二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 七つの星と罪
日時: 2013/07/21 23:48
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
 前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。

 ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。

 それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 それでは、白黒の新しい物語が始まります——

登場人物紹介
>>31



プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11

シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43

クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180

第50話 festival ( No.134 )
日時: 2013/05/14 17:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: 白黒は最初サイコソーダはエスパータイプに効果があると思っていました。

 各人温泉なりシャワーなりで汗を流しを終え、四人は時間通りにカゲロウ山のふもとへと集合した。
「した……のはいいんだけど、全員服はそのままなんだね」
 イオン、フロル、ルゥナの三人を見ながらフィアが言うと、
「浴衣ってあれじゃん、なんかスースーするじゃん。あれって苦手なんだよね」
「いつもの格好の方が動きやすいし、バトルするならなおさらね」
 というのがイオンとルゥナの弁。
「こっちの方がかっこいい」
 そしてこれがフロルの弁。
「……まあフロルがそれでいいならいいけど……」
 イオンとルゥナはともかく、やはりフロルの意見というか、感覚には同意しかねるフィア。キャミソールにトグルがすべて外れるほどボロボロになったダッフルコートの組み合わせのどこが格好良いのか。
(相変わらずセンスが飛んでるなぁ、フロルは……)
 イオンとルゥナは、否定的な意見こそ出さないが、首を傾げていた。この二人もフィアからすればそれなりに奇妙な出で立ちなのだが、やはりフロルのセンスは到底理解できるものではないようだ。
「まあとにかく、登ろうか」
 もう祭りも始まっている時間である。
 フィアを先頭にして、四人はカゲロウ山の頂上へと続く石段を登っていく。



「わぁ……人多いね……」
「こんなに大がかりな祭りなんだ……」
 階段を登り終え、山頂に着くや否や、フロルとフィアが発した第一声はそれだった。
 だが確かに人は多い。非常に混雑していた。
 石畳の通路の両端にはそれぞれテントを張って作った屋台があり、それがずっと奥にまで続いている。食べ物の屋台が多いのか、至る所から甘い匂いやら醤油の匂いやら焦げた匂いやらが漂ってくる。
「僕らは自然と一ヶ所に集まったけど、どうも山頂に行く階段は一つじゃないみたいだね。横の森林を抜ければ他の通路に出て、そっちにも屋台があるみたいだよ」
 今更ながら、フィアはターミナルで祭りについて調べている。同時にこの祭りが本当に大規模であることも知る。
「うーん……それじゃあ、この人数で移動しても動きにくいし、誰かはぐれちゃいそうだし、なにより目的地はみんな一緒だし、大会が始まるまでは自由行動にしよっか」
 と、ルゥナが提案する。外見こそフロルとそう変わらないほど幼いが、これでも一応、この四人の中では年長者。しっかりしたところもあるようだ。
 その提案に異を唱える者もおらず、バトル大会が開催されるまでの一時間ほどは、各人自由に屋台を見て回ることとなった。
「それじゃあフロルちゃん、行こっか。こっちは混んでるから、あっちに行こう」
「うん」
「じゃーねー、フィア君。オレはあっちの方に行ってみるよ」
 と言って、ルゥナとフロルは右の森林、イオンは左の森林へと走っていった。
「……それじゃ、僕も行こうかな」
 と一人呟き、フィアも目の前へと歩を進める。



 どうやら人が込み合っていたのは階段を登ってすぐの辺りのようで、少し歩くと混雑具合も大分落ち着いてきた。とはいえ、それでも十分人は多いが。
「屋台は和風というか……意外と普通だなぁ」
 この場合の普通とは、フィアの知る世界でよくあるという意味である。
(もっとこの世界ならではのものが売ってたりとか、凄い独特なゲームがあったりとか思ってたけど、僕のいた世界とあんまり変わらないな)
 右を見ればイッシュ地方特産ヒウンアイス。左を見れば手作り森のヨウカン。前を眺めればテッポウオ射的。後ろを振り返ればカラーアチャモ……この世界の文化が混じっては入るが、それでもフィアがいた世界にあるものとほとんど同じであった。
「意外というかなんというか、変な所で肩透かしを食らうというか……ん?」
 とその時、フィアは足元に違和感を感じた。というか、何かを踏みつけた。
「なんだろこれ? 財布、かな?」
 拾い上げて確認すると、確かにこれはがま口の財布のようだ。口を開けて中身を確認すれば、中にはジャラジャラと小銭が入っている。意外と多い。
「誰かが落としたのかな。どうしよう、こういうのって事務局みたいなところに預けるべきなのかな。でもそんなのどこに……あ、アーロンさんに渡せば——」
 などと若干無責任気味なことを言いかけたところで、フィアの耳に声が届く。聞こうとして耳に入れたのではなく、偶然耳に入って来ただけの声。人々がごった返す中の喧騒に紛れて、ある意味奇跡的にフィアが聞き取れた、少女の声だ。
「ねーねー、おじさん。いいでしょー? 後でちゃんと払うからさ」
「いや、でもなぁ……一応、こっちも商売なんだ」
「そんな堅いこと言わずにー。せっかくのお祭りなんだし、ちょっとくらいさ」
「そう言われても、嬢ちゃんが絶対に戻ってくる保証もないしなぁ……」
 どうやら屋台の主と言い争っているようだ。言い争っているというより、少女がツケにしてくれと頼んでいる様子だ。
「というか嬢ちゃん、こういう時はちゃんとお金を持ってくるものなんだよ。分かってるかい?」
「分かってるよ。でもしょうがないじゃん、お財布落としちゃったんだもん。さっきまではあったはずなんだけどなー……だからさ、ね?」
 身を乗り出して少女は一本のビンを店主に向ける。テントを見れば、どうやら飲み物を売っている屋台のようで、少女が持っているのはサイコソーダというらしい。
 とそこで、フィアは手にした財布を見てその光景と結びつける。
 そして、人込みを掻き分けながら少女のところへと歩いていき、
「あの……もしかして落とした財布って、これかな?」



