二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスター 七つの星と罪
- 日時: 2013/07/21 23:48
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。
ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。
それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
それでは、白黒の新しい物語が始まります——
登場人物紹介
>>31
プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11
シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43
クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.124 )
- 日時: 2013/05/09 23:28
- 名前: プツ男 (ID: 055Fg/TC)
どうも、キュレムでもグラードンでもカイオーガでもいいから今年のプール授業を潰して欲しいと願うプツ男です。カナヅチの宿命ですね・・・・
さて、フィアがオボロジム制覇&新たな七罪人が出てきましたね。えーっと、今までに出てきたのがサタン(?)、マモン、リヴ、ゼブル、ベルフェ、でもって、ベルフェの撤退時に通話(?)していた人物も七罪人と仮定すると七罪人の構成員は全部分かりましたね。まあ、ルキ、アスが七罪人とは限りませんが。
ゼブルは暴食の七罪人・・・・・はいいんですが、罪人というよりもフードファイターの方が似合っているような・・・・・いや、でも食事を分けている分、ギャル曽根みたいなパワータイプではなく、スタミナタイプのフードファイター・・・・・あ、何でもないです。スルーしてください(え
でもって、ベルフェが怠惰の七罪人ですか。まあ、ただの怠惰とは思っていませんでしたよ。怠惰だけだと、前作の逃走中に勢い余って崖に激突して血だらけになった彼女とキャラが被りますものね。
暴君ザキとレキさんが登場ですか。
レキは幸せに過ごしているようですね・・・・・本当に良かったです。
レキ・・・・・・これは、本名なのでしょうかね?でも、彼女なら過去は捨てそうですけどね・・・・うーむ・・・・・まあ、本名だったとしたら奇跡ですね。家族の名前の統一が。
彼女やアシッド機関の長の存在が有るということは・・・・・ラブコメ主人公&ヒロイン組や、伝説厨の巫女さんや、元爆弾魔も出てくるんですかね・・・・・?
ザキとレキってまだ入籍していなかったのですね・・・・・
あの二人のやり取りを見ていると、召喚獣を使って戦争をする学園物を思い出しました。
- Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.125 )
- 日時: 2013/05/10 16:22
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: テスト期間が更新安定日……あれ?
プツ男さん
僕は人並み程度には泳げる(はず)ですが、プール開きが梅雨の時期に直撃するため雨降らしをくらいます。すいすいの特性がないから雨が降っても素早くならないってのに……むしろ寒くて遅くなりそう。
サタンやルキやアスが七罪人かはあえて言いませんが、一応、今作では前作のように幹部クラスの部下は出ない……つもりです。少なくとも今のところは出す予定はないです。
残りの七罪人に関しては、たぶんカゲロウシティの回で全員出て来るかな……? うまく運べばボスも出て来るかもしれませんが、流石に一度に出し過ぎですかね……その辺は色々と考えて出したいと思います。
まあ、七罪人っていうのはチーム名みたいなもので、決して彼らが罪人というわけでは……ああでも、犯罪者集団にいれば罪人みたいなものか。
