二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 七つの星と罪
- 日時: 2013/07/21 23:48
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。
ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。
それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
それでは、白黒の新しい物語が始まります——
登場人物紹介
>>31
プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11
シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43
クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.39 )
- 日時: 2013/04/21 19:46
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: BW2でラティオスの厳選に踏み切る今日この頃……ただしめんどい。
タクさん
小説はテンポだとどこかで誰かが言っていた気がするので、長すぎず短すぎずの内容を意識しています。
まあ、そのことをなしにしても序盤からあまりだらだらしていては中盤以降が辛いですからね、この辺は軽く流す程度です。
ハルサメ大会は……うーん、どちらかと言えばPWTとバトルテントを足して割った感じですかね。
わざわざこで伝えてくれるとは、ありがとうございます。後程確認しに行きますね。
- 第15話 バークアウト ( No.40 )
- 日時: 2013/04/21 21:37
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 新紙ほかは旧紙ほかよりも最大文字数が少ない気がする。
ハルサメタウン、バトル大会二回戦。フィアの相手は、一回戦でフロルを敗ったイオンだ。
「おー、フィア君。最初にトーナメント表見た時にまさかとは思ったけど、二回戦まで勝ち上がってきたんだねー」
「うん、まあ……」
陽気に声をかけてくるイオンに対して、フィアは曖昧に頷く。そして互いに、ボールを構えた。
「出て来て、ミズゴロウ!」
「行くよっ、ガーディ!」
フィアのポケモンはミズゴロウ。そしてイオンが繰り出したのは、赤い犬のような姿のポケモンだ。
『Information
ガーディ 子犬ポケモン
どんな相手にも勇敢に立ち向かう
ポケモンと言われるが、ピンチに
なると大きく吠えて追い払うこともある。』
『さあ、いよいよ二回戦も開始されました。フィア選手はミズゴロウ、イオン選手はガーディをそれぞれ繰り出し、バトル開始です!』
アナウンサーの威勢の良い声がフィールド内に響き渡った。そして、一回戦での戦績を元に軽い解説を入れる。
『一回戦イオン選手は、フロル選手のアチャモを、なんと開始一分足らずで倒しています』
『攻撃が速いというか、攻撃前後の隙がほとんどないから結果的に攻撃速度が高いんだよねぇ。あのスピードにはぼくもやられちゃったよぅ』
『そしてフィア選手は、タイプ相性でキク選手のバジルスを押し切って勝利を収めました。さあ、この一戦はどうなるのか』
『一回戦と同じように、タイプの上ではフィアくんが有利……だけど、一回戦みたいに上手くいかないだろうねぇ』
イチジクの含みのある発言に、アナウンサーは喰いついた。
『それは、どういうことでしょうか? なにかガーディに、水タイプ対策があるということですか?』
『まぁ、見てれば分かるよぅ』
フィアとイオンのバトル、先に動いたのは、イオンのガーディだった。
「ガーディ、燕返し!」
一瞬でミズゴロウとの間合いを詰めたガーディは、鋭い爪でミズゴロウを切り裂いた。
「うっ、ミズゴロウ、こっちも反撃だよ。水鉄砲!」
ミズゴロウは態勢を立て直し、ガーディに向かって水を噴射するが、
「遅い遅い、躱してニトロチャージ!」
ガーディはサッと水鉄砲を躱すと、炎を纏ってミズゴロウに突進する。
「ミズゴロウ!」
ミズゴロウは地面を転がる。効果はいまひとつなのでダメージは少ないが、
『攻撃と同時に素早さを上げるニトロチャージ、鈍足なミズゴロウに対してスピードで攻めるつもりかぁ。苦手なタイプに対する常套手段だねぇ』
イチジクの言う通り、ここで素早さを上げられるのはミズゴロウにとっては辛い。なので、早めに決めにかかる。
「ミズゴロウ、岩砕きだ!」
ミズゴロウはガーディに向かって走り出し、岩を砕くような体当たりを繰り出すが、
「バークアウト!」
直前でガーディはけたたましい叫び声を放ち、ミズゴロウの動きを止めてしまう。
「もう一度、バークアウト!」
さらに二度目のバークアウトを放ち、今度はミズゴロウを吹っ飛ばす。
「くぅ、ミズゴロウ、水鉄砲!」
ミズゴロウは起き上がり、息を吸って水を噴射するが、
「ガーディ、炎の渦だ!」
ガーディも同時に炎の渦を放つ。
だが普通は、水タイプの技に炎技が勝てるはずがない。これが火炎放射や大文字なら話は別だが、ガーディが放つのは威力の低い炎の渦。このままいけば水鉄砲に打ち消されるのが関の山だ。
