二次創作小説(紙ほか)
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- ポケットモンスター アルカディアス・デストピア
- 日時: 2014/01/02 00:09
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
はじめましての方ははじめまして、そうでない方は……お久しぶり? ともあれこんにちは、白黒です。
遂にやってしまいました、白黒のポケットモンスター四作目、一作目と二作目は繋がっているので、個人的には三作目ですけどね。まだ完結していない作品もあるという中、とんだ暴挙に出てしまいました。
一応言い訳をしておくと、XYが発売されてポケモン熱が戻ってくれば執筆に励むだろうと思ったのですが案外そうでもなく、そうだったとしてもXYのポケモンを動かしたくなってしまったのです。その上、もう大丈夫ですが、少し前にパソコンがウイルスに感染するという大失敗を犯してしまい、今までちまちま書き溜めていたデータがすべて吹き飛び、意気消沈。今もなんとか少しずつ書いていますが、ショックが大きすぎて『七つの星と罪』は少しお休みな感じです。ちょっと話を大きくしすぎて進めにくくなった、というのもありますけど。
さて、白黒を知っている方は何度も聞いている言葉ですが、前置きが長くなってしまいました。要するに新作を書き始めました、ってことです。
今作は初めての片仮名タイトルですね。『アルカディアス・デストピア』、略してA・D、でしょうか。意味は、アルカディアが理想郷、ユートピアという意味で、デストピアがその逆、理性で統制された社会、ですね。内容に触れますと、地方やキャラクターもオリジナルですが、生息ポケモンなどのベースはXYです。なのでメガシンカもありますよ。
ストーリーの進行はゲームのように地方を旅していく形ですね。ただゲームに準じた一作目、オリジナル要素の強い二作目、トリップっぽくなった三作目と来て、今回はアニメ要素がちょっと強いですかね。白黒にしては、ですけど。
さてさて、前置きが長いと言ってからも長くなってしまったので、ここいらでやめておきましょう。
それでは白黒の新しい物語です。どうぞ、お楽しみください——
登場人物一覧
>>68
目次
プロローグ
>>1
テイフタウン編
>>2 >>5 >>8 >>11
カンウシティ編
>>24 >>27 >>40 >>59 >>60 >>66 >>67
ソンサクシティ編
>>72 >>73 >>74 >>80 >>86 >>87 >>88 >>91 >>107 >>110 >>113
バタイシティ編
>>115 >>116 >>117 >>118 >>119 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.58 )
- 日時: 2013/11/30 09:01
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
Gさん
ああ、そうですね。最初からそう言えばよかったです。
ともあれ、理解していただけて何よりです。
- 8話 カンウジム終戦・毒槍のスピアー ( No.59 )
- 日時: 2013/12/01 04:58
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「汝に神のご加護があらんことを——スピアー!」
毒蜂ポケモン、スピアー。
アカシアの二番手のポケモンは、またも蜂のようなポケモンだった。ただミツハニーと違い、両腕が突撃槍のような円錐状の毒針なっており、尻にも毒針が生えているなど、攻撃的な容姿をしている。
ミツハニーが蜜蜂なら、スピアーは獰猛な狩り蜂といったところか。
「なんか、さっきと打って変わってやばそうなのが出て来たが……とにかく攻めるぞ。ラクライ、電光石火!」
ラクライは地面を蹴り、凄まじい速度で駆け抜け、スピアーへと特攻をかけるが、
「スピアー、ダブルニードル!」
スピアーは両腕の毒槍を振るう。初撃でラクライの動きを止め、二撃目で突き刺すように地面に叩き落とした。
「ラクライ!」
その攻撃で、ラクライは目を回し、戦闘不能となってしまう。
「なんて攻撃力だ……戻れ、ラクライ」
レストはラクライをボールに戻す。一撃も攻撃できず、レストの手持ちも一体になってしまったが、
