BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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だから私は君に恋はしない。
日時: 2017/02/05 23:50
名前: コハク (ID: nCjVBvXr)


恋を拒絶する私と、恋をしたい、君。
君と私は巡り逢うべきではなかった。
これは君がよく言う、私の照れ隠しなんかでは無くて。
そうだな、理由がないと君にまた怒られそうだから言い直そう。
私は恋をしたくないし、君のその手の温もりだって受け止めきれるはずがないのだから、私と君は巡り逢うべきではなかった。

゜・*:.。.*.:*・゜.:*・゜*

この小説はGLです。
苦手な方はブラウザバックを推奨致します。

初めまして。コハクです。
少し前から書き溜めていたものを小説にしてみようと思います。最近は寒いのでこたつから抜け出せず、猫と一緒にこたつで作業をしています…。


Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.19 )
日時: 2016/12/02 17:48
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

「あ、いや何でもない。」
あぁ、言葉の消しゴムとやらがあればいい。今すぐに消してしまいたい。
とにかく意味が分からない私のそのセリフを心に留めて欲しくない。小冬の顔を見るのが嫌で、私が言ったそのセリフについて何か聞かれるのが嫌で、本を読むふりをする。
そう、あくまで何もなかったかのように。
それなのに。
「いなくなったら嫌なんです。」
小冬はにこっと笑って言った。
もう勝手にしてくれ。そもそも、小冬に好きな人がいようがどうでもいいことだ。
…私はおかしい。
どうでもいいはずなのに、なんで…こんなに、こんなに胸の奥が気持ち悪くて変になるんだろう。
この感情も私が初めて持っただけで、小冬は元から持っているのだろうか。
それとも、こんな感情…こんな気持ちになる私がおかしいのかな。
「はつめちゃん?」
小冬が心配そうに顔を覗き込んでくる。
でも返事はできない。今返事をしたら、また頭の中で思ってることを素直に伝えてしまいそうで怖い。
だから、小冬の瞳を見つめて思っていることが言葉にしなくても伝わればどんなに楽だろうと考えた。
伝えたいことを、届けたい想いをカタチにしないで散らばったまま渡せてしまえたら、なんて思う。
けど、この世界はそんなに甘くない。
「はつめちゃんがちゃんと言ってくれる日まで、絶対死にません。」
また毒を持った花みたいに笑う。
小冬は私が何かを伝えようとしているのだと、私の目を見て感じたらしい。
本当にこの世界は甘くない。
こんな臆病でバラバラで砕け散ったような言葉のピース、どうやって伝えればいいんだ。
答えは出ない…けど、それでもいつか。小冬が死ぬその日までに、ツギハギでもカタチにして…それで、こうやって目を見て伝えられたら、きっと私たちは"私たち"になれるから。
小冬が言ったように、少しずつでも感情を育んでいく。
…小冬と、一緒に。
「じゃあ、あと50年は一緒に生きなくちゃね。」
「んんっ…それは難題ですね。あっ、プロポーズと受け取ってもよろしい感じですか?」
その花の毒は、世界とは打って変わって甘い。
世界に取り残された蜜のように。
「よろしくない。って、もう時間じゃん。小冬もう少しいる?」
「いいえ。一緒に帰りましょう。」
その毒を手にした私は、甘さに酔わされて。
その花のことで頭がたくさんになって、狂おしいほどに伝えたいことが積もるのだろう。

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.20 )
日時: 2017/01/15 21:39
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

{episode 3}

秋にもなると、もう寒い。
秋特有の寒さに目が覚めて、今日も1日が始まる。
顔を洗って、適当に朝食を済ませて弁当を作る。そしたらちょっと急ぎ目に歩いて駅に向かって、ギリギリの電車に乗る。月曜の朝からお母さんは仕事で朝が早いから寝坊なんてしたら遅刻は確定だ。
駅から降りて少しすれば、もう学校。
「おっはよー、はつ試合応援してくれたでしょー!」
花湖ちゃんが朝も早よから元気な声を出す。
「どうだったの?」
正直、試合のことはすっかり忘れていたからどうとも反応しにくい。
別に応援してなかったわけじゃない。いろんなことがありすぎて、頭がいっぱいだっただけ。

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.21 )
日時: 2016/12/03 20:12
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

「準優勝ー!イェーイ!うふっ。」
まだ1時間目も始まっていないというのに、元気が有り余っているようだ。大声でハイテンションな彼女は周りからの視線を集めている。
「おめでとう。」
「いやー、スーパーシュート見せたかったよー。って、ただの交友大会だから練習試合と変わんないんだけどね。」
歯を見せて笑う彼女はVサインをする。
「あっ、はつごめん。ちょっと職員室行かなくちゃだった!先行っててー。」
Vサインの次は、両手を合わせてごめんなさいのポーズをとる。
花湖ちゃんが職員室へと方向を変え、私は一人になるとやけに誰かから見られているような視線を感じたような気がした。

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.22 )
日時: 2017/01/15 21:42
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

{episode 4}

ー小冬sideー
起床は6時ぴったり。本当はもっと早く起きたいけれど、早起きすぎると身体に良くないらしいので。
洗顔をして、血圧を測ってから朝ごはんを食べて、くるみ図書館に向かう。血圧を測るのは病院から毎朝測るよう言われて。私よりも早起きなおばあちゃんと一緒に測る。
その後、おばあちゃんはラジオ体操をするけど私はその隣で朝ごはんを食べる。ラジオ体操をしたくないわけじゃないんだけれど、してるとくるみ図書館に行く時間が少し遅くなってしまうから。
私の生活の中心は、今も昔もくるみ図書館にある。
月曜日になっても学校へ行かない私は、世界から逃げるようにくるみ図書館へと通う。

