二次創作小説(紙ほか)

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【イナGO】〜雷門の蒼きストライカー〜
日時: 2013/07/17 22:12
名前: 時橋 翔也 (ID: FMSqraAH)
プロフ: また…つくってしまった

 こんにちは! 銀河一の駄作者 時橋です!

☆旧紙ほかで連載していた雷門の蒼きストライカーのリメイク小説です
設定等に付け足しや変更が少々ありますが、人間関係は変えるつもりはありません

☆文章の構成を変えました、わかりやすく説明と描写をたくさんいれましたが、さらに読みにくかったらすいませんm(__)m

 イナゴ第三弾!今回はオリキャラが主人公です!

¢注意!

・恐ろしいを飛び抜けた駄文 ←(超超超重要)
・アニメあんま見たことないので色々おかしい
・アニメと言うよりゲーム沿い そしてオリジナル要素がある
・更新遅し
・荒らし&悪口は禁止 それ以外のコメントなら大歓迎
・キャラ崩壊がヤバイ
・十%コメディ九十%シリアスです
・ネタバレあるので、そういうのが嫌いな人は目次のみ見ることをおすすめします ←(超重要)
・前作と変更かなりありますが指摘しないでね ←(超超重要)

これらが許せる方はどうぞ


 ☆お客様☆

・ARISA 様
・葉月 様
・素海龍 様
・風龍神奈 様
・リア 様

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 これは、とある少女のお話。
 歴史の中では決して語られなかった、もうひとつの『物語』。


 †目次†  


 プロローグ>>1

*第一章「蒼きストライカーの出現とホーリーロード」

 @Ⅰ〜変わり果てたサッカー編〜
第1話>>2 第2話>>5 第3話>>6 第4話>>7 第5話>>12 第6話>>13 第7話>>14 第8話>>15 第9話>>16 第10話>>22 第11話>>25 第12話>>30 第13話>>32 第14話>>34
 afterword>>53
 @‖〜雷門を照らす太陽編〜
第15話>>37 第16話>>48 第17話>>49 第18話>>50 第19話>>57 第20話>>62 第21話>>65 第22話>>66 第23話>>72 第24話>>76 第25話>>83 第26話>>85 第27話>>86
 afterword>>87
 @Ⅲ〜復讐の灯火編〜
第28話>>88 第29話>>89 第30話>>93 第31話>>99 第32話>>102 第33話>>105 第34話>>108 第35話>>113 第36話>>114 第37話>>117 第38話>>120 第39話>>128 第40話>>129 第41話>>130 第42話>>131 第43話>>132 第44話>>133 第45話>>136-137
 afterword>>138
 @IV〜過去に縛られた戦士編〜
第46話>>139 第47話>>140 第48話>>143 第49話>>147 第50話>>148 第51話>>151 第52話>>156 第53話>>159 第54話>>160 第55話>>163 第56話>>166 第57話>>169 第58話>>176 第59話>>177-178
 afterword>>179
 @Ⅴ〜革命を起こす二つの風編〜
第60話>>185 第61話>>190 第62話>>193 第63話>>194 第64話>>200 第65話>>202 第66話>>203 第67話>>205 第68話>>207 第69話>>215 第70話>>216 第71話>>217




*【番外短編集】

 作者の気まぐれ。本編と関係があるかもしれないし、ないかもしれない。暇なときにどうぞ。

[♪誕生日企画♪〜バースデー大作戦〜]
 五月二日、この日は登場機会が少ない海音の兄、直矢の誕生日。
 >>171-172

第70話 ( No.216 )
日時: 2013/07/17 22:05
名前: 時橋 翔也 (ID: EggErFJR)


 決勝戦は以前に開会式をしたホーリーロードスタジアムで行われるため、雷門サッカー部はキャラバンで移動していた。
「………」
 この試合の結果で、全国に行けるかが決まる。革命を終わらせない為にも、負けることは許されない。

『…結局、天馬は化身を出せなかったな』

 するとレインは言った。うん…と海音は頷く。
「でもきっと、天馬なら試合の中で出せると思うよ」
 サッカー部に入ったときから、天馬には限りない可能性があると海音は思っていた。自分とは違った可能性を。
「…ボクは、レインが居ないと何もできない。『力』も使えないし、幽体離脱も多分出来ない。ゴッド・アイだって、元々ボクの力じゃない」
『技をコピー出来るだろう』
 レインは指摘する。

 技をコピー、これは普通の人から見れば神のような力なのかもしれない。
 だが海音はこれが好きじゃないし、短所もある。
「…コピーして使っても、威力や完成度は本人には到底及ばない。このまえ剣城のデスソード使ってみたけど、ダイヤモンドショットの方がずっと威力あったよ」
 唯一、完璧に取得出来たのはエターナルブリザードのみだった。技との相性も良かったし、この技を気に入っていたのが理由だ。

