二次創作小説(紙ほか)
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- ハニカム(テニプリ夢)
- 日時: 2021/06/07 02:22
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
かわいいかわいい女の子
葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。
沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。
未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。
- Re: ハニカム ( No.3 )
- 日時: 2021/02/16 16:30
- 名前: ぺ (ID: W5lCT/7j)
返事がない。自分から知らない人に話しかけるなんて滅多にないから、こんなものなのかと思った。蓮二がため息を吐いて、入り口の方に向き直るとその瞬間にドアが閉まった。
「あ…」
これは非常にまずい状況である。2年間公欠以外遅刻無欠席の彼にとって、もしかしたら遅れるかもしれないと言う焦りが込み上げてきた。とりあえず次の駅で降りて早足で歩けば…時計を見ると8時10分なんとか間に合いそうである。しかし、場合によっては、などと頭の中が珍しく混乱していると、目の前の立海生が起き上がった。黒髪がさらさらと頬の横を伝って、きれいな頭に元通りになった。女子高生にしては化粧っ気のない顔で、真っ白な肌に黒いまつげと大きな瞳が映えている。鼻も唇もきゅっと小さくて、どちらかと言えば小動物を思わせていた。立海生は彼女と蓮二だけである。彼女は携帯を開いて時刻を確認したようで、次の停車駅に来るとそそくさと降りて行った。蓮二のことは素通りである。
「…」
蓮二は彼女の容姿には可憐さを感じたが、なんせ自分のありったけの親切を無視られたことで少々彼女に無礼を感じていた。
- Re: ハニカム ( No.4 )
- 日時: 2021/02/17 01:30
- 名前: ぺ (ID: W5lCT/7j)
いつも一駅の乗り過ごしたときのための時間を換算して通学している。葉山仁奈は寝起きの思い足を上げながら改札までの階段を登っている。携帯を開くと、また友人の真里からメールが来ていた。
仁王先輩めっちゃいいにおいするぅ!あいさつできた!
とかわいい絵文字がついていた。
朝から元気だね
とだけ返して、ぞろぞろとまばらな人の中で階段を上がっていた。しかし、先程から膝とふとももの間に何かひんやりとしたものが当たるような気がした。気になったが、過度に後ろを振り向いたりはしなかった。ただ足音が異様に近い気がして、思い切り後ろを振り返った。
「おい、」
男が手に携帯を持っていた。それに目を丸くしたのだが、それよりも隣の立海生が携帯を持っている男の手首をガッツリ掴んでいた。
「警察に行くぞ。」
高校生の方がガタイがよく、いともかんたんに男の携帯を片方の手で取り上げてしまった。
「返せよ!!」
立海生に掴みかかるが、あっという間に後ろに手を回され男は身動きが取れなくなってしまった。顔をしかめる男がとても苦しそうだったので、盗撮されていたのにもかかわらず男の肩が心配になってしまった。
「おい、お前の大事なものなんだから持っておけ。証拠隠滅だけはするな。」
男の携帯が立海生から手渡された。仁奈がフォルダを開けるとガッツリ下から仁奈の下着が取られている。まだガラケーの結構大きな着信音が必ず鳴る時代なのに、人混みで音が聞こえなかった。
「警察だけはやめてくれよ、!」
「…どうする?」
立海生に判断を委ねられた。仁奈は少し迷った。これで、私が盗撮にあったってバレたらどうしよう。こういうのって警察とか目の前にいる立海生に見せないといけないんだよね。今は盗撮に対しての嫌悪感とか気持ち悪さよりも、自分の羞恥の方が勝ってしまっている。
「俺は別にお前の下着には興味ない。お前に二次被害を及ぼすようなことはしないから、安心しろ。」
「…そんな言い方する?」
