二次創作小説(紙ほか)

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【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜
日時: 2013/07/17 22:12
名前: 時橋 翔也 (ID: FMSqraAH)
プロフ: また…つくってしまった

 こんにちは! 銀河一の駄作者 時橋です!

☆旧紙ほかで連載していた雷門の蒼きストライカーのリメイク小説です
設定等に付け足しや変更が少々ありますが、人間関係は変えるつもりはありません

☆文章の構成を変えました、わかりやすく説明と描写をたくさんいれましたが、さらに読みにくかったらすいませんm(__)m

 イナゴ第三弾!今回はオリキャラが主人公です!

¢注意!

・恐ろしいを飛び抜けた駄文 ←(超超超重要)
・アニメあんま見たことないので色々おかしい
・アニメと言うよりゲーム沿い そしてオリジナル要素がある
・更新遅し
・荒らし&悪口は禁止 それ以外のコメントなら大歓迎
・キャラ崩壊がヤバイ
・十%コメディ九十%シリアスです
・ネタバレあるので、そういうのが嫌いな人は目次のみ見ることをおすすめします ←(超重要)
・前作と変更かなりありますが指摘しないでね ←(超超重要)

これらが許せる方はどうぞ


 ☆お客様☆

・ARISA 様
・葉月 様
・素海龍 様
・風龍神奈 様
・リア 様

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 これは、とある少女のお話。
 歴史の中では決して語られなかった、もうひとつの『物語』。


 †目次†  


 プロローグ>>1

*第一章「蒼きストライカーの出現とホーリーロード」

 @Ⅰ〜変わり果てたサッカー編〜
第1話>>2 第2話>>5 第3話>>6 第4話>>7 第5話>>12 第6話>>13 第7話>>14 第8話>>15 第9話>>16 第10話>>22 第11話>>25 第12話>>30 第13話>>32 第14話>>34
 afterword>>53
 @‖〜雷門を照らす太陽編〜
第15話>>37 第16話>>48 第17話>>49 第18話>>50 第19話>>57 第20話>>62 第21話>>65 第22話>>66 第23話>>72 第24話>>76 第25話>>83 第26話>>85 第27話>>86
 afterword>>87
 @Ⅲ〜復讐の灯火編〜
第28話>>88 第29話>>89 第30話>>93 第31話>>99 第32話>>102 第33話>>105 第34話>>108 第35話>>113 第36話>>114 第37話>>117 第38話>>120 第39話>>128 第40話>>129 第41話>>130 第42話>>131 第43話>>132 第44話>>133 第45話>>136-137
 afterword>>138
 @IV〜過去に縛られた戦士編〜
第46話>>139 第47話>>140 第48話>>143 第49話>>147 第50話>>148 第51話>>151 第52話>>156 第53話>>159 第54話>>160 第55話>>163 第56話>>166 第57話>>169 第58話>>176 第59話>>177-178
 afterword>>179
 @Ⅴ〜革命を起こす二つの風編〜
第60話>>185 第61話>>190 第62話>>193 第63話>>194 第64話>>200 第65話>>202 第66話>>203 第67話>>205 第68話>>207 第69話>>215 第70話>>216 第71話>>217




*【番外短編集】

 作者の気まぐれ。本編と関係があるかもしれないし、ないかもしれない。暇なときにどうぞ。

[♪誕生日企画♪〜バースデー大作戦〜]
 五月二日、この日は登場機会が少ない海音の兄、直矢の誕生日。
 >>171-172

第61話 ( No.190 )
日時: 2013/05/24 21:08
名前: 時橋 翔也 (ID: jZi4txmM)


 お前はいつも側にいてくれた。

 クラスでもグラウンドでもサッカーしている時も、いつも一緒だった。

 俺に近づく者は誰も居なかった。近付いたら殺されるとか勝手に噂されて、周りからも裏切られるのを繰り返して…それでもお前は違う、そう思ってたのに…ッ!!

