二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 七つの星と罪
日時: 2013/07/21 23:48
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
 前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。

 ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。

 それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 それでは、白黒の新しい物語が始まります——

登場人物紹介
>>31



プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11

シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43

クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180

第40話 people looking ( No.119 )
日時: 2013/05/06 19:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: バトルのない話の割合が増えてる気がする今日この頃。

 ウルシを倒し、オボロジムを制覇した翌日。フィアは旅立つ準備を終え、オボロシティ内を歩きながら次に向かう街の選定をしていた。
「ここから一番近いのは……やっぱりカゲロウシティかな……」
 ターミナルに表示されたタウンマップと睨めっこしながらそう呟くフィア。見たところカゲロウシティの近くには港も他の街もある。その時の指針に合わせて、この島に残るか別の島に移るかも選択できそうだ。
「そうと決まれば、早く街から出よう。カゲロウシティまでは、結構距離もあるみたいだし——」
 と力強い一歩を踏み出すフィアの出鼻を挫くように、背後から声がかかった。
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい……?」
 ほぼ反射的に振り返り、フィアは思わず目を見開いて息を飲む。
(うわ、美人……)
 声に出さなくて良かったと胸を撫で下ろしつつ、フィアは自身の心拍数が上がっていることを自覚する。浮いた話などとは縁遠いフィアだがそれでも年頃の男子だ。女性に興味がないとは言わない。
 フィアに声をかけてきたのは、フィアが思っているように女性だ。淡い水色のワンピースを着ており、色白で背は若干高め、スタイルも良い。背中ほどもある明るい青のストレートロングヘアーに、赤いヘアピンが映える。
「……? どうしました?」
 硬直するフィアに首を傾げる女性。女性の声で、フィアは我に返る。
「あ、いえ……えっと、何か、ご用でしょうか……?」
「はい、実は人を探しているのですが……ご存じないでしょうか?」
 どうやらはぐれたらしい。フィアは軽く辺りを見回すが、混雑は行かずともそれなりの人込みだ。油断しているとはぐれてしまうこともあるだろう。
「その、どんな人ですか……?」
 とりあえずフィアは、はぐれた人物の特徴を尋ねる。すると女性は顎に人差し指を当て、考え込むように天を仰ぐと、
「そうですね……男の人なんですけど、背は少し高いです。わたしより頭半分くらい上でしょうか」
 背は高め、しかしそれなら普通の成人男性とさほど変わらないだろう。
「髪は赤いです……あ、赤いと言っても純色の赤ではなく、ちょっと黒っぽい赤です」
 赤黒い髪なら目立つし、それなりの特徴になるだろう。
「服装は黒っぽくて……そうそう、チェーンとかブレスレットとか、アクセサリーを付けていますね。あ、あと目つきは鋭いです。人を睨んだような目と言いますか」
「…………」
 フィアは黙った。しかし女性は構わず続ける。
「あの人の特徴を一言で言うなら……そうですね、不良みたいな人です」
(いや、みたいじゃなくて完全に不良だよ、それ……)
 女性があまりにも嬉々として話すので、心の中だけのツッコミに収める。
 黒っぽい服装にアクセサリー、人を睨んだような目……ここから想像できるのは、柄の悪い男だ。
 勿論これはフィアのイメージなので、実際はもっと違う人物かもしれないが、女性自身はもう不良みたいと言ってしまっているので、フィアのイメージは不良で固定されてしまった。
「とまあ、そういう感じの人なんですが、ご存じないでしょうか?」
「いえ……見てないですね……」
 見ていないというか、見たくないというのがフィアの本音だった。
「そうですか……」
 期待を裏切られたかのようにしゅんとなる女性。自分よりも大人であるの女性なのだが、フィアは保護欲に近い感情が沸き上がり、女性を放っておけなかった。
 そのためか、ついこんなことを口走ってしまう。

