二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 七つの星と罪
- 日時: 2013/07/21 23:48
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。
ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。
それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
それでは、白黒の新しい物語が始まります——
登場人物紹介
>>31
プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11
シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43
クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.94 )
- 日時: 2013/05/03 17:32
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: キャラの書き分けって難しい……描き分けの方が難しいと思うけど。
Dr.クロさん
申し訳ありませんが、クロはひとまず不採用の方向となりました。
選んだ基準は、口調の書き分けが出来るか、キャラの被りがないか、キャラとして動かしやすいか、バトルで使いやすいか……という諸々の点で、今後出る予定のジムリーダーと口調の書き分けが出来そうになかったのと、情報屋という設定を生かせそうになかったので、今回は見送らせてもらうこととなってしまいました。
とはいえ、情報屋という職なら今後の展開次第では必要となる可能性もあるので、諦めないでくださいね。
返信ついでで悪いのですが、採用となったキャラの一覧>>64にありますので、よければ目を通しておいてください。
- 第29話 prank ( No.95 )
- 日時: 2013/05/03 20:58
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 電気タイプはシビルドンがたぶん一番好き。
研究所内部は相当な広さがあり、迷いそうだったが、後でハブラから研究所内の地図が送られてきたため、フィアはなんとか迷わず研究所の中を移動できていた。
「ここを右に曲がって、そのまま直進っと」
分かれ道になっている通路を右折し、フィアは歩を進める。
発電所に向かうためには水平移動するエレベーターに乗らなくてはならない。そしてそのエレベーターは、研究所の奥に一つだけ。発電所に何者かが侵入しないようするための防衛策の一つらしい。
「にも関わらず今回の騒動……人間でもポケモンでも、相手はただものじゃないってことなのかな」
そう考えると、フィアにこの役は荷が重く感じられるが、研究員たちを安全に誘導することの方がフィアにとっては難しい。最悪フィアの手に負えないのであれば逃げることもできるのだし、適材適所ということか。
「まあ、別にこれが僕にとって適任なわけじゃないけど……っ!」
独り言を呟きながら歩いていると、不意に後ろからフィアの横を何かが通り過ぎる。
「な、なに……っ?」
途中からここまでポケモンと遭遇していなかったために警戒心が緩み切ったフィアは、慌てて後ろを向くが、後ろから前方に向けて通り過ぎたのだから当然そこには何もいない。
そのことに気付いて再び前方を向くと、今度こそその何かを認識する。
それはポケモンだ。白いリスのような姿をしており、尻尾や耳は青色をしている。
『Information
パチリス 電気リスポケモン
ほっぺを擦り合せることで他の
電気タイプのポケモンに電力を
分け与える姿がたびたび確認されている。』
一見すればパチリスはただフィアの横を通り過ぎただけに見える。しかしパチリスが加えているものを見れば、そうではないということが分かった。
「あっ……カードキー!」
パチリスが口に咥えているのは、エレベーターの扉を開けるためのカードキーだ。他の扉と違って非常に頑丈なエレベーターの扉だけは、そのカードキーがなくては開かないらしい。
パチリスはそれを、通り間際にフィアからスリ取ったようだ。
しかもパチリスはカードキーを咥えたままとっとこと廊下を走って行ってしまう。
「あ、ちょっと待って!」