「それにしても助かったよー。おにーさん、ありがと」
「いや……でも良かったよ、落とし主がすぐに見つかって」
 内心、面倒なことがすぐに解決してホッとしているのだが、そんなことはおくびにも出さない。
 結局、フィアが拾った財布はこの少女のものだったようだ。
 ピンク色の髪を右側で結んでサイドテールにした少女。年齢は、外見だけで見ればフロルと同じくらいに見える。だが背丈はフロルやルゥナと同じが、下手したらそれ以上に低い。
 しかし華奢なフロルやルゥナと違って、この少女は小柄な体躯や幼さに反して肉感的な体つきをしている。恰好が浴衣だからか、それがよく分かってしまう。
「そういえばおにーさんの名前まだ聞いてなかったね。なんていうの?」
「僕? 僕はフィア……その、まあ、トレーナーだよ」
 名前と一緒に自分の社会的立場などを言うのはこの世界でも一般常識のようなので、とりあえずそう答える。決して間違ってはいない。
「へー、フィア君かー。あたしはアスモ、よろしくね」
 と言って、アスモはウィンクしてきた。その仕草自体は整った顔立ちも相まって非常に可愛らしいのだが、このアクティブな感じはフィアが苦手とするものだった。
(こっち来てからはかなりマシになったけど、やっぱり女の子って苦手なんだよな……特にこういう子は)
 別にアスモが悪いわけではないのだが、フィアはそう思ってしまう。軽い女性恐怖症のようなものだ。この年頃の男子なら、いないことはないだろう。
「ところで、おにーさんは一人でお祭り来たの? 彼女さんは?」
「彼女って、いないよ……今日は友達二人に、先輩と来てるんだ。今は別行動なんだけど……そういうアスモちゃんは? 友達とかと一緒じゃないの?」
「あたし? あたしはね——」
 とアスモが言おうとしたところで、その言葉は遮られた。

「お嬢、見つけたぞ」

 前方から声がかかる。女の声だ。
 顔を上げると、やはりそこに立っていたのは女だった。年齢は成人しているかどうかくらい、背中くらいまでの灰色の髪に、黒いロングパーカーと紺色のジーンズという出で立ち。フィアが言えたことではないが、あまり祭りの雰囲気とマッチしていない。
「あ、ルーメさん」
「お嬢、あまりあたしから離れるな。もしあんたの身に何かあったら……」
「大丈夫だよ。ほら、ピンピンしてるでしょ?」
「今はな……で、お嬢。こいつは誰だ?」
 ルーメと呼ばれた女はフィアに視線を向ける。口調が口調だからか、妙に威圧感がある。
「あ、その、僕は……」
「フィアくんだよ。さっきあたしのお財布拾ってくれたの」
 戸惑っているフィアの代わりに応えたのは、アスモだった。ついでに出会った経緯も交え、ルーメの視線も少し和らいだ。
「そうか。あたしはルーメだ。お嬢が世話になった」
「いえ、いいんですけど……お嬢って?」
 と何気なく気になったことをフィアが聞くと、ルーメは、
「仕事でな。あたしは用心棒……みたいなものだ。と言っても今回は用心棒っていうよりボディーガードみたいなものだが。これ以上は依頼人の個人情報に関わるから言えん」
 と答えた。いや、フィアの疑問にはまったく答えていないのだが。
 するとアスモが、また横槍を入れる。
「別に言ってもいいよ。おにーさんにはお財布拾ってもらった恩があるし」
「……お嬢はある富豪の娘だ。それゆえに狙われることもあるらしい。だから今回の祭りに参加するにあたって、あたしが護衛をしてるってわけだ。お嬢と呼んでいる理由は……まあ、本人の希望だがな」
「そーゆー風に呼ばれたことってないからさー。呼んでみてほしかったりしたんだよね」
「はぁ、そうなんですか」
 なにやらフィアには実感できない話だったので、曖昧に頷いておく。
「そういえば、おにーさん」
「ん? なに?」
「おにーさんはあれ出るの? ほら、この祭りのビックイベントの——」
「ポケモンバトルの大会だな。なんでも今年は、ジムリーダーを破った四人が出場するとかで、かなり賑わっているらしい」
「…………」
 その四人の中に自分が含まれているのが分かるフィアとしては、妙な気分になる。持ち上げられてうれしいような、騒がれて気まずいような。
「で、どうなの? おにーさん?」
「……一応、出るよ」
 ここで無闇に騒がれたくはないので、フィアは出場の旨だけを伝えた。
「じゃあ、あたしおにーさん応援しよ。頑張ってね」
「う、うん。ありがとう」
 またウィンクされた。こういう積極的な少女は対応に困る、とフィアは胸中で嘆く。
「出場するのは結構なことだが、もうそろそろ時間じゃないのか?」
「えっ?」
 ルーメに言われ、フィアは慌ててターミナルで時間を見る。大会が始まるまで、残り五分くらいしかない。
「やばっ、早く行かないと……!」
 フィアは軽くアスモとルーメに別れを告げると、人込みを掻き分け、急いで通路を進んでいく。
「……バトル、楽しみにしてるね。フィア君」
 ぼそりと、アスモは呟いた。
 そしてその呟きは、祭りの喧騒に飲まれて消えていく。