 あと…と海音は付け足した。
「ボクは…コピーはあまり好きじゃない」
『…何故?』
「だってコピーしても、それはただ他の人の真似をしてるだけ。サッカーって努力して手に入れた自分自身の技で戦った方が楽しいから」
 海音は答えた。償いの為にしているはずのサッカーだが、楽しめているようだとレインは安心する。

「幽体離脱はわかるけど…何でゴッド・アイはリンク無しで出来るのかな?」
『…ゴッド・アイは本来サッカーの為の能力ではないからじゃないか?』
「え?じゃあ一体…?」
 海音が訪ねるも、レインはまた話すのを止めてしまった。いつもの『拒否権』とでも言うべきものかもしれない。はあ…と海音はため息をついた。

 長年一緒にいるレインだが、実際まだレインについて詳しくない。今までレインは自分を『化身』と名乗るだけでそれ以外は話してくれなかったのだ。
 しかしレインはある意味姉のような感じなので、特に問いただしたりはしない。昔親しかった姉のような少女の面影を、何となく映しているのかもと海音は思った。



 * * *



 ホーリーロードスタジアムに着くと、遠くからでも歓声がよく聞こえ、ギャラリーは満員のようだった。
 すでにユニフォームを来ていた雷門はベンチに集まり、試合が始まるまで話をしていたりした。向こうのベンチには海王学園も見える。

「…レン」
 浜野は向こうにいる親友を見つめて呟いた。必ず、思いを伝えないと。


 海王のベンチで一人、喜峰は携帯をいじっていた。青い携帯で、タッチパネルを巧みに操作していく。
「喜峰…何してんだ?」
 するとその事に気付いた浪川が喜峰に近づいてくる。喜峰は顔を見上げた。
「まあちょっと…ね?」
「…またアニメか」
「あたりです♪」
 このあと試合前なのに何してんだと浪川に蹴り飛ばされたのは言うまでもなく。


 相手は全員シードだ。今まで以上の強敵となるだろう。円堂は周りにメンバーを集めて真剣な顔つきでそう話した。
「だが、お前たちなら勝てる。…サッカーを取り戻す為にも、革命カゼを起こすぞ!」
「はい!!」
 メンバー達の返事がハモる。海音と天馬は顔を見合わせた。
「頑張ろうね天馬!」
「もちろん!」

 だが一体、最後のアールは誰なのだろうか。海音はそう思いながら海王学園の方に目を向けた、その時だった。
 ユニフォームのポケットに入れっぱなしだった携帯が振動した。メール?そう思い海音は携帯を取りだし開いて見てみる。
 メールだったが、差出人は以外な人物だった。

「…喜…峰?」
 確か海王の人だったな、と海音は思った。だが何故メールを?なんで自分のメアドを知っている?
 内容を見たとたんに、それは明らかとなった。

『最後のアールとして責務は果す。
 化身を完成させろ』

 喜峰がアール?だが疑う理由はないし、それなら夜桜からメアドを聞いた可能性がある。つじつまは合っていた。
「………」
 でも、そうしたらあの人は…———。

 悲しくなるが、海音は堪えた。必ず、助けるから…。
 化身と言うのは天馬の事だろう。そう考え海音は天馬を見つめた。
「天馬」
「どうしたの?」
 天馬は何も知らず尋ねる。どう説明したらいいか初めは戸惑ったが、海音は取り合えず事実を伝えることにした。



 * * *



「…サッカーに革命カゼが吹き始めた」


 森の中、一人で樹の近くのお地蔵様の隣に座り、空を見上げながらシュウは呟いた。
 すると小鳥がお地蔵様の上に止まり、シュウを見つめ話しかけるように鳴いていた。
「うん、…ちょっと友達の事を思い浮かべてた。女の子なんだけど、頑張りやでサッカーが上手いんだよ」
 小鳥と会話するようにシュウは言った。それに反応したのか、嬉しそうに小鳥も鳴いた。
 まるで言葉が通じているように。

 だが途端に、シュウの表情が険しくなった。どこか暗く、悲しげな目をしながら。


「……でも、サッカーは自由だとか管理だとか関係ない。


  ———サッカーは、強くないと意味が無いんだから」


第71話 ( No.217 )
日時: 2013/07/17 22:08
名前: 時橋 翔也 (ID: 4n3MlAWB)


 海音から話を聞き、天馬は自分のポジションへ立った。化身を完成させる、それが…革命の始まりを意味する。
 試合に勝ちたい。その為にも、化身を引き出さないと…。だがどうして化身は出てきてくれないのだろうか。

「…考えても仕方ない。今はとにかく集中しないと」
 天馬は自分に言い聞かせた。それと同時に、ホイッスルが鳴り試合が始まった。

 剣城からのキックオフ。海音はボールを貰い、ゆっくりと上がっていく。練習では化身を全く出せなかった。この試合で出せるのだろうか。
 そう思った時だった。

「——考え事なんてして良いのか?」

 素早く喜峰が海音の前に姿を表し、対応し切れなかった海音はボールを奪われる。やはりシードなだけあり、ずば抜けた力を持っている。
 とっさに振り返ると、喜峰が走り行く先には天馬と神童が立ちはだかっていた。

