二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 七つの星と罪
日時: 2013/07/21 23:48
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
 前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。

 ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。

 それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 それでは、白黒の新しい物語が始まります——

登場人物紹介
>>31



プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11

シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43

クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180

第6話 setting off ( No.14 )
日時: 2013/04/17 17:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: フィア、フロル。旅立ちの時——

 フィアはフロルの家に一泊させてもらい、翌日、ポケモン研究所を訪れた。
「よく来たな、二人とも。待ちくたびれたぜ」
 研究所に入るや否や、博士は傲岸不遜な態度で二人を迎えた。
「お前たち二人は今から旅立ってもらうが、ある程度は指針がないとやっていきづらいだろう。元の世界に帰るための手掛かりなんて、どう探せっつー話だ。なぁ、フィア?」
「え、えっと、はい。そうですね……」
 確かにその通りだ。ここはフィアからすればまったく別の世界で、手掛かりなんてどう探せばいいのか分からない。
「フロルもトレーナーとして修行するにしても、どうすればいいのか分からねぇよな。だからとりあえずお前ら、各地のジムを巡れ。そんで、ジムリーダーをぶっ飛ばしてこい」
「ジムリーダー?」
 またしても聞き慣れぬ言葉に、フィアは首を傾げる。
「ジムリーダーってのは、ポケモンジムを管理する者だ。ポケモンジムは多くの街にあり、一つの街に一つある。ジムリーダーも突き詰めればポケモントレーナーの一種なんだが、そんじょそこらのトレーナーとはわけが違う。そうだな、トレーナーを試すトレーナーとでも言うのか。大雑把に言っちまえば、強ぇトレーナーだ。で、そのジムリーダーに勝つとジムバッジなるものが貰え、これを八つ集めるとポケモンリーグに挑戦できる」
「ポケモンリーグ?」
 またまた聞かない言葉に、再び首を傾げるフィア。それに対して博士は説明を続ける。
「ポケモンリーグっつーのは、トレーナーの最高峰とでも言うべき場所だ。四天王とチャンピオントレーナーの五人で構成され、こいつらを全員倒すと、その地方で最強のポケモントレーナーだということが証明されるんだ」
 分かったか? と博士が言い、フィアは首を縦に振る。本当はまだよく分からなかったが、そのうち分かるだろうと判断したのだ。それと、あまり何度も聞き返すと博士が怒りそうだったから、というのもある。
「とりあえずお前らには、これをやろう」
 言って博士が手渡して来たのは、二つの機械だった。一つは赤く、縦に長い薄型の長方形の機械。もう一つモノクロカラーで、こちらは横に長い薄型の長方形をした機械だった。
「赤いのはポケモン図鑑。それにポケモンの情報を登録していけば、ポケモンの詳細な情報が分かる優れもんだぜ」
「じゃあこっちは?」
 胸を張る博士をスルーして、フロルはもう一つの機械を掲げた。
「……そっちはP・ターミナル。通称ターミナルだ。最近ホッポウに根城を構え始めたアシッド機関が開発したもんで、ホッポウ地方の全トレーナーに無料配布してんだよ。メールやテレビ電話みてぇな通信が主な使い方だが、それ以外にもいろいろ機能がある。インストールして機能を追加することもできるぜ」
 若干ふて腐れたような態度で説明する博士。どうしたのだろうか。
「さて、そんじゃあまずはこの中から一匹、ポケモンを選べ。俺からの餞別だ」
 そう言って博士が取り出した箱の中には、モンスターボールが三つ入っていた。
「イーくん——博士、わたしたちにポケモンくれるの?」
「おうよ。だが中身は見せねぇぞ。見せたら面白くねぇからな」
 となると、どっちから取るか決める必要があるのだが、
「じゃあわたしこっち。フィアはどれにするの? ……あれ? どうしたの?」
「いや……なんでも」
 フロルはさっさと自分のポケモンを取ってしまった。まあどうせ中身は分からないのだから、後に取ろうが先に取ろうがあまり変わらないのだが。
「じゃあ、僕はこれで……」
 フィアもボールを取り、博士は箱を閉じて仕舞い込んだ。
「博士、ポケモン見てもいい?」
「ああ、構わねぇ。念のためにポケモン図鑑も異常がねぇかチェックしとけ。ついでだ」
 博士の言葉を半分ほど聞き流し、フロルは爛々とした目つきでボールの中央ボタンを押す。すると、中から光りと共に一匹のポケモンが現れた。
 オレンジ色の体色に小さな体。頭からは三本の毛が跳ねており、小さな嘴があるところを見ると鳥型のポケモンなのだろう。非常に愛くるしい容姿をしている。

