二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ハニカム(テニプリ夢)
日時: 2021/06/07 02:22
名前: ぺ (ID: EabzOxcq)

かわいいかわいい女の子

葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。



沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。

未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。


Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.53 )
日時: 2021/09/03 11:17
名前: ぺ (ID: ZZRB/2hW)

侑士は自宅マンションのエレベーターに乗り込んだ。体は雨と風に打たれたせいで風呂上がりのような濡れ方をしている。自分の住む階に止まり、ドアが開くと、そこには母親が立っていた。

「…お、おかん。」
「遅かったな。」

侑士の首元の襟を掴み、リビングに引きずり込んだ。

「ほんまにごめんて、すまん。」
「あんた!!!何時やと思ってん!」
「ぶ、部活の奴らと遊ぶ言うとったやんか!」

富裕層に似つかわしくない怒鳴り方をする侑士の母親だが、この母親のおかげで侑士は世間に馴染めているのである。

「ほーん…岳人くん家に電話したけど、あんたとおらんかった言うてんねんで。」
「日吉と遊びよっただけやって。」
「じゃあどこで何したん!あんた、ただ若くんとつるむだけやのに、なんでそんな洒落た格好しよるん?」

侑士は床に正座している。

「おしゃれしたいお年頃やねんて…。」
「そんなん知らん!どこに行ってかいいや!」

おかん怖すぎ…。侑士はクラブに行ったとは言えないので、生まれ持った理系脳をフル活用させた。

「海、海行きよった。」
「はぁ?海でなんでそんな洒落た格好しよるん?おかしい言うとるやろ。」
「ちゃ、ちゃうねん。未成年は補導されるから…大学生のフリしよーってなってん…。」
「あっそう。どこの海行ったん?」

適当に公共交通機関で30分ほどの海沿いの公園を答えた。

「そこ花火していいんか?」
「…わからへん。前にしよった友だちがおったから…」
「ちゃんと確認しいや!条例違反やら補導歴なんかついたら追い出すわ!…若くんとこにも謝りにいかなあかんわぁ。明日大会やのに…。」
「え…ちょ…お、俺も行く。」
「当たり前や!あんたが来んとあかんやろ!頭使いや!ったく!父さん!いつまで寝とん!」

侑士の試合のために父親は午後からの出勤予定だったが、生憎この天気で試合は流れてしまった。母親が父親を起こしに行くと、侑士はその隙に急いで自室へ向かった。若に電話をかけた。

「なぁ、夜通し海で花火したことにしてんけど…。」
「俺は体力作りで夜通しハイキングって言いました。」
「…あかん。終わりや。」
「何かあったら適当に話し合わせたら大丈夫ですよ。」
「あかんて、逆やもん、海と山て。」

日吉と話しているが、もう弁解の余地はなさそうである。とりあえず濡れた服を脱ぎ捨てて、パンツ一枚で頭を抱えていると、部屋のドアがノックされた。

「侑士。」
「…おとんや。」

日吉との会話を一旦やめて、恐る恐るドアを開けた。

「何処行きよったん、ほんまは。」

父親の表情は怒っているのか、ただ気にかけているのか読めない。

「海やて、あと体力作りに歩き寄った。」
「…ほんまは?」
「…。」
「お前も男になったな。避妊はしっかりしろよ。」

侑士の肩に軽く手を当て、微笑むと階段を降りていった。あかん、バレとる。

「おかんがな、お前ん家に謝りに行く言うてんねん。」
「待ってまーす。」
「ふざけとるわ、こいつ。」

侑士は改めて頭を抱えた。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.54 )
日時: 2021/09/11 03:35
名前: ぺ (ID: EjFgzOZO)

泣き疲れて、いつの間にか眠っていた。もう午後3時である。ゆっくりと上半身を起こしたが、後頭部に棘が刺さったような痛みに襲われた。泣いたあとの睡眠に起こりがちな頭痛であるが、朝から何も食べていないおろか水分も取っていなかったので、空腹とともに余計に痛みをひどく感じた。ゆっくりと立ち上がると、リビングへ降りていった。