「……」
 この人が、最後のアール。
 だが今は敵だ、と天馬は言い聞かせ、ブロックするために身構えた。しかし。
「遅い!」
 そう言い、喜峰は高く飛び上がった。到底、ブロック出来ない高さに。
「なっ…!?」
 驚いて神童は声をあげ、振り返るが遅かった。ゴールへ向かう喜峰の足元には水飛沫が見えている。
 そして見え始めたトビウオと共に勢いよくゴールへ飛んでいった。

「フライングフィッシュ!!」

 三国は手から炎を出しながらシュートを止めるべく自身にスピンをかけた。
「バーニングキャッチ!!」
 炎の拳はシュートを止めるべくボールの上にのし掛かる。こちらは炎であちらは水。相性で言えば最悪だ。
「ぐうっ…うわああっ!!」
 相性で負けたのかはわからないが、シュートの勢いを相殺できず、喜峰のシュートはゴールに突き刺さり早くも海王学園が先制点となった。ギャラリーから歓声が上がる。

 身体能力の差は歴然。そう思った神童はメンバー達に思いきり叫んだ。
「皆!ゴールへパスを繋ぐんだ!!」
 パスを繋ぐ…。意味を理解した雷門の皆は試合再開の為持ち場へ戻っていった。


 試合が再開され、ボールは早速海音に渡る。先程とは違い、勢いよく。
 すると今度は湾田が海音の前に立ちはだかった。
「なあなあ、君さ俺らが勝ったら海王に痛い!」
 すかさず、いつの間にか隣にいた浪川が湾田の脇腹を思いきりつねった。怒りマークを出しながら。

「お前はどんだけ勧誘したいんだ!」
「え〜?だってかっけーじゃんこいつの力」
「ダマレ!超常現象マニア!」

「…お先失礼しまーす…」

 取り合えず海音は二人をスルーして先へ走り出した。
 そして剣城へ素早くパスを出す。
「…何やってんだあいつら…」
 剣城は呆れ半分でそう呟き、ゴール前まで迫っていた倉間へパスした。だが浪川は昔から変わっていないと思い、どこか安心もした。

 シードの施設ではよく料理を教えてもらったな…とそんなことを思い出す。教えてもらうまでは全く料理出来なくて、家では毎日カップ麺だった。今では考えられないが。
 施設での生活はそれなりに楽しかった。

   ———『あの日』までは。


 パスが繋がり、倉間はゴール前へと迫っていた。そしてシュートを放つため身構えた。
 後ろへ宙返りすると共に足に挟んでいたボールを宙へ投げ、右と左で交互に蹴りつけた。
 するとボールはまるで蛇のようにゴールへと向かっていった。
「サイドワインダー!!」
 この大蛇がゴールに突き刺さるのか…だがその思いは届かなかった。

 海王のGKは地面から思いきり鎖を引いた。海のような地面から鎖に引かれ出てきたのは、船を止めておくため海に沈められる重りの錨だった。
「ハイドロアンカー!!」
 錨はシュートに絡み付き、それをGKは引き上げる。
 倉間が放った蛇のシュートはみるみるうちに威力を失い、引き上げられ宙を舞った。

「止められた…!」
 あのバトルの時には手の内を明かさなかったため、GKの実力など知る由も無かった。だがやはりシードなだけあり、それなりの実力は持っているようだ。

 海音は辺りを見回す。ボールはすでに海王に渡り、ラフプレーでは無いものの怒濤の攻防を受け反撃できずにいる仲間たちが見えた。
 ふざけたりする仲の良さげな反面、このようなシードとしての素顔が露になっているようだ。

 パス回しの末、ボールは浪川に渡る。雷門ゴールへと向かう浪川の前に、浜野が立ちはだかった。
「レン!」
「カイジ…また、俺を裏切るのかよ」
 浪川は浜野を罵った。怒りと悲しみが混じった赤い目で。
 浜野は更に悲しそうな顔をした。自分が裏切ったから、目の前の親友は変わってしまった。

「レン俺は…ッ!」
「…邪魔だ!!」
 浜野の言葉など聞かず、問答無用で浪川は浜野を吹き飛ばして強引にゴールへと進んでいく。

 間に合わない!そう思いながらも海音は浪川を止めるべく走り出す。化身を使うつもりだと、海音にはわかっていた。
 紫のオーラを形成し、現れたのは青い身体の化身だった。三ツ又の矛を持っている。
「海王ポセイドン!!」
 ポセイドンはギリシャ神話に登場する海の神の名だ。化身必殺シュートを決めるのかと思ったが、浪川は普通のシュートを決めた。

 〝これ以上点差を広げるわけには行かない!〟三国はそう思い、シュートに対してパンチングを繰り出した。だが、無情にもその思いは砕かれ、シュートはゴールへと突き刺さった。

