二次創作小説(紙ほか)
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- ハニカム(テニプリ夢)
- 日時: 2021/06/07 02:22
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
かわいいかわいい女の子
葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。
沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。
未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。
- Re: ハニカム ( No.13 )
- 日時: 2021/03/10 04:37
- 名前: ぺ (ID: i8PH9kfP)
五限目は、文系数学だった。廊下を渡っていると遠くから葉山が見えた。友人と楽しそうにしていた仁奈を見て、蓮二は仁奈が完全に立ち直ったと思った。久方ぶりだな、元気か?なんてフレンドリー話しかけに行ったら引かれるだろうか。
「左の子クソかわいくね?」
「だよなー。めっちゃエロいことしたい。」
「案外、ああいうのが一番何でもしてんだよな。」
仁奈とすれ違う前に、蓮二の前を歩く奴らは仁奈を見てそう言い捨てた。高校生だからそのような考えに至るのも、世間一般では普通である。しかし、蓮二にはひどく卑しいものに聞こえた。俺は奴らと違う。ここで乗ったらいけない、と蓮二はどこに向けていいかわからない複雑な思いをしまいこむことで精一杯だった。無視されたであろう仁奈は、笑いかけてくれたのに。一日中、そのことが離れなかった。
「今週の金曜日、氷帝っすねー。」
赤也が部室で着替えながら、丸井と話していた。
「楽しみだなー。中学依頼だな。ガチでやるの。」
「あ、柳先輩!うちのクラスに氷帝中の子いるんすよ!いろいろ氷帝のやつらのこと聞いてきます!」
「…それには及ばないな。もう分析は初めている。」
「えぇそんなぁ。うちのクラスの氷帝中の子めっちゃかわいいっすよ!」
丸井が食いついた。
「どんくらい?」
「マジでかわいいっす。俺はめっちゃ仲いいんで男友だちって感じなんすけどー、こないだは野球部の奴にメルアド聞かれてました。俺のメルアド教えてましたよ勝手に。」
「赤也のかわいいのハードル低いからなぁ。」
ジャッカルが呟いた。蓮二はそそくさと部室から出た。俺も同じように惹かれているというのか?わからない。
「何か悩んでいるね?」
部長の幸村精市に笑いかけられた。もう何も言えなかった。
- Re: ハニカム ( No.14 )
- 日時: 2021/03/14 03:11
- 名前: ぺ (ID: fGppk.V/)
とうとう試合の日が来た。真理が風邪で休んだので、ビデオカメラで仁王先輩の姿を撮ってくるように頼まれた。仁奈はビデオカメラ片手にテニスコートに向かうことにした。
「あ、もしもし、沙由香。今どこ?」
迷っちゃったー!亮ももう試合してるだろうしまじでどこかわからない。
沙由香は氷帝学園中等部までの友人である。ショートカットでバレー部の沙由香は、2年ほど宍戸亮の彼女である。オフ日と亮の試合が重なったので見に来たという。二人は一緒に観戦する約束をしていた。
「第二体育館の前?今から行く!」
3階から降りて、昇降口に出た。靴を履き替えて外に出ると見覚えのある後ろ姿がベンチに座っていた。
「あれ?侑士…?」
侑士は仁奈の方に振り返った。
「どうしたの?こんなところにいて。」
「だるいねん、今日。」
侑士はあくびをした。
「侑士ってさ、何でもサボるのに何でも出来ていいよね。」
仁奈はちょっと不貞腐れている。
「なんでおこっとん。」
「頑張るって昨日言ったじゃん!だから応援に来たのに。」
「…」
侑士は仁奈を見上げてしばらく黙っている。仁奈は侑士の視線を集めすぎて、小首を傾げている。
「…かわええな。」
「え?」
「そんなん怒られたら頑張るわ。」
私がだらけてる侑士に注意したら、可愛いってどういうこと?仁奈の頭は何を考えたらいいのかわからなくなっている。
「よくわかんないけど、みーちゃんも見てるんだから頑張ってね。」
「ありがとう。」
侑士は仁奈の頭を軽く撫でた。ふざけてヘッドマッサージのようなタッピングの手つきをしてくるので、仁奈は面白がって侑士の手を払っている。