しかし、炎の渦は水鉄砲を突き破り、ミズゴロウを渦に巻き込んだ。
「え……っ?」
『おーっと! ガーディの炎の渦がミズゴロウに決まりました!』
『炎の渦は相手の動きを制限するから戦いづらいよねぇ……それに、バークアウトかぁ』
フィアも炎の渦で水鉄砲が突き破られるとは思っていなかったので呆然としている。そんなフィアに、イオンは説明する。
「オレのガーディの技の一つ、バークアウト。これは便利な技でねー、攻撃と同時に相手の特攻を確実に下げる技なんだ。その分威力は低いけど、そのミズゴロウに対しては有効だよね?」
「っ……!」
ミズゴロウがガーディに対して有効打を撃てるのは、水鉄砲と泥かけ。そのどちらも特殊技であるため、バークアウトで威力が下げられてしまっている。
「そんじゃーこのまま決めようか。ガーディ、ニトロチャージ!」
ガーディは炎を纏い、炎の渦に囚われたミズゴロウに突進する。効果はいまひとつだが、どんどんダメージが蓄積していく。
そしてミズゴロウの体力が大きく削られ、ガーディのスピードが最高まで達した時、
「燕返し!」
ガーディは身を翻して、鋭利な爪でミズゴロウを切り裂いた。
「ミズゴロウ!」
そこでミズゴロウの体力は限界に達し、戦闘不能となってしまう。
『二回戦、決着です! イオン選手のガーディ、今回のバトルも開始から一分三十秒、速攻で試合を終わらせてしまいました!』
アナウンサーの声と共に、会場が沸き上がる。フィアはミズゴロウをボールに戻し、イオンに声をかけた。
「負けたよ、イオン君。本当に強いね」
「いやー、まあそれほどでもあるかな? このまま決勝戦も速攻で決めて、優勝しちゃうか」
「あはは……頑張ってね」
自信満々なイオンの態度だが、何度も言っているように彼は強い。恐らく、この大会の優勝候補と言われて当然の実力を持っているだろう。
なんにせよ、これでフィアも敗退。あとは、イオンの試合を見届けるだけとなった。
そして迎えた決勝戦。イオンの相手は、同年代くらいの小柄な少女だった。
イオンのポケモンは両腕や頭部に葉っぱを生やした、緑色のラプトル類のようなポケモン。対するは、背中から炎を噴き出しているヤマアラシのようなポケモン。
『Information
ジュプトル 森トカゲポケモン
木々が鬱蒼と生い茂る森で生活する
ポケモン。その素早い身のこなしから、
泥棒のモチーフにされることもある。』
『Information
ヒノアラシ 火鼠ポケモン
背中の炎はヒノアラシの感情の
変化で燃え上がる。驚いた時や
怒った時には特に激しく燃える。』
現在、イオンのジュプトルは相性で有利なはずのヒノアラシを押している。持ち前のスピードで上手く攪乱し、相性を覆しているのだ。
「ヒノアラシ、火炎車!」
「遅い遅い! ジュプトル、アクロバット!」
ヒノアラシが炎を身に纏おうとすると、それより速く接近し、ジュプトルはヒノアラシを突き飛ばした。
「速い……煙幕!」
「リーフブレード!」
ヒノアラシはとりあえず煙幕で視界を塞ごうとするが、瞬く間にヒノアラシに接近したジュプトルが、腕の葉っぱでヒノアラシを切り裂く。
その一撃で、ヒノアラシは戦闘不能になってしまった。
『決勝戦、終了——!』
アナウンサーの声と、試合終了を告げる合図が鳴り響き、観客たちがより一層沸き上がる。
『イオン選手、タイプ相性で勝るルゥナ選手のヒノアラシを一蹴! 試合時間一分五十九秒と、全試合二分未満で終わらせて優勝です!』
「すごいねイオくん、本当に優勝しちゃった」
「まあ、イオン君ならやるとは思ってたけど、こんなに早く終わらせるなんて……」
勝敗の結果より、驚きなのは試合時間の短さ。本当にあっと言う間と言えるほど、イオンは速攻で勝負を決めてしまった。
その後、イオンは優勝賞品であるポケモンの卵を受け取り、ハルサメタウンのバトル大会は終了した。
そしてその日の夜には船が出港する予定だ。フィアとフロルは次の島、次の街へと向かうべく、その船に乗る準備をしていた。
「フロル、忘れ物とか、ない?」
「うん……たぶんだいじょうぶ」
旅をするために必要最低限の荷物を確認し、フロルとフィアは船着き場へと向かい、船へと乗り込んだ。もう夜なので、今日は寝るだけ。到着は明日の昼頃になるそうだ。
「わたし、船って乗るの初めてなんだぁ。ちょっと楽しみ」
「そう」
「フィアは乗ったことあるの?」
「うん、まあ。中学の頃の修学旅行で——」
と言ってから、フィアはハッと口を塞ぐ。
「? 中学? 修学?」
フロルは言っている意味が分からないとでも言うように首を傾げていた。いや、実際分かっていないのだろう。
(この世界に、中学校とかの概念はないのかな……フロルが知らないだけって可能性もあるけど、本当、あっちの世界とは違うんだな)
カルチャーショックを受けるほどではないが、フィアとしてはやはり衝撃的だ。普通なら、別世界に飛ばされて旅を始めるなんてことはしない。
(でも、何かしないと、元の世界に帰る手掛かりはつかめないんだよね。部長やあの人を見つけなきゃいけないし、あの黒い渦も——)
そして、船は出港する。
次に停泊するのはクナシル島、サミダレタウンだ。