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.23 )
日時: 2016/12/04 12:35
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

学校に行っていたら何か違ったんでしょうか…なんて外に出たことのないラプンツェルみたいな日々を過ごしていたんだけれど。
そんな日々はもういらない。
はつめちゃんに出逢って、私の世界は変わったから。
今日も世界から逃げるみたいにくるみ図書館に来たのは変わらないけれど、そこには楽しみがあるんです。今まで、世界から匿ってもらうような怖さに怯えながらすがる存在だったくるみ図書館とはもう違う。
そこに行って待っていれば、愛しい人に会える…今のくるみ図書館は、そんな存在。
もちろん、はつめちゃんは高校に通っているはずだからあと何時間も待たないと会えないんだけれど。
世界が色づき始める瞬間を私は知りました。
はつめちゃんには、心臓のことを話したとき言えなかったけれど本当は…本当は何度も死んでしまおうと思ったんです。
生きていても、世界が吐き出した異物みたいな居心地の悪さを感じるだけで疎外者だと突きつけられるのは、もう嫌で。死にたい、と自分の意思がはっきりとそう言いました。
自殺願望、と言うよりも逃避願望に近いソレは、私にも第二の人生というものがあるのだとすれば、その始まりだったのかもしれません。
ちょうど桜が散った季節だったので…14歳の終春ごろ。確実にそれまでには無かった、生気に満ち溢れたんです。死のうと思うことで生気をやっと見つけたんですよ。
死ぬ準備をするために、自殺方法もたくさん調べました。それまで、心理カウンセラー類のことしか調べたことのなかったパソコンで自殺方法、そのための準備…とにかく色々なことを調べました。
誰にも知られずに消えてしまいたい。神隠しのように姿を消そう、なんて。本当に、ある種の逃避願望だと思いませんか?
結局私は、暗くて静かな人のいないところで死んでしまえば誰にも見つからないんじゃないかなんて希望を持って、電車で遠くの村へと足を運びました。だから私は、14歳の、春が過ぎて紅葉の舞う秋頃にくるみ図書館に別れを告げたんです。
お財布と使い終わった電車の切符だけを持って、一人で村の山奥へと進んで行きました。正直、そのときの気持ちは覚えていません。ただ、世界から消えてしまおうと死ぬことを悲しいとは考えていませんでした。
自殺方法は、飛び降り自殺。
山の下にも人は住んでいなくて、人の出入りのほとんど無い過疎地域でした。そんなところから静かに飛び降りて、誰も知らないまま神様に隠されてしまいたかったんです。
紛れもなく、本気でした。
山の頂上に着いたときにはもう、辺りは真っ暗で微かな風の音さえも遮断されていました。それでも、もう関係無いのだと何も考えずに飛び降りようとリュックを手放した、そのとき…。
暗いながらも、足もとに猫がうずくまっているのが見えたんです。動物なんて、虫一匹さえもこの山で見ていなかったのに、とても驚きました。
今思えば、その猫が私を救ったんです。
結局、うずくまる猫を見て自殺はとどまったんです。逃避願望に気がついた、というか現実に目が覚めた、というか。
誰にも知られずに消えてしまおう、なんて都合が良すぎるって猫が教えてくれたんです。
その猫も自殺しようとしていたのかは分からなかったけれど、うずくまって死にそうにしていたので一緒に連れて帰りました。駅に着いて明かりが強くなると、その猫の色もはっきりと見えました。真っ黒な、黒一色の黒猫。まだ子猫で、小柄でとても弱っていました。
自殺のことは何も言わずに家を出たとはいえ、死のうと山へ行って深夜に帰ってきたわけだから気まずさを感じながら家に入ると見たことの無い人たちがたくさんいました。
帰ってきた私にも気付かずに、わんやわんやと騒ぐ知らない人たち…と親とお婆ちゃん。察しはつきました。洋服からして警察官の方たち。そして様子からして、私の行方を捜しているようでした。誘拐されたと思われていたようです。
でも必死すぎて玄関の私に気付かなかったので、シャワーへ行き猫を洗うことにしました。ついでに私も薄汚くなった服を脱いで、猫と一緒に綺麗になりました。真っ黒の子猫は、洗うとさらに黒くなって純黒という色はこれを言うんだと知りました。
シャワーを浴びて綺麗になった私と猫は、キッチンへと向かって食事をしました。元気のなかった猫も、帰り途中に買ったキャットフードに顔を埋めるように食べていました。
死のうと思っていたのが一変、嘘みたいに幸せな気持ちになったのを覚えています。
しかし、そんな時間もつかの間。食べ終わろうとした頃にはお婆ちゃんに見つかりました。
その後は、言うまでもなく激怒されました。もちろん、こんなに夜遅くになった訳も家を出てどこに何をしていたのかも言いませんでしたが、やっぱり私は都合が良すぎたのだと再確認しました。誰にもばれずに消えてしまうなんてことはできないのです。たとえ、私が死んだことが誰にもばれずに神隠しにあったとされたとしても、誰も何も傷付けずに姿を消すことなんてできないからです。
それをそのとき教えてくれたのは、腕の中で小さく鳴く黒猫でした。
たっぷりと怒られた後、黒猫を飼うことを許可され変な生気も消え、自分を受け止めようと思いました。
そうして時が流れて、くるみ図書館に行くことも再開したんです。一度別れを告げたのに、また行けるとなると嬉しくってくるみ図書館を見て泣いたことを覚えています。
そして、17歳の秋。退屈な日々に花が咲きました。


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