二次創作小説(紙ほか)

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ハニカム(テニプリ夢)
日時: 2021/06/07 02:22
名前: ぺ (ID: EabzOxcq)

かわいいかわいい女の子

葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。



沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。

未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。


Re: ハニカム ( No.38 )
日時: 2021/06/06 20:34
名前: ぺ (ID: EabzOxcq)

「ほんとに出て行ったって、仁美さん。」

京都で研修医をしている兄が学会のために東京に帰ってきていた。今は兄と母親、侑士の三人で夕食の時間だった。

「まぁ仁美さんも、頑張ってたとおもうけどね。仁奈ちゃんが本当に可哀想よ。」
「え!葉山先生、離婚したんか?」
「せやで。兄貴もわからんかもな。」
「うっさいねん。うわー、葉山先生のとこめっちゃ仲いいイメージあってんけどなぁ。」

兄にはもう結婚間近の彼女がいる。

「あんたは結婚しても、家のことなんでも奥さんのせいにしたらあかんで。ちゃんと自分のこと、自分でやりや。」

葉山家の夫婦間に何かありそうだが、侑士はあえて深く聞かないようにした。それよりも昨日の夜から今までメールの返信がないことが、何よりも気がかりである。侑士の母親は、仁奈の父親は今日も出勤していると聞いたようだ。

「ちゃんとご飯食べてるかしんぱいやわぁ。」
「メールしても返ってきーひん。」
「ちょっと、侑士見てきたって!」

侑士は母親に言われるがまま、仁奈の住んでいる階まで移動した。チャイムを押したが反応がない。もう一度押しても、開く気配がない。玄関のドアも閉まっている。ドア越しに仁奈の名前を呼びながら、ドアを叩いた。それでも反応がないので、一層不安に駆られた侑士は懸命に仁奈の名前を呼んだ。

「仁奈?生きとる?なぁ、」

少しして、ゆっくりと玄関のドアが開いた。パジャマ姿の仁奈が立っていた。髪の毛はぼさぼさで、目の下にくまができている。

「飯食った?」

仁奈は首を横に降った。

「うちのおかんがグラタン作っとんねん。一緒に食お。」
「食欲、ない。」
「あかんて。胃に何か入れんと。」
「…わかってるよ。」
「じゃあ飯持ってったるから、食ってな。」

侑士は仁奈の顔をのぞき込んだ。

「いいよ。そんなことしなくていい。」
「あかん。空腹になったらますます気分も落ちるし、体調も悪なる。待っててな。」
「…じゃあ行くよ。」

侑士を往復させたら悪いと思ったので、仁奈は仕方なく行くことにした。自分のことを心配してくれているのは有り難いが、今は他人を思いやるところまで気力がないのだ。仁奈は、とりあえず着替えて髪の毛を結った。侑士に連れられ、忍足家に上がると侑士の母親がソファーに座らせてくれた。

「グラタン、冷めないうちに食べや。」
「…ありがとうございます。」
「ちょ、あんた酒臭いから部屋戻り!」

兄は母親によって自分の部屋に追いやられてしまった。

「仁奈ちゃん。私たちはいつでも仁奈ちゃんと一緒におるで?一人で寂しいときは、いつでも来てええよ。」

仁奈は頷いた。

「たしかに仁美さんのやったこと絶対あかんことやし、あんなことしたら仁奈ちゃんがどんな思いするか考えてなかった仁美さんが悪い。でもな、二人とも仁奈ちゃんのことは大好きやから、それはもう私が保証する。だから今はいっぱいご飯食べて、寝たらそれでええよ。」
「…私、母親が不倫しても母親のこと完全に嫌いになれない。母親のこと気持ち悪いって思うのに、どうしたらいいかわからない。すごく寂しい、ただそれだけなの。」

母親の、自分が知らない女の一面を見せられることが子どもに嫌悪感を与えるか。それが仁奈にはわかった。知らない男と一緒にいる母親は正直、気持ちが悪いとさえ思う。それでも、いきなりいなくなったことが未だに信じられないのだ。

