二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター アルカディアス・デストピア
日時: 2014/01/02 00:09
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 はじめましての方ははじめまして、そうでない方は……お久しぶり? ともあれこんにちは、白黒です。
 遂にやってしまいました、白黒のポケットモンスター四作目、一作目と二作目は繋がっているので、個人的には三作目ですけどね。まだ完結していない作品もあるという中、とんだ暴挙に出てしまいました。
 一応言い訳をしておくと、XYが発売されてポケモン熱が戻ってくれば執筆に励むだろうと思ったのですが案外そうでもなく、そうだったとしてもXYのポケモンを動かしたくなってしまったのです。その上、もう大丈夫ですが、少し前にパソコンがウイルスに感染するという大失敗を犯してしまい、今までちまちま書き溜めていたデータがすべて吹き飛び、意気消沈。今もなんとか少しずつ書いていますが、ショックが大きすぎて『七つの星と罪』は少しお休みな感じです。ちょっと話を大きくしすぎて進めにくくなった、というのもありますけど。

 さて、白黒を知っている方は何度も聞いている言葉ですが、前置きが長くなってしまいました。要するに新作を書き始めました、ってことです。
 今作は初めての片仮名タイトルですね。『アルカディアス・デストピア』、略してA・D、でしょうか。意味は、アルカディアが理想郷、ユートピアという意味で、デストピアがその逆、理性で統制された社会、ですね。内容に触れますと、地方やキャラクターもオリジナルですが、生息ポケモンなどのベースはXYです。なのでメガシンカもありますよ。
 ストーリーの進行はゲームのように地方を旅していく形ですね。ただゲームに準じた一作目、オリジナル要素の強い二作目、トリップっぽくなった三作目と来て、今回はアニメ要素がちょっと強いですかね。白黒にしては、ですけど。

 さてさて、前置きが長いと言ってからも長くなってしまったので、ここいらでやめておきましょう。
 それでは白黒の新しい物語です。どうぞ、お楽しみください——



登場人物一覧
>>68

目次

プロローグ
>>1
テイフタウン編
>>2 >>5 >>8 >>11
カンウシティ編
>>24 >>27 >>40 >>59 >>60 >>66 >>67
ソンサクシティ編
>>72 >>73 >>74 >>80 >>86 >>87 >>88 >>91 >>107 >>110 >>113
バタイシティ編
>>115 >>116 >>117 >>118 >>119 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131

Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.63 )
日時: 2013/12/01 01:46
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

どうも、テスト残り1日を残した、タクです。アカシアの最後の手持ちがスピアーというのは、予測できませんでした。自分はてっきり、ガーメイルが出てくるかと思っていたので。

あと、ジム戦後の日常回。至って平常運転と思いきや、最後に登場した少女の正体が気になりますね。レストと関係のある人物・・・・・・だとは思うのですが。

こっちも久々の更新です。それでは、また。

Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.64 )
日時: 2013/12/01 10:07
名前: つくカイ (ID: K3f42Yhd)

了解しました。

Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.65 )
日時: 2013/12/01 13:07
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

タクさん


 そうですよね。普通はジムリーダーがエースにスピアーなんて使ってくると思いませんよね。これはあとがきでも触れていますが、アカシアの手持ちを蜂系統で統一したかったからです。ちなみに、ポケスペにおけるサカキのスピアーは相当人気が高いようです。関係ないですけど。
 ガーメイル……ああ、そういえばミツハニーの甘い蜜が好物なんでしたっけ。忘れてました。次に出て来る時があれば、使わせてみるのも面白そうですね。

 昔は途中経過をすっ飛ばしてバトル会ばかりを書いていた白黒でしたが、最近はバトルのない回が多くなっています。主に伏線を張る目的で、ですが。伏線張るためだけに一話分使うっていうのもどうなのかと自分でも思いますが。
 この謎の少女に関しては、今はまだノーコメントです。とはいえ、口ぶりから誰と関係があるかはばればれでしょうが……
 

