二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター 七つの星と罪
- 日時: 2013/07/21 23:48
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。
ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。
それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
それでは、白黒の新しい物語が始まります——
登場人物紹介
>>31
プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11
シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43
クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180
- 第35話 オボロシティ ( No.109 )
- 日時: 2013/05/05 17:57
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 進化したヌマクロー、暴食の七罪人にその力は通用するのか……!
「ヌマクロー、進化した君の力、早速見せてもらうよ」
ヌマクローはフィアの言葉にコクリと頷き、大きく息を吸う。
「マッドショット!」
次の瞬間、ヌマクローは口から大量の泥を噴射し、クイタランを攻撃する。効果抜群なので、大ダメージが期待できる。
「続けて行くよ! 瓦割り!」
今度は拳を構えて接近し、クイタランの腹を殴りつける。さらに、
「ヌマクロー、スプラッシュ!」
両腕に水飛沫の立つ水流を巻きつけ、クイタランに叩き付けた。
効果抜群の攻撃も交えた連続攻撃。さしものクイタランも堪えたことだろう。クイタランは両腕をだらんと下げ、俯いている。
「……成程な。攻撃力がかなり上がっとるし、スピードもそこそこ。なにより攻撃の正確さが際立ってっと。進化して能力がかなり上がってとる……ばってん」
ゼブルは目を閉じてそんなことを言い、クイタランは目を見開きバッと面を上げた。
「そいがどうした」
刹那、クイタランの口からしゅるしゅると舌が伸びる。どこまでも伸長する細長い舌は、瞬く間にヌマクローに巻きついた。
「しまっ……ヌマクロー!」
フィアは叫ぶが、もう遅い。
「クイタラン、ギガドレイン!」
次の瞬間、ヌマクローは絶叫を上げ、しばらくしてぐったりとうなだれる。そんなヌマクローと対照的に、クイタランはノーダメージであるかのようにピンピンしていた。
「ヌマクローは水と地面の複合タイプ、弱点は草一つ。ばってんその弱点は四倍になって致命的。一撃もらうだけで戦闘不能はほぼ確実や」
冷たく吐き捨てるようにそう言うと、ゼブルは睨むようにフィアを見つめる。
「さて、これでこん勝負は俺の勝ち。お前の処遇ば決める時間や」
と言って一歩、フィアに近づこうとゼブルが足を踏み出した瞬間、
「……!?」
ゼブルは膝を着き、その場に倒れ込んでしまった。
「っ!?」
「ゼブル様!」
驚くフィアと下っ端たち。下っ端の一人がゼブルへと駆け寄る。
「ぐ、うぅ……」
「だ、大丈夫ですか? 一体なにが——」
ゼブルは苦しそう腹を押さえていた。そして次の瞬間、ゼブルが倒れた原因が明らかになる。
ギュルルルル……
「……え?」
緊張感のない、しかし日常的によく聞く、腹から発せられる音。胃袋の中に何もない時、ガス作用で発生する人体の現象の一つ。
つまりは、空腹を知らせる音だ。
「腹……減った」
「は?」
「そういや、今日はまだ三食しか食っとらんかったな……」
「いえ、あの、まだ昼前ですが……」
「帰る」
ゼブルはそう言うと、クイタランをボールに戻してふらふらと立ち上がり、かなり危なげな足取りでフィアの横を通り過ぎる。
「え、あの、ゼブル様!?」
「腹ば減ったらなにもできん。帰ってリヴになんか作らせゆっ。話はそれからや」
まだいまいち状況が呑み込めないフィアに、ゼブルは顔色悪く最後に告げる。
「たぶんサタ辺りも言ったと思うが、一応忠告ばしとく。あんま俺らに関わんな。下手に関われば、最後に悪夢ば見っとはお前ぞ」
「…………」
黙っているフィアに、じゃあな、と軽く手を振ってゼブルと下っ端、グリモワールたちはその場から消え去った。
最後に残されたフィアは、倒れたヌマクローをボールに戻すと、そのままオボロシティへと進むのだった。