「夫婦ってそんなにあっさり別れちゃうんだって思った…。」

結婚したら永遠にパートナーと共に生きていくものだと思っていた。だけど、あの去り際の母親と父親は完全に他人である。敬語で、目も合わせない。知り合いでもなさそうな雰囲気だった。仁奈も将来、そんな辛い思いすることがあるの?一生一緒にいるって誓っても、裏切られることがあるの?親の離婚が子どもに与える影響というものは悪い意味でも良い意味でも絶大である。まずは両親がいない寂しさを味わうこと、その次に両親を憎むこと、またその次に親の愛情が与えられないことで人格形成がうまくいかなくなること。恋愛が上手くできなくなること。良い影響は、パートナーの見極めが上手くいくことと一人でも生きていける自立心が育つことだろうか。個人差はあるが、仁奈の場合はどうだろうか。まだわからないようだ。

「そういう人たちもおる。でも、仁奈ちゃんは絶対に幸せになれる。こんな辛いことがあったんやもん。次はいいことがあるって。うちにお嫁さんに来てもええし。」

侑士は飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになった。

「誰と結婚すんねん!」
「あんたに決まっとるがな。あ、でも侑士には勿体無いわ。」
「それもそれで失礼やけどな。」

仁奈が忍足家に入っても、何ら違和感なく今まで通り過ごせそうである。侑士意外は。侑士の母親は、侑士を生む前に一人、女児を流産している。その経験から仁奈を自分の子どものように可愛がっているのだ。仁奈の母親とは真逆に侑士の母親は家庭に入っている。

「…グラタン、美味しい。」
「やろ?最悪、うちの養子になってもええし。」

養子は流石に…仁奈と兄弟になるのはもう感情がわからなくなりそうである。毎日、くっついて過ごせるものなら過ごしたいが、それでは恋も出来ないし、侑士は持たない。と思った。

「でもパパが可愛そうだからしばらく一緒にいる。」

健気すぎ、侑士は心の中で泣いていた。仁奈はグラタンを完食して、少しぼーっとしたあと、帰って行った。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.39 )
日時: 2021/06/08 03:27
名前: ぺ (ID: d2ww6FUd)

昨晩、疲労と睡魔に負けた仁奈はいつの間にかに眠っていた。アラームを止めて、いつも通りベッドから降りた。顔を洗って髪の毛を整えて、ご飯を食べる。ご飯は、ホットミルク1杯で十分だった。カバンに教科書とノートを詰めて、家を出た。急いでいてから、ただひたすら走って駅に向かった。と言っても10分足らずで着くのだが、この電車に乗り遅れたら遅刻確定なのだ。慌てて車内に乗り込み、息を切らす仁奈は人混みに飲み込まれた。知らない人と壁に挟まれた仁奈は、また眠ってしまいそうである。なんとか立っているものの、目は閉じかけている。うとうとしていて1時間ほど乗っていると、一気に車内に人が降りて仁奈はやっと席に座った。と言ってもあと2駅で降りるのだが束の間の休憩である。また乗り換え、もう一度乗り換えると立海大附属高校の最寄り駅に着く。仁奈は最寄り駅に着くまで、何件かの通知を確認していた。蓮二からメールが来ていたのだ。

授与式が終わった。眠かったので途中寝ていた。



仁奈は蓮二の文面を見て、思わず笑ってしまった。蓮二、語彙力ありそうなのに意外とあっさりしてる文章書くんだ。仁奈はいわゆるギャップ萌えと言わんばかりに、蓮二も自分と同じ人間であることを思い出した。

「おはよー!」

校門を潜ると、麻里が後ろから声をかけてきた。

「おはよう!」
「体調、大丈夫?めっちゃ心配なんだけど。」
「もう復活したー!」
「良かったぁ。」
「メール返してないや…ごめん。」
「そんなのいいって!どっか悪かったん?」
「実は、両親離婚してちょっとバタバタしてたんだよね。」

麻里は言葉を失ったように、目を見開いた。

「…ほんと?仁奈の生活は?どうなるの?大丈夫なの?」
「今まで通り生活はできる。でもママが出て行ったんだ。」
「よく1日で学校来れたね。えらいよ、仁奈は。」

麻里が仁奈の肩を抱きしめた。麻里はどこにでもいる普通の家族の長女である。以前の仁奈のように離婚について上手くイメージが沸かないが、仁奈の様子を見て元気や笑顔があまりないことがわかった。

「自分だったら、お母さんが出て行ったら本当にどうしていいかわからないもん。仁奈は、ほんとに頑張ってるよ!」
「ありがとう…。」
「学校はさ、私も赤也も友だちもいるし、柳先輩もいるんだから、何も考えず楽しんだらいいよ!無理のない範囲でね?」
「うん…私、みんなに会いたくて学校来たの。麻里がいてくれて、ほんとよかった。」