テスト期間に部活あるなんて聞いてない……まあただのメンバー決めでしたが。なにはともあれ更新です。正直ハイペースかなと思ったりしますが、もし全国行きが決まればこの夏はほぼ更新できないと思うので、今のうちに行けるところまで行きます。XYが発売されたら今度はそっちに傾いちゃいますしね。そういうわけで新キャラです。まず一人目はアスモ、何人目になるのかまた幼げなキャラが出て来ました。そして二人目は、大光さんのオリキャラであるルーメ。キャラ崩壊などの不備があればお申し付けください。さて、それでは次回、バトル大会です。今作は本当にこういうの多いですね。まあ僕がそうしたんですが。では、次回もお楽しみに。

第51話 electromagnetic gun ( No.135 )
日時: 2013/05/14 23:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: フィア、身長160cm前後、体重45kg程度。

 カゲロウ山で行われる大会のレギュレーションは、使用ポケモン一体で行われる普通のポケモンバトルだった。ハルサメタウンの大会と酷似している。
 事前にエントリーされているフィア、フロル、イオン、ルゥナの四人は、どうやら今大会の目玉というか注目選手のようで、周囲から無数の視線を感じる。
 このような扱いを受けることに抵抗を感じるフィアとしては、一刻も早くこの場から立ち去りたいところだが、アーロンの頼みでエントリーした以上、大会が終わるまでは帰してくれないだろう。
 少しでも気を紛らわせるために、フィアは組み合わせ表を確認する。
「組み合わせは……これ、何かの陰謀が働いてるようにしか感じないんだけど……」
 対戦の組み合わせは、初戦でフィアとルゥナ、フロルとイオンが当たるという、観戦者からすれば注目選手が初っ端から戦う好カードだった。しかもこの二組は逆ブロックなので、上手く進めば決勝で当たることになる。
「私の最初の相手はフィア君かぁ。良かったよ」
「? 何がですか?」
「だって、この前のサミダレ大会。あの時のリベンジが出来るもん」
 初めて見るルゥナの好戦的な眼差しに、フィアは少しだけたじろぐ。
「私もトレーナーだからね。負けっぱなしっていうのは嫌なんだよ」
「いや、あの……僕、サミダレタウンに向かう船でルゥ先輩に一回負けてるんですけど……」
 だからあの時は、フィアがルゥナにリベンジを果たしたということになる。
 だがルゥナの中ではそうはならないようで、
「あの時は非公式戦で、今回は公式戦。だからこれは公式戦のリベンジだよっ」
「そうですか……まあ、いいんですけどね」
 フィアとて負けるつもりはない。バッジを半分も集め、流石のフィアでも自分がトレーナーであるという自覚は持っている。先輩の顔を立てるために負けたりはしないし、負けたくないとも思う。
「……そろそろ試合開始だね。行こっか」
「はい」
 そして、フィアとルゥナの二人は、バトルフィールドへと向かった。