カードキーがなくては困るフィアは、当然パチリスの後を追う。しかしパチリスは非常にすばしっこく、フィアが走っても追いつけそうにない。
「仕方ない……ブースター!」
フィアはボールからブースターを繰り出し、パチリスを追いかけさせる。
ブースターは元々それほど速くはないが、それでもフィアよりはずっと素早く動ける。廊下を走るパチリスを追跡し、もう少しで追いつく距離まで肉薄した。
「よしっ、そのままパチリスを押さえつけるんだ!」
この距離なら飛びかかって押さえつければパチリスの動きを止められる。ブースターは後ろ足で地面を蹴り、前方に飛び込むようにジャンプするが、
「っ!? ブースター!?」
直後、ブースターの目の前で何かが弾け、ブースターは軌道をずれて顔面から床にダイブしてしまう。
しかもパチリスはその光景を見て、くすくすと笑っている。雰囲気から邪気は感じないが、悪戯好きのようだ。
「いや、悪気なく悪戯するのはかなりタチが悪いと思うけど……仕方ない、相性は悪いけど君にも出張ってもらうよ。ミズゴロウ!」
フィアは電気タイプと相性が悪いが、数で攻めるためミズゴロウを繰り出す。ブースターもサッとパチリスの背後に回ったため、挟み撃ちの陣形となった。
「ブースター、アイアンテール! ミズゴロウ、岩砕き!」
ブースターは鋼鉄のように硬化させた尻尾を振るい、ミズゴロウは岩を砕く勢いで突進。両者の攻撃がパチリスへと迫るが、パチリスはこともなげに跳躍して二体の挟撃を躱してしまう。
ブースターとミズゴロウは互いに攻撃が当たりそうになり、無理やり軌道をずらすが、そこで隙が出来てしまう。その隙にパチリスは電気を凝縮した球体を作り出し、尻尾を振るって二体に向けて飛ばした。
「っ! ブースター! ミズゴロウ!」
パチリスの攻撃の直撃を喰らう二体。ブースターはともかく、ミズゴロウは効果抜群なので大ダメージだ。
「本当にすばしっこいな……」
ブースターもミズゴロウもあまり素早くないポケモンなため、パチリスのようにちょこまかと動き回る相手は苦手なのだ。ブースターもニトロチャージがあるが、攻撃が当たらなければ意味がない。
「しかもカードキーが燃えたら困るから炎技は使えないし……ミズゴロウ、水鉄砲!」
ミズゴロウはパチリスに向けて水を噴射するが、サッと回避される。そしてパチリスはそのまま廊下を駆けていった。
「また逃げるの!? ブースター、追って! ミズゴロウはこっち!」
ブースターにはパチリスをそのまま追わせ、フィアは鈍いミズゴロウを抱えて走る。ミズゴロウは思ったより重かったが、抱えて走れないほどではない。
「ブースター、起死回生!」
ある意味ピンチなこの状況だが、ブースターは大した威力の出ない起死回生を発動し、パチリスへと突っ込むが、パチリスはさも当然のように横へ飛び、ブースターの突撃を回避した。
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
パッとフィアはミズゴロウから手を離し、ミズゴロウも同時に水を噴射する。それなりに素早く行われた連携攻撃だが、これもパチリスは上へ跳躍して躱したが、
「っ、ここ……!」
上へ跳んだ、つまり空中に身を投げ出したということは、それ以降の動きが出来ないということ。パチリスの着地点を予測したフィアはその場所に立ち、落下してくるパチリスを待つ。
そして、
「よっと」
ぽすんと、パチリスはフィアの腕の中に収まった。そしてすぐさま逃げ出さないよう少し強く押さえつける。
「ちょっと乱暴でごめんね。でも、これがないと僕らは困るんだ。だから、返してもらうよ」
そう言いつつ、フィアはカードキーを引き抜く。
今度はもう誰にも取られないようブレザーの内ポケットの奥に仕舞い込みつつ、前方を見ると、そこには一つのエレベーターがあった。
「走り回っているうちに、着いちゃったよ……結果オーラいというか、なんというか」
フィアは呟きながらパチリスを逃がそうとするが、パチリスは床に降りず、むしろフィアの頭の上まで上ってきた。
「なにさ、もう……」
ミズゴロウよりずっと軽いのだが、それでも重心をずらされるので歩き難い。だがパチリスはどこかへ行く気はないようなので、フィアは逃がすことを一旦諦め、溜息を吐いてエレベーターへと近付く。
(パチリスを逃がすのは、ほとぼりが冷めてからでも大丈夫だよね)
などと思いつつカードキーをエレベーター横の操作パネルに通し、扉を開く。
中はトンネルのようになっており、床や天井にはコードが何本か伸びていた。ちょうどエレベーターを横に倒した感じだ。
