二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 七つの星と罪
日時: 2013/07/21 23:48
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
 前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。

 ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。

 それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 それでは、白黒の新しい物語が始まります——

登場人物紹介
>>31



プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11

シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43

クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180

第21話 induction ( No.74 )
日時: 2013/04/29 01:09
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 追い詰められる二回戦、勝負の行方は……!?

「アイアンテール!」
「体当たり!」
 ブースターの振り下ろす鋼鉄の尻尾を掻い潜り、シビシラスはブースターに体当たりする。
 ここまでブースターは何度も攻撃を受けたが、シビシラスの攻撃力が低いことが幸いし、まだ戦闘不能ではない。だが、それも時間の問題だ。
(どうしよう……)
 攻撃が当たらず、焦りを募らせていくフィア。けれどもその感覚は、どこかで感じた事のあるものだった。
(そういえば、イチジクさんとのバトルでも、こんな気持ちだったな)
 彼のエース、ベロリンガに攻撃が通じなかった時と似た状態。あの時はベロリンガの身体的弱点を突いて勝利したが、シビシラスにはまず攻撃が当たらない。フィアは再び図鑑を開くが、最初に開示された情報以上のものは得られなかった。
 しかし、
(せめて素早さで勝てれば……素早さ?)
 フィアはふと、あることを思い出す。
(シビシラスは電気タイプ。なら……)
 フィアは自身を落ち着かせようと、一度大きく息を吸い、吐く。
「ブースター、火炎放射!」
 そしてブースターへと指示を出す。ブースターはその指示通り、燃え盛る火炎を前方へと発射する。
「かわしてスパークだ!」
 シビシラスは放たれる火炎を迂回するようにして回避し、全身に電気を纏ってブースターへと突進する。
 だがこの時、シビシラスの攻撃は少し遅れていた。それは当然のことである。普通に攻撃するのではなく、一度攻撃を躱してから反撃に移っているのだから、そこにタイムラグが存在するのは当たり前のことだ。
 そしてフィアは、そのタイムラグに付け込む。

