二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター 七つの星と罪
日時: 2013/07/21 23:48
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 旧二次小説板を覗いた事のある人なら、知ってる人がいるかもしれませんね。以前もポケモンの二次小説を執筆していました。
 前作はゲームのストーリーをモデルにしていましたが、今回はほぼ完全なオリジナルです。前作との繋がりは……ないとは言いませんが、一作目と二作目ほどの繋がりはありません。

 ちなみに白黒は前作、この時期ぐらいに更新が止まっていました。何分この時期は忙しい身でして、しばらく更新は遅いと思いますが、ご了承ください。

 それと、本作品では非公式のポケモンも登場します。>>0にURLを貼っていますので、参考にしてください。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。それは物語を進めていくうちに作中で追々説明しますが、まあ超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 それでは、白黒の新しい物語が始まります——

登場人物紹介
>>31



プロローグ
>>1
序章
>>7 >>10 >>11

シコタン島編
ハルビタウン
>>12 >>13 >>14
シュンセイシティ
>>17 >>18 >>23 >>24 >>29 >>30 >>35
ハルサメタウン
>>37 >>40 >>41 >>42 >>43

クナシル島編
サミダレタウン
>>63 >>73 >>74 >>77 >>80 >>84 >>87 >>88
ライカシティ
>>91 >>92 >>95 >>98 >>99 >>100 >>106
オボロシティ
>>108 >>109 >>110 >>111 >>112 >>115 >>119 >>120 >>123
カゲロウシティ
>>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131 >>133 >>134 >>135 >>136 >>137 >>140 >>143 >>149 >>150
ライウタウン
>>151 >>154 >>155 >>156 >>159 >>162 >>166 >>171 >>172 >>175 >>176 >>177 >>178 >>179 >>180

第62話 scapegoat ( No.159 )
日時: 2013/06/06 21:20
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: 技を縛られるパチリス、高速のエモンガにどこまで食らいつけるのか——!

「エモンガ、エアスラッシュ!」
 またしてもエモンガの放つ空気の刃がパチリスを切り裂く。避けきれないなら技で相殺しても良いのだが、アンコールで帯電しか使えないパチリスにはそれができない。
「まだまだ! 連続でエアスラッシュ!」
「くぅ、パチリス、躱して!」
 エモンガはひたすらエアスラッシュを連射する。パチリスもフィールドを駆けまわって出来る限り攻撃を回避するが、スピードなら圧倒的にエモンガが上。どうしても先回りされて攻撃を受けてしまう。
「悪いな、こっちはエアスラッシュしか有効打がないから、こうでもしないとまともにダメージを与えられないんだ。だけどこれもバトルだから、恨みっこなしだぜ。エモンガ、エアスラッシュだ!」
 再三エアスラッシュが放たれ、パチリスが切り裂かれる。一撃一撃は効果いまひとつなこともありさほどダメージはないが、それでもパチリスの体力はダメージが蓄積し、残り僅かとなっているだろう。
「いつになったら解けるんだ……パチリス、必殺前歯!」
 フィアが指示を飛ばすが、しかしパチリスは困ったような顔で身振り手振りをするだけで、何も起きない。まだアンコールは解けていないようだ。
「エアスラッシュ!」
「だったら……躱して帯電!」
 このままエモンガの攻撃を喰らい続けていてもダメージが溜まるだけ。パチリスはなんとか空気の刃を躱し、体に電気を帯びることで攻撃能力を高める。が、しかし、
「エアスラッシュだ!」
 そこにエモンガの空気の刃が放たれ、パチリスは切り裂かれた。しかも今度は急所を切り裂いたようで、かなりのダメージを受けたように見える。あと一撃でも喰らえば戦闘不能になりかねない。
「もう一押しだ。一気に行くぞエモンガ、エアスラッシュ!」
「躱してパチリス!」
 エモンガが放つ空気の刃を、パチリスは跳躍して回避する。だがそれがいけなかった。
「跳んだな! 決めろエモンガ、エアスラッシュ!」
 空を飛べない限り、空中は生物にとって無防備になる場所。動きが限定され、相手の攻撃を回避することができない状態だ。
 そんな状態のパチリスに、エモンガは空気を固めた刃を飛ばす。
「しまった……!」
 フィアも自分のミスに気付く。このままではエアスラッシュがパチリスを切り裂き、戦闘不能になってしまう。
 一瞬の逡巡の後、フィアは口をつくようにして指示を飛ばしていた。
「一か八かだ……パチリス、種爆弾!」
 アンコール状態のパチリスでは、使用できる技は帯電しかない。しかし、もし仮にアンコールが解けているのなら、他の技も使用できる。
 果たしてパチリスは、どこからか取り出した種子型の爆弾を襲い掛かる空気の刃に投げつけ、相殺した。
「なにっ、もうアンコールが解けたのか!」
 炸裂する種子。帯電でかなり攻撃能力を上げていたため、爆発も大きく、エモンガにもその余波と、相殺されなかった種子が届き、地面に叩き落とされた。
「今だ! パチリス、必殺前歯!」
 地面に降り立ったパチリスは、アンコールが解けて自由になったからか、嬉々とした表情を浮かべている。だがすぐに真剣な目つきへと変貌し、鋭い前歯を剥いてエモンガへと飛びかかった。
 この一撃が決まれば、エモンガは致命傷は免れないだろう。上手く決まれば戦闘不能もあり得る。んにせよこの一撃で、一気に状況はパチリスが優勢になる——と思われたが。
 しかし、