 0対2。スコアボードに記された現実を見て、浜野は悲しそうに視線をそらした。
「…俺がもっと、しっかりしてたら…」


 試合が再開され、ボールは海音に渡る。
 どうしたら化身を出せるのか…海音には未だにわからなかった。
 そもそも、本当に化身なんて出せるのか?
「天馬!」
 海音は向こうに見えた天馬に向けてすばやくパスを回す。天馬はボールを受け取り、攻め上がる。

「遊びは終わりだぜ、天パ君」

 そこへ天馬を止めるべくやって来たのは、湾田だった。
 気軽な振る舞いの裏側、本当の素顔を表したように、背後で化身を形成していく。
 現れたのは、スピーカーのようなユニットがある機械に似た化身だった。
「音速のバリウス!!」

 だが天馬は怯まない。化身を相手にしようと、果敢に立ち向かっていく。化身使いを相手に突破を試みたその時。
   ———天馬の背後に、紫色のオーラが見えた。

「あれは…」

「うわあっ!!」
 しかし海音が呟いた直後、天馬はいとも容易く吹き飛ばされてしまう。ボールを奪い、湾田が走り出したその時に前半は終了した。

 二点もリードされた雷門メンバー達には余裕が無いようだった。皆焦っているのが雰囲気から読み取れる。
『…海音戻るぞ、少し休め』
「うん…」
 レインに言われ、海音は海王陣地から雷門ベンチへと歩き出した。周りでは余裕ながらも緊張を解かない海王の選手たちが見えた。じゃあさっきの湾田達はなんだったのだ…?!


 ———…シードでもないと、存在価値なんてない。


「え?」
 ベンチにやって来た海音は突然聞こえてきた言葉に声をあげる。辺りを見回すが、声に該当する者は見当たらない。
 もしかして…と海音は感じ、レインに語りかける。
「レイン、今のもしかして…」
『…ああ、弱めの共鳴現象だな』
 レインも言った。やっぱり…と海音は思った。

 存在価値なんてない?
 どういう意味だろう。
 そして…誰なのかな。

第72話 ( No.219 )
日時: 2013/08/02 21:19
名前: 時橋 翔也 (ID: jZi4txmM)


 ベンチで待っていた音無からドリンクを受け取り、海音は天馬と一緒にベンチの横に腰かけた。すでにベンチは満員だ。
 よほど喉が乾いていたのか、一気にスポーツドリンクを飲んでいく天馬を横目に。海音はさっき聞こえた声が気になっていた。

 シードでもないと、存在価値なんてない。

 この声の主が誰なのかの前に、どうして存在価値にこだわるのか疑問だった。

 すると俯いていた海音が目に入り、天馬は不思議そうに海音を見つめた。
「どうしたの?」
「あ、いや…何でもない」
 恐らく天馬は納得していないだろう。そう思いながら、海音は適当にごまかしドリンクを飲んだ。

「…天馬」
 声がした。ベンチの前に立っていた円堂だと気づき、二人は円堂を見つめる。
 部員達の視線が集まるなか、円堂が告げたのは驚くべき事だった。


「…後半は天馬、お前がGKになれ」


 意味を理解するのに約三秒を要した。理解した天馬は〝ええ?!〟と声を上げた。
 円堂はそれ以上何も言わず、GKが着ているフィールドプレイヤーとは違ったユニフォームを渡した。向こうで少し悔しそうに俯いた三国が海音には見えた。

 どうして監督は天馬をGKに?
 前半、先輩がゴールを一度も守れなかったから?

 近くで立ったままドリンクを飲んでいた剣城はどうやら気づいたらしい。海音は座ったまま剣城を見上げた。
「剣城、監督は何を…」
「…そろそろ試合が始まるぞ」
 しかし剣城は海音の疑問に答えることなく、わざとらしく向こうへ歩いていった。どうやら教える気は無いらしい。

『…危険だな』

 するとレインは言った。レインの言う意味が、海音にはわからなかった。
「レイン、危険って?」
『アイツが天馬をGKにしたのは、恐らく無理矢理化身を引き出すためだ』
 無理矢理化身を?海音は思ったが、何となく意味はわかった。

 人は窮地に立ったとき、想像以上の力を発揮する。円堂はそれを利用しようとしているのだ。
「…でも、なんで危険なの?」
『天馬の化身は、出ることを拒んでいる』
 レインは言った。
『無理矢理引き出そうとして、化身がそれに折れなければ…何が起こるかわからない』
「……!」

 海音はGKのユニフォームへ着替えていく天馬を見つめた。もし失敗したら天馬は…。
 しかしこの事を伝えたら、天馬の心を乱してしまうだろう。
 そしたら失敗を煽りかねない。