「ニトロチャージ!」

 シビシラスが突進する瞬間、ブースターも同じようにシビシラスに向かって走り出していた。その身の炎を纏って。
 ブースターとシビシラスが激しくぶつかり合うが、攻撃力ではブースターが圧倒的に上。シビシラスは簡単に弾き飛ばされてしまう。
「っ……さっきの火炎放射はブラフだったか。しかもニトロチャージで素早さ上昇……!」
 テイルが呻く。彼の言うように、今のブースターはニトロチャージの効果で素早さが上がっている。素早いとはいかずとも、器用な身のこなしがシビシラスのアドバンテージだったため、それが失われるのは辛い。
 しかし、シビシラスにはまだ手が残っている。
「ブースター、アイアンテール!」
 ブースターは飛び上がり、鋼鉄の如く硬化させた尻尾をシビシラスへと叩きつけようとする。その刹那、
「シビシラス、電磁波だ!」
 シビシラスは弱い電流をブースターに浴びせた。
 そのショックでブースターは攻撃を中断してしまい、地面に蹲る。麻痺状態で体が動かないのだろう。
「流石に素早さまで上げられたら敵わないから、ちょっくら動きをとめさせてもらったぜ。さあ、あとは一気にスパートかければ——」
 と、テイルはそこで言葉を止めた。その理由は、ブースターにあった。
「なっ、これ……っ」
 ブースターは麻痺状態。しかしブースターから発生られる覇気は状態異状のそれではなかった。見るからに凄まじい気迫が発せられている。
『フィア選手のブースター! 突然凄まじい気迫を発し始めました! これはどういうことだ——!?』
『特性、根性ですね』
 ウルシが静かにそう告げた。
『状態異状になると攻撃力が上がる特性、根性。しかも今のフィア選手は、それを狙っていたように見えます。ニトロチャージを当てて素早さを上げ、シビシラスから電磁波を誘発させたのでしょうか……?』
 アナウンサーとウルシの解説を聞き流しながら、フィアは思い出す。この世界に来る前、闇に閉ざされた遺跡で、青年から教わったことを。
(麻痺状態になると素早さが下がる……つまり麻痺は相手の動きを止めるだけではなく、相手の動きを遅らせることにも使う、でしたよね)
 だったら逆に、こちらの素早さを上げれば相手が電磁波を使うことも読める。電気タイプの多くは電磁波を覚えるそうなので、シビシラスも覚えている可能性は高かった、という考えからだ。
 なんにせよ、今のブースターは元々高い攻撃力が急増している。下手に攻撃を受ければ一撃で相手を戦闘不能に出来る攻撃力だ。
「ブースター、ニトロチャージ!」
「くっ、躱してスパーク!」
 シビシラスは炎を纏って突っ込んで来るブースターの攻撃をなんとか回避するが、炎や突進の勢いが段違いなため、避けるだけで精一杯。反撃に余裕はなかった。
「火炎放射!」
 ブースターは足を止め、振り返って炎を放射した。この攻撃は避けられず、シビシラスはその身を焼かれていく。
「シビシラス、チャージビームだ!」
 炎が収まると、シビシラスは電気を圧縮した光線を発射。ブースターに直撃させる。
 ブースターはそのまま反撃に移ろうと思ったようだが、麻痺で体が痺れ、動きを止めてしまう。その隙に、シビシラスはさらに攻撃を加える。
「もう一度!」
 再びチャージビームを発射するシビシラス。特攻が上がっているので、威力は高い。
「ブースターの体力もかなり削られてるはずだし、一気に攻め込むぞ。シビシラス、スパーク!」
 とそこで、シビシラスは電気を纏ってブースターへと突っ込む。根性が発動しているとはいえ、残り体力の少ないブースターだ。このまま押し切ってしまおうという考えなのだろうが、それは少し甘かった。
「ブースター、起死回生!」
 何も考えずまっすぐ突っ込んで来る相手など、ブースターでなくともいい的だ。特に今のブースターは一撃でもまともに攻撃を入れれば勝利はほぼ確実。外すわけがない。
 ブースターは残った力を振り絞り、突っ込んで来るシビシラスを前足で上空へと蹴り飛ばした。
「しまっ……シビシラス!」
 しばらくしてシビシラスは落下した。見れば完全に目を回しており、戦闘不能だ。



『Aブロック二回戦、決着ぅ——! 勝利を手にしたのはフィア選手! 一回戦同様、土壇場で特性を発動させての逆転勝利だぁ——!』
 アナウンサーのハイテンションな叫び声と呼応するかのように、会場が一気に沸き上がる。
「はぁ、負けちまった……でもま、楽しかったな! またバトルしようぜ!」
 シビシラスをボールに戻し、テイルは気さくにフィアにそう言葉をかけたのだが、
「え、あぁ、はい……」
 基本的に人見知りするフィアは、そんな風に曖昧に返すことしか出来なかった。
 だがテイルはそんなこと気にせず、爽やかに笑う。
「こーいう大会に出てれば、またいつか出会うかもな。次は俺ももっと強くなって、負けねーからな!」
「は、はい……」
 フィアはそのテイルの勢いに飲まれっぱなしのまま、フィールドを後にする。なんにせよ、フィアは二回戦突破、準決勝へと駒を進めることが出来た。