 カゲロウ山特設バトルフィールドは、ローカルな祭りの割には立派なつくりをしていた。とはいえ屋外のフィールドなので、たかが知れているのだが。
 そんなバトルフィールドの端にはテントが立てられ、そこには二人の男が並んでいた。一人はマイクスタンドの前に立つ実況の男、もう一人はジムリーダーにしてカゲロウシティの市長、アーロンだ。解説のために座っているのだろう。
『さあ、いよいよ始まりました、カゲロウ山バトル大会! 一回戦は、この街のジムリーダーであるアーロンさんを破った二人のトレーナーによる対決です!』
 実況の熱い声が響く中、フィアとルゥナはバトルフィールドに立つ。
「さっきも言ったけど、サミダレタウンでのリベンジ、果たさせてもらうよっ」
「出来るものなら、です。先輩」
 言って、二人はボールを構え、
『バトル——スタートッ!』
 そして同時に、ボールを放り投げた。
「出て来て、メタング!」
「頼んだよっ、ギギアル!」
 フィアの一番手は、今日進化したばかりのメタング。ルゥナのポケモンは、ギアルによく似たポケモンだが、大きな歯車が一つ追加されている。

『Information
 ギギアル 歯車ポケモン
 攻撃のためにギアを飛ばすが、
 このギアが戻ってこないと死んで
 しまう。死と隣り合わせのポケモン。』

「ギギアル、ギアルの進化系……って、歯車が増えただけじゃ……?」
「それでも立派な進化系だよ。前のギアルみたいに思わないでね」
 なにやらルゥナは、このギギアルに自信があるようだ。
「でも、僕のメタングだって負けませんよ。メタング、バレットパンチだ!」
 先制したのはメタング。メタングは弾丸のようなスピードでギギアルに接近し、そのまま殴りつけた。
「思念の頭突き!」
 さらに頭に思念を集め、頭突きをかます。効果はいまひとつだが、追加効果でギギギアルは怯んでしまう。
「よしっ、このまま攻めるよ。シャドークロー!」
 続けて爪に影を纏わせ、ギギアルを切り裂く。
『メタングの連続攻撃が決まりました!』
『バレットパンチで接近し、思念の頭突きで怯ませ、シャドークローで追撃か……俺も似たような連続攻撃を受けたが、これは上手くはまれば驚異的だな。ただでさえ硬く力も強いメタングに、間接的とはいえスピードがつく』
 アーロンからも称賛に似た言葉を受け、会場が沸き上がる。
 しかしルゥナは、不敵に微笑んでいた。
「……確かにそのメタングは強いね。特に攻撃力が高いみたいだよ。でも、それじゃあ私のギギアルには勝てないんだな」
 今から見せてあげる、と言って、ルゥナは人差し指と親指の間が直角になるように指を立て、メタングを指差す。いわゆる鉄砲の形だ。
「ロックオン」
 そして、なにやら技を指示したようだが、ギギアルはメタングをジッと見つめるだけで、何も反応を起こさない。
「……? 何もないみたいだけど、まあいいや。メタング、どんどん攻めるよ。岩な——」
 とフィアの指示は、途中で途切れた。
 なぜなら、

「電磁砲!」

 ギギアルから、電磁力を圧縮した球体が発射されたから。
「っ!?」
 球体は一直線にメタングへと飛び、直撃する。
 技の威力が高いのか、かなりのダメージだ。しかもメタングは体を痙攣させ、麻痺状態になってしまった。
「電磁砲はね、攻撃と同時に相手を確実に麻痺させる技なんだ。威力も高いんだけど、代わりに命中率が低くてね……でも、ロックオンと合わせれば確実に当てられる」
 ふふふ、と得意げに笑いつつ、ルゥナは言う。
 調べてみれば、ロックオンとは次に繰り出す技を確実に当てる技らしい。命中率の低い電磁砲と組み合わせるにはうってつけというわけだ。
「じゃ、今のうちに準備しとこうか。ギギアル、ギアチェンジ」
「っ、バレットパンチ!」
 フィアは慌てて指示を出すが、メタングは体が痺れて動かない。
 そうしているうちに、ギギアルはギアを入れ替え、攻撃と素早さを上昇させる。
「ギアソーサー!」
 そして二つのギアを射出し、メタングを挟み込んだ。効果はいまひとつだが、二つのギアによる攻撃と、ギアチェンジによる攻撃力上昇で、それなりの威力が出ている。
「メタング、振り払って! 岩雪崩!」
 メタングは両腕を振り回してギアを跳ね除けると、低い声を上げて虚空から無数の岩石を降り注ぐ。
「やるねぇ……ギギアル、もう一回ギアチェンジ!」
 岩雪崩は直撃したが、それでも効果いまひとつ。決定打にはならない。
 ギギギアルは岩から這い出ると、ギアを入れ替えてまた攻撃と素早さを上げる。
「ギアチェンジ!」
 さらに上げる。これで攻撃は二倍以上、素早さの至っては最高速度だ。
「うぅ、メタング、思念の頭突き!」
 メタングは頭に思念を集めてそのままギギアルに突っ込もうとするが、そこで体が痙攣し、動きを止めてしまう。
「チャンスだよっ、ギアソーサー!」
 ギギアルはギアを二つ連続で射出し、メタングを挟み込み、切り裂く。
 電磁砲で一気に削られているため、もうこの時点でメタングの体力は限界近くになっている。もう一撃でも喰らえば、戦闘不能になってもおかしくはない。
「じゃあギギアル、確実に仕留めるよっ。ロックオン」
 ギギアルはギアを回しながら、ジッとメタングを見据える。ただ見てるだけのようだが、恐らく見ることで確実に攻撃を当てる弾道を探っているのだろう。
「くっ、メタング、こっちも早く決めよう。バレットパンチだ!」
「決めるよギギアル、ギアーソーサー!」
 メタングは弾丸の如きスピードでギギアルに突っ込み、ギギアルは二つのギアを射出する。
 襲い掛かるギアを掻い潜り、メタングは突っ込む勢いのまま、その硬い拳をギギアルの顔面と思しき部位に叩き込む。
 効果いまひとつとはいえクリーンヒットだ。しかし、