とりあえずハルサメタウン大会、これにて終了。速攻でバトルを終えてイオンが優勝です。察しのいい人は分かるかもしれませんが、イオンは素早さの高いポケモンを愛用する傾向にあります。イチジクがそうであったように、今作ではポケモンごとの戦法というよりは、トレーナー一人一人が独自のスタイルを持っていて、それに合わせた戦法を取れるポケモンを使用する、といった形式にしています。白黒なりにキャラの個性を出しているつもりなのですが、どうでしょうか。それでは次回、船旅で新キャラ登場です。お楽しみに。
- 第16話 アドバイス ( No.41 )
- 日時: 2013/04/22 01:54
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: ここまで幼い外見のキャラがやたら多い気がする。たぶん白黒の趣味。
サミダレタウンへと向かう船の中では、ポケモンバトルができるフィールドがいくつか設置されている。どうやら目的地に着くまでの暇潰しや、トレーナー同士の交流の場ということらしい。
ポケモンセンター地下もそうだったが、つくづくこういう点でポケモンバトルがこの世界に浸透していることを実感するフィアは、実戦経験を積むためにそこでバトルをしていたのだが、
「……勝てない」
二対二のバトル、十戦中フィアが勝てたのは僅か二戦、それも辛勝。
たまたま強い相手と当たってしまったとも言えるが、自分がまだまだ未熟であると思い知らされるフィア。それ自体は悪いことではないのだが、それでもやはりへこんでしまう。
「フロルはまだ寝てるし……どうしよう、このまま僕も部屋に戻ろうかな」
ポケモンを回復し、機械からボールを外した時、フィアはふと声をかけられる。
「ねぇ君、ちょっといいかな?」
「はい?」
振り返ると、そこに立っていたのは一人の少女だった。
フロルと同じくらいの身長で、目を引くのは腰まである長い銀髪。黒いプリーツスカートに白いブラウスを着ており、黒いトレンチコートを羽織っている。
見るからに子供、というような出で立ちの少女だが、フィアはこの少女を見たことがある。
(この子、昨日の大会の決勝でイオン君と戦ってた……)
確か、ルゥナという名前だったはずだ。
フィアがルゥナを知っているのは決勝戦を見ていたからだが、ルゥナがフィアを知っているということはないだろう。フィアが試合をしている間はルゥナも試合をしているわけで、ルゥナはフィアのことを知らないはず。
ならばなぜ、彼女はフィアに声をかけてきたのか。
「えっと……僕に何か用、かな……?」
たまらずフィアが少女に尋ねる。すると少女は、ゆっくり口を開いた。
「うーんっと、実はさっきまで君のバトルを何回か見てたんだけど」
「え……」
さっきまでフィアのバトルを見ていたということは、つまりフィアが惨敗する様を見ていたということ。フィアが勝ったのは最初の二戦、後の八戦は全て負けているから、見られているのは負け姿だけだ。
「ちょっとアドバイスしたくなっちゃって。お節介だと思ったら、別にいいんだけど」
「えと……」
つまり、フィアがあまりにも負けているものだから、我慢できずに助言をしたくなった、ということだろうか。
フィアとしてはよく分からない申し出は受けたくないし、こんな小さな少女からアドバイスされることに対して恥を感じる程度のプライドはある。
だがルゥナ昨日のハルサメ大会で準優勝したトレーナーだ。ここは素直に話を聞くべきかもしれないとも思った。
どうしようかとしばらく悩んだ末、フィアは、
「じゃあ、願しようかな……」
「そう? じゃあちょっと待ってて」
ルゥナは嬉しそうに顔を明るくすると、ボールをポケモンを回復する機械にセットしていく。彼女もさっきまでバトルをしてきたのだろうか。
回復が終わってボールを外していくルゥナだが、機械はわりと高い位置にあるため、ルゥナの身長では手が届きにくい。ぷるぷると腕を振るわせながら一つずつボールを取っていくが、やがてルゥナはバランスを崩し、後ろに倒れてしまった。
「ひゃぅっ」
「だ、大丈夫っ?」
倒れた拍子に、ボールが散らばり、彼女のポケットからも色々と零れ落ちた。それは財布だったりバッジケースだったり、重要なものばかりだ。
「あぅ、ごめんごめん、ちょっと足が滑っちゃった」
「足が滑った……?」
単に身長が足りなかっただけに思えるが、フィアは深く詮索せず、落ちたボールやバッジケースなどを拾い上げていく。そんな中、一枚のカードを手に取った。
(トレーナーカード? やっぱり名前はルゥナっていうんだ、記憶違いとかじゃなくて良かった。それと、年齢——)
フィアは目を丸くした。そこに書かれている数字は、フィアが想像していたものからかけ離れたものだったからだ。
「じゅ、17歳……!?」
「? そだよ。私は先週誕生日を迎えて17歳だよ。それがどうかした?」
フロルの歳は13歳。なのでルゥナの年齢も、自然とそれぐらいだとフィアは思っていた。しかし、
(17って、部長と同い年……いや、あの人は僕よりも背が高いけど、それにしたってこの背の低さで17っていうのは……)
あり得ない話ではないが、フィアは驚く。フィアにとって年上の女性というのは彼女ぐらいだったので、自分よりも背が低い年上女性というのがいまいちイメージしづらいのだ。
フィアがそんなことを思っているうちに、ルゥナは散らばった物品やモンスターボールを全て拾い上げた。