「………」
 不安を隠せないまま、話さないと決めた海音は再びドリンクを飲んだ。もう後は、祈るしかない。


「大丈夫ですか?浜野くん…」
「………」
 ベンチに座り、俯く浜野の隣に速水は腰かける。ドリンクを手に持ってはいるものの、全く飲んでいなかった。

 本当に、思いは伝えられるのだろうか。
 裏切り者の自分なんかに…。
「まだ、悩んでいるんですか?あの人の事…」
「…ごめん速水、俺…アイツに伝えられるか不安でさ…」
 そう言いながら浜野は弱々しい笑顔を見せる。速水には、それが痛々しく感じた。

 それを見て、速水も思っていたことを口にした。
「…浜野くんなりのやり方で伝えたらどうですか?」
「え…」
 浜野は少し驚いたような表情になる。俺自身のやり方?
「伝えられるか不安なら…伝えられると思ってぶつかれば、きっと親友なら伝わってくれると思います。…弱い俺が言う言葉じゃないけど…」

 いつもは気弱で、自分の意見をはっきり言えなかった速水がこんなこと言うなんて…。浜野はそう思いながら、速水を笑顔で見つめた。
「…ありがと、元気になったよ」

 ハーフタイムが終了し、それぞれが持ち場へと戻っていく中、二人も立ち上がり再びフィールドへと降り立った。



 * * *



 後半が始まろうとしていた。

 同じくフィールドに立った海王のメンバー達は雷門を見てざわめき始める。
 先程までMFだった天馬が、GKの位置に立っていたからだった。

「へー…今度は天パくんを入れたか」
 湾田は面白そうに呟く。その隣で浪川は天馬を遠目で見ていた。
 一体何を考えているのかはわからないが、勝たなければならない。楽しい時間を共有した天馬を潰すのは少しだけ気が引けるが、やるしかない。


「野郎共!遠慮はいらねぇ、ぶっ潰してやれ!!」


 荒々しい浪川の声がフィールドに響き渡った直後、試合は始まった。

 先攻は雷門だった。海音はボールを受け、単独で上がり始める。
「…レイン、もし失敗したら天馬は…」
『何が起こるかわからないが…恐らく弾け飛ぶ可能性が高いな』
 さらっとレインは恐ろしいことを告げる。弾け飛ぶ…。海音は思い出したくない記憶を逆なでされたような感じがした。

 目の前に海王の選手が立ちはだかり、海音は後ろの剣城にバックパスした。
「剣城!」
 弧を描くボールを取ろうと、剣城も身構える。しかし海王の一人にパスカットされ、そのままボールは湾田に渡ってしまった。

「蹴散らしてやる…音速のバリウス!!」
 再び湾田は化身を出現させ、雷門のDF陣の元へ向かっていく。霧野を始めとしたDF達は止めるべく身構えるが、化身を相手に意図も容易く吹き飛ばされてしまった。

 あっという間に、湾田は天馬がいるゴール前へとやって来る。
 シュート体勢に入った湾田を見て、天馬は次第に不安になってくる。
  ——本当に、止められるの?

 不安になり、心が乱れ始めている天馬を見て海音も焦り始めた。海音より先に、レインが早かった。
「ダメだ少年!心を乱したらお前は…」



 「怯むなッ!!」



 隣で剣城は天馬に向けて叫んだ。身体の主導権が戻った海音は驚いて剣城の方を見た。
 「サッカーを守るんじゃなかったのか!!」
 剣城の叫びはどうやら天馬に届いたらしい。見ると心はもう乱れていないようだ。

 天馬は真っ直ぐ、放たれたシュートを見つめる。そうだ、サッカーを取り戻すためにも…革命かぜを起こすためにも、

   ———絶対、止めて見せる!!

 シュートを止める体勢に入った天馬の背後に紫のオーラが見えた。海音は『力』を使い天馬を見てみる。

 天馬は化身を出そうとしているが、反対に化身の方は中に閉じ籠り、出ることを拒んでいる状態だった。
 そのため、紫のオーラは出ているものの全く形成出来ていない。

「ぐっ…」
 手を前に出しながら、天馬は苦しそうに顔をしかめる。化身を出そうとするたびに、胸が締め付けられるように苦しくなる。目の前が霞始め、ボールがぼやけてきた。

  どうして…君は出てきてくれないの?
 天馬は語りかけるが、化身は答えてくれない。

「おい…天馬の様子がおかしいぞ…?!」
 異変に気づいた三国は声をあげる。周りも天馬の方へ視線を向けた。
 シュートが迫っているのにも関わらず、天馬は顔をしかめ、目を細めていた。

 明らかに、様子が変だ。

「松風!シュートが来るぞ!!」
 見かねた剣城は天馬に叫ぶ。しかし天馬は全く反応しない。
 海音から血の気が引いていく。このままじゃ天馬は…。
「天馬もうやめて!!このままじゃ君…消し飛んじゃう!!」

 その言葉に雷門はもちろん、海王までがざわめき始める。それでも天馬には何も聞こえていなかった。
「…お願い…君の力が必要だ」
 必死に、意識がもうろうとするなか天馬はそう言った。
「サッカーを守りたいんだ…お願い…」

