二次創作小説(紙ほか)
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- ハニカム(テニプリ夢)
- 日時: 2021/06/07 02:22
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
かわいいかわいい女の子
葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。
沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。
未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。
- Re: ハニカム ( No.8 )
- 日時: 2021/02/22 00:20
- 名前: ぺ (ID: N9DlcNaW)
電車で眠っている仁奈を起こすまいと、ずっと肩を貸していたら仁奈の最寄り駅まで来てしまった。時間はあっと言う間で、蓮二も心なしか眠気がしてきた。もちろん今まで、女子とは手を繋いだり、ハグをしたことはある。だけど2時間半も隣で異性とくっついていたことはないのだ。当時は蓮二も高校生だったので、仁奈のシャンプーか柔軟剤か柔らかくて少し花のような甘い香りに少し赤らんでしまっていた。
「…起きろ。」
「うー…おはよ…」
蓮二が仁奈の体に触れないように、自分の肩を軽く揺すった。寝ぼけたまま、仁奈は立ち上がって電車を降りた。二人はホームに降り立っている。
「あれ?蓮二もいる…」
「お前、それはないだろう。」
仁奈が目を覚ましたので、目の前に蓮二がいることに少し驚いている。心配だったから、眠っている仁奈を起こせなかったから。とわざわざ言うのもかっこ悪いなと思って特に何も言わなかった。
「ありがとう、私のこと気にかけてくれたんだね。」
「…気にかけているというのは、語弊があるな。警察から一日一緒にいるようにと言われたから、送っただけだ。」
わかってるよ。と仁奈はそれだけ言って、
「ねぇ、お礼に何かしたいんだけど。例えばご飯奢るとか。」
「そうだな。それくらいはしてもらうのが妥当だろう。」
珍しく他人からの誘いに乗ってしまった蓮二は仁奈の行きつけのレストランに行くことになった。仁奈は蓮二の少し前を歩いている。5月下旬の東京はもう暑くて、日差しが強い。大通りに出てから、また5分ほど歩くとおしゃれなカフェや雑貨屋が立ち並ぶ並木道に入った。
「ここね、冬は木がライトアップするんだ。すっごいキレイだよ。」
ここ!とお店に入った。蓮二もあとに続くとケーキが並んでいる。
「ご飯おごるのはまた今度。いまおやつの時間だから、ケーキ食べよう。」
蓮二の有無も聞かずケースに目をくらませて、新作のレアチーズケーキとプリンタルト、オレンジジュースを選んだ。
「抹茶ムースとアプリコットのショートケーキで。あと、コーヒーを一つ。」
仁奈がそそくさと財布を取り出している間に、蓮二はデビットカードで支払いを済ませてしまった。
「ちょっと!私が今日は奢るって言ったのに。」
「奢られるのは好きじゃない。何か借りを強要されたような気になる。」
「そんなこと気にしなくてもいいのにぃ。」
仁奈が少し不貞腐れている間にケーキとドリンクがそれぞれトレーに乗せられた。二人で向かい合って座席に座った。
「蓮二は和風が好みなの?あんずと抹茶だよね?それ」
「あぁ、洋菓子はしつこいから苦手なんだ。」
「じゃあケーキだめだった?!」
仁奈が途端に落ち込んだようにうつむいてしまったので、蓮二はいや、そのようなことはない。と言った。
「美味しーい?」
抹茶は珍しく苦いと感じるくらいだった。好みの味だったから一言、美味いとだけ呟いてコーヒーを口にした。仁奈はぱくぱくと食べすすめている。
「制服で来るところじゃなかったね。おしゃれな格好で来ればよかった。」