「さて、これで全部かな……そういえば、君の名前は?」
「あ、えっと、フィア……です」
年上と分かれば、敬語を使わないわけにはいかない。少し違和感を覚えないでもないが、フィアは言葉遣いに気をつけながら名乗る。
「フィア君だね。私はルゥナ、長い名前じゃないけど、ルゥって呼ばれることが多いかな」
いわゆる愛称というやつだ。フロルが博士のことをイーくん、イオンのことをイオくんと言っていたように、この世界にも愛称やあだ名が存在する文化にあるらしい。フィアがいた世界とずれてるのに、変な所で共通しているのだから、戸惑ってしまう。
ルゥナは名乗りを上げると、なぜか胸を張り、
「あと、先輩って呼んでもいいんだよっ」
「…………」
呼んでほしいのか。
フィアは胸中でそう呟いた。
(まあ、確かに年齢でもトレーナーとしても先輩だし、学校では年上の人は皆、先輩って呼んでたし、別に言い慣れないことはないかな)
むしろ、自分がいた世界と似た感覚に浸れるので、積極的に呼んでもいいかもしれない。
「じゃあ、ルゥ先輩で……」
控えめにフィアが言うと、ルゥナはまたしても嬉しそうに明るくなる。こうところは、見た目相応に子供っぽい。いわゆる、お姉さんぶりたい性格、なのだろうか。
フィアがそんなことを思っていると、ルゥナはやっと本格的なアドバイスに入った。
「さっきまでバトルを何回か見せてもらったけどね、フィア君はもう少し特性を意識するといいよ」
「特性?」
聞いた事があるようなないような言葉だった。彼女や青年から聞いたのか、もしくはターミナルでざっと調べた中にあったのか、はたまたフロルやイオン、イチジクなどが言っていたのか。
なんにせよ、その特性なるものがなんなのか、今のフィアは把握していなかった。
「特性っていうのはね、ポケモンが一つだけ持ってる特殊な力のことだよ。これを意識するだけで、バトルで有利に立ち回れるんだ」
例えば、とルゥナは思い出すように人差し指を頬に当てる。
「君が連れてたミズゴロウの特性は激流。体力が減ってピンチになると、水タイプの技の威力が上がるんだ」
「へぇ、そうなんですか」
今までミズゴロウは、その鈍さが仇となってピンチになったらそのまますぐに押し切られていたため、これは知らなかった。
「それと君のブースターだけど、珍しい特性だったね。特性、根性。これも自分がピンチの時——というより、ポケモンが状態異状になった時に発動する特性で、発動すると攻撃力が上がるんだ」
ルゥナの説明を聞き、頷くフィア。彼女の助言は、思った以上に役立つものだった。
「特性は技と同じで、ポケモン図鑑で調べられるから、ポケモンを捕まえた時にチェックするといいよ」
「そうですか……ありがとうございます」
今日だけでフィアが覚えた特性、激流と根性。根性に関してはブースターはまだ状態異状になったことがないのでよく分からないが、ミズゴロウは今後、ピンチになった時は積極的に水技を使った方が良さそうだ。
「役に立ってくれたのなら私も嬉しいよ。それと——」
にこやかな笑顔を浮かべつつ、ルゥナ一つ、ボールを取り出した。そして、
「——今から私とバトルしない?」
「フィア君は、持ってるポケモンは二匹だっけ?」
「あ、はい。そうです」
唐突に持ちかけられたルゥナとのバトル。フィアとしても実戦経験は決して無駄ではないし、先ほどルゥナが言っていた特性も、やはり実戦で試して実感したい。なので、フィアは二つ返事で了承した。
「じゃあ二対二でいいかな。私からポケモン出すね」
勝負は二対二のシングルバトルとなり、ルゥナはポケモンを繰り出す。
「最初はお願いね、マグマラシ!」
ルゥナの一番手は、頭と尻尾に炎が噴き出した、胴長のヤマアラシのようなポケモン。
『Information
マグマラシ 火山ポケモン
炎の熱風で相手を威嚇する。
素早い身のこなしで攻撃を
避けながら炎で敵を焼き焦がす。』
「マグマラシ、ヒノアラシの進化系か」
つまり、昨日イオンのジュプトルと戦ったヒノアラシは、昨日今日で進化したようだ。
「相手は炎タイプ。だったら君しかいないよね、ミズゴロウ!」
フィアの一番手は水タイプのミズゴロウだ。マグマラシとは相性が良い。
「それじゃあ行くよっ」
ルゥナの掛け声とともに、マグマラシが駆け出す。それを合図に、フィアとルゥナのバトルが、開始された。
はい、今回は船旅で新キャラ、フィアのちっこい先輩ルゥナの登場です。新キャラと言っても、前回名前だけ出てたんですけどね。さてそれでは次回、ルゥナとのバトルです。フィアは教えてもらった特性を生かせるのか。お楽しみに。
- 第17話 Ability ( No.42 )
- 日時: 2013/04/24 19:36
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 未知なる力。
「マグマラシ、火炎車!」
先手を取ったのはルゥナのマグマラシ。マグマラシは炎を身に纏い、縦方向に回転しながらミズゴロウへと突っ込む。
「ミズゴロウ、岩砕き!」
ミズゴロウも岩を砕くような勢いでマグマラシへと突進するが、火炎車の方が威力が高く、ミズゴロウは弾き飛ばされてしまった。しかも、
「煙幕!」
マグマラシは口から大量の黒い煤を吐き出し、ミズゴロウの視界を塞いでしまう。
(うぅ、水鉄砲で反撃しようと思ったのに、これじゃあマグマラシがどこにいるのか分からない……いや)