『忌々しい記憶を思い出すかもしれないのだぞ?』

 頭の中にそんな声が聞こえてきた。考えなくても、その声の主は自分自身の化身だとわかった。
「忌々しい…記憶?」
 天馬にはなんのことか全くわからなかった。いや、それすらも忘れているのだろう。
「…なんのことか俺にはわからない、でもサッカーを守るためなら…懸けてもかまわない」
『……』

 その時、急に天馬を襲っていた苦しみは消え去った。枷が外れたように楽になる。
「俺達が…サッカーを守るんだ!!」
 そう叫んだ途端、天馬の背後のオーラが大きくなる。全く形成出来ていなかったオーラは次第に形成され、海音の言っていた通りペガサスを人の形にしたような化身が出現した。

「いっけぇぇぇ!!魔神ペガサス!!」

 即席で思い付いた化身の名を叫ぶ。ペガサスはその大きな腕でシュートをパンチングした。
 シュートは威力を失い、ボールは遥か向こうへ飛ばされてしまった。

「天馬が化身を…!」
 周りのメンバー達は思わず呟く。海音は心の底から安心し、高鳴っていた鼓動を抑える。化身は何とか出てきてくれたみたいだ。
「へー…やるじゃん」
 湾田も呟いた。敵ながらも、敬意は払うようだ。

「やっぱり、俺の思惑通りだ」

 ベンチで円堂は天馬を見て、笑顔になった。

 これを契機に、雷門の士気は上がり始め海王の方は焦り始めていた。両チームが混合したフィールド、再び元の位置へ戻るべく動きだしたどさくさに紛れて海音は気づかれぬよう、近付いてきた喜峰とハイタッチを交わした。

「あとは任せたぞ」
「もちろん!」

 革命の風が、一層強くなる。

第73話 ( No.220 )
日時: 2013/08/02 21:23
名前: 時橋 翔也 (ID: /qYuqRuj)


 俺が見たとき、そいつはすでに息絶えていた。

 近くにある森の木々の至るところに鮮血が貼り付き、地面はそいつの血を吸って赤黒くなっている。

「…どういうことだよ…」

 信じたかった。そんな思いも込めて、俺はそいつの目の前に立っているアイツに訪ねた。
 血塗れで死んでいるそいつ。その前に立っているアイツは真っ赤に濡れたナイフを握り、普段着の白い短パン半袖は真っ赤に染まっている。

「どうして…華音が…」

「………」

 弁解してほしかった。そしたら、俺も疑心暗鬼にならずに済んだのに。
 アイツはこの状況にも関わらず、怪しげに…嗤っていた。


 「俺が……殺した」


 目の前の状況がそれを物語っていて、俺は反論が出来なかった。



 * * *



 三国がGKに戻り、試合が再開される。
 天馬は先程まで自分自身の化身と戦っていたせいか、いつもより顔色が悪い気がした。

「剣城ッ!!」
 海音は向こうにいた剣城へパスする。ボールを受けたものの、剣城はすぐさま海王に囲まれてしまった。
 すると背後に速水が見えた。
「速水先輩!!」
 反射的に剣城は速水へとバックパスした。速水の脚の速さは雷門でもイチオシなので、次々と海王の選手を抜いていく。

 しかしとうとう海王の選手が立ち塞がってきた。すると速水は立ち止まり、以前から考えていた必殺技を使うことにした。
 速水は地面にしゃがみこみ、陸上などリレーで使うクラウチングスタートの姿勢になった。
「…ゼロヨン」
 そう呟いた三秒後、速水は凄まじい勢いで海王の選手を置き去りにした。余りの早さに、その姿を捉えることは出来ない。
「神童くん!!」

 ゴール前へと迫っていた神童に向けて速水の素早いパス回し。神童はあの技を繰り出すため、丸い五線譜と音符を出現させた。

「フォルテシモ!!」

 一瞬だけ、GKの反応が遅れた。再び倉間のシュートを止めた必殺技を発動させようとしたが、間に合わず得点を許してしまった。
 取り合えず、一点を取り返せた。
「キャプテンナイスです!」
 天馬はそう言いながら手を挙げてきたので、それに合わせて神童もハイタッチを交わした。

 そこから先は完全に雷門のペースだった。
 海王からの先攻だったものの、ボールはすぐに剣城に渡り士気が下がり始めていた海王の選手達を瞬く間に抜き去り、ゴール前でボールを高く蹴りあげた。

「デスドロップ!」

 赤黒く光るボールのオーバーへッドシュートは、士気の下がっていたGKに止められることなく得点となった。
 2対2。同点まで追い付かれ、海王のメンバーは焦り始める。

「…!」
 目に見えて焦っていたのは浪川だった。焦りのせいか青ざめている。

 再び試合再開。ボールを保ちながら雷門陣地に入った浪川は、すぐさま浜野に遮られてしまう。
「レン!俺は…自由なサッカーがしたかった!!」
 そして浜野は言った。
「管理されたサッカーなんてサッカーじゃない!サッカーは楽しくないとダメなんだよ!…お前を一人にしたことは謝る!だから…」

