BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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だから私は君に恋はしない。
日時: 2017/02/05 23:50
名前: コハク (ID: nCjVBvXr)


恋を拒絶する私と、恋をしたい、君。
君と私は巡り逢うべきではなかった。
これは君がよく言う、私の照れ隠しなんかでは無くて。
そうだな、理由がないと君にまた怒られそうだから言い直そう。
私は恋をしたくないし、君のその手の温もりだって受け止めきれるはずがないのだから、私と君は巡り逢うべきではなかった。

゜・*:.。.*.:*・゜.:*・゜*

この小説はGLです。
苦手な方はブラウザバックを推奨致します。

初めまして。コハクです。
少し前から書き溜めていたものを小説にしてみようと思います。最近は寒いのでこたつから抜け出せず、猫と一緒にこたつで作業をしています…。


Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.14 )
日時: 2017/01/15 21:36
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

{episode 2}

「あれ、はつめちゃんおはよう。こんな早くから出かけるの?」
今は朝の8時。今日は日曜日だから、いつもならまだ寝てる時間。
お母さんには言わずに図書館に行こうと思ってたのに…。
「おはよ。ちょっと出かけてくる。お昼ご飯いらないから。」
「どこ行くの?」
…くるみ図書館とは言えない。図書館通いの件についてはお母さんにでも秘密。
「ちょっと買い物。帰り、そんな遅くなんないから。じゃ、行ってきます。」
「はつめちゃんがお買い物?楽しんできてね。あ、でも危ないことはしちゃダメよ。暗いところには気をつけて」
「もう子供じゃないんだから。じゃあね。」
やれやれ。うちのお母さんは少し心配性気味な気がする。
外に出ると、寒い風が髪を揺らす。
今年もそろそろマフラーの季節なのかな。
そんなことを考えながら今日もくるみ図書館に着く。
「あっ、はつめちゃんっ!おはようございます。」
くるみ図書館のドアを開けると、可愛らしい少女が出迎えてきた。
…小冬だ。
「おはよ。来るの早いね。」
「そうですか?毎日ですよ。」
毎日?
「…今日は何を読めばいいの?先生。」
「はっ、はつめちゃんから先生っ!?はぁっ、幸せです…。」
体をクネクネさせる小冬…。
「気持ち悪い。」
「そんなことないですよー。さて、行きましょっか。」
私たちの特等席へ。

「今日はこれでどうでしょうか?」
小冬が本棚から持ってきたのは「シンデレラ」。
「シンデレラ?小さい頃に読んだことあると思うんだけど。」
「これは、その小さい頃に読んだシンデレラの内容を深くしたものです。ほら、ページ数も…」
小冬がペラペラとめくるページは、10ページや50ページでは終わらずに200ページほどまであった。たしかに、私が昔読んだのとは違う。
「正直、物語自体はさほど変わりません。けれどこの本は、深さ…シンデレラとか王子とか、登場する人々の気持ちが深く描かれているんです。だからすごく分かりやすいんです。」
…小冬が少なくとも一度は読んだということは、私もいつか必ず読むということなんだろう。
それは昨日の時点で、小冬が明かした運命的な偶然。
抗えない。
「分かった。とりあえず読んでみる。」

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.15 )
日時: 2016/11/26 22:42
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