「でも、こいつを残して正解だったな。頼んだ、フォッコ!」
レストの二番手はフォッコ。虫と毒タイプのスピアーには有利に戦える。
「フォッコですか、いいポケモンです。しかし、私のスピアーとどこまで戦えますかね。スピアー、毒針!」
スピアーは尻の毒針から、毒素を固めた針を連射する。
「フォッコ、躱して火の粉だ!」
フォッコは毒針を躱すと、カウンターで火の粉を放つ。しかその火の粉も、スピアーに躱されてしまう。
「スピードも速い……こいつは強敵だな。炎の渦!」
「躱して岩砕きです!」
スピアーは下降しながら炎を渦を躱し、槍を構えてフォッコに突っ込む。
「やばっ、躱せフォッコ!」
間一髪、フォッコはその一撃を躱したが、スピアーの一撃でフィールドの一部が抉られた。
「っぶねえ。だが今がチャンスだ、ニトロチャージ!」
フォッコは全身に炎を纏い、高度を下げたせいで狙いやすくなったスピアーへと突っ込むが、
「スピアー、躱してください!」
スピアーは持ち前の機動力でニトロチャージを回避。さらに、フォッコが地面に着地した瞬間を狙い、
「エレキネットです!」
スピアーは尻を倒れたフォッコへと向け、毒針の先端から電気を圧縮した網を放つ。
「な、何だ?」
網はフォッコに絡みつき、身動きを封じてしまう。
「まずいね、エレキネットは攻撃と同時に素早さを下げるから、これでフォッコの機動力は一気に落ちちゃった……」
ただでえさえ素早いスピアー相手に素早さを下げられては、ますます苦しくなってしまう。
「岩砕き!」
スピアーは動けないフォッコに槍を突き刺し、吹っ飛ばす。
「毒針です!」
「くっ、躱して火の粉だ!」
フォッコは転がるように毒針を躱し、火の粉を放つが、スピアーには当たらない。
「くっそ、やっぱ飛んでる相手は厄介だ。飛び攻撃が当たらない……!」
ミツハニーはそこまで動きが機敏ではなかったが、スピアーは違う。しかもエレキネットで素早さを下げられているので、相対的にスピアーが素早くなっている。
「スピアー、エレキネットです!」
「躱して炎の渦!」
スピアーの放つ電気網を避けると、フォッコは渦状の炎を放つ。
「当たりませんよ。スピアー、躱して岩砕きです!」
スピアーは不規則な動きで炎を渦を躱しつつ、フォッコを惑わし接近。そして上空から鋭い槍の一突きを繰り出す。
「っ、避けろフォッコ!」
だが、フォッコの敏捷性も負けていない。痺れる体を必死に動かし、スピアーの一撃を回避する。
「今だ、ひっかく!」
そして鋭い爪を振るい、スピアーをひっかいた。
「やっと一撃、でもダメージは小さいな……」
効果抜群でも何でもないただのひっかくだ。スピアーに有効打を与えたとは言えない。
「ニトロチャージであれば少々危なかったかもしれませんね。ひっかくを選んだのは、隙の小ささからでしょうか?」
「いや、俺の指示ミスです。ニトロチャージは最近覚えたばっかなんで、まだちゃんと覚えきれてなくて……」
なので接近できると、ついつい指示し慣れているひっかくを選んでしまったのだ。
「つーわけで、今度はきっちり決めていくぞ。フォッコ、炎の渦!」
「同じ手が通用するほど、甘いつもりはありません。スピアー、躱して毒針!」
スピアーは再び炎を渦を回避するが、今度は接近せず、遠距離から毒針を射出する。
「くっ、躱せ!」
フォッコもその毒針を躱していくが、エレキネットで素早さが落ちてしまっているので、スピアーに動きを先読みされ、最終的には毒針を食らってしまう。威力こそ低いが、しかし運の悪いことに、
「っ、毒か……!」
フォッコは毒状態になってしまったようで、苦しそうな表情をしている。毒状態になってしまうと、じわじわと体力を削り取られてしまうので、バトルが長引くと不利だ。
「一か八かで賭けてみるか……フォッコ、火の粉だ!」
フォッコは大きく息を吸い、飛んでいるスピアー目掛けて多量の火の粉を吹き付けるが、今までの例を見れば当然その攻撃はスピアーには届かない。そして実際に、スピアーは機敏な動きでそれを回避した。
その直後だ。
「ニトロチャージ!」
フォッコは全身に炎を纏い、その炎を推進力としてスピアーに突っ込む。火の粉を避けて高度を落としたスピアーになら、素早さを下げられても十分届く。これが当たれば、戦況をこちらに傾けることだって可能だ。
当たれば、の話だが。
「これは避けきれない可能性もありますね……ならば」
スピアーは突っ込んでくるフォッコに対し、避けようとはせず、むしろ両方の槍を引いて独特の構えを取った。
