二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスター アルカディアス・デストピア
- 日時: 2014/01/02 00:09
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
はじめましての方ははじめまして、そうでない方は……お久しぶり? ともあれこんにちは、白黒です。
遂にやってしまいました、白黒のポケットモンスター四作目、一作目と二作目は繋がっているので、個人的には三作目ですけどね。まだ完結していない作品もあるという中、とんだ暴挙に出てしまいました。
一応言い訳をしておくと、XYが発売されてポケモン熱が戻ってくれば執筆に励むだろうと思ったのですが案外そうでもなく、そうだったとしてもXYのポケモンを動かしたくなってしまったのです。その上、もう大丈夫ですが、少し前にパソコンがウイルスに感染するという大失敗を犯してしまい、今までちまちま書き溜めていたデータがすべて吹き飛び、意気消沈。今もなんとか少しずつ書いていますが、ショックが大きすぎて『七つの星と罪』は少しお休みな感じです。ちょっと話を大きくしすぎて進めにくくなった、というのもありますけど。
さて、白黒を知っている方は何度も聞いている言葉ですが、前置きが長くなってしまいました。要するに新作を書き始めました、ってことです。
今作は初めての片仮名タイトルですね。『アルカディアス・デストピア』、略してA・D、でしょうか。意味は、アルカディアが理想郷、ユートピアという意味で、デストピアがその逆、理性で統制された社会、ですね。内容に触れますと、地方やキャラクターもオリジナルですが、生息ポケモンなどのベースはXYです。なのでメガシンカもありますよ。
ストーリーの進行はゲームのように地方を旅していく形ですね。ただゲームに準じた一作目、オリジナル要素の強い二作目、トリップっぽくなった三作目と来て、今回はアニメ要素がちょっと強いですかね。白黒にしては、ですけど。
さてさて、前置きが長いと言ってからも長くなってしまったので、ここいらでやめておきましょう。
それでは白黒の新しい物語です。どうぞ、お楽しみください——
登場人物一覧
>>68
目次
プロローグ
>>1
テイフタウン編
>>2 >>5 >>8 >>11
カンウシティ編
>>24 >>27 >>40 >>59 >>60 >>66 >>67
ソンサクシティ編
>>72 >>73 >>74 >>80 >>86 >>87 >>88 >>91 >>107 >>110 >>113
バタイシティ編
>>115 >>116 >>117 >>118 >>119 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131
- 18話 ジム戦2・vsシナモン ( No.88 )
- 日時: 2013/12/06 20:46
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「でてきて、バニプッチ」
シナモンの一番手は、白いアイスクリームのような姿をしたポケモンだ。
新雪ポケモン、バニプッチ
「氷タイプだけか……だったら初っ端から行くぞ、フォッコ!」
対するレストは、炎タイプのフォッコで応戦。相性の上では有利だ。
「先手必勝だ。フォッコ、火の粉!」
最初に動いたのはフォッコだ。フォッコは大きく息を吸い込み、多量の火の粉を放つ。
「かわして」
しかし直線的な攻撃なので、バニプッチに簡単に躱されてしまう。
そして、
「バニプッチ、霰」
バニプッチはフィールド中央の上部に向かって、大量の冷気を放つ。冷気は周囲の塵や埃を核として膨張し、雲となる。そしてその雲は空気中の水分を取り込んで小さな氷晶を降らせた。
「な、何だ……?」
レストは降ってくる氷の粒に目を細めながら呟く。見れば、フォッコも少々顔をしかめている。
「霰はね、その名のとおり霰をふらせて天気をかえる技なの。霰状態だと氷タイプじゃないポケモンはちょっとずつダメージを受けちゃうから、きをつけて」