「俺が興味なくても、お前の下着はこいつの手で全世界に晒されるんだ。高値でその写真が売買されたり、お前が数日かけて特定されることもあるかもしれない。それでいいのなら。」
蓮二は恐らく彼女の羞恥心やこれからの学校生活のことを組んで言ったのだろう。しかし仁奈にはただの悪口にしか聞こえなかった。この立海生が信用できるか否か。そこが重要なのだ。
「…わかった。警察に行く。」
仁奈が頷くと、騒ぎを耳にした駅員たちがぞろぞろと降りてきた。
「どうしたんですか!?」
「盗撮犯を捕まえました。この生徒が被害者です。」
駅員数名に男を引き渡すときに、また暴れたのでみんなで押さえ込んだ。仁奈は呆然と見ているだけだったが、蓮二はその場をすぐ立ち去ろうとした。
「待って!」
とっさに仁奈は蓮二の手首を掴んだ。
「一緒に来て。一人じゃ怖い…」
やっと身震いがしてきた。男の顔が妙に気持ち悪く思え、取り押さえられている男と目があってにやりと微笑まれた。
「いやっ!」
仁奈はスクールバッグを男に叩きつけようとしたが、蓮二に腕を掴まれて制御された。
「かっこいい彼氏がいてよかったねぇ、にいなちゃん。」
仁奈に向かって言葉を吐き捨てると、また駅員に強く地面に押し付けられていた。
「はぁっ、な、なんで名前知ってるの…?」
「心配するな。お前のスクバのキーホルダーを見ただけだ。」
真里とオソロの星型のチャームにローマ字でNIINAと飾ってあった。仁奈は少し脱力して、蓮二に肩を支えられていた。警察がその場にやって来て、また少し人だかりが大きくなった。
「私も付き添います。」
警察に一言伝えると、仁奈と一緒に警察のあとについていった。
- Re: ハニカム ( No.5 )
- 日時: 2021/02/17 02:31
- 名前: ぺ (ID: W5lCT/7j)
徒歩15分の警察署に行き、女性警官が一通り話を聞いて、携帯電話を預けた。最後、警察から渡された書類に生年月日と名前を書いた。
「一つ下なのか。」
「じゃあ2年生なの?」
「あぁ。特進1クラスにいる。」
「頭いいんだ。私は、普通科の1クラス。」
蓮二も名前と身分証を確認され、フルネームを書いた。
「葉山仁奈か、覚えた。」
「柳蓮二、蓮二くん。蓮二?蓮二せんぱい?」
「好きなように呼べばいい。」
女性警官になだめられてから、少し落ち着いたのか表情はいくらかもとに戻ったようだ。仁奈は泣いたあとで少し目が腫れていて、蓮二は深くにもかわいいというか赤子のような愛おしさを感じてしまった。また婦人警官が二人の元に戻ってきて、
「学校に報告しましたんで。葉山さんの担任のお話したら今日は休んでいいって言ってたけど、どうします?」
「ちょっと学校に行きづらいかも、休みます。」
「彼氏さんどうされます?そばにいてあげたら?」
「…あ、あぁ…一日付き添います。」
「…え、彼氏じゃなくて」
「じゃあ学校に連絡しておきますね。葉山さん、証拠はちゃんと預かるから犯人のところにもデータは残らないから。安心してね。」
「…はい、ありがとうございます」
二人は警察署を出た。カップル扱いされて気まずそうな仁奈と反対で、蓮二の顔色は特に変わっていなかった。
「ありがとう。蓮二いたからちょっとは辛くなかったよ。」
思い切り名前を呼び捨てにされて、また少々いいようのない腹立たしさを感じているが目を瞑ることにした。
「家は近いのか?」
「ううん、東京から通ってるからまた電車で帰らなきゃ。」
「そうか。」
蓮二は駅の方に歩き始めた。ぱたぱたとペンギンのようについていく仁奈は無理やり蓮二と歩幅を合わせた。
「蓮二はお家どこなの?」
「●●が最寄りだが、小5までは俺も都内に住んでいた。」
「そうなんだ。ねぇ、氷帝学園ってわかる?」
蓮二の足が止まった。
「もちろん知っているが…何故?」
「私、中学までそこに通ってたの。でも高校は外部進学にしたんだ。」
「練習試合で行ったことがあるくらいだが、部員はよく知っている。」
「そうなんだ。何部なの?」
蓮二がテニス部と話すと、仁奈は目を輝かせた。
「跡部景吾って知ってる?」
「勿論。変わり者だがシングルスの腕は確かで、今度うちの部長に勝てる確率は6割を超えている。」