『Information
 アチャモ ひよこポケモン
 体内の炎袋で炎を燃やしているため、
 抱きしめると暖かい。最初に見た
 トレーナーの後を付いて行く習性がある。』

 図鑑を開くと、そんな説明文が載っていた。
「とりあえず図鑑の調子は大丈夫か。フィア、お前もポケモン出せよ」
「あ、はい。えっと、こうだっけ……」
 図鑑を仕舞い、フィアも博士から貰ったボールの中央ボタンをプッシュする。すると中から、光と共にポケモンが出て来た。
 水色の丸っこい体躯。頭には直立したヒレがあり、頬にはオレンジ色のエラが付いたポケモン。

『Information
 ミズゴロウ 沼魚ポケモン
 頭のヒレは周りの様子を察知する
 敏感なレーダー。餌を求めて川底
 の岩も粉々にするほどのパワーがある。』

 どうやらこのポケモンはミズゴロウというらしい。図鑑を見る限りパワーのあるポケモンのようなので、頼りになる。
 フロルはアチャモを抱きしめ、フィアはミズゴロウのヒレやエラを弄り、しばらくポケモンとじゃれていると、見かねたのか博士がパンパンと手を叩いた。注目、ということなのだろう。
「ほら、こっち向け。今から近くの街を教えてやっから。ポケモンとじゃれ合うのはいつでもできるだろ」
「あぅ、ごめん……」
「すいません……」
 博士に咎められ、二人は平謝り。
「とりあえずこっから一番近いのはシュンセイシティだな。あそこにはジムもあるし、まずはそこを目指せ。なにか分からないことがあれば、いつでも連絡を寄越せばいい」
「は、はいっ」
「うん、わかったよ」
 そしてフィアとフロルの二人は研究所を後にし、シュンセイシティへと向かう——
「あ、そうだ。フィア、ちょっと待て」
 ——直前に、呼び止められた。
「こいつを持ってけ」
 振り返ったフィアに向けて博士は二つの物体を投げつけ、フィアは辛うじてそれらをキャッチした。それは、一つのモンスターボールと、熱を帯びた暖色の石だった。
「これは……?」
「モンスターボールの中にはダイケンキが入ってる。ジム戦やトレーナー戦での使用は禁止するが、マジでやべぇ時には使え」
 真剣な眼差しで、博士は言う。もはや睨み付けるような目になっているのでフィアは怯んでしまう。
 だが怯んだのはそれだけではない。
「僕に、ダイケンキを持たせるんですか? でもこのダイケンキは——」
 ダイケンキはあの青年のポケモンだ。フィアを救ってくれた青年の。恩人の大事なポケモンを、自分のような者が持っていていいのだろうか。そんな疑念がフィアの中にはあった。しかし博士は、それを否定する。
「分かってる。このダイケンキはお前のポケモンじゃねぇ。だがな、お前を助けたトレーナーだって、お前にとっては手掛かりだろ。だったらそいつのポケモンを持ってた方がいいに決まってるし、なにより助けられたんなら、自分でその恩を返せ。お前がこいつを届けるんだ」
「……はい。分かりました」
「それと、そっちの石は炎の石っつーアイテムだ。そっちも、やべぇ時にイーブイに触れさせてみろ。まぁやばくない時でもいいが、使うかどうかはお前次第だ」
 分かったらもう言っていいぞ、と博士は追い払うように手を振る。引き留めておきながらそれはないんじゃないかと思うが、こうして旅立つための助力をしてもらっているので、邪険にはできない。
「よし……それじゃあ、行こうか。シュンセイシティに」
「うん!」
 かくして、フィアとフロルの旅は始まった。最初の目的地は、シコタン島唯一のジムがある街、シュンセイシティだ。