「気をつけてって……」
とてもジムリーダーの台詞とは思えないが、しかし微量でもダメージを受けるのならば、用心しなければならない。
「ならさっさと決めるぞ。フォッコ、ニトロチャージ!」
「バニプッチ、凍える風」
フォッコは全身に炎を纏ってバニプッチへと突っ込むが、バニプッチも凍てつく風を吹き付ける。
凍える風はニトロチャージを止めることはできないが、霰と共にフォッコを包む炎の勢いを削ぎ落とすことはできる。なので、フォッコがバニプッチに接近した頃には、もう炎はほとんど残っていなかった。
「ミラーショット」
そのタイミングを見計らい、バニプッチは自身に当たる光を凝縮して反射し、フォッコへとぶつける。効果はいまひとつだが、真正面から喰らったのでフォッコも体勢を崩してしまう。
さらに、
「そこ。バニプッチ、水の波動」
バニプッチは水を圧縮した波動を撃ち出す。
「っ! 避けろフォッコ!」
フォッコは地面を転がるように移動し、紙一重で水の波動を躱した。
「危ねえ……水技を持ってたのか」
さっきは何とか躱せたが、もしも直撃でも喰らおうものなら致命傷は免れなかっただろう。
流石はジムリーダー、苦手なタイプへの対応はきっちりしている。
「さて、水技があるなら、フォッコじゃきついか。ミラーショットで命中率も下げられてるし」
加えて霰のダメージもある。天候は永久にこのままではないので、時間を稼げばやがて消えるはずだ。
「フォッコ、一旦戻れ」
このままフォッコで戦い続けるのは危険だと判断し、レストはフォッコをボールに戻す。そして代わりに、次のポケモンを繰り出した。
「氷タイプへの有効打を持ってるのは、なにもフォッコだけじゃない。行け、コジョフー!」
レストが交代で繰り出すのは、黄色い体毛のオコジョのようなポケモン。
武術ポケモン、コジョフー。
レストがソンサク洞で捕まえたポケモンだ。実戦経験は皆無に等しいが、格闘タイプで氷タイプに弱点を突ける。
「コジョフー、猫騙し!」
まずコジョフーは一瞬でバニプッチに接近すると、バニプッチの目の前で勢いよく柏手を打つ。
「続けて発勁!」
猫騙しで怯んだバニプッチに、コジョフーは間髪入れず掌底を叩き込み、吹っ飛ばす。効果抜群なので、ダメージは大きいだろう。
「わわっ、バニプッチ……」
バニプッチはゆっくりと浮かび上がってきた。ダメージは通っているようだが、バニプッチの体が少しおかしい。
「ダメージが……回復しているのか?」
コジョフーから受けた傷が、少しずつだが癒えている。
「うん。バニプッチの特性はアイスボディ、霰状態のとき、ちょっとずつ体力を回復できる特性なの」
「マジか……」
苦い顔をするレスト。これではバニプッチはダメージが蓄積しづらく、倒しにくくなってしまう。
「だったら、回復が追いつく前に決める! コジョフー、発勁!」
「バニプッチ、凍える風」
コジョフーはバニプッチ目掛けて一直線に駆け、バニプッチは迎撃すべく凍てつく風を放つが、
「躱せ! はたき落とす!」
コジョフーは跳躍し、バニプッチの脳天に平手を振り下ろして地面へと叩き落とした。
「まだまだ、スピードスター!」
さらに無数の星形のエネルギー波を放ち追撃をかける。
「水の波動……!」
バニプッチも負けじと水の波動で反撃するが、素早いコジョフーを捕えられない。
「もう一発、スピードスター!」
「凍える風」
再び星を放つコジョフーに、バニプッチは凍てつく風を吹き付ける。流石に威力はバニプッチの方が高く、凍える風がコジョフーへと襲い掛かった。
「っ、躱して発勁だ!」
しかしコジョフーは自慢のフットワークで凍える風を躱すと、バニプッチに接近して打ち上げるように掌底を叩き込み、
「はたき落とす!」
すぐさま跳躍して、今度は地面に叩き落とす。流れるような連続攻撃で、バニプッチへのダメージも大きいだろう。
「一気に攻めるぞ。コジョフー、発勁!」
コジョフーは身を引かず、落下の勢いも合わせて地に落ちたバニプッチに向けて掌底を放つ。しかし、
「バニプッチ、凍える風」