オボロシティはクナシル島の中央付近に位置する街で、教育機関が発達していることで有名だ。
特にこの街を象徴する教育機関とも言えるオボロ学園は、各分野、各学科ごとに細かく分けられており、専攻したい科目を生徒が自由に選択できるようになっている。
「学校かぁ……いい響きだよ」
学校という響きはフィアに安心感を与える。こちらの世界に来る前は、ほぼ毎日学校に通い、勉強したり遊んだり部活をしたりしていた。一日のサイクルのうちほとんどを学校で過ごしていた。そんなフィアにとって、学校いうものが存在するだけでどことなく気分が高揚する。
「……まあ、学校もいいけど、まずはジム戦だよね。とりあえず今日はもうポケモンセンターで休んで、明日のジム戦に備えよう。ヌマクローも休ませなくちゃいけないし」
などと呟きながら、フィアはポケモンセンターへと向かう。
翌日。
フィアはターミナルの地図を片手にオボロシティを歩き回り、ジムの付近までやって来た。
やって来た、はずなのだが。
「ここって学校……だよね?」
フィアの目の前に構えているのは立派な校門。その奥には広いグランドがあり、さらに奥には綺麗な外装の校舎。どの角度から見てもまごうことなき学び舎である。
ターミナルに表示された現在位置とジムの場所は限りなく近い。方向からしても、確実のこの門の先なのだが、それらしきものは見当たらない。
そう思っていると、不意に声をかけられた。
「あれ、君……」
「?」
振り返ると、そこには若い男性が立っていた。上着を脱いだ背広に、銀色のネクタイと金色のネクタイピン。整った黒髪。
手にはいくつかの書籍を抱えており、この学校の関係者だと思うのが自然だろうが、フィアはそんなことは思っていなかった。というより、この男に見覚えがあったのだ。
(確か、サミダレタウンで解説してた、え−っと……)
記憶を探り、フィアはなんとか彼の名前を引っ張り出す。
「ウルシさん……?」
「君は、フィア君だったかな? 直接会って話すのは初めてだね。サミダレタウンでのバトル、見事だったよ」
「あ、ありがとうございます……」
やはりサミダレタウンで解説をしていた、オボロシティのジムリーダーのウルシだ。相手がフィアだからか、口調がフランクになっている。
「まさかこんなところで会えるなんてね……いや、君はトレーナーだし、この街に来るのも不思議じゃないか。一応聞くけど、ジム戦希望かい?」
「は、はい。そうです」
「そうか。じゃあついて来て」
そう言うとウルシは門扉を開き、学園の中に入る。フィアもその後を追う。
「あ、あのウルシさん。ウルシさんは教師もしているんですよね?」
「うん、そうだね」
「教職の方は大丈夫なんですか……? 今も、教師としてこの学校に来たんじゃ……」
「大丈夫さ。僕は教師よりジムリーダーの仕事を優先するよう言われているからね。教師は他にもたくさんいるけど、この街のジムリーダーは僕一人なんだから」
軽く笑うウルシ。その風貌は、正に教師という感じだった。
しばらく歩き、グランドや校舎から遠ざかっていくが、今度はさっきとは違う校舎が見えた。
大きさはさっき見たものよりも小さく、見栄えもさほど良くない。金属的で質素な感じさえする。
その校舎の玄関まで来ると、ウルシは足を止め、
「さあ、着いたよ」
振り返ってフィアにそう言った。
「え?」
思わず聞き返すフィア。するとウルシはまた軽く笑い、
「なにを驚いているんだい。ここが君の求めているオボロジムだよ」
「え? え? でも……」
そこにあるのはただの校舎だ。フィアが今まで見たジムとはまるで違う。しかし、
「これは今の校舎が新築されてから使われなくなった旧校舎で、特別に改装してジムとして使わせてもらうことになったんだ。門にポケモンジム公認の印があっただろう? 見なかったかい?」
全然見てなかった。
それはともかく、校舎の中に案内され、一階の廊下でフィアとウルシは向かい合った。
「さて、それじゃあ早速始めようか」
そう言って、ウルシは戸惑うフィアにジム戦のルールを説明する。
「使用ポケモンは三体。交代は挑戦者のみ認められているよ。そしてフィールドはこの校舎と旧校舎のグランド、旧敷地全域ってところかな」
かなり広いフィールドだ。しかもただ広いのではなく、学校の中なので入り組んでおり、立体的だ。
「それから、このジムのフィールドは広くて、籠城戦みたいになったり、かくれんぼになったりすることが多々あるんだ。だから時間制限と互いの位置を確認できるようにするよ」
言ってウルシは、三本指を立ててターミナルを掲げた。
「制限時間は三時間。三時間以内に僕のポケモンを倒せなければ君の負けだ。そして互いの位置はターミナルで確認できる……特殊ルールはこのくらいかな」