今回は研究所通例のイベント発生です。貰えるのがシンオウ御三家ではなくホウエン御三家なのには、さしたる意味はございません。ただ白黒の好みがホウエン御三家だっただけです。それと今作から、新しいポケモンが出るたびにインフォメーション……図鑑説明を入れていきます。説明文は既存の説明文をもとに、白黒が自分で考えて作っています。たまにネタが織り交ぜられている時もあるので、その時はくすりとでも笑って頂けると嬉しいです。さて、それでは次回は最初のジムがある街、シュンセイシティです。初っ端からジム戦があるかどうかは、次回をお楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.15 )
日時: 2013/04/18 21:49
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

ようやく、御三家ポケモンがもらえましたが、ダイケンキや博士も、前作と何らかの関係がありそうです。あ、オリキャラ枠が把握できるようにしておいたので、オリキャラを投稿して下さって結構です。それではまた来ますね!

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.16 )
日時: 2013/04/17 20:11
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 白黒的にジョウト御三家でマシなのはバクフーンくらいだと思う

タクさん


 御三家は完全に白黒の趣味で選びました。ちなみに今作では、前作のように御三家がエースとは限りません。さらに言うと、御三家は主人公たちの特権でもありません。
 ダイケンキや博士が前作と関連あるかどうかはご想像にお任せします。下手に言うとネタバレになりかねないので。
 あ、そうですか。ご丁寧にありがとうございます。では、後ほど投稿しに参りますね。

第7話 First Battle ( No.17 )
日時: 2013/04/18 04:13
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: シュンセイシティ、到着。

 シュンセイシティはハルビタウンから歩いて小一時間ほどの場所にある街で、特に名産や名所があるわけでもない、普通の街だった。
 道路はアスファルト、家は木造。そして街の中央には、白塗りのポケモンジム。
「……ここが、シュンセイジム?」
「そのはずだけど……このタウンマップが正しければ」
 フィアはターミナルの機能、タウンマップと目の前の建物を交互に見遣り、場所を照らし合わせる。ジムの場所はここで間違いないはずだ。
「思ったより簡単に見つかったね、ジム。どっちから挑戦する?」
「えっと……フロルからでいいよ。僕はもう少し特訓したいし……」
 ここまでの道中、フィアは数体のポケモンと戦い、倒しているのだが、それでも圧倒的に経験不足。ジムリーダーとは、端的に言って強いトレーナーだ。用心するに越したことはないだろう。
「じゃあ、先に挑戦させてもらうね」
「うん、頑張って」
 そう言ってフロルを見送り、フィアはポケモンセンターに向かった。
 ひとまずポケモンを回復させ、この近くにトレーナーと戦える場所はないか、女医ジョーイさんというらしいに聞くと、なんでもホッポウ地方のポケモンセンターの地下にはトレーナー同士の交流の場が設けられているそうで、そこならトレーナーとバトルができるらしい。
 野生のポケモンとしか戦ったことのないフィアとしては、トレーナーとのバトルは貴重な経験だ。早速その地下に向かった。
 向かった、のだが、
「……えっと」
「すぴー……」
 トレーナーが寝ていた。
 歳はフィアと同じくらいだろう、鼻提灯を膨らませてベンチで熟睡している少年が、そこにいた。
 全体的に白や黄色を基調とした服装で、目を引くのはつばのないふんわりとした大きな帽子。首には長く黄色いマフラーを巻き、黄色いTシャツの上から白九袖の広い半纏のようなものを羽織っている。
「鼻提灯なんて初めて見た……」
 変な感動を抱きながら、フィアは恐る恐るその少年へと近付く。そして、意を決し、言葉をかけた。
「あの……」
「んぅ……っ」
 パチン、と鼻提灯が割れた。すると少年は体を起こし、こちらを向く。
「んー、あー……えーっと、なんだっけ?」
 眠たげな垂れ目を擦りつつ、少年はそんなことを言ってくるが、なんだっけと言われても返答に困る。
 しかし幸か不幸か、少年は自分の中で勝手に解釈をした。
「あ、もしかしてトレーナー? バトル希望?」
「えと、そんな感じ、かな……」
 遠慮がちに返すフィアに、少年は嬉しそうな声をあげる。
「おー。よかったよかった、このまま誰も来なかったどうしようかと思ってたよ。あんまり誰もこないもんだから、つい寝ちゃった。オレはイオン、よろしく」
「あ、えっと、僕はフィアだよ。よろしく……」
 イオンと名乗った少年は立ち上がり、首や背骨をコキコキと鳴らす。随分と長く寝ていたようだ。
「そんじゃー始めよっかー。あ、君……フィア君だっけ? ポケモン、何体いる?」
「えっと、ちょっと待って」
 フィアは自分の手持ちポケモンを指折り数え、
「さ……二体、だよ」
 と答えた。
「二体かー。三対三がよかったんだけど、しょうがないか。じゃあ二対二のバトルでいい?」
「うん、いいよ」
 そんなわけで、フィアの初めてのトレーナーとのバトル。相手は、マイペースな居眠り少年、イオンだ。