 なんでお前は俺を見捨てたんだ?
 どうして俺から離れていったんだ?

 信じてたのに…。なんでなんでなんでッ!!

 俺が悪かったなら謝るから…だから…。



 ———もう、一人にしないで…。
  一人は嫌なんだ…。



 * * *



 夜七時を過ぎた空は曇り空で、今にも雨が降りだしそうな空模様だった。そう言えば今日の天気予報でもどしゃ降りだと言っていたな…、海音はそんなことを考える。

「…ダイヤモンドショット!」

 誰も居ないがら空きのゴールに氷のシュートが突き刺さる。病院の近くにあるこの広い公園は、海音のお気に入りの場所だった。サッカーゴールもあるしバスケットゴールも設置されている。

 レインがいうようにもうひとつ化身が使えるなら…そんな事を考えていた時だった。
 海音のジャージのポケットに入っていた携帯が音を鳴らした。電話だ…そう思い海音は携帯を取り出して電話に出た。

「もしもし?」
『もしもし海音さん?聖歌だよ』
 聖歌か…。海音は思いながら話を聞いた。
『あのね…夜桜さんに聞いてみたよ、海音さんが言っていた事件…確かにあったみたい』

 事件…。シード候補の少年達が次々と消えていく事件の事だ。聖歌は続ける。
『夜桜さんが訓練生の頃一度に一人か二人くらい、選手が行方知れずになることがあったらしいわ。…詳しくはわからないらしいけど、消えた選手達は誰も帰って来なかった』
 龍崎が言っていた通りだ。
 教官たちに強制的に連合されていき、帰ってくることは無かったと。

『…居なくなった選手達の特徴は…、訓練生としての成績があまり良くないことらしいわ…』
 成績があまり良くない、恐らくサッカーが上手くは無いのだ。…だがますます意味がわからない。
 何故フィフスは訓練生を拉致していったんだ?一体何の為に?

「ありがとう…夜桜にそう言っといて」
『わかった、…じゃあね』
 その言葉を最後に、聖歌の方から電話がブツッと切られ、ツーツーという音がした。海音は携帯をたたみ、ポケットにしまいこむ。
 今度雅野にも知らせるか…海音は思った。

 ふと海音はこの前開いてしまった足を見てみる。レインの手当てのおかげか殆ど傷は塞がり、今ではサッカーしても全く問題ない状態となった。

「…レインってさ、もしかして…ボクの中にいる前はどこかで生きてたりしたの?」

 海音は何となくそう訪ねてみた。レインが言っていた言葉やシュウの言葉を思い出しながら。
『…それは、お前が真実を知るべき時に話すよ』
 レインはそれだけを告げた。真実を知るべき時…意味はわからないが、いつかは話してくれると信じよう。

 海音はボールを拾い上げる、すると今度はレインが海音に訪ねてきた。
『じゃあ…俺からも聞くが、
   ———何故お前はサッカーをしている?』
「………」
 すると途端に、海音の身体に空から滴が降ってくる。それは瞬く間に雨となり、次第に勢いを増していく。

「ボクがサッカーをしているのは…好きだから——」
『違うな』
 海音の言葉をレインは遮った。
『お前は雷門に入学する前からサッカー部に入ろうと決めていた…。バスケ部は全く考えずな、…長年切ることも無かった髪をバッサリ切ったのも、女子だという理由でサッカー部に入れないことを恐れてわざと男子のふりをしているのだろう?』
「………」
 海音は俯く。すでに雨足は強くどしゃ降りで、蒼いきれいな髪から雨水が垂れる。


「…ボクがサッカーをする理由…か」



 * * *



「…降ってきたな」
 剣城は病院から出るとそう呟き、バッグの中から青い無地の折り畳み傘を取りだし広げる。
 天気予報を見ておいて正解だったな、と剣城は思った。雨に濡れたら大体次の日は風邪を引いて寝込むはめになってしまう。

