二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ハニカム(テニプリ夢)
日時: 2021/06/07 02:22
名前: ぺ (ID: EabzOxcq)

かわいいかわいい女の子

葉山仁奈…立海大附属高校1年。医者の家系に生まれたひとり娘。容姿端麗だが少し抜けている。
麻里…仁奈のクラスメイトで親友。一般家庭。



沙由香…仁奈の中学時代の親友。某出版社の令嬢。宍戸先輩の彼女。いまでも仁奈と親交あり。

未央…同じく中学時代の仁奈、沙由香の親友。某銀行頭取の孫。


Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.84 )
日時: 2021/12/30 01:42
名前: pe (ID: z/hwH3to)

素足にローファーが気持ち悪い。でも今はそんな場合じゃなくて、とにかく階段を登りきって、教室に行かないと。ドレスをたくし上げ、無我夢中で駆け上がる。そして息を切らしながらやっと4階まで来た。あと一段のところで、つま先が段差に引っかかり前方にバランスを崩してしまった。咄嗟に誰かの胸板に上半身を支えられた。

「あ、ありがとうございます。」

すぐに身を起こして、礼を言う。するりと、相手の手の中をすり抜けて教室に向かう。気づかないものか、と蓮二は内心肩を落とした。焦った様子の仁奈のドレス姿に、明らかにふさわしくないローファーが見え隠れしていた。廊下に設置されていたゴミ箱から拾い上げたミュールに目を落とす。お洒落に疎い自分でもわかる二十数万するであろうブランドのロゴがついた履物を、この学校で彼女以外誰が履くだろうか。また慌てた様子で、自分の教室から出てきた仁奈と、廊下にいた蓮二は目が合った。

「これを探しているんじゃないか?」
「そ、そう!それ!」

やって来た仁奈の足元に置くと、彼女はすかさずそれを履こうとした。

「待ってくれ。」

ハンカチを取り出し何故か自分のミュールを、手早く拭いている。何をしているんだろう。

「今はこれで我慢してくれ。」
「え?なんかゴミでもついてた?」
「いや、」

痛恨のミス。明らかに口を滑らせた。葉山は自分の靴が、文化祭用に設置されたゴミ箱にドサッと捨てられていたことを知らないのだ。それを見つけたのは、さっきまで一人で廊下のゴミを集めてゴミ箱に捨てようとした自分だ。仁奈は蓮二の発言の真意を聞きたがっている。

「ねぇ、何のこと?」
「聞かなかったことにしてくれ。それに今は時間がない。あと3分でステージに上がるというのに、4階にいては間に合わないだろう。」
「い、急がなきゃ。」

ミュールにつま先を突っ込み、今度こそドレスアップした仁奈はさっそうと階段を降り始めた。だが、その足取りはハイヒールを含んだもので急いでいる姿と全く噛み合っていない。

「腰でも痛めたのか?」
「違うよ。転ぶのが怖くて、上手く下りれない。」
「あと2分36秒。まだ3階だぞ。」

蓮二は仁奈の後ろを付いている。何かの拍子に階段を転がっていきそうで怖いのだ。

「…こうなったら、裸足で全力疾走するしかないわね。」

仁奈はミュールを掴んで脱ごうとした。蓮二はそれを止めたのだ。なんで?後ろにいる蓮二の方を振り返ると、膝と背中を抱えられ、蓮二の両腕に収まった。仁奈の体は宙に浮いている。