そして、
「ダブルニードルです!」
その二つの毒槍を、同時に突き出す。
フォッコのニトロチャージとスピアーのダブルニードルが激しくぶつかり合い、火花を散らす。
ほぼ一瞬だが異様に長く感じられた鍔迫り合いの後、フォッコが突き飛ばされた。
「フォッコ!」
フォッコはゴロゴロと地面を転がり、全身は傷だらけ。毒のダメージもあり、体力は相当削られているはずだ。
「くそっ、まさかあのニトロチャージで押し負けるなんて……!」
ニトロチャージは今のフォッコの技の中では、威力と突破力に優れ、一番強い。それが押し返されてしまったということは、もうフォッコは力技ではスピアーを突破することは不可能だということを意味していた。
しかし勿論、攻撃を押し返したスピアーの方にも、押し返せた理由がある。
「……流石アカシアさんだ。さっきの攻撃のぶつかり合い、タイプ相性ならフォッコの方が有利で、フォッコが勝ってたはずなのに、それをダブルニードルを同時に繰り出すことで威力を一撃に集約して押し勝っちゃうなんて」
リコリスは観客席でひとり呟く。
アカシアとしては、今のニトロチャージを確実に避ける保証がなかったが故の行動で、純粋にポケモンの攻撃力だけを見ればスピアーの方が攻撃力が高かいからこそできた芸当だが。
なんにせよフォッコはもう満身創痍、あと一撃でも喰らえば戦闘不能になってしまうだろう。そうでなくても、スピアーはフォッコの攻撃を避け続けるだけで、フォッコを毒のダメージで倒すことができる。
「しかし、ここはこちらの攻撃で終わらせるのがジムリーダーというものでしょう。久しぶりの強敵でしたが、これで戦いの幕を下ろしましょう——」
そこでアカシアは一拍置き、少しだけ目つきを鋭くする。
「——スピアー、ダブルニードル!」
スピアーは両手の毒槍を構えてフォッコに突撃する。体力が限界に近いフォッコではこの攻撃を避けることは困難だ。よしんば回避できたとしても、すぐに毒のダメージでやられてしまう。
絶体絶命の危機。まさに絶望的な状況である、が、
「……ここで諦めずに立ち向かうのが、トレーナーだよな」
俯いて、ぼそりとレストは呟く。同時に思うのは、トイロに負けた時のこと。何も分かっていなかった時、トイロに惨敗したあの時のことだ。
「こんなところで躓いてたら、いつまで経ってもあいつには勝てねえ。だから……負けてなんか、いられるかよ!」
バッと顔を上げると、レストは叫ぶように満身創痍のフォッコに指示を飛ばす。
「炎の渦だ!」
フォッコは渦状の炎を放つ。真正面から突っ込んでくるスピアーには、この上なく有効な技だが、
「しかし、私のスピアーなら避けられます。スピアー、回避——」
と、そこで、アカシアは絶句する。
確かにスピアーの機動力があれば、ただの炎の渦を避けることは可能だろう。
ただの炎の渦なら。
「これは……」
フォッコの放つ炎の渦は、今まで放ってきたそれよりも格段に大きく、そして轟々と燃え盛っていた。
「っ、しまった……猛火の特性ですか……!」
そう、これはフォッコの特性、猛火によるものだ。
ポケモンの体力が減り、危機に陥ると炎技の威力が強化される特性で、度重なる攻撃と毒によるダメージの蓄積で、フォッコの体力は限界だ。だがその状態なら当然、猛火も発動する。
「これは、避け切れない……!」
スピアーはその巨大な渦を避けきれずに飲み込まれてしまう。スピアーの機動性があっても、この炎の渦は避けきれない。
そしてここでスピアーが炎の渦に閉じ込められてしまったということは、スピアーは機動力を失ったことと同義だ。つまりエレキネットでフォッコの素早さを下げたことも無意味となり、恰好の的となってしまった。
「いいぞフォッコ、最高だ」
炎の渦から零れ落ちる火の粉を浴びながら、レストは呼びかけるようにして言う。そしてすぐさま、鋭い声と視線を放つ。
「これで決めるぞ! フォッコ、ニトロチャージ!」
地面を蹴り、フォッコは猛々しい炎をその身に纏う。その炎を推進力にどんどん加速していき、炎の渦に閉じ込められたスピアーへと特攻。渦状になった炎の中心を駆け抜けていき——スピアーを、突き飛ばした。
「スピアー!」
炎の渦を突き抜けたスピアーはぷすぷすと黒い煙を上げながら吹っ飛んでいき、芝生の地面へと墜落。その様は、見るまでもなく戦闘不能だった。
「参りました……私としたことが、フォッコの特性を見落としてしまうとは。まだまだ私も、精進が足りませんね」