10話 盗難・カンウ森林 ( No.66 )
日時: 2013/12/01 13:30
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 レスト、リコリス、アカシアの三人で囲むお茶会。レストはそのようなものは苦手としていたのだが、アカシアの対応が非常に丁寧かつ親切で、レストも気付けば話が弾んでいた。
 三十分ほど話していただろうか。リコリスがカップに紅茶を注ぎ、甘い蜜の入った壺の蓋を開けると、
「あれ? アカシアさん、もう甘い蜜ないですよ?」
「おや、もう切れてしまいましたか。流石に三人だと早くなくなりますね」
「つーかお前飲みすぎなんだよ。この数十分で何杯飲んでんだ」
「だっておいしいんだもん」
 本日何度目となるのか分からないレストの注意に、リコリスも何度目となるのかわからない台詞で返す。リコリスがおかわりするたびにこのやりとりがあるが、毎回同じ言葉だ。
 そんな二人を微笑ましく見つめながら、アカシアは立ち上がる。
「申し訳ありませんが、少々お待ちください。倉庫から新しいものをお持ちいたします。ああ、倉庫には他にも種類がございますので、よろしければ一緒にいらっしゃいますか?」
「あ、それいいですね! 行く行く、行きます! レスト君は?」
「そうだなあ、俺もポケモンを呼び寄せるっていうのには興味あるし、ちょっと覗いてみるかな」
「では、こちらへ」
 再びアカシアのエスコートで倉庫へと向かうレストとリコリス。
 教会の敷地が広いのか、倉庫は少し遠いところにあった。しばらく歩くと、それらしき建造物が見えてくる。
 しかしその時、一人のシスターが血相変えて倉庫から走ってきた。
「ア、アカシアさん!」
「どうなされました? 何か、トラブルでもありましたか?」
 今にも泣き出しそうなシスターに優しく丁寧で、落ち着いた言葉遣いで接するアカシア。こういうところが女受けするんだろうなあ、とレストは場違いながら考えていた。
 シスターから事情を聴きだしたらしいアカシアは、しかしいつもの柔和な表情はしておらず、少々険しい顔つきをしている。
「……何か、あったんすか?」
「ええ。言うより見る方が早いでしょう。倉庫へ急ぎましょう」
 と言って、アカシアはシスターに軽く耳打ちしてから、すぐそこにある倉庫へと駆ける。レストとリコリスも、それを追った。
「っ、これは……」
 倉庫は開いていた。理由はさっきまでシスターが中にいたからではなく——鍵が壊されていたのだ。
「うわ、何これ……」
 しかも、それだけではない。

 倉庫の中に貯蔵されているはずの甘い蜜が、一つ残らずなくなっていた。

「……物の見事にものけのから、だな」
 倉庫の中には甘い蜜の匂いが充満しているが、それだけだ。甘い蜜そのものはどこにもない。
「鍵は壊されていましたし、どうやら盗まれたようですね。甘い蜜は養蜂を行っている一部の地域でしか採取できないものですから、価値はそれなりにあります。盗難は珍しいことではありません」
「でも、この倉庫いっぱいにある蜜を全部盗むなんて、可能なんですか?」
 リコリスがそう尋ねると、アカシアは首を振る。
「そこが問題ですね。確かにこの倉庫はそれほど広いわけでないですし、在庫も減っていた状態でしたが、それでもここにある甘い蜜をすべて、しかも我々に気づかれずに運び出すのはまず不可能。ありえるとすれば、エスパータイプのポケモンが使用するテレポートなどを用いた方法ですが、それにしても大掛かりになるはずです」
 そろそろレストには理解が追いつかなくなってきたが、要するに甘い蜜が盗まれた、ということだけは理解した。
「って、それってやばいんじゃないんすか? この街の収入源って、この蜜の出荷なんでしょ?」
「いや、そこは大丈夫です。この倉庫に置いてある蜜は異本的に教会の所有物で、出荷するものではありませんから。しかし、放っておくことはできません」
「そうですね。何としても犯人を見つけて、絶対に甘い蜜を取り返さないと!」
「……随分張り切ってんな?」
 やたらと興奮しているリコリスに、レストが何となくそう言うと、
「だって、このままじゃ、ハニーティーをおかわりできないじゃん!」
「お前の行動原理はそこかよ!」