「エモンガ、躱してエアスラッシュ!」

 パチリスがエモンガに飛びかかった瞬間、エモンガは飛び立ち、パチリスの背後に回る。そして素早く空気の刃を飛ばし、パチリスを切り裂いた。
「っ!? パチリス!」
 その一撃で遂にパチリスは体力の限界を迎え、ばたりとその場に倒れ込んでしまう。
 あの必殺前歯が決まっていれば、パチリスの勝ちだったかもしれない。フィアが抱いた期待と余裕が油断を生み、隙を作り出してしまった。ここ一番の重要な場面においての対処は、テイルの方が一枚上手だったようだ。
「危ない危ない、電気エンジンが発動してなきゃ避けられなかったな、あれは」
 だがテイルも内心は焦っていたようで、さっきまでの自信ありげな表情を崩していた。
「……戻って、パチリス」
 フィアはパチリスをボールに戻す。これでフィアの手持ちは残り一体。
(テイル君のエモンガ相手じゃ、スピードではまず勝てない。けど先制技を持つメタングなら対抗できるはずだし、岩雪崩で弱点も突ける)
 そう考えたフィアが掴んだのはメタングの入った。ボールをすぐにそのボールを取り出して構え、メタングを繰り出そうとするが、
「戻れ、エモンガ」
 その時、テイルがボールへとエモンガを戻してしまった。
「上がった素早さを下げるのは勿体ないけど、意外にさっきの種爆弾は痛かった。エモンガも結構ダメージ受けちまってるし、ここは素直に交代させるぜ」
 と言って、テイルも違うボールを握り正面に突き出した。
(……どうしようか)
 ここでフィアは上げかけていた腕を下ろす。
(テイル君のポケモンは電気タイプが中心。三体目のポケモンもそうだと断言は出来ないけど、その可能性は高そうだ。だったらメタングよりもヌマクローか……けどまた浮遊や飛行と複合してる可能性もあるし、それでも電気タイプじゃメタングの攻撃も通りにくい……)
 しばらく迷った後、フィアはボールを取り換え、構え直した。
「じゃあ……頼んだよ、ヌマクロー!」
 フィアが繰り出すのはヌマクローだ。地面と複合しているため、電気タイプには相性が良い。
 しかし、
「相手は残り一体だ。エモンガの出る幕がなくなるくらいに戦おうぜ、ロトム!」
 テイルの最後のポケモンは、なんとロトムだったのだ。
「ロトム……そんな……」
 フィアは以前、ライカシティのジムリーダー、クリのエースであるロトムと戦ったことがある。その時は勝ったが、あの時は素のロトムの強さをあまり実感していなかったし、勝ち方もルール違反スレスレ。バトルにこそ勝ったものの、ロトム自体に勝ったという感じはしていなかった。
 無論、クリのロトムとテイルのロトムが同じ強さだとは思わない。しかしここで重要なのは、ロトムがゴーストタイプであり、特性が浮遊であることだ。
(浮遊を持つポケモンが来ることは覚悟してたけど、まさかゴーストと複合するロトムなんて……これじゃあ、マッドショットだけじゃなくて瓦割りも通じないよ……)
 つまり必然的に、ヌマクローの攻撃技はスプラッシュと水の誓の二つに絞られる。たった二つの技だけでは戦略の幅が縮まるし、攻撃も読まれやすくなってしまう。メタングならシャドークローで弱点を突けるのだが、完全にフィアが選出を誤ってしまった。
「今度はヌマクローか、どうしても俺に電気技を使わせたくないみたいだな」
 そう、ここでテイルが言うように、テイルのロトムにしたってヌマクローへの攻撃手段が絞られているのだ。つまり、状況はほぼ互角。にもかかわらず、フィアは一方的に不利を感じている。だがテイルは逆に、自身に満ちていた。
 性格の問題もあるのだろうが、この辺りがフィアの決定的な弱さの表れだった。
「行くぞロトム、怪しい風!」
 ロトムは妖気を含む突風を放ち、ヌマクローを攻撃する。意外と威力が高い攻撃だ。
「く、うぅ……ヌマクロー、スプラッシュだ!」
 怪しい風を耐え切り、ヌマクローは水流を纏って突っ込む。
「回避! そして怪しい風!」
 だがヌマクローの攻撃は虚しく空振り、そのまま妖気を含む突風の直撃を喰らってしまう。
「もう一度!」
「これ以上はさせない、水の誓!」
 三度ロトムが怪しい風を放とうとするが、ヌマクローが拳を地面に叩きつけ、間欠泉のように水柱を噴射してロトムを攻撃し、中断させる。
「瓦——は効かないから、スプラッシュ!」
 ヌマクローとロトムの距離は近い。本来なら瓦割りを叩き込んでいるところだが、ロトムには通じないためヌマクローは腕に水流を巻きつけて振りかぶる。
「この距離じゃあ流石に避けられないか……だったらこれだ! ロトム、身代わり!」
 直後、ヌマクローの腕がロトムに叩き込まれ、盛大な水飛沫を散らす。直撃なので、喰らえばかなりのダメージになるだろう。