いつも通り静かなこの空間にパタンと本を閉じる音が微かに響く。
読み始めたのが大体8時40分ごろだから…読むのに2時間かかった。
本は320ページと、思ってたよりも長かった…けど2時間は遅いな。
「あれ、はつめちゃん読み終わりましたか?」
隣で昔私が読んだ本「感動する、ちくわの本〜これを読めば必ず感動の涙〜」を読んでいた子冬が顔を上げる。
ちなみにあの本は全然理解できなかった。
「うん。時間かかったけど。」
ふるふると首を振る小冬。
「ゆっくりでいいんです。一緒に少しずつ理解していきましょう。それで、どうでしたか?シンデレラは。」
「全然分かんなかった。なんで?って展開が進む度に思っちゃう。危険を冒してまで王子に会いにパーティーに行く意味とか…分かんない。」
「危険を冒してまでパーティーに行く意味…理屈じゃないんです、きっと。意味があるからシンデレラは、王子に会いに行ったわけじゃない気がするんです。会いたいから、会いに行く。ガラスの靴の落とし主に恋をしたから、その主を探す。とか、はつめちゃんが思ってるよりずっと単純なんです。」
単純?単純…単純ってことは分かりやすいってこと?だから、単純なら…あれ、単純ってなんだっけ…えっと…
「単…純。単純?単純…単純。」
どうしよう、分からない。
考えれば考えるほど意味が分からなくなってく…。
「はっ、はつめちゃん、考えすぎです!単純なことは分かろうと思って理解するものじゃなくって、分かるときがきたらはっきりと分かるものです。焦らないで、大丈夫です。」
焦りと不安に追い詰められて、無意識に固く握りしめていた私の右手が小冬に握られる。
ほぐすように、支えるように小冬の細い指が指に絡みつく。
小冬の焦らないで、大丈夫ですって言葉とその左手が私を溶かしていく。
ざわざわと騒がしかった胸の不安も、すんと落ち着いた。
「…ごめん。」
首をふるふると振って微笑む小冬。
「はつめちゃんの手が握れてラッキーなくらいです。」
一瞬、ぎゅっと強く握られてやっと自分がどんな風に手を繋いでいたかが分かった。
変な気持ちが胸から全身に込み上げてくる。
「ちょっと、この繋ぎ方…」
「エロいですね…!」
静かなこの空間に、小冬のエロいですね…!が思いっきり響いた。
「うるさい…。変なこと言わないで。」
正直、私もエロいなとは思ったけど…。
それでも声を大にして言うことじゃない。うん。
楽しそうに笑う小冬。
なんでかな…。つられて笑っちゃうことなんて今まで無かったのに。
まだ昨日会ったばっかなのに、小冬といても気まずさとか違和感とか、そういうものを感じない。
小冬の隣は、少し…本当に少し、居心地が良くて好きだなと思う。
…隣にいたいなと思う。
…本当に少しだけだけど。
あれ、本当に少しだけ隣にいたいなと思うっておかしいか。
…めんどくさい。もういいや。
隣で笑う少女は、まだ私の手を強く握ったままだ。
あぁ…今、はっきりと。
この手を、ずっと…離したくないと思った。

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.16 )
日時: 2016/11/27 13:45
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

「えっと、シンデレラを読んでから恋心について何か変化とかありましたか?小さなことでも教えてください。」
手を握られてから数十分が経って、やっと手と手が離れた。
離れた後の右手をどこに置けばいいのかよく分からない。いつもどうしてたのか分からなくなる。
とりあえず膝の上に置いて…質問に答えよう。
「昨日も言ったけど、私は恋心を拒絶してる。それはシンデレラを読んでも変わらない。…あんな風になっていくなら、恋心なんていらない。」
この言葉がどれだけ自分勝手か、分かってる。
小冬は私が恋心を掴めるようにしてくれてるのに、それをいらないと言うなんて自己中心的にも程がある。
「はつめちゃん、拒絶したらダメです。拒絶っていうのは、拒否して受け入れようとしないってことなんです。大丈夫です。絶対いつか受け入れられます。だから、いらないなんて言ったらダメです。」
柔らかい声。
絶対とか、どこにも保証なんてないのに小冬の目を見たら何故か信じられてしまう。いつか、絶対受け入れられる…それだけを信じて今は…。
「ごめん、小冬。」
ふるふると首を振る。
また私のごめんは聞き入れられない。それどころか、柔らかい笑顔で
「何がですか?」
なんて。
やっぱり私は小冬のことが分からない。
一生理解できない気がする。
「はつめちゃん、私は…」
「ん?」
「いえ、なんでもないんです。…それより、今日はあと1冊くらい読むとして、ひとまずお昼を食べに行きませんか?」

Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.17 )
日時: 2016/11/29 00:07
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

