二次創作小説(紙ほか)
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- ハニカム(テニプリ夢)
- 日時: 2021/06/07 02:22
- 名前: ぺ (ID: EabzOxcq)
かわいいかわいい女の子
葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。
沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。
未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。
- Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.79 )
- 日時: 2021/11/28 05:56
- 名前: ぺ (ID: nsrMA1ZX)
こういうとき、自分は運動部で良かったと思う。いくら走っても体力が余るから。駅を前にして、やっと仁奈の姿を見つける。
「葉山。」
仁奈が蓮二の声に、足を止めた。
「帰ろう。」
蓮二は後から仁奈に並んで歩き始めた。仁奈は顔を上げようとしない。
「ほんとに蓮二が迷惑なら、言ってくれていいんだよ。」
目がいつも以上にきらきらしているのは、泣きそうだからだとわかった。
「俺がいつそんなことを吐かしたんだ?一言もないだろ。」
「それはそうだけど…。」
仁奈の心は完全に賢木にやられている。はっきり言わないとわからないか、と蓮二は小さく息を吸った。
「俺は葉山のことを迷惑とか鬱陶しく思ったことは1回もない。むしろ、葉山と過ごしていると悠々として心が休まるようだ。」
「う、嬉しい。ありがとう。」
蓮二に抱きつきたい衝動に駆られた。電車で隣に座った二人は、いつもより落ち着かない。心が休まるのは確かなのだが、今はどうにもそわそわしている。
「明日、葉山は1日クラスメイトと一緒にいるのか?」
「う、うん。」
「そうか。」
時間を見つけて顔が見たい。と蓮二は言おうにも、自分にしてはあまりにも率直すぎる表現だった。仁王はこういうとき、なんて言うのだろう。普段仁王が吐いているような異性への台詞を、自分が発しているところを想像してみた。吐き気がした。
「ミスコン1位取れるように頑張るから、最後の結果発表見に来てね。ドレス着るの。」
侑士と長太郎の母親が仁奈がミスコン出ると聞いて、ドレスをプレゼントしてくれた。長太郎の母親は元アナウンサーで、ミスコンの重要性を誰よりも知っている。仁奈は申し訳ないと断っていたが、熱意に負けてドレスを頂いたのだ。
「楽しみだな。」
仁奈のドレス姿はきっと誰にも劣らず可憐で、きらびやかである。蓮二は頬を緩めた。
- Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.80 )
- 日時: 2021/12/05 02:45
- 名前: ぺ (ID: sqo3oGwV)
昨晩、麻里からメールが来た。更新されたブログのタイトルが「明日こそ本物の愛をゲット!」だったので、何となく仁奈は察しがついていた。
「明日!仁王先輩が回ろうって!文化祭!」
「だと思った。良かったね。」
正直、麻里がまた傷つかないかどうかの心配のほうが大きい。いくら忙しくても決まった曜日にしかメールが返ってこなくて、金曜日の夜にしか会えないって怪しすぎる。それを指摘するのは麻里のためだとわかっているけど、今ウキウキとした麻里の声を聞いていると…何も言えなくなる。仁奈はただ麻里の喜びに共鳴するしかなかった。
「はぁー、ここまで長かったわぁ。一時期はどうなるかと思ったけど、最近はちゃんとお互い話せてるし、もうそろそろ告白されるかな?私。」
「返事の準備しなきゃね。すぐオッケーする?」
「うーん、ちょい悩む感じでいくわ!どうしようかなー、みたいな。」
「余裕醸し出すの、いいね。」