「この奥でエレベーターは止まってるのか」
フィアは足場を確認しつつ、トンネル染みたエレベーター内を歩く。一本道なのだが、非常に暗いため、何度もコードに足を取られてしまう。
「歩きづらいなぁ、懐中電灯でも持って来ればよかったかな……?」
愚痴るようにそう言うと、パチリスが尻尾に帯電させ、ほのかにだがエレベーター内を照らした。一寸先を照らす程度だが、ないよりはよっぽどマシだし、足元も辛うじて見えるので足をすくわれることも少なくなるだろう。
「あ、ありがとう……?」
さっきまでカードキーを盗んでフィアの手を煩わせていたパチリスが、急にフィアを助けるようなことをするので、フィアは面食らう。
(何なんだろう、よく分からないな、このパチリスも……)
とにかく視界は少しだけ良好になったので、幾分楽に進めるようになったフィアは、さらに奥へと進んでいく。
そしてそれなりに歩くと、途中で立方体の箱のようなものを発見した。これがエレベーターのリフトだろう。
「この中に研究員の人がいるんだよね……」
こんな中途半端なところで止まっているということは、やはり移動中で二予備電源が切れ、中に閉じ込められてしまったのだろう。
フィアはパネルにカードキーを通し、ロックを解除。リフトの扉を開いた——
今回は特に言うほどのこともなかったですね。パチリスがカードキーを盗んだりしましたが、アニメでよくあるような展開です。というか最近、どうにもこういうシーンが上手く書けないんですよね、昔はそうでもなかったのに……なんでだろう? そんなことはともかく、次回、たぶん停電騒動が終結します。もしかしたら次の次に終結かもしれませんが、一応次回で終わりという算段です。では次回もお楽しみに。
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.96 )
- 日時: 2013/05/03 22:22
- 名前: タク ◆9mCc3lFAO6 (ID: 39RfU1Y2)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=25055
こんばんは!いたずら好きなパチリスが登場しましたね!非公式とかでは、進化しますが、正直、進化前の方が好きです。というか自分、電気ネズミ系統のポケモン(ピカチュウ系、プラスル、マイナン、パチリス、エモンガ)が好きなのもあるんですね。一番好きなのはプラスル、マイナンですけど。パチリスがもしかして、フィアの手持ちに!?もし、そうなら、フィアのパチリスVSテイルのエモンガの電気ネズミ同士の対決が期待できますね。(どんな対決だ。)いたって、自分の勝手な妄想ですが。すみません。こちらは、ポケダンの新スレを建てました!見に来てください!
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.97 )
- 日時: 2013/05/04 02:43
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: URLもネタ切れ……ただでさえあとがきのネタがないのに……
タクさん
正直ありきたりだとは思うのですが、このパチリスは悪戯好きです。他にも理由はありますが。
非公式の進化系は、リスというよりイタチに見えます。白黒的には進化してもしなくてもって感じですが。
ああ、そうなんですか。そうなのかな、と薄々感づいてはいましたが、やっぱりそうなんですね。白黒は電気ネズミ……というより電気タイプ自体があまり好きでないんですよ。正確に言えば、電気タイプで好きなポケモンが少ないんですけど。
パチリスがフィアの手持ちになるかどうかは、次回のお楽しみです。まあ、期待は裏切らないつもりですけど。
電気ネズミ同士のバトルですか。確かに実現したら面白そうですけど、蓄電と電気エンジンで電気技が全く通用しないバトルになりそうですね。
そうなんですか。最近はあまりカキコに来ていなかったので知りませんでした。ポケダンは闇の探検隊で七つのなんちゃらを探している途中で行き詰って、それ以来やってないんですよね……とりあえず、暇が出来次第、見に行かせてもらいますね。というか、明日(いや今日か)の日中にでも見に行きます。
- 第30話 phobia dark ( No.98 )
- 日時: 2013/05/04 14:58