「お嬢様、体調が優れませんか?」
「…あぁ、ちょっと頭が痛くて。」

畳の部屋で押入れの掃除をしていた新木に告げると、彼女はそそくさとキッチン脇のシェルフから薬を取り出した。

「お祖母様がこちらの薬を自由に飲んでいいと仰っていたので、頭痛に効くものを確認してお渡しします。」

新木は鞄から少し厚めの本を取り出した。「与薬の知識」と書いてある本である。それを手際よく開いたあと、冷凍庫からゼリーを取り出した。ソファーに座りこんでいる仁奈にスプーンと一緒に渡した。

「お薬を飲む前に、先に軽くお食事をなさってください。」
「…食欲がなくて。」
「頭痛以外にも、どこか辛いところはありますか?」

仁奈の隣に座り、背中を軽くさすっている。なんて言ったらいいのだろう、この気の落ちようは。本人は気づいていないが、少し虚ろ気味な表情でとりあえず首を横に降った。

「深呼吸なさってください。」

新木の指示する息を吸うスピードと、吐くスピードに合わせた。何回かすると心なしか、喉に支えるような何かが和らいだ気がした。

「なんか新木さんて、看護師みたいですね。」
「今は夏季休暇ですが、看護学校に通っているんです。」

たしかに、凛とした雰囲気とテキパキ動く姿は看護師を思わせる。長期休暇と休日に仁奈の祖父母の家でアルバイトをしている新木は、祖母に可愛がられていて、うちの附属病院においで、とよく言われているらしい。

「うちの母も医者だから、こういうのに憧れたなぁ…小さいときに気管支炎になって、一度だけ母がつきっきりで看病してくれたんです。母が絶対治してくれるからって思って、辛くはなかったなぁ。なんだか思い出しました。それと一緒で新木さんがいると、安心します。」
「お母様は、現役でなさってるんですか?」
「…たぶん、そのまま勤務してると思います。」

新木はそれ以上、話に突っ込むことはなく仁奈の隣に座っていた。仁奈はゆっくりゼリーを口に運んでいる。

「美味しい。」

お歳暮によく送られてくる容器の浅い子供があまり好まない味のものである。半分くらい口にすると、薬を水で流し込んだ。

「少しは良くなるので、また楽になさっていてください。」
「ありがとうございます。新木さん、いいナースになりそうですね。」
「恐縮です。」

一言だけ礼を言うと、新木は再び掃除に戻った。雨はまだ降り続いている。リビングにある天使の彫刻も雷を背景にするとなんだか悪魔のように見えた。


Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.55 )
日時: 2021/09/18 03:14
名前: ぺ (ID: JJb5fFUo)

蓮二は自室に篭り、勉強をしていた。雨が止む様子は一向に無く、ランニングもできない。さすがに朝から15時過ぎまで、昼食以外はずっと机に向かっていた。茶色を貴重とした無機質な部屋には、シャープペンシルを走らせる音がしているだけである。さすがに疲れたので、休憩がてら筋トレをすることにした。祖父が作ってくれた蓮二のための地下室には、ベンチプレスや懸垂をするためのマシーンが揃っている。蓮二は外の空気を吸いながら走るのが好きなので、ランニングマシーンはあまり使っていない。しばらく体を動かして、汗が止まらなくなる。蓮二は半裸になって、タオルで体中の汗を拭った。メールが来ているので、確認すると真田からであった。一斉送信になっていて、「明日は開催予定なので各自備えておくように、試合開始時間も異なるから確認し…」等と、長文が送られてきた。真田は最近メールに他のサイトのリンクを貼り付けることができるようになり、今回も県総体の公式サイトを添付している。蓮二は受信済みのメールの中に、仁奈の名前があることに気がついた。しかも、自分はそれに返信していないのだ。返信しようとしたが、前の会話をひっぱるのはもう遅いしどうしたらいいのかわからなかった。

体調は大丈夫か?