「景吾は頭もいいからなぁ。モテるし。」
「親しいのか?」
「うん。私、テニス部と仲良いよ。なんかみんな優しいから、ついついウザ絡みしちゃって。」
それはきっと仁奈の容姿が淡麗だからだろう。男子高校生はそのようなものである。蓮二はすぐにそうだとわかったが、口にはしないようにした。
「忍足侑士ってわかる?」
「あの、眼鏡の長髪の男か。」
「そうそう。中等部の転入生なんだけどね、同じマンションに住んでて父親同士が仲良いから、ちっちゃい頃から遊んでたんだぁ。あ、弱点もわかるよ。」
「参考にならなさそうだが、一応耳に入れておくか。」
「女の子!かわいい女の子に弱いの。」
そのようなことだとは思っていたが…なんだか葉山仁奈はそうとう明快な人物である。底抜けに明るいし、よく笑う。
- Re: ハニカム ( No.6 )
- 日時: 2021/06/07 02:07
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
二人は電車に乗った。途中まで蓮二も同じ電車に乗るのだ。彼は4駅乗ったあと、乗り換えて2駅。そこから15分歩いて自宅なのだ。
「今朝のことがあったが、電車は怖くないのか?」
「大丈夫。だって、蓮二いるし」
「俺はすぐ降りるぞ。ここから28分で家に着くからな。」
え?一緒にいてくれるんじゃないの?と言わんばかりに、仁奈は困ったような悲しそうな顔をした。
「今日は暇ができたから、選手権のデータ分析に時間を使うんだ。すまない。」
「そんなぁ。でも部活のことだったら仕方ないよね…わかった。」
確かに、仁奈を一人にするのは少し気が引けた。これから長時間電車に乗って、乗り換えの度にまたホームから移動しなければならないのだ。それが怖いというのは無理ないし、必然的である。
「葉山は、ここからどれくらいで家に着くんだ?」
「えっとねぇ…まず12駅乗って〇〇で乗り換えて✕✕まで乗って、そのあと2駅また地下鉄で■■で降りて、徒歩5分でおうち。」
「よく通っているな。」
「でしょ!?朝はね、自分で起きて、一人でお手伝いさんの作り置き食べてる。」
仁奈の最寄り駅はよく聞く高級住宅街の名前だった。仁奈の両親はどちらとも医者である。母親が婦人科医で父親が外科医。父親はアメリカに単身赴任していたこともある。よく家には祖父母が来ていて、幼少期はほぼ祖父母との思い出しかない。蓮二の家は3世代で住んでいて、父親は公認会計士で祖父は弁護士である。だいぶ二人とも裕福な家庭に生まれているが、仁奈はおちゃめで子どものような佇まいで、一方蓮二はもう年を召したサラリーマンのような風格があった。
- Re: ハニカム ( No.7 )
- 日時: 2021/02/20 01:33
- 名前: ぺ (ID: O62Gt2t7)
「葉山さんは、恋愛の話とか事務所的にオッケーなんですか?」
「あ、はい!特には言われてなくて…たぶんギリギリオッケー?」
司会者の芸人と周りのタレントたちが囃したてる中に、仁奈は笑いながら困ったような顔で座っている。
「えー!じゃあ聞いちゃいますか?!」
「知りたーい」
「どんな感じだったん?」
仁奈はふぅと息を吐いて、少し緊張するのを隠すように笑ってみせた。
「高校のときはずっと同じ人と付き合ってましたよ。」
きゃー!ピュアーすぎる!とかなんとか画面から声が湧き出てきた。
「葉山仁奈と蓮二って高校一緒なんだっけ?」
夕飯時にテレビに写っているので、そう聞かれても仕方ない。そうだ、と一言だけ返してご飯を食べすすめていた。
「やっぱモテた?」
「まぁ話題には聞いたことあるが。」
「蓮二と葉山仁奈が出会ってたらさ、蓮二もあの子のこと好きになってたよね絶対。」
「それはわからない。」
遮るようにテレビからは
「…すごくすてきな恋愛だったなって、今でも思います。思い出じゃなくて、記憶として良いものですよ。」
「ふぁー!元カレ泣いてるんちゃいます?」
泣かない。枯れるほど泣いたから、もう大丈夫だ。そう心に言い聞かせていた。やっと平静を保てるようになったから。
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