ゼブルはたぶん、大食いキャラよりも方言キャラとして確立すると思います。というかそうなったらいいな。
ちなみに彼の手持ちには共通点が……っていつか言った気がしますね。まあこれは彼のプロフを書けば分かることですけど、手持ちが判明してくれば分かると思います。
ミキのように、彼と彼女も揃って登場です。
レキはとにかく幸せになってよかったのですが……キャラが変わり過ぎてどう書けばいいのかたまに迷います。ザキは安定してるんですけど……
レキの名前は……真実はさて置くとして、彼女の性格というか入籍云々から考えれば後付けそうですね。過去を捨てるって意味もあるとは思いますが。
若干ネタバレ気味ですが、挙げられた中で人物として登場する予定のキャラはいます。現状で出ない予定のキャラもいます。まあ出るとしても結構後になると思うので、気長にお待ちください。
してるしてないというより、ザキが一方的に突っぱねてるだけですね、たぶん。
……? ……ああ、言われてみればそうですね。ここ最近ラノベから離れていたので忘れてました……ただあの作品の彼ほど、ザキは酷い目に遭っていませんが。
- 第43話 カゲロウシティ ( No.126 )
- 日時: 2013/05/10 20:10
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 最近行き詰り気味……どうしたものか。
カゲロウシティ。ホッポウ地方、クナシル島の北部に位置する街。
この街はホッポウ地方の熱源とも呼ばれており、地方に散らばる無数の火山の中で最も大きな火山がそびえていて、その火山の熱でホッポウ地方は北にありながらも温暖な気候を保っていうらしい。
とはいえ流石にこの話は誇張のようで、実際は海底火山が多く存在するからホッポウ地方は暖かいのだそうだが、どちらにせよカゲロウシティに巨大な火山が存在し、その火山の熱の影響でこの街の気温が高いという事実は変わらない。ちなみに、この街の名物は火山の熱を利用した温泉と、火山の頂上で催される祭りらしい。
「……へぇ、つまりこの街は、ホッポウ地方でも有数の観光の名所ってわけか」
街の案内を読み終え、フィアはターミナルを閉じる。
オボロシティからほぼ丸々一日費やして到着したカゲロウシティ。案内を見る限りは観光名所として有名らしいが、フィアが来た理由はそこではないし、カゲロウシティが人で賑わっているのも温泉や祭りがあるからだけではない。
「この街のジムリーダーは炎タイプ使い。ここはヌマクローが活躍してくれるかな」
フィアは事前にある程度はジムリーダーの情報を集めるようにしているのだが、そこで分かった情報によると、どうやらこの街のジムリーダーはかなりの有名人らしい。
有名人というより、ホッポウ地方のジムリーダーで最高齢の人らしい。ホッポウ地方は世代交代が頻繁に行われ、そのため若い世代のジムリーダーが多い中、カゲロウシティのジムリーダーは二十年もの間ジムリーダーとしての地位を保ち続け、現在はホッポウ地方のジムリーダーを統括するほどの人物だそうだ。
「たぶんかなり強い人なんだろうな……でも、僕らだって十分強くなってるはずだし、仮に勝てなくてもいい勝負くらいはできるよね」
前向きに考え、フィアはポケモンセンターから出る。そしてターミナルの地図を頼りに人込みを掻き分けて歩き、数十分ほどでジムに着いた。
着いたと同時に、懐かしい顔も見ることになる。
「お? あっれー、フィア君?」
「……イオン君!」
ちょうどジムから出て来たのは、以前フィアと何度か戦い、共闘もしたことがある少年、イオンだった。
イオンはいつも通りの独特なペースでフィアに言葉を投げかける。
「ひっさし振りだねー、シコタン島以来? バッジはいくつになった?」
「三つだよ。ちょうど一昨日、オボロシティで三つ目のバッジをゲットしたところ」
「へぇ、オボロシティには行ってないなー……あ、俺は四つね」
