二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 七つの星と罪
- 日時: 2013/07/21 23:48
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。
ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。
それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
それでは、白黒の新しい物語が始まります——
登場人物紹介
>>31
プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11
シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43
クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180
- 第24話 help of the goddess ( No.84 )
- 日時: 2013/04/29 15:41
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 謎の少女、フィアに救いの女神到来!
突然この場に現れた少女。少女はゆっくりとフィアの隣まで歩む。
同時に、角にピンク色の花を咲かせた鹿のようなポケモンも歩を進める。さっきウソドロを攻撃したのは、このポケモンだろうか。
そう思いつつ、フィアは図鑑を開くが、
『no information』
「……? 情報がない?」
砂嵐を背景にそんな一文が表示されるだけで、このポケモンに関する情報が一切開示されない。
「このポケモンは季節ポケモン、メブキジカ。四季の存在する地方にだけ生息するポケモンです」
フィアが首を傾げていると、少女が端的にそう教えてくれた。
「あの、あなたは……?」
礼より先に、フィアからはそんな言葉が飛び出す。味方のようだが、素性が分からなくては不安だ。
そんなフィアの心情を察したのか、少女は嫌な顔一つせず名乗りを上げた。
「私はミキ。わけあってホッポウ地方を旅してます。君は?」
「フィアです……」
「フィア君だね。うん、覚えました」
少女——ミキはフィアの名前を復唱し、視線を動かす。その先にいるのは、マモンだ。
「さて、それじゃあここからは、フィア君に代わって私が戦うよ。覚悟はいいですか?」
「うーん……あんま可愛い女の子を泣かせたくはないんだけどな。ま、しゃーねーってことで」
ミキのメブキジカとマモンのウソドロも構え、火花を散らしている。互いにしばらく睨みを合いを続け、
「ウソドロ、辻斬り!」
「メブキジカ、ウッドホーン!」
共に駆け出す。
ウソドロの爪とメブキジカの角が交錯し、互いに傷を負わせる。
「自然の力!」
振り返り、メブキジカは大きく声を上げる。すると海に波が立ち、その波はどんどん巨大化し、大波となってウソドロに襲い掛かる。
「やっぱりさっきの波は自然の力か。ウソドロ、ジャンプ!」
ウソドロは一息で空高くジャンプし、凄まじい跳躍力で大波を回避する。さらに、
「先取り!」
跳躍した勢いのまま、ウソドロは落下しながらメブキジカに強烈な飛び蹴りを浴びせる。メブキジカは足を浮かせた瞬間だったため、その攻撃を回避できなかった。
「先取りは文字通り、相手の技を先取りする技。ノーマルタイプのメブキジカには、格闘技の飛び蹴りは効くんじゃないか?」
勝ち誇ったような笑みを浮かべるマモン。だが彼女の言う通り、メブキジカは先取りされた飛び蹴りを喰らい、大ダメージを受けてしまった。
「……メブキジカ、ウッドホーン!」
「なんど来たって無駄だ! ウソドロ、辻斬り!」
メブキジカは角を構えて突進し、ウソドロは爪を振りかざしてメブキジカに斬りかかる。
互いに攻撃を繰り返し、打ち合い鍔迫り合いの様相を呈してきた。
「どうしよう、このまま見てるだけなんて……」
そんな中、戦えないフィアはそう呟く。
(そう言えば、前もこんなことあったっけ)
それはこの世界に来る前、闇に閉ざされた遺跡で青年が黒い渦から出て来たポケモンと戦っている時だった。