視界を遮られて反撃を諦めかけるフィアだったがすぐに首を振る。
目が見えなくても、ミズゴロウにはレーダーの役割を担うヒレがある。これがあれば、マグマラシが今どこにいるのか把握できるはずだ。
「ミズゴロウ、神経を集中するんだ。マグマラシの居場所を突き止めて」
ミズゴロウは目を瞑り、ジッと動かずマグマラシの居場所を探る。そして、
「マグマラシ、電光石火!」
煤の中から猛スピードでマグマラシが飛び出した。だが既にそこからマグマラシが飛び出すことをミズゴロウは知っている。マグマラシが突っ込んでいく先には、マグマラシと向かい合った状態のミズゴロウがおり、
「水鉄砲だ!」
口から勢いよく水を噴射する。
マグマラシは自分から水鉄砲に突っ込む形となり、吹っ飛ばされてしまった。
「マグマラシ! 大丈夫?」
効果抜群の攻撃を間近で喰らったはずだが、マグマラシは力強く炎を燃やし、まだまだやる気十分だ。
「よーし、だったら次はこれだよっ。煙幕」
マグマラシは再び煤を吐き出してミズゴロウの視界を遮ってしまう。
しかしミズゴロウは視界を塞がれた程度では動けなくなることはない。頭のヒレを揺らしてマグマラシの居場所を探り、その方向を向くが、
「スピードスター!」
「えっ?」
煙の中から飛び出したのは、無数の星だった。五芒星の星型に圧縮されたエネルギー波が無数に放たれ、ミズゴロウを切り刻んだ。
「ミ、ミズゴロウ!」
そこまで高威力の技ではなかったようだが、不意打ちのような攻撃を喰らい、ミズゴロウは思った以上のダメージを受けてしまった。
「畳み掛けるよっ、電光石火!」
マグマラシはさらに高速でミズゴロウに突撃し、吹っ飛ばす。
煙幕を張って視界を遮り、その隙に攻撃する。煙などを使う戦術としては初歩の初歩みたいなものだが、それでも有用な戦術だ。だが一度それが破られてしまえば、普通は先ほどルゥナが近接攻撃から遠距離攻撃に切り替えたように違う方向性で攻めてくる。
しかしフィアはまだトレーナーとしての経験が浅い。なので、その手の対応がまだ不得手なのだ。
「くっ、体当たり!」
「スピードスター!」
ミズゴロウはなんとか態勢を立て直してマグマラシへと突っ込むが、マグマラシは星型のエネルギー波を無数に飛ばして動きを止め、
「火炎車だよ!」
炎を纏って回転しながらミズゴロウに激突し、またも吹っ飛ばす。効果はいまひとつだが、それでもミズゴロウはかなりダメージが蓄積している。そう長くはもたないだろう。
「もう一度、火炎車!」
「み、水鉄砲!」
マグマラシは再び火炎を纏って車輪のように回転しながらミズゴロウへと突貫。ミズゴロウも口から水を噴射して迎え撃つが、水鉄砲は火炎車の炎を多少削ぎ落すだけで、攻撃を止めることもできずミズゴロウは火炎車の直撃を受けてしまう。
「ミズゴロウ!」
ミズゴロウは地面を転がりながら吹っ飛ばされていく。それから気力でなんとか立ち上がるが、もう戦闘不能寸前であることは火を見るより明らかだった。
しかし、その時ミズゴロウに異変が起こる。
「っ、これは……?」
目には見えないが、フィアは感じた。ミズゴロウからオーラのような、強い気配が漂っていることを。
そんなフィアとミズゴロウを見て、ルゥナは、
「やっと発動したんだね。それが特性、激流だよ」
「激流……これが」
ピンチになると水タイプの技の威力が上がる特性、激流。どのくらい上がるものかと思っていたが、フィアが感じる気配から察するに、相当威力が増すものだと思われる。
「さて、それじゃあその特性がどのくらいのものあ、試してみなよ。マグマラシ、火炎車!」
マグマラシは炎を身に纏い、車輪のように縦方向に回転しながらミズゴロウへと突撃する。
普段なら水鉄砲でも押し返せないマグマラシの火炎車。しかし、激流が発動している今ならそれも不可能ではない。
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
ミズゴロウは口から勢いよく水を噴射する。その量が通常の水鉄砲の比でなく、大量の水がミズゴロウから放たれ、マグマラシを押し返した。
「凄い……!」
先ほどまではまったく敵わなかった火炎車だが、それをいとも容易く押し返してしまった。この激流という特性は、かなり強力なものであるようだ。
「へぇ、思った以上に強力だね……じゃあこっちも、ちょっと本気出しちゃおっかな」
「……?」
含みのある怪しい笑みを浮かべるルゥナ。
「マグマラシ、火炎車!」
何事かと身構えてしまったフィアだが、ルゥナは普通にマグマラシに指示を出し、少々肩透かしを食らってしまう。
だがマグマラシの火炎車は奇妙なものだった。素直にミズゴロウへと突っ込むことはせず、炎を纏いながら真上へと飛び上がっていったのだ。しかも、ルゥナの指示はそこでは止まらなかった。
「+(プラス)!」
そして、
「スピードスター!」
次の瞬間、マグマラシは回転しながら炎を纏った星を無数に撃ち出した。
「っ!?」
空から降り注ぐ炎の星。フィアは驚きを隠せず、驚愕の顔でその様子を呆然と見つめていた。
その間にも炎の星は全てミズゴロウへと吸い込まれるように向かっていき、切り刻みながらその身を焼いていく。その攻撃にタイプをつけるのなら炎タイプのようだが、威力は圧倒的に火炎車よりも高い。激流が発動するほど体力が減っていたミズゴロウは、その攻撃で戦闘不能となってしまう。