とりあえず無難に送りつけると、すぐに返信が来た。

大丈夫だよ~!
蓮二も試合頑張ってね

かわいいハートがくっついている。こういうとき、ハートの絵文字に特に意味のない場合と、好意が込められている場合があると丸井ブン太は教えてくれた。一体、葉山はどちらなのだろう。蓮二は考えていた。

ありがとう。

ハートの絵文字の考察に全神経を使っていたので、送ったのはこの6文字だった。千葉は雨が止んできた頃、仁奈は祖父母の送迎を担当する運転手に車で自宅に送ってもらっていた。小さな携帯オーディオで音楽を聞いていた仁奈は、麻里と他愛もないメールのやり取りをしていた。ちょうど蓮二からも来ていたのだ。ありがとう…やっぱさっぱりしてるなぁ。余計な内容は送らないほうがいいのかな?そんなことを思っていた。

蓮二からの返信が「ありがとう」だけなんだけどさー、メール終わらせたほうがいいかな?

そんなことない!!頑張って会話つなげよ!

頑張って会話を繋げる、仁奈には難しいことだった。明日は朝早いの?明日は勝てそう?暑い?どんな話題がいいのかな。

この前、メールで試合に来てほしいと言ったが、無理はしないでほしい。

仁奈は追ってやってきた蓮二のメールに言葉を失っている。嘘、こんな優しいこと言ってくれるの?蓮二は。車内で足をばたつかせているので、運転手とミラー越しに目があった。落ち着きを取り戻すと、

ありがとう!自分の体調に合わせるね!でも、蓮二のかっこいいところ見たいなぁ。

目が潤んだ絵文字をくっつける。クールに見えてさり気なく優しいなんて、どうして蓮二は蓮二なんだろう。

目立った試合はできるかわからないが、応援してもらえるのは素直に嬉しい。

嬉しいって、私が応援したら喜んでくれるの?もう仁奈は携帯の画面を額に押し当てて悶ている。

ほんとに!?
私でいいの?

なんて返せばいいのか、「当たり前だ」は言葉が上から目線だし、「そうだな」も適当にあしらっているような気がした。

もちろん

とだけ蓮二は送った。汗が乾いてきたところで、シャワーを浴びに部屋を出た。汗をかいて体中べとべとなのに、とても爽快でむしろ塩っぱさはなく甘い香りがしてきそうである。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.56 )
日時: 2021/10/03 01:46
名前: ぺ (ID: N9DlcNaW)

家に帰ると、父はいなかった。当直のない日は20時過ぎには帰ってくる。たまに学会や医師会のあとの食事や飲み会で遅くなることもあるので、仁奈は一人でご飯を食べることが多い。しかし夕方になってもお腹が空くことがなかった仁奈は、暇になってしまった。

洗面台で手を洗って、リビングに行く途中に母の部屋が目に入った。ドアに手をかけると、ホテルの一室のようにベッドと机、ドレッサーがきれいに並んだままである。何気なくベッドに座ってみたが、母がよく使っていた香水の匂いはもうしない。誰かがいたのかもわからない無機質なただきれいな部屋である。無意識に母がいた跡を探すように、ウォークインクローゼットを開けた。服、靴やカバンがズラっと並んでいる。

「なんで…?」

ほぼ衣類は持っていかずに出て行ったの?仁奈は服やバッグを手に取ってまじまじと眺めた。約7畳のクローゼットの奥の方には、タンスがある。その棚の上に、小さな紙を見つけた。メッセージカードの大きさである。

仁奈へ
大人になったら、好みのものを自由に使ってね。

メッセージはそれだけ。でも母親の字である。角ばったきれいな字、仁奈はその字を指でなぞった。いらないよ、こんなの。その場でへたり込んでしまったが、それらすべてを投げ捨てることはできなかった。携帯が鳴って、侑士の母親からメールが来ていた。