「フィア! 勝ったよ!」
 ロビーのソファに座っていたフィアが聞いたフロルの第一声はそれだった。フロルの顔には歓喜の笑顔が浮かんでいる。
「良かったね、フロル」
 フィアも笑顔を見せつつそう言うが、もっと気の利いた言葉をかけられないのかと少し反省もする。
 だがフロルは露ほどもそのようなことを気にした様子を見せず、ただ笑っていた。準決勝に進出することがよほど嬉しいのだろう。
 なにはともあれ二人揃って準決勝まで勝ち進んだのだ、これは本当に決勝で会えるかもしれないと希望を抱きながら、フィアは次の対戦相手をチェックする。するとそこには、
「ルゥ先輩……!」
 ルゥナの名前があった。
「やっぱり先輩も準決勝まで来たんだ……気は抜けないな」
 フィアは一度、ルゥナに負けている。技合成に関しては大きな大会なので使うことはないだろうが、地力だけでも彼女は十分強い。
 早くもフィアとフロルの決勝で出会うという目標が崩れつつある中、準決勝を始める準備を促すアナウンスが流れ、フィアとフロルはそれぞれ指定されたフィールドへと向かった。



『いよいよ始まりました、サミダレバトル大会ビギナーカップ、準決勝! こちらAブロックでバトルを繰り広げるのはこの二人!』
 やはりハイテンションなアナウンサーの声と共に、モニターにフィアとルゥナの二人が映し出される。
『まずは一回戦、二回戦共に怒涛の逆転劇を見せた期待の彗星、フィア選手! この準決勝でも、まったまた逆転勝利を観客たちにみせつけるのか——ッ!?』
 まずはフィアがアップになり、その後今度はルゥナがモニターに大きく映し出される。
『続いてルゥナ選手! 全試合を通じて安定したバトルを展開していました。フィア選手を相手にその安定さはどこまで保つのか!』
 アナウンサーの前口上の間、ルゥナはふとフィアに話しかける。
「……実は決勝で会えたらドラマチックだな、とかちょっと思ってたりもしたんだけど、少し早く会えたね、フィア君」
「そうですね。でも、僕にはもう、決勝で戦う相手がいるので、今度は負けません」
「へぇ……それは楽しみだよ。負けられないって思ったフィア君の力、見てみたいな」
「……なら——」
『それでは、試合開始です!』
 ルゥナの言葉を受けてフィアがさらに言葉を返そうとしたが、そこでアナウンサーによる試合開始の合図を聞かされ、フィアは口をつぐんでボールを構えた。



今回はテイル戦決着、そして準決勝、ルゥナ戦です。正直書くことが全くないので、あとがきはこれで終了。ルゥナ戦はすぐに終わらせて、最初に行った波乱を起こそうと思います。それでは、次回をお楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 オリキャラ募集 ( No.75 )
日時: 2013/04/28 11:51
名前: タク ◆9mCc3lFAO6 (ID: 39RfU1Y2)

 こんにちは!テイルを早速登場させてくれてありがとうございます!シビシラスは電磁波でブースターを苦戦させていますが、やはりブースターの特性・根性にはかないませんでしたね。

 余談ですが最初、テイルのパートナーポケモンに迷いました。そのとき、イッシュ地方のネズミっぽいポケモンということで、エモンガを選びました。それで、他の手持ちも地面技が効かない電気ポケモンでそろえようと言うことで、他の手持ちもすんなり決まりました。事実、エモンガにはポケモンリーグでもレンブ戦でコジョンドにフラッシュ連発で飛び膝蹴りを封じてもらいましたからね。(一度、コジョンドの飛び膝蹴りでパーティが3タテはおろか、全滅させられている。)

 それでは、続きを楽しみにしています!

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 オリキャラ募集 ( No.76 )
日時: 2013/04/28 23:23
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 最近クオリティが下がってる気がする……どうしたものか。

タクさん


 テイルは立ち位置的にも出しやすいキャラだったので、早くも出させていただきました。
 バトルの結果は、ちょっと強引かなと思いながらも、結局最後まで上手い流れが思いつかず、根性を発動させることとなりました。

 パートナーは重要というか、やっぱり悩みますよね。僕もパートナーというか、ジムリーダーのエース選びには苦戦しました。容姿にもエースポケモンの意匠を取り込もうとも考えていたので、尚更です。
 白黒はBWならゼブライガを使っていましたね。耐久が酷過ぎるのとサブウェポンが少な過ぎて使いにくかったですが。
 しかし、やはりレンブは強いですよね。白黒は、アーケオスがいたのでまだマシでしたが、2になるとフワライドだったので一撃で倒せないことが多く、返しのエッジでやられてました。
 次回はあとがきにもあるように、ひと波乱起こそうと思います。新キャラも出ますかね? まあ、期待し過ぎない程度に楽しみにしていてください。

第22話 mud game ( No.77 )
日時: 2013/04/29 02:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 始まるサミダレ大会準決勝、勝利を手にするのは誰か……!