あの時は下手に出しゃばったせいでポケモンを傷つけてしまったフィア。しかし、今は違う。
(そうだ、今は……こんな時だからこそ、力を借りるしかない)
思い出したフィアは、鞄の中から一つのボールを取り出す。
「ごめんなさい、あなたのポケモンの力、少しだけ貸してください……!」
どこにいるかも分からぬ彼にそう断ってから、フィアは手にしたボールを放る。
「力を貸して、ダイケンキ!」
現れたのは、一体の海獣。法螺貝のような立派な角に、屈強な青い肢体。蓄えた白髭と、非常に貫禄のあるポケモンだ。
『Information
ダイケンキ 貫禄ポケモン
鎧に仕込まれたアシガタナで
敵を切り裂く。刀を抜いて戻す
居合の速度も非常に速く、視認は困難。』
「っ、今度はなんだ!?」
「師匠……?」
また声を荒げるマモンと、呆然とダイケンキを見据えるミキ。そんな二人のことなど気にも留めず、フィアとダイケンキは二人の戦いに斬り込んでいく。
「ダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキは前足の鎧から仕込み刀——アシガタナを抜刀し、その巨躯からは考えられないスピードでウソドロに斬りかかる。
ウソドロもダイケンキの登場に驚いていたのか、その場から動かず、成すがままにシェルブレードを喰らい、返す刀でさらに切り裂かれ、その場に倒れ込む。
「なっ……ウソドロ!」
メブキジカの攻撃を受けたとはいえ、ウソドロがたった二回の攻撃で戦闘不能になった事に対し驚愕するマモン。いや、それだけではない。
「なんなんだよ、あのガキとダイケンキは……! あんな奴が、あれほどのダイケンキを使いこなせるわけがねーだろうが……!」
俗に言う、レベルが高いポケモンは、ある程度の強さを持ったトレーナーでないと命令を聞かないものだ。トレーナーの強さの目安はジムバッジなのだが、フィアの持つバッジは現在一つ。ウソドロをシェルブレード二回で倒すようなダイケンキに命令して、素直に聞き入れてもらえるほどの力はないはず。マモンはそう思っており、実際にはその通りだ。
「なんだよ、なんなんだよ、あのダイケンキ。こりゃ、あたしの残りの手持ちでも厳しい……あっちの女の子も怖いし、どうすっか……」
追い詰められ、弱ったような表情を見せるマモン。順当に行けば、このままフィアたちの勝利だ。
だが幸運とは平等なもの。フィアにミキという幸運が訪れたように、マモンにも、幸運が訪れた。
「マモ……何してるの……?」
どこからか声が聞こえる。しかし辺りを見回しても、それらしい人影はない。
だがマモンだけはその声の主がどこにいるのか分かったようで、甲板の手すりに乗り出した。
「おぉ、リヴ! 良いとこに来てくれた!」
などと歓喜の声を上げながら、マモンは手すりを越えて海へとダイブした。その行動に目を見開くフィアとミキも、手すりから目下の海面を見下ろす。
するとそこには、マモンと、一人の少女。
全く手入れをしていないような痛んだ黒髪で、片目が隠れるほど左右非対称に前髪が伸びている。服装は傷だらけのグリモワールの制服をエプロンドレス——いわゆるメイド服のように改造しているが、俗に言うコスプレなどのために見栄えをよくしたものではなく、もっと質素で地味な機能性を重視した服装に見える。
さらにその下。マモンと少女を乗せている一匹のポケモン。長魚のような姿をしており、一言で言えば非常に美しいポケモンだ。
『Information
ミロカロス 慈しみポケモン
世界で最も美しいと言われている
ポケモン。荒んだ心を癒す波動を
放ち、争いを収める力があるらしい。』
「いやー、助かったー。あいつらマジでやべーって」
「……?」
リヴと呼ばれた少女は首を傾げるだけで、状況がまだ飲み込めていないようだ。しかしマモンは構わず、
「とにかくサッサと逃げんぞ。戻って来たってことは、終わったんだろ?」
少女は静かにコクリと頷く。そしてミロカロスに何か囁くと、次の瞬間、ミロカロスは薄い泡のような膜に包まれた。
「んじゃ、ここはとんずらさせてもらう。ポケモンはさっきのコンテナんとこに置いてあるから、好きに持って帰んな」
マモンは最後にそう言い残し、少女、ミロカロスと共に海へと沈んでいってしまった。