二人は電話越しに盛り上がっていた。蓮二からは、メールも何もない。文化祭の話も昨日あって以来してないし。自分は正直、人の幸せなんか心配していられないと思う。賢木さんもいるし、蓮二は私と違って暇している人間ではない。夏休みに入ったらすぐ沖縄でインターハイがあるし、遠征で大阪にまで行くと言っていた。自堕落に過ごす自分とは大違いである。
「あんたはさ、柳先輩と明日どうなの?」
「ううん。私は何もないよ。」
- Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.81 )
- 日時: 2021/12/05 05:17
- 名前: ぺ (ID: JJb5fFUo)
麻里は早々に仁王先輩のところへ行ってしまった。やってきた氷帝生たち(仁奈の親しい友だち)は文化祭を社交会か舞踏会か何かと勘違いしていて、教室や出店の質素な飾り付けに度肝を抜かれている。氷帝学園では直接建設会社がクラスの出店を建てている。焼きそばを売るにしても海鮮がふんだんに入っているし、チュロスを売るにしても某高級洋菓子店からの提供を売りさばくだけである。
「射的やりたい!」
「景品は何?」
「何あれ、お菓子?」
景品に並ぶ10円で買えるスティック状のスナックを彼らは見たことがなかった。仁奈も食べたことはあるわけではないが、存在は知っている。
「バカがバレるからやめろ。」
出店していた生徒たちが好奇の目で見ており、分が悪くなった日吉は100円を払って、銃に輪ゴムを手早く取り付けた。その菓子を食わせてやろうと、狙いを定める。ぱちんっといい音を立てて、束になっていたその菓子は後ろに倒れた。すごーい!と沙由香、未央は声を上げる。それから何件も店を周り、文化祭で使う金額ではない額を消費している。
「仁奈のミスコン14時からだよね?」
「うん。あと1時間で着替えたり、リハーサルに行く。」
「じゃーん!僕たち仁奈ちゃんのグッズ作っちゃいました!」
長太郎はカバンからタオルを取り出し、それを広げた。葉山仁奈、とフルネームがプリントされたタオルである。さらにサイリウムも、名前入りのうちわも未央が持っていた。
「私たち、アイドルオタクならぬ仁奈オタク!」
「どう?」
3人はサイリウムを振ったり、タオルを頭に巻きつけたりしている。若干、いやかなり羞恥の方が勝ってしまう。
「ありがとう…でも恥ずかしい。」
「ミスコンはこれくらいしなきゃ!氷帝はもっと派手なんだから!」
「まぁ仁奈ちゃんは圧勝だと思うけどね、若。」
ミスズちゃんとどっちがかわいい?長太郎がさり気なく日吉に耳打ちする。知らねぇよ。と舌打ちとともに返した。
「デカい声で言うなよ。」
「若のこと、探してるんじゃなーい?」
こういうときの長太郎の煽りは格段に腹が立つ。その言葉通り、女子たちが他のところを見ている間にミスズちゃんとやらに捕まった。
「あれー?若じゃんっ。」
日吉は聞こえないふりをして無視している。
「ねぇ、若。会いに来てくれたの?」
ミスズちゃんはスカートの丈が明らかにおかしい。制服のシャツもどこまでボタンを開けているか分からないし、少し肌は日に焼けている。前髪はクリップで止められ、化粧も濃い。いわゆるギャルである。ギャルもいけるんだ…と驚く長太郎であったが、仁奈が前方から二人のジュースを持ってやって来たことに気が付き、日吉にアイコンタクトをした。そして珍しく目が泳いだ彼はミスズちゃんと長太郎を人影に押し込んだ。ミスズちゃんの顔の横に手をつき、彼女は壁に体をぴったりとくっついている。当時はなかった言葉だが、行動にしてみれば壁ドンというものである。
「なんの用だ?」
「え?若のこと見つけたから、遊びに来てくれたのかなって。」
「なわけないだろ。消えてくれ。」
「そんな言い方、ひどい!」
何故か悲しんだのは、長太郎である。こういうとき、女の目尻と口角を下げた今にも泣き出しそうな表情はとてつもなくうざったい。そして、それを収めるには雄側が多大な労力が必要なのだ。
「あとで連絡すればいいだろ。」