「良かったら、一緒に探しましょうか?」



 思わず言ってしまった一言で、フィアは女性と共に、女性の連れを探すこととなってしまった。
「一緒に探してくださるなんて、ありがとうございます。わたしはレキです」
「あ、僕はフィア……です」
 人込みを掻き分けつつ辺りを見回して、それらしい人物を探すフィアとレキ。その途中で、様々な会話をしていた。
「フィアさんもトレーナーなんですね。ということは、ジムバッジを集めているんですか?」
「はい、まあ……昨日、三つ目のバッジを手に入れたところです」
「そうなんですか。この街のジムリーダーはこの地方の十傑に入るほどの猛者と聞いていますし、フィアさんはお強いんですね」
「いえ、そんな……」
 お世辞で言っているのだろうが、それにしてはまっすぐなレキの言葉。ここまでまっすぐな人も珍しいと、フィアは内心呟いた。
 それからしばらく探索していても、それらしい人影は一つも見えない。一息つこうと、二人は近くの公園で休憩することにした。
「そういえば……ターミナルか何かで、連絡を取ることは出来ないんですか?」
 ベンチに腰掛けながらそんなことを尋ねるフィアだったが、それは愚問だとすぐに気付く。もし連絡ができるのならとっくにそうしているはずだからだ。
 しかしレキは嫌な顔一つ見せず、にこやかな笑みで言葉を返す。
「それが出来ないんですよ。わたし……というより彼はイッシュ地方という地方の出身でして、こっちの地方の携帯端末を持っていないんです。わたしの古い仲間がその端末を作っているので、貰いに行こうと思っているのですが……彼、なかなか頑固なものでして」
 イッシュ地方と言われてもフィアにはなんのことだか分からないが、とりあえずホッポウ地方とは別の地方、とだけ認識しておく。
「あの、これは単なる興味本位なんですけど……レキさんと、その連れの方は、どうしてホッポウ地方に……? 観光か何かですか?」
 ふとフィアが思ったのは、地方によって連絡手段が違うのであれば、それだけ各地方の繋がりは薄いのではないかということ。なら何かしらの目的があってわざわざホッポウ地方に来たのではないかと、そう思った。
 本当に単なる興味で聞いただけなのだが、レキは微笑みながら返した。
「人……というか、妹を探しているんですよ。妹と言っても彼の妹ですけど……でも将来的にはわたしの義理の妹です」
「え……?」
 一瞬だけ思考が停止するフィア。レキの連れの妹が、将来的にレキの義理の妹になるということは、つまりレキとその連れの男は婚約関係ということに——
「おっと、少し言いすぎました……ダメですね、口調を直してから口が軽くなってしまって。なんでもありません。とにかく彼の妹さんを探しているんですよ」
 レキの方も失言だと思ったのか、口に手を当てて誤魔化す。完全に手遅れだが。
 レキのカミングアウトに戸惑うフィアだったが、その時、フィアの視界にある人影が入ってきた。
 それはレキが探しているという男ではない。レキが求めるものではなく、逆にフィアが求めてはいないもの。フィアが知る者であり、敵視するもの。
 それは即ち。
「グリモワール……!」



 フィアとレキは男を探すことを一時中断し、街中を駆けるグリモワールを追っていた。
「グリモワール……聞いたことがあります。確か犯罪者を脱獄させて、取り込んでいる組織でしたか」
 どうやらレキもグリモワールのことは聞き知っているようだ。
「フィアさんは、グリモワールと接触したことがあるんですか?」
「はい、まあ……友達のポケモンを盗まれたことがあるんですよ。その時は、あるトレーナーに助けてもらって事なきを得たのですが」
「そうですか……」
 なんにせよ、グリモワールがここにいるということは、また何かしでかす可能性が高い。ならば今度はそれを未然に防ぐべきだ。
「あの、レキさん。今更こんなこと言うのもなんですけど、無理について来なくてもいいんですよ? このことはレキさんは無関係ですし……」
 フィアはそう言うが、レキはふるふると首を横に振った。
「いいえ、フィアさんに関係があることなら、わたしにとっては無関係ではありません。フィアさんにはあの人を探すお手伝いをしていただいていますし」
 それに、と続け、
「わたしとしては、そのような組織を見て見ぬ振りは出来ません。むしろ一度ちゃんと会ってみたかったのですが……今まで接点がありませんでしたからね。むしろここで関わりを持てて、好都合というものです」
「……そうですか」
 なにやらレキから強い意思を感じる。それもフィアのような敵対視にゃ正義感とは違う、何かだ。
 下っ端と思しき黒い制服を身に纏ったグリモワールを追いかけ、フィアとレキは裏路地に入った。そこで一度、下っ端を見失ってしまう。
「逃げられた……どこに行ったんだろう……?」
「……フィアさん、向こうから人の気配を感じます」
 キョロキョロと辺りを見回すフィアに、レキが裏路地のさらに奥を指差し、小さく告げる。
「強い気配です……先ほどの下っ端とは一線を画す人物でしょう」
「ていうことは、七罪人か……」
 相手が七罪人ともなると不安を覚えるフィアだが、逆に言えば七罪人を動員するほど相手の目的は重大ということだ。
 覚悟を決め、フィアとレキは、裏路地の奥へと歩を進めていく。