 折り畳み傘で雨を避けながら剣城は歩き出した。昔から使っているこの傘だが、丁寧に扱っているため今だ現役だ。
 剣城はポケットから音楽プレイヤーを取り出そうとしたが、止めた。雨に濡れて壊れるのが嫌だった。

 それでも、雨は嫌いではない。
 自分の嫌いな月を隠してくれるから。


「…ボクがサッカーをする理由…か」


 そんな声が聞こえて、剣城は立ち止まり横を見る。病院を歩いてすぐのところ、人通りが少ない場所にある公園に人が立っていた。
 傘も持たず、俯いて雨に当たっているその人影は、剣城がよく知っている者だった。

「海音…?」

 あんなところで何をしているのだろう、それに雨に濡れて…。剣城がそんなことを考えてると、海音は上を向いた。
「…そうだな…『償い』、かな」
『償い、だと?』
 レインの問いに海音はうん、と頷く。

「あの日…死なせてしまった人が、恩人が好きだったサッカーをボクが代わりにすることで、償いになるとでも考えていたのかもしれない。…ボクのせいで、死んでしまったあの人への…それに約束したしね、サッカーを続けるって、その人と」

「……償い…?」
 剣城には海音のいう意味がよく分からなかった。だが何となく納得はした。
 海音がサッカーをやっている特別な理由、それはかつて死なせた人へ対しての償い。
 それだけで意味を伝えるには充分だった。

 すると途端に海音は地面に膝をついた。目の前がくらくらする。
「ヤバイ…貧血…」
『全く…無茶をするからだ』
 レインの呆れた声が聞こえる。万能坂戦、帝国戦共に血を流したのだ、貧血になるのも無理はない。

「なんか疲れたな〜ここで寝てもいい?」
『馬鹿者』
 海音の発言にレインは更に呆れ返る。まあこれも海音故の個性なのだろうか、レインはふとそんなことを考えた。

 その時、突然海音に雨が降り注がなくなった。代わりに大きな影が海音を包むように広がる。
「風邪引くぞ」
 声が聞こえて海音は上を見上げる。剣城が海音の上に傘を出して立っていた。
「あ、剣城…」
 海音はそう言いながら立ち上がった。

 海音は川にでも落ちたかのようにずぶ濡れで、服や髪が肌に張り付いていた。
「お前…傘無いのか?」
「うん、サッカーボールしかないよ」
「…ったく…」
 レインと同じく剣城も呆れ返り、海音に持っていた傘を手渡した。

「これ使えよ、俺は走って帰るから」
「え…剣城!?」
 海音の言葉も聞かず、剣城はすぐさま走り出した。雨に辺りながら、風邪引きを覚悟で。

「………」
 しばらく剣城の背中を見送り、渡された傘を見てみた。
『使っておけ、…アイツの気遣いだ』
「…そう、だね」
 海音は頷き、同じくずぶ濡れとなったバッグを拾い上げて歩き出した。

 でも剣城、大丈夫かな。

Re: 【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜 ( No.191 )
日時: 2013/05/24 22:36
名前: 風龍神奈 (ID: QPMsskdF)


 >翔也

 大丈夫だよ! 
 そっかぁ、大変なんだね。

神奈「てか、そもそも中間考査て何?」
癒月「そんな言葉、聞いた事無いなぁ〜。
  …ていうか、あんたも更新しなさいよ」
神奈「だった! 今日金曜日じゃん! しかも明日やたらとイベントあるし!」
癒月「…まぁ、頑張って。…応援ならするからさ…」
神奈「えっ、癒月今何て言った?」
癒月「別に、何にも」


 大丈夫だよ!
 最後の剣城が海音に傘を手渡すシーンあたりがすっごく良かった!
 もう二人とも可愛いww

 というか、上の第61話は、3分で打てたの?
 だとしたら、とっても早いんだね!
 羨ましいなぁ

 
 忙しいとは思うけど、高校もカキコも頑張って!!