 そう、喰らっていれば、の話だが。

「ロトム、怪しい風!」
 刹那、ヌマクローの背後から妖気を含む突風が吹き、前のめりになっていたヌマクローは態勢を崩して吹っ飛ばされる。
「っ、ヌマクロー!?」
 フィアが慌てて視線を動かすと、そこには悠然とロトムが浮遊していた。ヌマクローの攻撃を受けた形跡は一切見られない。
「何が、起こったの……?」
 その一瞬の出来事に、フィアは疑念と不安を募らせる——



最近、部活が忙しくなり始めて更新が停滞気味です。ご容赦ください。というわけで電気ネズミ対決は、テイルのエモンガが制しました。続く両者の三番手はヌマクローとロトム。今更気づきましたが、フィアって電気タイプに強いポケモンが多いですね。電気吸収のパチリスに、無効のヌマクロー。ブースターも間接的ですが、根性が発動するから麻痺にしにくく電気タイプを出しづらい。そう考えるとテイルの天敵みたいですね、フィアって。ですがかなり追い込まれています。では次回、テイル戦決着です。お楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.160 )
日時: 2013/06/09 00:06
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)

こんばんは。やはり、エモンガはエースと言うだけあって、フィアのパチリスを苦しめましたが、3番手のロトム。身代わりの戦法をいきなり使ってきましたね。これもやはり、強敵になること間違いないでしょう。(自分のオリキャラだろ)

 にしても、xyが発売された後だったら確実にテイルの相棒はエリキテルになっていたな・・・・・・。エリキテルは個人的には気に入ってるんですけどね。後はカロス地方の電気ネズミにも期待したいところです。(オイ)

 こっちはだいぶ更新しましたよ。最近のデュエマは(特に今年に入って)アウトレイジとオラクルという新種族が登場したため、自分としてはかなり注目しています。(こっちの主人公の切り札は青狼の始祖アマテラスだけど。)あのゴッドもさらにパワーアップして復活するらしいです。これからのパックに期待大です。