と言ってイオンはバッジケースを広げる。そこには確かに四つのバッジがはめられていた。うち二つはアドベントバッジとプラズマバッジ、イチジクとクリに勝利することで与えられるバッジだ。
「フィア君は今からジム戦?」
「うん、そうなんだ。イオン君はもうジム戦終わったんだね」
「まーねー。でもここのジムリーダー、すっげー強いよ? 俺もかなりギリギリで勝てたし」
イオンの表情からも察するに、やはりこの街のジムリーダーはかなりの強者のようだ。
「まーでも、バッジをもう三つもゲットしてんだし、フィア君なら勝てると思うよ?」
「そう、かな……」
「そーそー、俺が保証するさ。いや、いっそもうフィア君のバトル見よ。祭りまでどうせ暇だし」
つーわけで見てもいい? と尋ねるイオン。フィアとしては断る理由もないので、いいよ、と返した。
フィアはそのまま一歩踏み出し、イオンと位置を交代。イオンを引き連れるように扉を押し開ける。
「し、失礼します……」
「……なんでそんな弱気なの?」
素直に疑問符を浮かべるイオン。フィアとしてはジムの扉を開けるたびに緊張してしまうのだ。
だが今までは、シュンセイジムでは布団が敷かれており、ライカジムでは停電騒動で世話になったクリがいて、オボロジムではそもそもジム自体が特殊だった。そのためその緊張はすぐさま吹き飛んだ。
しかし、今回は違った。
「……挑戦者か。立て続けに来るとはな」
フィアを出迎えたのは、布団でも見知った顔でも特殊なフィールドでもない。一人の男だ。
ホッポウで最高齢のジムリーダーと聞いてはいたが、老人というほどではない。しかしそれでもそれなりの歳ではありそうだ。恐らく、四十後半から五十くらいだろう。
筋肉質な体に真っ赤な着物を纏い、右腕だけ袖を通さず胸元から出しており、腰には赤い護符のようなプレートが数枚、瓢箪が一つぶら下がっている。グローブと一体化した手甲を付け、目元にはサングラス、黒い短髪と、一言で言って渋い。渋い男だった。
「俺はアーロンだ。お前は誰だ」
「あ、えっと……フィア、です」
男——アーロンに促されて、フィアはやっと言葉を発した。今の今まで、アーロンの言いようもない気迫に飲まれかけていた。
アーロンは無言でフィアを見つめていると、ふいに視線をイオンに移し、
「それと、お前はさっきの——」
「あ、俺はただの観戦です。さっきこの友達とばったり会って、せっかくだから祭りまでの時間つぶしに見てよっかなーと」
「そうか」
アーロンは短く答える。寡黙というか、必要以上のことは話さない、というような口数の少なさだ。
フィアは戦う前からアーロンに怖気づきそうになるが、それでもなんとかフィールドまで歩を進め、相対する。
「バッジはいくつだ」
「え……?」
「バッジはいくつ持っているのかと聞いているんだ」
あまりに唐突だったため、フィアは面食らってしまい、アーロンに言い直されてやっと質問の意味を理解した。
「三つ……です」
「何のバッジだ」
「えっと……アドベントバッジ、プラズマバッジ、それからメテオバッジです」
指折り数え、フィアは今まで手に入れてきたバッジの名前を挙げていく。
「イチジクにクリ、それにウルシか……まだ若いとはいえ、ホッポウの十傑のうち三人を既に倒しているということか」
サングラスと高い襟でアーロンの表情が読めない。そもそも顔に出ているとも思えないが。
なんにしても、アーロンはフィアが今まで戦ってきたジムリーダーの名前を聞き、しばらくして静かにボールを取り出す。
「使用ポケモンは四体、交代は挑戦者のみが可能だ」
「えっ?」
アーロンはポケモンを繰り出す前にルールを軽く説明する。その内容自体は普通のジム戦のレギュレーションなのだが、フィアは予想だにしなかったとでも言うような声を上げた。
「四体……いやでも、僕は——」
三体しかいないんです、と言おうとしたところで、先にアーロンに制された。
「お前のポケモンは四体いるのだろう。他に二体ほど、別の者のポケモンも連れているようだがな」
アーロンの的確過ぎる、狙い澄ましたような指摘にフィアは驚愕で目を見開いた。
「な、何でそこまで……!?」