それから程なくして私たちは昼食へとくるみ図書館を出た。
「うぅー、寒いですねぇ…。」
ぷるぷると軽く身震いをしている小冬は、名前に冬とついているのにもかかわらず冬が苦手なようだ。
「どこにする?」
冬は嫌いじゃないけど、寒いのは嫌だ。
さっさと適当に昼食をすませてくるみ図書館に戻りたい。
「あっ、じゃあ私ドーナツ食べたいです!」
くるみ図書館から歩いて10分くらいすると大通りに出る。その通りのドーナツ屋に寒さから逃げるようにして2人で入った。


「ドーナツに穴があいてる訳、知ってますか?」
店内の適当な2人席に座って、ドーナツを自席に持ってきて…やっとドーナツを食べようとした瞬間に、小冬が話し始めた。
やっぱり私と小冬はリズムがどこかずれてる。
「そんな不毛な質問をする意味が分かんないけど、揚げやすいから…とかじゃない?あ、でも穴あいてないのもあるか。」
こんな不毛な質問に答える私もおかしい。
「じゃあはつめちゃんは、この穴のあいた方とあっちの人の食べてる穴のあいてない方を見てどう思いますか?」
「どう思うって…普通に穴のあいてる方は分けたりして食べやすいけどあいてない方は一人用って感じ…かな。味は別にどっちも美味しいし。」
「はつめちゃんのそういうところが大好きです。」
小冬はふふっと、少しいたずらっ子のような雰囲気を醸し出しながら笑う。
…さらっと大好きとか言わないでほしい。
「…意味分かんないけど、これ…。」
私はたまたま一口サイズに割れたドーナツをなんとなく小冬の口元に差し出す。
これはあくまで、たまたまとなんとなくの掛け合わせ。私が意図的に小冬の口に入れようなんて思ったわけじゃない。
「はっ、はつめちゃんがあーん!?してくれるんですかっ!?」
違う。そんなわけない。
「んなこと言ってない。普通にあげるっつってんの。…いらないの?」
「いる!いるです!いります!」
「はい。」
いるならさっさと食べちゃってほしい。口元に差し出していたドーナツを、小冬の唇にくっつける。
「あっ、あーんしてもらっていいんですか!?」
うっさい。それ以上言うな。
「は!?だからっ」
唇にくっつけていたドーナツをぐりぐりと小冬の口内に押しやる。
「あむっ!?」
「言っとくけど、これはあーんじゃないからね。強制つめ込みだから。」
そう。あーんなんてものとはかけ離れた、強制つめこみ。
絶対あーんじゃない。
「くはっ…はつめちゃんひどいですっ!寿命さらに縮めるつもりですかー?もう、喉にもつまるじゃないですかー。…でも、今のはあーんでしたね。」
「っ!だから、それは小冬があーんあーんうるさいからっふむっ!?」
口の中がいきなり甘い。
「ふははっ、お返しです!」
「…これは、ほんと喉…くはっ、つまる…。」
自分がされて嫌なことは人にするな、案外当たってるようだ。
「おあいこですねっ!よし、今日はあーん記念日っと…。」
小冬が診察ノートに何かを書き加えていく。
「何やってんの?って、そんなこと書くな…。」
診察ノートには、今日の日付10月3日と記された横にあーん記念日と書かれていた。
…小冬の考えることは本当に理解できない。
こんな人と感情を共有し、残りの人生を共に生きると決めた私自身の思考回路も相当理解に苦しむけれど。
「毎日何かの記念日の方が楽しくないですか?ほら、君があーんしたいって言ったから今日はあーん記念日、みたいな!」
「なんかそれ聞いたことあるけど…。てか、私はあーんしたいなんて言ってない。」
「あ、私ドーナツ1つじゃ足りない気がしてきました。あの小さい丸いボールっぽいいかにもあーん用のやつ買ってきます!」
「…あーんは絶対しないから。」
「えー?してくださいよー。」
…いくら私が小冬に弱いからといって流されるわけにはいかない。
絶対もうあーんはしない。
って、さっきのも絶対あーんなんかじゃないけど。