 次の瞬間、躱されたギアが戻ってきて、メタングのボディを切り裂いた。

「メタング!」
 その攻撃でメタングは地面に落下し、戦闘不能となってしまった。 



バトル大会、始まりました。ルゥナが繰り出すのはギギアルです。白黒は最初にギギアル、そしてギギギアルを見た時、流石に驚きましたね。見た目もあれですが、なにより名前が……ギを増やしただけって。ちなみにURLですが、特に煽る必要がない時や、書くことが思いつかなかった場合はどうでもいい情報とか載せてます。今回なんてフィアの身長体重ですし。しかし改めてみると、フィアって年齢にしては背低いですねー。いや、白黒もこんなもんですが。さて、それでは次回……なにしようかな。いえ、大まかには決まっているのですが、言語化しにくいんですよねー……まあもしかしたらフロルとイオンのバトルを書くかもしれません。ということで、次回もお楽しみに。

第52話 small dragons ( No.136 )
日時: 2013/10/21 00:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ルゥナに敗北し、特にすることもなくボーっと試合を観戦していたフィア。次はフロルとイオンが戦う番だと思い返していると、声がかかった。
「おにーさんっ」
 かかったというより、後ろから抱きつかれた。
「っ……アスモちゃんか。どうしたの? ルーメさんは?」
 初めての感じる柔い感触のせいで高鳴る鼓動を抑えつつ、振り返ってアスモと目を合わせる。
「ちょっと別行動。ところでおにーさん、残念だったね」
「ん、ああ……まあルゥ先輩が相手だったからね」
 サミダレタウンでフィアがルゥナに勝てたのは、ただ単に相性が良かっただけだ。地力ではルゥナの方が強いだろうし、なによりルゥナはこのような公の場では、技合成を使うことができない。もし彼女の能力をフルに活用されれば、フィアでは太刀打ちできないだろう。
「それにメタングの攻撃は、全部効果いまひとつだったし。負けても仕方ないさ」
「でもおにーさん、けっこーカッコよかったよ?」
 あまりに直球だったため、フィアは思わず言葉を失ってしまう。今まで褒められたことなど、特に格好良いなどという褒め言葉を受けたことはほとんどなかったため、照れてしまう。
「う、うん、ありがとう……」
 目線を逸らしつつ、社交辞令だからとでも言いたげに礼を言うフィア。しかしアスモはそんなフィアには構わず、フィアの服の袖を引っ張る。
「それよりおにーさん。ちょっといいかな?」
「な、なに?」
「おにーさんについて来てほしいというか、おにーさんと一緒に行きたいところがあるんだよ。来てくれる?」
 一緒に行きたいということは、露店かどこかに付き合ってくれということだろうか。しかしそれなら、わざわざフィアが行かずとも良いような気もする。
「ルーメさんは? 僕じゃなくても、いや僕よりもあの人の方がいいんじゃないかな……?」
 次がフロルとイオンのバトルだということもあり、フィアはルーメの名前を出すが、アスモは頑なだった。
「だーめっ。今すぐ、そんでもっておにーさんと二人で行くのっ。決定事項!」
「うぅ、弱ったな……」
 ちらりとバトルフィールドに目をやると、今まさにフロルとイオンのバトルが始まるところだった。
(フロル……まあ、イオン君が相手だし、大丈夫だよね……?)
 何が大丈夫なのかは分からないが、ぐいぐいと袖を引っ張るアスモを無視するわけにもいかず、フィアは歩を進めた。
 だが、不意にもう一度振り返る。すると今度は、偶然にもフロルと目が合った。彼女はキョトンとした表情で首を傾げている。
 フィアは問題ない、頑張れ、とジェスチャーで伝えようとしたが、その手の動きは人込みの壁で塞がれてしまい、意味をなさなかった。