「見れば分かる。これでもトレーナーとして、ジムリーダーとして、長いつもりだ」
多くは語らないアーロンだが、要するに経験で分かると言いたいのだろう。
それはともかく、フィアは焦るように表情を曇らせる。四対四、ポケモンを四匹使用したバトル。それはフィアが今まで避けてきたバトルだ。
それをここで、行うことになってしまった。
(……でも、楽観し過ぎだけど、それならこっちが三体のうちにアーロンさんを倒せればいいんだ。幸い僕のポケモンに炎技が苦手なポケモンはいない。上手く立ち回れば、三体でも勝てるはず)
そんなことを思いながら、フィアもボールを手に取った。
「分かりました……じゃあ、そのルールでやります」
「……ああ。全力で来い」
こうして、フィアの四つ目のジムバッジを賭けたバトルが始まった。
『Information
ジムリーダー アーロン
専門:炎タイプ
異名:爆炎武人
兼業:カゲロウシティ市長』
これでフィアのジムバッジは四つ目か……イチジクとクリの間を考えるとかなりハイペースで進んでますね。もうジム戦も中盤ですよ。それはともかく、今回はイオンが久々に登場、そしてカゲロウシティのジムリーダーは渋い男、アーロンです。白黒は基本的に低年齢のキャラが好きなのですが、こういう渋い感じのキャラは高齢でも好きです。というかある程度の年齢だからこその威厳ですね。さて、もしかしたらお気づきの方もいるかもしれませんが、このジム戦がフィアの一つ目の転機となります。あのポケモンの秘密(?)も明かされます。それでは次回、カゲロウシティジム戦です。お楽しみに。
- 第44話 ジムバトルⅣ カゲロウジム1 ( No.127 )
- 日時: 2013/05/12 16:38
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
- プロフ: 始まるカゲロウジム戦、四対四のバトル——
「最初は頼んだよ、ヌマクロー!」
「行くぞ、キュウコン」
フィアの一番手は、アーロンが炎タイプ使いであることを考慮してのヌマクロー。
そしてアーロンが最初に繰り出したのは、九つの尻尾を持つ山吹色の狐のようなポケモンだ。
『Information
キュウコン 狐ポケモン
九人の聖者が合体して生まれた
と言われるポケモン。最近は
太陽の化身であるという説もある。』
キュウコンが場に出ると、ふと辺りが明るくなった。それだけでなく、なにやら熱を感じる。日差しが照りつけるような暑さだ。
何が起こっているのかと思い、フィアが顔を上げると、
「な、なにあれ……!?」
ジムの天井付近に、一つの巨大な炎の塊が浮かび上がっていた。
「擬似太陽だ。キュウコンの特性、日照りで日差しが強い状態になっただけだ」
「擬似太陽って、それに日照り……えっと——」
急いでターミナルを開き、日照りという特性を調べるフィア。
日照りとは、場に出るだけで天候を日差しが強い状態に変える特性。そして日差しが強い状態だと、炎タイプの技が強化され、
「……! 水タイプの技が半減する……!?」
「そういうことだ」
つまり実質的にヌマクローは水技でキュウコンの弱点を突けないということになる。
「なんだよなー……オレもあの日照りに随分と苦戦させられたよ」
観戦しているイオンが、誰に言うでもなく呟く。
なんにしてもこの日照りは、アーロンのポケモンが強化されるだけでなく、炎タイプの弱点である水技を抑える働きもある。攻撃と防御を同時に行うような、有用な戦術だ。
「……いや、でもヌマクローには地面技もある。まったく戦えないわけじゃない」
フィアはなんとか自身を奮い立たせ、ヌマクローに指示を出す。
「ヌマクロー、マッドショット!」
ヌマクローは大きく息を吸い、口から勢いよく泥を噴射するが、
「キュウコン、神通力」
キュウコンが放つ神々しい念力で泥は全て散らされてしまう。さらに、
「鬼火だ」
キュウコンの尻尾の先端に青白い火の玉が浮かび、九つの火の玉はすべてゆらゆらと揺れながらヌマクローへと向かっていく。