変則的なフィールドと制限時間、そして互いの位置を確認する仕様……この特殊なルール下では、今までと違った動きが求められそうだ。
「以上だけど、大丈夫かな?」
「あ、はい……なんとか」
今までにない変則ルールに戸惑うフィアだったが、なんとか気を奮い立たせ、バトルに臨む。
フィアの三回目のジム戦、オボロジム戦が今、始まった。
さてさて、今回は進化したヌマクローが大暴れかと思いきや、クイタランに軽く一蹴されてしまいました。しかしゼブルはとんでもない理由で撤退します。この辺が、ゼブルが暴食の七罪人である由縁ですかね。クイタランもそうですけど。そしてそして、サミダレシティ以来のあの人、ウルシが登場です。というか今回、敬語キャラ多いな。変則的だけどミキやクリも敬語で、ウルシはフィアにはフランクだけど基本的に敬語。書き分けが大変そうというか、ウルシは没個性気味です。それはともかく次回、オボロジム戦の開始です。校舎がフィールドという今までにないバトルを書きたいと思っていますので、次回をお楽しみに。
- 第36話 ジムバトルⅢ オボロジム1 ( No.110 )
- 日時: 2013/05/05 22:20
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 始まるオボロジム戦、フィアvsウルシ。
フィアの三番目のジム戦、オボロジム戦。ジムリーダーは鋼タイプ使いにして教職も持つウルシ。
使用ポケモンは三体で、交代挑戦者のみ可能。
ここまでは一般的なジム戦ルールだが、フィールドはオボロ学園の旧校舎とグランド全域、制限時間は三時間で、互いの居場所はターミナルを通じて表示されるという、非常に特異なレギュレーションでのバトルとなった。
「さて、それじゃあ早速始めるよ」
言ってウルシはボールを構えた。
「一限目の始まりだよ、ゴートン!」
ウルシが繰り出したのは、白い体毛に覆われ、前足と尻尾、そしてカールした角が黒く染まった山羊のようなポケモンだ。
『Information
ゴートン 山羊ポケモン
どんなに劣悪な環境にも耐える
強靭な体を持つ。そのため、
レンジャーなどに重宝される。』
「ゴートンは鋼タイプ。なら君の出番かな」
フィアもボールを取り出し、ポケモンを繰り出した。
「出て来て、ヌマクロー!」
フィアの先鋒は先日進化したばかりのヌマクローだ。水と地面の複合タイプなので、鋼技は通りづらく、こちらは地面技で弱点を突ける。
「ヌマクローか……セオリー通りだね。でも、相性だけで負けるほど、僕も僕のポケモンも甘くはない」
ウルシは少しだけ目を細め、フィアを見据える。そして、
「ゴートン、氷柱落とし!」
次の瞬間、虚空からいくつもの大きな氷柱が降り注ぐ。
「っ、ヌマクロー、躱すんだ!」
咄嗟にヌマクローは後ろに跳び、難を逃れる。しかし、
「まだ終わらないよ。思念の頭突き!」
刹那、廊下に壁を作っていた氷柱が粉砕され、奥からゴートンが突っ込んで来る。
今度は横に躱そうとしたヌマクローだが、両サイドは砕かれた氷の破片が散っており飛び込めば全身ズタズタになってしまうだろう。
そんなどうしようもなく手をこまねいていたヌマクローに、容赦なくゴートンの頭突きが炸裂する。
「ヌマクロー!」
思念の頭突きの直撃を喰らったヌマクローだが、進化して耐久力も強化されている。致命傷には至らない。
「ヌマクロー、反撃だ。瓦割り!」
ヌマクローは立ち上がり、ゴートンへと拳を振りかぶるが、
「躱すんだ」
スピードではゴートンに分があり、ゴートンが大きく後退したためヌマクローの拳は盛大に空振った。だがヌマクローの攻撃は終わらない。
「マッドショット!」
ヌマクローはすぐさま口から泥を噴射して、追撃をかける。しかし、
「氷柱落とし」
ゴートンがいななくと、虚空からいくつもの氷柱が降り注ぎ、廊下に壁を作る。発射された泥は氷柱の壁に阻まれてゴートンへは届かない。
そして、
「思念の頭突き!」
ゴートンは頭に思念を集め、氷柱の壁を突き破ってヌマクローに突撃する。
さっきと同じように、砕けた氷の破片が飛び散っているので横には逃げられない。かと言って後ろに逃げてもゴートンが突っ込んで来るので逃げ切れない。
この瞬間にフィアは理解した。廊下というこの狭い空間は、ゴートンの戦術に非常にマッチしている。
このゴートンはまず氷柱落としで廊下に壁を作り、続く思念の頭突きで攻撃するというパターンのようだ。その時、飛び散った氷の破片が横の退路を断ち、ゴートンはまっすぐ突っ込むため後ろにも逃げられない。
(クリさん以上にフィールドを有効活用した戦術だ……!)
