BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- だから私は君に恋はしない。
- 日時: 2017/02/05 23:50
- 名前: コハク (ID: nCjVBvXr)
恋を拒絶する私と、恋をしたい、君。
君と私は巡り逢うべきではなかった。
これは君がよく言う、私の照れ隠しなんかでは無くて。
そうだな、理由がないと君にまた怒られそうだから言い直そう。
私は恋をしたくないし、君のその手の温もりだって受け止めきれるはずがないのだから、私と君は巡り逢うべきではなかった。
゜・*:.。.*.:*・゜.:*・゜*
この小説はGLです。
苦手な方はブラウザバックを推奨致します。
初めまして。コハクです。
少し前から書き溜めていたものを小説にしてみようと思います。最近は寒いのでこたつから抜け出せず、猫と一緒にこたつで作業をしています…。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.44 )
- 日時: 2016/12/17 10:25
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
「明日は、」
ボーンと低い鐘の音が響く。
時計に目をやると、もう8時になっている。
「明日は?」
「いや、なんでもない。もう時間だし帰ろ。」
言いたいことを言おうとしたときに、大体邪魔がが入って台無しになるというのはラブコメ、シリアス、ホラー、サスペンス…どのジャンルの作品でも使い古された、それでも飽きられない展開の1つ。
でも、読み手としてはそんな手法を使われてはじれったくてしょうがない。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.45 )
- 日時: 2016/12/17 12:54
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
「じゃあ、また明日。」
分かれ道で小冬に手を振る。
「さっき、はつめちゃんなんて言おうとしたんですか?」
制服の上から着ているコートを掴まれる。
寒いはずなのに、その手から伝う熱を感じる。
「明日は…明日は、小冬の薬が効くより前にもっと早く来て、それで一緒に…寝るから。」
小冬の顔なんて見ていられなくて、下を向く。
でも、恥ずかしくても何でも思ってしまったんだからしょうがない。
小冬の寝起きの顔は、可愛かった。
でも、ものすごく寂しそうだったんだ。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.46 )
- 日時: 2017/01/15 21:48
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
{episode 7}
ー小冬sideー
「また明日。」
そう言ってはつめちゃんは反対方向の道に消えていきます。
その後ろ姿を見て、好きだなっていう気持ちとはつめちゃんは振り返ってくれないんだっていう気持ちとが混ざり合って変な音を立てます。
私も前を向いて歩き出します。
はつめちゃんの言葉1つ1つを、胸で反復させながら。
こんなにも幸せすぎるのに、少し虚しい。
はつめちゃんは恋心を知らない。
ましてや、恋心そのものを拒絶しています。
私とはつめちゃんが人生を共有して、今日を共有して生きているのは恋をするためじゃないんです。
恋心を教えるため。感情を共有するため。
忘れてしまいそうになるけれど、私とはつめちゃんの関係は先生と生徒なんですよね。
診察ノートを作って、患者さんとコミュニケーションを取って、私が力にれたら…。
そんな淡い夢地図まで描いて、勉強も一生懸命してきたのに、こんな風ではダメですね。
感情、気持ち、恋心…それらが足りない人がそれらを求めていたなら、私はそれらを一緒に探して掴んで笑顔にさせてあげられる大人になりたかったんです。
手で渡すのではなく、手を繋いで掴みに行く、そんな大人に。
でも結局、大人にはなれないし今の私の本当の胸の内がしたがっていることは一緒に掴みに行くなんて優しいことじゃないんです。
はつめちゃんと手を繋いで、私の心に触れてほしい。
私と、同じ気持ちになってほしい。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.47 )
- 日時: 2016/12/17 23:44
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
なーんて、微かな希望を確かな願望に変えつつある今日この頃です。
カラスがカァと鳴けば、私もほわぁとあくびが出ちゃいます。
「ただいま帰りました。」
無機質な白い壁に跳ね返るようにして返される声。
にゃあとごまが鳴いて返事をしてくれます。
急いでお風呂に入って、ごまのご飯を準備。お昼時はお母さんがいるので心配ありませんが、夜には私とごま以外家にはいないのでご飯をあげるのが遅くなると、ごまが怒っちゃいます。
可愛い顔してなんとやら。ごまは怒るととても怖くって、寝るときにジタバタして寝させてくれないんです。
そんなところも含めて可愛いごまで、愛猫なんですけれどね。
「ごま…そんな勢いで食べたら喉詰まらせちゃいますよ?」
ものすごい勢いで食べるごまの隣で、私も静かに夜ご飯です。
身体のことを考えて作ってくれた栄養のあるメニューには、毎日毎日栄養ドリンクが添えられています。
「栄養ドリンクは嫌です…。」
私の拙い命を繋いで生かしてもらっていることを、仮にわがままだと数えないとしたなら。
その、昔に一度放った叫びは親に対する最初で最後のわがままになると思います。
栄養ドリンク。それは、身体の弱い私は本当に幼い頃から飲むようにと病院、親、入院していたとき身体のことを心配してくれたかつての友達から、ことあるごとに渡された飲み物です。
昔は、それほど嫌いじゃなかったんです。
しいて言うのなら、毎日飲まされて飽きそうになっていたくらいです。
けれど。
自分の中で1つの概念が壊れるのなんて、案外時間などかからないもので。
- Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.48 )
- 日時: 2016/12/18 01:27
- 名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)
『栄養ドリンクって、嶋みたいにすぐ死ぬやつが飲むもんなの?もうこれ届けんの何回目よ?』
『他にあげるものがないからでしょ?安いし。』
『でもさ、ガチな話うちら嶋さんにばっかりお金出してるよねー。』
『しょーがねぇだろ?嶋はト、ク、ベ、ツ、なんだからよ。』
ドッと起こる笑い。
病室の扉の前でそんな大声で話していて聞こえないとでも?
コンコン
『嶋さん、これクラスのみんなから栄養ドリンク。早く元気になってね。』
入ってこないでください。
とはさすがに言いませんでしたが。
声が出ませんでした。
それまで私は、案外世界の全てを信じていて表面にあるものを見たままに捉えていました。
クラスメイトも、栄養ドリンクも全てを真っ直ぐにしか見ていなかったので、それが音を立ててぐちゃぐちゃに壊れていく様は醜く身体が硬直するほどの衝撃でした。
以来、私は栄養ドリンクが飲めなくなりました。
親に飲むようにと言われてもその場では断り、置いてあろうものならば水で薄めてごまにあげます。それができないときは庭の花の肥料に。
ついでにクラスメイトの顔も拒絶しました。
お見舞いだの、なんだの、顔を見せに来るクラスメイト全員が拒絶の対象です。
誰も信じられない。
そんなことを考えちゃう時期でした。
辛いことがあれば、必ず誰かが手を差し伸べてくれる。
そんなの嘘です。
崖の上に立たせ、背中を押して殺すのは自分ではない他人です。
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