「よーし。じゃ、オレからポケモン出すよ。出て来い、キモリ!」
 イオンの一番手は、グリーンカラーのヤモリのようなポケモンだ。

『Information
 キモリ 森トカゲポケモン
 足の裏に棘があるので壁を垂直に
 登ることができる。木の枝や花
 などを咥えてると力が出るらしい。』

 図鑑によると、キモリというポケモンらしい。しかしイオンのキモリは図鑑にあるような木の枝や花は咥えていない。
「えーっと、しゃあ僕は——」
 今回のバトルはポケモンに経験を積ませるためなので、まだ戦闘経験の少ないポケモンをバトルに出したい。となると、
「——ミズゴロウ、出て来て」
 フィアの初手は、ミズゴロウだった。
「え……?」
 そのチョイスに対し、イオンは驚いたような表情をする。
「草タイプのキモリに対して水タイプのミズゴロウって……なにか対策でもしてんの?」
「……? タイプ?」
 フィアが首を傾げるとイオンは、あーと納得したような声を出す。
「フィア君、まだ初心者なのかー。えーっと、タイプっていうのはポケモンバトルで重要な要素で、このタイプによって有利に戦えたり不利に戦えたりするんだよ。例えば草タイプは水タイプに弱く、炎タイプは水タイプに弱く、水タイプは草タイプに弱い、みたいなねー。これを弱点っていって、弱点を突くとダメージが二倍になるんだ」
 つまりキモリは草タイプで、ミズゴロウは水タイプ。相性ではミズゴロウが不利なのだ。
「ターミナルでも調べられるから、あとで見てみれば? あと、ここのジムリーダーはタイプの相性分かってないと、倒すの難しいよー」
「え? イオン君、シュンセイジムのジムリーダー倒したの?」
「んー、まーねー。らくしょーらくしょー」
 気の抜けた感じだが自慢げなイオン。しかしジム戦前に有益な情報を得ることが出来た。どうやらシュンセイジムのジムリーダーは、タイプ相性を重視しているようだ。
「ま、とりあえず始めようか。キモリ、タネマシンガン!」
 最初に動いたのはキモリだ。キモリは口から無数の種を発射し、ミズゴロウを攻撃。効果抜群なのでダメージは大きい。
「ミズゴロウ、反撃だよ。水鉄砲!」
 ミズゴロウも負けじと水流を発射するが、こちらは対照的に、キモリへのダメージは少ない。
「タイプ相性は攻撃を受ける側にも適応されるよ。草タイプは水タイプに対して強いから、水タイプの技のダメージを半減するんだ。キモリ、電光石火!」
 イオンにレクチャーされつつ、キモリが高速で突っ込みミズゴロウを攻撃。今度は弱点を突かれなかったので、ダメージはそれほど大きくない。
「ミズゴロウ、体当たりだ!」
「遅いって、アクロバット!」
 ミズゴロウはキモリに向かって体当たりをしようとするが、キモリは俊敏に動き回り、ミズゴロウを尻尾で攻撃する。かなりすばしっこい。
「だったら、泥かけ!」
 視界を悪くさせようと、ミズゴロウは地面を蹴って泥を飛ばす。しかし、
「当たんない当たんない、電光石火!」
 キモリは既に攻撃に移っており、ミズゴロウは弾き飛ばされてしまう。
「どんどん行くよー、キモリ。アクロバットだ!」
 瞬時にキモリはミズゴロウの背後に回ると、尻尾を叩きつけてミズゴロウを攻撃。さらにキモリの猛攻は止まらず、
「けたぐり!」
 今度はミズゴロウの足を払って転ばせ、ダメージを与える。けたぐりの威力はポケモンの体重に依存する。ミズゴロウは大して重いポケモンではないのでダメージは少ないが、態勢を崩されてしまった。
「アクロバット!」
 休む間もなくキモリは攻撃を続け、ミズゴロウを押し飛ばした。
 これほどのスピードで攻撃できるキモリも凄いが、そのキモリの猛攻を耐えているミズゴロウの耐久力も相当なものだった。しかしそれももうすぐ限界、ミズゴロウの体力は残り僅かだ。
「うぅ……全然攻撃できない。ミズゴロウ、岩砕き!」
 岩を砕く勢いで突っ込むミズゴロウだが、単調な攻撃では簡単にキモリに躱されてしまい、隙を作るだけだった。
「とどめ! キモリ、タネマシンガンだ!」
 キモリは無数の種を発射してミズゴロウを攻撃。その弱点を突く連撃で、ミズゴロウはその場に倒れ込んだ。
「あ……ミズゴロウ!」
 ミズゴロウは完全に目を回しており、もう戦える状態ではない。戦闘不能だ。
「ありがとう、ミズゴロウ。戻って休んで」
 フィアはミズゴロウをボールに戻す。結局、キモリは効果いまひとつの水鉄砲一発しかダメージを与えられなかった。
「あと一体か……今度は相性も大丈夫なはず。出て来て、イーブイ!」
 フィアの二体目はイーブイだ。
「へー、ノーマルタイプかー。でもキモリは格闘タイプ技のけたぐりがあるから、こっちの方が有利って感じ? キモリ、けたぐり!」
 キモリは相変わらずのスピードでイーブイに接近し、足払いを仕掛けるが、
「イーブイ、躱して目覚めるパワーだ!」
 イーブイはジャンプしてけたぐりを躱すと、赤い球体を発射する。球体はキモリに直撃すると、メラメラと燃え上がった。
「えっ? キモリ!」
 キモリはその一撃で戦闘不能。スピードはあっても耐久力は低いようだ。
「あっちゃー、炎タイプの目覚めるパワーかー……戻れ、キモリ」
 イオンはキモリを戻し、次のボールを手に取る。これでお互い、ポケモンは一体ずつだ。
「よーし。そんじゃ、次行ってみますかー」
 そして、イオンの次のポケモンが繰り出される——