「っ、待て——」
「待つのは君だよ」
フィアが身を乗り出そうとするのを、ミキは手で制した。
「あれはダイビングっていう、潜水する技。もう追いかけられません。それに、君の目的は別のものでしょ?」
言われてフィアは思い出した。確かに、自分の最初の目的はフロルのポケモンを取り返すことだ。頭に血が上って忘れてしまっていた。
フィアはさっきマモンがボールを置いたコンテナへと走り、そこで自分のボール、そしてフロルのボールを手に取る。
「良かった……!」
安堵の溜息を吐くフィア。ミキは辺りを見回しつつ、フィアに歩み寄って来る。
「下っ端たちはいつの間にか逃げちゃったか……ところでフィア君?」
「はい、なんですか?」
ミキが少し不安そうな、焦ったような空気を醸し出しながら訪ねてくる。
そして、その質問の内容は、フィアにとっても重大なことだった。
「一つ聞きたかったことがあるんだけど……君、サミダレ大会の決勝戦に勝ち進んでませんでしたっけ?」
「……あ」
こちらも、完全に忘れていた。
フィアは慌ててターミナルを取り出し、現在の時間を確認する。するとフィアの顔は真っ青になっていく。
「しまった……!」
決勝戦が始まるまでの残り時間は、三分を切っていた。
今回はマモン戦終結、そして前作を知っている方なら分かったであろう少女、ミキの名前が明かされました。今作でも彼女には出てもらいますが、頻度はさほど多くないと思うので過度な期待はしないでください。ちなみに彼女の口調は、今作では常体と敬体を織り交ぜたものとなっています。前作だとほとんど敬語でしたが、それだと他のキャラとの差別化が……という理由です。それと前回、今回で分かった人もいると思いますが、グリモワールの七罪人は、マモンがマモと呼ばれていたり、それぞれ愛称で呼び合っています。なのでリヴというのも本来の名前ではないです。彼女の名前はもっと長いです。いつその名前が明かされるかは分かりませんが。さて、それでは次回、フィアは決勝戦に間に合うのか!? という展開です。お楽しみに。
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 オリキャラ募集 ( No.85 )
- 日時: 2013/04/29 15:55
- 名前: タク ◆9mCc3lFAO6 (ID: 39RfU1Y2)
はい、修正しておきました。いや、でもこれはやばくないですか!?あっそうだ、テレポート使えば・・・ってエスパーポケモンをフィアは持っていませんでしたね。でも、そういえばダンバルを序章で手に入れてたような・・・。あのダンバルはどうなったんですかね?それはともかく、フィアは間に合うんでしょうか!?大丈夫、気合いがあれば!
ライガ「何を無茶ぶりな。」
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 オリキャラ募集 ( No.86 )
- 日時: 2013/04/29 17:12
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: PWT水エキスパートクリア! ただしカスミへのリベンジは未達成。
タクさん
了解です、後ほど確認しておきます。
そうですね、やばいですね。あのダンバルについては……まあ、いつか明らかになります。その時をお楽しみに。
フィアがどうやって会場まで辿り着くのかは、案外スタンダードな方法だと思いますよ? 少なくともポケモン界においては。
ちなみに進化だけでなくとも、他のポケモンの技を変更することもできますので。まあ、まだテイルはシビシラスしか出ていませんが。
- 第25話 first battle ( No.87 )
- 日時: 2013/04/29 17:18
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: サミダレ大会ビギナーカップ決勝戦。その行方は……?
サミダレ大会ビギナーカップ決勝戦。
決勝は天井のドームを開いた吹き抜けの状態で戦う、開放感溢れるフィールドだ。
本来ならビギナー同士のバトルでも熱狂する観客たちなのだが、今はそうではない。むしろ皆、シーンと静まり返っている。