「う……ヌマクロー、水の誓!」
咄嗟に地面から水を噴出して火の玉を防ごうとするヌマクローだが、火の玉は水柱を潜り抜けてヌマクローに近づき、その身を焼き焦がしていく。
「ヌ、ヌマクロー……」
ダメージはないようだが、ヌマクローの体は火傷を負ってしまった。これでヌマクローは時間と共に体力を削られ、しかも攻撃力も落ちてしまう。
「まだ終わらんぞ。キュウコン、祟り目」
キュウコンはジッとヌマクローを見据え、祟るような視線を向ける。するとヌマクローはも悶え苦しみ、その場に蹲ってしまう。
「ヌマクロー!」
祟り目は相手が状態異状になっていれば威力が倍増する。ヌマクローへのダメージは大きいだろう。
「ヌマクロー、頑張って。マッドショット!」
「神通力」
ヌマクローはなんとか起き上がって泥を噴射するが、神通力で散らされてしまう。
「熱風だ」
キュウコンは静かに息を吐き、高熱の熱風を吹き放つ。日照りで強化されているため、熱がフィアの所まで伝わってくる。
「水の誓!」
即座にヌマクローも水柱を立てて防御しようとするが、強化されている熱風と弱化している水の誓では、タイプ相性で勝っていても熱風が勝つ。
水柱は瞬時に蒸発し、熱風がヌマクローに襲い掛かった。
「うぅ、こうなったら接近戦に持ち込むしか……ヌマクロー、瓦割り!」
熱風が吹き止むと、ヌマクローは拳を構えてキュウコンへと走り出す。
「止めろ、神通力」
キュウコンは神通力を発してヌマクローを止めようとするが、ヌマクローはなんとかそれを躱してキュウコンに接近。拳の一撃を叩き込む。
「水の誓!」
さらに周りから間欠泉のように水を噴射して追撃。キュウコンを攻撃するだけでなく、一時的にだがキュウコンの動きも止められた。
「…………」
アーロンはサングラス越しにその様子をジッと見つめ、キュウコンに指示を出さない。
「もっと攻撃だよ、ヌマクロー。スプラッシュだ!」
両腕に水流を巻きつけ、飛沫を散らしながらキュウコンに叩き付ける。日照りで実質等倍だが、それでもそれなりにダメージは通る。
「瓦割り!」
「祟り目」
ヌマクローが続けて拳を繰り出そうとすると、そこでキュウコンは祟るような視線でヌマクローを見据え、動きを止めた。
「神通力だ」
さらに神通力を発し、今度はヌマクローを吹っ飛ばして引き剥がす。
「くぅ、マッドショット!」
素早く起き上がり、反撃にヌマクローは泥を発射するが、
「熱風」
すぐさまキュウコンも熱風を放ち、マッドショットを打ち消してそのままヌマクローも攻撃する。
攻め一辺倒というわけではないが、キュウコンの攻撃は勢いがある。攻撃と防御の切り替えが的確で、守るべき時にだけ最低限守り、後は攻めていく、そんな感じのスタイルだ。
「キュウコン、熱風だ」
再びキュウコンは熱風を放つ。日照りで強化されており、ヌマクローの攻撃では相殺することすら出来ない攻撃だ。だからといってヌマクローのスピードで避けられる攻撃でもない。ならば、
「ヌマクロー、スプラッシュで突き抜けるんだ!」
攻撃を喰らうことを前提とし、少しでもダメージを減らす。そしてすぐに攻撃に移る。それがフィアの判断だ。
ヌマクローは全身に水流を纏い、飛沫を散らしながらキュウコンへと突っ込む。途中で熱風が襲ってくるが関係ない。水はすべて蒸発したが、熱風は広範囲に放つ分、一点に対する攻撃の密度が薄い。蒸発した瞬間に、ヌマクローは熱風の中を走り抜け、突っ切った。
「今だ! 瓦割り!」
強引に熱風を突き抜けたヌマクローは、拳を突き出してキュウコンを殴りつけ、
「スプラッシュ!」
両腕を振り下ろし、水飛沫と共にキュウコンを吹っ飛ばす。
ヌマクローも相当ダメージを受けたが、キュウコンもヌマクローからそれなりに攻撃を喰らっている。ダメージは蓄積しているはずだ。
「ヌマクロー、マッドショット!」
「キュウコン、神通力」
ヌマクローが噴射する泥を神通力で相殺し、キュウコンは起き上がり態勢を立て直す。
「祟り目」
態勢を立て直したキュウコンはすぐに動かず、じっとヌマクローを見据える。
「っ、水の誓だ!」