「…俺から、存在価値を奪う気かよッ!!」

 浜野の言葉を遮り、そういい放つと強引に浜野を抜き去っていった。
「来い!海王ポセイドン!」
 そしてさらに化身を出現させ、あっという間にゴール前へと迫る。明らかに焦っているとわかるようなシュートをゴールへと放った。

 これ以上は点をやるわけにはいかないと、三国はバーニングキャッチとは違った構えになる。
 腕を振り上げ、衝撃波を思いきり地面に叩きつけた刹那、地面から岩の壁が飛び出した。
「フェンス・オブ・ガイア!!」
 三国が生み出した新たな必殺技はシュートを止め、三国は思いきり掴んだボールを投げた。

「レンッ!!」
「…まさか」
 海音はあることを思い出し、浪川の方を向いた。チームの士気が下がっている中、ただ一人焦りからか一向に勢いが衰えていない。
「あなたは…どうして存在価値なんかに…」
 ボールが渡った天馬は目の前に立ち塞がる浪川に問いかけた。帰ってきたのは、予想もしない答えだった。

「…どうせ聞いたんだろ、俺の父さんが…犯罪者だって」

 そう言われ、天馬やそれから海音、浜野は反応する。浪川は続けた。
「俺だって、なんで父さんがあんなことしたかわからない…けど父さんが最後に俺に言った言葉は『お前はいらない』だった」
 次第に浪川は俯き始める。両手を握りしめ、血が滴る。

「父さんや裏切ったやつらにとって、俺なんか居ても居なくてもどっちでも良かったんだよ!!だからいとも容易く俺を見放した!!存在価値が無かったから、俺はずっと独りだったんだよ!!シードじゃなくなったら…本当に俺は『いらない』やつになっちまう!!カイジだって…『いらない』から俺の前から去ったんだろ!?」

 ずっと独りだった者の言葉は三人、特に浜野に突き刺さった。今まで気づいてあげられなかった、追い詰めていたんだと。
 しかし、浜野はそんなこと考える前に口を開いていた。



 「バカヤロオオォォォォッ!!!」



 両手を握りしめ、フィールドはおろかギャラリーにまで響き渡るくらい浜野は叫んだ。自分に向けてなのか浪川に向けてなのか、よくわからなかった。

「俺がお前をいらないなんて思うわけねぇよ!!海王を去った日から、お前を忘れたことなんてない!…お前と俺は、何一つ違いなんてねぇぇッ!!!」

「カイジ…」
 すると浪川の身体から力が抜け、地面に座り込んだ。化身もオーラに戻り、ポセイドンは消え去った。

 天馬が走り出した先にはまだ湾田が待ち構えていた。バリウスを出現させ、ボールを奪うべくこちらへ向かってくる。
 応戦するため、天馬も先程覚醒させた化身を使うことにした。
「来て!魔神ペガサス!」
 天馬の化身が出現した瞬間、二つの化身が衝突した。

「…やっぱ、現実から目をそらしちゃダメか…」

 化身対決をしているのにも関わらず、湾田は気の抜けたような振る舞いだった。不思議に思い、天馬は湾田を見つめた。
「あなたは…どうしてシードに?」
 天馬に訪ねられ、湾田は少し寂しげに上を見上げた。
「シードになれば、マシなサッカーが出来ると思った。…けど逆だったな、まあせいぜい頑張りな天パくん。サッカーを守るならな」

 そう言った瞬間、湾田の化身も消滅した。天馬はそのまま突き進み、前方に海音が待ち構えているのが見えた。
「海音決めて!」
 ゴールへと走っていく海音へ向かって天馬はロングパスを繰り出す。ボールを受け、海音はゴール前にやって来た。
 ボールは冷気を帯び始め、キラキラと輝き始めた。

「ダイヤモンドショット…V2!!」

 見た目は変わらないが、明らかに以前より威力の上がったダイヤモンドショットだった。

第74話 ( No.221 )
日時: 2013/08/02 21:50
名前: 時橋 翔也 (ID: LCLSAOTe)


 海音の必殺技が決まった。3対2、雷門が逆転した瞬間、試合は終了しスタジアムに歓喜の渦が巻き起こった。
「やったあああ!!」
「優勝だ!」
 天馬を初めとしたメンバーの何人かははしゃぎまくる。海音は天馬に抱きつかれたりしたものの、同じく喜んでいた。

「…レン」

 すると浜野は地面に座り込んでいた浪川に近付く。浪川は情け無さそうに笑った。
「…わりいなカイジ、…俺…独りが怖かった、だから…」
「……もういいんだよ」
 浜野はそう言いながら手を差しのべた。少し驚きながらも、浪川はそれを掴み立ち上がる。