『決勝戦開始まで残り三分を切りました! しかしフィア選手、一向に現れません! 一体どうしてしまったのか!?』
『試合開始までに片方の選手がフィールドに来なければ、もう片方の選手が不戦勝になるというルールでしたね。流石に決勝戦にもなると、観客たちの期待も大きいですから、これが不戦勝などという結果に終わってしまうのは、残念極まりないでしょう』
現在フィールドに立っているのはフロル一人。最初はフィアが来ないうちにフィールドに向かうことを渋っていたのだが、フィアが戻って来ると信じてフィールドに立つよう、ルゥナに押し出されたのだ。
(フィア……)
物憂げな表情で、ただひたすらに、フロルはフィアを待っていた。
「どうしよう、このままじゃ間に合わない……!」
試合開始まで、残り時間は二分を切った。しかし現在フィアがいる船着き場からでは、どんなに急いで走っても試合会場まで五分はかかる。どう足掻いても間に合わない。
しかしそれでも、無に等しい、0%以下の望みに縋るように、フィアとミキは走っていた。
「折角ポケモンを取り返したのに、決勝でフロルと戦えると思ってたのに……!」
それがすべて、水の泡になってしまう。
幸い、決勝戦を観戦すべく多くの人は観客席にいるようで、人はいない。全速力で走っても問題ないのだが、そんなことは関係なかった。
十字路を左折し、ポートから出る二人。そこで、急にミキが足を止めた。
「ミキさん! なにしてるんですか? 早くしないと——」
「どうせ走っても間に合わないんだよ。だったら別の方法を取るべきです」
と言ってミキが指差すのは、備え付けられているパソコンだった。積み荷を降ろすためのポケモンを引き出したり、試合に出る選手がポケモンを入れ替えたりするために使うパソコンだ。
ミキは電源を入れ、素早く自分のボックスを開いた。
「今、私の手持ちはメブキジカ一体。それに乗って走っても、さっきの戦いで負傷してるからたぶん間に合わない。でも、このポケモンなら——」
ボックスからポケモンを引き出し、転送装置に一つのボールが転送される。ミキはそのボールを取り、ボタンを押して中からポケモンを出した。
「このポケモンに乗って、フィールドまで直行するよ!」
『もう残り時間は三十秒です! フィア選手まだ現れません! 本当に何があったのか!?』
モニターには試合開始までの残り時間が表示され、カウントダウンを始める。刻一刻と時間が進み、試合開始までの時が迫っていく。
観客たちはもう冷めきってしまい、観客席から出ようとするものまで出て来る始末。もうフィアは現れず、フロルの不戦勝で決勝戦、そしてビギナーカップは終了する。誰もがそう思っていた。
その時。
漆黒の鳥が、フィールドの中央に突撃した。
『な、なんだ——!? 突如、黒い鳥ポケモンがフィールドに降ってきた——!』
『いや、飛んできた、の間違いでしょう……しかし』
砂煙が濛々と舞い、そのポケモンの姿は見えない。だがやがてその砂煙も晴れていき、ポケモンの姿が露わになる。
『Information
バルジーナ 骨鷲ポケモン
骨を集めて巣を作る習性がある。
骨は他にもバルジーナを着飾る
ためのアクセサリーにもなる。』
フィールドに突っ込んできたのはバルジーナ……だけではなかった。その背には、二人の少年少女が乗っている。
「ふぅ……ギリギリ、間に合ったね」
「死ぬかと思った……」
モニターの残り時間を見つめる少女と、ふらふらになってバルジーナから降りる少年。
言うまでもなく、ミキとフィアだ。
「私はまだやることがありますから、ここで失礼しますが……応援してるよ。頑張ってね」
「はい、ありがとうございました!」
手を振って、ミキはバルジーナに乗ってそのままどこかへと飛び去ってしまう。今思えば、彼女にはかなり助けられた。七罪人を退けるにも、この場所に来るにも、彼女がいなければどうしようもなくなっていた。
「フィア!」
とその時、フィールドの端からフロルが叫ぶ。
フィアはフロルの方を向くと、ゆっくりとポケットからボールを取り出し、
「フロル! ポケモン、取り返して来たよ!」
シュッと、フロルにボールを投げ渡す。投げられたボールは、すっぽりとフロルの手の中に収まった。