ヌマクローはすぐに地面から水を噴射し、キュウコンの視界を塞ぐように攻撃。あれ以上見つめられていれば、ヌマクローは戦闘不能になっていたかもしれない。
(祟り目は見つめてから動くことができないし、攻撃まで時間差もある……決して防げない攻撃じゃない)
神通力はなんとか回避でき、熱風もスプラッシュなら、多少ダメージは受けるものの突破できる。
最初は日照りと相まって強力なキュウコンだと思ったが——その事実は変わらないが、それでも攻略不可能ではない。
「このまま押し切れれば……ヌマクロー、マッドショット!」
ヌマクローは大きく息を吸い、口から多量の泥を噴射する。
「神通力」
が、その泥は神通力で散らされて相殺されてしまう。そして、
「キュウコン、熱風だ」
キュウコンは静かに息を吐き、高熱の熱風を放つ。
熱風は広範囲に放たれ回避が難しい、かつ日照りで強化され、威力も高い。しかしそれを突破する術を、既にフィアは発見している。
「スプラッシュだ!」
ヌマクローは全身に水流を纏って突貫、水は蒸発するが、熱風を突っ切ってキュウコンへと接近——しようとするが、
「キュウコン、神通力」
キュウコンへと接近する途中で、神々しい念力を受け、ヌマクローの動きは止められてしまう。
フィアはここで、ヌマクローは吹っ飛ばされるのだと思っていた。接近してくる相手は遠くに押しやるのがセオリーということを、フィアはもう知っているからだ。
しかし、キュウコンはヌマクローの動きを止めたまま、動かさない。どころか、
「そのまま押さえつけろ」
ヌマクローをうつ伏せに地面に這いつくばらせると、完全に体を固定してしまう。ヌマクローはなんとか脱出を試みるが、火傷で力が落ちており、上手く脱出できないでいる。
ここでフィアは、アーロンの狙いに気付いた。
「火傷……!」
「そうだ」
ヌマクローはキュウコンの鬼火を受け、火傷状態。だからヌマクローがあれだけ攻撃しても、キュウコンはまだ立っているのだ。
そして火傷状態だと、時間の経過と共に体力が削られる。つまりアーロンの狙いとは、火傷でヌマクローの体力が尽きるまで、ヌマクローを束縛するつもりなのだ。
「炎は戦の象徴、即ち攻撃を意味する。だが、攻撃の形は、技を繰り出すだけではない」
アーロンが告げるように静かに口を開く。するとキュウコンの神通力が解け、ヌマクローは解放された。
しかしその時ヌマクローは、戦闘不能となっていた。
やって来ましたカゲロウジム戦、アーロンの一番手は日照りキュウコンです。技も和風っぽい技を選びました。ちなみにキュウコンが最後にヌマクローを倒した戦法は前作(正確には前々作)でも出ています。さて、文字数もギリギリなのであとがきはこの辺で。次回はカゲロウジム戦その二です。お楽しみに。
- 第45話 ジムバトルⅣ カゲロウジム2 ( No.128 )
- 日時: 2013/05/11 20:52
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 日差しが照りつけるカゲロウジム戦、アーロンの次鋒が駆ける——
フィアは苦い顔をしながら、戦闘不能となったヌマクローをボールに戻す。そして少し悩み、次のボールを構えた。
「パチリス、頼んだよ」
フィアの二番手はパチリスだ。
「パチリス、まずは帯電だ」
パチリスはすぐには攻めず、パチパチと電気を帯びて攻撃能力を高める。
「キュウコン、鬼火」
そんなパチリスに、キュウコンは九つの揺らめく火の玉を放つが、
「エレキボール!」
鬼火は軌道が不規則だが弾速が遅い。パチリスは尻尾に集めた電撃の球体を投げ飛ばし、鬼火を突き破ってそのままキュウコンを攻撃する。
すると鬼火は消え、キュウコンもドサッとその場に崩れ落ちた。
「……戻れ、キュウコン」
アーロンは淡々と戦闘不能になったキュウコンを戻し、新たなボールを取り出す。
「行け、ウインディ」
アーロンの二番手は、赤い体に黒い線が走り、薄橙色の体毛に覆われた犬のようなポケモン。
『Information
ウインディ 伝説ポケモン