「…………」
それでもまだ、フィアは唖然としている。何が起こったのか分からない、と言うかのように。
そんなフィアを見てか、ルゥナは自慢げに胸を張る。
「どう? 驚いた? これが私の“能力”だよ」
「の、のう、りょく……?」
明らかに通常とは違うニュアンスを含むルゥナの言葉に、フィアは首を傾げる。
「そう。まあ仮称だけどね。暫定的にそう呼んでるだけで、まだちゃんとした名称はつけられていないんだ」
そしてルゥナは、彼女の言う“能力”について説明する。
「フィア君ももっとトレーナーとしての経験を積めば分かると思うんだけど、トレーナーは元々、ポケモンの力を引き出す力を持っているんだ。それの延長線上にあり、トレーナーによって異なる性質を現す力が能力」
フィアにはいまいちピンと来ない説明だが、要するにポケモンの力を引き出すだけでなく、直接ポケモンの働きかける力のことを言っているのだろうと、よく分からないなりに解釈した。
「そしてさっき見せた私の能力は“技合成”。技と技を合成することができる力だよ」
「技と技を合成する……? どういうことですか?」
そのままの意味で捉えれば、二つ以上の技を同時に放つことだろう。 フィアは知らないが、ある程度熟練したトレーナーならポケモンの技と技を掛け合わせることができたりするし、合体技というものも存在する。だが、ルゥナの言う技合成とは、それらとは一線を画すものだった。
「私も感覚でやってるからうまくは言えないけど……こう、二つの技の良いとこ取りをして、新しい技みたいに攻撃する、って感じかな? さっきの火炎車とスピードスターを見たなら分かると思うんだけど、技を合成すれば威力が足し算で高くなるし、効果ももとの技を受け継ぐんだ」
口で簡単に言うが、それは物凄いことではないのかとフィアは内心思う。
ポケモンが覚えられる技は最高で四つ。しかしルゥナの技合成とやらは、実質的にその枠を超え、さらには既存の技をパワーアップさせている。
まだしっくりこないフィアだったが、その能力というものが強力であることだけは理解した。
「さて、ちょっと話が長くなっちゃったね。バトルを再開しようか」
「あ……はい」
フィアは戦闘不能になったミズゴロウをボールに戻し、最後のボールを手に取った。
「出て来て、ブースター!」
フィアが繰り出すのは、当然ながらブースターだ。
(能力、か……この世界は、本当に不思議だな)
そしてフィアは、この世のトレーナーという人間に対し、さらなる不思議を抱くのだった。
今回はルゥナとのバトル、そして今作最大の目玉が、能力です。名前は結局それっぽいのが思いつかなかったのでまんまですが。>>0では超常現象と言い換えましたが、今作ではこのようなトレーナーごとの能力が存在しています。勿論、全員が能力を有しているわけじゃありませんけどね。今回のこれは、こういう設定はポケモンという世界に無理があるかどうかの実験も兼ねているので、否定的な意見でも筋が通っていれば受け入れます。ただ悪態つくだけなのは勘弁願いますが。それでは次回、ルゥナ戦その二です。お楽しみに。
- 第18話 defense ( No.43 )
- 日時: 2013/04/25 00:31
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 最近あまりキーが乗らない……どうしたものか。
「ブースター、アイアンテールだ!」
ブースターは場に出るなり、尻尾を鋼のように硬化させ、マグマラシへと飛びかかる。
「意外と速いね……マグマラシ、躱してっ」
ブースターの振り下ろすようなアイアンテールを躱そうとするマグマラシだが、完全に回避することは出来ず、掠めるようにして攻撃を受けてしまった。
「もう一度!」
攻撃を躱し切れなかったことでマグマラシは態勢を少し崩してしまい、その隙にブースターは追撃の尻尾を放つ。
今度のアイアンテールはマグマラシのしなやかな体に綺麗に決まり、マグマラシは勢いよく吹っ飛ばされていった。
「っ、マグマラシ……!」
効果はいまひとつだが、マグマラシもミズゴロウとのバトルで消耗していたため、今のアイアンテールで戦闘不能となってしまった。
「やられちゃったか、戻ってマグマラシ」
ブースターのフィジカルが思いのほか高かったのか、ルゥナは少々驚きながらマグマラシをボールに戻す。
これで、ルゥナのポケモンも残り一体。一応イーブンに持ち込めた。
「それじゃ次、行こうか」
ルゥナは最後のボールを構え、ポケモンを繰り出す。
「出て来てっ、ブラッキー!」
繰り出されたのは、黒豹のような体型のポケモン。漆黒の体の各所には黄色い輪っか模様がある。
『Information
ブラッキー 月光ポケモン
月の波動を受けると力が増大し
全身の輪っか模様が光る。その
輝きは闇を明るく照らす標となる。』
「ブラッキー……このポケモンも、イーブイの進化系なのか」
電気タイプのサンダース、炎タイプのブースターときて、今度は悪タイプのブラッキー。イーブイは本当に様々な進化をするようだ。
それと、フィアは三体目のイーブイの進化系を見て、とあるパターンに気付いていた。
(イオン君のサンダースはスピードに優れてた。僕のブースターは攻撃力が高い。なら、ルゥナ先輩のブラッキーは……?)