「行くよっ、ギアル!」
 ルゥナが繰り出したのは、目の付いた二つの歯車のようなポケモンだった。

『Information
 ギアル 歯車ポケモン
 歯車の組み合わせは決まっており、
 回転することで生きるための
 エネルギーを作り出している。』

 ギアル、鋼タイプのポケモン。
 ならば、フィアにとっては好都合だ。
「出て来て、ブースター!」
 フィアが繰り出すのは炎タイプのブースター。ギアルとは相性が良い。
「うーん、ブースターかぁ。ここはミズゴロウで来ると思ったんだけど、アテが外れちゃった」
 ルゥナはやや弱った顔をするが、すぐに気を取り直し、
「まあそれでも、負けるつもりはないけどね。ギアル、ギアチェンジ!」
 ルゥナの指示を受け、ギアルはなんといきなり自身の歯車をどこかへと飛ばしてしまった。
「え……?」
 だがそのすぐ後に別のものと思しき歯車がギアルに装着され、事なきを得る。けれどフィアには何がどうなったのか理解ができない。ルゥナはそんなフィアに、バトル中にも関わらず解説する。
「ギアチェンジはギアル専用の変化技なんだよ。ギアを入れ替えることで、攻撃と素早さを上げる技。ギアルは元々そんなに能力が高くはないけど、この技があればその能力の低さもカバーできる。さあ、続けて行くよっ。ギアソーサー!」
 ギアルは続けて別の歯車を二つ飛ばし、切り裂くようにブースターを攻撃。効果はいまひとつだが、ギアチェンジで攻撃力が上がっているので、それなりの威力が出る。
「くっ、ニトロチャージ!」
 歯車を払い除けると、ブースターは全身に炎を纏い、ギアルへと突っ込んでいく。が、しかし、
「鉄壁だよっ!」
 ブースターがギアルに激突し、大きく吹っ飛ばす。効果抜群で大ダメージを与えるかと思いきや、ギアルはそのまま、何事もなかったかのように起き上がった。
「効いていない……!? いや……」
 フィアは以前、この技を見たことがある。
(鉄壁、グリモワールの下っ端のモグリューが使ってた技だ。確か、防御力を大きく上げる技だよね)
 あの時のモグリューは物理技で攻めてもダメージを受けていたが、ルゥナのギアルは素の防御も高いようなので、大きなダメージは見込めない。
「でも、防御が上がるのなら特殊技で攻めればいいんだ。ブースター、火炎放射!」
 フィアの理屈は正しい。相手が防御を特化させるのなら、それに対し特殊技で攻めるのは正攻法だ。
 だが、
「充電!」
 火炎放射が当たる寸前で、ギアルは自身に電気を溜め込む。
 直後に炎はギアルを飲み込んだが、炎が晴れると、そこには悠然とギアルが浮いていた。
「! 効いてない……!」
「充電はね、本来は次に出す電気技の威力を高める技なんだけど、特防が上がる効果もあるんだ」
 つまりギアルは、物理技だけでなく特殊技にも強いということになる。
 充電は鉄壁ほど大きく特防を上げるわけではないが、ブースターの特攻も攻撃より低いので、結果は同じだろう。
「ギアチェンジ!」
「っ、アイアンテール!」
 ギアルがすかさず歯車を入れ替えようとするが、そこにブースターが素早く接近し、鋼鉄の尻尾を叩きつけて吹っ飛ばす。それにより、ギアチェンジは中断されてしまった。
 フィアとしては、鉄壁無双と言っても過言ではないギアルに攻撃と素早さまでプラスされたらたまったものではない。なので、ギアチェンジだけはなんとしてでも防がなくてはならないのだ。
(こっちは攻撃するしか手立てはないし、とにかく攻める……!)