スピアーをボールに戻すと、アカシアは近くのテーブルに置いてあった小箱を手に取り、レストの元へと歩み寄る。
「生きとし生けるものに与えられる神の恩恵は平等です。ゆえに、あなたが私に勝利したのは紛れもないあなた自身の力。これからもあなたに神のご加護があらんことを祈り、私に打ち勝った証として、これを授けましょう」
アカシアが小箱から取り出したのは、正六角柱を隙間なく並べてできた正六角柱で、黄金色に輝く蜂の巣のようなバッジ。
「カンウシティジム制覇の証、ハニカムバッジです。どうぞ、お受け取りください」
「……はい! ありがとうございます!」
初めて手にするバッジに感動を覚えながら、レストはそれを受け取る。
かくして、レストは初めてのジム戦に勝利し、一個目のバッジを手に入れたのだった。
「…………」
観客席にいたリコリスは、レストがジムバッジを受け取っている時も、ボーっと彼を眺めていた。
「……すごい、面白いなぁ……」
そしてうわ言のように呟く。ジッとレストを見つめながら、無意識のうちに、口をつくようにして、声を漏らす。
「あたしの求める何かがあるのかも……もしかしたら何か変わる、かな……?」
というわけでカンウシティジム、これにて終結です。アカシアのエースは誰が予想したでしょう、スピアーです。個人的にはわりとスピアーのデザインは好きなんですよね。XYだと種族値の補正も受けていますし。実用性はまだまだですが。ちなみにハニカムバッジのハニカムとは、英語で蜂の巣という意味です。もうお分かりかもしれませんが、アカシアが今まで使用していたのもすべて蜂です。つまりはそういうことです。さて次回ですが、特に決めていません。ただカンウシティでひと騒動起こそうかとは思っていますが。それでは、次回もお楽しみに。
- 9話 お茶会・甘い蜜 ( No.60 )
- 日時: 2013/11/30 14:01
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
レストがバッジを受け取ると、観戦していたリコリスがパタパタと走り寄ってくる。
「レスト君、やったね!」
「おう」
リコリスがハイタッチを求めてきたので、レストも軽く手を上げ、リコリスの小さな掌を叩く。
「まさかアカシアさんに勝っちゃうなんて。アカシアさんのスピアーはすごい強いからね、飛行タイプのポケモンがいないと勝ち目薄いし、正直あたしはレスト君が勝つとは思わなかったよ」
「ひでえ言い様だな。だけど、きっちり勝ってやったぜ」
先ほど受け取ったばかりのハニカムバッジを、リコリスに見せつけるように掲げるレスト。リコリスも屈託なく笑っていた。
「お取込み中のところ失礼ですが、お二方。この後、お時間はありますか?」
レストとリコリスの間に、アカシアがそっと入ってくる。
「時間? 別に何もないっすけど……」
「でしたら、この中庭でお茶でもいかがでしょうか? リコリスさんは、元よりそちらがご目当てのようですし」
「あっちゃー……ばれてました?」
「あなたがここに来る理由は、それしかありませんからね」
悪戯がばれた子供みたいに笑うリコリスと、それを温かく見守るように微笑むアカシア。やはりこの二人は、以前から何かしらの交流があったようだ。
「つーかおい、リコリス。お前、茶を飲むためにここに来たのかよ。そんな理由で俺は急かされて慌ててジム戦に挑むことになったのかよ。あぁ?」
「ちょっ、レスト君、田舎の不良みたいにすごまないでよ。ただでさえ君は強面なんだから……」
「悪かったな人相悪くて」
「いいじゃん別に。この街のお茶はすごくおいしくて有名なんだよ? 飲まなきゃ絶対損だよ。だからさ、ね?」
上目遣いで小首を傾げるリコリス。その動作に一瞬ドキッとするが、すぐに、これは狙ってやっているのでは? と思い直す。そしてどうしたものかと少し考えた結果、
「……まあ、いいか。茶くらい」
レストも興味がないわけではなかったので、最終的には承認したのだった。
「どうぞ」
待つこと十数分。アカシアは運んできたティーセットで紅茶らしきものを淹れると、レストとリコリスにそれぞれ出す。
「見た感じ、普通の紅茶に見えるが……」
「このままだとね。アカシアさん」
「はい、ただいま」
完全に給仕と化したアカシアは、白い壺のような物を取り出し、リコリスの傍へと寄せ、蓋を開ける。中に入っていたのは、光を反射して黄金色に光る、水あめ状の液体だった。
「何だこれ? 蜜……?」
「ええ。これはカンウシティの養蜂場で作られた甘い蜜です」