イオンのサンダースがスピード、フィアのブースターがパワーに秀でているように、イーブイの進化系は進化先によって何かしら一つの能力が特化されるのではないかと、フィアは思っている。
とすれば、ルゥナのブラッキーも何か一つの能力が飛び抜けていて、それが分かれば有利にバトルが進められる、と思いついたわけだ。
(えーっと、ポケモンの能力は、体力、攻撃、防御、特攻、特防、素早さの六つに分けられるんだっけ。素早さがサンダース、攻撃がブースターだとすれば、ブラッキーは……図鑑の説明から考えると、特攻か、特防辺りかな?)
とにかく特殊能力に優れていそうだと考え、フィアは物理攻撃を主軸に据えて戦うことにする。
「ブースター、ニトロチャージ!」
ブースターは全身に炎を纏い、ブラッキーへと駆け出す。だがブラッキーはその攻撃を避けようとせず、地に足をしっかり着けて攻撃を受ける姿勢を取った。
そしてブースターのニトロチャージがブラッキーに炸裂する。しかし、
「っ、踏みとどまった……!?」
普通のポケモンなら軽々と吹っ飛ばすほどのパワーを持つブースター。そのブースターのニトロチャージの直撃を受けてもなお、ブラッキーは地面に足を着け、しっかりと踏みとどまっている。
さらに、
「今度はこっちから行くよっ。ブラッキー、しっぺ返し!」
ブラッキーはくるりと体を回転させ、細いラグビーボール状の尻尾をブースターに叩き付けた。
「! ブースター!」
先ほどとは逆に、ブースターはブラッキーの攻撃を耐え切れずに吹っ飛ばされてしまった。ブースターは地面を転がっていき、勢いが止まるとゆっくりと立ち上がる。
「しっぺ返しはね、相手の攻撃を受けた後に使うと威力が倍増する技なんだ。ブラッキーは元々そんなに素早くないし、攻撃力も高くないけど、こうしてその弱い部分を補うこともできるんだ」
ルゥナの言葉を聞き、フィアは納得する。攻撃が高くないということは、やはり耐久面で優れているということだろう。ならば先ほどブースターのニトロチャージを真正面から喰らっても耐え切ったのは必然だ。
「防御が高いなら、とにかく攻める。ブースター、火炎放射!」
立ち上がったブースターは、今度は炎を放射する。激しい炎をブラッキーに噴きつけ、そのしなやかな体を焼き焦がそうとするが、
「効いてない……?」
炎が晴れた時、ブラッキーは悠然と佇んでいた。今の火炎放射でまともなダメージを受けた様子は一切ない。やはりフィアの予想通り、ブラッキーは防御面に優れているようだ。
「根性があるから毒々が使いづらいけど……これならどうかなっ。穴を掘る!」
ブラッキーは次の瞬間、素早く穴を掘って地中へと身を潜ませてしまった。
「穴を掘る……!? まずい……」
穴を掘るは地面タイプの技なので、ブースターには効果抜群。攻撃力が低いと言っても、弱点を突けばそれなりのダメージは期待できるはずだ。さらにブースターはミズゴロウのように地中の相手の居場所を探ることが出来ないので、回避も難しい。そして、
「っ、ブースター!」
ブースターは地中から飛び出したブラッキーに後ろから体当たりされる。効果抜群なので、ダメージは大きい。
「くっ、アイアンテール!」
「踏みとどまって! しっぺ返し!」
ブースターは反撃に鋼鉄の尻尾をブラッキーへと叩き付けるが、やはりブラッキーは踏ん張って攻撃を耐え、反撃に対する反撃としてこちらも尻尾を振るってブースターに叩き付ける。
ブースターはブラッキーと違って防御は低い。威力が倍増した攻撃を喰らい、体力も限界を迎えつつある。
「うぅ、だったらこれ……ブースター、起死回生!」
ブースターは残った力を振り絞り、ブラッキーへと飛びかかる。
起死回生は残り体力が少ないほど威力を増大させる技。今のブースターの体力は残り僅か、加えて起死回生は格闘技なので悪タイプのブラッキーには効果抜群。上手く行けば、この一撃で戦闘不能まで持ち込めるとフィアは踏んでいたが、
「月の光」
刹那、ブラッキーの体の輪っかが淡く発光する。それほど強い光ではないが、その光を受け、ブラッキーが今まで受けてきた傷がすべて癒えていく。
そして次の瞬間、ブースターの起死回生の一撃がブラッキーに叩き込まれる。だが事前に月の光で体力を回復していたブラッキーの体力を削りきることは出来ず、後ずさったもののブラッキーはまだ戦闘不能ではない。
そして、
「ブラッキー、しっぺ返し!」