しかも氷柱の壁はこちらの視界を塞ぎ、さらには攻撃もシャットアウトしてしまう。
普通のフィールドならこうはいかないだろうが、ここは狭い廊下だ。逃げ道が制限されているところにそんな攻撃を繰り出せば、回避は不可能。
「う……ヌマクロー一旦ここから離れよう!」
時間制限があるのであまりもたもたしていられないが、このまま戦い続けてもヌマクローに勝ち目はない。
フィアとヌマクローはウルシとゴートンに背を向けて走り出し、廊下を曲がって撤退した。
「まあ、この状況だとそうするしかないよね。でもそこが罠……さて、この僕からどこまで逃げられるかな?」
ウルシは不敵に微笑み、廊下の先を見つめる。
「はぁ、はぁ……ここまで逃げれば、とりあえず大丈夫かな」
フィアはゴートンから逃げ、ひとまず近くの空き教室に飛び込んだ。追ってくる気配はなく、ターミナルでウルシの位置を確認するが、ほとんどさっきの場所から動いていない。
「とりあえず氷柱落としと思念の頭突きのループからは逃げられたけど、ここでジッとしてはいられないよね」
極論、ウルシは時間が経過するまで逃げ回っていれば時間制限で勝利できる。流石にそんなことはしないだろうが、フィアがここから出て来ない事には、バトルは進展しない。
「とりあえずヌマクロー、戻って」
フィアは結局まだ何もしていないヌマクローをボールに戻し、
「ブースター、出て来て」
ブースターを出した。
「ゴートンのあのコンボを打ち破るには、ブースターしかない。それでも不安だけど、まだ勝機は——」
とフィアが言いかけた次の瞬間。
廊下から銀色の球体が飛び出し、ブースターを爆撃する。
「!? ブースター!?」
ダメージは小さいが、今のは恐らくゴートンによる攻撃。
「遠くからでも攻撃できるのか……?」
フィアは図鑑で今の技を調べる。その間にも何度か爆撃を喰らったが、それでも相手の技の正体はつかめた。
「マグネットボム……電撃波みたいな必中技か。厄介だな……」
普通のフィールドと、校舎の中という入り組んだフィールドでは必中技の持つ意味合いや強さが変わってくる。
今のフィアのように、ゴートンのコンボから脱するために逃げても、こうして追尾して攻撃してくるのなら、逃げる意味も薄くなってしまう。一ヶ所に留まってジッとしていてもジリ貧のようだ。
「っ! 火炎放射!」
また廊下からマグネットボムが飛来し、ブースターは炎を噴射して相殺する。
「危なかった……ブースター、ウルシさんのゴートンを倒す鍵は君なんだ。頼んだよ」
フィアがそう言うと、ブースターは威勢のいい鳴き声を上げた。
そしてフィアとブースターは、教室から出ていく。
「こうして爆撃し続けていれば、そのうち相手の方から出て来るんだよね。でも大抵の挑戦者はジリ貧になるよりマシっていう考えだから、無策で出て来ちゃうんだ……で、君はどうなのかな、フィア君?」
最初にバトルが開始された廊下で、ウルシは戻って来たフィアに向けてそう問いかける。
「僕にもそういう考えはあるんですけどね……でも、まったくの無策じゃないですよ」
「そうか。それは楽しみだな……それじゃあ、答え合わせだ。君の解答が正しいかどうか、採点してあげるよ」
と言った瞬間、ゴートンがいななく。
「氷柱落とし!」
すると虚空からいくつもの氷柱が降り注ぎ、廊下に壁ができる。
「ゴートン、思念の頭突き!」
ゴートンは頭に思念を集め、氷柱の壁を突っ切ってブースターへと突進するが、
「ニトロチャージだ!」
ブースターも炎を纏って駆け出しており、両者は激しくぶつかり合う。
力ではブースターに分があったのか、ゴートンの思念の頭突きはニトロチャージに突き破られ、吹っ飛ばされる。
「……! 氷柱落としだ!」
ブースターの攻撃力に目を見開くウルシだったが、すぐに気を取り直して指示を出す。
空中で態勢を整えながら、ゴートンはいなないて虚空から何本もの氷柱を落とす。しかし、
「ブースター、火炎放射!」
廊下を塞ぐはずの氷柱は、ブースターが放つ炎を受けて全て溶けてしまった。
「ニトロチャージ!」
そしてゴートンが着地したところにブースターが突っ込み、廊下の奥まで吹っ飛ばす。効果抜群なのでダメージは大きいだろう。
「完全に破られちゃったか……参ったね」
しかしウルシはさほど落胆した風もなく、軽く息を吐く。
廊下という狭い通路を利用したゴートンのループコンボは確かに強力だが、対策自体は簡単だ。
まず一つ目は、最初にブースターがニトロチャージで突っ込んだように、真正面からぶつかって競り勝つこと。攻撃力に自身のあるポケモンならこの方法でまず攻略できる。
二つ目は壁となる氷柱そのものを排除すること。ヌマクローのマッドショットでは威力が足りなかったが、もっと高火力の技や、火炎放射のような炎技なら氷柱の壁を取り除ける。壁さえなくなれば後は普通に攻撃するだけでいい。
「ゴートンのコンボは破った……後はこのまま攻めるだけだ」
「さて、そう上手く行くかな。ゴートンのバトルスタイルが一つとは限らないよ?」
ブースターは低く唸り声を上げ、ゴートンは蹄を鳴らす。