「え、?」
「俺が運んだほうが速い。」

毎日最低90キロのベンチプレスを上げている蓮二に、40キロ台の仁奈は軽すぎた。仁奈が羞恥と戸惑いで騒いでいる間に、もう体育館の入り口である。

「ステージ脇に回らなくても、ここから出ればいい。」
「でも…。」
「体育館の真ん中突っ切ったほうがすぐ着く。いけ。」

下ろされて、軽く背中に手があてがわれる。素肌に蓮二の手が触れて、そこだけ赤くなっているかも。おずおずと一歩を踏み出す仁奈。

「蓮二にまた助けてもらっちゃった。いつもありがとう。痴漢から守ってくれたり、勉強も教えてくたり、今日お姫様抱っこしてここまで走ってくれて…。」

もうステージには参加者がいるぞ。と、蓮二は言うところだったが、流石に黙った。

「本当に、私の大好きな人なの、蓮二は。だから一緒に来てくれた蓮二のためにも絶対優勝する。」

蓮二は今までにないくらい優しい顔をしている。

「こんなときに告白とは、中々大胆だな。」
「あ、ち、違うの。その…」

あぁ。本当に最悪。こういうとき、自分の言動の拙さが本当に嫌になる。

「異性としての好きならば、俺も同じ思いでいる。」
「…ほんとに?ほんとなの?蓮二は、私のこと…」
「それは後でいい。早く行け。」

蓮二の焦ったところ、初めて見た。その顔を見ていたら、なんだか蓮二と両思いだという実感が湧いてきた。

「蓮二!」

仁奈は嬉しさのあまり飛びついた。蓮二の背中に手を回して、ぴょんぴょん跳ねている。蓮二も仁奈を抱きしめ返したが、すぐさま引き剥がし、ドアの前に立たせた。いってくるね、両方の引き戸を思い切り開けて仁奈は歩き出した。蓮二はその背中を見送り、別の扉からさり気なく体育館に入ったのであった。

2010年、夏。

蝉の声なんか聞こえなかった。


Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.85 )
日時: 2021/12/31 01:26
名前: ぺ (ID: RO./bkAh)

何故か客席には仁奈のタオルや法被を着た生徒が多く、その方に戸惑った。蓮二が生徒会と文化祭実行員会の方に連絡は回していたので、仁奈の遅れての登場も、運営側には既に伝わっていた。投票の結果、仁奈は圧勝でミスコン優勝だったことで、この登場の仕方が許されたのである。

「ここで今回の大本命!エントリーナンバー、6番!一年、葉山仁奈!」

颯爽と歩く姿は、スローモーションに似た感覚だった。一歩一歩踏みしめて、ランウェイを行くように。最大限余裕と自信に満ちた表情が、自分でしていて心地が良かった。体育館のステージへ続く階段を登ると、一層歓声は増した。

「葉山さん、自己紹介をお願いします。」

スタンドマイクの前に立つように促される。少し深呼吸した。

「みなさま、ごきげんよう。東京都から参りました葉山仁奈と申します。私は内部生ではなく、外部生でありますが、こうして応援していただけることに大変喜びを感じております。本日は優勝をいただいて、帰りたいと思います。よろしくお願いします。」

「氷帝の姫!」
「婿入りさせてー!」
「仁奈ちゃーん!解剖してー!」

このガヤを入れてくるのは言うまでもなく元同級生である。さらに赤也やクラスメイトも仁奈の名前の横断幕を掲げている。目の奥に熱いものがこみ上げてきて、鼻がツンとする。仁奈は横一列に陳列すると、結果発表を待った。3位、2位と名前が呼ばれず、2位に呼ばれたのは賢木である。体のラインがくっきりと映えるマーメイドドレスの彼女は、男性人気が高かったそうだ。

「その靴、汚くない?」

仁奈の前を通るとき、賢木はボソッとつぶやいた。あなたが捨てたんじゃないの?言い返したくなる気持ちを抑えて、1位を待った。

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.86 )
日時: 2022/01/02 01:52
名前: ぺ (ID: RO./bkAh)

おめでとう、と沙由香と未央、クラスメイトから知らない人まで教室に戻るまでたくさんの人に揉まれて来た。仁奈が優勝したのは言うまでもないが、体育館に麻里の姿が見つからないのだ。電話をしても繋がらない。制服にすぐさま着替えて、校内を探し回った。

「ねぇ、赤也。麻里がいないんだけどね、今日仁王先輩と回ってたの。仁王先輩がどこにいるか知らない?」
「知らねーけど、このあと午後5時から部活だぜ。仁王先輩なら部活まで校内ほっつき歩いてるんじゃね?俺も探そうか?」
「ううん、大丈夫。ちょっと逸れただけだから、ありがとう。」

友だちとつるんでいるであろう赤也を引き抜くわけには行かないので、一人で探すことにした。ミスコン終わったら写真撮ろうねって約束してたから…それにしても同じ校舎にいるはずなのにずっと返信ないのは、なんでなんだろう。体育館脇、空き教室、隈なく見た。文化祭が終わり解体作業が進む騒がしい校内をぐるぐる回る。また4階に戻ってきた。あ、屋上の手前の踊り場。進入禁止と言われているが、4階から上がる階段に注意書きなどはない。手すりの隙間から男女の姿が見える。誰か気づかれない程度に、その隙間から上の方を覗いて見ることにした。