小さく溜息をついたあと、日吉は言った。すぐに顔色をコロッと変えたミスズちゃんは日吉の臀部をさらっと撫でながら
「わかったぁ!あとでねー!」
と言って日吉をすり抜けてしまった。安堵に見舞われた日吉は小さく息を吐いた。そして鳳の肩に手をおいて、そそくさと仁奈の方へ戻っていった。部活でナイスプレーが出てもあんなことしないのに…長太郎は呟いた。
「はいこれ。ちょたと日吉の分。」
「わぁー!ありがと!」
仁奈はクリームソーダを長太郎と日吉に手渡した。5人はそれを片手に校舎を周っていたが、数分もしないうちにだだっ広い校舎を周りきってしまったことに気がついた。それならうちの教室でゆっくり飲もう、と仁奈は4人を連れて教室に戻ってきた。
「あれ?日吉じゃん!」
長太郎と日吉が教室に入ると、腰のあたりまであるロッカーにあぐらをかいて座っている赤屋が声を上げた。赤也は友人たちと、ゲームをしていたらしい。文化祭らしく猫の耳がついたカチューシャをしている。赤也を見つけた日吉は怪訝そうな顔をしているし、長太郎は赤也に恐怖心を抱いているのか、小さくなって日吉の背中に隠れた。
「そういや、葉山と切原は同じクラスだったな。運が悪いな、葉山も。」
「はぁー?テメーと中学で同じ空気吸わされてた葉山の身にもなってみろ!嫌だろ!」
出会うなり思い切り喧嘩腰の二人を見て、やはり相性が悪いなと仁奈は思っていた。前からそれぞれ二人の話を聞いていたが、全くと言って良いほどお互いの悪口しか出てこないのである。
「若のお友だち?」
「そうっす!立海テニス部の切原赤也っていいます。よろしく。」
「沙由香と、」
「未央です。よろしくね。」
「じゃあ氷帝に通ってんだな!こんなとこ貧相でつまんねーだろ!」
こういうとき、赤也の人と打ち解けるスピードと自然な距離感は天性の才能だと思う。自分はそれができないから、何も気にしない気軽に来てくれる赤也、麻里といて心地が良いんだろうな。仁奈はしみじみと頷いた。
「仁奈のこと頼むよ!この子、めっちゃ人見知りだから。」
「そうそう。変な男が近寄ってきたら、もう殺っちゃっていいから!」
「大丈夫。葉山はな、他の奴らからメアド聞かれた、勝手に俺のメアド教えてるから。俺、野郎からいっぱいご飯とかデート誘われてるし。」
赤也のメールアドレスはnyannyan…から始まっており、女子と勘違いされても違和感がない。彼と麻里は仁奈に扮して、たまに誘ってくる男たちに変な返信をするのが楽しいらしい。
「いや、恋愛とかはまじでないから。最初はさ、俺もこんな美人と喋ったことないから緊張してたよ。してたけどさ…。」
どうやら仁奈に至っては、普段の行動が抜けすぎていて心配と面白さが勝つらしい。未央、沙由香、長太郎は大いに頷いて、話に華が咲いている。もう、何が面白いのよ。と仁奈は頬を膨らませながらクリームソーダを見て吸っている。
「あ、どうも。」
日吉は視界にある男が映って、会釈をする。どういう眼差しなのだろう。隣には、巨乳の女。
- Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.82 )
- 日時: 2021/12/08 02:26
- 名前: ぺ (ID: v5g8uTVS)
葉山の教室の前を通り過ぎたとき、教室の中から会釈をしてきたのは日吉若という男だった。彼は氷帝学園高等部の1年。今回の大会からシングルスで出場している選手である。もちろん練習試合で玉砕してやったのは言うまでもないが、そのときは礼儀正しいというイメージがあった。そんな彼の横には葉山がいて、彼のチームメイトである鳳長太郎と赤也もいた。無論、赤也を横に置いておけば嫌な虫は寄ってこないだろうし、彼らも葉山の友人の一人だろう。
「もうそろそろ、ミスコンのための準備にいかなきゃ。」
「わかった。」
「ちゃんと見ててね、私のこと。」
文化祭において生徒会の仕事である校内の見回りを賢木としていた。賢木が勝手に蓮二とやると決めたのだ。そのときは何も気にかかることはなかったのだが、昨日の今日である。