(フィア……?)
 フィアが会場から離れていくのを見て、フロルは何かを感じた。漠然とし過ぎていて何なのかはよく分からないが、とにかく何かの気配を感じた。
「——ねー? ねーってばさ。どーしたの? さっきからボーっとしてさ」
「っ」
 イオンから声がかかる。フロルは手にボールを持ったまま動かず、不審に思ったらしい。
「ううん。なんでもないよ」
 と返しつつ、フロルは手にしたボールを降ろし、違うボールと入れ替える。
『それでは、両者準備が整ったところで。バトル——スタートッ!』
 戦いのゴングと共にアナウンサーの掛け声が発せられ、フロルとイオンは同時にポケモンを繰り出す。
「出て来て、フカマル!」
「サクッとやっちゃおうか、タツゴン!」
 フロルが繰り出したのは、丸っこく青い体、その体格にしては大きすぎる口、頭のヒレには切れ込みが入っており、例えるなら鮫の頭部のみを極端にデフォルメ化したようなポケモンだ。
 対するイオンのポケモンも、翼のない小さな龍のようなポケモン。頭が大きい水色とオレンジの体で、真ん丸な目に愛嬌を感じる。

『Information
 フカマル 陸鮫ポケモン
 好奇心旺盛なポケモン。大きな口で
 何でもかんでも噛みつき、時には他の
 ポケモンの攻撃までも食べてしまう。』

『Information
 タツゴン 水龍ポケモン
 体に反して体が大きいため、重心が
 ぶれてよく転ぶ。しかし転ぶことで
 体を鍛え、進化の時を待っている。』

『フロル選手とイオン選手のバトルは、ドラゴンタイプ同士のバトルになりましたッ!』
『まだ進化もしていない種のポケモンだが、やりにくい相手だった。特に片方の小龍には、かなり追い詰められた』
『アーロンさんが追い詰められたと? それはどちらでしょうか? やはりフカマルですか?』
 ここでアナウンサーがフカマルだと思うのは、自然なことだ。
 フカマルは地面と複合しており、タツゴンは水と複合しているドラゴンタイプ。一見すれば炎タイプのアーロンに対しては、抵抗力となるタイプを二つ持つタツゴンが有利だと思うだろう。しかしアーロンは初手でキュウコンを繰り出し、特性、日照りで水技の威力を半減させるため、タツゴンでは水技が通りにくくなる。
 だからこそ、アーロンを追い詰めるほどの龍は、日照りの影響を受けにくいフカマルだと思ってもおかしくはない。だがその考えは、ポケモンだけを見た場合だ。
 トレーナーのことは、考慮されていない。
『……見ていれば分かる』
 言葉数少なく返し、それっきりアーロンは黙り込む。そして、フロルとイオンのバトルを静かに観戦していた。
「こっちから行かせてもらおうかな。タツゴン、頭突き!」
 先に動いたのはタツゴンだ。タツゴンは姿勢を低くして頭を突出し、地面を蹴ってフカマルに突っ込む。
「フカマル、突進だよ!」
 フカマルも飛び出し、勢いよくタツゴンとぶつかり合う。
 素の攻撃力でも技の威力でも、タツゴンはフカマルに劣る。フカマルがタツゴンを押し切り、タツゴンは吹っ飛ばされた。
「そのまま砂地獄!」
 さらにフカマルは、タツゴンの落下点に流砂を発生させ、タツゴンを捕えようとする。
「うへー、オレ砂地獄には嫌な思い出しかないんだよねー……ま、だからこそ対策もしてるけどさ。タツゴン、真下に向けて龍の息吹!」
 タツゴンは空中で姿勢を変え、真下を剥いて口から龍の力がこもった息吹を放つ。その息吹が推進力となり、タツゴンは流砂に巻き込まれず地面に着地した。
「まだまだ、水の波動!」
 着地してすぐさまタツゴンは水球を発射する。波動が流し込まれた水流は一直線にフカマルに飛んでいき、直撃した。
「フカマル!」
 吹っ飛び越ししなかったが、フカマルはその一撃で態勢を崩してしまい、後ろに倒れ込んだ。、
「休ませないよ。タツゴン、頭突き!」
 その隙にタツゴンはフカマルに突っ込んで頭突きを喰らわせる。
「もう一撃! 頭突き!」
 タツゴンは怯んだフカマルにもう一度強烈な頭突きをかまし、今度は吹っ飛ばした。
「龍の息吹!」
「っ、噛みつく!」
 タツゴンが追撃として放った龍の息吹を、フカマルはその大口で噛みつき、飲み込んでしまった。
「おぉっ? すっげー、ポケモン技食べるフカマルなんて初めて見た」
 純粋に驚くイオン。観客たちも沸き上がる。
 図鑑説明にもあるように、フカマルは時としてポケモンの技すらも喰らう。しかしそれは簡単にできることではないし、失敗した時のリスクが大きいのでやろうとすることもない。普通なら回避しようとする。
「でも、その防御方法はいつまで保つかな? タツゴン、龍の息吹だ!」
 タツゴンは再び龍の息吹を発射。それに対し、フカマルは避けようとせず、
「来るよ、噛みつく!」
 大口を開け、その息吹を飲み込んでしまう。二度目となるその光景に、観客たちは一度目が偶然でないと分かり、さらにざわめきが大きくなった。
 しかし、
「水の波動!」
 フカマルは続けて放たれた水の波動を喰らい、吹っ飛ばされてしまった。
「高速移動だ!」
 間髪入れずにタツゴンは追撃しようとするが、その準備として自身の脚力を一気に強化し、一瞬でフカマルとの距離を詰める。
「タツゴン、頭突き!」
 そして頭を突き出し、振り下ろすようにしてフカマルを地面に叩きつけた。
「うぅ……フカマル、がんばって! ダブルチョップ!」
「遅い遅い! 躱して水の波動!」
 フカマルはカウンターに手刀を二度振るうが、タツゴンは素早く後ろに下がっており、二撃とも回避して水球を撃ち込む。
「もう一発!」
 さらにもう一発、水の波動を発射して追撃。フカマルが反撃に出る余地もない。
「イオくん、強いよぅ……うぅ」
 涙目になりながら、フロルは攻め続けるイオンとタツゴンを、ただ見つめていた。