いよいよシュンセイシティに到着、しかしジム戦はフロルに譲り、フィアはひとまず特訓。そして今回の新キャラ、マイペースな居眠り少年、イオンの登場です。スピードでミズゴロウを攪乱して倒しましたが、それ以前に今回の敗因は完全にフィアの知識不足ですね。それでは次回、イオン戦決着です。イオンの次なる手はなんなのか、次回もお楽しみに。

第8話 ジムリーダー ( No.18 )
日時: 2013/04/18 17:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: シュンセイジム、ジムリーダー登場!

「出て来い、サンダース!」
 イオンの二番手は、四足歩行の黄色い毛並を持つ獣型ポケモン。首回りだけは白く、パチパチと何かが弾けるような音を鳴らしている。

『Information
 サンダース 雷ポケモン
 針のような体毛の隙間には
 マイナスイオンが発生する。
 バチバチと火花が散るのは威嚇の合図。』

 サンダースはイーブイを見ると、一瞬にして鋭い目つきに変わり、全身の体毛も針のように尖らせた。同時にパチパチという音はバチバチと強い音になる。
「サンダースは……イーブイの進化系か」
 フィアにはまだ進化というものがよく分からないのだが、いずれイーブイもあのようになるのろうと解釈した。
 なにはともあれ、今はバトルだ。サンダースはイーブイを威嚇しており、やる気満々だ。
「オレのサンダースは強いよー。シュンセイジムでは、キモリが早々にやられたから、実質サンダース一匹で勝ったようなもんだしねー」
 確かにイオンの言う通り、サンダースは見るからに強そうだ。それはフィアにも分かる。
「でも逆に考えれば、このサンダースを倒せれば、僕らもシュンセイジムで勝てるってことだよね……やろう、イーブイ。電光石火だ!」
 イーブイは力強く鳴き、地面を蹴ってサンダースへと突っ込むが、
「サンダース、こっちも電光石火!」
 サンダースも同時に動き出し、イーブイよりもずっと速いスピードで突撃。イーブイを吹っ飛ばした。
「ミサイル針だ!」
 続けて針のように鋭く尖った体毛を無数に発射し、イーブイに突き刺す。ダメージはそこまで多くないが、非常に痛そうだ。
「イーブイ、大丈夫?」
 イーブイは起き上がり、体を小刻みに震わせて針を抜く。そしてサンダースをキッと睨み付けた。まだまだやる気のようだ。
「よし、じゃあ目覚めるパワーだ!」
 イーブイは赤く燃える球体をサンダース目掛けて発射するが、その時、既にサンダースはそこにはいなかった。
「え……?」
「二度蹴り!」
 そして気付いた時には、サンダースはイーブイの正面まで接近し、二連続で蹴りを繰り出す。二度蹴りは格闘タイプの技なので、ノーマルタイプのイーブイには効果抜群だ。
「まだまだ行くよ、サンダース。マッハボルト!」
 間髪入れずにサンダースは電撃を発射し、イーブイに追撃をかける。態勢の整っていないイーブイは、電撃の直撃を喰らう。
「あ、う……イーブイ、噛みつくだ!」
「遅い遅い、ミサイル針!」
 イーブイが牙を剥きサンダースに向かって駆けだす直前、サンダースは鋭い体毛を発射して地面に突き刺し、イーブイの動きを止める。
「今だ、二度蹴り!」