仁奈と麻里は手を繋いで教室まで歩いた。何があっても、今日も一日過ごすのである。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.40 )
日時: 2021/06/09 00:52
名前: ぺ (ID: kaDNG7L3)

放課後、仁奈は何もすることがなかったので、掃除当番をバレー部の友人の代わりにすることにした。

「文化祭、うちのクラス何するんだろうね。」
「無難に食べ物系じゃない?」
「それか、教室フリースペースみたいに休憩場所にしてどっかに遊びに行きたいなぁ。」
「え!めっちゃそれいい!」

仁奈の提案に麻里と友人らは頷いた。

「机と椅子並べたら完成じゃん!仁奈、名案すぎ!」
「でも本気で文化祭やりたい人もいるから、たぶん無理だろうけど。」
「あー、そうよね。」
「まじでうちら文化祭は学外行けるから、そっちのほうがいいけどなぁ。」

仁奈たちはもう掃除は終わっていたが、まだ掃除用具を持ったままずっとおしゃべりをしていた。そのままみんなでカラオケに行く流れになった。仁奈も参加することに決めた。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.41 )
日時: 2021/06/10 02:58
名前: ぺ (ID: cdCu00PP)

それから仁奈は時間を埋めるために放課後に遊びに行く予定を入れたり、父方の祖父母の家に遊びに行くようにしていた。夜は疲れてすぐ寝られるように、何も考えないようにしていた。

「仁奈、それどこのリップ?」
「これ?えっとねー、」

仁奈はコスメのブランドや種類がよくわからなかったが、とにかくかわいいと思ったものは手に入れることにした。大きな瞳に覆いかぶさっていたまつげは上を向いているし、薄い無垢な唇は人工色のきらめきと色味を手に入れた。デパートにコスメを買いに行ったとき、その店舗の美容部員に言われたのだ。

「お嬢さんはまだお肌がきれいだから、色々乗せたらだめよ?せっかくこんなにきれいなんだから~」

とか云々言われ、眉毛の整え方を教わりリップとビューラーを買って帰ってきた。

「あ、パパ。ただいま。」
「仁奈、最近勉強はしてるのか?」
「うん、まあ。」
「外にばかり出ているようだし、今日なんてもう夜の10時じゃないか。何してたんだ?」
「友だちの家でおしゃべりしてたよ。」
「あのな…、」
「パパ。仁奈ね、何も考えられないようにしてるんだ。毎日忙しくしてるの。もうちょっとしたらたぶん、そんなことしなくてよくなるから、ごめんね。心配かけて。」

仁奈は颯爽と二階へ上がっていってしまった。父親は何も言えず、またソファーに座り込んでしまった。初めて父親に反抗というか、自分の今の気持ちをぶつけた気がした。今の言葉を聞いて、父親はどう思ったのだろう。頭の中は罪悪感と、でも私も自分の気持ちを立て直すために頑張っている、という思いでたくさんだった。

もしかして今の私の状況って、ただ逃げているだけ?

仁奈は不意にその考えが頭をよぎった。これじゃ終わりが見えない。この間まで何も考えずに毎日過ごしていられたのに、なんでこんなことしないと楽しくなれないんだろう。カバンを雑に床に投げ捨てると、ベッドに倒れ込んだ。


ママ、なんでそんなことしたの。私、めちゃくちゃだよ。

そっとつぶやいて、どこにもぶつけられない思いを噛み締めて泣いた。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.42 )
日時: 2021/06/10 03:43
名前: ぺ (ID: cdCu00PP)

次の日、普通に学校に行けたものの、仁奈は授業中も無意識に密かに涙が止まらなかった。なんでだろう、母親が脳裏に浮かんでくるだけですぐに目の奥が熱くなるのだ。それは悲しい涙なのか憎しみなのか、全くわからない。自分が壊れたのか、制御できない。授業が終わるとすぐ教室を出た。一刻も早く学校を出たかったのだ。麻里には頭痛がするので早く帰ると伝えて、足早に駅に向かった。電車に乗り込むと、見覚えのある後ろ姿が車内の隅にいる。あのもじゃもじゃ頭は、赤也だ。車内と言うこともあり仁奈に気がついた赤也は小さく手を振った。周りには恐らく先輩がいて、仁奈は赤也に手を振ったあと小さく会釈をした。赤也は仁奈の方にやってきた。