さて、イオン対フロルです。ドラゴンポケモン同士のバトルになりましたが、完全にイオン優勢ですね。最初はそんなに強いキャラじゃなかったはずですが……フィアもフィアでアスモとのフラグが立っていますが、このフラグがどう転ぶかは、次回のお楽しみです。というわけで次回、フロル対イオン決着、そしてフィアとアスモのその後、みたいな感じです。次回はイオンのバトルスタイルについても触れようと思います。それでは次回もお楽しみに。

第53話 shrine ( No.137 )
日時: 2013/05/19 15:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: 今回は文字数少なめ。2000字台で更新したのは久しぶり。

「タツゴン、連続で頭突きだ!」
 タツゴンは高速移動で強化された脚力を生かし、フカマルの周囲を旋回しながら頭突きを喰らわせる。
「フカマル、砂地獄!」
「躱して水の波動!」
 フカマルも流砂を発生させてタツゴンの動きを止めようとするが、タツゴンは流砂をジャンプで躱し、球状の水を発射する。
「龍の息吹だ!」
 さらに、水の波動を受けて怯んだフカマルに、龍の力が込められた息吹を吹きつけて追撃。効果抜群なので、ダメージは大きい。フカマルの体力ももう限界だろう。
『これは……凄い連撃ですね。もしかして、アーロンさんが追い詰められたのは、タツゴンの方ですか?』
『この様子を見れば、もしかしなくともそうだ。だがあえて言うなら、俺が苦戦したのはタツゴンではなく、あいつだ』
 と言って、アーロンはサングラス越しにイオンを見据える。
『イオン選手ですか。確かに指示も的確で、攻撃のスピードが速いですね』
『ただ単純に速いのであれば、俺も対策のしようがあったがな』
『はい?』
 意味深なアーロンの言葉に、首を傾げるアナウンサー。
『あれは速いというより、隙がない。攻撃する前後の予備動作が失われているかの如き隙のなさだ。その隙のない動きの結果が、素早い連撃に見えると言うだけの話。結果だけで言えば、どちらも同じだがな』
『はぁ……』
 そして意味も分からず曖昧に頷く。
『その攻撃前後の予備動作を省略する戦闘技術が奴の天賦の才なのか、努力の賜物なのか、なんらかの力が働いているのか……大元の正体はつかめないが、奴は俺が今まで戦ってきたトレーナーの中では、群を抜いてセンスを感じる。五指に入るほどの強さかもしれんな。陳腐な言葉を使えば、奴は天才だ。それも才能にかまける天才ではなく、それ相応に努力を積み重ね、基礎を固めていると見た』
『……随分と評価しますね、イオン選手を』
『事実と俺の思ったことをそのまま述べただけだ』
 とその時、
「フカマル、ダブルチョップ!」
「タツゴン、龍の息吹!」
 フカマルが飛び出して両手に構えた手刀を振り下ろし、タツゴンもそれを迎撃すべく口から龍の力が込められた息吹を放つ。
 フカマルの手刀とタツゴンの息吹がぶつかり合うが、結果は目に見えている。タツゴンの連続攻撃を受け続けたフカマルは疲弊しきっており、体力も限界。そんなフカマルの手刀ではタツゴンの息吹を断ち切るには至らず、やがて吹っ飛ばされてしまった。
「フカマル!」
 吹っ飛ばされたフカマルは地面に落下。体力が限界を超え、戦闘不能となってしまった。
『決着——ッ! Bブロック一回戦の勝者は、イオン選手となりました!』
 アナウンサーの声に合わせ、会場が沸き立つ。イオンは彼なりの真顔らしい、余裕を含んだ笑みを浮かべながら手を振ったりしている。余裕があるのはバトルだけでなく心にもあるようだ。
「……ありがとうフカマル、がんばったね。戻って休んでて」
 フロルは倒れたフカマルをボールに戻す。
 ふと時計を見れば、時間はほとんど進んでいない。長いバトルに思えたが、実際は五分も経っていなかった。
「あ……そうだ」
 フカマルのボールを仕舞いつつ、フロルは思い出した。試合前に見た光景と、同時に感じた何かの気配。
「フィア、どこに行ったんだろ……?」
 フロルはそそくさと会場から出ると、フィアが消えていった森林へと走り出した。