今回は一応の新キャラ、レキの登場です。あえて詳しくは言いませんが、この作品では一応新キャラです……いやもうばらすか。はい、口調こそかなり違いますが前作で出て来た彼女です。名前も違いますけど。さて、それでは次回、恐らく新たな七罪人が登場です。お楽しみに。

第41話 ベルフェ ( No.120 )
日時: 2013/05/06 22:10
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 新たな七罪人、現る。

 裏路地の奥へと進むと、そこに黒い制服を着たグリモワールの下っ端が三人。そしてその下っ端を従えるかのように、中央に男が佇んでいた。
 男と言っても、年齢は若く見える。以前戦った七罪人、ゼブルと同じくらいだろう。だが年齢は同じでも、恰好はゼブル以上に目を引くものだった。いや、いっそ異様と言うべきか。
 まず最初に目についたのは、褐色の肌。色合いからして、日焼けではなく元々そういう肌色の種族なのだろう。そして肌とは逆に、髪は白い。アンシンメトリーというよりは、不自然に垂らしたような髪型で、長い前髪の隙間から赤い無感動な瞳が覗いている。
「…………」
 そして何より異様なのは、彼の服装だ。一見すれば少し改造を加えただけのグリモワールの制服なのだが、腰だけでなく腕や足、胴体など、体の至るところが革製のベルトできつく締め上げられている。頬には湿布、首には首輪、手首には鎖の千切れた手錠が装飾品のように彼を怪しく飾っていた。
 フィアはその恰好を見て、拘束衣を想起させる。
「……来たか」
 褐色の肌の少年は無感動な瞳でフィアとレキを見据え、抑揚のない声をあげる。
「オレ、ベルフェ。怠惰の七罪人。お前、倒す」
 少年——ベルフェは片言のインディアン的な口調で名乗り、そう告げる。同時に剥がした湿布の下には獣の手のような三本爪の烙印が焼き付いており、やはり彼も七罪人のようだ。
 しかもこのベルフェは、まるでフィアがここに来ることを知っていたかのようだった。もしそうでなければ、フィアに向かって開口一番に倒すなどとは言わないはずだ。
 まさか誘き出されたのかと一抹の不安がよぎるフィアだったが、しかしベルフェにも不測の事態があったようで、
「だが……オレ、お前知らない」
 ベルフェは湿布を貼り直しつつ、レキを指差す。
「わたしは成り行きでここに来ただけですので、知らなくても無理はないでしょう」
 レキもレキで、肩を竦めるだけで多くは語らない。ベルフェもレキについては深く言及せず、
「……まあいい。オレの命令、一つ。お前、倒す」
 フィアに向き直り、ボールを取り出した。
「ググズリー、戦闘開始」
 ベルフェが繰り出したのは、緑色の熊のようなポケモン。

