二次創作小説(紙ほか)

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ハニカム(テニプリ夢)
日時: 2021/06/07 02:22
名前: ぺ (ID: EabzOxcq)

かわいいかわいい女の子

葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。



沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。

未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。


Re: ハニカム ( No.28 )
日時: 2021/05/28 03:08
名前: ぺ (ID: nGb.G1Wf)

「はぁー、食べたね。」

仁奈と蓮二は割り勘で支払いをして店を出た。二人は駅に向かって歩いている。

「久しぶりに美味しい寿司を食べた。」
「私も。」

帰りたくない。仁奈はふと思った。でも蓮二はスタスタ駅に向かっているので、それに付いていくしかなかった。

「ねぇ、」

蓮二が仁奈の方を向いた。

「メルアド、交換しない?」
「俺はあまり他人にアドレスを教えたくない性分だ。」
「そっか、全然いいのー!終わったあとに、ただ、」
「まぁ、葉山ならいいだろう。はい。」

蓮二が携帯を開いて、ボタン脇の赤外線の部位を仁奈の携帯に近づけてきた。

「ありがとう…あ、来た。」

嘘でしょ?教えてもらえないかと思った、麻里!私のこと褒めて!

「葉山なら他の女子に広めたりしないだろうから。」
「…蓮二、ほかの女の子からメールくるの?」

それはそうであるが、仁奈が不安そうな顔をしてくるので蓮二は何も言えなくなってしまった。

「赤也や仁王がふざけてやるからな。それが嫌なだけだ。」
「そっかぁ。安心した。」

気がつけばもう午後9時を回っている。補導される時間帯なので、蓮二は内心焦りを感じていたが、ゆっくりと駅に向かった。

「あれ?蓮二、JRじゃないの?」

仁奈は私鉄の改札まで蓮二が来たので不思議そうにしている。

「あぁ、そうだ。じゃあな。」

そう言って、蓮二は背を向けて帰ってしまった。仁奈を改札まで送ってくれたのだ。その日の夜、仁奈は朝方まで麻里と電話していた。寝不足でも全然平気、と仁奈は心が踊っていた。

「ちょっと、9時よ?」

母親からの着信が数十件入っていたことに気が付かなかった。家に帰るなり、母親に何をしていたかと問い詰められたが、ファストフード店で勉強していた、とだけ答えた。放任する親と、過干渉な親、どちらが良いのだろう。蓮二は仁奈のことを思い浮かべていた。

Re: ハニカム ( No.29 )
日時: 2021/05/30 02:27
名前: ぺ (ID: I3friE4Z)

侑士は朝練の日だったので早くに家を出た。エレベーターに乗り込むと、仁奈がすでに乗っていた。一緒に行く約束もしていないのに、たまたま同じエレベーターに乗ったのだ。

「おはようさん。」
「おはよ!」

侑士は顔色を悟られないように、仁奈の少し前に立っていた。

「なんや今日は朝早いし、テンション高めとちゃう?」
「うん?そうかな?」

何もないよと言わんばかりの返事だが、仁奈は手鏡で自分の肌の具合をチェックしている。

「鏡なんか見ても何も変わってへんて。」
「わぁー!おでこにニキビが…。どうしよう、侑士。こんなんじゃ…」

仁奈は自分の前髪を捲って、侑士に自分の眉間より少し上めにある出来たての赤いニキビを見せてきた。

「誰も気にせえへんて。」
「ええ、うち皮膚科じゃないから薬貰えるかな…」
「もらっといたろか?てか、うちにあるわ。」

侑士が肌が荒れたとき、父親が処方箋でもらえる塗り薬を渡してくれたことがある。確か冷蔵庫に入れてあって、未開封のものがあったような。こういうお節介なところがあかんねん、侑士は自分でもわかっている。でも好きな女の子が困っていて、それを放っておく雄がどこにいるのだろうか?逆に知りたい、と侑士は思った。