強い正義感を持ち、悪さを
するポケモンを退治する。
書類などで誤表記が多い。』
「ウィンディ……ガーディの進化系か」
フィアは以前、イオンが持つガーディに敗れたことがあるので、少しだけ表情が暗くなる。
「ウインディ、炎の牙」
ウインディは鋭い牙に炎を灯し、地面を蹴ってパチリスへと突っ込む。
「躱してエレキボール!」
パチリスは素早く横に移動してウインディの牙を回避し、雷球を飛ばして攻撃。帯電で威力も上がっているので、そこそこのダメージだ。
「もう一度エレキボール!」
再び雷球を生成し、パチリスは尻尾を振るってウインディへと投げ飛ばす。
ウインディは連続でエレキボールの直撃を受け、少し顔をしかめた。
「……中々の素早さだな」
パチリスのエレキボールの威力を見て、アーロンは呟くように言う。
エレキボールは素早さが高いほど威力の増す技。つまりパチリスのエレキボールの威力が高いということは、それだけパチリスが素早いということだ。
「ならばこれはどうだ。ウインディ、バークアウト」
ウインディは低く唸ると、次の瞬間、けたたましい叫び声をあげてパチリスを吹っ飛ばした。
「うっ、これか……」
フィアは露骨に顔をしかめた。
バークアウトは攻撃と同時に特攻を下げる技。イオンのガーディに負けた時も、この技で敗れたようなものだ。
幸いパチリスはそれほどダメージを受けていない。しかし今のバークアウトで特攻が下がり、帯電で上げた分が下がってしまった。
「バークアウト」
「パチリス、躱してエレキボールだ!」
ウインディはパチリスに向かって駆け、咆哮のように叫んでパチリスを攻撃。
パチリスはバークアウトを躱しきれなかったが、それでも尻尾に雷球は作り出し、尻尾を振るってウインディへと投げ飛ばす。だがウインディへのダメージは明らかに落ちている。
「だったらもう一度上げる。パチリス、帯電だ」
パチリスは再び帯電して、攻撃と特攻を上げるが、
「上げられたならならば下げるまでだ。ウインディ、バークアウト」
ウインディも叫び声を放ち、パチリスを攻撃。帯電で上昇した特攻はまたも下げられてしまう。
「燕返しだ」
さらにウインディは高速でパチリスに接近し、鋭い爪で切り裂く。
「炎の牙」
「っ、躱して!」
続けて牙に炎を灯して齧りつこうとするが、パチリスは地面を転がってそれを回避する。
「逃がさん。雷の牙」
ウインディは牙に灯った炎を消すと、今度は電流を流し、地面に牙を突き立てる。すると電気が衝撃波のように地面を伝ってパチリスに襲い掛かった。
しかし、
「む……」
ここで初めて、アーロンは驚いたような顔をする。いや、表情は読めないので、驚いたような声を上げる、が正しいか。
アーロンが驚く理由はパチリスだ。地面を伝って衝撃波のように放たれた電撃を喰らっても、パチリスはまったく動じない。どころかむしろ元気になっている。
「蓄電か……パチリスでその特性は、稀有だな」
アーロンの言うように、このパチリスの特性は蓄電。電気タイプの技を無効にし、そのまま自分の力に変えて体力を回復する特性だ。
「やった……パチリス、帯電だ」
偶然だが体力が回復できたのはパチリスにとってはプラスだ。ここでさらに帯電し、攻撃能力を高めるが、
「バークアウトだ」
そこはアーロン、抜け目なくバークアウトが放たれ、パチリスの特攻はまたも下げられる。
「でも、バークアウトは特攻は下げられても、攻撃は下げられない。今度は物理技で攻めるよ、パチリス」
パチリスは両頬をパチパチと弾けさせ、ジャンプする。
「種爆弾だ!」
そして空中から多量の種子をばら撒き、ウインディを爆撃する。効果はいまひとつだが、パチリスの攻撃は三倍以上になっているので、それなりのダメージは見込める。
「噛みつく!」
パチリスはそのまま落下し、ウインディの背に乗ると、鋭い前歯をウインディに突き立てた。種爆弾と違って等倍なので、ダメージは大きいのだが、
直後、ウインディが大きく吠えた。
「っ!? なに……!?」
ウインディはそのまま体を揺らしてパチリスを振り落す。その目はギラギラと光っており、獰猛だが正義感に満ちている。