Re: 【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜 ( No.192 )
日時: 2013/05/26 20:07
名前: 時橋 翔也 (ID: xhJ6l4BS)  


神奈へ

ごめんね、毎朝五時起きで…

翔也「考査っていうのは、簡単に言えばテストだよ」
海音「確か赤点取ればコンクール出れないんだろ?」
翔也「うん、そう。そして吹部の方々から冷たい目でみられる」
海音「まあ、頑張って」

いや、私の場合携帯のメモ機能に話をストックしておいて、それを張り付けているだけなんだよね←

ありがとう、頑張るよ!

第62話 ( No.193 )
日時: 2013/05/26 20:09
名前: 時橋 翔也 (ID: LCLSAOTe)


 昨晩のどしゃ降りもすっかり上がり、海音はいつも通りジャージ姿でアパートを飛び出した。水溜まりが道端に所々出来ている。
 今日は珍しく朝練が無いので、いつもより少し遅めだ。そのため通学路には同じ雷門の生徒達が歩いていた。

 決して大人数が歩いている訳ではない、だがいつもの静かな通学路に慣れてしまっている海音にとっては、違和感この上なく感じる。

「レイン…」
『どうした?』
「近道しようか、ボク良い道知ってるから」
 海音はそういうや否や、商店街に入らず近くにあった暗い路地へ進路を変えた。たまに海音が通っていた道だ。

『迷うなよ?迷って遅刻なんてアホな話はやめろよ?』
「しないよ、もちろん…」
 そう相槌を打って海音はスタスタと歩いていった。

 薄暗い路地は当たり前のように人が居らず、野良猫がそこら辺に居るのが見える。不良の溜まり場のような場所となっている路地を好んで通るのは、『力』を使える海音位なのだろう。
 少なくとも、次の瞬間まではそう思っていた。

「久しぶりじゃん、小学校以来?」

 声が向こうから聞こえた。見知らぬ声…海音は反射的に近くに積み上げられていた木箱に隠れ、向こうを除いてみた。
 そこには驚きの光景が広がっていた。

「浜野先輩!?…速水先輩まで…」

 恐らく普通に登校していたであろう二人は、雷門とは違う学ランを着た少年四人に囲まれていた。不良、とまではいかないが、四人は並々ならぬ雰囲気を漂わせ二人を見ていた。

「は…浜野くん…ッ」
 四人に怯え、浜野の右腕にしがみつきながら速水は言った。浜野はじっと四人の少年を見つめている。
「…お前ら何の用?もう俺は…海王学園に関わる気はねーけど」
 いつもの軽い雰囲気とは打って代わり、浜野はそう言った。

 海王学園に…関わる?海音や恐らく速水の疑問もお構い無しに浜野達の話は進んでいく。

「そんな事いうなよ〜俺達同じ小学校だったろ」
 青いドレッドヘアーの少年は言った。軽い口調だが、内容は驚きのものだった。
「…にしても驚いたぜ、まさかお前のいる雷門が反乱なんてさ、…小学校の頃の管理サッカーに対する教育を忘れた?」

 意味がわからない。
 浜野は元々海王学園?管理サッカーに対する教育?海音の頭はパンク寸前だった。

「なあ浜野、お前海王学園に戻ってこいよ」
 するとドレッドヘアーの少年の後ろにいた別の少年は言った。
「お前のサッカーセンスならすぐにレギュラー入りだ…それに、アイツも寂しがってたしな」
「……!」
 アイツという言葉に浜野は少しだけ反応する。途端に話を聞いていた速水は驚いて浜野を見つめた。

「え…浜野くん…。ど、どういうことですか?海王学園に戻ってこいよって…」
「………」
 声が微かに震えている速水に、浜野は何も言わず冷や汗を掻きながら俯いた。
 変わりに答えたのは、ドレッドヘアーの少年だった。


 「…あんたら知らない?浜野は…海王学園の小等部出身なんだぜ?」


 海王学園…小等部?
 確かに海王学園は小中一貫校だと聞いたことがあるが、浜野が…その小等部出身?