いきなり高度なバトルが繰り広げられているが、オボロジムの戦いはまだ、始まったばかりだ——
さあいよいよ始まりました、オボロジム戦。ウルシの一番手はゴートンで、初っ端から地形を利用したコンボが炸裂します。ちなみのウルシが教師という設定なのは、学校をフィールドにしてバトルがしたかったから、ただそれだけです。さて、それでは次回、オボロジム戦その二です。今回は四話分くらい使いそうですね。次回もお楽しみに。
- 第37話 ジムバトルⅢ オボロジム2 ( No.111 )
- 日時: 2013/05/10 01:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 地形が特殊だとバトルも書いていて楽しい。ただ文字数が多くなる……
「ブースター、アイアンテール!」
ブースターの鋼鉄の如く硬化された尻尾が叩き付けられ、ゴートンは吹っ飛ばされる。
ゴートンは鋼タイプらしく防御力の高いポケモンだが、ブースターの攻撃力はそれ以上に高かった。
「このままバトルを続けても勝ち目は薄いか……ゴートン、こっちだ」
最初にフィアがそうしたように、今度はウルシとゴートンが踵を返して背を向けた。つまりは逃げた。
「っ、逃がしません! ブースター、ニトロチャージ!」
時間制限のあるフィアにとっては、ゴートンに逃げられるのは困る。ブースターは炎を纏って逃げるゴートンを追いかけるが、
「そこ、右に曲がって。マグネットボムだ!」
ゴートンは急に廊下を右に曲がり、階段を上っていく。そしてゴートンが攻撃の軌道から逸れたために攻撃が中断されたブースターに、磁力を帯びた爆弾が襲い掛かり、爆発した。
「飛び跳ねる!」
さらにゴートンは、文字通り飛び跳ねて階段を段飛ばしで駆け上っていく。
「まさか本当に時間を稼ぐ気なの……? ブースター、追って!」
ブースターも飛び跳ねるようにとはいかずとも、たったと階段を上っていく。ニトロチャージで素早さが上がっているので、かなりのスピードだ。
四階建ての校舎、その三階の踊り場まで上ると、不意にブースターに影が差す。
「ゴートン、氷柱落とし!」
「っ……!」
階段の影から飛び出したゴートンは、いなないて虚空から氷柱を落とし、ブースターの周りを取り囲んでしまう。
「そのまま飛び跳ねるだ!」
ゴートンは飛び跳ねて上空からブースターに襲い掛かる。氷柱に囲まれて動きを封じられたブースターでは、その一撃を躱すことは出来ない。
「く、うぅ……火炎放射!」
とりあえずブースターは、口から炎を噴射して抵抗を試みる。周りの氷柱は溶けたものの、直後にゴートンが落下し、ブースターを跳ね飛ばした。
「ブースター!」
勢いよく壁に叩き付けられるブースター。かなりの勢いだったが壁には傷一つつかず、ブースターはかなり痛そうにしている。
「改装して、この校舎の壁は全て特殊合金でコーティングされているんだ。生半可な衝撃じゃ壊れないし、逆に下手に勢いをつけて叩きつけられたら大きなダメージを受けてしまう。気をつけた方がいいよ」
「そういうのはもっと早く言ってください……ブースター、行ける?」
ブースターは態勢を立て直し、体を震わせて自信を鼓舞する。そして力強く鳴いた。まだ戦えるようだ。
「よし、ならブースター、ニトロチャージ!」
「ゴートン、飛び跳ねる!」
ブースターは炎を纏い、階段を駆け上りながらゴートンへと突っ込んでいくが、ゴートンは跳躍してその一撃を回避する。
「残念だけど、そんな単調な攻撃に当たってあげるほど僕はお人好しじゃないよ。ゴートン!」
跳躍したゴートンは壁に足を着け、そこを足場としてさらに跳躍し、ブースターへと突っ込むが、
「ブースター、火炎放射!」
直後、ブースターは素早く振り返って炎を放つ。跳躍したゴートンはその炎を躱すことができず、自ら突っ込んでしまい、その熱に耐え切れず態勢を崩してしまう。
「ニトロチャージ!」
そしてブースターは、続けて炎を纏って突貫。ゴートンを突き飛ばし、特殊合金の壁へと叩き付ける。
「ゴートン!?」
ゴートンはその一撃で、遂に戦闘不能となってしまう。
ウルシは釈然としないままゴートンをボールに戻し、ふとブースターを見遣る。すると途端、納得したような表情を見せた。
「……そうか、根性か」
よく見れば、ブースターは体を痙攣させている。これは麻痺状態の時に見られる症状で、さっきゴートンから飛び跳ねるを受けた時に追加効果でなってしまった状態異状だ。
麻痺状態になれば普通は不利になるのだが、フィアのブースターは違う。状態異状になれば根性の特性が発動し、攻撃力が上がるのだ。
「どうりで勢いのあるニトロチャージだと思ったよ。僕の計算ではまだゴートンは戦闘不能にならないはずだったけど、根性が発動しているなら話は別だね」
などと言いながら、ウルシは次のボールを構える。
「休み時間なしで、このまま続けるよ。エアームド!」
ウルシの二番手は、全身を鋼鉄のような銀色の鎧で包んだ鳥型のポケモンだ。
『Information