そうだな、と返すと仁奈にはお互い私服で会うことが必要だと捉えられるかもしれない。それは、またこの日が終わっても会おうということになるかもしれない。
「制服でも気にならないだろう。葉山は、身なりについてはうるさいのか?」
「うーん、あんまり気にしないなぁ。おしゃれは好きだけど、毎回出かけるたびに気合い入れるわけじゃないよ。」
仁奈はあまり気にしていないようだった。なんだか蓮二ばかりが考えさせられているように思えて、彼は少し調子が出ないと思った。
「蓮二は、おしゃれするの?」
「人並みだな。姉にショッピングセンターに連れ回されて、マネキンのようになることもあるが。」
「へぇー、楽しそう。蓮二ってスタイルいいから何着ても似合いそうだなぁ。」
そう言って仁奈はバッグから、雑誌を取り出した。女子高生が好むファッション雑誌だった。
「学校にそんなもの持ってくるな。」
「固いなぁ蓮二は。いいからこれ見てよ。」
雑誌のページをパラパラとめくると、男子高校生のファッションが載っているページが開いた。
「なんか、こういうのが流行ってるんだって。」
当時はハーフパンツや半袖のパーカーなどがよく載っていた。みんな髪の毛もパーマのように整えている。蓮二は対象的にストレートの髪質をそのままに伸ばしているので、前髪は下ろしたままだった。
「でもさぁ、蓮二はもっと大人っぽいほうが似合うよね。ポロシャツとか革靴とか。」
姉にも同じようなことを言われた。
「葉山はどういう服の系統を好むんだ?」
「海外ドラマ好きだから、それ見ておしゃれしてる!」
ハイウエストのチュニックとか裾が広がってるジーンズとか、シンプルなものを好んでいる。サングラスもかけるし、ミニバッグも引っ提げて歩くと言った。イメージとしてチームメイトの丸井ブン太が好むような、フリルやリボンをあしらったデザインのものを着ると思っていた。次から次へと仁奈といると、彼女自身について考えさせられる。蓮二はわざと仁奈の話に興味がないようにしていた。なんだか、彼女のことを知るのが怖いのだ。
- Re: ハニカム ( No.9 )
- 日時: 2021/06/07 02:11
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
仁奈とは、すぐに解散しようと思った。実際にケーキ屋を出たら駅に直行したし、朝練のときの通学通りに、読書をした。葉山は一体何を考えているのだろう。初めて会った男の肩にもたれたり、ティータイムに連れ出したり。恋愛において自他共に認める古風な思考の持ち主なので、彼は少々戸惑っていた。彼が愛する純文学にはそのような女性は出てこない。蓮二はため息をついて、自分の頭を読書にフル稼働させようとした。
「ただいまぁ。」
からっぽの家に返事はないのは当然である。マンションだというのに螺旋階段があり、その上には夫婦と仁奈の寝室がある。誰もいないリビングの広いソファーに寝転んだ。昨日、家政婦が来てご飯を作り置きしてくれたらしいのでお腹が空いたらそれを食べることにした。娘が変質者に合ったというのに、一向に親からの着信はない。そもそも警察と学校からの電話に出たのだろうか。ぼんやりそのようなことを考えていたら、メールが来た。
おはよーさん
今日母さんが仁奈のこと夕飯誘ってんねんけど、一緒に食べる?
忍足侑士からだった。仁奈の両親と、侑士の父親は大学、大学院の同級生である。同じ病院で研修医として働いていたので、侑士が氷帝学園に転入してくる前からの仲良しである。小さいときに偉い人のパーティーに連れて行かれたときはつまらなくて二人で遊んでいたし、今でもお互いの家に行き来している。専業主婦の侑士の母親は、いつも家に一人の仁奈のことを心配して一緒にご飯を食べよう誘ってくれる。
おっけー
部活終わったら行くね
可愛い絵文字と共に返信すると、すぐに返事が返ってきた。
授業中とちゃうんか?
授業集中せなあかんでー
怒りのマークが添えられた来たが、仁奈は早退したことを伝えた。てか、ゆーしもなんで学校なのに携帯いじってるのよ。
体調でも悪いんか?