『Information
 ググズリー 猛獣ポケモン
 普段も大人しいとは言えないが、
 尻尾先端の球体を引っ張ると
 手が付けられないほど暴れまわる。』

「やっぱり、戦う気なんだね」
 チラッと後ろに視線を移すと、そこはベルフェを取り巻いていた下っ端三人が既に通行止めをしていた。
 フィアもボールを取り出し、一歩前に進もうとするが、
「フィアさん、ここはわたしに任せてください」
「っ、レキさん……」
 レキがフィアを制止する。
「ググズリーはノーマルと格闘タイプです……フィアさんがどのようなポケモンを持っているかは知りませんが、表情を見る限り有効打を持つポケモンは少ないのでは?」
「う、それは……」
 その通りだった。確かにブースターやヌマクローには格闘技があるものの、どちらもタイプ不一致。起死回生に至ってはピンチの時にしか効力を発揮しない。
「わたしのポケモンならググズリーに有効打を撃てます。それに——」
 一拍置いて、レキは一瞬だけ目を鋭く細める。ほんの一瞬だけだったが、凍てつく氷柱のような眼だった。
「——ポケモンバトルには、自信があります」
 レキはすぐに笑みを浮かべ、フィアを差し置いて前に出る。フィアは一瞬だけ見た冷たい視線が脳裏に焼き付いており、強く出れなかった。
「まあそういうわけで、あなたの相手はわたしが務めます。依存はありませんか?」
「…………」
 ベルフェは前に出たレキをジッと見つめ、
「依存……ある」
 やがて口を開く。
「オレの命令、フィア、倒すこと。お前、知らない。お前倒すこと、命令に、ない」
 あくまでも命令に忠実なベルフェ。忠実過ぎて融通が利かないようだ。
「そうですか……でも、わたしには関係ありませんよね」
 それを理解するレキも、ここは退かない。ボールを取り出し、ベルフェと戦う姿勢を見せる。
「……ルキ、言ってた。邪魔者、倒せ。邪魔、するな」
 ベルフェの中で何かが繋がったようで、ひとまずの標的はレキへと変更されたようだ。ベルフェもググズリーも、完全にレキに敵意を向けている。
「やっとこちらを向いてくれましたね……では、行きましょうか」
 スッと流れるような動作でボールを構え、レキはポケモンを繰り出す。
「おいでください、レジュリア!」
 レキが繰り出したのは、長い金髪に赤いドレスを着たような、限りなく人型に近いポケモンだ。

『Information
 レジュリア 人型ポケモン
 しなやかな体で優雅にダンスを
 踊る。レジュリアのダンスを見ると
 身体の自由が利かなくなってしまう。』

 レジュリアは氷とエスパータイプ。氷の弱点である格闘技はエスパーで相殺され、逆にエスパー技で格闘の弱点を突ける。ググズリーには相性が良い。
 両者のポケモンが場に出て、一触即発の空気が流れる中、どちらもにらみ合いを続ける。
「……?」
 ここでレキは眉根を寄せた。レジュリアが攻めないのはただの様子見だが、ググズリーも攻撃してくる気配がない。ググズリーの能力を考えれば速攻で殴り掛かってきてもおかしくないのだが、ベルフェのググズリーは動かない。どころか構えてすらいない。
「このまま睨み合っていても埒があきませんね……そちらが攻めてこないのなら、こちらから速攻で決めさせてもらいます」
 痺れを切らしたレジュリアは、地面を蹴ってググズリーへと接近。それでもまだググズリーは構えない。
「レジュリア、サイコバーン!」
 レジュリアは手を振り、念力の爆発を引き起こす。その威力は凄まじく、しかもググズリーには効果抜群だ。レジュリアの特攻も考えれば、一撃で戦闘不能になっていてもおかしくはない。
 しかし、