「そんなの、自分勝手じゃん!」

顔を覗こうにも見えず、苦戦していたら女子のほうが声を荒らげた。この声は、明らかに麻里である。

「自分勝手って、そういうもんじゃろ。面倒な話なら、帰るぜよ。」

階段を下ってきた仁王と目が合う。

「…盗み聞きはいかんよ。」

明らかにバツが悪そうというか、めんどくさといった表情をした。何が起こっているのか知らないが、仁王が麻里を泣かせたのはもうわかる。

「麻里のこと泣かせるの、いい加減やめてください。」
「泣くのと泣かせるんじゃ言葉の意味が違うじゃろ、そもそも。じゃけん俺は泣かせとらん。」
「…最低。」

仁奈は急いで階段を駆け上がり、麻里の隣に座る。あのときのファミレスよりも盛大に泣いている。過呼吸になるんじゃないかというくらい、涙と荒い呼吸が止まらない。

「にお、せんぱいに、…。」
「うん。」
「彼女は作る気ないって言われて、でも恋人ごっこはできるって…他の女の子にも同じこと言ってるの?って聞いたら、交わされて、それで喧嘩になったの。えっちはしたいって言われたから、私の気持ちはどうなるの、そんなの自分勝手じゃんって…。」
「麻里は、それでも仁王先輩と一緒にいたい?」
「普通にしてたら、ほんとに彼女になれるんじゃないかっていつも思っちゃうの、」

前に侑士が言ってた。麻里が傷ついたら、仁王先輩から目覚めるんじゃないかと。でも、仁王先輩なんかやめなよ、と言う気にはなれなかった。こういうとき、ママに相談できたら為になる答えが返ってくるのかな。

「でも、ぶっちゃけ仁王先輩は元からいい話聞いてなかったし、こうなっても仕方ないって感じなのかな。」
「…私は、麻里が仁王先輩にたくさん傷つけられてるところを見てるのが辛い。仕方ないって思うんだったら、次にいったほうがいいんじゃないかな…わからないけど。」
「うん。みんなに言われる。」

麻里は何故か微笑んだ。

「ごめん…私くらいは麻里のこと応援したほうが良かったね。」
「ううん。まだ高校生だし、振り回される恋愛もいいかなって腹くくってたけど、もう限界だわ。」

麻里は立ち上がって伸びをした。

「仁奈が仁王先輩にキレッキレで、我ながらイケてたよ結構。」
「麻里がお望みなら、仁王先輩の教室に殴り込みに行くよ。」
「えー!行こ!」

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.87 )
日時: 2022/01/04 01:11
名前: ぺ (ID: RO./bkAh)

今日は19時に部活が終わるんだが、会って話せないか。

蓮二からメールが来ている。麻里とカラオケで暴れていたら、いつの間にか送られてきていた。

「あなたがああああ!よかあああったぁぁぁ!!」

バラードの曲でも静かに泣くのではなく、怒りと涙に任せて叫んでいるところが麻里らしい。3時間、熱唱していても高校生なら500円である。

「仁奈、今日はありがとう。」
「ううん。辛かったら休んでもいいんだからね。」

二人は帰路が逆方向だったので、カラオケが入ったビルの前で別れた。蓮二はあと10分ほどで仁奈がいるところの最寄りに来ることができるらしい。午後7時を過ぎて、仁奈は駅前で待つことにした。駅のトイレで、前髪を整え、リップを塗り直す。ガムを噛んで、歯に何か挟まっていないか念入りに確認した。

そして改札から出てきた彼を迎える。部活帰りだというのに、汗の一滴も感じない。これから改めて気持ちを伝えられるだろうに、顔色もいつもと同じthe 肌色。

「飯は食ったのか?」
「ううん。あ、でも麻里とカラオケでクリームソーダとお菓子は食べた。蓮二は、お腹空いてるよね、なんか食べる?何にする?」

一方の私は…体がもう今から角張って汗が吹き出て、心の準備ができていない。

「そうだな…この辺に、上手い蕎麦の店があったはずだ。蕎麦はどうだ?」
「うん、いいね!お蕎麦大好き!」

Re: ハニカム(テニプリ夢) ( No.88 )
日時: 2022/01/04 03:30
名前: ぺ (ID: RO./bkAh)

二人で蕎麦を啜った。お座敷に座り、不意に目があったとき、仁奈は思いっきり目を逸してしまった。それからというもの、街を歩いていても勝手にぎこちなさを感じてしまっている。