「フィア……ありがとう」
フロルは込み上げる喜びを、柔らかい微笑みで表した。
とそこで、アナウンサーが割り込んで来る。
『なにやら選手二人の間でいい空気が流れていますが、なにはともあれ、サミダレ大会ビギナーカップ、決・勝・戦! 戦うのは、試合開始まで残り七秒というところで空から滑り込んできたフィア選手! お前はどこのヒーローだ——!』
いつになくテンションの高いアナウンサー。そして狙ったわけでもないがギリギリで滑り込んできたという登場の仕方に、観客たちも意気揚々と沸き上がる。
『そしてそのフィア選手の相手は、紙一重の試合をギリギリのところで勝利していったフロル選手! 逆転勝利を得意とするフィア選手に、その力はどこまで通用するのか!』
フィアはそんなアナウンサーの声を聞きつつ、フロルとは反対側のフィールドの端、トレーナーの定位置へと移動する。そして、ボールを構えた。
(そう言えば、フロルとバトルしたことってなかったな)
どころか、バトルを見た事すらない。シュンセイジムではグリモワールと戦い、準決勝まではフロルが映し出される前に試合が終わっていた。
ここまでの道中、共に支え合ってきた仲だが、バトルをするのはこれが初。そう思うと、妙な気分だ。
『さぁ、いよいよ戦いの銅鑼が鳴り響きます! サミダレタウンバトル大会ビギナーカップ決勝戦! 試合——』
マイクを握り締めたアナウンサーは大きく間を空け、
『——スタート!』
最後の試合が、開始された。
「最後は任せた、ブースター!」
「頼んだよ、リーフィア!」
フィアが繰り出すのはブースター。そもそもミズゴロウがマモンとのバトルで戦闘不能、そこからここまで来るのに回復させる余裕などなかったため、必然的にブースターをだすことになる。
そしてフロルのポケモンは、クリーム色のスマートな肢体。体の各所からは草が生え、緑色の耳や尻尾には葉脈のような模様や切れ込みがある。
『Information
リーフィア 新緑ポケモン
細胞が植物に似ているため、
光合成が行える。尻尾の葉っぱは
大木を両断するほどの切れ味を誇る。』
「リーフィア……このポケモンも、イーブイの進化系なんだ……」
だとすれば今まで見たサンダースやブラッキーのように、なにかの能力に特化していると考えられるが、それを考える以前にブースターは炎タイプで、リーフィアは草タイプ。相性ならブースターの方が圧倒的に有利だ。
だが、タイプ相性だけでは、バトルは決まらない。
「リーフィア、剣の舞!」
先に動いたのはリーフィアだ。しかし攻撃せず、その場で剣のように鋭く舞い踊る。
『フロル選手のリーフィア、先制して剣の舞! 攻撃力を上げてきました!』
『相性的にリーフィアはブースターに弱い。しかも覚える技もさほど多くないですから、攻撃力を上げて火力だけでも対抗するつもりなんでしょうね』
剣の舞は攻撃力を二段階上げる技。これでリーフィアの攻撃は、最低でもブースターに等倍で通るようになった。
「じゃあ行くよ、フィア」
軽く息を吐き、フロルはリーフィアへと指示を飛ばす。
「リーフィア、リーフブレード!」
リーフィアは太陽の光に葉っぱのような尻尾を煌めかせ、一直線にブースターに向けて走り出す。
フロルは本気、そして全力だ。ならばフィアとブースター、全力で迎え撃つしかない。
「ブースター、ニトロチャージ!」
ブースターは全身に炎を纏い、地面を蹴って駆け出した。
リーフィアのリーフブレードと、ブースターのニトロチャージがぶつかり合い、交錯する——
いよいよ始まりました、決勝戦。ミキのバルジーナのお陰でフィアは試合に間に合いました。そして始まるフロルとの初バトル。サンダース、ブースター、ブラッキーときて、フロルの持つブイズはリーフィアです。ブースターほどじゃないですが、リーフィアもわりと冷遇されてますよね、個人的には好きなんですが……それはさておき。次回は決勝戦、決着です。そして……次回もお楽しみに。
- 第26話 divorce ( No.88 )
- 日時: 2013/04/29 20:40
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 激闘を広げるフィアとフロル。戦いを制するのはどちらか……!