 それから、アカシアはこう言った。
「先ほどのシスターの証言によると、少なくとも三十分前に倉庫を訪れた時には、まだ盗難は発生していなかったようです。となると、犯行時間はそこから今の三十分間。たったそれだけの時間なら、そう遠くには逃げていないと思われます。私は他に盗まれていないものがないかの確認と、各種警察機関への連絡を行いますので、リコリスさん。申し訳ありませんが、あなたは街の方を捜索してくださいませんか?」
 そんな頼みに対しリコリスは、
「オッケーです! でも、ギャラは弾んでくださいよ?」
「承知いたしました。最上級の紅茶と甘い蜜を振舞います」
 そんな契約を交わし、
「そんじゃーレスト君、行くよ!」
「俺も行くのか?」
「当然! 嫌なの?」
「いや、そういうわけじゃないが……」
 レストの腕を引っ張って街へと駆けていくのだった。



「街を探すつっても、どこを探すんだよ。たった二人で走って探すには、この街は広いぞ」
「うーん、そうだなぁ……どうしようか」
 とりあえず教会から出た二人だが、そこで手詰まり。闇雲に探しても見つけるのは難しいだろうし、そもそも犯人の姿も分からないのでは探しようがない。
 そう思いながら頭を悩ませていると、どこからか軽快なポップミュージックが流れる。
「あ、あたしだ。はいもしもし」
 リコリスはポケットから長方形の薄い携帯端末を取り出し、操作してホログラムの画面を虚空に映し出す。
「うおっ!? 何だそれ!?」
 初めてみる科学技術に目を光らせるレストだったが、とりあえずリコリスはそれを無視する。
 端末の画面から放射されているホログラム画面に映っているのは、アカシアだった。
「リコリスさん、シスターからの情報です。入口付近にいたシスターが、ついさっき怪しげな二人組が教会から出るところを目撃したようです。何か大きな袋を抱えていたそうで、甘い蜜を盗んだ犯人と関係があるかもしれません」
「そうですか、分かりました。今教会の入口にいるんですけど、その二人組がどっちに行ったか、分かります?」
「カンウ森林の方へ向かったとのことです」
「カンウ森林ですね。じゃあ、そっちの方に向かってみます」
 そう言って、リコリスは通話を切る。
「レスト君、カンウ森林だって」
「いや、そう言われても俺には分からん」
「ああ、そっか。カンウ森林はリョフの林道を抜け切らずに、途中で脇道に逸れると入れる森林だよ。カンウシティからなら直で入れる。ここからなら、北東に直進すればすぐだよ。そうと決まれば善は急げ、行こっ!」
「お、おう!」
 ダッと走り出すリコリスと、それを追い、並走するレスト。
 すぐに着くとリコリスが言っていたように、カンウ森林にはものの数分で着いてしまった。鬱蒼と木々が生い茂るそこは、身を隠すなら適した場所かもしれない。
 二人は走るのをやめ、やや小走りながらも歩いて森林へと踏み入る。
「……なあリコリス、さっきお前がアカシアさんと話してたあの機械。何だ、あれ?」
「あれ? あれはホロ・ターミナルっていう、この地方の携帯端末だよ」
 リコリスが言うには、ホロ・ターミナルはカロス地方で広く普及しているホロキャスターという装置と、北の方の科学者が発明したターミナルという携帯端末を組み合わせたもので、簡単に言ってしまえばホログラムで画面が表示される携帯端末らしい。
「通話とかメールがメインだけど、設定すればインターネットとかにも接続できるよ。この地方の人なら大抵の人は持ってるものだし、トレーナーなら保証とかサービスとかもあるから、レスト君も買ったら?」
「そうだな。考えておこう」
 と言いつつも、レストの輝いた目つきは買う気満々であった。こんなところで田舎者の臭いがするレストであった。
 そんなことを話していると、森林の奥から話し声が聞こえてきた。