こんにちは。千葉から帰ってきたと仁奈ちゃんのパパから聞いたのでメールしました。

今晩、一緒にご飯どう?ハンバーグ作ってるから、よかったら食べにおいで。

食欲が沸かない。でもこのままずっと一人でいるのは辛い。仁奈は、用意ができたら行くね。とだけ返した。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.57 )
日時: 2021/10/03 17:05
名前: ぺ (ID: zKu0533M)

忍足家へ向かうと、母親が出迎えてくれた。侑士はおらず、仁奈はソファーに座った。

「侑士な、今トレーニングルームで岳人くんと鍛えてんねん。もうすぐ帰ってくるで。」
「明日試合だから頑張ってるんだ。」
「ちゃうねんて!それがな、後輩と朝まで遊んでて、今朝帰ってきてん!試合の前日にアホすぎやろ、まだ高校生やで?あかんわぁ。」
「でも、侑士ならきっと器用に試合も熟しちゃう気がする。」
「それがあかんねん。もういつか痛い目見そうで怖いわぁ。勉強もちゃんとしよるかわからんし。」
「こないだの中間、理系全部満点だったような…」

結局、侑士は要領がいいのだ。何事も結果を出すための最善の方法を見つけて、簡単に実行してしまう。勉強、テニス、物事の考え方然り。仁奈のことだけがそう上手くいかないのは、彼にとってもどかしい以外の何物でもない。そうこうしているうちに、二人が帰ってきた。

「おー!葉山!」
「向日せんぱい、こんにちは。」
「元気してたー?」
「まあまあ。」

岳人は仁奈と背丈がほぼ変わらないので、二人が並ぶと双子のような可愛さである。

「あんたたち、シャワー浴びてき。岳人くん、タオルと着替え用意してるから先入っといで。」
「ありがとうございます!」
「岳人、はいろかー。」
「ゆーしとは絶対やだ!」

岳人がシャワーを浴びている間、ソファーに座った侑士はプロテインを飲んでいた。

「あかん、自分臭すぎるわ。」
「あんたは私に似て臭くないはずやで。」
「ほんまか?」

侑士はソファーの端に寄った。仁奈が真ん中に座っていたので、離れたのである。

「え?なんも臭いしないよ?」
「あかんて、高校生男子にもエチケットは存在するんや。」
「そっかー。」

蓮二はどんな匂いなんだろう…甘ったるい香水でも、石鹸でもない。無臭?いや、ムスク?蓮二からムスクの香りなんかしたら年上の魅力満載で卒倒である。

「ねぇ、侑士は香水つける?」
「つけへん。」
「高校生の男の子って香水つけるのかな?」
「跡部はつけてたな…。長太郎も毎回バラみたいな匂いするけど。」
「ちょたはお母さんがバラみたいな匂いするもん。」

あいつマザコンやし。と侑士が呟いたところで、岳人が上がってきた。

「ありがとうございました。あんなきれいなお風呂初めてです!しかもガラス張りだし!」
「見栄えはいいねんけど、掃除が大変よ。」
「え!ご自分で掃除なさってるんですか?」
「せやでー。」
「すげー!」

すっかり岳人と侑士の母親は意気投合している。仁奈はお皿を机に並べていて、侑士の母親はグリルで魚を焼いて取り出しているとこらである。岳人もジュースを注いだりして、まるで二人は子どものようにお手伝いをしている。

「あ、仁奈ちゃん。侑士に着替えとタオル持ってってくれへん?場所、わかるやろ?」
「はーい。」

もうすっかり忍足家を熟知している仁奈は、侑士の部屋に入り下着と半袖短パンを取り出した。ゴミ一つ落ちておらず、藍色で統一された部屋である。洗面台の上の棚からバスタオルを取り出し、お風呂に向かった。ドアを押すと、シャワー上から被っている侑士と目があった。もちろん全裸なので、侑士は咄嗟に股間を抑えた。