ブースターとリーフィアの攻撃は激しくぶつかり合い、互いに身を退いた。
「火炎放射!」
その後すぐに切り返したのはブースターだ。口から燃え盛る炎を噴射し、リーフィアを攻撃する。
「リーフィア、かわして燕返し!」
リーフィアは襲い掛かる炎を横に跳んで回避し、そのままブースターへと突っ込み、尻尾で切り裂いた。剣の舞で攻撃力が上がっているため、ダメージは大きい。
「アイアンテールだ!」
「もう一度、燕返し!」
ブースターは反撃に鋼鉄のように硬化させた尻尾を振るい、リーフィアも鋭い尻尾で斬りかかる。
双方の攻撃がまたしてもぶつかり合うが、今度の結果はブースターの勝ちだ。剣の舞で攻撃力を上げても、まだブースターには届かなかない。
「ブースター、攻めるよ。ニトロチャージ!」
大きく後退するリーフィアに、ブースターは炎を纏って追いかけるように駆け出す。
「かわして!」
リーフィアはまた横に跳んでニトロチャージを回避するが、
「まだまだ! 火炎放射!」
すぐさまブースターは火炎放射で追撃。
リーフィアはなんとか身を捻って躱そうとするが、避けきれず炎を少し掠めてしまう。
「リーフィア、こっちも負けてられないよ。ポイズンリーフ!」
リーフィアは一度態勢を整えると、尻尾や耳を振るって無数の葉っぱを射出する。葉っぱは紫色を帯びており、危険な香りが感じられた。
「ブースター、火炎放射だ!」
咄嗟にブースターは火炎放射を放ち、迫り来る葉っぱを燃やし尽くしてしまう。しかし、
「リーフブレード!」
火炎放射でブースターの視界が塞がった瞬間、リーフィアはブースターとの距離を一気に詰め、葉っぱのような尻尾で切り裂いた。効果はいまひとつだが、剣の舞があるので実質的に等倍でダメージが通る。
「燕返し!」
「アイアンテールで弾き返すんだ!」
リーフィアは返す刀で追撃を試みるが、ブースターも鋼鉄の尻尾で素早く切り返し、リーフィアを弾き飛ばす。
「ニトロチャージ!」
そして炎を纏って突進。リーフィアが地面に着地した瞬間に攻撃が当たる、絶妙なタイミングだが、
「リーフブレードだよ!」
リーフィアは空中で身を捻って態勢を変え、尻尾を振り下ろすようにしながら落下。そのままブースターとぶつかり合う。
しばし競り合っていた二体は互いに飛び退き、睨み合う。
(フロル、こんなに強かったんだ……これならシュンセイジムでも普通に勝てると思うけど……)
そんなことを思うフィアだったが、今はバトル中だ。雑念を振り払い、頭を切り替えてバトルに集中する。
「ブースター、アイアンテール!」
「リーフィア、ポイズンリーフ!」
ブースターは尻尾を鋼鉄のように硬化させてリーフィアへと突っ込み、リーフィアは毒素を含んだ葉っぱを飛ばしてブースターを切り裂く。
ブースターはポイズンリーフに切り裂かれながらも足を止めず、リーフィアに接近して尻尾を振るい、大きく吹っ飛ばした。リーフィアは地面に叩きつけられ、砂煙に包まれる。
「よしっ」
手応えのある一撃。まともに入ったので、リーフィアには大ダメージだと思いきや、
「燕返し!」
砂煙の中からリーフィアが飛び出し、ブースターを切り裂いた。その動きは、あまり大ダメージを受けたようには見えない。
「リーフィアは防御力が高いポケモンだよ。そうは見えないかもしれないけど……だからブースターの物理技でも、やられたりはしない」
攻撃特化のブースターに防御特化のリーフィア。相性ではブースターが有利だが、リーフィアには剣の舞がある。
この勝負、いよいよどちらが勝つのか分からなくなってきた……が、その危うく保たれていた均衡が、崩れた。
「リーフィア、ポイズンリーフだよ!」
一旦下がってブースターから距離を取ったリーフィアは、毒素を含んだ葉っぱを連射する。ブースターはその葉っぱに切り裂かれ、傷口から葉っぱに含まれた毒素が入り込んでしまった。
即ち、ブースターは毒状態となった。
「やった、毒の追加効果」
観客たちが沸き上がる。状態異状でフロルが優勢となった、観客の多くはそう思っていたが、それはAブロックのバトルを見ていない者たちだ。
Aブロック二回戦の試合を見ていた観客は、そんな者たちとは違う意味で沸き上がっていた。
ブースターが毒状態になるということは——
「来た……!」
——ブースターの特性、根性が発動するということなのだから。
『来ました! ブースターの特性、根性が発動だ——! これで攻撃力が超アップ! ブースターはリーフィアの防御を突破できるのか——!?』