バニプッチは反撃に凍える風を放ち、コジョフーを攻撃。コジョフーは止まりこそしなかったが、掌底の勢いを殺がれてしまい、バニプッチへのダメージは大きくない。さらに凍える風の追加効果で、素早さも落ちてしまった。
「バニプッチ、ミラーショット」
「躱して発勁!」
バニプッチは光を反射して光弾を放つ。コジョフーはそれを避けつつバニプッチに接近するが、
「凍える風」
攻撃まで一歩届かず、至近距離からの凍える風を喰らってしまう。
「水の波動」
「っ、躱せ!」
コジョフーは水の波動を避けようとするが、素早さが落ちてしまたっため、躱しきれない。
「バニプッチ、ミラーショット」
続けてバニプッチは光弾を発射。動きの鈍ったコジョフーではこの連続攻撃は避けきれず、光弾の直撃を受けて吹っ飛ばされた。
地面にたたきつけられたコジョフーは目を回しており、戦闘不能だ。
「くっ、戻れコジョフー」
レストは悔しげにコジョフーを戻す。
「先勝はできなかったか……だが、コジョフーの与えたダメージも大きいはず。頼んだ、フォッコ!」
そしてレストは、再びフォッコを繰り出す。霰で受けた少量のダメージは、もう回復している。
「うぅ、そろそろさむくなってきたし、はやくこたつにはいりたいなぁ……バニプッチ、水の波動」
寒いならこんな技使うなと言いたいが、それはさておき。
「フォッコ、躱して炎の渦だ!」
バニプッチの水の波動を回避し、フォッコは炎の渦を放ってバニプッチを束縛する。
「あ……バニプッチ」
バニプッチは動きを制限され、さらに炎の渦によるダメージで一時的だがアイスボディでの回復もできなくなる。
「ニトロチャージ!」
そこで、フォッコは炎を纏って突貫。上手く決まればこれでバニプッチを倒せるかもしれない。そうでなくても、当たれば素早さが上がる。
「それは、ちょっと、ダメ……バニプッチ、凍える風」
バニプッチは炎の渦に捕まりながらも凍てつく風を放ち、フォッコの炎を削いでいく。そしてまたしても、フォッコがバニプッチの目の前まで来る頃には、炎は消え去っていた。
だが、レストも同じ轍は踏まない。
「バニプッチ、水の——」
「させるか! フォッコ、ひっかく!」
フォッコは爪を振り下ろしてバニプッチをひっかき、水の波動を止める。そして、
「火の粉だ!」
すぐさま息を吸い、その大きく吸った空気と共に大量の火の粉を放ち、バニプッチに吹き付けた。
「わわっ、バニプッチ……!」
この不意打ちはシナモンも想定外だったようで、バニプッチは対応できずに火の粉の直撃を至近距離から喰らってしまう。
コジョフーからも効果抜群の攻撃を幾度と受け、体力がかなり減らされていたバニプッチは、その攻撃で戦闘不能となってしまった。
「うぅ、ありがとうバニプッチ。もどってやすんで」
シナモンはぷるぷると震えながら、バニプッチをボールに戻す。これで残るポケモンはお互い一体だ。
「どうしよう、もうあと一体になっちゃったよぅ……」
「大丈夫か、この人……?」
最初はまだジムリーダー然とした態度のシナモンだったが、ここに来て弱気を見せ始める。その挙動に、レストは不安を感じる。
「でも……私、ジムリーダーだもん。まだ負けないよ」
だが、勇気を振り絞るようにきゅっとボールを握り締めると、力強い瞳でレストを見据える。
「私の最後のポケモン……おねがい、でてきて——」
そして、霰が吹き荒ぶ中、シナモンの最後のポケモンが姿を現した。
そんなわけでレスト二回目のジム戦、相手は氷タイプ使いのシナモンです。今回レストはコジョフーを使っていますが、先に言っておきます。このコジョフーはレストの主力ではなく、単に相性が良いから持ってきただけのポケモンです。このようにレストは今までの主人公と違い、主力以外のポケモンもジム戦では使います。それでは次回、シナモンのエース登場で、ソンサクジム戦も終結です。お楽しみに。
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.89 )
- 日時: 2013/12/06 20:53
- 名前: ミュゼ (ID: .SXp3Aa2)
修正しておきました!