「ちょろっと分けてやー。」

なんやこいつ、策士か?仁奈が慣れない関西弁を使ってきた。侑士はもう完敗である。同時に自分の方言に若干染まったという満足感と充足感がたまらなかった。かわいすぎる、キスの一回でもしたい。侑士は最近、女とつるむのを辞めたのだ。仁奈のために。それを願わくば本人に褒めてほしいのだ。

「ちゅーしてくれたら、ええよ。」

仁奈はそう言われて、固まってしまった。

「ち、ちゅー…?」
「…嘘やって。仁奈にはファーストキスなんか、まだまだやもんなぁ。」

仁奈は未だに彼氏おろか好きな人もこの前までいたことがなかったので、キスなど無縁の世界である。海外ドラマの学園もののラブシーンは全然見れるのに、自分のこととなると全く考えもできない。

「わ、私だってもう終わってるかもよー?」

マンションから出て、歩いていた侑士はその言葉を聞いて動けなくなってしまった。

「…あかんて…」
「なに!そんなに意外なの?」

仁奈は単純にバカにされてると思い、侑士を睨んだ。双方ともにひどい朝である。

Re: ハニカム ( No.30 )
日時: 2021/06/02 00:04
名前: ぺ (ID: dyimD9sz)

昼休み、仁奈と麻里は食堂で昨日のことを話していた。麻里は仁奈自身から蓮二に連絡先を聞いたことに、驚きを隠せず悲鳴を上げた。

「すごい…すごいよ仁奈…。」
「もうね、流れで聞いちゃえ!って思って。頑張った。」
「まじですごいよ!!結局メールした?」
「…してない。」

蓮二があまりメールをしなさそうなのは誰でも予想できる。

「じゃあ電話は?」
「…想像できない。なんか無駄な時間過ごすの嫌そう…。」
「無駄な時間て、未来の彼女と電話する時間無駄とかある?」
「み、未来の彼女!やだー!」

仁奈はすごい浮かれようである。麻里は何も面白いことを言ったつもりはないので、怪訝な顔をしている。蓮二とどんな話をするのだろう?今日あったことや蓮二の部活のこと?わからないけど、きっと楽しいんだろうな。と仁奈は自然と笑顔になる。

「でも、もうテニス部予選始まるから忙しいじゃん。テストもあるし。調子乗ってしつこくしたら嫌われるかも…。」
「大丈夫だって!たまに連絡して、そのときは絶対会う約束取り付ける!!メールより直接愛を伝えるのよ!」

麻里の熱血的なアドバイスに仁奈は圧倒されている。仁王先輩の試合のビデオを手渡した後から、かなり恋愛には舞い上がっている。二人は昼休みが終わるギリギリまで話し込んでいた。

昼練習から戻っていた蓮二は教室に帰る途中、食堂にいる仁奈を見つけた。前は他人なんか目に入らなかったのに、珍しいな。と我ながら思っていた。

Re: ハニカム ( No.31 )
日時: 2021/06/02 11:51
名前: ぺ (ID: dyimD9sz)

「次回の部活、欠席するものがいたら本日中に連絡するように。」

真田が部活終わりのミーティングで言った。蓮二は挙手をして、

「次回、家庭の事情で放課後練習を休むので弦一郎、進行を頼んだ。」

と発言した。真田には事情を話してある。明日は警察署で感謝状の贈呈式である。このことを仁奈に伝えぬまま、明日を迎える。

「なんかあんのかよー?」

ブン太に小突かれたが、蓮二は答えたくないと言った。仲間と別れ家に帰る途中、仁奈と連絡先を交換したことを思い出した。電話帳から仁奈の電話番号を押すと、発信のボタンを押した。

「もしもし、柳だが。」

リビングで一人で映画を見ていたら、電話が来た。仁奈は寝転がっていたので、だるそうに携帯に手を伸ばした。光っているライトの横に「蓮二」と表示されている。仁奈はびっくりして叫んでしまった。信じられないと呟きつつも、応答することにした。