 それでは、また。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.161 )
日時: 2013/06/08 19:15
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: FLZh3btT)
プロフ: 部活がマジで忙しい、しかも責務が重い……

タクさん


 今回の電気ネズミ同士のバトルは、ひとまずエモンガの勝利です。やはり回復するだけの蓄電と違って、電気エンジンは素早さが上がりますからね。ちなみに次のバトルの予定は今のところないです。
 ロトムもヌマクローにとっては強敵ですね。技が半分通じないわけですから、攻撃を読まれたら終わりです。ヌマクローがどう戦うのかは、次回をお楽しみに。

 白黒も電気・ノーマルという変わった複合タイプのエリキテルは、隙かどうかはさて置き注目しています。XYを買ったら、旅パーティに入れる可能性は高そうです。

 うーむ……やっぱり全然分かんないですね。白黒の知識は四神辺りで止まっていますし。効果の名称も随分と増えて、昔のものがおざなりになっている感がどうも……サバイバーとかウェーブストライカーとか、結構好きだったんですけどね。

第63話 shoot down ( No.162 )
日時: 2013/06/17 23:41
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: 一回戦、フィア対テイル、決着——

「身代わりだよ」
 困惑するフィアに、テイルが呼び掛けるように口を開く。
「身代わり……?」
「そうだ。身代わりは自分の体力の一部を削る代わりに、自身の分身を作り出す技。この身代わりはほとんどの補助技を無効化し、相手の攻撃も本体に変わって受けてくれる優れものだ。ま、ある程度のダメージを受けると壊れるんだけどな」
 つまり今の一合、ロトムはヌマクローのスプラッシュを喰らう寸前に身代わりを発動し、身代わりに攻撃を受けさせた。そしてすぐにヌマクローの背後まで移動し、攻撃を仕掛けた、ということなのだろう。
「さあ、どんどん行くぞ! 怪しい風!」
「っ、スプラッシュ!」
 ロトムがまたも妖気を含む突風を放つ。ヌマクローは全身に水流を纏い、水飛沫を散らしながらロトムへと突っ込む。
 小さいわりに意外と特攻の高いロトムだったが、ヌマクローのスプラッシュを押し返すことは出来ず、そのまま接近を許してしまうも、
「ロトム、身代わり」
 ロトムは自身の身代わりを作り出し、それを盾にヌマクローの一撃を回避する。そして、
「怪しい風だ!」
 今度は側面に移動し、怪しい風を吹かす。
「くっ、水の誓!」
 怪しい風を耐え切り、地面から間欠泉のように水柱を噴出させて反撃を試みるが、
「それはもう喰らわねぇ! ロトム、電撃波だ!」
 四方八方から襲い掛かる水柱を、ロトムは波状の電撃で相殺してしまう。
「続けて怪しい風!」
「スプラッシュ!」
 反撃にロトムは妖気を含む風を放つが、水流を纏ったヌマクローがそれを強引に突破し、ロトムに拳を突き出す。
「身代わり!」
 が、その拳もロトムの身代わりに阻まれ、
「怪しい風だ!」
 すぐさま怪しい風による反撃が飛んでくる。
 ここで流石に、フィアの焦りが表情にも表れ始めた。
(まずい、もうこっちのパターンが読まれてる……!)
 最初にフィアが危惧していたことが起こってしまった。スプラッシュは身代わりで防御され、水の誓は電撃波で相殺される。身代わりを使わせれば体力を削れるものの、恐らくは怪しい風のダメージ量の方が多いだろう。
(それに後ろにはエモンガも控えてる、ここではあまり消耗したくない……)
 だが現実はそう上手くは行かない。ヌマクローの攻撃はロトムに通じず、ただひたすら体力を削られるだけ。
 そんな状況を認識してしまったフィアに、悪魔のような声が囁く。
(……よく考えれば、別に僕はここで無理に勝つ必要はないんだ。部長にこちらの存在を知らせるにしたって、あの人がそんな簡単に寄って来るわけがない。むしろここで早々に敗退して、残り時間を部長を探すことに費やした方がいいんじゃ——)
 ヌマクローが入るべきボールを掴むフィア。
 マイナスになった思考。決着が着く以前から負けを認めることは、トレーナーにとって愚の骨頂。完全なる敗者の姿だった。
 だが、そんなフィアを認めない少女が一人、いた。