「はぁー、お腹いっぱいだなぁ。」
「腹ごなしにもう少し歩くか。」

仁奈は何回も首を縦に振って、蓮二の少し後ろを歩いている。それでも人混みに押し流されそうになるし、夜でも暑いし。蓮二は歩く方向を変えて、商店街の方をくぐり抜けている。

「いくらか涼しいな。」
「うん。」

こじんまりとした公園に来た。ブランコに座って揺れている仁奈の横で、図体のでかい彼もブランコに収まっている。足が長いので中々窮屈そうにしていた。また二人の間には沈黙が流れた。こういうとき、男から口を割るものだ。蓮二はわかっているが、肝心の言葉が出てこない。

「ミスコン、優勝おめでとう。」

やっと出てきたのがこれ。

「ありがとう。蓮二が応援してくれたから、怖じ気かないで頑張れたよ。」
「そうか。それなら良かった。」

うん。と仁奈が返事をするとまた沈黙が続いた。

「蓮二が体育館の真ん中突っ切れって言ったときは、どうしようかと思ったけど、なんかすごい歩いててワクワクした。」
「葉山はモデルか女優のような、容姿を活かす仕事が合いそうだな。生憎、事務や精密な作業は向いていないような気がするが。」
「ええ。女の子なのに不器用なのかな、私。」

そうも困った顔をされると、そんなことない。とすぐ前言撤回してしまいそうになる。蓮二は仁奈の前では自分の意志がゼロに近い状態になる。それを最近は自分でも自覚し始めていて、もうどうしょうもないのかもしれないと諦めすら覚えた。

「将来お裁縫とかお料理とかできないとお嫁さんになれないっておばあちゃんに言われた。」
「そんなの、また家政婦を雇えば良い。」
「そっか!そうしよう。」

にこやかに目を細めている。蓮二の「可愛い」という意味、言葉はすべて仁奈によって体現されていると言っても過言でない。仁奈の横顔の頬は幼さを感じさせる膨らみで、ブランコで足をばたつかせているところ、シャツからもわかる華奢な肩。愛おしいという表現もまた合っている。

「蓮二。文化祭のときの話の続きなんだけど…聞いてもいいかな?」
「もちろん。俺が葉山のことを好いているところまでは、伝わっているはずだったな。」

そんなサラッと言わないでよー!もっとロマンチックな感じかと思っていた仁奈は、一瞬で去った好意を伝える言葉に、少し肩を落とした。

「それで葉山にこれから改めて交際を申し込もうと思う。いいか?」
「は、はい。」

告白するのに、まず断りを入れてくる男は彼しかいないだろう。仁奈は予想外の台詞に驚きながらも頷いた。相手に向き合おうにもブランコに跨るのも難だな。と蓮二は立ち上がった。

「ど、どっか行くの?」
「いや、立って言う。」

じゃあ私だけブランコに座ってるの変だよね、仁奈は立ち上がって蓮二と向かい合った。暗闇で、街灯に照らされた蓮二の顔を見た。彼は緊張しているのかもしれない。

「葉山、俺と付き合ってくれないか。」

ああ、ずっと聞きたかった。今まで、一生聞けないかもって思ってた言葉。

「私で良ければ…よろしくお願いします。」

仁奈がペコリと頭を傾けると仁奈の体は蓮二に包まれた。

「さっきは、ちゃんと抱きしめてやれなくてすまなかった。」
「う、ううん。大丈夫。」

汗臭くないかな。でも蓮二にハグされるの、すごい好き。

「蓮二、私のこと好き?」
「ああ、もちろん。好きだ。」

蓮二は仁奈の頭に手を添えて、そっとキスをした。優しすぎる甘すぎるそれは、仁奈の顔を一瞬にして真っ赤にしてしまった。鼻血出てるかも…のぼせ気味の仁奈だった。

「好きな人とちゅーしたの、初めてだからなんか頭くらくらする…。」
「可愛いことを言ってくれるな。」
「バカにしてる?」
「葉山が可愛すぎるから、この先も揶揄うことがあるかもしれない。許してくれ。」
「もう。あ、葉山じゃなくて、仁奈って呼んでくれるかしら。」

仁奈は目をキラキラさせている。今まで蓮二は姉すらも名前で呼んだことがない。

「仁奈。」
「なにー?」

今度は仁奈からキスをした。

「ずっと一緒にいようね。」
「もちろん。」

仁奈は蓮二の手を握った。蓮二もそれに応えた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。