 海音や天馬も、それを見て笑顔になった。周りの海王のメンバーは浜野の方を見る。
「浜野!寂しくなったらいつでも帰ってこいよ!」
「ああ、またいつかな!」
「は、浜野くん海王に引きずり込まれないでくださいね…」
 少し心配そうに速水は言った。〝大丈夫大丈夫!〟と浜野は言うが、心配だ。

 しかしその時、浪川は辺りを見回しあることに気づいた。


「———なあ、喜峰は?」


 そう言われ、海音と天馬、浜野と速水、その他海王のメンバー達は顔を見合わせる。そして辺りを見回すが、あの勇ましい中性的な選手はどこにも見当たらない。
 まさか…と海音が思った直後、浪川の携帯が鳴った。ポケットから携帯を取り出すと『喜峰』と表示されている。

 瞬間的に浪川は携帯を押した。耳に当てなくても通話できる設定なので、そのまま携帯に向かって問いかける。
「おい…喜峰か!?」
『そうですよ…当たり前でしょ』
 至って普通の喜峰の声。それは近くのメンバー達にも聞こえていた。

 浪川は安心したような表情になり、携帯に話しかけた。
「ったく…今どこに居るんだよ、閉会式がまだ———」

 『…俺は、閉会式には出れません。エンドレス・プリズンに行きますから』

 エンドレス・プリズンという言葉に、周りのメンバー達は固まった。やっぱり…と海音と天馬は顔を見合わせた。
「え、喜峰…冗談にしては最低だぞ?お前らしくない」
『…冗談なんか一ミリも言ってません』
 呆れたような喜峰の声が帰ってくる。
『本当ですよ、キャプテン。…俺はアールなんです』

 シードなだけあり、浪川もアールの存在は知っているようだ。最近フィフスからの監視が厳しくなったのも、アールと名乗るグループの独りとしてフィフスの情報を漏らしたりしている者を探るためでもあった。
 喜峰が、そのアールの一人。
 信じられない現実を目の当たりにしているようだった。

「な…んで…、お前…どうしてアールなんかに!」
『…キャプテン、あんたは昔の俺と同じです。人を信じられず、価値にこだわる昔の俺と』
 喜峰は語り始めた。

 一人、スタジアムの暗い通路の中で。
「それをあんたが助けてくれた…あんたが居なければ、今の俺は無かったんです。だから今度は俺が助ける番だと思いました」
『助ける番…?アールとしてフィフスの情報をばらすことが?』
 携帯越しに聞こえてきた浪川の問いは、恐らく正当なものだろう。喜峰はそれを感じながら答える。

「…アールとしてフィフスが無くなる手助けをして、結果的にフィフスが無くなれば…シードじゃなくてもあんたに存在価値は有るって分かって欲しかった、…例え、俺がどうなっても」
『……なんだよ…俺のせいじゃねーか…お前まで俺を独りにするのかよ!!』
「独りじゃない…あんたには、他にも信頼できて頼れる仲間が居る。あんたの価値だとか意味だとか関係なしに」

『……エンドレス・プリズンに行けば、帰れないかもしれないんだよ?』
 すると海音の声が聞こえた。そんなこと、わかりきってる。
「…じゃそろそろ切ります。交信してるのを怪しまれたらあんたらにまで迷惑掛かるし」
『おい喜——』
 最後までいう前に、喜峰はそこでブツッと携帯を切った。最後の交信かもしれないのに、あっさり切りすぎだと自分でも痛感していた。

 ———さあて、スタジアムの外で待ち構えている奴等のお縄に掛かりますか。



 携帯が切られ、周りの選手達は青ざめていた。今、一人仲間を失った。
「…喜峰…なんで…」
 浪川は呟く。目には涙が滲んでいる。
「あの時と何一つ変わらない…俺は仲間も守れない!何がキャプテンだよ…」
 入学した時、神童が言っていた言葉と同じだと海音は思った。そして海音は浪川を見つめた。

「じゃあ…取り返しましょう、仲間を」
「え…」
「シードは一度負けたらシードじゃなくなる、レン!海王は仲間を大切にするんだろ!?」
 浜野も必死に訴える。周りを見ると、仲間たちも同じ目で見ていた。
「フィフスが無くなれば、きっとアールのみんなを助け出せる!ですから…」
 天馬は言った。浪川が悪いやつではないことはよくわかっている。

「…わかった、俺も、喜峰を取り返したい」

 周りのメンバーに聞こえるように、浪川はそう言った。海音と天馬は顔を見合わせ、浜野は嬉しそうに笑顔になった。
 すると閉会式が近づき、周りのメンバー達がゾロゾロとフィールドから出ていくのが見えた。
「…閉会式が始まるぞ」
 歩いてきた剣城に言われ、天馬と海音は歩き出した。周りも閉会式へと向かうなか、浪川は剣城を悲しげに見つめた。

「剣城!…お前のしたこと、許した訳じゃない」
「………!」

 それだけを告げ、浪川も浜野の後を追って走り出した。剣城は独り俯き、過去を思い出しながら青ざめた。

   ——そんなこと、わかってる。



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