直後、ブラッキーの反撃の尻尾がブースターに直撃。ブースターは大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ブースター!」
その一撃で遂にブースターの体力は限界を迎え、戦闘不能。即ち、フィアとルゥナのバトルは、ルゥナの勝利となった。
バトル後、フィアとルゥナはポケモンを回復させつつ、軽く歓談していた。
「ルゥ先輩、やっぱり強いですね……ブラッキーなんて、技合成すらされずに負けちゃいました」
結局ルゥナが技合成を見せたのはマグマラシが戦闘不能間際の時の一回だけ。それだけ、ルゥナのトレーナーとしての技術が高いのだろうと思ってフィアはそう言ったのだが、ルゥナは少し戸惑ったようなそぶりを見せた。
「ん、あー……うん。まあ、ね」
「? どうしました?」
「いや、なんでもないよ。それより、フィア君も思ったより強かったよ? 今はまだ未熟かもしれないけど、ぐんぐん伸びそうな感じ。私もうかうかしてたらすぐに抜かされちゃうかも」
と言われて、フィアはイオンにも似たようなことを言われたなあ、と思い返していた。自分では分からないが、フィアには何かしら潜在的な資質のようなものがあるらしい。
「それとフィア君、お願いなんだけど……私の能力、技合成については、あんまり人に言わないでね」
「……? はあ、まあ先輩がそう言うならそうしますが、何でですか?」
言ってフィアは、自分の戦術を隠すためだとか、そういうことを思ったが、どうやら違うらしい。
「んーとねー、能力っていうのは今のところわりと世間に浸透してはいるんだけど、否定的な人も結構いるんだよ。中には能力持ってる人の挑戦を受けつけないジムもあるくらいだし……そういう人と諍いを起こしたくないから、私は基本的に自分の力を見せないようにしてるんだ。機関からもそう言われてるし」
「……機関?」
首を傾げ、ルゥナの言葉を復唱するフィア。どこかで聞いた響きだと思いつつ、ルゥナがする説明に耳を傾ける。
「えーっと、まずアシッド機関って知ってるよね?」
「ええ、まあ……」
知ってると言っても、名前程度だが。確か、ポケモントレーナーについて研究している組織だと、博士か誰かが言っていた気がする。
「私はそのアシッド機関に所属してて、定期的に私の能力についてのレポートを出してるんだ。能力は視覚では分かりにくいものが多いから、私の技合成みたいにはっきりと能力が発動している様子が確認できるのは珍しいんだって。だからちゃんと研究されるまで、あんまり公の場に晒しちゃいけないんだよ」
「そう、ですか……」
フィアにはやはりよく分からないが、とりあえず他言無用ということだけは理解したので、このことは胸の内にとどめておくことにする。
「ちなみに、能力を発見した第一人者は、アシッド機関の所長さんなんだよ。ちょっと捻くれた人なんだけど、すっごく頭がいいんだ」
「へぇ、そうなんですか」
研究者や発明家、過去の偉人で俗に天才と呼ばれる人間は変人が多いとフィアは知っているので、反応は淡泊なものだ。そもそもフィアにとってその人物は限りなく無関係の人物なので、特に何も思わない。
とその時、船内にピーッ! という警笛のような音が鳴り響いた。そして同時に、アナウンスが流れる。
『サミダレタウンに入港しました。船内にいるお客様は、下船の準備をしてください。繰り返します——』
「着いたみたいだね」
「みたいですね」
フィアとルゥナはそれぞれボールをセットし、船から降りる準備に取り掛かる。
遂に、ホッポウ地方で最もシンオウ地方に近い島、クナシル島へと、到着したのであった。
ルゥナ戦、決着です。そして国後島……もといクナシル島へと到着しました。ここがシンオウのポケモンリーグらへんと被っていて気に喰わないのですが、この際しょうがないので目を瞑ります。ところで知っている方は知っていると思いますが、白黒はブイズではブラッキーが一番好きです。なのでルゥナが今作で一番のお気に入りかというと……まだ分かりません。というか、今作は全てが白黒オリジナルのキャラなので、全員がお気に入りみたいなもんです。それでは次回、サミダレタウンでバトル大会です。またかよ! とツッコミを入れてくださった方、今回はちょっと一波乱起きるので、ご安心を。では、次回もお楽しみに。
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