「もしもし、蓮二?ほんとに、蓮二なの?」

何故、俺の電話で赤の他人が出てくるんだ。と蓮二は心の中でツッコミつつも、

「ああ、そうだ。」

と答えた。

「…何か用事でもあった?」

仁奈は恐る恐る聞いた。余程のことがない限り電話してこないと思っていたのだ。

「あのな…実は明日、警察署に行くことになってる。」
「え、どうしたの?わ、悪いことでもしたの?」
「警察から感謝状を貰うことになった。」

仁奈はその一言でハッとした。

「そうなんだ…私が盗撮にあったから、」
「ぶり返すようで済まない。被害者のことは一切伏せるように警察には念押ししてあるから、安心してほしい。俺もちゃんと周囲には言わないでいるから。」

蓮二が言いたかったのはこのことだ。母親が蓮二の意思に反して、感謝状を大々的に受け取ると承諾したのだ。大々的と言っても地元のテレビか新聞に乗るくらいだが、母親はもう周囲にそのことを話していた。幸い被害者の仁奈のことよりも、蓮二の話ばかりなのでそれは不幸中の幸いである。仁奈はそんなこと知らないので、蓮二の気遣いと電話の内容に少し戸惑っている。普段は素っ気ないのに、センシティブことにな人一倍気遣いができるのだ。

「私は、大丈夫。わざわざありがとうね。」
「本当か?」

あのとき、葉山は心底怖がっていたのは蓮二にもよくわかったから。蓮二は気にかけていた。

「うん。ニュースに蓮二出てきたら、録画しちゃおうかな。」
「そこまで取り上げられることはないかもしれないが、録画する必要もないだろ。」

仁奈は安堵の表情を浮かべている。

「感謝状貰うの終わったら、どんな感じだったのか教えてよ。」
「わかった。じゃあまた連絡する。」
「じゃあね!おやすみ。」
「おやすみ。」

電話は切れた。仁奈はしばらく放心状態である。電話来た…おやすみって言われた…蓮二の方から連絡が来ると思わなかった。いや、でも普通に用事の電話だからな…と自重しているがやはりうれしいものはうれしい。仁奈はこの気持ちのまま寝てしまおうかと思った。麻里にすぐ報告をし、二人はまた長電話にふけるのである。

Re: ハニカム ( No.32 )
日時: 2021/06/03 04:25
名前: ぺ (ID: 5xmy6iiG)

侑士が22時頃に家に着くと、家に誰もいなかった。代わりにダイニングテーブルに、葉山家で二人とも呑んでます。ご飯食べに来ていいよ。と書いてあった。侑士はシャワーを浴びて、髪を乾かしてすぐ向かった。

「あ、どうも。」
「こんばんは、侑士くん。」
「侑士、そこにある唐揚げとか好きなだけ食べや。」

今朝の仁奈のことがあってから、仁奈の父親に会うとなんともいいようのない気まずさがあった。

「仁奈はあんまり勉強が好きじゃなさそうだからなぁ。もう大学に入れればどこでもいいかな。」
「いやー、もう仁奈ちゃんはかわいいんやから勉強なんかできんくても問題あらへんよ。なぁ、父ちゃん。」
「せやで。もうモデルになんかスカウトされてるんとちゃう?」

仁奈の父親は謙遜しているが、ご満悦のようでワインが進んでいる。仁奈はこないだも学校帰りに道端で芸能事務所から名刺を渡されたらしく、不審に思って父親に渡してきたのである。ネットで検索すると、大手プロダクションだった。

「芸能界は危険そうだから入れたくないなぁ。」

リビングで仁奈の父親と侑士の両親の話が盛り上がっている間に、侑士はダイニングテーブルに座った。

「あれ?侑士じゃん?どうしたの?」

仁奈が階段を下って一階にやって来た。仁奈はダイニングテーブルに座る侑士を見て、キッチンから箸と受け皿を取り出した。それを渡すと、仁奈は冷凍庫からアイスを取り出した。