 カゲロウ山は山頂へ向かう道や、その他の道も整備されているのだが、それはなにも祭りのためだけではない。むしろ、祭りは道が整備されているからこそ行われていると言ってもいい。
 この整備された道の本来の目的は参拝や祈祷、即ちカゲロウ山の奥に存在する神社で行われる神事のためだ。
 今は祭り時なので神社に人気はない。普通は祭りに乗じて神社も活気立つものなのだが、ここカゲロウシティでは祭りは祭り、神社は神社と分けられているため、祭りがおこなわれている間に神社を訪れる者はいない。いるとしたら酔いを醒まそうとする酔っ払いか、よほど酔狂な人物か——他に目的を持つ者だ。
「ここ? その、なんとかってなんとかがある祠だかなんだかは?」
「間違いない。この社の奥に、我々が求めるものが安置されている」
 そんな人気のない神社の境内に立つのは、二人の女。正反対とも言えるほどまったく別種の雰囲気を纏う二人だが、共通点としてはどちらも背が高く、そしてどちらも改造されたグリモワールの制服を着ているということだった。
 片方は、グリモワールの制服を作業着のように改造している。後ろが跳ねた黒髪に軍手をはめ、口からは八重歯が覗いている。
 サミダレタウンでフィアの敵対したグリモワール、強欲の七罪人、マモン。それが彼女の、グリモワールにおける立ち位置と名前だった。
 もう片方は、マモンよりも背が高く、凛々しい顔つきの女だった。金糸のように細く繊細な金髪を後ろで一つに縛っている。
 服装は、改造されたグリモワールの制服、というよりそれはもはや服とは呼べない代物だった。鎧、もしくは甲冑と呼ぶのが適切であろう。顔以外の全身を覆う漆黒の鎧、ある程度軽量化したものだろうが、同色の黒いマントと相まって、温暖なカゲロウシティではかなり暑そうだ。
 だが彼女は、そんな気配を微塵も感じさせない涼しい表情で続けた。
「確認作業だ。マモ、貴様がなすべき事は」
「このなんとかって神社で、なんとかってもんを盗ってくんだろ。そんくらい楽勝だって、誰もいねーしな。でもルキ、お前はどうすんの? あたしが戻ってくるまでずっとここで突っ立てるつもり?」
「然り。とはいえ、何もしないまま立っているつもりはない。貴様が社で探索をしている間、私は邪魔が入らぬよう見張りをする。同時にゼブ、ベル、リヴ、アスの四人と連絡を取る」
「はーん、大変だなぁ、ルキも。ったくよ、サタはいつもこういう時は不参加なんだよなー。ちったー仕事しろっての」
「仕方あるまい。サタは七罪人の中でも、我々とは立場が違うものだ」
「そんなもんかぁ? 本当に大将の考えてることはよく分かんねーな」
 不服そうにしながらも、マモンはそこで話を切り上げ、境内を進んでいく。
「最終確認だ。目的の物を見つけ次第、連絡を入れろ。さすれば——」
「大将が送ってくれんだろ? それくらいは覚えてるって。んじゃ、行ってくるわ。誰も通さんでくれよな」
「承知した。元より誰も通すつもりはない」
「あっそ。それは良かった」
 そして二人は、そこで別れた。片や神社の奥へ消えて、片や灯篭の火さえない闇に紛れて——



フロル対イオン、決着です。ですが、フィアとアスモのその後は書けなかったです。いやまあ、これは文字数云々じゃなく、単にどうしようかまだ迷ってるだけなんですがね。それと後半、グリモワールが動き出しました。まだ名前は公開されていませんが、ルキも登場です。これで七罪人は大体出ましたかね? 断言していないのもいますが。さて、それはさておき、次回こそはフィアとアスモのその後を書きたいところです。ではでは、次回もお楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.138 )
日時: 2013/05/19 21:43
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)

こんばんは。最近、初めての中間テスト勉強で、来られなかったのですが、ようやく来ることが出来ました。何か良い感じですね、フィアとアスモは。ですが、何か怪しいような・・・。とにかく、続きが楽しみです!更新、楽しみにしています!こっちも、更新しました。それと、少しストーリーを修正しました。はい、それでは。


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