「ググズリー、ドレインパンチ」

 直後、爆発で発生した煙の中から、ググズリーの拳が突き出される。
「っ!? レジュリア!」
 レジュリアはその拳を回避することができず、大きく吹っ飛ばされて壁に激突する。
 ググズリーは攻撃力が高く、レジュリアは防御が低いのだが、それにしてもダメージが大きい。まだギリギリ戦闘不能ではないようだが、一撃で体力のほとんどを持って行かれた。
「なんて威力……いや、それよりも……」
 レキが驚愕しているのは、ドレインパンチの攻撃力より、サイコバーンを耐えた耐久力。
 レジュリアの防御が低いように、ググズリーは特防が低い。そこに高火力でタイプ一致、しかも効果抜群のサイコバーンを喰らえば、戦闘不能になってもおかしくはないし、そうでなくとも致命傷になるはずだ。
 しかしググズリーは、大ダメージこそ負ってはいるが戦闘不能には至らない。受けたダメージが少なすぎる。
「特防を特化させていた……? いや、そうは見えません……じゃあ、一体……?」
 レキはググズリーの異常な耐久の理由を考えるが、今の一合では推測すらも難しい。
 そうこうしているうちにググズリーの反撃の手が伸びて来る——かと思いきや、ググズリーは反撃どころか構えすら取らず、ジッとレジュリアを見つめていた。
「どうやらカウンターを得意とするスタイルのようですが、それでも構えすらしないとは……」
 ベルフェのググズリーのバトルスタイルは、あえて相手から攻撃を喰らい、すぐさま反撃するカウンタースタイル。そこまでは見抜けたが、そこまでだ。それ以上は分からない。
「レキさん……」
 いきなり不利な状況に陥るレキ。フィアはその様子を不安を覚えながら見つめる。その時だった。

 後方で三人の下っ端が吹っ飛んだ。

「っ!? な、なに……っ!?」
 正確には、三人と三人のポケモンが吹っ飛んだのだが、そんなのは些末な差だ。問題は、後ろでいつの間にかバトルがあったということだ。
「……何事だ」
「も、申し訳ありませんベルフェ様……いきなり、暴君のような男が襲ってきて——」
 吹っ飛ばされて強く頭を打ちつけた下っ端二人は気絶し、残る一人もガクッと気を失う。
 そして、下っ端が塞いでいた通路から、一つの人影が現れる。
「はぁ……ったく、いい歳して迷子になってんじゃねぇよ。しかもこんな面倒なことに巻き込まれやがって……だが」
 現れたのは、男だ。黒みがかった赤い髪に、鋭い眼光。黒を基調としたラフな格好をしており、腰にはチェーン、腕には青緑色の腕輪を付けている。
 男はこの場の光景を見て口の端を吊り上げ、笑った。
「——面白そうなことしてるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」



はい、今回は新しく怠惰の七罪人、ベルフェの登場です。もっと怠け者が出て来ると思いましたか? 残念ながらこいつはそんなに単純ではありません。怠け者のベクトルが普通とは違います。それでは次回、突如現れた男の正体が明らかに……まあ、分かる人は分かると思いますが。そういうわけで次回もお楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.121 )
日時: 2013/05/06 22:24
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)

こんばんは。こちらも更新しました、タクです。久しく、ノートパソコンが復活したので、うれしさの余り更新しました。レキというキャラ・・・。どこかで見たような気がするんですけど。まさか、前作のあいつが・・・。まあ、正体は楽しみにしておきましょう。恐らく、その人でしょうが。しかし、怠け者のベクトルが違うって、どういう事かさっぱりです・・・。恐らく、ただ者じゃないのでしょう。まあ、更新を楽しみにさせていただきます。それでは。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.122 )
日時: 2013/05/07 20:26
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: ウルシ=漆 ウルシ科ウルシ属の落葉高木

タクさん


 PC復活したんですか、おめでとうございます。僕が壊れた時にはタイミングよく買い換えられたのですが、更新が再開できると嬉しいですよね。
 レキの正体……というか、彼女が誰なのかはあえて明かしませんが、恐らくタクさんの思っている人物だと思います。
 ベクトル云々はわりと適当に言ったので、あまり真に受けなくてもいいですよ……怠け者というか、彼の場合は融通が利かないって感じですが。まあそのうちちゃんと説明する時が来るでしょう。只者でないのは確かです。
 次回は……たぶんオボロシティの回が終わると思います。

第42話 tyrant ( No.123 )
日時: 2013/05/09 22:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 暴君乱入!