「帰り?」
「うん。」
「なんかさ、先輩らが葉山と喋りたいって言うから一言なんか言ってやってよ。」

仁奈は特に断る理由もないので、赤也についていった。

「え!本物?顔小さっ。ジャッカル、お前横並んでみろよ。」
「嫌だよ。あ、どうも。この丸井ってやつの相方やってます。ジャッカル桑原です。」

仁奈と背丈のあまり変わらない丸井という男は、中々可愛らしい顔をしている。ぱっちり二重に自然なアヒル口、テニス部の割には白い肌が女子にも負けない可愛さである。ジャッカル桑原は、この間沙由香がイケメンと言っていた男だ。たしか外国人特有の目鼻立ちの濃さに、日本人のあっさりとした顔つきが合わさるとこんなにも漫画の主人公のような顔だちになる。

「どうも、葉山です。赤也と仲良しの友だちです。」
「こないだ氷帝の席で俺らのこと見てたよな?」

赤也は仁奈と侑士がくっつくと思ってるので、ふざけて冷やかした。

「違うよ。友だちが氷帝のテニス部の彼氏だから、一緒に応援してただけ。」
「ほんとか?忍足さんのこと応援してたんじゃね?」

仁奈が氷帝学園出身の生粋の金持ちであることは知っていたが、やはり身なりとおっとりとした話し方からしっくりくるものがある。とてもスポーツ推薦の輩とつるむものじゃない。とジャッカルは心底思った。

「お嬢って呼びたくなるよね。」
「私、そんなお嬢様とか偉いわけじゃないので、遠慮します。」

財閥の御曹司、銀行の頭取の孫や政治家の娘など、周りに揉まれすぎている仁奈は麻痺している。

「聞いてよー。俺らさ、今から青学まで行かなきゃ行けないの。もうね、この時期はさ、放課後手当り次第空いてる高校に電話して練習試合申し込むのよ。だから俺ら7月の後半ほぼ公欠ってわけ。」

スポーツ強豪校にありがちなのが、夏に入るともう7月全て公欠になる、練習試合でも公欠、大学の部活に参加するにも公欠、全てを公欠にする力を持った顧問がいることである。

「授業休めちゃうなんて、羨ましいけど…でも毎日はハードですよね。」
「文化祭出れねーかも。葉山、俺の代わりに存分に楽しめよ。」
「え?文化祭も?」
「そうそう。去年も公式戦とただ被り。」
「ミスコン出たかったなぁ。クラス代表でさ、葉山とこう、ピシッと決めたら優勝できそうじゃね?」

赤也が華麗にポージングを決めている。

「いや、赤也が出てもたぶん横にくっついてる犬にしか見えないよ。」
「たしかに、わんこだな。赤也は、うん。」

ジャッカルの例えは的確である。しばらく乗っていると、仁奈たちが乗っている車両のドアが開いた。

「おい、乗り換えだ。」

聞き覚えのある声がした。

「…。」

仁奈はこのタイミングで蓮二に会えると思っていなかった。あまりにも奇跡的だ、と言わんばかりに蓮二から目が離せなくなっている。

「油売ってないで、降りるぞ。」

三人は蓮二に引っ張られるように降りていった。仁奈はかすかに手を振った。蓮二も静かに片手を上げて、仁奈に応えた。なんで?蓮二がいたの?あ、練習試合って言ってたもんね。それにしても、会えるなんて…!仁奈は電車の中で飛び跳ねたくなるくらい嬉しかった。家に帰ると、蓮二からメールが来ていた。

うちの部員がすまない。何か、変なことは言われてないか?

おつかれさま!
そんなことないよ~!赤也の先輩たち、いい人だったよ!
心配してくれたの?

かわいい絵文字を選んで、すぐ返信した。ハートの絵文字ってふざけるとき以外使うことあるんだ…と仁奈は思った。自然に使いたくなるのだ。自分の部屋につくと、仁奈は蓮二のことをずっと思い出していた。試合頑張ってるかな、怪我してないかな?とか何とか。蓮二、好きなものとかテレビに出てる人とかいるのかな…蓮二の好きなものを考えてみた。いちばんはじめに二人でケーキ屋に行ったとき、抹茶を好んでいた。あとは…勉強?蓮二、勉強すきだから頭いいのかな?そう思った仁奈は、数学の教科書とワーク、ノートを取り出した。

「よし、やるぞ。」

仁奈は今日習った範囲を開いて、シャープペンシルを動かし始めた。蓮二に少しでも近づくためである。勉強の話題なんかできたら、きっと話が尽きないからだ。


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