 そしてイーブイが動きを止めた一瞬で距離を詰め、二連続の蹴りを放ち、イーブイを上空へと蹴り上げた。
「しまった……イーブイ!」
 空中に放り出され、身動きの取れないイーブイ。このままではいい的だ。
「これでとどめ! サンダース、マッハボルト!」
 案の定サンダースは高速で電撃を射出。空中にいるイーブイへと直撃させた。
「イーブイ!」
 ドサッと、地面に落ちたイーブイは目を回し、戦闘不能となっていた。



「勝った勝った、お疲れ、サンダース。もう戻っていいよー」
 イオンはサンダースをボールに戻し、フィアの所へと歩み寄って来る。
「あ……えっと、強いね、イオン君。全然敵わなかったよ」
「いやー、それほどでもあるかなー。ま、オレ天才だし?」
 かなり自信家というか、自信過剰ともとれる発言だったが、実際イオンは強かった。フィアが初心者であることを差し引いても、ポケモンが技を繰り出す前後にほとんど隙がなく、動きも機敏。指示も素早く的確だったので、才能を感じるものはあった。
「でも、フィア君もけっこー強かったよ? 正直、キモリ一体で終わらせるつもりだったし」
「あはは……そうかな」
 褒められるのは純粋に嬉しかったが、キモリだけで終わらせるという発言には、流石にフィアも若干へこむ。そこまで甘く見られていたのだろうか。
 イオンはチラッと壁に掛けられた時計を一瞥する。
「うーん、今日はもう宿舎に戻るかなー。フィア君も明日ジム行くんだよね? だったら今日はもう休んだら? それか、オレはもう少しこの辺で特訓してるから、バトルの申し込みはいつでも受けて立つよ」
「うん、ありがとう……とりあえず今日はもう休むよ。ポケモンバトルって、結構疲れるんだね。初めてトレーナー同士で戦ったから、もうくたくた……」
「……へぇー」
 イオンはどこか含みのある返しをすると、ばいばいと手を振って帰っていった。
「あ……フィア、ここにいたんだ」
 そしてイオンと入れ違いに、フロルが地下に降りてきた。ジム戦が終わったのだろう。
「さっきの男の子、フィアの友達?」
「友達っていうか……ここで知り合ったトレーナーだよ。イオン君っていって、さっきバトルをしたんだけど、負けちゃったよ。フロルはどうだったの、ジム戦?」
 フィアがそう聞くと、フロルはえへへと笑い、
「……わたしも負けちゃった」
「そう……残念だったね」
「うん。あのジムの人、すっごく強かったよ。いっぱい弱点突かれちゃって、すぐにやられちゃった」
 イオンに続きフロルの証言から、シュンセイジムのジムリーダーがタイプ相性を強く意識していることは当確のようだ。
「もっと特訓して、ポケモンたちを強くしないと。フィアは明日ジム戦だよね? フィアがジム戦してる間に、特訓してきていいかな?」
「うん、勿論いいけど……」
 わざわざ訊くことだろうか、と思いつつ口には出さない。フロルの正確から考えると、応援に行けないのが心苦しいとか、そういうこと思っているのだろう。フィアも今日は自分の特訓に費やしたので、気にすることはないと思うのだが。
「……とりあえず、今日はもう休もうか。特訓するにしても、体調管理はちゃんとしないと」
 こうして、フィアの一日は終了した。明日はフィアにとって初めてのジム戦だ。