「ザキさん……!」
 突如現れた男を見るや否や、レキの顔はパァッと明るくなっていく、どうやら彼の名前はザキというようで、恐らく反応からすると彼女の探していた人物なのだろう。
 ザキはフィアをスルーし、レキの横まで歩くと、軽く辺りを見回し、
「とりあえず、どういう状況かは理解できた。お前がこういう奴らを放っておけないのは知ってる、それは咎めたりしねぇ……がいい歳して迷子になってじゃねぇよ」
「申し訳ないです」
 口ではそう言うが、レキはあまり申し訳なさそうな顔をしていない、謝罪の念よりザキに会えた喜びが勝ったのか。
「……はぁ。まあ早く見つかったことだ、今回はチャラにしてやる。ただし」
 と言って、ザキはベルフェを睨み付けるように見据える。
「選手交代だ。ちょうどイライラしててどっかで暴れたかったところだ、折角目の前にいい獲物がいることだし、八つ当たりでも憂さ晴らしでもしてやる」
 そしてザキはボールを構える。フィアの時は食い下がったレキだが、今回は潔くレジュリアをボールに戻し、引き下がった。
「……邪魔、するな」
「うるせぇ。てめぇは俺のストレス解消のためにサンドバックにでもなってればいいんだよ。黙っとけ」
 ベルフェの言葉を理不尽に一蹴し、ザキは構えたボールを投げ、ポケモンを繰り出す。
「暴れるぞ、テペトラー!」
 ザキが繰り出したのは、正に河童の如きポケモン。ザキ同様、鋭い眼光でベルフェのググズリーを睨み付けている。

『Information
 テペトラー 河童ポケモン
 非常に力に優れたポケモン。
 ただ力任せに殴るのではなく
 体の捻りを使って相手を攻撃する。』

「先手なんてやらねぇぞ、一発目から殴り倒してやる。テペトラー、サイコパンチ!」
 ザキの言葉通り、先に動いたのはテペトラーだ。テペトラーはググズリー急接近し、念力を纏わせた拳でググズリーの顔面を殴る。
 効果抜群で無防備なググズリーの顔面にクリーンヒット。普通ならかなりのダメージになるはずだが、
「ググズリー、ドレインパンチ」
 ググズリーはしっかりと両足を踏ん張って耐え切り、逆にテペトラーを殴り飛ばしてしまう。
「っ! テペトラー!」
 殴り飛ばされたテペトラーは壁に激突して落下するが、すぐに起き上がる相当なタフネスだ。
「……妙な攻撃だな」
 今の一撃を見て、ザキはぼそりと呟く。そうしている間でも、ググズリーは攻めてこない。
「カウンター狙い——にしても露骨すぎるというか、無防備すぎる……とにかくもっと攻撃をぶち込まねぇと分からねぇか。テペトラー、スプラッシュだ!」
 今度は水流を纏い、飛沫を散らしながらテペトラーは突貫。ググズリーに激突する。
「ドレインパンチ」
 だがまたしてもググズリーは余裕で耐え、光る拳を振りかざしてテペトラーに殴り掛かるが、
「サイコパンチだ!」
 テペトラーも同時に念力を纏った拳を突き出し。拳同士でぶつかり合う。
 初めは双方とも激しく競り合っていたが、やがてググズリーが押し勝ち、テペトラーはまたも吹っ飛ばされた。
「……おいテペトラー、こんくらいでへばんなよ」
 ザキがテペトラーを見ずに言うと、テペトラーも無言で立ち上がり、構えた。
 その様子を見てフィアは唖然としていた。
「凄い……あのテペトラー、まだ立ち上がれるんですか……」
「あれがザキさんのポケモンです、彼と同じで不屈というか不死身というか……特にあのテペトラーは別格ですね。わたしも数年前に一回だけしか倒せませんでした」
 レキのレジュリアを一撃で戦闘不能寸前まで追い詰めたググズリー。その拳をまとに二回喰らってまだ立ち上がるテペトラーは、確かに不屈の闘志を持っているのかもしれない。
 ザキは少しだけ笑みを浮かべ、ベルフェを見据える。
「少しずつだが分かって来たぜ、お前のバトルスタイルの秘密がな……テペトラー、氷柱落とし!」
 言ってからテペトラーは、虚空から何本もの氷柱を落とし、ググズリーに突き刺す。数も大きさもウルシのゴートン以上だ。
 そんな氷柱の直撃を喰らったググズリーは全く怯むことなく、一度構えてから地面を蹴り、テペトラーへと突っ込む。
「ググズリー、ギガインパクト」
 凄まじい気迫と殺気を伴い、ググズリーはテペトラーへと突撃する。まだポケモンの技には疎いフィアだが、この技が相当な破壊力を持つことくらいは見て分かった。ザキも少しだけ苦い顔をしている。
「ちぃ……テペトラー、インファイトだ! とにかくあいつの勢いを削げ!」
 もうググズリーは止まらないと見たのか、テペトラーはググズリーを留めることよりも、勢いを削いでダメージを減らす策に出た。突っ込んできたググズリーに向かって、カウンターのように溜めた拳を勢いよく振り抜く。
 次の瞬間、両者のフルパワーの一撃がぶつかり合い、破裂音のような凄まじい音を響かせながら——テペトラーが吹っ飛んだ。
「あぁ!」
 途轍もない勢いで壁に激突するテペトラーを見て、思わず声を漏らすフィア。しかしザキにはこの展開は予想通りだったようで、テペトラーは舞った砂煙の中からすぐに飛び出した。
 そして、