「ご、ごめんね!」

仁奈は抱えていたものすべて放り投げてリビングへ逃げ込んできた。一方の侑士しばらく呆然としている。

「ちんこ、見られたんかな。」

侑士は意外にも冷静で、反応から男性経験を推測できそうである。一方の仁奈は平静を装って、

「わ、渡してきたよ。」

と言った。夕食のハンバーグとサーモン、サラダなど彩りよく並んでいる。岳人は昨日のよるご飯に何を食べたか一瞬で忘れてしまった。あ、カレーだ。カレー。大方向日家の食事のほうが、一般人には想像しやすいものがある。侑士が風呂場から出てきて、食卓に集合した。

「どうしたん?」

侑士は、また自分と目が合って赤面する仁奈にさりげなく聞いた。

「なんでもないよ。」

仁奈は侑士から逃げるように、侑士の母親の横に座った。

「いただきまーす!」

みんなで手を合わせて食べる。高校生男子二人の食欲はえげつなく、大皿に装ってあるものはすぐになくなってしまった。

「仁奈ちゃんも、ちゃんと食べや。」
「あんまり食欲なくて…。」

俺のせい?侑士は一瞬考えた。

「そう。無理せんとき。でも体に栄養入れな倒れてまうで。」
「…うん。」
「なんかあったん?」
「ううん、大丈夫。」
「ほんま?」

侑士の母親の心配をよそ目に、気を遣わせまいと箸を進めた。美味しい、と言うと侑士の母親も笑ってくれた。皆完食し、一息ついた。明日の試合の対戦相手について一通り岳人と侑士は確認し、相手のビデオを見たりしている。仁奈も横にいて一緒に試合のビデオを見ている。

「あー、こいつなんか立海の一ダブ(第一ダブルス)みたいだなー。前衛が結構粘ってくるな。」
「でもフォアのとき二回もネットに引っかかってんで。そこ攻めたらええやん。」
「だな。後衛は侑士のほうが上手いわ。」

かれこれ午後8時を回ると、岳人は帰ることにした。仁奈も一緒に部屋を出ることにした。

「またなんかあったらいつでも来るんやで。」

自分の母親のように優しくしてくれる、涙が出そうになった。岳人をマンションの前まで見送ると、二人はエレベーターに乗った。仁奈は壁の方を向いている。

「さっき俺の…」
「みわ見てない!見てないよ!」
「そんなデカい反応されたら、こっちが気まずいわ。」
「ごめん…。」

あぁ、なんてウブな反応なんだろう。俺は女の子の裸を見てもそんな頬を赤らめたり驚いたりしない。したくてもできないのだ。

「仁奈はやっぱり、まだお子ちゃまやな。」
「…そんなことないよ。」
「そんな股間くらいでキャーキャー騒いどるのなんか小学生やで。」
「騒いでないし!びっくりしただけ!」

かわいい。と喉から声が出そうになったが抑えた。こういうとき自分の彼女だったら、気兼ねなく愛を伝えられるのに。侑士はただ横に並んでいるだけの仁奈が遠いように思えた。

「私は侑士みたいに、そんな下品なこと言ったりしたりしないもん。」
「下品はひどいなぁ。俺は風呂入ってただけやのに。」

侑士は仁奈の頬を軽くつついた。仁奈は少し不貞腐れている。

「侑士の変態!」
「男はみんなスケベやで。」
「そんなことない。そうじゃない人もいるもん。」
「誰や。」

侑士が聞いたところでエレベーターが仁奈の住む階に着いた。仁奈は降りると、

「内緒!」

とだけ言った。その瞬間にドアは閉まってしまった。侑士は内臓がえぐられるような、冷や汗を感じた。ほんまに、誰やねん。大概検討は付いている。だが認めたくないのだ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。