴を完全に塞ぐことなんてできないけどね」
淡々とシュウは言葉を紡いでいく。
途端に視界がくらみ始めた。
「…この事実をどう受け止めるかは、君次第さ」
そのシュウの言葉を最後に、
海音の意識は完全にそこで途切れた。
* * *
「——い、起きろ!海音ッ!」
思いきり揺さぶられる感覚と共に、海音は目を覚まし顔を上げた。どうやら教室の机に顔をうずめて寝ていたらしい。
横を見てみると、改造制服の剣城が立っていた。風邪は治ったようで、顔色も悪くない。
「…剣城…」
「もう部活が始まるぞ、いつまで寝てんだよ」
剣城は呆れ顔でそう言った。海音はまだ目覚めきっていない目をこすり、椅子から立ち上がった。
思考が完全に回復していなくても、シュウの言っていた事はハッキリと思い出せる。
———過去に大切な物を失っている、それが化身使いになる条件。
この事は天馬に話すべきか?
…いや、やめておこう。余計な混乱を招きそうだ。
「………」
「…海音ほら行くぞ、もう部活始まる」
「……うん」
海音は頷き、剣城と共に誰も居なくなった教室を出ていった。
「…ねぇレイン、君は知ってたの?化身が過去に大切な物を失っていないとつくれないこと」
剣城と廊下を歩きながら、海音はレインに問いかけた。しばらくレインは何も言わなかったが、答える。
『ああ、わかっていた』
やっぱり。海音は特にレインを攻めることはなくそう思った。
そして海音は剣城の方へ目を向ける。剣城は何となくわかる、優一の足だろう。
だが神童は?化身を出せるということは何かを失っているのだ。
———いや、考えるのは止めよう。考えれば考えるほど深追いしてしまう。
すると海音の少し前を歩いていた剣城は海音を振り返った。
「お前、誰と話してるんだ?」
「え?あ、いや…独り言だよ」
海音は笑ってごまかした。
剣城は少し訝しげに海音を見たが、…そうかと言うと再び前を向いた。
二人が歩いている時だった。
「…あ、二人とも」
声がして二人は一度立ち止まり、横を見ると、向こうの通路から霧野と神童が歩いてくるのが見えた。
「霧野先輩…キャプテン…」
「お前らもまだ部活行ってなかったんだな」
二人を交互に見ながら神童は言った。
「先輩方はどうしたんです?」
「図書室掃除だったんだ」
霧野は剣城に苦笑する。すると神童は少し真剣な顔で海音の方へ目を向けた。
「なあ海音、お前——」
だが神童の言葉はそこで途切れた。
いきなり、不可解な映像の羅列が神童の頭の中に流れ込んできた。
「え…?」
木造の部屋の中で、二人の少女の姿が見えた。青い長い髪を二つにまとめた少女と、きれいな栗色の髪を前で一つにまとめた少女。青い髪の少女は大体六歳ほどで、栗色の髪の少女は神童より年上で十六くらいだ。
栗色の髪の少女は部屋の中の、窓の隣にあるベッドの上に寝ていて、青い髪の少女はベッドの前の椅子に座り少女の右手を握っている。
…いや、栗色の髪の少女はすでに亡くなっていた。恐らく青い髪の少女がそれを見届けたのだろう。
『…莱瑠、亡くなったの?』
すると部屋の中に別の女性が入ってきた。二十代前半の若い女性で、黒い髪を腰辺りまで伸ばしている。
莱瑠というのは、きっと亡くなった栗色の髪の少女の名だろう。
『うん…、莱姉死んだよ…』
青い髪の少女は背を向けながら言った。俯いているのがわかった。
そして少女は女性を振り返る。窓からの逆光で顔はあまり見えない。
『ねぇお母さん…、私も…こんな風に死んじゃうの?私も…莱姉みたいに、大人になれずに弱って死んじゃうの?』
恐怖と悲しみが鮮明に伝わってくる。
母と呼ばれた女性は涙を流していた。そして一言、娘に
『ごめんね…』
それしか言えなかった。
「———神童?」
突然涙を流し始めた幼馴染みを前に、霧野は驚きを隠せなかった。いきなり泣き始めるなど、いくら泣き虫の神童でも今までになかった事だ。
呼んでも微動だにしない。異常事態だと感じた剣城は、神童の両肩を掴んで思いきり揺さぶった。
「キャプテン!しっかりしてください!」
「あ……」
すると神童は我に返り、目を見開き剣城を見つめた。
「剣城…?」
「大丈夫ですか?」
海音も心配そうに神童を見つめる。剣城の時みたいだ…と海音は思った。
神童はたった今流れ込んできた映像の羅列が忘れられない中、右手で涙を拭いた。何故泣いたのか自分でもよくわからない。もしかしたらあの映像の影響を受けたのかもしれない。
そう考えた時だった。
「神童ッ!!」
海音が歩いていた通路の向こうから声が飛んでくる。そしてこちらへ走ってくる先輩ストライカーの姿があった。
「倉間先輩…?」
何故倉間がここに?海音の疑問など知りもせず、倉間は神童の前まで走ってきては荒く肩で息をした。どうやら相当急いで走ってきたらしい。
「倉間どうしたんだ?そんなに慌てて…」
「大変なんだ!今すぐ第二グラウンドに来てくれ!」
倉間は言った。驚いて四人は倉間を見つめる。
「どうしたんだよ倉間…」
訊ねる霧野や三人に伝えるべく、倉間は今の現状を口にした。
「フィフスセクターが来たんだ…!」
- Re: 【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜 ( No.204 )
- 日時: 2013/06/23 22:07
- 名前: 時橋 翔也 (ID: Z6SnwTyI)
神奈へ
出来ればイナスト関係がいいな。でも基本的何でもOK!
海音「…で、何か考えたの?」
翔也「いくつかは思い浮かんだよ。コメディやらシリアスやらホラーやら…。コメディではサッカー棟に『あの虫』が現れたり」
天馬「あの虫…それってゴK(剣城「その名を口に出すな!(ガクブル)」
翔也「…みたいな感じで、イナズマキャラなら何でもいいよ!聖歌の話でもなんなりと!」
海音「ってことでリクエスト、待っているぞ」
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