 翌日。
 フロルは砂礫の穴なる洞窟へと特訓しに行き、フィアはジム戦を行うべく、ポケモンジムへと向かった。
 鉄筋コンクリートで建築された白塗りの建物はいざ入ろうとすれば、思いのほか威圧感がある。
 ジム戦では負けてもペルティがない。しかしそれでも、緊張してしまうものだ。
 フィアは己を奮い立たせ、重厚そうなドアを押し開ける。
「よ、よろしくお願いしま——っ!?」
 控えめに入ったフィアは驚愕の表情を見せる。
 まず真っ先にフィアの目に飛び込んできたのは、大きなバトルフィールドだ。障害物などはないが、イオンと戦ったポケモンセンター地下よりも一回りほど大きい。
 だがそんなことでは、いくらフィアでも驚いたりはいない。ジムなのだから、バトルフィールドが多少大きくても驚くには値しないだろう。だからフィアが驚いたのはフィールドの広さではない。ならばその理由はというと、
「ふ、布団……!?」
 だった。
 バトルフィールドのど真ん中に、布団が敷いてあったのだ。しかももぞもぞと動いており、誰かが寝ているのは明らか。
 ジムに入ったらバトルフィールドの真ん中で布団敷いて誰かが寝ていれば、当然ながら誰だって驚く。それはフィアも例外ではない。
「んー……?」
 こちらの存在に気付いたのか、布団の中の人物がもぞもぞと這い出てくる。
「あれぇ……挑戦者の人かなぁ?」
 緩い口調でゆらゆらと立ち上がったのは、若い男だ。黄色い三本線の入った寝巻のようなTシャツとジャージを着ており、フィアほどではないが少々小柄であどけなさ残る顔。垂れ目かつ半眼の非常に眠たげな眼に、寝癖のついたピンク色の髪は頭頂部が特に酷く跳ねている。
「えっと、はい……フィアといいます」
「ぼくはイチジクだよぅ。よろしくねぇ」
 男——イチジクは布団を畳みつつ、ゆるゆるとした口調で名乗る。

『Information
 ジムリーダー イチジク
 専門:ノーマルタイプ
 異名:眠れる王子スリーピィプリンス
 趣味:昼寝、うたた寝、二度寝    』

「ごめんねぇ、今日は誰も来ないと思って寝てたんだぁ。ふわぁ……」
 眠そうに欠伸をし、イチジクは畳んだ布団をジムの端へと寄せる。やる気のなさそうな態度のわりに、変に几帳面だ。
「それじゃぁ早速、始めようかぁ?」
「……はい。お願いします!」
 なにはともあれジム戦だ。フィアは気を引き締め、ボールを握り込む。
 かくして、フィアの最初のジム戦が今、始まる——



今回はイオン戦決着、そして最初のジムリーダー、イチジクの登場です。イオン戦は、まあ負けるべくして負けたという感じですね。実戦経験の差と、ポケモンの能力が違いますし。さて読めば分かるように、今回はジムリーダーなどの主要な人物のプロフィールを載せることにしました。ネタから伏線まで様々なことを盛り込む予定です。それでは次回、ジムリーダー、イチジク戦。フィアの最初のジム戦です。お楽しみに。


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