『毒で長期戦ならリーフィアが有利、根性で短期決戦ならブースターが有利ですね。ですが——』
ウルシはあえてこの先を言わなかった。もう勝負は決したようなものだなんて、流石にこのような場所では言えるはずもない。
「起死回生だ!」
ブースターは鬼気迫る勢いでリーフィアに接近し、尻尾で払い飛ばした。根性と威力最大の起死回生、その破壊力は凄まじいもので、流石のリーフィアもかなりのダメージを負ったようだ。
「うぅ、でも、まだ……!」
リーフィアは立ち上がり、尻尾を構えて駆け出す。ブースターもそれに合わせ、走り出した。
「リーフィア、リーフブレード!」
「ブースター、ニトロチャージ!」
バトル開始の交錯と全く同じ技でのぶつかり合い。しかしもう既に、勝敗は決していた。
根性で攻撃力が底上げされたブースターのニトロチャージは、葉っぱの刃を突き破り、そのままリーフィアを突き飛ばした。
「リーフィア!」
壁まで吹き飛ばされたリーフィアは、そのまま地面に伏し、ぐったりとして動かない。完全に戦闘不能となっている。
つまり、
『決まった——! フィア選手のブースター、一進一退の攻防を特性、根性で打破! フロル選手のリーフィアを倒し、サミダレ大会ビギナーカップ、優勝です!』
アナウンサーの叫びと同調するかのように、ワァッと観客たちの歓声が今まで以上に大きくなる。
『……駆け出しトレーナーとは思えない、ハイレベルなバトルを見せて頂きました。もし彼や彼女と戦う機会があるなら、是非とも手合せしたいところですね』
ウルシもそう言ってまとめる。
なにはともあれ、乱戦混戦、波乱もあったサミダレタウンバトル大会ビギナーカップは、フィアの優勝で幕を降ろした。
フィアは優勝賞品であるポケモンの卵を受け取った後、一番ポートまで来ていた。
なぜ、船も停泊していないこんなところにわざわざ来るのかというと、話は簡単。フロルに呼び出されたからだ。
ポケモンにも卵ってあるんだ、などと思いながら船着き場まで来ると、夕日をバックにフロルが待ち構えていた。
「フロル……どうしたの、こんなところに呼び出して。話なら、ポケモンセンターでも——」
「フィア」
フィアの言葉を遮って、フロルは少し俯きながらも、はっきりと言葉を口にする。
「お願いがあるの」
「……なに」
前髪でよく見えないが、雰囲気で察せるフロルの真面目な空気に、フィアも真剣に取り合う。
そして、
「わたしたち……別れよう」
「っ……?」
あまりにも唐突で、フィアはすぐに意味を理解しきれなかったが、フロルは続けた。
「わたし、今日ポケモンを盗まれてから気付いたんだ。もっと一人でいろいろできるようにならなきゃダメだって。たぶんこのまま一緒に旅してても、わたしはフィアに頼っちゃう。でも、それじゃダメだと思うの。だから」
「ここで、別れるの?」
「……うん」
フロルの目を見る。真剣で、覚悟を決めたような眼差しだ。
この世界ではフィアの方が経験が浅い、いわば後輩のようなもの。しかし年齢だけで見れば、フィアはフロルよりも三つも年上なのだ。
はっきり言って、フィアはフロルが一緒にいてくれる方が嬉しいし、安心できる。フィアにとってこの世界はまだまだ分からないことだらけで、そんな場所を一人で旅するのは不安だ。
だけどよく考えれば、それはフロルも同じかもしれない。フロルもハルビタウンから出たことはなかったという。なら、それはこの世界をよく知らない、フィアとほとんど同じではないのか。
そう考え、フィアは自分にとっても、相手にとっても、最良の言葉を紡ぎ出す。
そして、
「……分かった。僕たちはここで、一旦お別れだ」
フィアはそう告げた。
だが、言葉にしなくても分かる。ここで別れることは、永遠に別れることではないということを。
また、会える日が来るということを。
「ばいばい、フロル。また会おう」
「うん……次会う時はわたし、もっと強くなるよ」
「当然、僕もだよ」
そして翌日、二人はサミダレタウンを後にした。しかし、二人の進む道は、違っていた——
今回はフィア対フロルが決着しました。そしてここで、二人は別れます。一人旅はこの世界だと普通ですが、フィアにとってはさぞ心細いでしょうね。しかしここは年長者として大人な対応をしました。まあそんな茶化すようなことは置いておいて。次回は次なる街に行きます。その前に新キャラも出るかもしれません。それではお楽しみに。
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