『準決勝Bブロック、決着です!』
 フィアのいるAブロックとは逆のBブロックでは、たった今バトルが終了したところだった。
『見事決勝進出を決めたのは、ギリギリのところで勝利を手にしたフロル選手です!』
 観客たちがドッと沸き上がる中、フロルは疲れたような少しおぼつかない足取りでロビーへと戻る。
 今までならフロルが戻った時には既にフィアがそこにいたのだが、今回はいなかった。モニターを見れば、まだバトルをしているようだ。
『ルゥナ選手のギアル、またしてもブースターの攻撃を止めたぁ——!』
 パッと見ではどちらが押されているのかは分からなかった。アナウンサーの発言からするとフィアが不利っぽいが、モニターを見ればブースターがひたすら攻めて押しているようにも見える。
「……飲み物、買いに行こ」
 試合が長引きそうだと判断したフロルは立ち上がり、自販機のある外へと出る。そしてまだ少しふらついた足取りで自販機へと向かう途中の曲がり角。
 人とぶつかった。
「あっ……ごめん、なさい……」
「おー。気を付けろー」
 フロルは咄嗟に申し訳なさそうに頭を下げたが、相手——若い女だ——は特に気にした風もなく、そのまま歩き去ってしまった。
「……?」
 その一瞬でフロルは漠然と違和感を覚えたが、漠然とし過ぎていたために気に留めず、そのまま自販機へと向かった。



『……あー、えーっと……激しい攻防が長時間に渡り繰り広げられ、両者ともに疲れを見せず……えーっと、えーっと、何て言おう……』
 いつもハイテンションのアナウンサーだったが、今回ばかりは困ったような声を上げる。
 それもそうだろう。フィアとルゥナのバトルは、フィアのブースターがひたすら攻撃し、ルゥナのギアルがひたすら防御し、たまにギアルが攻撃したりブースターがギアチェンジを止めたりする程度で、それが延々と繰り返されている。
 端的に言えば、泥仕合と化しているのだ。そのせいで観客たちも冷めている。
『あー、えー……解説ウルシさん! この状況に対して何か一言!』
「えぇ!? 無茶振りですよ……まあ、鋼タイプの使い手としては、持久戦に持ち込むことも多々あるので泥仕合はさほど珍しくないですが……こういう盛り上げる場としては、あまりよろしくない展開ですね」
 耐え切れずアナウンサーがウルシに無茶な振りをするも、無難に返される始末。
 はっきり言って、Aブロックの準決勝はかなりぐだついている。
(……この感じ、部長がいない時の部活を思い出すな)
 そんなぐだついた空気の中、フィアはただ一人まったく別のことを考えていた。いや、思い返していた、と言う方が正確か。
(今思えば、毎度毎度よく分からないことを口走る変な人だったけど、小規模なりにあの部活をちゃんと支えていたんだね……あの時、僕らはどうしてたっけ)
 フィアが思い返す部内の空気感。それを打破するには、彼女という一石を投じることで解決していた。ならば、今は——?
「ギアチェンジ!」
 やや不規則なローテーションで動くギアルは、ここで歯車を入れ替えて攻撃と素早さを上げにかかる。今まで通りならここでブースターの妨害が入るが、今回はブースターは動かなかった。
「? 何か考えてるみたいだけど、折角のチャンスだしここは攻めるよっ。ギアル、ギアソーサー!」
 ルゥナは一瞬その静止に不信感を抱くが、すぐに攻めに移る。
 ギアルは歯車を二つ飛ばし、挟み込むようにしてブースターを切り裂く。ギアチェンジで威力の上がったギアソーサーは、効果いまひとつでも防御が低めなブースターにはそれなりのダメージが通る。そもそもこれまでもブースターはノーダメージではないので、今の攻撃でいよいよ体力が残り僅かとなった。
 だが、まだブースターには手が残されている。