「え…浜野…くん…?」
「………」
 嘘だと言って欲しかったのかもしれない。だが浜野は青ざめながら冷や汗を掻いている。もう、真実か否かは一目瞭然だった。
「そんな…浜野くん…」

 だが、海王学園出身だと言っても、浜野は海王学園と関わりを持たないようにしているようだ。
 スパイというわけではない、なのに…驚きを隠せなかった。

「…所でさ〜、そこに隠れているのも、同じサッカー部員?」

 ドレッドヘアーの少年はそう浜野に問いかけながらこちらを見てくる。途端に冷や汗が出始めた。ヤバイ、見つかった…。
 離れようとした海音は突然腕を掴まれる。振り返ると、いつの間にか移動していたのかドレッドヘアーの少年がいた。

「女…?」
「…ッ!」
 離れようとするが、以外と力が強く離れられない。海音の姿を確認したのか浜野の驚きの声が飛んでくる。
「海音ッ!!」

「へー…、雷門って女子も入れるのか」
「おい湾田!海音を離せ!」
 浜野は叫ぶ。湾田と呼ばれた少年は浜野と海音を交互に見る。
「海音…って事は君?今フィフスセクターのブラックリストに登録されてる雪雨海音って」

「…名前は合っています」
 少し警戒をしながら海音は答えた。ふーん…そう言うと、湾田は海音の腕を引いて仲間や浜野達の近くに戻ってくる。
「や、やめてください!海音くん…」
 速水は必死に湾田に訴えるが、湾田はきれいにスルーした。そして驚きの言葉を放った。

「浜野が戻る気無いなら…君、海王学園に来ない?」

 湾田は海音に問いかける。海音はその意味が理解出来なかった。
「君強いし、レギュラーでエースストライカーの可能性もあるよ?」
「か、海音くんダメです!!」
 速水の声が聞こえた。だが海音の答えはもう決まっていた。

「…ボクは、雷門でサッカーしたいので…それは出来ません」

 すると湾田は海音の答えに笑みを溢した。
「そう言うと思った…。でもすんなり諦めるとでも——」
 言い切る前に、海音の腕を掴んでいた湾田のその腕を別の何者かが掴んだ。
「おいよせ、…ここで問題起こす気かよ」
 その者の姿を見て、浜野は目の色を変えたが海音は気づかなかった。

 いつの間に現れたのかさっきまでここには居なかった少年だった。青い鮫のような髪に細いヘアバンド、そして左目に長い傷がある。
「浪川どうして止めるんだよ…」
「もうすぐ学校が始まるぞ、…俺はキャプテンとして、部員を守る責任があるんだ」
 浪川と呼ばれた少年に言われ、しぶしぶ湾田は海音から手を離す。そして先に他の少年達と路地を出ていった。

 その様子を見届け、浪川は海音を見た。
「…うちの部員が申し訳ない事をしたな、湾田には気をつけておけ」
「あ…はい、ありがとうございます」
 海音がそう言うと、浪川はちらりと浜野を見つめた。どこか悲しそうに。
「……」
 だが何も言わず、湾田達を追って走り去ってしまった。どうやらあの人が海王学園のキャプテンなのだろう。

「海音くん大丈夫ですか!?」
 すると速水は海音に駆け寄る。外傷は無いようだが、なんだか心配だった。
「だ、大丈夫です…」
 海音は苦笑いで返した。自分でも大丈夫なのかわからなかった。
 どちらかと言えば、浜野の方が大丈夫なのだろうか。

「…浜野くん…」
 速水は少し悲しそうに浜野を見つめた。
「浜野くんさっきの話って…」
「…うん、本当さ」
 浜野ははっきりと言った。こちらを悲しそうに見ながら。
「俺は海王学園の小等部出身なんだよ、…フィフスセクターが運営する、海王学園のね」