「フィアっ!」

 観客席の一角から、幼いが、真剣で必死な少女の声が耳に届く。その声の主を辿り、顔を上げると、
「っ、フロル……!?」
 が、立ち上がって叫んでいた。表情もいつもの抜けた感じはなく、真剣そのもの。凄まじい剣幕で、怒っているようにさえ見えた。
「諦めちゃダメ! ぶちょーさん言ってたよ! わたしも応援してるって! それって、他にも応援する人がいるって意味だよね! それって——その人って、フィアのことだと思う! ぶちょーさんもフィアに会いたいし、頑張ってほしいはずだよ! だから、諦めないで——勝って!」
 叫び過ぎて息も絶え絶えになっているフロル。あまりに唐突であったため、隣に座っていたイオンやルゥナですらぽかんと呆けている。
「なに、あの子? フィアの友達?」
 テイルも疑問符的なものを浮かべながら、首を傾げていた。
 俯いて、乾いた笑みを浮かべているのは、フィアだけ。しかしその笑みは、決して負の感情から来るものではなかった。
「……はは、本当にフロルは部長のことが分かってないなぁ。まあ、まともに面識があるわけじゃないから当たり前だけど。あの人がそんなまともな思考をするわけないのに。そうだ、あの人が僕を素直に応援したり探したりすることはないんだ」
 でも、とフィアは呟く。
「このまま僕が負けて、あの人を探そうとしても、あの人は見つからないんだろうなぁ……定石通り、素直にあの人を探し回っても、あの人が見つかるはずない。それなら、向こうに見つけてもらうしかないよね」
 そこで、バッとフィアは顔を上げる。その表情には、さっきまでの諦めが完全に消え失せている。
「そうだ、どうせ探しても部長がみつかるはずがないんだ。だったら徹底的に目立って、向こうに見つけてもらおうじゃないか。意地でも見つけさせてやる」
 自棄になったと思われるような態度のフィアだったが、対戦相手のテイルや観客席のフロルなど、フィアを少なからず知る者は感じていた。彼に起こった変化に。
(定石を投げ捨てる部長のスタイル……探して見つからないなら、見つけさせる。攻略できない相手なら、その根本から突き崩す!)
 フィアは深呼吸し、ジッとロトムを見据える。テイルはそんなフィアの眼光に、臆するどころか喜ぶような笑みを浮かべていた。
「なんだよなんだよ、なんか楽しくなってきたじゃんか。ビリビリしてきたぜ! ロトム、怪しい風!」
 ロトムも嬉々とした表情で妖気を含む突風を放つ。それに対しヌマクローは、
「水の誓だ!」
 地面から水柱を噴射し、突風をシャットアウトしてしまった。勿論、水柱も散らされるが、ほぼ完全に攻撃を防いでいる。ヌマクローの特性、激流で水技の威力が上がっているのだ。
「ヌマクロー、続けて水の誓!」
 再びフィアは水の誓を指示。それを聞き、テイルとロトムは周囲の地面を警戒し、水柱に備える。しかし水柱はどこからも立たなかった。その時に起こったのは——