アーロンが何かを言う気配はないので、フィアは自分でターミナルを開き、急いで検索をかける。
「正義の心……」
フィアが見つけたのは、ウインディの特性、正義の心だ。
この特性は蓄電のように、あるタイプの攻撃を受けると発動する特性だ。蓄電は電気技だが、正義の心は悪技を受けると発動する。
蓄電との違いは、受けた技を無効化しないこと。そして、技を受けても体力は回復せず、代わりに攻撃力が上がることだ。
「要するに、悪技を受けるたびに攻撃力が上がるってことか……」
それはフィアにとってはあまり良いことではなかった。
帯電で攻撃が上がっているとはいえ、種爆弾はウインディに効果いまひとつ。決定打にはなりにくい。なので噛みつくを主軸にして攻めようとフィアは思っていたのだが、ウインディにこのような特性があるなら噛みつくでも攻撃しづらい。かといってエレキボールはバークアウトで威力が落ちる。
つまり、パチリスの攻撃は全て、ウインディに出し難くなってしまったのだ。
「だなら、一回の攻撃力を上げれば……パチリス、帯電」
「バークアウト」
パチリスは帯電しようとするが、今度は帯電する前に咆哮が放たれ、帯電は中断、パチリスも吹っ飛ばされる。
「燕返しだ」
続けてパチリスに急接近し、鋭い爪で切り裂く。攻撃力が上がっているので、効果いまひとつでもある程度のダメージは通る。
「炎の牙」
さらにウインディは、パチリスに炎を灯した牙を剥く。
「うぅ……パチリス、種爆弾!」
流石に炎の牙はまずいと思ったのか、パチリスはすぐさま種子を投げつけて炸裂させ、ウインディを怯ませて距離を取る。
「エレキボール!」
パチリスは尻尾に生成した雷球を飛ばしてウインディを攻撃するが、バークアウトで威力が落ちており、ダメージは微々たるもの。もう特殊攻撃は通用しないと見た方が良さそうだ。
「種爆弾も期待薄だし……こうなったら一か八か。パチリス、噛みつく!」
ここでフィアは勝負に出る。パチリスも前歯を剥き出し、ウインディへと駆け寄って齧りつこうとする。
噛みつくならウインディにも大きなダメージが期待できる。しかし何度も噛みついていたらウインディの攻撃力がどんどん上がり、やがて手がつけられなくなってしまう。その前に仕留めるのがベストだが、相手はアーロンだ。そう上手くは行かないだろうとフィアは考えていた。
だがその考えは杞憂に終わるのだった。
凄まじい勢いでパチリスの前歯がウインディに突き刺さり、ウインディは雄叫びではない絶叫を上げた。
「……!」
ここでまた、アーロンの表情が驚きに変わる。今度は確実に表情が変わった。
ウインディはパチリスの噛みつくを受けたはずだが、それにしてはダメージが大きい。それに正義の心も発動していない。
となれば答えは一つ、パチリスが噛みつくでない技を使ったのだ。
「……必殺前歯か」
アーロンは呟く。フィアも図鑑を開き、パチリスの技が噛みつくから必殺前歯に変更していることを確認した。
「必殺前歯を覚えたんだ……凄いよ、パチリス!」
フィアがパチリスを称賛すると、パチリスはしたり顔とウィンクで返した。
「必殺前歯はノーマル技、これなら正義の心も発動しないし、威力も高い。決めるよパチリス、必殺前歯!」
「迎え撃つぞ。ウインディ、炎の牙」
パチリスとウインディはそれぞれ前歯と牙を剥き、駆け出す。
そして互いに交錯し、背中合わせになると停止した。
「パチリス……」
「…………」
静寂の時間がしばらく流れる。そして——
ドサッ
——ウインディが、倒れた。
カゲロウジム戦その二です。アーロンの二番手はウインディですが、図鑑説明は完全にネタです。というか白黒も半年くらい前まで『ウィンディ』だと思っていました。小説内でも誤字があるかもしれないです。さて、パチリスが必殺前歯を習得してウインディを下し、次回のカゲロウジム戦その三に移ります。お楽しみに。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39