「ありがとう。」
「ねー、パパ。ママは?」
「あ、あぁーママは今日当直だから。」
「そっか。今日もなんだ。」

仁奈の母親の当直は月2,3回と比較的少ない。それなのに最近は週一ペースで入っている。不思議に思う仁奈だったが、最近仁奈が家に帰るときに家にいて、夜からは仕事か何かで出掛けている。密かに気になっていたのだ。

「なぁ、仁奈。」
「なに?」
「ママに会いたいか?」
「え?どうしたのいきなり。ママ、仕事でしょ?」

父親は仁奈の言葉を聞いて微笑んだ。

「そうだな。」

変なの、仁奈は思った。アイスを食べながらまた携帯を耳に当てた。

「そう!麻里が言うなら間違いないって!仁王先輩も絶対…」

誰かと話しながら仁奈は階段を登っていく。仁奈が部屋に戻ったのを見計らったように、侑士の父親が口を開いた。

「仁奈ちゃんには何て説明するん?」
「…普通に言うかな。離婚するって。」
「価値観の違いで貫き通せるん?」

侑士は前々からその話を両親がしているのを聞いていた。

「いやー、どうだろう。でももうお互い一緒にいる気はないしなぁ。」
「訴えるん?奥さんのこと。」
「面倒だから辞めた。養育費だけふんだくったけど、もう呆れたわ。」

難しいわぁ、とか何とかいいながら三人はまた談笑に戻っている。侑士はそれを黙って耳にしながら白米をかき込んでいた。

「ごちそうさま。」
「あ、皿はそのままでいいよ。」
「ありがとうございます。」
「ちょ、侑士!仁奈ちゃん、見てきてくれへん?」
「はいはい。」

侑士は仁奈の部屋に行き、ドアをノックした。

「仁奈ー?」

呼んでも返事がない。もう一度、軽くノックした。もしかして話が聞こえていて、一人で泣いているのかもしれない。そのようなことがあれば、侑士には放っておけない。少し勢いよくドアを開けると、仁奈はベッドにもたれ掛かって寝ていた。携帯を手にしたまま、寝落ちしたのだろうか。

「なんや…寝とるし。」

侑士は仁奈の寝顔を見て安心した。

「布団で寝やんと、夏でも風引くで。」

仁奈の肩を揺する。またお節介だと思ったが、これは致し方ないと自分に言い聞かせた。再び肩を前後に揺すると、今度は仁奈が前方に倒れてきた。とっさに仁奈の両二の腕辺りを抑えたが、侑士の肩に顔を埋めている。なんやコイツ、自分で自覚ないんかやっぱ。侑士はため息をついた。しばらくこのままでいてもええんかな。これで他の男が好きとか言い出したら、ほんま相手の男の局部切り落としたるわ。それでも侑士は仁奈の背中に手を回す気は起きなかった。仁奈が自分の告白に頷いてくれるまで、近くにいても手は出さないと決めたのだ。

「はい、寝るでー。」

侑士は仁奈の背中を支えながら、膝裏に腕を回して仁奈を持ち上げた。慈郎より軽いねんけど…一度、居眠りから目覚めない慈郎をコートまでお姫様抱っこで運んだことがあった。仁奈にも同じことをしているが、慈郎同様起きる気配はない。そっとベッドに仁奈を下ろして、布団をかけてやった。おやすみ、と言って侑士は寝室を出た。

「床に転がってたわ、寝てたで。」
「ありがとう、侑士くん。」

仁奈の父親に例を言われると、いえいえと侑士は謙遜した。明日も朝練なので、侑士だけ自分の部屋に戻った。仁奈の寝顔を思い浮かべながら、すぐに眠りについた。


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