そういうわけでひと騒動、ポケモンではよくある盗難です。ポケモンをよく知る方なら、この先の展開も予想がつくことでしょう。ちなみに作中で出てきたホロ・ターミナルですが、スマートフォンのようなものだと思ってくだされば結構です。それにホログラム画面が追加されたような感じでしょうか。では次回、盗難の犯人が明らかに。お楽しみに。

11話 カオス・セイリュウ ( No.67 )
日時: 2013/12/10 02:13
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「ふぅ……何とか運び終わったな。意外と重いな、これ」
「だがこれがあればポケモンを誘き出せるから、俺たちの戦力もアップだ」
 聞こえてきたのは男の声。数は二人だ。
「でもよ、俺たちがこれを運んでくる必要あったのか? 『四凶』様が事前にほとんど運んでるんだろ?」
「俺に聞くなよ。まあ、あって困るもんでもないし、いいんじゃね?」
 声と共に匂ってくる甘い匂い。さっきのお茶会のものとは少し違うようだが、間違いない。甘い蜜の匂いだ。
「レスト君」
「分かってる」
 甘い蜜を盗んだ犯人はほぼ確定。レストはリコリスと頷き合い、そのまま茂みから飛び出す。
「おいこそ泥ども、観念しやがれ!」
「うわっ、レスト君ってそういう台詞似合うねぇ……」
 いきなりの怒声に、二人の男は飛び上がる。
「な、何だ!?」
「まさか追っ手か!?」
 レストたちを見て狼狽える二人。対してレストは、リコリスにアカシアへ連絡させ、
「おいてめえら、痛い目見たくなかったらそこの蜜置いてとっとと消えろ。こっちはジムリーダーも呼んだ、警察だって来る。逃げられると思うなよ」
「だから本当に不良みたいだよ、レスト君。そういう台詞似合いすぎ……っていうか、消えろって言っといて逃げられると思うなって、どっちなの」
 とりあえずリコリスの突っ込みはスルー。
 そもそもレストは脅しをかけ、男たちを威嚇するつもりだった。しかし、二人が取った行動はレストの予想とは違い、
「くそ、見つかったからにはしょうがねえ」
「ここまで来ておいそれと逃げるわけにもいかねえしな」
 男たちはそれぞれボールを持つ。そして、ポケモンを繰り出してきた。
「やるっきゃねえ! 出て来いズバット!」
「やっちまえ、フシデ!」
 蝙蝠ポケモン、ズバット。
 百足ポケモン、フシデ。
 どちらも毒タイプを持つポケモンだ。
「そうなるのかよ……だったら! フォッコ、ラクライ! 頼んだ!」
 対してレストも、ポケモンを繰り出し応戦する。
「ズバット、翼で打つ!」
「フシデ、虫食い!」
 翼を広げて突っ込むズバットと、歯を剥いて飛び掛かるフシデ。
 しかし、どちらの攻撃もアカシアのポケモンとは比べるべくもない速度だ。レストに見切れないわけもない。
「躱せ! フォッコ、ラクライ!」
 フォッコとラクライはそれぞれ脇に逸れて双方の攻撃を躱す。そして、
「フォッコ、フシデに炎の渦! ラクライはズバットに電撃波!」
 フォッコはフシデを炎の渦に閉じ込め、ラクライはズバットに波状の電撃をぶつけて墜落させる。効果抜群もあり、その一撃でズバットは戦闘不能となった。
「なっ、俺のズバットが……!」
「何やってんだ!」
「しょうがねえだろ! つか、お前のフシデだって動けねえじゃねえか!」
 いがみ合いも始めた男二人。そして片方の男が言うように、フシデは炎の渦に閉じ込められているので、動くことができない。
「決めてやれフォッコ! ニトロチャージ!」
 そしてフォッコが炎を纏って突撃し、フシデも吹っ飛び戦闘不能。
「なっ、ぐっ……」
「やべえ、もうポケモンいねえぞ……」
「さあ観念しろ、こそ泥ども」
 レストはパキポキと指を鳴らしながら、一歩、また一歩と男たちに近づいていく。
 これで男たちはポケモンを失い、もう抵抗はできない——かに思われたが、
「今だ! やれ!」
「っ!?」
 突如、背後から何者かの気配を感じた。振り返れば、そこにはレストが倒した男たちと同じ格好をした男が、卵のようなポケモンを従えて立っていた。
 卵ポケモン、タマタマ。
「タマタマ、玉投げだ!」
 タマタマは白い球体を複数投げつけてくる。コントロールはでたらめだが、数が多い。フォッコやラクライだけでなく、その球体はレストすらも狙っているが、