「フィフスセクターが…運営?」
 海音が聞き返すと、うん…と浜野は頷いた。
「海王学園は元々、フィフスセクターが管理サッカーを推進させるために造られた学園なんだ、…小等部から管理サッカーに対しての授業もあって、中等部では自動的にシードの資格が貰える。…まあ俺は中等部に入らなかったから無いけど」

 シードの資格…。恐らく夜桜が言っていた訓練が修了したことと同じようなものだろう。
 だから海王学園は全員シードなのか…。海音は納得する。

「…ごめんね、今まで隠してて」

 すると浜野は二人に言った。酷く弱々しい笑顔で。
「知られて…孤立したく無かったんだよ」
「浜野先輩…」
 海音は呟いた。確かにこの事が知れれば、雷門の皆は浜野をスパイのように捉えてしまうかもしれない。

 だが浜野はただ、海王学園の小等部に居たと言うだけで、シードではないのだ。誤解を招いて仲間を失う位なら…、そう思い海音は決心し速水を見つめた。

「速水先輩…、この事は、皆には秘密にしましょう」
「え…!?」
 浜野は驚いて海音を見つめる。海音の言葉に速水も少し驚いたようだったが、了承し頷いた。
「そう、ですね…、…俺に言う勇気なんて無いし…たとえ浜野くんが海王学園出身だとしても…。
   ———俺の大切な友達だから…」

 速水は言った。あの気弱な速水がこんなこというなど、予想もしていなかった。
 でも、嬉しかった。
「…二人とも、サンキュ」
 浜野は言った。いつも通りの笑顔で。途端に二人も笑顔になる。

 すると打って代わり速水は海音を見つめた。
「ところで海音くん、女?って…?」
「ああ、ボクは女子なんです」
「え?(・_・?)」
「…てか遅刻三十秒前…」
「え?ちょ…(;゜0゜)」
「………」


 「ええええええええええええッ!!?」


 お決まりの二人の絶叫と共に、遅刻を知らせるチャイムの音が雷門から聞こえた。



「だからこんな遠くに来るなって言っただろオオオォ!!」
「責任取ってくれるんでしょ?キャプテン♪」
「湾田てめぇぇ…!!」
「あーあ、こっから学園まで戻るのにどんだけかかんだよ…」
「一時間目余裕で終わってるだろ、大遅刻だな〜」

 海王の少年達も余裕で遅刻したのは言うまでもない。

第63話 ( No.194 )
日時: 2013/05/29 22:31
名前: 時橋 翔也 (ID: 8keOW9sU)


「…やっぱりあったみたい、龍崎さんが言ってた事件」

 放課後、廊下の端に座りながら海音は電話していた。相手は以前電話の番号を教えてもらった雅野だ。
 聖歌から聞いた事件について、雅野にはあらかじめ話しておこうと決めていた。

『…龍崎先輩が言ってた事件…、でもますますわからなくなる。…何故フィフスセクターは選手を拉致したんだ?』
 雅野が言うのは海音も疑問に思っていた事だった。
 フィフスセクターが選手を拉致する意味が全くわからない。何か恐ろしい事でもしているのだろうか…。

 恐ろしい事…。そう言えば夜桜の仲間はフィフスセクターの超機密データベースを見てしまい、殺されたと言っていた。
 勘だが、ひょっとして…関係が…?

『…雪雨?』
 携帯の向こうから声が飛んできて、海音は我に返る。もしかしたら関係しているかもしれない…。
「雅野…これ秘密だよ?」
『どうした?』
「…ボクの友達、アールの一人何だけど…その人の仲間はフィフスセクターの超機密データベースを見てしまって…殺されたらしいんだ」
『殺された…!?』

 驚きを隠せない声がよく伝わってくる。海音はそれでも続けた。
「勿論、公じゃなく事故としてね…。そのデータベースと事件…もしかしたら関係があるんじゃないかな?」
 少しの沈黙、雅野が考え事をしているのがよくわかった。
『…確かに、可能性はあるな』