要するに蜂蜜だ。リコリスはそれを匙ですくうと、自分のカップの中に注ぎ込んだ。
「え? 入れるのか?」
「そだよ。これが甘くておいしいんだよねー……カンウシティに来たなら、甘い蜜のハニーティーを飲まなきゃ」
リコリスは幸せそうにその甘ったるそうな紅茶を飲んでいた。レストは若干引き気味にその様子を見ながら、鼻孔をひくつかせる。
「……この蜜、さっきのミツハニーの甘い香りと似た匂いがするんすけど」
「この蜜はミツハニーを利用して作られる蜜ですからね。ただ、私のミツハニーは養蜂のための個体ではないので、食用にはあまり適しませんが」
アカシアの説明を聞きながら、渋い顔で壺の中身を見つめるレスト。彼は恐る恐る匙で蜜をすくい、自分のカップに注ぎ入れ、軽く口をつける。
「う……」
口の中いっぱいに広がる甘ったるい味と香り。思わずレストは顔をしかめた。
「ダメだ、飲めん」
「え? どうして? こんなにおいしいのに」
「俺は甘いのダメなんだよ」
普通に市販されているような砂糖なら問題ないが、それ以上甘くなるとアウトだ。気分が悪くなってくる。
「おや、口に合いませんでしたか。これは申し訳ありませんでした。では……こちらはどうでしょう? そちらのものよりも甘さを控えた蜜です」
そう言ってアカシアが出したのは、また別の壺だった。さっきの甘い蜜よりも控えめな香りが漂っている。
レストは無言で壺を開け、蜜をすくってカップに入れる。そして軽く口をつけ、
「……美味い」
ほどよい甘さが口の中に広がる。甘いが気分が悪くなることはなく、むしろいつまでも飲みたくなるような、癖になる甘さだ。
「そちらはまた別種のミツハニーを用いた甘い蜜です。糖分を抑えているので、男性の方が特に好まれますね。ちなみに、これらの甘い蜜は野生のポケモンを引き寄せる作用もあり、そういった成分を凝縮した、ポケモンを誘い出すための甘い蜜もありますよ。これは主にポケモントレーナーの方が購入しますね」
「そうすか……つーかアカシアさん、教会の牧師っていうわりには何か詳しいですね。ジムリーダーってそんなもんなんすか?」
紅茶を啜りながら、レストはなんとなく思ったことを尋ねてみる。
「そうですね。私はジムリーダーであり、牧師であり、この街の産業や商業、観光事業などにも携わっていますので」
「うわ……何足草鞋はいてんすか。凄いっすね」
「私もこの街のジムリーダーを任されている身ですから、この街のためになることなら力を尽くしますよ。町興しも、ジムリーダーの仕事の一つですからね」
さらりと言うアカシアだが、実際そこまでするジムリーダーは何人いるのだろうかと思うレストだった。
「あ、アカシアさん。あたしにもそっちの甘い蜜ください」
「お前、また飲むのかよ。さっきも自分で何杯か注いでなかったか?」
「だっておいしいんだもん。レスト君もせっかくホーラ地方に来たんだし、もっと楽しんだら?」
リコリスはカップに紅茶を注ぎながら、レストが入れた甘い蜜の壺を寄せる。
「おや? レストさんは、この地方の方ではありませんでしたか」
「はい。別地方の地方から、昨日着いたばかりです」
「そうでしたか。では後学のために、差し障りがなければ、どのような場所から来たのか、尋ねてもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。俺が住んでたのは、かなり田舎町なんすけど——」
そんなこんなで、レスト、リコリス、アカシアの三人は、一つのテーブルを囲んでのお茶会を始めたのだった。
ここは某地方の某町。自然が美しい山々に囲まれた小さな町。小さな鳥ポケモンのさえずりが静かに響き渡る、のどかな町。
「はあぁぁぁぁぁぁ!?」
そんな町の一角で、町全体に聞こえるのではないかと思うくらいの大声が響き渡った。
「い、今、何ていった!?」
「だから、引っ越したって。聞いてなかったの?」
「聞いてないわよ!」
町の一角にある小さな家の中には、一人の少女と、その少女の母親と思しき女性がいた。女性は落ち着いているが、少女は酷く興奮している。
「引っ越したって、どこ、どこに!?」
「何ていったかしら。ホーラ地方? テイフタウン? 忘れたけど、そんな感じの場所よ」
女性がさらりと言うと、少女はますますヒートアップしていき、地団太を踏む。
「あいつぅ、私に何も言わないで出て行くなんて……信じられない!」
「まぁ確かに不自然ねぇ。でも、あの子にも色々あるんじゃない?」