「今だテペトラー、インファイト!」

 ググズリーの正面に降り立ったテペトラーは、こちらもこちらで凄まじい勢いの拳を連続で繰り出し、ググズリーを殴打する。
 数秒間のラッシュが続き、最後に力を溜めたフルパワーの一撃がググズリーの腹に叩き込まれ、今度こそググズリーは吹っ飛ばされた。
「…………」
 ベルフェはその光景を見て、少しだけ目を見開く。今まで一貫して表情が変わらなかったベルフェの表情が初めて変わった時だ。それほどググズリーが吹っ飛ばされたことに驚いているのだろうか。
 それならググズリーにも大ダメージが入ったと見ることもできる。インファイトは格闘技の中でもトップクラスの威力を誇り、おまけにググズリーには効果抜群。タイプ一致まで加わり、この連撃で戦闘不能になっていても不思議はない。
 ないのだが、しかし、

「ググズリー、ギガインパクト」

 刹那、砂煙の中からググズリーが飛び出す。それも、膨大なエネルギーを纏って。
「……! スプラッシュ!」
 テペトラーもダメージと攻撃の疲れがあるはずにも関わらず、咄嗟に水流を纏って突進したのは流石だ。しかし今回のギガインパクトは、威力が桁違いだった。
 明らかに一回目のギガインパクトよりも威力が増している。フィアにもそれは肌や感覚で分かった。
 やがてググズリーとテペトラーがぶつかり合うが、勝敗は分かりきっている。容易くテペトラーが吹っ飛ばされ、再三壁に激突する。壁の方も亀裂が入り、さらに衝撃を加えれば崩れてしまいそうだ。
 この一撃でテペトラーも戦闘不能……になるはずだが、
「テペトラー、根性出せ……まだ圧政は終わってねぇぞ」
 テペトラーは必死で体を支え、しかし目つきは鋭いまま、立ち上がる。もう戦闘不能となんら変わらないような状態だろうに、それでもテペトラーは戦う意思を見せる。
「無駄」
 そんなテペトラーを見て、ベルフェは口を開く。
「お前、俺に勝てない。お前の力、俺の力、相性悪い」
「確かにそうみてぇだなぁ。何度も殴られたせいでお前の力……いや、こっちじゃ能力っつーのか? が分かってきた」
 また少しだけ笑みを含ませて言うザキ。その言葉に、ベルフェは眉根を寄せる。
「成程な、能力っつーのはこういうことを言うのか……便利なもんだ。だが制約もあるみてぇだし、そこまで使い勝手はよくないのかもな。だがお前の能力に限って言えば、確かに俺のスタイルとは相性が悪いみたいだ」
 だがな、とザキは続け、
「種さえ知れちまえば、対策は簡単だ。今からそれを見せ——」

 ピリリリリ!