エアームド 鎧鳥ポケモン
最高時速300kmで大空を
飛び回る。鋼鉄の羽は刃物の
ように鋭く、敵を切り裂く。』
「エアームド……鋼と飛行タイプか」
なら、起死回生は等倍になってしまうが、ブースターの炎技は普通に効果抜群だ。こちらが不利になるということはない。
「ブースター、火炎放射!」
そう思ってブースターは、先制して口から炎を噴射するが、
「そう簡単には行かないよ。エアームド、ドリルライナー!」
エアームドは嘴を突き出して錐揉み回転し、炎を散らしながらブースターへと迫っていく。
「……! ブースター、躱して!」
この攻撃はまずいと直感で理解したフィアは叫ぶ。その指示通り、ブースターは火炎放射を中断して横へ跳び、ドリルライナーを回避した。
エアームドは回転を止めてウルシの下へと戻っていき、その隙にフィアは先ほどの技を図鑑で調べる。
「ドリルライナー……えっと、地面技か……!」
となるとあのまま攻撃を喰らっていたら、弱点を突かれてブースターは戦闘不能になっていただろう。
「なかなかの直感だね。でも僕のエアームドから逃げ切るのは至難の業だよ。ほら、ドリルライナー!」
エアームドは再び回転しながらブースターへと突っ込んでいく。
「うぅ、躱して火炎放射!」
ブースターは俊敏な動きでドリルライナーを回避し、そのまま炎を吹きつける。
しかし炎はエアームドの回転で散らされてしまい、エアームドへのダメージは微々たるものだ。
「そのままドリルライナー!」
エアームドは途中で軌道を曲げ、ブースターへと突っ込む。
「ブースター、躱して!」
麻痺があるものの、ニトロチャージで素早さが上がっていることが幸いし、ブースターはエアームドの攻撃を回避できる。しかしそれもそう長くはもたないだろう。
「逃がさないよ、鋼の翼!」
回転を止めたエアームドは、今度は鋼鉄の翼を構えて突っ込んで来る。
「これなら……火炎放射!」
ドリルライナーでないのなら攻撃も通ると考え、ブースターは炎を噴射する。
しかし、
「上昇だ、エアームド!」
エアームドは炎が襲い掛かる寸前で急上昇し、火炎放射を回避する。そしてそのままブースターへと接近した。
「っ、起死回生だ!」
エアームドの接近を許してしまったブースターだが、まだやられてはいない。咄嗟に尻尾を振るって起死回生の一撃を繰り出す。体力は残り少なく、根性も発動しているので、その一撃は絶大なものになる——はずだった。
「エアームド、フリーフォール!」
しかしエアームドはブースターの渾身の一撃を喰らっても身じろき一つせず、足でブースターを捕え、四階の天井まで上昇する。
ブースターはばたばたと暴れるが、エアームドはブースターをがっしりと掴んで離さない。そしてエアームドは、一気に急降下し、二階の床にブースターを思い切り叩き付けた。
「ブースター!」
階段の手すりから身を乗り出すフィア。すぐに階段を駆け下りてブースターの所まで来ると、ブースターは完全に戦闘不能になっていた。
「ありがとうブースター、戻って休んで」
フィアはブースターをボールに戻す。鋼タイプの使いのウルシにはもう少し頑張ってもらいたかったが、致し方ない。
それより、
「根性が発動したブースターの起死回生を受けても耐えるなんて、とんでもない防御力だよ……」
フィアからすれば、エアームドは防御力が驚異的だ。等倍とはいえ、フルパワーのブースターの起死回生を受けても怯みさえしない。物理技はこのエアームドには通用しなさそうだ。
「となると、ドリルライナーが怖いけど……君に任せるよ」
フィアは少し不安になりながらも、次のボールを取り出す。
「出て来て、パチリス!」
フィアの二番手は電気タイプのパチリスだ。ドリルライナーで弱点を突かれるが、こちらも電気技が通る。しかもその電気技が特殊技なので、エアームドの高い防御を無視できる。
「パチリス、たぶんあのエアームドを倒せるのは君だけだ。頼んだよ」
フィアが小さくそう言うと、パチリスはウィンクで返してきた、頼もしい限りである。
「それじゃあパチリス、帯電だ」
パチリスはまず帯電し、攻撃と特攻を高める。
そして、
「エレキボール!」
電撃を凝縮した球体を生成し、尻尾を振るって投げ飛ばす。
帯電で強化された雷球が、エアームドへと迫っていく。
オボロジム戦その二です。うーむ、それにしても今回のバトルは長引きそうですね。もしかしたら五話分くらいつかうかもしれないです。ちなみに白黒は鋼タイプは好きですよ。メタグロスやエアームド、ギギギアルなどが特に好きです。非公式ならクチールスとかですかね。それでは次回、オボロジム戦その三。ウルシのエースが出る予定ですが、予定は未定です。では、次回もお楽しみに。
- 第38話 ジムバトルⅢ オボロジム3 ( No.112 )
- 日時: 2013/05/06 01:50
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: どこまでも追跡するエアームド、パチリスに反撃のチャンスは訪れるのか。