うん
ちょっと頭痛くなったの
女の子の頭痛はあかん
俺も帰る
ありがとうー
だけどちゃんと学校で一日過ごして下さーい
(笑)
侑士から返事は来なかった。
「あかんわ跡部ぇ、俺頭痛いねんけど。」
「…貴様、何が言いたい。」
「仁奈が頭痛いらしいねん。看病してって言われたわーほんまに困るわぁ。」
後ろの席でコソコソと二人はやり合っていた。侑士はダルそうなところがあるのに、どこかひょうきんなところがある。真面目そうな端正な顔立ちなのに、そのギャップにやられる女子が多い。跡部景吾のファンがたまに彼に流れていることがある。仁奈が部屋着に着替えてしばらく寝転んでいると、インターホンが鳴った。出ると侑士がいたのだ。仁奈はびっくりしたが、
「え、ほんとに帰ってきたの?」
「あかんかった?」
「だめとかじゃなくてさ、学校、いいの?」
「いいから開けてやー。」
仁奈はとりあえず入り口を解除すると、慌てて上着のパーカーを着た。
「お見舞いに買ってきたで。チーズケーキ。」
侑士がダイニングテーブルに置いたものは、蓮二と今日食べたお店の箱だった。侑士はいつものようにソファーに座った。
「ありがと。もう少し良くなったら食べるね。」
「帰りに病院寄っておとんから薬もろて、あ、入ってる胃薬も一緒に飲まなあかんで。胃荒れんねん。」
ビニール袋を渡された。中には錠剤が入っている。
「侑士はほんとにお母さんみたいだよねー。こないだは宿題代わりにやってくれたし、前は叔父さんの結婚式のためにドレス買い付けに行ってくれたし。」
「俺のことオカンて言うの、仁奈くらいやで。」
「ほんまにー?」
仁奈はたまにからかったように侑士の関西弁を真似てくる。それが、彼にとっては悩ましいものであった。
「いいお嫁さんになるよ。」
仁奈は冷蔵庫からワインを取り出した。スパークリングで全く苦味のないものしか二人は飲めないのだ。二人がワイン飲むようになったきっかけは、中学生の時に侑士が父親に連れられて行った食事会で、彼が成年と間違われてフルボディを飲まされたことから始まる。未だにその話で二人は笑うことがある。
「仁奈、酔わへんよなぁ。可愛げないわ。」
「侑士はもっと精進しないとだねー。」
仁奈がテレビをつけるとお昼の娯楽番組がやっていた。このようなバライティ番組は学生は中々目にする機会はない。
「こんなん見るのもうガキ以来ちゃん。部活やっとったら朝からもうずっと出ずっぱりや。」
侑士はネクタイを外して、机に置いた。
「はぁー、今日から朝練やからほんまに眠すぎる。寝てええ?」
「いいよ。あ、ゲストルーム使いなよ。ソファーじゃ何だし。ベッド行こうよ。」
はぁ、こいつほんまに天然かましとるんか。侑士はため息をつきながら、階段を上って仁奈にゲストルームに案内された。
「じゃあ、起きたら降りといでね。」
「なんでや。一緒に寝ようや。」
ベッドに上がった侑士は仁奈を昼寝に誘った。
「もう幼稚園児じゃあるまいし。侑士もかわいいところあるじゃん。」
「なんやて。」
侑士は起き上がって仁奈の首をふざけて腕で締めるようにした。もちろん力を入れてはいないのだが、仁奈はそれが面白く、ふざけて抵抗した。
「もー、侑士じゃなかったらほんとにキレるからね。」
仁奈は安安と侑士の腕をすり抜けて出ていってしまった。侑士は仕方なくベッドに入り、目を閉じた。こんなに虚しい二人の時間があるのだろうか。階段を降りた仁奈はテレビを見ながらソファーで横になっていた。あ、蓮二にお礼言わなきゃ。と思って携帯を開いたが、蓮二の電話番号を知らないことに気がついた。友人の範囲で、彼の電話番号を知る人は…赤也しかいない。でもいきなり聞いたら絶対質問攻めにあう。赤也は小学生のような無邪気さと言動にかわいさがある。麻里はよく彼に赤ちゃん語で接している。本当にあの二人は面白い。たまに三人でファミレスで時間を潰すこともある。
仁奈ぁーー!大丈夫かぁー
そんな二人のことを考えていたら学校にいる麻里から、メールが来た。
「葉山、今日は美味しいご飯を食べて、お風呂に入って、ちゃんと寝ろよ!!」
何故か赤也が仁奈を激励する動画まで添付されていて、仁奈は声を出して笑ってしまった。
ばり寝てるから大丈夫!赤也なんなん(笑)
と返信して、二人はしばらくやり取りをしていた。仁奈もそのうち眠くなってきて、眠ってしまった。
- Re: ハニカム ( No.10 )
- 日時: 2021/03/10 02:30
- 名前: ぺ (ID: i8PH9kfP)
「仁奈ちゃん、ほんまに無理せんといてよ?」
「大丈夫!もうご飯たべたら元気になったから!」
侑士の母の心配を他所に、仁奈は忍足家自慢のカレーを食べている。
「食い気があれば十分元気やな。」
「ちょっ、侑士ぃ。女の子にそんなん言わんとき。」