変なところがあれば言ってください。
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.90 )
- 日時: 2013/12/07 14:11
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ミュゼさん
了解です。後程確認しておきます。
- 19話 ソンサクジム終戦・雪隠のユキメノコ ( No.91 )
- 日時: 2013/12/07 16:01
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「でてきて——ユキメノコ」
シナモンの最後のポケモンは、白い振袖を纏った雪女のような姿をしていた。
雪国ポケモン、ユキメノコ。
「氷とゴーストタイプ、なら大丈夫か。フォッコ、火の粉!」
フォッコは大きく息を吸い、多量の火の粉をユキメノコ目掛けて発射するが、
「っ!? 消えた……?」
火の粉はユキメノコを捕えず、どころかユキメノコは姿を消してしまった。
レストとフォッコは周囲を見渡すが、霰で視界が悪いこともあり、ユキメノコは見つからない。
「ユキメノコ、ウェザーボール」
するとフォッコの背後から、氷の球体が飛来し、フォッコに直撃した。
「後ろか! フォッコ、ニトロチャージ!」
フォッコはすぐさま身を翻すと、炎を纏って攻撃が飛んできた方向へと突っ込むが、
「ウェザーボール」
また後ろから右から氷塊が飛び、フォッコを吹っ飛ばす。
「ユキメノコの特性はね、雪隠れっていうの」
ユキメノコの姿を捉えられないレストに、シナモンはぷるぷると震えながら、しかしどこか余裕を持って言う。
「雪隠れ……?」
「そう。雪隠れは、霰がふってるとき、霰の中にかくれて回避率をあげる特性。だから今のユキメノコに攻撃をあてるのは、すごくむずかしいの」
アカシアのミツハニーとのバトルでは、レストのポケモンの回避率が下げられ、攻撃が躱せなかった。しかしこのユキメノコはその逆で、自らの回避率をあげることでこちらの攻撃を躱している。
ラクライのように必中技が使えれば問題ないが、生憎ながらフォッコに必中技はない。なのでシナモンの言うように、ユキメノコに攻撃を当てるの困難だろう。
「だったら、この霰を吹き飛ばす! フォッコ、炎の渦!」
フォッコは大きく息を吸い込むと、体内で激しく燃焼させた炎を渦状に解き放つ。炎の渦はフォッコを中心としてフィールド全域を駆け抜けるが……やがて消えてしまった。
「いくらなんでも、霰を消すのはむりだよ……一時的でも天気をかえちゃうんだから、おなじ天気をかえる技か特性じゃないと、消せないよ」
どうやらシナモンの言う通りのようだ。
「ユキメノコ、怪しい風」
「っ! フォッコ、来るぞ!」
今度は正面から、妖気を含む突風が吹き荒ぶ。
「目覚ましビンタ」
さらにユキメノコは、霰に身を隠しながらフォッコの背後へと接近し、鋭い平手打ちを繰り出し、フォッコを吹っ飛ばした。
「くそっ、フォッコ、炎の渦!」
フォッコは急いで体勢を立て直し、真後ろへと炎の渦を放つが、手応えはない。
「やっぱ相手が見えねえと、どうしようもねえ……!」
姿が見えなければ、こちらの攻撃が届かないどころか、相手がどのタイミングで攻撃を仕掛けるのかも分からない。
「ユキメノコ、目覚ましビンタ」
「! フォッコ、前に飛べ!」
フォッコはほぼ反射で正面にダイブするように飛び込み、そのまま転がるようにして背後を向き、
「火の粉!」
多量の火の粉を噴射する。
「あ……っ」
攻撃直後で、流石のユキメノコもこの攻撃は躱せず直撃を受けてしまう。目覚ましビンタで接近したのが仇になったようだ。
「あうぅ、あぶなかった……すごい、レストくん。霰がふってるときのユキメノコに攻撃をあてられた人は、あんまりいないのに……」
「そりゃどうも。つっても、これじゃユキメノコを攻略したことにはならないか……」
「そうだね。もう目覚ましビンタでちかづくのはやめとこう。ユキメノコ、怪しい風」
霰の中から、妖気を含む突風が放たれ、フォッコの体力を奪っていく。
外面では平静を保っているレストだったが、実のところはかなり焦っていた。
(くそっ! なんだよこの戦い方は、こんなの勝ちようがねえだろ!)