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 電気と虫の複合タイプもっと出ないかな。デジモンではメジャーなのに……
フィアがエレベーターリフトの扉を開くと、中には白衣を着た女性がいた。
正確には、緩くウェーブのかかった白いショートヘアーを邪魔にならないよう右側で括り、クリーム色のワンピースの上から黄緑色のカーディガンを羽織り、さらにその上から白衣を羽織った女性が——蹲っていた。
しかも、
「う、うぅ……暗いよぅ、にぃさん……」
泣いていた。
「……えっと」
基本的に人と話すことが苦手なフィアは、特に女性と話すのが苦手だ。さらに言えば泣いている女性などフィアの手におえるものではない。
本音を言えば今すぐ回れ右で帰りたいところだが、残念ながらそういうわけにもいかない。
フィアは相手を落ちつけようと、できるだけ静かな声で語りかけるように女性に声をかける。
「あ、あの、大丈夫——」
「っ、ひ、人ですかっ?」
フィアが最後まで言う前に、女性の方がフィアの存在に気付き、銀縁の眼鏡を掛けた顔がぱぁっと明るくなる。
「よ、よかったぁ。このままの暗い場所に一生閉じ込められちゃうのかと思いました……ありがとうございます」
「い、いえ……」
まだ目尻に涙を浮かべているものの、女性はもう泣き止んでいた。フィアとしては好都合というか、良い展開だ。
「予備電源が作動したので発電所の様子を見に行こうとしたのですが、途中で電源がプツッてなっちゃいまして、閉じ込められてしまったんです。私、暗いところが苦手で……お恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね」
顔を少し赤らめながら微笑む女性。さっきまで啜り泣いていたのが嘘のような微笑みだ。
(つまり暗いところが苦手だから、泣いてたんだね……)
いわゆる暗所恐怖症というものだ。恐怖症の中では高所恐怖症や閉所恐怖症となどと同列に語られるくらいにメジャーなものだろう。
となるとさっき女性の顔が明るくなったのも、フィアが来たからではなく、パチリスがほのかにだが辺りを照らしたからだということになるのだろう。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はクリです。今はライカ研究所で研究員をやらせてもらっています」
「あ……僕はフィアです。えっと、旅の途中でこの街に立ち寄った、ただのトレーナーです」
女性——クリの名前に少しだけ引っ掛かりを覚えたフィアだったが、すぐに自分も名乗る。
「フィアさんですね。ところで助けてもらってこんなことを言うのも失礼ですが、フィアさんはなぜここに?」
「それは、えぇっと……」
フィアはお世辞にも説明が上手い人間ではないが、たどたどしくも何とかクリに現状とフィアがここに来た理由を説明する。
偏見だが、研究者なだけあって事態の飲み込みが速いのだろう。クリはすぐに納得し、状況を理解したようだった。
「そうでしたか。この街のことなのに、旅の途中のトレーナーさんを煩わせてしまって申し訳ないです。ここからは私一人でも大丈夫ですので、フィアさんは戻ってもらっても構いませんよ」
「いや、そういうわけには……」
ここまで来たのだから最後までやるのが人間としての筋だ。それについさっきまで泣いていた女性を一人にしておくのも心配だ。
「ここまで来たんですし、僕も一緒に行きますよ」
「そうですか……ありがとうございます」
クリはぺこりと頭を下げる。そして二人は、リフトを通過して向かいの建物にある発電所を目指すこととなった。
その道中。
「ところで、関係のないことなのですが、どうしても気になったので聞いてもよろしいでしょうか」
「? 何ですか?」
前置きをしてから、クリはフィアの頭の上に乗っているパチリスを指差しながら言う。
「そのパチリス、見たところあなたのポケモンではないようなのですが……」
「分かるんですか?」
「ええ、まあ。職業柄、そういうのは見抜けるようになっていますので」
研究者という職業から人とポケモンの関係性をどう見抜くのかと疑問に思ったが、この世界の研究者はフィアの常識を超えているのだろうと、フィアは自分を強引に納得させた。
「このパチリス、さっきエレベーターのカードキーを盗んだと思ったら、今度は僕について来てここを照らしてくれたんですよ。何が目的で何を考えてるのか、さっぱりなんですけど」
他にも事実をそのまま言うと、クリは目をぱちくりさせてフィアを見つめる。こいつ何言ってんだ、とでも言うような目だ。