 ——怪しい風を防いでいる水柱から一塊の石礫が飛来し、ロトムを地面へと撃ち落としたということだけだった。

「なっ……ロトム!」
 地に落ちたロトムは上手く浮遊できず、何度も地面に落下している。
 その現象に困惑しつつ、テイルは一つの答えに帰結した。フィアもターミナルで検索し、同様の解を知る。
「撃ち落とす……!」
 撃ち落とすとは、岩タイプの物理技で、それほど威力のある技ではない。しかしこの技は、名前通り飛行タイプのポケモンや特性浮遊のポケモンを“撃ち落とす”技。
 つまり——
「ヌマクロー、マッドショット!」
 ヌマクローは口から大量の泥を噴射し、ロトムを押し飛ばした。
 ——特性、浮遊が消えたロトムに、地面技を当てることが出来るようになるのだ。
「瓦割りだ!」
 さらにヌマクローは拳をロトムに叩きつけ、吹っ飛ばす。
 マッドショットがよほど効いたのか、瓦割りが急所に当たったのか、はたまたその両方か、たった二撃でロトムは戦闘不能。テイルの手持ちも残り一体だ。
「ここで撃ち落とすを覚えるとか、おっかなびっくりだ。少しまずいことになったけど、頑張ってくれよ、エモンガ!」
 テイルの最後のポケモンはエモンガ。機動力の高い強敵だが、まだエモンガ戦での傷は癒えていない。それに今のヌマクローなら、エモンガにも有効打が打てる。
「ヌマクロー、撃ち落とす!」
 ヌマクローは一塊の石礫を掴むと、エモンガへと投げつける。
「躱せエモンガ! エアスラッシュだ!」
 だがそこは流石エモンガ。空中を滑るように礫を躱し、そのまま空気の刃を飛ばすが、
「スプラッシュで突っ込むんだ!」
 ヌマクローは襲い掛かる刃などものともせず、水流を纏ってエモンガに飛びかかる。激突こそはしなかったが、エモンガの四肢を完全にホールドした。
「しまっ……エモンガ!」
「撃ち落とす!」
 直後、エモンガが地面へと叩きつけるように撃ち落とされる。エモンガはまた空を飛ぼうとするが、上手く風に乗れず、地を這うように動いている。だがその動きは、鈍足なヌマクローから見ても遅い。
「確実に決めるよ、マッドショット!」
 ヌマクローは空中から泥を噴射してエモンガを攻撃。弱点を突き、大ダメージになるだけでなく、エモンガの素早さも落とせる。地に落ちて機動力が下がったところにさらに素早さを落とされ、エモンガの回避能力はないに等しい。
 そしてヌマクローは落下点をエモンガが這っている位置に定め、拳を振り上げた。その拳には、飛沫を散らす水流が渦巻いている。
「ヌマクロー、スプラッシュ!」
 次の瞬間、ヌマクローの水流を纏った拳がエモンガに振り下ろされる。盛大な水飛沫が散り、しばらく視界が塞がれるが、やがて水滴は全て地に落ちていく。
「エモンガ……!」
 果たしてエモンガは——戦闘不能となっていた。



白黒大復活です! やっと部活にひと段落がつき、更新が再開できます。とはいえ全国行きが決定しているので、またしばらくしたら多忙の日々に逆戻り、更新が停滞すると思いますが。近況報告はこれくらいにして、フィア対テイル、決着です。前にフィアは電気タイプに対して強いからテイルの天敵のよう、と述べましたが、今回でヌマクローが撃ち落とすを覚え、さらにテイルキラー具合に磨きがかかってしまいました。どうしましょ、これ。というか撃ち落とすなんて効果も含めてまともに描写したの初めてです。でも飛行と浮遊を無効にするって、結構汎用性高そうですね。では次回、二回戦です。お楽しみに。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪 ( No.163 )
日時: 2013/06/18 00:31
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: Jagfnb7H)

ポケットモンスターX・Yの新要素や、新タイプの発表にテンションがハイになっている大光です。
まず最初に、ルーメを登場させていただき、ありがとうございます。キャラ崩壊はありませんが、自分が投稿したキャラですが、何だかとっても性別を間違えた感じもします。あっ、でも男なんかにアスモの護衛なんてさせられませんね(笑)
久しぶりの更新のようですが、自分もついこの前まで、新しい3DSのゲームにどっぷりハマってしまって、しばらくここを覗いていませんでした。
テイルのロトムにかなり苦しい戦いを強いられていましたが、撃ち落とすで一気にフィアが優勢になり、そして、そのまま勝利に繋がりましたね。自分はバトルサブウェイで撃ち落とすを岩のジェル持ちのワルビアルに使われ、それが起点になって、バトルに負けたことがあります。
最近、自分も小説を書くことに憧れ、キャラ設定やストーリーを練ってたりしてますが、何だかどっかであったようなものばかり思い浮かんでしまいます。白黒さんは小説を書くときに、何か参考にしていたりするんですか?


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