 とザキが言いかけたところで、どこからか電子音が鳴り響いた。
 フィアはまず自分のターミナルを確認するが、自分ではないようだ。レキも同じように首を振る。ザキは何も仕草を見せないが、たぶん違うのだろう。とすると、
「……ルキ、アス、任務達成。オレ、任務終了。帰還する」
 ベルフェだ。
 ベルフェはぼそぼそと何かを呟きながらターミナルに酷似した携帯端末を弄り、音を止める。そしてググズリーをボールに戻し、違うボールからポケモンを出した。
「アイアント、穴を掘る」
 出て来たのは全身を鋼の鎧に包んだ蟻のようなポケモン。

『Information
 アイアント 鉄蟻ポケモン
 天敵であるクイタランを
 集団で襲う。最近の研究だと、
 勝率はアイアントの方が高いらしい。』

 アイアントは素早くコンクリートを砕いて地面に穴を掘り、ベルフェもそこに入って姿を消してしまった。
「あ……」
 フィアは咄嗟に手を伸ばすが、もう遅い。
 そこにはアイアントが掘った穴と、気絶している下っ端が三人いるだけだった。



 その後、下っ端は警察に引き渡され、フィアたちもオボロシティから旅立とうとしていた。
「ではフィアさん、今日はお世話になりました」
「いえ……結局、僕は何もしてませんし、むしろレキさんやザキさんに助けられましたし……」
 フィアの言うように、グリモワール——特に七罪人、ベルフェとのバトルでフィアは一切手を出していない。戦ったのはレキとザキだけだ。
「つっても、奴の目的は時間稼ぎだったみたいだがな……大方、お前の動きを封じてる間に、別の仲間がどっかで何かしてたんだろうよ」
 ザキが口を挟む。だが彼の言っていることは恐らく正しいのだろう。ベルフェの独白も交えれば、そう考えるのが自然だ。
 それにベルフェがわざわざフィアの足止めに動いたということは、フィアがグリモワールにマークされているということ。それだけフィアは、グリモワールと深くかかわってしまったということになる。
「まあ、ここで暗くなっても仕方ないですよ。フィアさんもフィアさんのやることがあるのでしょうし、まずはそちらに集中するべきです」
 フィアの顔に陰りを感じたのか、レキは努めて明るく振る舞うように言う。
 そしてレキとザキはフィアに背を向け、
「それでは、お気をつけて。ジム戦、頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます。レキさんとザキさんも、その……」
 そこでフィアはレキの言葉を思い返し、少し赤くなりながら、
「お幸せ、に……?」
「おいこら、てめぇ」
 すると、すぐさまザキがフィアに詰め寄った。
「てめぇまさか、俺とあいつが恋仲だとか思ってんじゃねぇのか?」
「え、違うんですか……? でもレキさんは……」
「違うに決まってるだろうが!」
 怒鳴るザキに怯え、声が出せずにいるフィア。レキはそんなザキをなだめるように、彼の肩を軽くつかむ。
「そう怒らずに、ザキさん。もうお義父さんとお義母さんとミキちゃんにも認められていますし、むしろお三方とも勧めているのですよ? これは家族の意志を尊重すべきでは?」
「本人の意思を尊重しろ! 家族の前に当事者だろうが!」
 付き合いきれん、と言わんばかりにザキはレキに背を向けて歩き出してしまった。待ってくださいよ、などと笑いながらレキもそれを追う。
「……まあ、楽しそうだな、あの二人も……」
 ザキは本気で嫌がっていたようだが、とりあえずフィアはそうまとめた。



数日更新してないだけでかなり久々な気がしますね。とりあえず今回はオボロシティの回が終結、バトルに乱入したあいつはザキです。前作から出ているキャラですね。個人的にはそれなりに思い入れのあるキャラです。荒っぽいけれど洞察力もあるザキがベルフェの能力を見抜いていましたが、彼の能力についてはもっと先で語られることになると思います。なにはともあれ、次回は四つ目のジムがあるカゲロウシティです。感じにすれば陽炎ですね。お楽しみに。


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