胸中で毒づくレスト。だが実際、今のフォッコに勝てる見込みはほとんどない。
ユキメノコの攻撃と霰で体力を削られ続けるフォッコに対し、ユキメノコは雪隠れでことごとくフォッコの攻撃を透かしていく。体力が減る一方のフォッコと、ダメージをほとんど受けないユキメノコ。どちらが勝てるかなどという問いは、子供でも分かる。
「! フォッコ!」
怪しい風が吹き荒ぶ中、ずっと踏ん張っていたフォッコは、遂に踏ん張り切れずに吹っ飛ばされてしまう。
「もうフォッコの体力もすくないはず……からだも冷えてきちゃったし、ユキメノコ、終わらせよう。ウェザーボール」
霰の中に姿を隠しながら、ユキメノコは地に伏したフォッコ目掛けて、霰を吸収して肥大化した氷塊を放つ。
「フォッコ!」
もはや絶体絶命だ。いくら効果いまひとつの技でも、フォッコの体力は限界近い。この一撃で戦闘不能になる恐れがある。
そして氷塊がフォッコへと襲い掛かる——その時だ。
フォッコの体が光り輝いた。
「えっ? な、なに……っ?」
「これは……!」
光の中で、フォッコはその姿を変えていく。小さな子狐はすらりと伸びた二本の足で直立し、どこからともなく取り出した木の枝を携え、その姿を現す。
狐ポケモン、テールナー。
「テールナー……フォッコの、進化形……?」
図鑑を取り出し、進化したフォッコを認識するレスト。見たところ、技も変更されている。
テールナーは手に持つ細い木の枝の先端をスカート状になった体毛に擦りつけて発火し、迫り来る氷塊を溶かしてしまった。
「進化……フォッコが、進化した……!」
まだいまいち実感が湧かないが、しかしテールナーはこちらを見つめ、力強く頷く。それだけでテールナーの力を信じるには十分だった。
「わぁ……あったかそうなポケモン……」
対するシナモンはと言うと、進化したテールナーを見て、そんな場違いなことを呟いていた。
「ユキメノコ、怪しい風」
だがすぐに気を取り直し、指示を出す。ユキメノコは妖気を含む突風を放った。
「来るぞテールナー、炎の渦!」
テールナーは木の枝をぐるぐると回して炎の渦を発生させ、襲い掛かる怪しい風をシャットアウト。進化して特攻が上がっており、さらに特性、猛火も発動しているためかなりの火力だ。
「これなら行けるか……? テールナー、フィールドに炎の渦!」
テールナーは怪しい風を打ち消した炎をそのままフィールド全体へと解き放つ。その火力はフォッコの時とは比べ物にならず、フィールドを縦横無尽に駆け廻り、霰を降らせていた雲が消えてしまった。
「えぇっ? そんな、霰が消えちゃった……」
目を見開いて上空を見つめるシナモン。ユキメノコの姿も視認でき、今がチャンスだ。
「テールナー、ニトロチャージ!」
全身に炎を纏い、テールナーはユキメノコへと突っ込む。ユキメノコも霰が消えて驚いているのか、反応が遅れた。
「行け、テールナー!」
テールナーの渾身の突撃がユキメノコに当たろうかという、その時だ。
消えたはずの霰が再び降り出した。
「っ!?」
そのせいでテールナーはユキメノコを見失ってしまい、攻撃を外してしまう。どうやら一時的に霰を吹き飛ばしただけで、実際に消したわけではないようだ。
「ふぅ、よかった、消えてなくて……ユキメノコ、ウェザーボール」
そして、ユキメノコの放つ氷塊が飛来し、テールナーに直撃。
「怪しい風」
「ぐっ、テールナー……!」
さらに妖気を含む突風も放たれ、テールナーは吹っ飛ばされてしまう。地面に叩きつけられたテールナーは完全に姿勢を崩しており、格好の的となっていた。