「エアームド、シザークロスだ!」
エアームドは迫り来るエレキボールを、交差した翼で切り裂いてしまう。
「鋼の翼!」
そして間髪入れずに両翼を広げ、パチリスへと滑空する。
「パチリス、躱して種爆弾!」
パチリスは素早く横に動いて鋼の翼を躱し、エアームドの背に種子を投げつけて炸裂させる。
しかし威力は四分の一で物理技、エアームドにはほとんどダメージを与えられない。
「やっぱり効かないか。なら、エレキボール!」
パチリスは尻尾に雷球を生成し、スイングしてエアームドへと投げ飛ばすが、
「シザークロスで切り裂くんだ!」
交差させながら翼を振るい、エアームドは雷球を切り捨てる。どうやら普通に攻撃しても通用しないようだ。
ならばどうやってエアームドの隙を突くかフィアは考えるが、そんな暇を与えてくれるウルシとエアームドではない。
「ドリルライナー!」
エアームドは嘴を突き出し、錐揉み回転してパチリスへと突っ込んでいく。
「あれだけは受けられない……パチリス、なにがなんでも躱すんだ!」
パチリスもこの攻撃が危険だと理解しているようで、大きく横っ飛びして回避した。
「パチリス、エアームドから距離を取ろう。エレキボール!」
フィアは廊下を走り、パチリスを誘導する。さらにエアームドがすぐに追ってこないよう、パチリスは雷球を飛ばし、エアームドがそれを切り裂いている間に逃げようとするが、
「逃がさないよ、鋼の翼!」
エアームドはすぐさまパチリスを追ってきて、すくい上げるように鋼鉄の翼を叩き付け、近くの教室へと吹っ飛ばす。
「パチリス!」
フィアは慌てて教室に飛び込み、パチリスに近寄る。どうやら効果いまひとつなのが幸いし、パチリスの受けたダメージは思いのほか小さい。
「ここは……理科室……?」
ふとフィアが辺りを見回すと、そこは確かに理科室のようだった。
人体模型や元素記号の周期表、顕微鏡に薬品棚……理科の実験で使うような道具が揃っている。
「こんなものまで再現してるんだ……」
その労力と費用を考えると、この場所でバトルをすることに躊躇いと申し訳なさを覚えてしまうフィア。しかし次の瞬間、そんな考えは軽く吹き飛ばされる。
「エアームド、ドリルライナー!」
エアームドが錐揉み回転しながら教室内へと突入し、模型やら顕微鏡やらを破壊した。本来はパチリスを狙ったのだろうが、パチリスは既にエアームドから離れている。
「遠慮する必要はないってことかな……ん?」
エアームドの備品に対する容赦ない攻撃に思わずつぶやいたフィアは、エアームドが吹き飛ばしたものの中から、あるものを発見し、拾い上げる。
「……パチリス、教室から出るよ」
フィアはパチリスを肩に乗せて共に教室から出て行くが、当然エアームドも追ってくる。
「パチリス、エレキボール!」
パチリスはエアームドに狙いを定め、尻尾を振るって雷球を飛ばす。
「効かないよ、シザークロス!」
だがやはり、真正面からの攻撃はエアームドには通用せず、切り裂かれて終わってしまう。
だが、パチリスの攻撃は終わらなかった。
「種爆弾!」
続けてパチリスは無数の種子を飛ばし、エアームドの目の間で炸裂させる。けれど草技では、エアームドに有効打を与えられない……が、フィアの目的はエアームドを攻撃することではない。
「この炸裂の仕方……目くらましか」
ウルシの言うように、今の種爆弾は明らかに目を狙っており、エアームドの視界を塞ぐことが目的だ。現にフィアとパチリスは、既に廊下を曲がってウルシとエアームドの視界から消えている。
「ふむ、どうやら近くの教室に逃げ込んだっぽいね」
ウルシはターミナルを確認し、フィアとパチリスが逃げ込んだはずの教室へと向かう。
目的の教室は理科室を出た廊下の突き当りを右折してすぐのところにある。ウルシは奇襲を警戒しつつ教室に入る。そして今度は逆に、こちらから奇襲をかけようとするが、かけられなかった。
なぜなら、そこにいたのはフィアだけだったからだ。
「……パチリスがいないね。どこに隠したのかな?」
「さぁ……僕のパチリスは悪戯好きですからね」
当然と言えば当然だが、まともに答える気のないフィア。ウルシは教室内——ロッカー、机、教卓——を順番に見る。
(パチリスは小柄なポケモン、隠れる場所ならいくらでもある……特に怪しいのはロッカーや教卓だけど)
ウルシは少しだけ開いたロッカーと、大きめの教卓を交互に見遣る。どちらもパチリスが隠れるには十分だ。どちらかにパチリスが隠れていると考えるのが妥当だろう。
しかし、
(……あの机)
ウルシは見逃さなかった。教室の中央にある机。一見すれば何の変哲もない机だが、何も入っていないはずの机の中が淡く発光している。
「隠れながら帯電していたのか。隙を見てエアームドに電気技を当てるつもりだったんだろうけど、アテが外れたね。そういう隠れてこそこそする行いは、あまり褒められたものじゃないよ」
得意げにそう言うウルシ。エアームドは目標の机を鋭く睨み付けている。
そして、
「エアームド、ドリルライナーだ!」