「仕事仲間としては、応援している。」
蓮二はそれだけ返した。
「ありがとう。」
賢木は思いっきり蓮二の腕に絡みついた。離せ、と静かに言うが本人には聞こえていない。こういうとき、蓮二が女をしばいたり、強引に引き剥がしたりしないことを賢木は知っている。みんな見ればいい、私のほうが利発で年上で、柳くんに合っている。
「時間に遅れるぞ、早く行け。」
「優勝したら、ぎゅってしてほしいな。」
「それはできない。」
途中、真田とすれ違って苦い顔をされる。たこ焼きを売るために、うさぎの耳をつけて法被を着てクラスメイトと歩く自分だって、そうとう滑稽である。賢木は観念したように、蓮二とは反対方向に進んでいった。
「生徒会です。廊下を塞いでの、客引きはやめてください。」
「はぁー?そしたらどうやって人店に入れたらいいんだよ。」
「教室のドアの前や通路に沿って、静かにお願いします。」
「だからー、それじゃ宣伝にならねーって。なんだよつま…」
蓮二の眼光が、生徒を刺す。彼は何も言えなくなってしまい、すみませんと言いながら店の前に引っ込んだ。文句を貫き通せないなら、最初から言うな。蓮二はそれを目で伝えるようにして、前に進んだ。
「おお、柳。つまんなそうじゃの。」
「仕方ないことだ。」
蓮二の腕に巻かれた「生徒会執行部」の腕章を見てそう言った。隣には女子生徒がいた。
「仁王先輩、あたし、戻ります。」
女子生徒は足早にそう言って、二人の前から去った。
「お前、今度何かあったら監督と真田からスタメン外されるぞ。」
「そうやから、ちゃんとみーんなと適度な距離でおるんよ。俺は誰とも付き合わん。その代わりやることはやる。」
「解決になっていない。すべての女と関係を絶て。」
「柳こそ、賢木とラブラブしとったのぉ。たるんどる。」
「…賢木が一方的なだけだ。」
「氷帝のお嬢様もお前に惚れとるらしいなぁ。」
「勝手に言ってろ。」
仁王と別れ、校内を回る。服装で校則違反をしている生徒を見つければ注意し、外での出店のクラスには衛生管理をしろと口うるさく言う。こういうことは嫌いではないが、何か言われる側はいわゆる「ダルい」という態度を全面に出してくる。
「いよいよ、14時から立海ミスコンテスト2010が始まります。立海生も外部からお越しの方も一同に第一体育館へお越しください。」
校内放送でアナウンスが流れる。人の流れが急に変わって、校内にはほとんど人がいなくなってしまった。蓮二はところどころ落ちている廊下のゴミを見て、不快な気持ちになった。紙くずや食べ物の容器を広い、ゴミ箱を探す。階段の前に設置されたゴミ箱の蓋を開けて放り込む。なんだこれは、思わず口に出してしまった。ゴミとは言えない女性用のヒール。蓮二はそれを拾い上げた。
- Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.83 )
- 日時: 2021/12/10 03:38
- 名前: ぺ (ID: UbaBM28B)
ない。どこにもない。なんでないの。仁奈は更衣室のものをすべてひっくり返す勢いで、自分のミュールを探している。大慌ての様子を、他の出場者は好奇の目で彼女のことを見ているが、当の本人はそんなことは目に入らない。とにかくあと10分でステージに上がるまで、それまでに見つけなければ。本来はハンガーにかけてあるドレスの下に置いてあるはずだ。
「ちょっと、本番前に騒がしいんだけど。」
鏡を見ながらリップグロスを何重にも重ねる賢木が、自分の足元で捜し物をする仁奈に言い放った。
「ご、ごめんなさい。あの、どなたか私のシルバーのミュール知りませんか?」
皆、首を傾げるだけ。そうだ、教室に置いてきたのかも。仁奈は素足にローファーを履き、勢い良く教室を出た。
「ゴミと間違えられて、捨ててあったりして。」
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