「ユキメノコ、目覚ましビンタ」
それをユキメノコはテールナーに近づくチャンスと思い、霰に紛れながら接近する。そしてテールナーの背後へと忍び寄り、大きく平手を振りかざした刹那——
——霰を降らせていた暗雲が消え去った。
「っ! 後ろだ! サイケ光線!」
その一瞬でユキメノコの存在を感知したレストの指示を受け、テールナーは木の枝を逆手に持ち、先端から念力の光線を射出。ユキメノコを吹き飛ばした。
「どうやら霰も時間切れみたいっすね」
そう、レストの言う通りだ。
霰は氷タイプに様々な恩恵をもたらし、シナモンを有利に、レストを不利にしてきた。しかしその効果は永続するわけではない。やがては消えてしまうのだ。
そしてシナモンにとっては運悪く、それが今だったようだ。
「うぅ、はやく霰をふらせないと……ユキメノコ、あら——」
「させるか! 炎の渦!」
ユキメノコは上空へ冷気を放とうとするが、テールナーの炎の渦がそれを妨害。さらにユキメノコを渦の中に閉じ込める。
「これで終わりだ! テールナー、炎の渦!」
再びテールナーは渦状の炎を放つ。猛火によって強化された炎は二重螺旋となってユキメノコを縛り、焼き尽くしていく。
「ユ、ユキメノコ……!」
炎の渦が消える。しかしその時には、ユキメノコも戦闘不能となっていた。
「負けちゃったぁ……でも、あったかいくて、いいバトルだったぁ……」
どこか幸せそうなシナモンはユキメノコをボールに戻すと、ほっこりとした面持ちでレストへと歩み寄る。
「それじゃあ、私に勝ったから、ポケモンリーグ公認のジムバッジをわたします」
そう言ってシナモンは、着物から小箱を取り出すと、その中身を露わにする。
それは小さな氷塊のようなバッジ。不規則だが少々尖っており、表面もざらざらとした質感だ。
「ソンサクシティ制覇の証、フロストバッジ。うけとって」
「はい! ありがとうございます!」
かくして、レストはシナモンに勝利し、二つ目のジムバッジを手に入れることができたのだった。
「これで二つ目か……まだ先は長いが、着実に前に進んでるな」
とはいえ、このまま漠然とジムバッジを集めているだけというのもどうなのだろうか。レストがふとそんなことを思った、その時だった。
「見つけた!」
鋭く、そして耳に強く響く大きな声がレストには聞こえた。
そしてそれは同時に、聞き覚えのある声でもあった。
だが、その声はここで聞くはずのない声。レストは恐る恐る、その声の方へと視線を向かわせる。
そこに立っていたのは、一人の少女。レストと同年代くらいだろうか。細身で、長い金髪を後頭部付近で二つに振り分けた、やや変則的なツインテール。それを妙に大きな白いリボンのようなもので結んでいるものだから、頭に頭巾が被さったようになっている。服装も白を基調としているようだが、上はチューブトップのようなもので下はミニスカートでというように、上下が分かれている独特な出で立ちの上から、年季の入った男物のコートを羽織っている。個性的で民族的と言えば聞こえはいいが、はっきり言って田舎臭い。どこぞの山奥にでも住んでいそうな服装だ。
「な……あ、なぁ……!?」
レストは声にならない声をあげる。困惑のあまり、声をまともな言葉にすることすらできないでいる。
しかし、頭の中では理解してしまった。まさか、ここで出会うとは思ってもいなかった人物。というより、こんなところで会うはずのない人物。レストのよく知った人物が、そこにはいた。