「データベースと事件…、レジスタンスに伝えるべきかな」
『…いずれは話さねばならないな、これはフィフスセクターが不正を犯している事だから。だが今はまだ危険だ、フィフスが重罪にまで手を染めているならなおさらな』

 今話してしまえば、もしかしたらレジスタンスの人たちはそのデータベースにアクセスしようとするかもしれない、そしてレジスタンスの皆までが…。
「…そうだね」
 海音は頷いた。もう少し調べを進めた上で、いつか円堂達に打ち明けよう。
 今はまだ、その時ではない。

 電話を切り、部活に向かうべく海音は立ち上がる。
 浜野が海王学園出身だと言うことは三人で秘密にすると決めた。余計な混乱を防ぐためにも、最善の策だと三人が見出だした答えだった。



 * * *



 海音が部室へやって来ると、すでに海音以外の部員が揃っていて、それぞれユニフォームへ着替えを始めていた。何人かは着替え終わり、準備体操を始めている。

「遅かったね海音…。珍しい」
「…掃除手伝ってたんだ」
 海音は天馬にそう言ってごまかした。電話の事は話さないでおこう。

 ロッカーの中からユニフォームを取りだし、ジャージを脱いで着替え始める。その隣では剣城が同じように着替えていた。
 だがいつものように、ぱっぱと着替えずやけにゆっくりだった。まるでだるそうに。
「剣城どうしたの?元気ないね…」
「…別に」
 剣城はそう言うが、元気が無いのは一目瞭然だった。

 もしかして…海音はあることを思いだし、剣城を見つめた。
「剣城もしかして…、昨日の雨で風邪引いたの?」
「はあ!?お、俺が風邪引くなんてあるわけないだろ!」
 剣城はそう言い、ユニフォームを着替え終わる。だが実際にいつも以上に白くなっている肌を見るからに、説得力は皆無だった。

「ごめんね剣城…」
「べっ、別に…風邪引いてねーし…」
「…熱あるぞ」
 いつの間にか霧野が剣城の額に手を当てながら言った。途端に剣城は顔を赤くして霧野から飛び退いた。
「先輩!何勝手に触ってんですか!」
「前にゴム貸してやっただろ?」
「うっ…(--;)」


「…なあ浜野、お前…俺達に話していない事があるんじゃないか?」


 部室にいた全員が、問いかけた神童と問われている浜野に視線を向けた。
 神童はすでにユニフォームに着替え終わり、丁度ユニフォームに着替え終わった浜野へ平然とした振る舞いだった。
「え…?ちょ…どーゆーこと?」
「教えてほしい、…お前と海王学園との関係を」
 神童は浜野の意見を聞かずに言った。焦りからか、浜野の頬に冷や汗が垂れる。

 勘の鋭い神童の事だ、次の対戦相手が海王学園だと聞かされた時の浜野の反応から、海王学園と浜野に何か繋がりがあることを察したのだろう。
 だがそんなことどうでも良かった。海音は周りに気付かれないように速水に視線を向ける。すると速水も海音にオロオロと視線を送っていた。

 浜野の秘密を守ると約束したのに…今神童という大きな壁が立ちはだかっている。
 沈黙と共に時間が刻々と過ぎるなか、海音は頭をフル回転させた。

 何か、何かきっかけさえあれば、この状況を打破できる…!