「えぇっと、あの、フィアさん。まさか、本当に気付いてないんですか……?」
「? 何がですか?」
クリはここで初めて落胆したような溜息を吐く。やれやれ、と言いたげな溜息だった。
「フィアさん、たぶんそのパチリス、フィアさんのことが好きなんだと思いますよ?」
「えぇ!?」
「何でそんなに驚くんですか……」
またしても、クリは溜息を吐く。
「いやだって、カードキー盗まれましたよ?」
「おいたして相手を気を引こうとするのは人間だけじゃないんですよ? むしろ脳の構造的に、ポケモンの方がそういう行動を取ることが多いんですよ。ポケモンの生態についてちょっとでも齧った研究者からすれば、常識みたいなものです」
それに、とクリは続け、
「今こうしてフィアさんについて来て、しかも辺りをピカッとするってことは、それだけフィアさんが魅力的なトレーナーだからでしょう。ポケモンには、素質のあるトレーナー、自分と気が合うトレーナーに近づこうとする習性がありますから、そう考えるのが自然です」
とても研究者らしい見解を交えて説明され、返す言葉のないフィア。
「パチリス……」
頭に乗せたパチリスを降ろし、ジッとその目を見つめる。フィアは至極真剣な眼差しだが、パチリスは物欲しそうな目でフィアを見ている。
「ゲット、してあげたらどうですか?」
「……そうですね」
現実的な話をすれば、フィアの戦えるポケモンは二体。ここら辺で新戦力が欲しかったところではある。
相手がこちらを好いているというのなら、それを無下にする理由はない。
丁度エレベーターのトンネルから抜けたフィアは、そう思いながら空のボールを取り出した。
「じゃあ、パチリス。行くよ」
出来るだけ優しく、力を入れずにフィアはボールのボタンをパチリスの額で押す。するとパチリスはボールの中に吸い込まれていき、地面に落ちる。そして何度か揺れた後、カチッという音が鳴った。
これで、パチリスはフィアにゲットされたことになる。
「……では、急ぎましょうか。あまりゆっくりしている時間はないと思うので」
「そうですね……」
パチリスをゲットした感動に浸りたいところだが、今はそんな場合ではない。
フィアとクリは、急ぎ足で奥にある発電所へと向かう。
「うわ……」
「これは……」
研究所の奥にある発電所。その最深部、即ち電力を生成している巨大発電機のある部屋は、研究所内以上にとんでもない光景が広がっていた。
部屋を覆い尽くすほどにはびこっているのは、大量の黄色い蜘蛛のようなポケモン。その中に一匹だけ、巨大な蜘蛛がいる。
『Information
バチュル くっ付きポケモン
自ら発電が出来ないため、野生の
バチュル他のポケモンや機械から
電気を吸い取る術を体得している。』
『Information
デンチュラ 電気蜘蛛ポケモン
電気を帯びた糸で相手を拘束する。
デンチュラの巣は常に帯電している
ので、通行の妨げになることもある。』
「バチュルとデンチュラ……成程、このポケモンたちが停電を起こした主犯格ですか」
「どうもそうみたいですね」
フィアはすぐさまボールを取り出し、ポケモンを繰り出した。
「相手は虫タイプ。なら君の出番だよ、ブースター!」
フィアが繰り出すのは炎タイプのブースターだ。電気と複合していようと、相手は虫タイプ。相性では有利だ。
「とりあえずあのリーダーっぽいデンチュラを倒せば、この騒ぎは収まるんですよね」
「まあ、あのデンチュラがポケモンたちを先導して電気をぱくぱくしているというのならそういことになりますが……」
陰りのある表情で考え込むクリ。
「今回のこのざわざわ、どうにも裏で何かある気がするんですよね……」
そしてぼそりと、フィアには聞こえない声で呟くのだった。
今回は新キャラ、クリの登場。そしてほとんどの人が予想していたであろう、フィアがパチリスをゲットです。フィアの新戦力ですね。白黒は出来タイプはあまり好きではないのですが、パチリスは今後の展開で色々と便利だから、という理由で選ばれました。白黒はあまり電気タイプが好きでないんですよね。好きなのはシビルドンと、ロトム系。それからランターンやレントラーくらいでしょうか。ちなみにクリの口調は、丁寧語に加えてたまに擬音語や擬声語、幼児語など幼い口調が含まれるというものです。たぶん解説しないとなんだこれ? ってなる口調です。それでは次回、次回こそ停電騒動終結、そしてジム戦です。お楽しみに。
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