「コート行こかぁ。」
「うん!沙由香が来てるの今日。」
「あぁー、宍戸言うとったわ。今日めっちゃ調子ええであいつ。」
「想像できる。」
侑士と他愛も無い話をしながら二人は体育館の前に差し掛かろうとした。その前に侑士が立ち止まった。
「どーも。柳くん…やんな?」
相手方、立海大附属のテニス部である。
「そうだ。忍足侑士、今日はよろしく頼む。」
二人の間には対戦相手特有の気まずい雰囲気が流れている。威嚇しあうわけでもないし、仲良くなるわけでもない。仁奈は妙な空白の時間を埋めたほうがいいのか少し悩んだ。
「蓮二、久しぶり…。こないだ廊下であったとき無視したよね?」
葉山の焦った表情は何か俺には言わないようなことがあるように思えた。まさか、隣の野郎と付き合っているのか。蓮二は急に仁奈に話しかけられ、
「さぁな。」
と一言だけ返した。
「うちの葉山が話しかけとんのに、ほぼ無視やんなそれ。」
「無視?返答はしているだろう。」
侑士は少し怪訝そうな顔をしている。
「試合前にうつつを抜かすような奴らとは、関わり合いたくないだけだ。」
「うつつって…別に喋ってるだけだよ。」
「せや。試合前にこんなかわいい女の子から応援されたら、モチベーション爆上がりやで。」
くだらない、と思い蓮二は無視して顧問がいる職員室に向かおうとした。職員会議中だが、試合のオーダーのことでどうしても相談したかったのだ。
「頑張ってね、応援してる。」
仁奈は蓮二の背中に向かって言った。隣で侑士は蓮二を見ている仁奈に、仁奈への視線を悟られないように彼女を見ていた。仁奈は俺のこと、見てへん。
- Re: ハニカム ( No.15 )
- 日時: 2021/03/15 02:33
- 名前: ぺ (ID: vevJKpiH)
困り顔、少し落ち込んだような声。全部が全部、蓮二の脳裏に焼きついていた。職員室に顧問はおらず、引き返すことにした。何故素直に手を振り替えせないのか、何故ありがとうと言えないのか。蓮二は未だにわからないでいた。葉山を好きになるには自己要因がほとんどないからだ。魅力的だから?容姿が淡麗だから?わからない。
「スカしとんなぁ。」
「…そうだね。」
「悲しい顔せんといて。俺まで悲しくなるわぁ。」
「なんで侑士まで悲しくなるの?」
仁奈は途端にまた笑顔になった。笑う必要なんかないんやけどなぁ。少し歩いて、沙由香と二人は合流しコートへ向かった。
- Re: ハニカム ( No.16 )
- 日時: 2021/04/07 02:20
- 名前: ぺ (ID: 8.sEFFTR)
沙由香と由奈は応援席に向かった。応援席脇の通路から既に混み合っていて、声援やら太鼓の音やら騒がしかった。二人はほとんど黄色に染まる応援席の中で、青色が一箇所に集まっているところを見つけた。3分の1以下の面積だったが、横断幕や旗は立派なものである。そこ目掛けて人混みに突っ込んでいくと、侑士の母親が先に仁奈を見つけていてこちらに手を振っていた。
「席、取っといたから!さ、座って!」
「ありがとう、みーちゃん。」
「ありがとうございます。」
向日岳人の母親と日吉若の母親もいたが、今日は応援に来ている母親たちは少なかった。仁奈は早速ビデオカメラを構えた。仁王先輩とやらを探さなくては…ズームにしたり左右に動かしたりしているが、仁王先輩の特徴を忘れてしまったので誰か誰だかわからない。6面のコートにはそれぞれまばらに人がいるが、それでもかなりの部員数である。赤也しかわからないよ、と嘆きつつ赤也がいたので取りすぎてるアップにしておいた。沙由香が画面をのぞき込んできた。画面には天然パーマの少年のような男子高校生が写っている。あくびをしていて、テニスボールを軽く返しているようだ。赤也は真理が仁王先輩の映像をほしがっていることを知っていたので、仁奈のカメラに気がつくなりウインクをしたり、お尻を左右に揺らしてみせたりしている。
「彼、かわいいじゃん。」
「でしょ?高2なのに自分の名前ローマ字で書けないの。」
「それは困る。」
赤也の母性本能をくすぐる動きの横で、浅黒い坊主頭のイケメンが赤也のお尻を軽く叩いている。
「何やってんだ。」
「ジャッカル先輩もファンサしてくださいよぉ。」
「誰得だよ。」
ビデオカメラの方を向くと、ロングヘアーとショートカットの女子生徒が手を振っている。ショートカットの一人は氷帝学園の制服で、ロングヘアーの方は立海の制服を着ている。ジャッカルは軽く一礼した。