『…部室の外に誰かいるぞ』
「…え?」
 レインに言われ、海音が部室の入り口へ目を向けると確かに人の気配を感じた。謹白感のせいで気づかなかった。
 これなら…!考えるより先に口が動いていた。

「…誰かいる…」
「え…」
 海音の言葉に、部員達は次々と視線を部室の外へ向けた。その時。

 部室の外から何かが走り去る音がした。

「ひょっとして…フィフス?!」
「誰だろ…最近見られてる気がするけど」
 信助に続いて海音は呟く。そしてこっそり浜野へ、アイコンタクトを送った。

 それに気づいた浜野は途端に口を開いた。
「もしかしてフィフスセクターが俺達を監視してるとか?じゃあほっとけねぇ!」
「や…やめた方が…本当にフィフスセクターだったら…」
 浜野を煽るように速水もそう言った。すると浜野は追うという名目で部室を出ていった。
「俺達の革命はジャマさせねぇ〜!」

「おい浜野!」
 倉間は制止をかけるが、浜野はどうやらすでにサッカー棟を出ていったようだった。まだ話しは終わってないのに…。
 呆れながら神童もため息をついた。
「…俺達も行ってみよう」

 次々と部員達が部室から浜野や神童、そして人影を追って出ていく。
 二人しか居なくなった部室で、海音と速水はハイタッチした。

「助かりました海音くん…!」
「こちらこそ!ありがとうございます」

 まだ完全に危機が去ったわけではないが、取りあえずは安泰だ。
 そう考えながら、海音と速水も仲間たちを追って部室から飛び出した。



「…皆どこ行ったんでしょう…」
「………」

 海音と速水はサッカー棟から出ると一度立ち止まり、辺りを見回した。まずい、完全に見失った。
「…仕方ない!」
 そう言い、海音は『力』で辺りを探した。そこまで遠くはなく、すぐ近くの雷門校舎の横の駐車場だった。

「…あそこか!」
「ま、待ってくださいよ海音くん〜…あれ、海音『くん』?海音『ちゃん』?」
「『くん』でお願いしますッ!!」
 リンクを解き、走り出した海音は追いかけてくる速水にそう叫んだ。



 * * *



 雷門には人の出入りが多いため、それなりに広い駐車場が存在する。車が約三割止められた駐車場に海音と速水が追い付いた時には、部員達はさっきの人影の正体であろう二人の前に立っていた。
 部員達の後ろへやって来ると、速水は二人を見て口を開いた。
「あの二人…!」

「あの人達…」
 同じく海音も呟いた。

 見覚えがある。この前第二グラウンドで練習していた自分達を見ていた二人だ。
 入学式、黒の騎士団戦の後、フィフスセクターを恐れて辞めてしまった二軍の二人だった。
 きゃしゃな体つきと黒い髪をした青山と、サイドの髪が赤くなっている二軍のキャプテンだった一乃。話したことは無かったが、顔だけは覚えていた。

「…何で見てたんだ?」
 浜野は訪ねる。それはこの場の全員が疑問に思っている事だった。

 すると二人は申し訳なさそうに顔を見合わせた。そして青山がこちらを見てくる。
「…すまない、帝国戦を見てたんだ。お前達の本当のサッカーを」
「それを見て思った、俺達はサッカーが好きなんだって…」
 続けて一乃も言った。二人の目を見るからに、嘘は言っていない。


「じゃあ…サッカー部に戻ってきてくださいよ!ボク、先輩方とサッカーしたいです!」


 すると海音は後ろの方で嬉々として言った。部員や二人が驚いて見つめる中、海音は笑顔だった。
 二人は再び顔を見合わせる。本当はそれを頼みに来た…と雰囲気が物語っていた。

 それを悟ったのか、神童は真剣な顔で二人を見つめる。
「…フィフスセクターと戦うんだぞ?」

 他の部員達も同じく問いかけるような視線で二人を見つめた。だがそれでも、二人の答えは決まっていた。
「いいんだ。…もうサッカーが好きと言う気持ちに嘘はつきたくない」
 一乃は言った。

 その言葉を聞き、神童は綻んだように笑顔になった。
「…わかった よく戻ってきてくれたな」
 そして頷く。周りの部員達も、おかえり!待ってたよ!お願いします!と声をかけ始める。いつの間にか二人は部員達に囲まれ歓迎を受けていた。

 この人達…本当にサッカーが好きなんだな…。
 海音は思った。楽しそうな二人を見つめながら。


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