適当に返す女性。そんな態度を取られても、既に怒りが上限まで達している少女はこれ以上激怒することはなく、また怒りの矛先も別方向を向いている。
「何なのよもう! 引っ越すなら引っ越すで私に一言くらいあってもいいじゃない! ……決めた」
床が抜けてしまいそうなほど踏みつけると、少女はバッを顔を上げる。
「ママ、ホーラ地方ってどこ?」
「さぁ? 確かあっちの引き出しに、パパが買ってきた全国の地図があった気が——」
少女は女性の言葉を最後まで聞かずに、引き出しのケース一つを丸ごと抱えて自室へと駆け込む。
「待ってなさいよ、私を放って勝手にどっか行った罪は重いんだから……!」
少女は地図を広げ、同時に鞄やら服やらも引っ張り出し、ここから一番近い空港も調べ始める。
その様子はまるで、これから旅に出るようであった。
ジム戦後、なんとなく書いてみた日常回です。そういえば前回言い忘れていましたが、今作のジムバッジは扁平ではなく、XY準拠でやや立体的です。まあ六角柱とか説明されているんで、分かる人は分かったかなと思いますが。ちなみにアカシアの名前の由来は、マメ科ハリエンジュ属の落葉高木で、上質な蜂蜜が採取できる蜜源植物としてよく利用されているニセアカシアです。蜜源植物、つまりは養蜂で蜂が運んでくる蜜を分泌する植物ですね。このようにアカシアは、名前から手持ちからバッジからなにから、蜂に関する設定が満載です。それと今回は後半で謎の少女の登場です。この少女は何者なのか、これから何をするのか……それは今後のお楽しみですね。では次回、今度こそひと騒動起こす予定です。一応、この回もただの日常回だけで終わらせるつもりはありません。では次回もお楽しみに。
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.61 )
- 日時: 2013/11/30 18:38
- 名前: つくカイ (ID: K3f42Yhd)
こんにちは、つくカイです。
オリキャラが出来終わったので投稿します。
募集条件はクリアしているはずです。確認、お願いします。
オリキャラ用紙
名前:アッシュ
年齢:13歳
性別:男
性格:優しく紳士的で温厚だがかなりの天然。ちゃんとマナーもしっかりして、頼られる兄貴肌もあるが、苦労症(周りの人間が大抵、変わっているから)。
容姿:赤毛の髪をポニーテールにした、オレンジ色の目の、見た目は13歳ほどの少女。余程のことがない限り少年だと思われないため、コート又はタンクトップとシークレットブーツを重宝している
備考:実はとある組織の一員だった。昔は相当無茶をしていたよう……。そのリバウンドで背が伸び悩んでいると本人は言っている。運動能力はかなり高い。別名、始まりのA(アッシュ)。
手持ちポケモン(三体程度で、名前、技、特性、性別は必須。戦術や性格などはご自由に)
ミツハニー♀/みつあつめ
(むしのきざめき、あまいかおり、はねやすめ)
たまごから生まれたポケモン。アッシュにとても似ており温厚で天然。
ガバイト♂/すながくれ
(ドラゴンクロー、あなをほる、かみくだく、りゅうのいかり)
スピードが高い一匹。アッシュの主戦力で、中々強い。冷静で戦い以外は無頓着だがミツハニーは妹のように可愛がっている。
ハッサム♂/ライトメタル
(バレットパンチ、かげぶんしん、はねやすめ、とんぼがえり)
見た目よりかも感情の起伏が激しく、天然なアッシュに心の中でツッコミを入れることもしばしば。バトルではかげぶんしんを用いたテクニカルなバトルを得意とする。
サンボイ(最低三つ。キャラの口調が分かるようにお願いします)
「始めまして◯◯さん。僕はアッシュって言います」
「……ぼく……男です(泣)」
「さあ、始めましょう!……ポケモンバトルを!」
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.62 )
- 日時: 2013/11/30 23:51
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
つくカイさん
再投稿ありがとうございます。見たところ、不備はなさそうです。
しかし採用するにしても、本作品ではポケモン同士の絡みがほぼないので、生かしにくい設定が多々あるということだけ言っておきます。
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