「ププリン、エコーボイス!」

 投げられた球体は、空気の振動によりすべて明後日の方向へと吹っ飛んで行った。
「まったくレスト君は……不良気取ってばっかいないで、もうちょっと周りも見ようよ」
「リコリス……」
 レストを咎めるのはリコリス。そしてその傍らには、ピンク色の球形に近いポケモンがいた。
 風船ポケモン、ププリン。
 どうやらこのププリンが、タマタマの攻撃を防いだらしい。
「悪い、助かった」
「いいよ別に。どの道この人たちやっつけないと、あたしのハニーティーがないもんね。ププリン、もう一度エコーボイス!」
 ププリンは先ほどと同じように、しかしさっきよりも少し強い声を発してタマタマを攻撃し、動きを止める。
「レスト君、今だよ!」
「ああ! ラクライ、噛みつく! フォッコ、火の粉!」
 そしてラクライが素早くタマタマに接近し、噛みついて放り投げる。直後、フォッコの火の粉が宙を舞うタマタマに直撃し、焼き焦がした。
「お、俺のタマタマまで……」
「何やってんだよ!」
 思いもよらない襲撃に少しヒヤッとしたが、リコリスのお陰でそれも切り抜けられた。
「さあ、今度こそ抵抗はできないよな。観念しな」
 再び指を鳴らしながら男たちに近づいていく。男たちはレストに恐怖しているのか、身を竦ませている。
 一歩、また一歩とレストは近づいていき——その足を止めた。

 いや、止まった、のだ。

「な、何だ……!?」
「レスト君……?」
 体が固まったかのように動かないでいるレストを不審に思うリコリス。その時、向かいの茂みから何者かがゆっくりと姿を現す。
「……そこまで」
 現れたのは、一人の少女だ。袖を切り落とし、深いスリットの入った薄紫色のチャイナドレス。少々色素の薄い青色の髪を、紫色のリボンで一つに結んでいる。
 暗いがどこか神秘的な雰囲気を醸し出す少女は、男たちと、レスト、リコリスを、半開きの目で順番に見遣る。
「だ、誰だ……?」
「…………」
 辛うじて動く口を開いて、レストはそう尋ねる。少女はしばらく口を開かなかったが、
「わたしは、セイリュウ……カオス『凶団』……そして、『四凶一罪』の一人」
 カオス、『凶団』、『四凶一罪』と、聞き覚えのないワードが並び混乱するレストだが、とりあえずこの少女の名前がセイリュウということだけは理解した。
「セ、セイリュウ様!」
「……任務、ご苦労様……もう、帰ってて」
 とセイリュウが言うと、茂みからさらにもう一つの影が出て来る。
 それは、人型ではあるがポケモンだ。緑色の髪の毛のような頭部と、白いスカート状の身体。胸には赤い特徴的な器官が貫通している。
 包容ポケモン、サーナイト。
 サーナイトが何かを念じると、男たちは一瞬にして消えてしまった。
「今のはテレポート……ってことは、君も窃盗に加担してるんだね」
「……それが、任務だから」
 リコリスの言葉に、セイリュウは静かな声で答える。
「……さっきの人たちと、その任務っていう言い方からして、君たちは一つの組織なの? カオスっていうのが、組織の名前?」
「そう……でも、わたしたちは『凶団』」
 口数が少なく、あまりはっきりとものを言わないので、セイリュウからは情報が得にくい。
 リコリスは痺れを切らしてか、ポケットに手を突っ込み、ボールを一つ掴むが、
「……サーナイト、金縛り」
「う……っ!」
 そこで、体が固まったように動かなくなってしまう。どうやらレストが動かなくなったのも、このサーナイトの技によるもののようだ。
「……その甘い蜜は、返す。さようなら……」
 セイリュウは男たちが盗んだ甘い蜜が入っていると思われる袋に視線を向けると、消えてしまった。サーナイトのテレポートで逃げたのだろう。
「っ、逃げられたか……」
 金縛りが解けたレストとリコリス。体は動くが、それは同時にセイリュウたちが遠くまで逃げおおせたということも意味する。
「結局、甘い蜜はほとんど取り返せなかったよ……アカシアさんに何て言おう……」
「だな……とりあえず、ここにある分の蜜だけでも持って帰るか」
「……そうだね」
 そうして、レストとリコリスは少しだけ残った甘い蜜を持って、教会へと帰るのだった。