「ブースター、起死回生!」

 今までニトロチャージを連発していたブースターのスピードは相当上がっている。その高まった素早さで一気にギアルとの距離を詰めると、ブースターは尻尾でギアルを打ち上げた。
「っ……!」
「もう一度、起死回生!」
 今度は飛び上がり、尻尾を振り下ろしてギアルを地面に叩きつける。鉄壁で防御が上がったとはいえ、体力が限界近くまで減った状態で繰り出す起死回生の威力は相当なものだ。ギアルの体力も一気に削られてしまった。
「ニトロチャージ!」
 最後に炎を纏いながらブースターは落下し、ギアルへと激突する。
「ギアル!」
 怒涛の三連続攻撃をまともに喰らい、ギアルは遂に戦闘不能となってしまった。
『き、決まったぁ——! 泥仕合と化したAブロック準決勝を制したのは、フィア選手だ——!』
 一瞬場内は沈黙したが、アナウンサーの声を皮切りに一気に歓声に満ちる。
「負けちゃったよ。先輩の面目が立たないや」
 困り気に笑いながら、ルゥナはギアルをボールに戻す。そしてフィアの方に向くと、
「ここまで来たんだから、優勝してね。フィア君」
「……はい。出来る限りの力は、出すつもりです」
 Aブロック準決勝を勝ち抜き、決勝へと進出したのはフィア。
 フィアは決勝まで進めたことに対する喜びを噛みしめながら、フィールドを後にした。




「フロルも決勝まで来たんだ、良かった……」
 ロビーに戻る道中。
 BブロックはAブロックよりも早く試合が終わったらしく、次のフィアの対戦相手が表示されていた。その相手は、フロルだ。
 いろいろあったサミダレ大会だったが、なんとかフロルと決勝で戦うという目標は、達成されたわけだ——
「フィアっ!」
 ——とフィアがロビーに出た瞬間、フロルが飛び出してきた。
「っ、フロル……? どうしたの?」
 フロルの勢いに圧倒されながらも、フィアはそう尋ねる。というより、尋ねざるを得ない。
 なぜならフロルの表情は悲愴に満ちており、目尻には涙を浮かべ、今にも泣き出してしまいそうだ。
「何があったの、フロル?」
「フィア……」
 鼻を啜りながら涙目でフィアを見上げるフロルの顔は、ほぼ半泣き。もうすぐで泣き喚いてしまいそうだ。
 それでもフロルは、なんとか踏みとどまって、フィアに伝える。自身の身に起こったことを。

「わたしのポケモン——盗まれちゃった……」



今回はルゥナ戦決着、かなりぐだついたと自分でも思っています。そして最後はフロルがポケモンを盗まれたと告白し、終了です。というわけで次回、フィアが盗まれたポケモンを取り返すべく、奔走します。お楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 オリキャラ募集 ( No.78 )
日時: 2013/04/29 09:24
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: GVNUBZAT)

朝からコメントをしている大光です。
オリキャラの採用を前向きに検討して下さって、ありがとうございます。ルーメの能力は最初はただ、「ダメージを受けるたびに、防御能力が上がる」という感じにしようと思ってましたが、さすがにそれはマズいと思いまして、今のようになりました。
見事決勝進出したフィアですが、ここまでのブースターの活躍ぶりは凄いですね。というか今まで一番、白星を上げいるのは、ブースターですね。イーブイの時にはイチジクのベロリンガを下し、グリモワールの下っ端のモグリューに苦戦中にブースターに進化して勝利し、サミダレ大会の二戦もブースターの活躍ですね。
さて、次は決勝と思ったら、フロルのポケモンが盗まれるとは。これはまた波乱の予感がしますねぇ。


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