驚愕はいまだ収まらないが、レストはなんとか、彼女の名前を絞り出す。
「ラ、ラルカ……!」
それは、レストが最もよく知る少女。本来なら故郷にいるはずの——レストの幼馴染だった。
というわけで、ソンサクジム戦、終結です。シナモンのエースはユキメノコ、霰を利用した戦術でレストを追い詰めますが、フォッコがテールナーに進化し、逆転します。ちなみにフロストバッジのフロストは、霜と言う意味です。最初はブリザードバッジという名称でしたが、それだとシナモンの性格と合わない気がしたので、変えました。そして最後、遂に謎の少女の名前が明らかに……なんか、こういうあとがきを書くのは久しぶりな気がします。それはともかく、次回、ラルカとなんやかんやあります。お楽しみに。
- Re: ポケットモンスターA・D ——オリキャラ募集—— ( No.92 )
- 日時: 2013/12/07 17:26
- 名前: トーソーシャ (ID: .YLXXaPc)
ま、まだオリキャラの方は大丈夫でしょうか……?(震え声)
名前:フェラータ
年齢:15歳
性別:女
性格:常時おだやかで寡黙。腰が低く、周りに流されやすい。しかし誰よりも仲間やポケモンたちを思いやる少女であり、いざという時は自らの身も投げ打つ。
容姿:背中までの白いウルフカット。両サイドに垂れ下がった猫耳のような癖毛がある。優しげに垂れた黒眼。本人曰く「寒いから」という理由で夏でも黒いマフラーを巻いている。同色のニット帽も着用。動きやすく質素な服装であり、大きなリュックを背負っている。
備考:様々な風景を写真に撮ったり描いたりして、各地を一人で旅する少女。精神が幼い。声帯が損傷しているらしく、カタコトで喋る。右肩から左わき腹にかけて大きな傷跡が残っており、ニダンギルを庇った時の傷だそう。フェラータ(裏切り者)の名に似合わぬ不思議系キャラ。
将来の夢は画家か、写真家。……「だった」が、ポケモンの傷つく姿を見るのが嫌なので医者志望。腕はそこそこだが、地道に奮闘中。
手持ちポケモン
名前:ニダンギル
技:剣の舞、切り裂く、シャドークロー、影分身
特性:ノーガード
性別:♂
性格:優しい
戦術:影分身で相手を惑わしつつ、スピーディーに切り裂くで相手の急所に打ち込む。
フェラータが一番最初に出会ったポケモン。大切に育て上げられたためか、フェラータへの忠誠心は高い。その恩返しにと奮闘しており、進化の兆しがチラチラと垣間見える。
名前:オノノクス
技:ハサミギロチン、みねうち、地震、睨みつける
特性:かたやぶり
性別:♂
性格:忠実
戦術:「ハサミギロチン」で一撃必殺狙い。
名前:クレッフィ
技:じゃれつく、リフレクター、影分身、ギガインパクト
特性:いたずらごころ
性別:♀
性格:悪戯好き。
戦術:「じゃれつく」でステータスを下げつつ、「影分身」+「リフレクター」を使って自身を強化、「ギガインパクト」で大ダメージを与える。
サンボイ(最低三つ。キャラの口調が分かるようにお願いします)
「……フェラータ。君、写真、好き? フェラータ、好き。……興味、ある? フェラータ、カメラ、見る?」
「……君、ポケモン、貸す? フェラータ、治療、できる。……ポケモン、傷つく、嫌」
「ニダンギル、フェラータ、友達。オノノクス、クレッフィ、二人、友達。君、も、フェラータ、友達っ」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27