「坊主の人イケメン!」
「ほんとだぁ、も○みちみたい。」
渋さより爽やかで目鼻立ちが濃いめである。とにかく仁王先輩を探さねば、とカメラを動かしていると侑士が汗を流してラリーをしていた。
「みーちゃん、侑士いる!」
「ほんまや。あれはかっこつけてんで。」
「今日もかっこいいねぇ侑士くん。」
他の保護者に褒められて、侑士の母はまんざらでもなさそうである。
「ねぇ宍戸先輩が沙由香に手振ってるよ。」
「やだー、真面目にやってよね。」
と言いつつも手を振り返している。とても可愛らしい沙由香であった。
「亮、頑張ってぇぇ!」
「沙由香ぁ、ありがとよ!」
いちばん端のコートからでも良く声が聞こえてくる。結局、二人はラブラブなのだ。しばらくして試合が始まった。コートの一角では赤也と侑士が握手を交わしている。この二人が試合をするのだろうか。隣のコートでは仁王、柳生と宍戸、鳳がコートに入っている。
「仁王先輩ってだれだ…」
「仁王先輩って叫んだら?そしたらその人振り向くかもしれないし。」
「やだよ絶対…」
はっきり言えば、赤也と蓮二意外と誰もわからない。しかも今日はどちらかといえば氷帝学園の応援に来ているのだ。どちらが優勢で、劣勢なのか若干の区別はつくが正直ルールがわかっていない。
「侑士と赤也すごいねぇ。」
「亮が負けてる…!」
横で小刻みに震える沙由香は、今にも泣き出しそうである。侑士は赤也のリターンに追いつくことができなかったようだ。とても悔しそうにしている。あんな温厚でヘラヘラしてる侑士が悔しそうなのは滅多に見られない。赤也もいつも騒いでいるか寝ているかの二択だったが、真剣な表情である。
「なんか全然顔違うね。」
「真剣でかっこいいよねぇ、亮。」
「…そうだね。」
他のコートでも試合が行われている。蓮二は氷帝のサブメンバー相手に既に大差をつけている。何故涼しい顔をしてあんなに動けるのか?そこが疑問だが、悔しそうな顔も喜ぶ顔もしない。それは感情が表に引き出されるほど相手に興味がないからだ。
「あー!亮が負けちゃう!」
「長太郎くんも頑張って!」
- Re: ハニカム ( No.17 )
- 日時: 2021/04/23 01:29
- 名前: ぺ (ID: EjFgzOZO)
応援していたこちらもドッと疲れている。赤也が無理やりビデオカメラの画角に仁王先輩を押し込んでくれたからよかったものの、氷帝学園ははっきり言って勝てた試合が殆ど無い。めずらしく仁奈の目に見えて、侑士は苦痛の表情を浮かべていた。ベンチに音を立てて座ったあとに、足で地団駄を踏んでいた。練習試合の終わり際、ビデオカメラの電池が切れそうになり、再びカメラを仁王先輩に合わせた。
「あ…」
そう遠くないところで仁王先輩と蓮二が話している。蓮二は微笑んでいて(あれは蓮二でいう爆笑)、仁王も楽しそうである。お友だちとあんなふうに笑うんだ。仁奈のことは無視していた蓮二だが、やはり気の許したチームメイトとは仲睦まじい。
「お前、今日回転寿司奢れ。」
「あと2勝足りなかったな。しかも4試合目の勝率が8割2部以上だというのにあのフォアの動きは…」
「すまん、すまんて。はいはい、回転寿司つきおうてなー。あ、真理ちゃんの友だちやの。」
仁王先輩はすっかり仁奈を把握したのか、仁奈に向かって手を振った。
「え?!なんで!私、真理じゃないんだけど。」
「あんたも振り返しなさいよ!!」
沙由香に思い切り肩を叩かれた。
「蓮二も振り返しんしゃい。」
「俺には必要のないことだ。第一…」
「屁理屈こねないでください。」
柳生もいっしょに手を振っているので、なんだかカオスである。蓮二は仕方なく肘と手首をまっすぐにして挙げた。
「わ…」
仁奈はそれに応えるように手を振り返した。
「蓮二くんのときにしか反応してくれませんでしたねぇ。」
「ざんねんざんねーん。」
「根拠のない言いがかりはやめるんだな。」
蓮二はブツブツ反論しながら、すぐさま手を下ろして二人に付いていった。
「あ、バッテリー切れたじゃん!」
「ほ、ほんとだ。」
この瞬間、プツンとバッテリーが切れてしまった。
「どうしよう!!切れたら全部撮れないかも!」
仁奈は泣きそうになって、沙由香の方に倒れた。
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