エアームドは高速で錐揉み回転しながら、発光していた机にドリルのような嘴を押し当てる。それだけで机は簡単に穴が開き、貫通する。
「……!」
エアームドの攻撃力はそれなりに高い。中にいたのがパチリスでなくとも致命傷になるだろう攻撃だ。しかも奇襲を仕掛けようとして逆に反撃されたのだ、大ダメージは必死である。
だがそれは、中にポケモンがいた場合の話である。
エアームドが机を貫いた瞬間、天井裏のパネルが開く——
「今だパチリス!」
エアームドが机を貫いた瞬間、天井裏のパネルが開き、中からパチリスが飛び出した。
「なにっ……!?」
完全に予想を外したウルシとエアームドは驚愕していた。しかもエアームドは攻撃直後で隙だらけ、一撃なら直撃を叩き込むことなど造作もない。
「エレキボール!」
パチリスは天井裏で帯電していたのか、今までよりも大きな雷球を生成し、尻尾を大きく振るってエアームドへと投げ飛ばす。
「エアームド!」
エアームドは強化され、弱点を突くエレキボールを喰らい、ぐったりと動かなくなる。戦闘不能だ。
「まさか天井裏にいたなんて……蛍光灯の支えを足場にして上ったんだろうけど、じゃああの光は……?」
ウルシは机の中の光を確実に見た。あれは見間違いでもなんでもない。だからこそ、それがパチリスだと思ってエアームドに攻撃させたのだ。
疑念を抱きながら、ウルシはエアームドをボールに戻す。その時、エアームドが机と一緒に貫いた物体を視認した。
「豆電球……!?」
「はい、その通りです」
作戦を悟られないためにほとんど口を開かなかったフィアが、ここでやっと話し始めた。
「僕は根っからの文系で理科は苦手なんですけど、それでも豆電球くらいは分かります。さっき理科室から貰ってきました」
つまりフィアの作戦は、予めパチリスを天井裏に、電池に繋いだ豆電球を机の中に隠しておき、机の中から豆球の光を漏れさせる。そこにウルシが現れ、彼に机の中の光をパチリスの電気による光だと誤認させ、攻撃させる。その隙に、天井裏で帯電し攻撃能力を上げていたパチリスにエアームドを攻撃させる、という作戦だ。
「……まさかこんな単純な罠にかかるなんて。僕もまだまだだね」
などと言いながらウルシはターミナルと、最後のポケモンが入ったボールを取り出す。
「時間は……意外とかかったね。もう二時間半も経過しているよ」
フィアもターミナルを取り出して時間を確認すると、確かにそのくらい経過している。正確には、二時間と四十分弱。残り時間は二十分程度だ。
「このまま逃げても僕の勝ちだけど、流石にジムリーダーとしてそんなことはできない。残り二十分、全力で君の相手をするよ」
「……はい。お願いします」
「いい返事だ。それじゃあ、僕のエース——優等生というべきか——のお出ましだ」
そして、ウルシは最後のポケモンを繰り出す。
「もうすぐ終礼だよ、ユニサス!」
ウルシの最後のポケモンは、金色の角を持つ白馬、いわゆるユニコーンのような姿をしたポケモンだ。
『Information
ユニサス 角馬ポケモン
金色の角は太陽の力を秘めて
おり、その力が解放される時
角から神々しい光を発する。』
オボロジム戦その三です。思いのほかエアームド戦で文字数を喰わなかったので、この調子なら次でジム戦が終了しそうです。さて今回明らかになったウルシのエースはユニサスです。特に深い意味はありません、ただなんとなく合ってるかなーと思っただけです。そういえば言い忘れていましたが、白黒は1レスあたりの文字数がかなり多く、一話分書くのに文字数オーバーになることがよくあります。なので一度記事を分割し、後から修正という形で文字数を足していることが多々あります。なのでもしこの作品がトップに上がっていたら、すぐにクリックせず一分くらい間をおいて読むことをお勧めします。もしくは再度読み返すかですね。でないと最後の部分を見逃してしまうかもしれませんよ。というわけで次回、オボロジム戦決着です。お楽しみに。
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.113 )
- 日時: 2013/05/06 08:17
- 名前: タク ◆9mCc3lFAO6 (ID: 39RfU1Y2)
おはようございます。ライカジムでは、フィアは停電させて勝利しましたが・・・。あれ半分反則っぽい気がしてならないのは、自分だけでしょうか。そして、ゼブル戦。クイタランが出てきたのですが、ちょうどこちらの小説でもボスでクイタランが出てきたので偶然のすごさを感じてしまう一方です。というか、ゼブルは腹が減ったという理由で退散していましたけど、大食いすぎ・・・。そして、オボロジム戦、やたらと規模がでかいですね・・・。旧校舎を全部使うとか。そこでも思いがけない手段でエアームドを倒したフィアですが、果たしてどうなるか・・・。こちらも更新しましたよ!VSバルキー戦決着!といってもボスには含まれませんがね。
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