 ほとんど取り返せなかったとはいえ、一応は甘い蜜を取り返したためアカシアからまたお茶会の誘いがあったが、気が引けたので二人は丁重に断った。
 そして翌日。レストは次の街に向けて旅立とうとするが、
「そういや、リコリスはこの街に用があるとか言ってたな。てことは、ここでお別れか」
「え、あ、うん……」
 旅立つ間際になって、レストは思い出したように言う。
 しかしリコリスは、どこか物寂しげな表情で曖昧に答える。しばらく視線を彷徨わせていたが、やがてレストをまっすぐに見つめる。
「ねぇ、レスト君」
「なんだ?」
 そして、意を決したように、口を開く。

「あたしも、レスト君の旅について行っていいかな?」

「……は?」
 意味が分からないというように呆けるレスト。対してリコリスは、声の調子を上げていく。
「アカシアさんとのバトルを見て思ったけど、レスト君はあたしにない何かがある。あたしはそれが知りたいんだよ」
「な、いや、でもよ……」
「それに、レスト君は全然周り見てないし、ポケモンのコンディションもちゃんとチェックしないし、ホーラ地方のことも知らなすぎだし、放っておけないよ」
 一気に捲し立てるように詰め寄るリコリス。その表情、眼差しは真剣そのものだった。
 レストは、リコリスはもっと能天気だと思っていたが、その真摯な態度を目の当たりにしては、無下にはできない。半ば諦めたように息を吐くと、レストは、
「……まあ、いいか。ついて来るなら好きにしろ」
 くるりとリコリスに背を向け、ぶっきらぼうにそう言う。
「……うんっ、ありがとう!」
 そしてリコリスは、晴れやかな笑顔で、レストの後をついていくのだった。



今回はいろいろありすぎて、文字数が多くなりすぎました。まずは今作での悪の組織、カオスの登場です。今作でも悪の組織は出てきますが、今までと違い、カオスの中にも『凶団』というグループが存在します。これについては、追々明かしていきますね。そしてそのカオスの幹部にあたる少女、セイリュウも登場です。やっと中国っぽい要素が出てきたところで、今回の幹部の名称も特殊ですね。7幹部とか7Pとか七罪人とか、今までは分かりやすい名称でしたが、今回は『四凶一罪』……これは中国神話と、白黒が好きな小説を元にした名称です。まあ、これが何を意味するかも追々明かしていきますので。そして最後にはリコリスが仲間に加わりました。『リコリスが なかまになりたそうに こちらをみている』と言ったところでしょうか。それでは次回、次の街……の途中のダンジョンですね。お楽しみに。


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