侑士の母は神戸育ちの気品の良いマダムなのに、話し方はいっちょ前に大阪のおばさんである。それが親しみやすくて仁奈は大好きなのだ。侑士の母はハイブランドのパーティや化粧品の発表会に出向くことが多く、よく仁奈にもプレゼントしている。「ママにゆったらあかんでー。」といつも言われている。
「今度、立海行くで。練習試合するねん。」
「そうそう、向日さんのと話してたんよ。あんまり高校生の息子の試合に顔出すの良くないって言って私ら行かんのやけど、たまにはねぇ。仁奈ちゃんもおるし。」
「ええけど別に。」
「私も見たい!」
息子たちがインターハイや選手権に出るのにもかかわら、ず氷帝学園硬式テニス部の母親たちはテニスのルールをわからないことが多々ある。試合に行くと言えばほぼお茶会で終わるのだ。
「来られても勝たれへんわ。相手強いでほんまに。」
「別に勝たなくたっていいじゃん。ねー、みーちゃん(侑士の母)?」
「そうやで、仁奈ちゃん見とるからって緊張したらあかん。」
「ビデオ持ってこー!」
侑士は高校生活で、仁奈が自分の試合を見にくるなんて夢にも思っていなかったのだ。中学生の時は恥ずかしくて仁奈に、応援してほしいと言えなかったのだ。多くの女子が侑士の応援に観客席を埋め尽くしていたが、全く気にならなかった。
「ほんま恥ずかしいわ、やめてやー。」
- Re: ハニカム ( No.11 )
- 日時: 2021/03/10 04:00
- 名前: ぺ (ID: i8PH9kfP)
侑士の住んでいる階から戻ると、父親が帰っていた。
「おぉ、おかえり。」
「ただいま。珍しいね。」
「夜から非番だからな。侑士くんたちとご飯食べてたのか?」
「そうだよ、ママは?」
「…仕事じゃないか?さぁな、パパにはわからん。」
そっか、と呟き仁奈は自分の部屋に戻った。仁奈が今日変質者にあったことを父親は知らなかった。おそらく母親に連絡がいったのだが、母親からは何もない。心配してほしいわけじゃないけれど、このとき侑士のお母さんが自分のお母さんだったら心配するんじゃないか?ドラマとか映画で見るような家族はそうじゃないか?とか色々考えることがある。最近はもう無いのだが、小学生まではそれが原因で夜通しないたこともあった。だけどもう気にしないというか、しょうがないと思い始めた。
仁奈はシャワーを浴びてそそくさと布団に入った。
- Re: ハニカム ( No.12 )
- 日時: 2021/06/07 02:13
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
いつも通りの電車の時間は混むので、少し早めに家を出た。スカートは巻かないと決めた。無事に学校まで着くと、麻里が待ち構えていた。
「うぉーーー!おはよー!」
「おはよう。」
「大丈夫なの?」
「うん。もう平気。」
仁奈がいつもギリギリの時間に来るので、真里は少しびっくりしていた。
「ねーねー、麻里すごいんだよ!」
他の友人たちが仁奈のところにやってきて
「麻里がね、仁王先輩と遊ぶ約束したの!」
「やばくない?!きゃー!」
とはやし立てている。仁王先輩は麻里がよく話している人物である。ペテン師って呼ばれてて何部だっけ、ペテン師って呼ばれてるのにモテモテでイケメンってイメージいいのかな?仁奈がそんなことを考えている間に、赤也が登校してきた。
「葉山生きとったんかーい」
「もう復活したよ。」
「ねぇー、赤也聞いてよ。仁王先輩と遊ぶ約束したのよ。」
「におせんぱい?!え、仁王先輩は…。あ、え、んー、俺的には柳先輩とジャッカル先輩がおすすめだけど。」
「わかる!私、柳先輩かっこいいとおもう?」
「硬派な感じするよねー。」
「そうそう。ジャッカル先輩もね、宇宙一いい男だから。」
「だよね!?地味にファン多くない!?」
みんなの話についていけなかったので、戦線離脱しそうになっている。蓮二の話をしていて、赤也はなにも私と蓮二のことは言わなかった。よかった、言いふらさないでいてくれるんだ。ホッとして、自分の席に戻った。一日難なく過ごしていた。移動教室で3回の音楽室に、麻里と移動していた。真里が仁奈を笑かすので、仁奈は手で口を抑えながら歩いている。
「ほんとにやめてってば。」
「麻里悪くないモーン。」
不意に視線を感じて、仁奈が全身方向に視線を投げると、蓮二がいた。
「あ、」
声をかけようとして、小さく手を振るもののあっけなく無視されてしまった。
「ちょ、だれにてふってんの?」
「あ、ううん!知り合いかと思ったら全然知らん人だった。」
「ねぇ、怖すぎ仁奈。」
また二人はツボにはまったようである。だけれど、仁奈は少し悲しいような虚しい思いになった。
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