無事?にドーナツを食べ終えて、くるみ図書館へと向かう。相変わらず寒い。
ちらっと右を見ると、小冬と目があう。
「…毎日が記念日だったら、私が死んだ後もはつめちゃんが毎日思い出してくれないかなぁ、なんて思ったんです。」
あまりにも唐突に、でもどこか自然に小冬が口を開いた。
必死に前を向いて歩くけど、小冬が私の目をじっと見ているのが痛いくらいに分かった。
「…なんて、気にしないでください。冗談です。診察ノートに書いたのも、消しちゃいましたから忘れてください。」
ふっと私が右を向いたときにはもう、小冬は前を向いていた。
変な感情がまた私の胸をえぐる。
小冬の死んだ後。
小冬のいない世界。
それは、必ず来る約束された未来。
「…小冬が死んだ後、嫌でも私は小冬のことを思い出すんだと思う。朝起きて、夜寝るまで、何度も、何度も。きっと生きることそのものに小冬がくっついてくる。…私にとって、小冬が死んだ後の生きるっていうのはそういうこと、になるんだと思う。」
そんな未来、そんな約束、一生来なくていい…守られなくていい。
小冬の死んだ後、小冬のいない世界、そんなの…。
「嫌でもって、そんな人を悪霊みたいに言わないでくださいよ。」
もう右は向かない。
小冬の方は見ない…けど、小冬が泣いているのは声で分かった。
「それで今の私の生きる意味は、私にとって生きるっていうことは…小冬と"生きる"を共有すること。小冬と、一緒に生きること…それだけ。」
私も声がおかしい。
泣いてるからじゃない。
寒いから。どうしようもなく寒くて、まだ口の中の甘いのが消えてない気がして、ちょっと瞬きしたら目から出た涙みたいなのが頬を伝っただけだから。
だから泣いてるんじゃない。
それからくるみ図書館に着くまで、私たちはこれ以上会話をしなかった。
ただ、いつの間にかつないでいた右手が妙に温かくて人の温もりを感じた。




Re: だから私は君に恋はしない。 ( No.18 )
日時: 2016/12/01 22:16
名前: コハク ◆2kGkudiwr6 (ID: nCjVBvXr)

「ドーはドーナツーのドー、レーはレモンの」
「うるさい。」
どこかで聞いたことがあるような歌を延々と歌い続ける小冬は、私が目の前で本を読んでいるのを妨害しようとしているのだろうか。
…なんだろ、なんかライトノベルの題名みたい。
そういえばライトノベルは読んだことがない。ただ単に縁がなくて読んでいないだけだけど、最近では恋愛モノのライトノベルも多いらしいし今度本屋に寄ってみようか。
くるみ図書館にもライトノベルを置けばいいのに。漫画類、ライトノベル類、雑誌類は一冊も置かれていない。
真面目中の真面目な図書館、それがくるみ図書館。だから人が少ないのかな。
まぁ、それはそれで好都合だからいいけど。
「はーつーめーちゃーん?聞こえてます?」
小冬が顔の前で手をひらひらさせているのに気づく。
「あ、ごめん。なに?」
「ふと、はつめちゃんを見てたら思ったんですけど、恋をすると心臓がドキドキしたり、心拍数が上がったりするって本でもよく表されてるじゃないですか。あれって、寿命が縮んだり命に影響するんでしょうか?」
「するんじゃない?生まれる前から死ぬまでに何回鼓動を刻むかは決まってるって言うし。だから心拍数が上昇すればその分寿命も縮むって考えるのが無難だと思うけど。」
私が面白みの全くない、まっとうな答えを返すと小冬は花みたいに笑った。
「それならはつめちゃんが恋をすれば、はつめちゃんの寿命も縮んで一緒に死ねるかもしれませんね。」
それはまるで、毒を抱えたスミレのように。
「私は恋はしない。恋心を知りたいだけ。」
「あっ、でも私も恋をしてるのでダメですね。んんっ、じゃあ予定の命日よりも早く死ぬ可能性があるってこと…ですね。」
小冬に好きな人がいて、その人に恋心を持っているということは恋心や感情を共有していくという約束をした時点で分かりきっていたはずなのに、改めて本人の口から言葉として聞くと変な感じがした。
そんな人、いなくなればいいと思った。
「そんな人、いなくなればいいのに。」
「ふぇっ?」
小冬の間の抜けたまぬけな返事より、自分が声に出して伝えてしまったことに驚いた。


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